JP4057195B2 - 免震建物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、免震建物に係り、特に、戸建て住宅等の免震建物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
上部構造体が免震装置によって地盤(基礎)側より免震支承された免震建物として、特開昭60−211142号公報や特開平10−88849号公報に示されているように、振動減衰能と復元力を備えた積層ゴム等による免震装置と、専ら上部構造体の荷重を支持する転がり式免震装置あるいは直交レール式免震アイソレータ等による滑り式免震装置とを併用した免震建物が知られている。
【0003】
上述のような免震建物では、上部構造体が地盤側に対して相対的に変位可能であり、上部構造体と地盤側との相対変位により地震エネルギを吸収して地震エネルギを上部構造体に作用することを回避でき、しかも積層ゴム等による免震装置により、振動減衰が行われ、また上部構造体と地盤側との相対変位に対して復元力が与えられ、上部構造体と地盤側とにずれが発生することを回避できる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、免震建物、特に、積層ゴム等による免震装置と転がり式免震装置あるいは滑り式免震装置とを併用した免震建物では、各免震装置が上部構造体に対して適当な位置に設置されていないと、所期の効果が充分に得られず、しかも構造安全性、居住性を低下させる原因になることがある。
本発明は、上述の如き問題点を解消するためになされたもので、各免震装置の上部構造体に対する設置位置が選定され、充分な免震効果を得ることができると共に、構造安全性、居住性を確保、向上できる免震建物を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために、請求項1に記載の発明による免震建物は、上部構造体が免震装置によって地盤側より免震支承され、前記上部構造体の柱脚下位置と、前記上部構造体の柱脚間を結ぶ床梁下位置の各々に免震装置が設置されることを特徴としている。
この構成によれば、上部構造体の柱脚下位置と、上部構造体の柱脚間を結ぶ床梁下位置の各々に免震装置が設置され、柱脚下位置に設置された免震装置で柱脚軸力を効果的に支持し、床梁下位置に設置された免震装置によって効果的に振動減衰を行うように設定することができる。
【0006】
また、前記上部構造体の柱脚下位置には、免震時の水平変位に拘わらず柱脚軸力支持を保持する構造の免震装置が設置され、前記上部構造体の柱脚間を結ぶ床梁下位置には、前記地盤側と前記上部構造体の相対水平変位がほぼ0とみなせる時のみ前記上部構造体の荷重を支持し、相対変位時には荷重負担を床梁に持たせる構造の免震装置が設置されていることを特徴としている。
【0007】
この構成によれば、柱脚下位置に設置された免震装置によって免震時の水平変位に拘わらず柱脚軸力を効果的に支持し、床梁下位置に設置された免震装置によって地盤側と上部構造体の相対水平変位がほぼ0とみなせる時のみ上部構造体の荷重を支持して相対変位時には荷重負担を床梁に持たせ、柱脚位置で負担させることができ、床梁下位置に設置される免震装置に振動減衰能を効率よく付与することができる。
【0008】
更に、前記上部構造体の柱脚下位置に設置される免震装置は、直交レール式の免震アイソレータであり、前記上部構造体の柱脚間を結ぶ床梁下位置に設置される免震装置は、2次形状係数が3以下の積層ゴムであり、前記直交レール式の免震アイソレータのうち、前記上部構造体全体で見て4隅に位置するものは、床大梁の水平延在方向と平行にならないように傾斜角を有して配置されていることを特徴としている。
【0009】
この構成によれば、柱脚下位置に設置された直交レール式の免震アイソレータが免震時の水平変位に拘わらず柱脚軸力を効果的に支持し、床梁下位置に設置された積層ゴムが地盤側と上部構造体の相対水平変位がほぼ0と見なせる時のみ上部構造体の荷重を支持し、相対変位時には荷重負担を床梁に持たせることができ、積層ゴムにより、振動減衰と、上部構造体と地盤側との相対変位に対して復元力を与えることができる。
