JP4060898B2 - Synthetic resin spectacle lens manufacturing method - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スパッタリング法によって高速で光学薄膜、特に反射防止膜を有する合成樹脂製眼鏡レンズの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
合成樹脂製眼鏡レンズに対して反射防止膜を作成する場合においては、手法の容易さや成膜速度の速さなどの点から、真空蒸着法が多く用いられてきた。この反射防止膜は一般的に、1.50以下の低い屈折率を有した低屈折率層と、1.60以上の高い屈折率を有した高屈折率層との組み合わせによる多層膜や、あるいは低屈折率層よりなる単層膜により構成される。低屈折率層は屈折率が低ければ低いほど良好な反射防止効果が得られることは広く知られている。このため、ガラス基板への反射防止膜では、基板温度を300℃前後に加熱して真空蒸着を行うことによって1.38という安定した低屈折率の得られるMgF2が低屈折率層として作成されている。
【0003】
これに対し、基板が合成樹脂の場合、基板の特性上基板温度を上げることはできない。また、基板加熱をおこなわない成膜法では、膜硬度が不十分で簡単に膜に傷が生じるため、加熱蒸着を行う場合のような特性は得られない。例えば、特開平3−129301号公報に開示されているように、イオンアシスト蒸着法でも実用に耐えるものは得られていない。このため合成樹脂製基板への反射防止膜の形成においては、低屈折率層としてSiO2を用いている。この公報では、SiO2を主成分とする膜などからなる多層膜を形成することによってMgF2単層膜と同等の特性を有する反射防止膜を得ている。ところが、この方法を用いても屈折率1.38程度のMgF2を用いた多層膜のような低い反射率の反射防止膜を得ることはできず、MgF2を使用できないことに対する解決策とはなっていない。
【0004】
このように、基板加熱を行わない場合における耐熱性や反射防止効果が不十分な点を解決するため、特開平4−191801号公報では、合成樹脂製眼鏡レンズにあらかじめ有機珪素化合物を含むハードコート層を設け、その上に高屈折率層としてTa2O5やTiO2などを酸素イオンビームアシスト蒸着法により成膜し、低屈折率層としてSiO2を通常の真空蒸着法によって成膜している。
【0005】
一方、近年では自動化・省力化・大面積基板への適用性などの点で有効なスパッタリング法による成膜が行われている。このスパッタリング法により成膜された薄膜は、通常の真空蒸着法による薄膜に比較して、膜の充填密度が高く、基板加熱を行うことなく、成膜した場合でも硬度が高い膜となっている。
【0006】
ところが、スパッタリング法は真空蒸着法と比較して成膜速度が遅いという欠点があり、金属膜の場合は実用レベルとなっていても、その他の膜の場合には成膜速度が著しく遅いために工業的な普及が遅れている。また、MgF2等のフッ化物をスパッタリングするとMg等とFとに解離してしまい、膜中ではFが不足するため可視光の大きな吸収が生じる問題があり、これらによってスパッタリング法を光学薄膜に適用する上での大きな障害となっていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように合成樹脂製眼鏡レンズに形成された反射防止膜はガラスレンズに形成された膜に比べ反射率が高く、すなわち反射防止効果が低く、また、加熱蒸着をおこなったガラス基板に比較すると膜硬度が低いため、傷が付き易いという問題点があった。さらに、反射防止膜を完全な誘導体膜だけで構成した場合、その合成樹脂製眼鏡レンズが帯電し易いため粉塵などの付着によって汚れ易い問題点も有していた。
【0008】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、合成樹脂製眼鏡レンズへの反射防止膜として好適であり、しかも膜強度が高く、屈折率が低く光吸収のないフッ化物膜をスパッタリング法により高速で形成する方法を提供することを目的とする。
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、粒径0.1〜10mmの顆粒状のMgF2を膜原料とし、酸素または窒素または水素のなかから選ばれた1種以上のガスを真空槽内に導入しながら、交流電力を投入してMgF2上にプラズマを発生させ、このプラズマによりMgF2表面を450〜600℃の温度に保持すると共に、MgF2を前記導入ガスの正イオンによりスパッタリングすることによりMgF2の少なくとも一部を分子状態で跳び出させ、この分子状態のMgF2によって眼鏡レンズの基板上に膜を形成することを特徴とする。
【0010】
従来のスパッタリング法では、イオンがターゲットに衝突した際、ターゲット内の原子間結合を切ってターゲットから原子を飛び出させる必要があり、加速されたイオンのエネルギーの一部は原子間結合を切ることに費やされてしまうために、スパッタ収率が低くなり、その結果成膜速度が遅くなるという欠点があった。これに対し、本発明では、膜原料の温度を上昇させておくことにより、あらかじめ結合力を弱めておき、この状態でイオンをターゲットに衝突させるため、加速されたイオンのエネルギーの大部分をスパッタリングに用いることができる。このためスパッタ収率が高くなり、その結果従来法と比較して成膜速度を著しく速くすることができる。
【0011】
また、従来のスパッタリング法では、原子間結合が切れてターゲットから原子が跳び出すのに対し、本発明では膜原料の温度を上昇させておくことにより、熱振動により結合力の強い箇所と弱い箇所を形成し、これにより跳び出す粒子の形態が分子となる場合が生じる。ここでの分子とは、単分子のみではなくクラスター状に集合体をなす多分子を含むものである。そして、ターゲットから跳び出す分子の形態は、熱による蒸発分子とほぼ同じになると考えることができる。
