JP4061351B1 - 無灰炭の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】製鉄用コークスの原料炭に用いる無灰炭の製造方法であって、溶剤と石炭とを混合してスラリーを調製するスラリー調製工程(S1)と、スラリー調製工程(S1)で得られたスラリーを、400〜420℃の温度で20分以下抽出した後、370℃以下に冷却する抽出工程(S2)と、抽出工程(S2)で得られたスラリーを、液部と非液部とに分離する分離工程(S3)と、分離工程(S3)で分離された液部から溶剤を分離して改質炭である無灰炭を得る改質炭取得工程(S4)と、を含むことを特徴とする。
【選択図】図1
Description
特許文献1に記載の製造方法では、得られるSRC中に、灰分や使用済みの触媒が濃縮されており、製鉄用コークスの原料炭に用いるには、品質が十分であるとはいえなかった。また、コークス原料用のバインダー(粘結性補填材)として重要な品質である軟化溶融性(軟化流動性)は備えているものの、揮発性が高すぎるため、400〜500℃での固化特性が不十分であり、SRCをバインダーとして用いても十分に強度が高いコークスを製造することは困難であった。さらに、このSRCは、その製法の面においても、高価な水素や触媒を必要とし、且つ高温・高圧の条件で行わなければならないため、製造、設備コストが膨大となり、経済的ではないという問題があった。
このような製造方法によれば、無灰炭の原料である石炭として、安価な劣質炭を使用することで、無灰炭をさらに安価に製造することができる。
図1に示すように、無灰炭の製造方法は、スラリー調製工程(S1)と、抽出工程(S2)と、分離工程(S3)と、改質炭取得工程(S4)と、を含むものである。
以下、各工程について説明する。
スラリー調製工程(S1)は、溶剤と石炭とを混合してスラリーを調製する工程である。
石炭を溶解する溶剤としては、一般的には、ベンゼン、トルエン、キシレン等の1環芳香族化合物や、N−メチルピロリドン(NMP)やピリジン等の極性溶剤等が用いられるが、本発明においては、2環芳香族を主とする非水素供与性溶剤を用いる。
非水素供与性溶剤の主たる成分としては、2環芳香族であるナフタレン、メチルナフタレン、ジメチルナフタレン、トリメチルナフタレン等が挙げられ、その他脂肪族側鎖をもつナフタレン類、また、これにビフェニルや長鎖脂肪族側鎖をもつアルキルベンゼンが含まれる。
なお、ここでの劣質炭とは、非微粘結炭、一般炭、低品位炭(褐炭、亜瀝青炭等)等の石炭をいう。また、低品位炭とは、20%以上の水分を含有し、脱水することが望まれる石炭のことである。このような低品位炭には、例えば、褐炭、亜炭、亜瀝青炭等がある。例えば、褐炭には、ビクトリア炭、ノースダコタ炭、ベルガ炭等があり、亜瀝青炭には、西バンコ炭、ビヌンガン炭、サマランガウ炭等がある。低品位炭は上記例示のものに限定されず、多量の水分を含有し、脱水することが望まれる石炭は、いずれも本発明のいう低品位炭に含まれる。
抽出工程(S2)は、前記スラリー調製工程で得られたスラリーを、400〜420℃の温度で20分以下抽出(以下、「加熱」ともいう)した後、370℃以下に冷却する工程である。
なお、抽出工程(S2)では、後述するように、例えば、抽出槽を400〜420℃に上昇させ、直ちに冷却してもよく、抽出時間の下限は一概に決められないが、抽出槽の操作上の観点からは、抽出時間の下限は1分に設定するのがよい。すなわち、この場合、抽出時間は、1〜20分の範囲とするのが好ましい。
ここで、「直ちに冷却する」とは、できる限り速やかに、冷却処理を施すことによって冷却するということであり、例えば、後述する重力沈降槽へ、スラリーが移動するまでの間に、できる限り速やかに、冷却処理により冷却するということである。
