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JP4059050B2 - 冷延鋼板製造用母板、高強度高延性冷延鋼板およびそれらの製造方法 - Google Patents

冷延鋼板製造用母板、高強度高延性冷延鋼板およびそれらの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車用高強度冷延鋼板に係り、とくに、延性、伸びフランジ性に優れた高強度冷延鋼板に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、地球環境の保全という観点から、自動車の燃費改善が要求されている。さらに加えて、衝突時に乗員を保護するため、自動車車体の安全性向上も要求されている。このようなことから、自動車車体の軽量化および自動車車体の強化が積極的に進められている。自動車車体の軽量化と強化を同時に満足させるには、部品素材を高強度化することが効果的であるといわれており、最近では高強度鋼板が自動車部品に積極的に使用されている。
【0003】
鋼板を素材とする自動車部品の多くがプレス加工によって加工されるため、自動車部品用鋼板には優れたプレス成形性が要求される。優れたプレス成形性を実現するには、高い延性と高い伸びフランジ性を確保することが肝要である。
延性に優れる高強度鋼板としては、フェライトとマルテンサイトの複合組織を有する二相組織鋼板(いわゆる、Dual Phase鋼:DP鋼)が開発されている。このような二相組織鋼板は、降伏点伸びがないこと、降伏比が低いこと、強度・伸びバランスが固溶強化型鋼板や析出強化型鋼板よりも優れていることが知られている。
【0004】
また、強度と延性を兼備した鋼板を得るために、残留オーステナイトによる変態誘起塑性(Transformation Induced Plasticity :TRIP)を利用した鋼板(TRIP鋼)が考えられている。例えば、特許文献1には、残留オーステナイトを含有する延性の良好な高強度鋼板の製造方法が提案されている。特許文献1に記載された高強度鋼板の製造方法は、C:0.10〜0.45%を含み、Si,Mn,Al,N含有量を調整した鋼に、熱延・巻取り後、直接または一旦冷却したのち550 〜Ac1の温度域での1次焼鈍と、冷延後の(Ac3−80℃)〜Ac3の温度域での2次焼鈍とを行ったのち、350 〜550 ℃の温度域までの冷却と、その温度域での時効を行い、適量の残留オーステナイトを含む複合組織を得て、強度・伸びバランスを向上させるというものである。
【0005】
また、特許文献2および特許文献3にも、フェライト、ベイナイトおよび残留オーステナイトを含む複合組織を有するTRIP鋼板の製造方法が提案されている。
【0006】
【特許文献1】
特開昭62−182224号公報
【特許文献2 】
特公平5−64215 号公報
【特許文献3 】
特開平4−333524号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、DP鋼やTRIP鋼などの複合組織鋼板は一般的に伸びフランジ性が劣るといわれており、特許文献1に記載された技術で製造された高強度鋼板、あるいは特許文献2、特許文献3に記載された技術で製造された鋼板では、伸びフランジ性に劣るという問題があった。
【0008】
そして、引張強さとTSと穴拡げ率λとの積、TS×λが60000MPa%以上の高い強度−穴拡げ率バランスを有する鋼板は得られなかった。
本発明では、残留オーステナイト相を含有し、延性に優れ、高い強度−延性バランスを有する鋼板であって、かつ、伸びフランジ性に優れ、TS×λが60000MPa%以上という高い強度−穴拡げ率バランスを有する高強度高延性冷延鋼板および高強度高延性冷延鋼板製造用母板ならびにそれらの製造方法を提案することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記した課題を達成するため、冷延鋼板の延性(伸び)、伸びフランジ性に影響する要因について鋭意検討した。その結果、鋼素材を加熱し、熱間圧延終了後、急冷し、低温巻取りを行い、組織をベイナイト、マルテンサイト主体の組織とした熱延板とし、ついで該熱延板に550 〜700 ℃の温度範囲に再加熱し、1〜30h間保持し、セメンタイトを球状化させる再加熱処理を施し冷延鋼板製造用母板としたのち、該母板に冷間圧延、連続焼鈍を施すことにより、残留オーステナイトおよび低温変態相からなる第2相の平均粒径が3μm以下と微細になり、伸びフランジ性が向上し、さらに、残留オーステナイト中のC濃度が高くなり延性が向上した冷延鋼板が得られ、従来のTRIP鋼を凌ぐ、高い伸び、伸びフランジ性を有する冷延鋼板が得られることを見出した。
【0010】
本発明は、上記した知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。
すなわち、本発明の要旨はつぎのとおりである。
(1)質量%で、C:0.05〜0.40%、Si:0.5 〜3.0 %、Mn:0.5 〜3.0 %、P:0.050 %以下、Al:0.01〜0.30%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成と、フェライト相およびセメンタイト相とからなる組織を有し、かつ前記セメンタイト相の平均粒径が0.3 〜1.0 μmであることを特徴とする高強度高延性冷延鋼板製造用母板。