【0012】
本発明において、膜原料を載置した電極に交流を印加することにより、電極を負電位にして、膜原料を正イオンによりスパッタリングすることは、一般的に知られている高周波スパッタと同じ原理に基づくものである。ここでいう交流とは、いわゆる13.56MHzの高周波や数10kHzの中周波をも含むものである。本発明では、スパッタリングを行うために膜原料を載置した電極に交流を印加することによって電極上にプラズマが発生するため、このプラズマにより膜原料を加熱することができる。特に、膜原料が顆粒状である場合、熱伝導が悪いことや、多量に存在するエッジ部に電場・磁場が集中することにより、容易に加熱することができる。
【0013】
なお、このとき顆粒の大きさは、あまり小さすぎると真空槽内で舞い上がりパーティクルとなるため、粒径0.1mm以上の方が良く、望ましくは0.5mm以上が良好である。一方、顆粒が大きすぎると断熱効果が減ると共に、エッジ部が少なくなって、電場・磁場の集中による効果が小さくなるため、粒径10mm以下、望ましくは5mm以下が良い。顆粒の大きさ、形状は必ずしも均一である必要はない。
【0014】
光学的な用途の場合、一般的には薄膜の光吸収が小さいことが望ましい。そのため、膜原料が所望の薄膜と同じ組成の場合、跳び出す粒子の形態がばらばらに解離して原子状となるよりは、分子状となる方が望ましい。解離したものは必ずしも元通りには戻らないからである。これについて鋭意研究の結果、跳び出す粒子の形態はスパッタリング時に導入するガス種に依存することが判明した。スパッタリングに一般的に用いられるAr等の不活性ガスは跳び出す粒子を原子状にばらばらにしてしまい易いのに対して、酸素、窒素、水素やこれらを含むガスは跳び出す粒子をばらばらにすることなく分子状態で跳び出させることができる。このようなことから光学薄膜を製造する場合は特に、少なくとも酸素、窒素または水素のいずれか1つを含むガスを導入するとよい。
【0015】
なお、酸素、窒素、水素やこれらを含むガスは膜原料をスパッタリングするのみで膜原料と化合することはほとんどない。従って、このようにして製造された光学薄膜は、膜原料を加熱して蒸発させ基板上に膜を形成させた場合とほぼ同じ組成を有すると考えられる。
【0016】
光学薄膜として特に有用なMgF2を用いたスパッタリングの場合、ターゲットの表面温度が450℃以上であればその成膜速度を十分に高めることができる。一方、800℃以上になると膜原料の蒸気圧が導入ガスに近い圧力まで上昇して蒸発分子がそのまま基板に到達するようになり、単なる蒸着と差が小さくなる。蒸着の場合には、スパッタリングの場合と異なり耐擦傷性が低くなる。MgF2の蒸着の場合、基板を300℃程度まで加熱しなければ耐擦傷性が著しく低くなり、実用に耐えられないものとなるが、ターゲットの表面温度を800℃以下に保つことによって耐擦傷性の高い膜が得られる。特に、成膜中のMgF2の温度を、500℃以上とすることにより、より吸収の少ない膜を得ることができ、700℃以下にすることによってより耐擦傷性の高い高性能な反射防止膜を形成することができる。導入するガスとしては、経済性、入手性、安全性等を考慮した場合、酸素または窒素が特に好ましい。
【0017】
このようにして製造された光学薄膜は、化学量論比に近く可視域で吸収がほとんどなく、その屈折率は1.38程度となる。従ってこの光学薄膜は単層でも十分な反射防止効果を有し、サングラス、ゴーグル等を含む眼鏡用レンズへの反射防止膜として使用できる。
【0018】
本発明では、基板を加熱する必要がないため、適用できる合成樹脂製眼鏡レンズの素材についてはなんら制限はない。従って、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート(商品名「CR−39」)のほか、ポリカーボネート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂等どのような合成樹脂にも適用できる。
【0019】
請求項2の発明は、粒径0.1〜10mmの顆粒状のMgF2を膜原料とし、酸素または窒素または水素のなかから選ばれた1種以上のガスを真空槽内に導入しながら、高周波電力を投入してMgF2上にプラズマを発生させ、このプラズマによりMgF2表面を450〜600℃の温度に保持すると共に、MgF2を前記導入ガスの正イオンによりスパッタリングすることによりMgF2の少なくとも一部を分子状態で跳び出させ、この分子状態のMgF2によって眼鏡レンズの基板上に膜を形成する工程と、前記基板上に金属酸化物又は珪素酸化物よりなる膜を形成する工程とを有し、これらの工程により反射防止膜を形成することを特徴とする。
【0020】
この発明では、請求項1における合成樹脂製眼鏡レンズ上の反射防止膜を、MgF2と金属酸化物および/又は珪素酸化物と組み合わせた多層構成とすることにより、より反射防止効果の高い膜を形成することができる。
【0021】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記金属酸化物又は珪素酸化物は、Zr、Ti、Ta、Al、In、Sn、Siのいずれか又はそのうちの複数を主成分とすることを特徴とする。
【0022】
請求項2において、MgF2と組み合わせる金属酸化物又は珪素酸化物をZr、Ti、Ta、Al、In、Sn、Siのいずれか又はそのうちの複数を主成分とすることにより、安定した光学特性と耐久性とに優れた高性能な反射防止膜を形成することができる。なかでも、誘電体ではないInもしくはSnの少なくとも一方を主成分とする酸化物膜、あるいは一酸化珪素膜を多層膜中の1層として用いることにより、高い帯電防止作用を得ることができる。
【0023】
請求項4の発明は、請求項2の発明において、前記金属酸化物又は珪素酸化物をマグネトロンスパッタリング法により形成することを特徴とする。