また、直交レール式の免震アイソレータのうち、前記上部構造体全体で見て4隅に位置するものは、床大梁の水平延在方向と平行にならないように傾斜角を有して配置されていることにより、免震時の床梁の撓みを少なくし、ロッキングを起こし難くし、構造安定性を向上することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明による免震建物は、前記積層ゴムは、クロロプレンゴム、アクリムゴム、シリコーンゴム等、高減衰性を有するゴム状弾性体により構成されていることを特徴としている。
この構成によれば、積層ゴムが高減衰性を有するゴム状弾性体により構成され、高減衰性を得ることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明による免震建物は、前記積層ゴムは、前記床梁の1次あるいは2次固有振動モードの腹に対応する位置に設置されていることを特徴としている。
この構成によれば、積層ゴムが床梁の1次あるいは2次固有振動モードの腹に対応する位置に設置され、積層ゴムによる床梁の1次あるいは2次固有振動の減衰を効果的に行うことができ、交通振動又は一階床歩行による床梁の振動が抑制され、居住性を高めることができる。
【0012】
請求項4に記載の発明による免震建物は、前記積層ゴムの無変形時の鉛直ばね定数と前記上部構造体の質量とから求められる振動数が、床梁の2次固有振動数より高いことを特徴としている。
この構成によれば、積層ゴムの無変形時の鉛直ばね定数と前記上部構造体の質量とから求められる振動数が床梁の2次固有振動数より高くなり、床梁の固有振動によって積層ゴムの共振を防ぐことができる。
【0013】
請求項5に記載の発明による免震建物は、前記積層ゴムは、前記上部構造体側と前記地盤側のいずれか一方にのみ締結接続され、他方は非締結であることを特徴としている。
この構成によれば、中〜大地震発生時等、上部構造体側と地盤側との水平方向の変位が大きいと、非締結側で、上部構造体側あるいは地盤側に対して積層ゴムがずれ、積層ゴムが限界剪断方向変位を超えて剪断方向に変位することをなくすことができる。
【0014】
請求項6に記載の発明による免震建物は、前記非締結側の積層ゴムと前記上部構造体側あるいは前記地盤側との接合面の摩擦係数は、前記積層ゴムの水平剛性・減衰が正常に性能を発揮する限界の相対変位時に発生する前記積層ゴムの水平剛性で両者が滑り変位する値に設定されていることを特徴としている。
この構成によれば、積層ゴムの水平剛性・減衰が正常に性能を発揮する限界の相対変位時に、非締結側で、上部構造体側あるいは地盤側に対して積層ゴムがずれ、積層ゴムが限界剪断方向変位を超えて剪断方向に変位することをなくすことができる。
【0015】
請求項7記載の発明による免震建物は、前記積層ゴムの水平剛性は、前記上部構造体の重心と剛心との間の距離がほぼ0となるように設定されていることを特徴としている。
この構成によれば、積層ゴムの水平剛性が、上部構造体の重心と剛心との距離がほぼ0となるように設定されるので、ねじれを防止し、該ねじれによる相対変位をなくすことができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に添付の図を参照してこの発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1〜図7はこの発明による免震建物の一つの実施の形態を示している。これらの図において、10は上部構造体を、20は地盤上の基礎を各々示している。上部構造体10は、四角枠組みの鉄骨製の床大梁11と四角枠組みの鉄骨製の天井大梁12(一つのみ図示)とを4本の鉄骨製の柱(柱脚)13a、13a、13a、13a等で相互に溶接等により剛接続した複数個のボックスラーメン構造の建物ユニットを組合わせたものである。
【0017】
図1に示すように、この工法では建物ユニットの角が突き合わされるところで前記柱13a…が集中する場合があり、説明の便宜上、この2乃至4本の前記柱13a…の集合も柱13と称する。なお、前記床大梁11及び前記天井大梁12についても同様とする。