(2)(1)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ti:0.25%以下、Nb:0.1 %以下のうちの1種または2種を含有する組成とすることを特徴とする高強度高延性冷延鋼板製造用母板。
(3)(1)または(2)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca、REM のうちの1種または2種を合計で0.0100%以下含有する組成とすることを特徴とする高強度高延性冷延鋼板製造用母板。
(4)質量%で、C:0.05〜0.40%、Si:0.5 〜3.0 %、Mn:0.5 〜3.0 %、P:0.050 %以下、Al:0.01〜0.30%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成の鋼素材に、熱間圧延を施し熱延板とし、冷却速度:30℃/s以上で500 ℃以下まで冷却してから該熱延板を巻取る熱延工程と、該熱延板を再加熱し550 〜700 ℃の温度範囲で10〜30h保持する再加熱工程と、を順次施すことを特徴とする高強度高延性冷延鋼板製造用母板の製造方法。
(5)(4)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ti:0.25%以下、Nb:0.1 %以下のうちの1種または2種を含有する組成とすることを特徴とする高強度高延性冷延鋼板製造用母板の製造方法。
(6)(4)または(5)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca、REM のうちの1種または2種を合計で0.0100%以下含有する組成とすることを特徴とする高強度高延性冷延鋼板製造用母板の製造方法。
(7)(1)に記載の高強度高延性冷延鋼板製造用母板に、冷間圧延、連続焼鈍を順次施して製造された高強度高延性冷延鋼板であって、質量%で、C:0.05〜0.40%、Si:0.5 〜3.0 %、Mn:0.5 〜3.0 %、P:0.050 %以下、Al:0.01〜0.30%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成と、フェライト相を主相とし、鋼板全体に対する体積率で4%以上の残留オーステナイト相を含みさらに低温変態相を含む相を第2相とする複合組織を有し、前記第2相の平均粒径が3μm以下であり、かつ前記残留オーステナイト相の含有量Vγ、固溶C量Cγ、平均結晶粒径dγが、 次(1)式
Vγ×Cγ/dγ≧6 ………(1)
(ここで、Vγ:残留オーステナイト相の含有量(体積%)、Cγ:残留オーステナイト相中の固溶C量(質量%)、dγ:残留オーステナイト相の平均結晶粒径(μm))
を満足することを特徴とする高強度高延性冷延鋼板。
(8)(7)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ti:0.25%以下、Nb:0.1 %以下のうちの1種または2種を含有する組成とすることを特徴とする高強度高延性冷延鋼板。
(9)(7)または(8)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca、REM のうちの1種または2種を合計で0.0100%以下含有する組成とすることを特徴とする高強度高延性冷延鋼板。
(10)質量%で、C:0.05〜0.40%、Si:0.5 〜3.0 %、Mn:0.5 〜3.0 %、P:0.050 %以下、Al:0.01〜0.30%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成の鋼素材に、熱間圧延を施し熱延板とし、冷却速度:30℃/s以上で500 ℃以下まで冷却してから該熱延板を巻取る熱延工程と、該熱延板を再加熱し550 〜700 ℃の温度範囲で10〜30h保持する再加熱工程と、該再加熱工程を経た熱延板に冷間圧延を施し冷延板とする冷延工程と、該冷延板にAc1変態点以上850 ℃以下の温度で20〜200s保持する加熱処理を施したのち、該加熱処理の保持温度から、10℃/s以上の冷却速度で350 〜500 ℃の温度域に冷却し、該温度域に10〜600s保持した後室温まで冷却する連続焼鈍工程と、を順次施すことを特徴とする高強度高延性冷延鋼板の製造方法。
(11)(10)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ti:0.25%以下、Nb:0.1 %以下のうちの1種または2種を含有する組成とすることを特徴とする高強度高延性冷延鋼板の製造方法。
(12)(10)または(11)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca、REM のうちの1種または2種を合計で0.0100%以下含有する組成とすることを特徴とする高強度高延性冷延鋼板の製造方法。
【0011】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の冷延鋼板の組成限定理由について説明する。以下、組成における質量%は、単に%と記す。