【0024】
この発明では、請求項2の発明におけるMgF2と組み合わせる金属酸化物又は珪素酸化物をマグネトロンスパッタリング法により形成することにより、高い擦傷性などの耐久性と、生産性に優れた高性能な反射防止膜を形成することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
(実施の形態1)
図1は実施の形態1に用いる成膜装置を示す。真空槽1の上方には基板2が自転可能に設けられている。膜原料である粒径1〜5mmのMgF2顆粒3は、石英製の皿4に入れて直径4インチ(約100mm)のマグネトロンカソード5上に載置されている。カソード5はマッチングボックス6を介して13.56MHzの高周波電源7と接続されている。また、カソード5の温度を一定に保つためにカソードの下面には水温を20±0.5℃に制御した冷却水8を流している。真空槽1の側面にはガス導入口9、及び10が挿入され、カソード5と基板2との間にはシャッター11が配置されている。カソード5と基板2の間の距離は100mm、また基板2の回転軸とカソード5の中心軸とは50mmの距離で偏心されている。
【0026】
屈折率1.60のウレタン系合成樹脂製レンズである基板2をセットし、7×10−5Paの真空度まで真空槽1内を排気する。その後、O2ガスをガス導入口9から4×10−1Paまで導入する。高周波電源7から電力をマグネトロンカソード5に供給し、プラズマを発生させる。MgF2顆粒3はこのプラズマにより加熱され、カソード下面の冷却水8による冷却能と釣り合った温度に保持されると共に、スパッタリングされる。
【0027】
ここで、基板2を回転させ、シャッター11を開くことにより、基板2上にMgF2膜が形成される。この光学的膜厚が130nmとなる時間の後、シャッター11を閉じる。成膜中のプラズマ発光スペクトルの波長を検査したところ、投入電力が400W以上になると、Mg原子の他にMgF分子及びMgF2分子からの発光が認められ、膜原料の少なくとも一部が分子状態で跳んでいることが確認された。
【0028】
図2は、投入電力を変えた場合における顆粒3の表面温度と、基板2上の成膜速度との変化の特性図を示し、特性曲線Aは表面温度、特性曲線Bは成膜速度である。なお、顆粒3の表面温度は赤外放射温度計により測定した。投入電力が400W以上になると、表面温度が約450℃以上にまで上昇し、成膜速度が急激に速くなっていることがわかる。一方、投入電力が800Wになると、表面温度が約800℃にまで上昇している。
【0029】
投入電力が400Wから800Wの間で形成した膜をEPMAにより分析した結果、その組成比はMg:Fが1:1.8〜1.95であり、投入電力が大きい方がF量が多くなっている。プロセスガスとして導入したO2(酸素)はほとんど膜中に存在していないことも確認できた。また、FT−IRにより分析した結果、Mgの膜中での状態は、Fとの結合は認められるが、酸素との結合は認められなかった。さらに、XRDにより分析した結果、結晶性は低く、明確なピークは認められなかった。
【0030】
次に、膜の耐擦傷性テストと付着力テストを行った。耐擦傷性テストは、1cm2あたり1kgの荷重をかけた#0000メッシュのスチールウールでコート面を10ストローク擦るスチールウールテストにより行った。付着力テストは反射防止膜に1mm間隔の基材に到達する切断線をナイフで縦横それぞれ11本形成して1mm2のますを100個作成し、その上にセロハンテープを貼り付けて急激に剥がし、剥がれたます目の数を数えるクロスカットテストにより行った。なお、スチールウールテストの評価は、以下のように行った。
A:わずかに傷が付くB:多少傷が付く(ハードコートを施したCR−39よりも良好なレベル)
C:多少傷が付く(ハードコートを施したCR−39と同等レベルであり、実用上問題ない境界のレベル)
D:傷が非常に多いE:膜のはがれが生じる。
【0031】
本実施の形態の膜についてクロスカット試験を行った結果、いずれの条件でも膜の剥離は生じなかった。また、スチールウールテストの結果では、投入電力500W未満のものではAランク、500−700WでBランク、800WではCランクとなった。さらに900WのものではEランクとなった。このように投入電力が800W以下の場合には、有機系のハードコート層を設けなくとも、十分な耐擦傷性を得ることができた。
【0032】
次に、本実施の形態により製造した分光エリプソメトリーによる屈折率nと吸収係数kの測定結果を図12〜図16に示す。図12は屈折率を示し、図13〜図16はそれぞれ、顆粒3の表面温度が700℃、600℃、500℃、450℃の場合の吸収係数k(このときの投入電力はそれぞれおおよそ700W、600W、500W、400W)の変化を示す。図13〜図16に示すように、可視域(400〜700nm)での吸収係数kは、顆粒3表面温度450℃の場合でもほぼ0.02以下、それ以外ではいずれも1.6×10−3以下となっており、眼鏡レンズ用低屈折率光学膜として実用可能なレベルとなっている。
【0033】
なお、眼鏡レンズの透過率を向上させるためには顆粒3の表面温度を500℃以上としたほうが望ましいことが分かる。また、屈折率nはいずれの条件で成膜した場合も図12のように1.38程度となった。
【0034】
図4は、本実施の形態の反射防止膜の分光反射率の測定結果を示す。反射率は中心波長で0.8%以下まで低下しており、単層反射防止膜として良好な反射防止特性を有している。顆粒の粒径は0.1mm〜10mmの範囲であれば同様の結果が得られ、何ら問題はなかった。
【0035】
導入するO2ガスの圧力は5×10−2Pa〜5×100Paのいずれの範囲でも、必要な投入電力が多少異なるものの良好な光学特性、耐久性を有する反射防止膜を得ることができた。
【0036】
(比較例1)