各柱13の真下位置には基礎20との間に免震装置として直交レール式の免震アイソレータ30が設置され、隣接する柱13間を結ぶ桁面側の各床大梁11の中間位置下部には基礎20との間に免震装置として積層ゴム40が設置されている。
【0018】
免震アイソレータ30は、図5に示されているように、基礎20と接続される下部レール31と、下部レール31と直交する方向に延在し、上部構造体10と接続される上部レール32と、下部にて下部レール31にスライド式に変位可能に係合し、上部にて上部レール32にスライド式変位可能に係合する剛体構造のセンタブロック33とを有し、免震時の水平変位に拘わらず柱脚軸力支持を保持する構造になっている。
【0019】
図2に示されているように、免震アイソレータ30のうち、上部構造体10全体で見て4隅に位置するものは、下部レール31、上部レール32の各レールの軸線方向が、建物壁面、床大梁11の水平延在方向と平行にならないようにされ、上部レール32が後述する火打ち梁16と平行方向に、下部レール31が前記上部レール32と直交方向にされ、床大梁11の水平延在方向に対して水平面で45度の傾斜角をもつように配置されている。なお、前記4隅に位置するもの以外の免震アイソレータ30は、建物壁面、床大梁11の水平延在方向と平行又は直交になるように配置されている。
【0020】
図4(a)〜(c)に示されているように、積層ゴム40は、クロロプレンゴム、アクリムゴム、シリコーンゴム等、高減衰性を有するゴム状弾性体41と鉄板42とを交互に積層したものであり、2次形状係数が3以下で、しかも無変形時の鉛直ばね定数と上部構造体10の質量とから求められる振動数が、床梁(床大梁11)の2次固有振動数より高く、図4(a)に示されているように、基礎20と上部構造体10との相対水平変位がほぼ0とみなせる時のみ、上部構造体10の荷重を支持し、図4(b)、(c)に示されているように、相対変位時には剪断方向に弾性変形して荷重負担を床大梁11に持たせる構造になっており、例えば、床及び柱からの荷重は床大梁11に生ずるが、通常時には積層ゴムが床大梁11のたわみ防止・振動防止に機能している。
【0021】
積層ゴム40は、床梁の1次あるいは2次固有振動モードの腹に対応する位置に設置される。この積層ゴム40の設置位置は、桁面にて隣接する柱のスパンに応じて設定されればよく、柱スパンが、図3の符合La、Lbで示されているような4〜5m程度であれば、床大梁11の1/2の中央位置1箇所になり、符合Lcで示されているような6m程度以上であれば、床大梁11の中央1/3の2箇所になり、複数の免震装置を有することになる。
【0022】
また、積層ゴム40の上下両端には、フランジ板43、44を有し、上側のフランジ板43は上部構造体10の床大梁11にボルト等により締結接続され、下側のフランジ板44は基礎20に介して非締結となっている。この場合、非締結側のフランジ板44と基礎20との接合面の摩擦係数は、積層ゴム40の水平剛性・減衰が正常に性能を発揮する限界の相対変位時に発生する積層ゴムの水平剛性で両者が滑り変位する値に設定されている。
なお、前記積層ゴム40の水平剛性は、上部構造体10の重心と剛心との距離(偏心距離)がほぼ0となるように設定することができる。
【0023】
図6、図7に示されているように、上部構造体10の1階部分の床大梁11のうち、各免震アイソレータ30の配置位置に対応する位置には、床大梁11の下にH形鋼等によるL形補強架台14、I形補強架台15が設けられている。L形補強架台14の配置位置は、上部構造体10全体で見て4隅の入隅部、出隅部であり、直交する二つの床大梁11、11に対応しており、I形補強架台15の配置位置は、建物ユニットのつなぎ目部分等に対応している。
【0024】
また、上部構造体10全体で見て4隅には、この4隅の免震アイソレータ30の45度傾斜配置に対応して上部レール32の延在方向と同方向には、火打ち梁16が取り付けられており、該火打ち梁16に上部構造体側のレールである上部レール32が固定されている。