C:0.05〜0.40%
Cは、鋼の強化に有効に寄与するだけでなく、残留オーステナイトの生成に寄与する有効な元素である。このような効果を得るためには、0.05%以上の含有を必要とする。一方、0.40%を超える含有は、延性を低下させる。このため、本発明では、Cは0.05〜0.40%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.10〜0.25%である。
【0012】
Si:0.5 〜3.0 %
Siは、固溶強化により鋼を強化するとともに、オーステナイトを安定化し、残留オーステナイト相の生成を促進する作用を有する元素である。このような作用は、0.5 %以上の含有で認められる。一方、3.0 %を超えて含有すると、延性の低下を招くだけでなく、スケール性状を低下させ表面品質を低下させる傾向となる。このため、Siは0.5 〜3.0 %の範囲に限定した。好ましくは1.0 〜2.5 %である。
【0013】
Mn:0.5 〜3.0 %
Mnは、固溶強化により鋼を強化するとともに、残留オーステナイトの生成を促進する作用を有する元素である。このような効果は、0.5 %以上のMn含有で認められる。一方、3.0 %を超えて含有しても効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できなくなり経済上不利となる。このため、Mnは0.5 〜3.0 %の範囲に限定した。好ましくは1.0 〜2.0 %である。
【0014】
P:0.050 %以下
Pは、固溶強化により鋼を強化する元素であり、高強度鋼板を得るのに有効である。しかし、0.050 %を超えて含有すると、スポット溶接性を低下させる。このため、本発明では、Pは0.050 %以下に限定した。なお、好ましくは、0.020 %以下である。
【0015】
Al:0.01〜0.3 %
Alは、脱酸剤として作用する元素であり、そのためには少なくとも0.01%の含有を必要とするが、0.3 %を超えて含有してもその効果は飽和するうえ、むしろコスト面での不利が著しくなるため、Alは0.01〜0.3 %の範囲に限定した。
以上の基本成分に加えて、本発明では、必要に応じ、強度改善成分としてのTiやNb、加工性改善成分としてのCaやREM を、以下に示す範囲で適宜含有させることができる。
【0016】
Ti:0.25%以下、Nb:0.1 %以下のうちの1種または2種
Ti、Nbは、いずれも、強度の向上に寄与する元素であり、必要に応じて選択して含有することができる。このような効果を得るためには、Ti:0.005 %以上、Nb:0.003 %以上含有することが好ましい。一方、Ti:0.25%、Nb:0.1 %を超える過度の含有は延性の低下を招く。このため、含有する場合にはTi:0.25%、Nb:0.1 %を上限とする。また、Ti、Nbは、中炭炭素鋼の熱間圧延時に発生しやすいエッジ部での粒界割れを防止するうえでも有効である。
【0017】
Ca、REM のうちの1種または2種を合計で0.0100%以下
Ca、REM は、硫化物系介在物の形態を制御する作用を有し、加工性とくに伸びフランジ性の向上に有効に寄与する元素であり、必要に応じ選択して含有することができる。このような効果は、Ca、REM のうちの1種または2種を合計で、0.0010%以上の含有で認められるが、0.0100%を超えて含有しても、効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できなくなる。このため、Ca、REM のうちの1種または2種を合計で0.0100%を上限として含有してもよく、0.0010〜0.0100%の範囲とすることが好ましい。なお、より好ましくは0.001 〜0.005 %である。
【0018】
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。
なお、不可避的不純物としてのSは、鋼中ではMnS 等の介在物(硫化物)を形成し、延性とくに、伸びフランジ性を低下させる元素であり、できるだけ低減することが好ましい。このため、Sの含有量は0.005 %以下とすることが好ましい。なお、より好ましくは0.003 %以下である。
【0019】
つぎに、本発明の冷延鋼板の組織限定理由について説明する。
本発明の冷延鋼板は、フェライトを主相とし、鋼板全体に対する体積率で4%以上の残留オーステナイトを含みさらに低温変態相を含む相を第2相とする複合組織を有する鋼板である。
主相であるフェライト相は、炭化物を含まない軟質な相であり高い変形能を有し、鋼板の延性を向上させる。このため、本発明では、このようなフェライトを体積率で50%以上含有させる。フェライトが50%未満では顕著な延性向上効果が期待できない。なお、より好ましくは70%以上である。
【0020】
本発明では、第2相は平均粒径を3.0 μm以下である必要がある。第2相の平均粒径が3.0 μmを超えて大きくなると伸びフランジ性が低下し、強度−伸びフランジ性バランスの指標である引張強さTS×穴拡げ率λ(MPa %)の値が低下する。
なお、本発明で言う第2相とは、残留オーステナイトと低温変態相からなる相のことを言う。本発明者らは、微細に分散した球状化セメンタイトを逆変態させてオーステナイトとし、このオーステナイトを冷却・過時効処理により第2相とした場合、得られる第2相は平均粒径3μm以下の微細なものとなり、このような微細な第2相を有する鋼板は非常に良好な強度−伸びフランジ性バランスを示す。