MgF2顆粒3の代わりにMgF2焼結体を用いて、実施の形態1と同様の実験を行った結果を図3に示す。Aは表面温度、Bは成膜速度である。焼結体を用いた場合、顆粒の場合と異なり、投入電力を大きくしても加熱されにくいため、温度がほとんど上昇しない。すなわち、通常行われているスパッタリングの状態であり、成膜速度が著しく遅く、実用的でない。例えば投入電力600Wの場合、実施の形態1では光学的膜厚が130nmとなる成膜時間は18秒であったが、比較例1で同じ膜厚を得ようとすると11分を要する。
【0037】
また、比較例1で製造された薄膜は可視域で吸収係数が0.1以上であり、光学的用途で用いることは不可能となっている。さらに、比較例1で製造された薄膜の組成比は、Mg:Fが1:1.5〜1.7であり、Fの量がかなり不足していることが確認された。また、その結晶性はやや高いことが確認された。
【0038】
(比較例2)
この比較例では、広く用いられている真空蒸着法によりMgF2膜を形成した。基板を加熱しない場合、300℃に加熱した場合の2通りの条件で成膜した。どちらの条件の場合も、吸収係数は10−3以下と小さく、膜の組成比はMg:Fが1:1.9〜2.0であった。基板を300℃に加熱した場合、結晶性は高くて耐擦傷性も高く実用レベルとなっているが、合成樹脂製眼鏡レンズ用に成膜した場合、すなわち基板を加熱しない場合、結晶性は低く耐擦傷性がEランクと著しく低いため実用レベルとはならなかった。
【0039】
(実施の形態2)
実施の形態1と同様の装置を用い、ガス導入口9からN2を1×10−1Paまで、ガス導入口10からArを3×10−2Paまで導入した。実施の形態1と比較すると、温度の上昇はやや少なめで、投入電力が500W以上でターゲット表面温度が450℃以上にまで上昇した。投入電力650W、成膜時間21秒で基板上に成膜した結果、膜の分光反射率は図4と全く同じとなった。可視域での光吸収は1%以下で十分実用レベルにあった。実施の形態1と同様の試験を行った結果、クロスカット試験で膜の剥離はなく、スチールウール試験の結果もBランクであった。
【0040】
(実施の形態3及び4)
図17はこの実施の形態に使用する成膜装置を示す。この装置は実施の形態1と同様な構成の真空槽の2槽をゲートバルブ12で仕切って接続している。基板は搬送機構(図示省略)により真空槽1と1′との間を搬送できる。真空槽1では投入電力600Wとし、実施の形態1と同様の方法で成膜した。真空槽1′では、ターゲットとしてTa、Zr等の金属板を用いた。マグネトロンカソードは直流電源13に接続されている。ガス導入口9′からO2を、ガス導入口10′からArを導入して、DC反応性マグネトロンスパッタリング法によりTa2O5、ZrO2等の高屈折率膜を基板2′上に形成する。
【0041】
基板2として有機系のハードコートを施したジエチレングリコールビスアリルカーボネート(CR−39)基板を用い、この基板2上に、真空槽1と1′でそれぞれ所望の膜厚のMgF2、及びTa2O5、ZrO2等を交互に形成することによって反射防止膜を形成し、合成樹脂製眼鏡レンズを作成した。膜構成を表1に、実施の形態3及び4の分光特性をそれぞれ図5及び図6に示す。実施の形態3及び4の反射防止膜は、可視域である波長400〜700nm全域で反射率が0.5%以下であり、極めて優れた特性を有している。またクロスカット試験で膜の剥離はなく、スチールウール試験の結果もBランクと良好となっている。
【0042】
(実施の形態5)
この実施の形態では、実施の形態2と同様の装置を用いた。真空槽1ではターゲットとしてITO(In2O3にSnO2を重量比で5%添加したもの)を用いた。真空槽1では投入電力500Wとし、実施の形態1と同様の方法で成膜した。真空槽1′では、ガス導入口9からO2を、ガス導入口10′からArを導入して、DC反応性マグネトロンスパッタリング法によりITO膜を基板上に形成した。
【0043】
基板2として、有機系のハードコートを施したジエチレングリコールビスアリルカーボネート(CR−39)基板を用い、この基板2上に、真空槽1と1′でそれぞれ所望の膜厚のMgF2、及びITOを交互に形成することによって反射防止膜を形成し、合成樹脂製眼鏡レンズを作成した。膜構成を表1に、分光特性を図7に示す。反射防止膜は図7に示すように、波長420〜700nmで反射率がほぼ0.5%以下であり、極めて優れた特性となっている。本実施の形態では反射防止膜の一部として誘電体ではないITOを使用したため、導電性に優れ、従って、帯電による埃の付着のない眼鏡レンズを得ることができた。またクロスカット試験で膜の剥離はなく、スチールウール試験の結果もBランクと良好となっている。
【0044】
(実施の形態6及び7)
実施の形態2とほぼ同様の装置を用い、反射防止膜付き合成樹脂製眼鏡レンズを作成した。ただし、真空槽1′のカソード5は3個となっている。このカソード5にはTa、Zr、Al等の金属や、ホウ素をドープして導電性を付与したSiなどを使用した。真空槽1では投入電力400Wとし、実施の形態1と同様の方法で成膜した。真空槽1′では、ガス導入口9からO2を、ガス導入口10′からArを導入して、DC反応性スパッタリング法により金属ないしは珪素酸化物膜を基板2上に形成する。
【0045】
基板2としてハードコートを施していないジエチレングリコールビスアリルカーボネート(CR−39)基板を用い、この基板上に、真空槽1と1′でそれぞれ所望の膜厚のMgF2、及び金属ないしは珪素酸化物を交互に形成して反射防止膜を形成し、合成樹脂製眼鏡レンズを作成した。膜構成を表1に、実施の形態6及び7の分光特性をそれぞれ図8,9に示す。実施の形態6及び7の反射防止膜は、波長420〜700nmで反射率が0.5%以下、特に実施の形態7では0.25%以下であり、極めて優れた特性となっている。
【0046】