L形補強架台14、I形補強架台15、火打ち梁16は、ボックスラーメン構造の建物ユニットの工場生産過程で、溶接等により床大梁11に取り付けられ、建物ユニットのボックスラーメン構造体に予め固定された状態で建設現場に運搬される。なお、輸送上の制約により、予め固定できない場合には、前記構造体とは別に輸送・設置されるものである。
【0025】
上述したように、柱脚下位置には、直交レール式の免震アイソレータ30が設置されているから、免震時の水平変位に拘わらず、柱脚下位置にて柱脚軸力を効果的に支持することが行われ、床梁下位置には積層ゴム40が設置され、この積層ゴム40は、図4(a)に示されているように、基礎20と上部構造体10との相対水平変位がほぼ0と見なせる時のみ上部構造体10の荷重を支持し、図4(b)、(c)に示されているように、相対変位時には、剪断方向に弾性変形し、荷重負担を床梁に持たせることができる。
【0026】
上述のような荷重支持構造により、積層ゴム40は通常時の長期荷重のみを支持するものになり、このことから、積層ゴム40の2次形状係数を3以下にして積層ゴム40の水平剛性を低く設定でき、軽量な戸建て住宅においても高性能な免震支承を実現でき、同時に、積層ゴム40によって安価な復元減衰ダンパーを実現でき、振動減衰効果と、上部構造体10と基礎20との相対変位に対して復元力を与えることができる。また、積層ゴム40は、クロロプレンゴム、アクリムゴム、シリコーンゴム等、高減衰性を有するゴム状弾性体により構成されているから、高減衰性が得られ、居住性を向上できる。
【0027】
また、積層ゴム40は床梁の1次あるいは2次固有振動モ-ドの腹に対応する位置に設置され、しかも、積層ゴム40の鉛直ばね定数と上部構造体10の質量とから求められる振動数は、床梁の2次固有振動数より高いから、鉛直剛性の高い積層ゴム40によって床梁の1次あるいは2次固有振動の減衰が効果的に行われ、外部からの交通振動や1階床歩行時の床振動が効果的に減衰され、居住性が格段に向上し、積層ゴム40が床振動よって共振現象を生じることもない。
【0028】
さらに、積層ゴム40は上部構造体10には締結接続されているが、基礎20には非締結であり、非締結側の積層ゴム40と基礎20との接合面の摩擦係数が、積層ゴム40の水平剛性・減衰が正常に性能を発揮する限界の相対変位時に発生する積層ゴム40の水平剛性で両者が滑り変位する値に設定されているから、小地震発生時等、上部構造体10と地盤側との水平方向の変位が大きくない場合は、図4(b)に示されているように、非締結側の積層ゴム40と基礎20との接合面の摩擦抵抗により積層ゴム40が基礎20に対してずれることなく、積層ゴム40が剪断方向に弾性変形して復元減衰ダンパー効果を奏する。中〜大地震発生時等、上部構造体10と地盤側との水平方向の変位が大きいと、図4(c)に示されているように非締結側で、地盤側である基礎20に対して積層ゴムがずれ、積層ゴム40が限界剪断方向変位が超えて剪断方向変位することが回避され、積層ゴム40の耐久性が低下したり、破断を生じることがなく、安全性が高度に維持される。
【0029】
免震アイソレータ30のうち、上部構造体10全体で見て4隅に位置するものは、下部レール31、上部レール32の各レールの軸線方向が、建物壁面、床大梁11の水平延在方向に平行にならないよう、床大梁11の水平延在方向に対して水平面で45度の傾斜角をもつように配置されているから、図8に示されているように、建物側レール(上部レール32)の軸線方向が建物壁面に平行である場合に比して、初期のレール支柱(センタブロック33)と柱13の距離が短くなり、これに応じて免震時のレール支柱(センタブロック33)と柱13の距離も短くなり、免震時の床梁の撓みが減り、ロッキングを起こし難くなり、構造安全性が向上する。
【0030】
上部構造体10の1階部分の床大梁11のうち、各免震アイソレータ30の配置位置に対応する位置には、L形補強架台14、I形補強架台15が設けられ、また、上部構造体10全体で見て4隅の4隅の免震アイソレータ30の45度傾斜配置の対応して上部レール32の延在方向に同方向に火打ち梁16が取り付けられているから、免震支承の建物の1階部分の床剛性が効果的に向上する。