【0021】
図1に第2相の平均粒径(μm)とTS×λ(MPa %)との相関を示す。ここで、図1中のデータは、詳細は後述する表3−1、表3−2中、鋼組成が上記した範囲内にあり、かつ、残留オーステナイト量が上記した範囲内にあるもの(鋼板No. 3、15、16、19、20、23、26、27、3〜 37 を除外したもの) についてのデータであり、図1中の○印は冷延鋼板製造用母板(以下、単に冷延母板ともいう)の組織がフェライトと平均粒径0.3 〜1.0 μmのセメンタイトからなる組織である場合を、●印は他の組織である場合を示す。図1から、冷延母板、すなわち、冷延・焼鈍前の組織がフェライトと平均粒径0.3 〜1.0 μmのセメンタイトとからなる組織である場合、第2相の平均粒径が3μm以下となり、第2相の平均粒径が3μm以下であると高いTS×λが得られることが分かる。このため、本発明では第2相の平均粒径を3.0 μm以下に限定した。
【0022】
第2相を構成する一つの相である、残留オーステナイト相は、加工時にマルテンサイトに歪誘起変態し、局所的に加えられた加工歪を広く分散させ、鋼板の延性を向上させる。このため、本発明では、このような残留オーステナイト相を体積率で4%以上含有させる。残留オーステナイト量が4%未満では顕著な延性の向上が期待できない。なお、残留オーステナイトの含有量の上限は、本発明の組成範囲では15%程度である。さらに、同一の残留オーステナイト量である場合においても、冷延・焼鈍前、すなわち、冷延母板の組織がフェライトと平均粒径0.3 〜1.0 μmのセメンタイトとからなる場合には、他の組織である場合に比較して、強度−延性バランスの指標である引張強さTS(MPa )×伸びEl(%)の値が高くなることがわかった。
【0023】
図2に残留オーステナイト量(体積%)とTS×El(MPa %)との関係を示す。図2から、残留オーステナイトの量が多くなるに従ってTS×Elの値が大きくなる傾向があり、さらに、冷延母板の組織がフェライトと平均粒径0.3 〜1.0 μmのセメンタイトとからなる組織である場合(図2中の○印)は、他の組織である場合(図2中の△印)に比べてTS×Elの値が高いことがわかる。
【0024】
しかし、冷延鋼板中の残留オーステナイト量が同量である場合でも、TS×Elの値にばらつきが生じている。その原因について考察した結果、TS×Elの値は残留オーステナイトの粒径、残留オーステナイト中のC濃度にも影響されるであろうことに想到した。
そこで、残留オーステナイト相の粒径dγ(μm)が小さい方が高TS、高Elとなり、残留オーステナイト中のC濃度Cγ(wt%)が大きい方が、残留オーステナイト相が安定化して高Elとなり、結果としてTS×Elの値が大きくなるという考えのもとに、残留オーステナイト相の含有量Vγ(体積%)、残留オーステナイト相中の固溶C量Cγ(質量%)、残留オーステナイト相の平均結晶粒径dγ(μm)から求められるVγ×Cγ/dγを指標としてTS×Elを整理した。図3にその結果を示す。
【0025】
図3から、残留オーステナイト量Vγがいずれの値でも、Vγ×Cγ/dγの値が上昇するにしたがいTS×Elが上昇するという強い相関がある。TS×Elが27000MPa%以上という高い値を示した冷延鋼板は、Vγ×Cγ/dγの値が6以上となっており、この値が6未満ではTS×Elが急激に低下することがわかる。なお、図2、図3中のデータは、詳細は後述する表3−1、表3−2中、鋼組成が上記した範囲内にあり、かつ、残留オーステナイト量が上記した範囲内にあるもの(鋼板No. 3、15、16、19、20、23、26、27、3〜37を除外したもの)についてのデータである。
【0026】
以上の知見に基づき、本発明における残留オーステナイト相は、 上記した含有量範囲で、かつ残留オーステナイト相の含有量Vγ、固溶C量Cγ、平均結晶粒径dγが、 次(1)式
Vγ×Cγ/dγ≧6 ………(1)
(ここで、Vγ:残留オーステナイト相の含有量(体積%)、Cγ:残留オーステナイト相中の固溶C量(質量%)、dγ:残留オーステナイト相の平均結晶粒径(μm))を満足する。Vγ、Cγ、dγが(1)式を満足しない場合には、伸び特性が低下する。このため、伸び特性向上のために残留オーステナイト相の含有量Vγ、固溶C量Cγ、平均結晶粒径dγを(1)式を満足するように限定した。より高い強度−延性バランスを得るためには、Vγ×Cγ/dγは7以上とすることが好ましい。
【0027】
また、本発明の冷延鋼板では、第2相を構成する他の相として、低温変態相を含む。本発明でいう低温変態相は、べイナイト、あるいは、マルテンサイトとベイナイトとの混合組織を指す。マルテンサイト、ベイナイトとも硬質相であり、組織強化によって鋼板強度を増加させる作用を有する。また、低温変態相は、生成時に可動転位の発生を伴うため、鋼板の降伏比を低下させる作用も有する。なお、本発明では、低温変態相の含有量は特に限定せず、鋼板の強度に応じて適宜配分すればよい。引張強さ:780MPa級の冷延鋼板では低温変態相は20〜30%程度とすることが好ましい。
【0028】