これらの実施の形態では、反射防止膜各層の膜厚をλ/4(λ=520nm)の倍数だけで構成したため、膜厚制御が容易であり、膜厚のばらつきが少なく、したがって眼鏡レンズ用反射防止膜としては非常に重要な外観色のばらつきも小さくなっている。またクロスカット試験で膜の剥離はなく、スチールウール試験の結果もBランクと良好となっている。
【0047】
(実施の形態8及び9)
有機系のハードコートを施したジエチレングリコールビスアリルカーボネート(CR−39)基板上に、あらかじめ3層の膜を設け、その上に実施の形態1と同様の装置を用いてMgF2膜を成膜し、合計4層の反射防止膜付き眼鏡レンズを作成した。真空槽1では投入電力500Wとし、実施の形態1と同様の方法で成膜した。膜構成を表1に、実施の形態8及び9の分光特性をそれぞれ図10、11に示す。実施の形態8及び9の反射防止膜は、波長420〜700nmで反射率がほぼ1%以下、特に実施の形態9では0.3%以下であり、極めて優れた特性となっている。またクロスカット試験で膜の剥離はなく、スチールウール試験の結果もBランクと良好となっている。
【0048】
【表1】
【0049】
【発明の効果】
本発明によれば、合成樹脂製眼鏡レンズの反射防止膜として好適な、屈折率が低く光吸収のないフッ化物膜をスパッタリング法により高速で形成でき、これにより反射防止膜付き合成樹脂製眼鏡レンズを得ることができる。
【0050】
また本発明によれば、膜強度が高く、屈折率が低く光吸収のないフッ化物膜をスパッタリング法により高速で形成でき、これにより反射防止膜付き合成樹脂製眼鏡レンズを得ることができる。
【0051】
また、さらに本発明によれば、帯電防止効果を有し、汚れの付着しにくい反射防止膜付き合成樹脂製眼鏡レンズを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に用いる成膜装置の断面図である。
【図2】 実施の形態1における顆粒の表面温度と基板への成膜速度との関係を示す特性図である。
【図3】 比較例1における顆粒の表面温度と基板への成膜速度との関係を示す特性図である。
【図4】 本実施の形態1の分光反射率特性図である。
【図5】 本実施の形態3の分光反射率特性図である。
【図6】 本実施の形態4の分光反射率特性図である。
【図7】 本実施の形態5の分光反射率特性図である。
【図8】 本実施の形態6の分光反射率特性図である。
【図9】 本実施の形態7の分光反射率特性図である。
【図10】 本実施の形態8の分光反射率特性図である。
【図11】 本実施の形態9の分光反射率特性図である。
【図12】 本実施の形態1の分光反射率特性図である。
【図13】 本実施の形態1における顆粒の表面温度が700℃の場合の吸収係数の特性図である。
【図14】 本実施の形態1における顆粒の表面温度が600℃の場合の吸収係数の特性図である。
【図15】 本実施の形態1における顆粒の表面温度が500℃の場合の吸収係数の特性図である。
【図16】 本実施の形態1における顆粒の表面温度が450℃の場合の吸収係数の特性図である。
【図17】 本発明に用いる別の成膜装置の断面図である。
【符号の説明】
1 真空槽
2 基板
3 顆粒
4 石英皿
5 カソード
6 マッチングボックス
7 高周波電源
8 冷却水
9 ガス導入口
10 シャッター[0001]
BACKGROUND OF THE INVENTION
The present invention relates to a synthetic resin spectacle lens having an optical thin film, particularly an antireflection film, at high speed by a sputtering method.To the manufacturing methodRelated.
[0002]
[Prior art]
In the case of forming an antireflection film for a synthetic resin spectacle lens, a vacuum deposition method has been often used in view of easiness of the method and a high film formation speed. This antireflection film is generally a multilayer film composed of a combination of a low refractive index layer having a low refractive index of 1.50 or less and a high refractive index layer having a high refractive index of 1.60 or more, or It is composed of a single layer film made of a low refractive index layer. It is widely known that the lower the refractive index layer, the better the antireflection effect can be obtained as the refractive index is lower. For this reason, in the antireflection film on the glass substrate, a stable low refractive index of 1.38 can be obtained by vacuum deposition by heating the substrate temperature to around 300 ° C.2Is produced as a low refractive index layer.