【0031】
L形補強架台14、I形補強架台15、火打ち梁16は、ボックスラーメン構造の建物ユニットの工場生産過程で、溶接等により床大梁11に取り付けられ、建物ユニットのボックスラーメン構造体に予め固定された状態で建設現場へ運搬されるから、建設現場での溶接作業が不要になり、施工時間の短縮、運搬費用、施工費用の低減が図られ、また工場組み付けであるから、取付位置精度が建設現場の組み付けに比して安定、向上する。
【0032】
なお、45度の傾斜角をもって配置する免震アイソレータ30の配置位置は、上部構造体10の全体的な外郭形状になり異なり、図9に示されているように、出張り部を有する建物では、4隅だけでなく、出張り部のL形角部の免震アイソレータ30も45度の傾斜角をもって配置される。
図9に示されているような建物でも、上部構造体10の1階部分の床大梁11のうち、各免震アイソレータ30の配置位置に対応する位置には、L形補強架台14、I形補強架台15が設けられ、また、必要に応じてT形の補強架台も使用することもできる。
【0033】
上述の実施の形態では、柱脚下位置に設置する免震装置は直交レール式の免震アイソレータ30としたが、この発明はこれに限定されることはなく、柱脚下位置に設置する免震装置は、免震時の水平変位に拘わらず柱脚軸力支持を保持すると云う条件を満たすものであればよく、これには、直交レール式以外の滑り支承式の免震装置、転がり支承式の免震装置、2次形状係数が3〜5程度の高安定性の積層ゴム等があり、これらが使用されてもよい。
【0034】
【発明の効果】
以上の説明から理解される如く、請求項1に記載の発明による免震建物によれば、上部構造体が免震装置によって地盤側より免震支承された免震建物において、前記上部構造体の柱脚下位置と、前記上部構造体の柱脚間を結ぶ床梁下位置の各々に免震装置が設置される構成としたので、柱脚下位置に設置された免震装置で柱脚軸力を効果的に支持し、床梁下位置に設置された免震装置によって効果的に振動減衰を行うように設定することができ、充分な免震効果を得ることができると共に、構造安全性、居住性を確保、向上できる。
【0035】
また、前記上部構造体の柱脚下位置には、免震時の水平変位に拘わらず柱脚軸力支持を保持する構造の免震装置が設置され、前記上部構造体の柱脚間を結ぶ床梁下位置には、前記地盤側と前記上部構造体の相対水平変位がほぼ0とみなせる時のみ前記上部構造体の荷重を支持し、相対変位時には荷重負担を床梁に持たせる構造の免震装置が設置されている構成としたので、柱脚下位置に設置された免震装置によって免震時の水平変位に拘わらず柱脚軸力を効果的に支持し、床梁下位置に設置された免震装置によって地盤側と上部構造体の相対水平変位がほぼ0と見なせる時のみ上部構造体の荷重を支持して相対変位時には荷重負担を床梁に持たせることができ、このことにより床梁下位置に設置される免震装置に振動減衰能を効率よく付与することができ、充分な免震効果を得ることができると共に、構造安全性、居住性を確保、向上できる。
【0036】
更に、前記上部構造体の柱脚下位置に設置される免震装置は、直交レール式の免震アイソレータであり、前記上部構造体の柱脚間を結ぶ床梁下位置に設置される免震装置は、2次形状係数が3以下の積層ゴムである構成としたので、柱脚下位置に設置された直交レール式の免震アイソレータが免震時の水平変位に拘わらず柱脚軸力を効果的に支持し、床梁下位置に設置された積層ゴムが地盤側と上部構造体の相対水平変位がほぼ0と見なせる時のみ上部構造体の荷重を支持し、相対変位時には荷重負担を床梁に持たせることができ、積層ゴムにより、振動減衰と、上部構造体と地盤側との相対変位に対して復元力が与えられ、充分な免震効果を得ることができると共に、構造安全性、居住性を確保、向上できる。また、直交レール式の免震アイソレータのうち、前記上部構造体全体で見て4隅に位置するものは、床大梁の水平延在方向と平行にならないように傾斜角を有して配置されていることにより、免震時の床梁の撓みを少なくし、ロッキングを起こし難くし、構造安定性を向上することができる。