さらに、400〜420℃の温度の範囲においては、400℃に近い温度が好ましく、400℃であることが好ましい。400℃に近いほど、抽出率が高くなるためである。
なお、この抽出工程(S2)における抽出の際、石炭の熱分解により、主に平均沸点(Tb50:50%留出温度)が200〜300℃にある芳香族に豊富な成分が生成し、好適に溶剤の一部として利用することができる。
抽出工程(S2)で酸素に接触すると、発火する恐れがあるため危険であり、また、水素を用いた場合には、コストが高くなるためである。
抽出工程(S2)で用いる不活性ガスとしては、安価な窒素を用いることが好ましいが、特に限定されるものではない。また、抽出工程(S2)での圧力は、抽出の際の温度や用いる溶剤の蒸気圧にもよるが、1.0〜2.0MPaが好ましい。圧力が溶剤の蒸気圧より低い場合には、溶剤が揮発して液相に閉じ込められず、抽出できない。溶剤を液相に閉じ込めるには、溶剤の蒸気圧より高い圧力が必要となる。一方、圧力が高すぎると、機器のコスト、運転コストが高くなり、経済的ではない。
分離工程(S3)は、前記抽出工程(S2)で得られたスラリーを、液部と非液部とに分離する工程である。
ここで、液部とは、溶剤に抽出された石炭成分を含む溶液をいい、非液部とは、溶剤に不溶な石炭成分(灰分を含む石炭すなわち灰炭)を含むスラリーをいう。
スラリーを液部と非液部とに分離する方法としては、各種の濾過方法や遠心分離による方法が一般的に知られている。しかしながら、濾過による方法では濾過助剤の頻繁な交換が必要であり、また、遠心分離による方法では未溶解石炭成分による閉塞が起こりやすく、これらの方法を工業的に実施するのは困難である。従って、流体の連続操作が可能であり、低コストで大量の処理にも適している重力沈降法を用いることが好ましい。これにより、重力沈降槽の上部からは、溶剤に抽出された石炭成分を含む溶液である液部(以下、「上澄み液」ともいう)を、重力沈降槽の下部からは溶剤に不溶な石炭成分を含むスラリーである非液部(以下、「固形分濃縮液」ともいう)を得ることができる。
図2に示すように、重力沈降法では、固液分離装置100において、まず、石炭スラリー調製槽1で、無灰炭の原料である粉体の石炭と溶剤とを混合し、スラリーを調製する(スラリー調製工程(S1))。次に、ポンプ2によって、石炭スラリー調製槽1からスラリーを予熱器3に所定量供給し、スラリーを400〜420℃まで加温する。そして、加温したスラリーを抽出槽(抽出器)4に供給し、攪拌機10で攪拌しながら400〜420℃で20分以下加熱した後、冷却器7により、直ちに370℃以下に冷却する(抽出工程(S2))。なお、直ちに冷却するには、抽出槽4に冷却機構を設けておくことが好ましい。また、ここでの「20分以下」とは、予熱器3および抽出槽4での加熱時間を合計したものであり、予熱器3で400〜420℃での加温を開始してから、直ちに370℃以下に冷却するまでの時間である。そして、この抽出処理を行ったスラリーを、重力沈降槽5へ供給して、スラリーを上澄み液と固形分濃縮液とに分離し(分離工程(S3))、重力沈降槽5の下部に沈降した固形分濃縮液を固形分濃縮液受器6に排出するとともに、上部の上澄み液をフィルターユニット8へ所定量排出する。
また、重力沈降槽5内において、冷却した温度で維持する時間は、スラリーを上澄み液と固形分濃縮液とに分離するのに必要な時間であり、一般的に60〜120分であるが、特に限定されるものではない。
なお、重力沈降槽5の数を増やすことにより、固形分濃縮液に同伴した溶剤に可溶な成分を回収することができるが、効率的に回収するには、重力沈降槽5を二段に配置するのが適当である。
そして、重力沈降槽5内から排出された上澄み液は、必要に応じて、フィルターユニット8によってろ過され、上澄み液受器9に回収される。