[0003]
On the other hand, when the substrate is a synthetic resin, the substrate temperature cannot be increased due to the characteristics of the substrate. Further, in the film forming method in which the substrate is not heated, since the film hardness is insufficient and the film is easily damaged, the characteristics as in the case of performing heat evaporation cannot be obtained. For example, as disclosed in Japanese Patent Application Laid-Open No. 3-129301, no ion assisted vapor deposition method has been obtained that can withstand practical use. For this reason, in the formation of an antireflection film on a synthetic resin substrate, SiO is used as a low refractive index layer.2Is used. In this publication, SiO2MgF by forming a multilayer film composed of a film mainly composed of2An antireflection film having characteristics equivalent to those of a single layer film is obtained. However, even with this method, MgF having a refractive index of about 1.38.2It is not possible to obtain an antireflection film having a low reflectance such as a multilayer film using MgF.2Is not a solution to the inability to use.
[0004]
Thus, in order to solve the problems of insufficient heat resistance and antireflection effect when the substrate is not heated, JP-A-4-191801 discloses a hard coat containing an organic silicon compound in advance in a synthetic resin spectacle lens. A Ta layer is provided as a high refractive index layer.2O5And TiO2Etc. are formed by oxygen ion beam assisted vapor deposition, and SiO as a low refractive index layer.2Is formed by a normal vacuum deposition method.
[0005]
On the other hand, in recent years, film formation by a sputtering method effective in terms of automation, labor saving, and applicability to a large area substrate has been performed. The thin film formed by this sputtering method has a high film packing density and a high hardness even when the film is formed without heating the substrate, compared to a thin film formed by a normal vacuum deposition method. .
[0006]
However, the sputtering method has the disadvantage that the film formation rate is slower than the vacuum evaporation method, and even if it is a practical level in the case of a metal film, the film formation rate is extremely slow in the case of other films. Industrial spread is delayed. MgF2Sputtering fluoride such as Mg dissociates into Mg and F, and there is a problem that large absorption of visible light occurs due to insufficient F in the film. It was a big obstacle.
[0007]
[Problems to be solved by the invention]
As described above, the antireflection film formed on the synthetic resin spectacle lens has a higher reflectance than the film formed on the glass lens, that is, the antireflection effect is low, and compared with the glass substrate on which heat deposition is performed. Since the film hardness is low, there is a problem that the film is easily scratched. Further, when the antireflection film is composed of only a complete derivative film, the synthetic resin spectacle lens is easily charged, so that it has a problem that it easily becomes dirty due to adhesion of dust or the like.
[0008]
The present invention has been made in view of such problems, and is suitable as an antireflection film for synthetic resin spectacle lenses, and is a fluoride film having high film strength, low refractive index and no light absorption. The object is to provide a method of forming at high speed by sputtering..
[0009]
In order to achieve the above object, the invention of
[0010]
In the conventional sputtering method, when an ion collides with the target, it is necessary to break the interatomic bond in the target and eject the atom from the target, and part of the energy of the accelerated ion breaks the interatomic bond. As a result, the sputtering yield is lowered, and as a result, the film forming speed is lowered. On the other hand, in the present invention, by increasing the temperature of the film raw material, the bonding force is weakened in advance, and in this state the ions collide with the target, so that most of the energy of the accelerated ions is sputtered. Can be used. For this reason, the sputtering yield is increased, and as a result, the film formation rate can be remarkably increased as compared with the conventional method.
[0011]
In addition, in the conventional sputtering method, the interatomic bond is broken and the atoms jump out of the target, whereas in the present invention, by increasing the temperature of the film raw material, a portion having strong and weak bonding force due to thermal vibration. In this case, the form of the particles that jump out becomes a molecule. Here, the molecule includes not only a single molecule but also a multimolecule that forms an aggregate in a cluster shape. And it can be considered that the form of the molecule jumping out of the target is almost the same as the molecule evaporated by heat.
[0012]
In the present invention, by applying an alternating current to the electrode on which the film material is placed, the electrode is set to a negative potential, and the film material is sputtered with positive ions on the same principle as the generally known high-frequency sputtering. Is based. The alternating current referred to here includes a so-called high frequency of 13.56 MHz and a medium frequency of several tens of kHz. In the present invention, since plasma is generated on the electrode by applying an alternating current to the electrode on which the film material is placed for sputtering, the film material can be heated by this plasma. In particular, when the film raw material is granular, it can be easily heated due to poor heat conduction or concentration of an electric field / magnetic field at a large amount of the edge portion.
[0013]
At this time, if the size of the granule is too small, it rises in the vacuum chamber and becomes particles, so that the particle size is preferably 0.1 mm or more, and more preferably 0.5 mm or more. On the other hand, if the granule is too large, the heat insulating effect is reduced, the edge portion is reduced, and the effect due to the concentration of the electric field / magnetic field is reduced. Therefore, the particle size is preferably 10 mm or less, preferably 5 mm or less. The size and shape of the granules are not necessarily uniform.
[0014]
For optical applications, it is generally desirable that the light absorption of the thin film be small. Therefore, when the film raw material has the same composition as the desired thin film, it is preferable that the form of the particles to be ejected is molecular rather than dissociated to be atomic. This is because the dissociated material does not necessarily return to its original state. As a result of earnest research on this, it was found that the shape of the particles that jump out depends on the type of gas introduced during sputtering. Inert gases such as Ar, which are commonly used for sputtering, tend to break up the particles that jump out, while oxygen, nitrogen, hydrogen, and gases containing these make the particles jump out. And jump out in the molecular state. For this reason, in the case of manufacturing an optical thin film, it is particularly preferable to introduce a gas containing at least one of oxygen, nitrogen, or hydrogen.