上記したような組成、組織を有する本発明の冷延鋼板は、引張強さTSと穴拡げ率λとの積、TS×λ、が60000MPa%以上を有する冷延鋼板である。TS×λが60000MPa%未満では前記した従来技術により得られるTRIP鋼と同レベルの強度−穴拡げ率バランスであり、高強度化した場合には伸びフランジ性が十分ではなく、伸びフランジ性を向上させた場合には高強度化が達成できないからである。また、強度−延性バランスにも優れている方が厳しい成形加工が施される高強度の部材への成形に有利であり、本発明の冷延鋼板は、引張強さTSと伸びElとの積、TS×Elが27000MPa%以上を有する冷延鋼板となる。
【0029】
つぎに、本発明の高強度高延性冷延鋼板の製造方法について説明する。
まず、上記した組成を有する溶鋼を転炉等の通常公知の溶製方法で溶製したのち、連続鋳造法、造塊法等の通常の公知の方法で鋼素材とする。
ついで、上記した組成の鋼素材に、熱延工程と再加熱工程とを順次施して冷延鋼板製造用母板とする。得られた母板にさらに冷延工程と連続焼鈍工程とを順次施して、冷延鋼板とする。
【0030】
まず、冷延鋼板製造用母板の製造方法について説明する。
冷延鋼板製造用母板の製造方法においてはまず、上記した組成の鋼素材を加熱し、熱間圧延を施し熱延板とする熱延工程を施す。
熱間圧延は、通常公知の方法で所望の寸法形状が確保できればよく、特に限定されない。熱間圧延終了後、熱延板は、30℃/s以上の冷却速度で500 ℃以下まで冷却(急冷)してから低温で巻き取られ、熱延コイル(熱延板)とされる。
【0031】
通常、熱延後放冷する熱延ままの状態では、熱延板の組織はフェライト+パーライトあるいはフェライト+ベイナイトとなっている。このような組織では、冷延後焼鈍に際し、加熱時にフェライト粒界から優先的にオーステナイトへの逆変態が起こるため、最終的に得られる第2相が粗大でかつ不均一分布となりやすい。本発明では、熱延後30℃/s以上の冷却速度で500 ℃以下まで急冷し500 ℃以下の低温で巻取り、熱延板の組織をベイナイトあるいはマルテンサイト主体の組織とする。
【0032】
熱延後の冷却速度が30℃/s未満では、冷却中にポリゴナルフェライトの生成量が多くなり、熱延板の組織をベイナイトあるいはマルテンサイト主体の組織とすることができない。また、熱延板の巻取り温度が、500 ℃を超えると、その後の冷却でオーステナイトがパーライトに変態し、熱延板の組織をベイナイトあるいはマルテンサイト主体の組織とすることができない。
【0033】
なお、巻取り温度がマルテンサイト変態点以上である場合には、巻取後に後述する再加熱工程までの間を10min 以上とすることが、ベイナイト相を生成させるために好ましい。
本発明の冷延鋼板製造用母板の製造方法においては、熱延板の組織をベイナイトあるいはマルテンサイト主体の組織とする熱延工程に続いて、さらに熱延板を再加熱し550 〜700 ℃の温度範囲で10〜30h保持する再加熱工程を施す。
【0034】
この再加熱工程により、球状化セメンタイトが均一微細に分散する組織が得られる。熱延板の組織をベイナイトあるいはマルテンサイト主体の組織とすることにより、多くの転位が導入される。このような組織を有する熱延板を再加熱し、550 〜700 ℃の温度で保持することにより、セメンタイトが球状化し均一微細に分散した組織となる。セメンタイトの球状化は転位上で優先的に起こりやすいため、多くの転位が導入されるベイナイトあるいはマルテンサイト主体の組織を再加熱することにより、球状化セメンタイトを均一微細に分散させることができる。このような球状化セメントは、冷延後の焼鈍時に溶解し、C濃度の高くなっているところで優先的にオーステナイトへの逆変態が起こり、最終的に得られる第2相が平均粒径3μm以下と均一微細になり、伸びフランジ性が向上すると考えられる。
【0035】
また、最終的に得られる残留オーステナイト相中のC量が多くなるとともに、残留オーステナイト相の結晶粒径も微細となり、これにより残留オーステナイト相が安定化し、高延性にも寄与する。
再加熱工程における加熱温度が550 ℃未満では、セメンタイトの球状化が十分に起こらない。また、700 ℃を超えると、セメンタイトの粗大化が起こったり、フェライト+オーステナイト二相域となり、セメンタイトが再固溶する。このため、伸びフランジ性向上に寄与し、ひいてはTS×λが60000MPa%以上を達成するための微細な第2相を、冷延板の焼鈍後に得られなくなる。このようなことから、再加熱温度は550 〜700 ℃の範囲に限定することが好ましい。また、保持時間が10h未満では、セメンタイトの生成が不充分となって固溶C量が高い残留オーステナイトの生成に寄与する程度のセメンタイトが得られない。一方、30hを超えると、球状化セメンタイトが粗大になり、その後の冷延後焼鈍時にセメンタイトが完全に固溶しにくくなる。このため、再加熱工程の加熱温度における保持時間を10〜30hに限定することが好ましい。
【0036】