改質炭取得工程(S4)は、前記分離工程(S3)で分離された液部から溶剤を分離して改質炭である無灰炭を得る工程である(無灰炭取得工程)。
この無灰炭は、灰分をほとんど含まず、水分は皆無であり、また原料石炭よりも高い発熱量を示す。さらに、製鉄用コークスの原料として特に重要な品質である軟化溶融性が大幅に改善され、原料石炭よりも遥かに優れた性能(流動性)を示す。従って、この無灰炭は、コークス原料の配合炭として使用することができる。また、副生炭と混合することによって、配合炭として使用することもできる。
この副生炭は、灰分が含まれるものの水分が皆無であり、発熱量も十分に有している。軟化溶融性についてはこれを示さないが、含酸素官能基が脱離されているため、配合炭として用いた場合に、この配合炭に含まれる他の石炭の軟化溶融性を阻害するようなものではない。従って、この副生炭は、通常の非微粘結炭と同様に、コークス原料の配合炭の一部として使用することができ、また、コークス原料炭とせずに、各種の燃料用として利用することも可能である。
なお、液部より灰分のない無灰炭のみをコークス原料炭用として製造し、非液部からは溶剤のみ回収し、灰分の濃縮された副生炭は、回収せずに廃棄しても良い。
[実施例1]
実施例1では、抽出工程での抽出温度を370℃とした場合において、原料石炭と、この原料石炭から得られた無灰炭との軟化溶融性(軟化流動性)、再固化温度等の変化について調べた(実験例1)。
表1に示す工業分析値および元素分析値である強粘結炭A、強粘結炭B、亜瀝青炭Cを原料石炭とし、それぞれの原料石炭5kgに対し、4倍量(20kg)の溶剤(1−メチルナフタレン(新日鉄化学社製))を混合してスラリーを調製した。このスラリーを1.2MPaの窒素で加圧して、内容積30Lのオートクレーブ中370℃、1時間の条件で抽出した。このスラリーを同一温度、圧力を維持した重力沈降槽内で上澄み液と固形分濃縮液とに分離し、上澄み液から蒸留法で溶剤を分離・回収して、強粘結炭Aからは無灰炭a、強粘結炭Bからは無灰炭b、亜瀝青炭Cからは無灰炭cを得た。これらの工業分析値および元素分析値を表1に示す。
この試験結果を表1に示す。また、図3は、ギーセラー軟化流動試験によるギーセラーカーブを示すグラフである。
ここで、ギーセラー軟化流動試験の結果として、原料石炭の再固化温度に注目すると、強粘結炭A、Bはそれぞれ496℃、483℃であるのに対し、亜瀝青炭Cの再固化温度は、445℃と低いため、亜瀝青炭Cは、コークスの強度を得るのに重要な、原料炭を強固に固着するための軟化溶融性(軟化流動性)状態が阻害されるため、製鉄用コークスの原料炭としては、使用することができない。
ただし、得られた無灰炭の再固化温度に注目すると、強粘結炭A、Bから得られた無灰炭a、bは、508℃、488℃と、それぞれの原料石炭である強粘結炭A、Bよりも高い温度で固化するが、亜瀝青炭Cから得られた無灰炭cの再固化温度は、原料石炭である亜瀝青炭Cよりは高いものの、463℃と比較的低い。
ここで、無灰炭cを製鉄用コークス原料炭に添加し、配合炭としてコースク化する場合、強粘結炭が流動性を維持している最中である463℃で無灰炭cが固化するため、配合炭全体の流動性を阻害してしまい、結果として得られるコークスの強度を低下させてしまう結果となる。
なお、原料石炭として、強粘結炭(あるいは粘結炭)を用いた場合、得られる無灰炭は、原料石炭よりも優れた軟化溶融性能を示し、製鉄用コークスの原料炭として使用することはできるが、強粘結炭は高価であるため、原料コストの削減を図ることはできない。
実施例2では、前記実施例1で使用した亜瀝青炭Cを抽出処理した際の抽出温度と、この亜瀝青炭Cから得られた無灰炭cの再固化温度の関係について調べた(実験例2)。