[0015]
Note that oxygen, nitrogen, hydrogen, and a gas containing these rarely combine with the film raw material only by sputtering the film raw material. Therefore, the optical thin film produced in this way is considered to have almost the same composition as when the film raw material is heated and evaporated to form a film on the substrate.
[0016]
MgF particularly useful as an optical thin film2In the case of sputtering using Si, the film formation rate can be sufficiently increased if the surface temperature of the target is 450 ° C. or higher. On the other hand, when the temperature is 800 ° C. or higher, the vapor pressure of the film material increases to a pressure close to the introduced gas, and the evaporated molecules reach the substrate as they are, and the difference from simple vapor deposition becomes small. In the case of vapor deposition, unlike the case of sputtering, the scratch resistance is low. MgF2In the case of vapor deposition, the scratch resistance is remarkably lowered unless the substrate is heated to about 300 ° C., and it cannot be practically used. However, by keeping the surface temperature of the target at 800 ° C. or less, the scratch resistance is high. A membrane is obtained. In particular, MgF during film formation2By setting the temperature to 500 ° C. or higher, a film with less absorption can be obtained, and by setting the temperature to 700 ° C. or lower, a high-performance antireflection film with higher scratch resistance can be formed. As the gas to be introduced, oxygen or nitrogen is particularly preferable in consideration of economy, availability, safety and the like.
[0017]
The optical thin film produced in this way has a stoichiometric ratio and almost no absorption in the visible region, and its refractive index is about 1.38. Therefore, this optical thin film has a sufficient antireflection effect even with a single layer, and can be used as an antireflection film for spectacle lenses including sunglasses and goggles.
[0018]
In the present invention, since there is no need to heat the substrate, there is no limitation on the material of the synthetic resin spectacle lens that can be applied. Therefore, in addition to diethylene glycol bisallyl carbonate (trade name “CR-39”), it can be applied to any synthetic resin such as polycarbonate resin, polyurethane resin, polystyrene resin, polyvinyl chloride resin, and acrylic resin.
[0019]
The invention according to
[0020]
In the present invention, the antireflection film on the synthetic resin spectacle lens according to
[0021]
According to a third aspect of the present invention, in the second aspect of the present invention, the metal oxide or silicon oxide is mainly composed of one or more of Zr, Ti, Ta, Al, In, Sn, and Si. It is characterized by.
[0022]
In
[0023]
The invention of
[0024]
In this invention, MgF in the invention of
[0025]
DETAILED DESCRIPTION OF THE INVENTION
(Embodiment 1)
FIG. 1 shows a film forming apparatus used in the first embodiment. A
[0026]
Set the
[0027]
Here, by rotating the
[0028]
FIG. 2 is a characteristic diagram showing changes in the surface temperature of the
[0029]
As a result of analyzing the film formed with the input power between 400 W and 800 W by EPMA, the composition ratio of Mg: F is 1: 1.8 to 1.95, and the larger the input power, the larger the amount of F. ing. O introduced as process gas2It was also confirmed that (oxygen) was hardly present in the film. Further, as a result of analysis by FT-IR, in the state of Mg in the film, bonding with F was recognized, but bonding with oxygen was not recognized. Furthermore, as a result of analysis by XRD, the crystallinity was low and no clear peak was observed.
[0030]
Next, the film was subjected to scratch resistance test and adhesion test. Scratch resistance test is 1cm2A steel wool test was performed by rubbing the coated surface with 10 strokes of # 0000 mesh steel wool applied with a load of 1 kg per unit. The adhesion test was performed by forming 11 cutting lines that reach the base material at intervals of 1 mm on the antireflection film with a knife in both vertical and horizontal directions.2100 pieces of Nozama were prepared, and a cellophane tape was affixed thereon to peel off rapidly, and a cross-cut test was performed to count the number of eyes removed. The steel wool test was evaluated as follows.
A: Slightly scratched B: Slightly scratched (better level than CR-39 with hard coat)
C: Slightly scratched (same level as hard-coated CR-39, level at which there is no practical problem)
D: Very many scratches E: Peeling of the film occurs.
[0031]
As a result of performing a cross-cut test on the film of the present embodiment, peeling of the film did not occur under any conditions. Further, as a result of the steel wool test, when the input power was less than 500 W, it was ranked A, 500-700 W was ranked B, and 800 W was ranked C. Furthermore, it became E rank in the thing of 900W. Thus, when the input power was 800 W or less, sufficient scratch resistance could be obtained without providing an organic hard coat layer.
[0032]
Next, measurement results of the refractive index n and the absorption coefficient k by spectroscopic ellipsometry manufactured according to the present embodiment are shown in FIGS. FIG. 12 shows the refractive index, and FIGS. 13 to 16 show the absorption coefficient k when the surface temperature of the
[0033]
It can be seen that the surface temperature of the
[0034]
FIG. 4 shows the measurement result of the spectral reflectance of the antireflection film of the present embodiment. The reflectance is reduced to 0.8% or less at the center wavelength, and it has good antireflection characteristics as a single-layer antireflection film. If the particle size of the granule was in the range of 0.1 mm to 10 mm, similar results were obtained and there was no problem.