かくして得られた熱延板(冷延鋼板製造用母板)は、フェライト相およびセメンタイト相とからなり、かつセメンタイト相の平均粒径が0.3 〜1.0 μmである球状化セメンタイト組織を有する熱延板となる。このような組織を有する熱延板を冷延鋼板製造用母板として、冷延・焼鈍を行うことで上記した(1)式の関係を満たす冷延鋼板が得られる。セメンタイト相の平均粒径が0.3 μm未満ではその後の連続焼鈍工程でCの濃縮部が残留せず、残留オーステナイト相の固溶C量が低下する。一方、3.0 μmを超えて大きくなると、その後の連続焼鈍工程でセメンタイト相が完全に固溶できなくなり、あるいは最終的に生成する第2相が粗大化する。なお、本発明の冷延鋼板製造用母板では、フェライト相とセメンタイト相とからなる組織を有していれば、フェライトの量(分率)は上記した鋼組成で生成し得る範囲では、どの程度であってもよいので、特に限定しない。
【0037】
得られた熱延板(冷延鋼板製造用母板)は、ついで、冷延工程と連続焼鈍工程とを順次施されて冷延板(冷延鋼板)とされる。
再加熱工程を経た熱延板(冷延鋼板製造用母板)は、ついで、冷間圧延を施し冷延板とする冷延工程を施される。冷間圧延条件については、所望の寸法形状の冷延板とすることができればよく、とくに限定されない。
【0038】
ついで冷延板は、連続焼鈍工程を施される。
冷延板は、まず、連続焼鈍ラインで、Ac1変態点以上850 ℃以下の温度で20〜200s保持する加熱処理を施される。
加熱処理前の組織を球状化セメンタイトを含む組織とすることにより、この加熱処理により、球状化したセメンタイトが溶解し、C濃度の高くなっているところで優先的にオーステナイトへの逆変態が起こり、非平衡でC濃度の高いオーステナイトが生成し、残留オーステナイトの生成に有利に働くと考えられる。そして、この非平衡で生成するC濃度の高いオーステナイトが最終的に残留オーステナイトとして鋼中に存在することで、高い延性が得られ、27000MPa%以上のTS×Elも可能となる。これに対し、加熱処理前の組織が、フェライト+パーライトあるいはフェライト+ベイナイト組織では、この加熱処理に際して、フェライト粒界から優先的にオーステナイトへの逆変態が起こるが、フェライト粒界での逆変態により生成するオーステナイト中のC濃度はほぼ平衡濃度に近い値となる。
【0039】
加熱処理温度がAC1変態点未満では、α+γの2相域に加熱されず、最終的に残留オーステナイト相が生成せず、TRIP効果の発現が認められなる。一方、加熱処理温度が850 ℃を超えて高くなると、オーステナイト粒が粗大化し、球状化セメンタイトを均一微細に分散させた効果がなくなる。このため、加熱処理温度はAc1変態点以上850 ℃以下とすることが好ましい。
【0040】
また、加熱処理の保持時間が、20s 未満では、オーステナイト(γ)への逆変態が不十分となる。一方、保持時間が200sを超えて長くなると、オーステナイト中に非平衡に濃化したCが拡散し、オーステナイト中の固溶C量が平衡量まで減少してしまう。
加熱処理後、ついで、加熱処理の保持温度から、10℃/s以上の冷却速度で350 〜500 ℃の温度域に冷却(急冷)する。冷却速度が、10℃/s未満では、オーステナイトがパーライトもしくはベイナイトに変態し、オーステナイトの残留が認められなくなり、TRIP効果の発現が得られなくなる。なお、冷却速度は、鋼板形状に影響を与えない範囲の、100 ℃/s以下とすることがより好ましい。
【0041】
また、急冷の終了温度が350 ℃未満では、オーステナイトがマルテンサイトに変態し、所望の残留オーステナイト量が確保できなくなる。一方、急冷の終了温度が500 ℃を超えて高くなると、オーステナイトのほとんどがパーライトもしくはベイナイトに変態し、所望の残留オーステナイト量が確保できなくなり、TRIP効果の発現が期待できなくなる。なお、より好ましい急冷終了温度の範囲は370 〜450 ℃である。
【0042】
350 〜500 ℃の温度域に急冷された冷延板は、ついで、350 〜500 ℃の温度域に10〜600s保持する過時効処理が施されたのち室温まで冷却される。350 〜500 ℃の温度域に保持される時間が10s 未満では、保持時間が短時間すぎて、殆どのオーステナイトは350 ℃未満の温度域に到達するとマルテンサイトに変態し、残留オーステナイト量が少なくなり、プレス成形時にTRIP効果の発現が期待できなくなる。一方、保持時間が、600sを超える長時間となると、ベイナイト変態の過度の進行により、残留オーステナイト量が減少する。
【0043】
次に、本発明について、さらに実施例により詳細に説明する。
【0044】
【実施例】
表1に示す組成の溶鋼を転炉で溶製し、連続鋳造法で鋳片(スラブ)とした。得られた鋳片(スラブ)を鋼素材として、熱間圧延により板厚3.0 mmの熱延板とし、熱間圧延終了後、表2に示す冷却速度で急冷停止温度まで急冷したのち、表2に示す巻取り温度でコイル状に巻取りし、室温まで冷却する熱延工程を施した。その後、熱延板(熱延コイル)を表2に示す温度、保持時間の条件で再加熱する再加熱工程を施し、冷延鋼板製造用母板とした。
【0045】
得られた冷延鋼板製造用母板について、ミクロ組織を調査した。ミクロ組織の調査は、得られた冷延鋼板製造用母板から、試験片を採取し、圧延方向断面について光学顕微鏡あるいは走査型電子顕微鏡で組織を観察し、画像解析装置をもちいて、組織の同定およびセメンタイト相の平均粒径を求めた。得られた結果を表2に併記した。
【0046】
次いで冷延鋼板製造用母板(熱延板)を酸洗した後、冷間圧延により板厚1.4 mmの冷延板とする冷延工程を施した。