亜瀝青炭Cを原料石炭として、1時間(60分)の抽出時間で抽出処理したときの抽出温度と得られた無灰炭cの再固化温度の関係を図4に示す。
なお、無灰炭を得る方法については、抽出温度以外は、前記実施例1に準じて行った。
以上の結果より、原料石炭として、亜瀝青炭等の劣質炭を用いた場合、抽出温度を400℃以上とすることで、得られる無灰炭を製鉄用コークスの原料炭として使用できることがわかる。
実施例3では、前記実施例1で使用した亜瀝青炭Cを抽出処理した際の抽出温度、抽出時間、抽出率の関係について調べた(実験例3)。
亜瀝青炭Cを、抽出温度として、それぞれ370℃、400℃、420℃まで予熱器で昇温し、抽出器で所定時間保持した後、360℃に急冷して抽出処理したときの、抽出時間と抽出率の関係を図5に示す。なお、420℃の実験では、予熱器で400℃から420℃まで昇温する時間が8分間であったことから、図5には、400℃から420℃の抽出時間として、予熱器での8分間を加えた時間で表示した。
また、無灰炭を得る方法については、抽出温度、抽出時間以外は、前記実施例1に準じて行った。
具体的には、(原料石炭−副生炭)/原料石炭×100の式により求めた。なお、原料石炭、副生炭は、無水無灰炭ベースである。
ここで、抽出時間とは、所定の温度に昇温後、その温度を保持して370℃以下に冷却するまでの温度保持時間であり、抽出時間0とは、所定の温度に昇温後、温度保持を行わず直ちに冷却処理した場合のことである。
なお、420℃を超える温度では、熱分解が激しく、抽出率が低下することが知られているため、ここでは、実験を省略した。
なお、一般的に、抽出率が約52%以上であれば、比較的高い抽出率であるといえる。
以上の結果より、抽出温度が400〜420℃で、370℃以下に冷却するまでの時間が20分以内であれば、高効率で無灰炭が得られる事がわかる。
一方、370℃の抽出温度では、460℃程度の再固化温度しか得られないことから、抽出率が高くても、前記したように、製鉄用コークスの原料炭としては特に優れてはいない。
そして、このようにして得られた無灰炭は、製鉄用コークスの原料炭に添加して配合炭としても、コークスの強度を劣化させることがないといえる。
S2 抽出工程
S3 分離工程
S4 改質炭取得工程
1 石炭スラリー調製槽
2 ポンプ
3 予熱器
4 抽出槽
5 重力沈降槽
6 固形分濃縮液受器
7 冷却器
8 フィルターユニット
9 上澄み液受器
10 攪拌機
100 固液分離装置
Claims (4)
- 製鉄用コークスの原料炭に用いる無灰炭の製造方法であって、
溶剤と石炭とを混合してスラリーを調製するスラリー調製工程と、
前記スラリー調製工程で得られたスラリーを、400〜420℃の温度で20分以下抽出した後、370℃以下に冷却する抽出工程と、
前記抽出工程で得られたスラリーを、液部と非液部とに分離する分離工程と、
前記分離工程で分離された液部から前記溶剤を分離して改質炭である無灰炭を得る改質炭取得工程と、
を含むことを特徴とする無灰炭の製造方法。 - 前記改質炭取得工程において、無灰炭を得ることに加え、前記分離工程で分離された非液部から前記溶剤を分離して改質炭である副生炭を得ることを特徴とする請求項1に記載の無灰炭の製造方法。
- 前記抽出工程において、前記スラリー調製工程で得られたスラリーを、400〜420℃の温度に昇温して抽出した後、直ちに370℃以下に冷却することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の無灰炭の製造方法。
- 前記石炭が劣質炭であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の無灰炭の製造方法。
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