[0035]
O to introduce2Gas pressure is 5 × 10-2Pa ~ 5x100In any range of Pa, an antireflection film having good optical characteristics and durability was obtained although required input power was slightly different.
[0036]
(Comparative Example 1)
MgF2MgF instead of
[0037]
In addition, the thin film produced in Comparative Example 1 has an absorption coefficient of 0.1 or more in the visible range, and cannot be used for optical purposes. Furthermore, it was confirmed that the composition ratio of the thin film manufactured in Comparative Example 1 was 1: 1.5 to 1.7 for Mg: F, and the amount of F was considerably insufficient. Moreover, it was confirmed that the crystallinity is slightly high.
[0038]
(Comparative Example 2)
In this comparative example, MgF is used by a widely used vacuum deposition method.2A film was formed. When the substrate was not heated, the film was formed under two conditions when heated to 300 ° C. Under either condition, the absorption coefficient is 10-3The composition ratio of the film was as follows: Mg: F was 1: 1.9 to 2.0. When the substrate is heated to 300 ° C., the crystallinity is high and the scratch resistance is high, which is a practical level. However, when the film is formed for a synthetic resin spectacle lens, that is, when the substrate is not heated, the crystallinity is low. Since the scratch resistance was remarkably low as E rank, it did not become a practical level.
[0039]
(Embodiment 2)
Using the same apparatus as in the first embodiment, N is introduced from the gas inlet 9.21 × 10-1Up to Pa,
[0040]
(
FIG. 17 shows a film forming apparatus used in this embodiment. In this apparatus, two vacuum tanks having the same configuration as in the first embodiment are partitioned and connected by a
[0041]
A diethylene glycol bisallyl carbonate (CR-39) substrate provided with an organic hard coat was used as the
[0042]
(Embodiment 5)
In this embodiment, an apparatus similar to that of the second embodiment is used. In the
[0043]
As the
[0044]
(
A synthetic resin spectacle lens with an antireflection film was prepared using an apparatus substantially the same as in the second embodiment. However, there are three
[0045]
A diethylene glycol bisallyl carbonate (CR-39) substrate without hard coating is used as the
[0046]
In these embodiments, since the film thickness of each layer of the antireflection film is constituted only by a multiple of λ / 4 (λ = 520 nm), the film thickness can be easily controlled, and there is little variation in film thickness. The variation in appearance color, which is very important as a prevention film, is also reduced. Moreover, there was no peeling of the film in the crosscut test, and the result of the steel wool test was also B rank.
[0047]
(
A three-layer film is provided in advance on a diethylene glycol bisallyl carbonate (CR-39) substrate provided with an organic hard coat, and MgF is formed thereon using the same apparatus as in the first embodiment.2A film was formed, and a total of four spectacle lenses with an antireflection film were prepared. In the
[0048]
[Table 1]
[0049]
【The invention's effect】
According to the present invention, a fluoride film having a low refractive index and no light absorption, which is suitable as an antireflection film for a synthetic resin spectacle lens, can be formed at a high speed by a sputtering method, whereby a synthetic resin spectacle lens with an antireflection film is provided. Can be obtained.
[0050]
Further, according to the present invention, a fluoride film having a high film strength, a low refractive index and no light absorption can be formed at high speed by a sputtering method, whereby a synthetic resin spectacle lens with an antireflection film can be obtained.
[0051]
Furthermore, according to the present invention, it is possible to obtain a synthetic resin spectacle lens with an antireflection film that has an antistatic effect and is difficult to adhere to dirt.
[Brief description of the drawings]
FIG. 1 is a cross-sectional view of a film forming apparatus used in the present invention.
FIG. 2 is a characteristic diagram showing the relationship between the granule surface temperature and the film formation rate on the substrate in the first embodiment.
3 is a characteristic diagram showing the relationship between the surface temperature of granules and the film formation rate on a substrate in Comparative Example 1. FIG.
FIG. 4 is a spectral reflectance characteristic diagram of the first embodiment.
FIG. 5 is a spectral reflectance characteristic diagram of the third embodiment.
FIG. 6 is a spectral reflectance characteristic diagram of the fourth embodiment.
FIG. 7 is a spectral reflectance characteristic diagram of the fifth embodiment.
FIG. 8 is a spectral reflectance characteristic diagram of the sixth embodiment.
FIG. 9 is a spectral reflectance characteristic diagram of the seventh embodiment.
FIG. 10 is a spectral reflectance characteristic diagram of the eighth embodiment.
FIG. 11 is a spectral reflectance characteristic diagram of the ninth embodiment.
FIG. 12 is a spectral reflectance characteristic diagram of the first embodiment.
FIG. 13 is a characteristic diagram of an absorption coefficient when the granule surface temperature is 700 ° C. in the first embodiment.
14 is a characteristic diagram of an absorption coefficient when the granule surface temperature is 600 ° C. in
FIG. 15 is a characteristic diagram of an absorption coefficient when the surface temperature of the granule in
FIG. 16 is a characteristic diagram of the absorption coefficient when the granule surface temperature in the first embodiment is 450 ° C.
FIG. 17 is a cross-sectional view of another film forming apparatus used in the present invention.
[Explanation of symbols]
1 Vacuum chamber
2 Substrate
3 granules
4 Quartz dishes
5 Cathode
6 Matching box
7 High frequency power supply
8 Cooling water
9 Gas inlet
10 Shutter
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