次いで、これら冷延板に、連続焼鈍ラインにて、連続焼鈍工程を施した。 連続焼鈍工程では、まず、表2に示す条件で加熱処理を施した後、表2に示す条件の急冷および350 〜500 ℃の温度域での保持を施し、その後室温まで冷却し、冷延焼鈍板とした。
【0047】
得られた冷延鋼板について、ミクロ組織、引張特性、穴拡げ性を調査した。
(1)ミクロ組織
鋼板のミクロ組織は、得られた冷延鋼板から、試験片を採取し、圧延方向断面について光学顕微鏡あるいは走査型電子顕微鏡で組織を観察し、画像解析装置をもちいて、組織の同定および各組織の組織分率、平均粒径を求めた。
【0048】
なお、残留オーステナイト相の含有量は、鋼板を板厚方向の中心面まで研磨し、板厚中心面での回析X線強度測定により求めた。入射X線にはMoK α線を使用し、フェライト相の{110 }、{200 }、{211 }の各面の回析X線強度に対する、残留オーステナイト相の{111 }、{200 }、{220 }、{311 }各面の回析X線強度比をもとめ、これらの平均値を残留オーステナイト相の体積率とした。
【0049】
また、残留オーステナイト相の平均粒径は、EBSP(Electron Back Scattering Pattern)装置を用いて、倍率5000倍で視野数:10で撮像し、 得られた像から画像解析装置を用いて、オーステナイト粒の平均面積を測定して、得られた平均面積からオーステナイト粒の円相当径を換算し、平均粒径とした。
また、残留オーステナイト相の固溶C量は、回析X線強度測定により求めた残留オーステナイト相の(200 )面のピーク角度θを求め、次式
a=λ/{2sin θ( h2 +k2 +l2 1/2
ここで、a:残留オーステナイト相の格子定数(Å)、
λ:入射X線の波長(Å)、
θ:(200 )γのピーク角度(rad.)
h、k、l:γの面指数(h=2,k=0,l=0)
からオーステナイトの格子定数aを算出し、得られたオーステナイトの格子定数aから次式
Cγ=(a−3.5467)/0.0467
を用いて残留オーステナイト相の固溶C量Cγ(質量%)を算出した。
(2)引張特性
鋼板より圧延直角方向に、JIS Z 2204の規定に準拠した5号試験片を採取した。引張試験は、JIS Z 2241の規定に準拠して実施し、耐力(YS)、引張強さ(TS)、破断伸び(El)を測定した。
(3)穴拡げ性
鋼板から採取した試験片に直径10mmの円形の穴( 初期穴径:di )を打抜き、この穴に頂角60°の円錐ポンチを押し当て穴拡げする穴拡げ試験を実施した。穴縁の亀裂が板厚を貫通した時点での穴径db を測定し、次式
λ(%)=[(db −di )/di ] ×100
ここで、di :初期穴径(mm)、db :亀裂が板厚を貫通したときの穴径(mm)で定義される穴拡げ率を求めた。この穴拡げ率で、伸びフランジ性を評価した。得られた結果を表3に示す。
【0050】
【表1】
Figure 0004059050
【0051】
【表2】
Figure 0004059050
【0052】
【表3】
Figure 0004059050
【0053】
【表4】
Figure 0004059050
【0054】
【表5】
Figure 0004059050
【0055】
本発明例は、いずれも高い伸びと、高い穴拡げ率を示し、延性と伸びフランジ性に優れ、さらに、強度・伸びバランス(TS×El)が27000MPa%以上、強度・穴拡げ率バランス(TS×λ)が60000MPa%以上と、TS×ElおよびTS×λのバランスの良好な高強度高延性冷延鋼板となっている。
一方、本発明の範囲を外れる比較例は、残留オーステナイト量が少なく伸びが低いか、残留オーステナイト量を確保していたとしても熱延工程条件、再加熱工程条件のうちのいずれかが本発明の条件に適合しないため、残留オーステナイトが安定性に欠け、また、第2相が均一微細でなく、穴拡げ率が低いか、強度と延性、伸びフランジ性とのバランスを欠いた冷延鋼板となっている。
【0056】
【発明の効果】
以上、詳述したように、本発明によれば、非常に優れた延性および伸びフランジ性を有し、TS×ElおよびTS×λのバランスの良好な高張力冷延鋼板を、安価にしかも安定して製造でき、産業上格段の効果を奏する。また、本発明の冷延鋼板は、自動車部品に代表される成形品素材用として好適であり、自動車の軽量化、低燃費化、ひいては地球環境の改善に大きく貢献することができるという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】第2相の平均粒径(μm)とTS×λ(MPa %)との相関を示すグラフである。
【図2】残留オーステナイト量(体積%)とTS×El(MPa %)との関係を示すグラフである。
【図3】Vγ×Cγ/dγとTS×El(MPa %)との相関を示すグラフである。

Claims (12)

  1. 質量%で、
    C:0.05〜0.40%、 Si:0.5 〜3.0 %、
    Mn:0.5 〜3.0 %、 P:0.050 %以下、
    Al:0.01〜0.30%
    を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成と、フェライト相およびセメンタイト相とからなる組織を有し、かつ前記セメンタイト相の平均粒径が0.3 〜1.0 μmであることを特徴とする高強度高延性冷延鋼板製造用母板。
  2. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ti:0.25%以下、Nb:0.1 %以下のうちの1種または2種を含有する組成とすることを特徴とする請求項1に記載の高強度高延性冷延鋼板製造用母板。
  3. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca、REM のうちの1種または2種を合計で0.0100%以下含有する組成とすることを特徴とする請求項1または2に記載の高強度高延性冷延鋼板製造用母板。
  4. 質量%で、
    C:0.05〜0.40%、 Si:0.5 〜3.0 %、
    Mn:0.5 〜3.0 %、 P:0.050 %以下、
    Al:0.01〜0.30%
    を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成の鋼素材に、熱間圧延を施し熱延板とし、冷却速度:30℃/s以上で500 ℃以下まで冷却してから該熱延板を巻取る熱延工程と、該熱延板を再加熱し550 〜700 ℃の温度範囲で10〜30h保持する再加熱工程と、を順次施すことを特徴とする高強度高延性冷延鋼板製造用母板の製造方法。
  5. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ti:0.25%以下、Nb:0.1 %以下のうちの1種または2種を含有する組成とすることを特徴とする請求項4に記載の高強度高延性冷延鋼板製造用母板の製造方法。
  6. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca、REM のうちの1種または2種を合計で0.0100%以下含有する組成とすることを特徴とする請求項4または5に記載の高強度高延性冷延鋼板製造用母板の製造方法。
  7. 請求項1に記載の高強度高延性冷延鋼板製造用母板に、冷間圧延、連続焼鈍を順次施して製造された高強度高延性冷延鋼板であって、質量%で、
    C:0.05〜0.40%、 Si:0.5 〜3.0 %、
    Mn:0.5 〜3.0 %、 P:0.050 %以下、
    Al:0.01〜0.30%
    を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成と、フェライト相を主相とし、鋼板全体に対する体積率で4%以上の残留オーステナイト相を含みさらに低温変態相を含む相を第2相とする複合組織を有し、前記第2相の平均粒径が3μm以下であり、かつ前記残留オーステナイト相の含有量Vγ、固溶C量Cγ、平均結晶粒径dγが、 次(1)式を満足することを特徴とする高強度高延性冷延鋼板。

    Vγ×Cγ/dγ≧6 ………(1)
    ここで、Vγ:残留オーステナイト相の含有量(体積%)、
    Cγ:残留オーステナイト相中の固溶C量(質量%)、
    dγ:残留オーステナイト相の平均結晶粒径(μm))
  8. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ti:0.25%以下、Nb:0.1 %以下のうちの1種または2種を含有する組成とすることを特徴とする請求項7に記載の高強度高延性冷延鋼板。
  9. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca、REM のうちの1種または2種を合計で0.0100%以下含有する組成とすることを特徴とする請求項7または8に記載の高強度高延性冷延鋼板。
  10. 質量%で、
    C:0.05〜0.40%、 Si:0.5 〜3.0 %、
    Mn:0.5 〜3.0 %、 P:0.050 %以下、
    Al:0.01〜0.30%
    を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成の鋼素材に、熱間圧延を施し熱延板とし、冷却速度:30℃/s以上で500 ℃以下まで冷却してから該熱延板を巻取る熱延工程と、該熱延板を再加熱し550 〜700 ℃の温度範囲で10〜30h保持する再加熱工程と、該再加熱工程を経た熱延板に冷間圧延を施し冷延板とする冷延工程と、該冷延板にAC1変態点以上850 ℃以下の温度で20〜200s保持する加熱処理を施したのち、該加熱処理の保持温度から、10℃/s以上の冷却速度で350 〜500 ℃の温度域に冷却し、該温度域に10〜600s保持した後室温まで冷却する連続焼鈍工程と、を順次施すことを特徴とする高強度高延性冷延鋼板の製造方法。
  11. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ti:0.25%以下、Nb:0.1 %以下のうちの1種または2種を含有する組成とすることを特徴とする請求項10に記載の高強度高延性冷延鋼板の製造方法。
  12. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca、REM のうちの1種または2種を合計で0.0100%以下含有する組成とすることを特徴とする請求項10または11に記載の高強度高延性冷延鋼板の製造方法。
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