【0037】
請求項2に記載の発明による免震建物によれば、前記積層ゴムは、クロロプレンゴム、アクリムゴム、シリコーンゴム等、高減衰性を有するゴム状弾性体により構成されているので、積層ゴムにより高減衰性が得られ、免震建物の居住性を格段に向上できる。
請求項3に記載の発明による免震建物によれば、前記積層ゴムは、前記床梁の1次あるいは2次固有振動モ-ドの腹に対応する位置に設置されている構成としたので、積層ゴムによる床梁の1次あるいは2次固有振動の減衰が効果的に行われ、免震建物の居住性を格段に向上できる。
【0038】
請求項4に記載の発明による免震建物によれば、前記積層ゴムの無変形時の鉛直ばね定数と前記上部構造体の質量から求められる振動数が、床梁の2次固有振動数より高い構成としたので、床梁の固有振動によって積層ゴムが共振することがなく、免震建物の居住性を確保できる。
請求項5に記載の発明による免震建物によれば、前記積層ゴムは、前記上部構造体側と前記地盤側のいずれか一方にのみ締結接続され、他方は非締結である構成としたので、中〜大地震発生時等、上部構造体側と地盤側との水平方向の変位が大きいと、非締結側で、上部構造体側あるいは地盤側に対して積層ゴムがずれ、積層ゴムが限界剪断方向変位を超えて剪断方向に変位することがなく、積層ゴムの耐久性が向上する。
【0039】
請求項6に記載の発明による免震建物によれば、前記非締結側の積層ゴムと前記上部構造体側あるいは前記地盤側との接合面の摩擦係数は、前記積層ゴムの水平剛性・減衰が正常に性能を発揮する限界の相対変位時に発生する前記積層ゴムの水平剛性で両者が滑り変位する値に設定されている構成としたので、積層ゴムの水平剛性・減衰が正常に性能を発揮する限界の相対変位時には、非締結側で、上部構造体側あるいは地盤側に対して積層ゴムがずれ、積層ゴムが限界剪断方向変位が超えて剪断方向変位することがなく、積層ゴムの耐久性が向上する。
【0040】
請求項7記載の発明による免震建物によれば、前記積層ゴムの水平剛性は、前記上部構造体の重心と剛心との間の距離がほぼ0となるように設定されている構成としたので、積層ゴムの水平剛性が、上部構造体の重心と剛心との距離がほぼ0となるように設定され、ねじれを防止し、該ねじれによる相対変位をなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明による免震建物の一つの実施の形態を示す要部の斜視図である。
【図2】この発明による免震建物の4隅部分の免震アイソレータの配置を示す床伏せ図である。
【図3】この発明による免震建物における免震装置の配置位置を示す桁面図である。
【図4】(a)〜(c)はこの発明による免震建物における積層ゴムの動作状態を示す立面図である。
【図5】この発明による免震建物で使用される直交レール式の免震アイソレータの一例を示す斜視図である。
【図6】この発明による免震建物の火打ち梁の配置を示す1階床伏せ図である。
【図7】この発明による免震建物の火打ち梁及び補強架台の配置を示す斜視図である。
【図8】建物の隅部に配置されている直交レール式の免震アイソレータの動作を示す説明図である。
【図9】この発明による免震建物の他の実施の形態を示す1階床伏せ図である。
【符号の説明】
10 上部構造体
11 床梁
12 天井梁
13 柱
14 L形補強架台
15 I形補強架台
16 火打ち梁
20 基礎
30 免震装置(免震アイソレータ)
31 下部レール
32 上部レール
33 センタブロック
40 免震装置(積層ゴム)
41 ゴム状弾性体
42 鉄板
43フランジ板
44フランジ板
Claims (7)
- 上部構造体が免震装置によって地盤側より免震支承された免震建物におい
て、前記上部構造体の柱脚下位置と、前記上部構造体の柱脚間を結ぶ床梁下位置の各々に免震装置が設置され、
前記上部構造体の柱脚下位置には、免震時の水平変位に拘わらず柱脚軸力支持を保持する構造の免震装置が設置され、前記上部構造体の柱脚間を結ぶ床梁下位置には、前記地盤側と前記上部構造体の相対水平変位がほぼ0とみなせる時のみ前記上部構造体の荷重を支持し、相対変位時には荷重負担を床梁に持たせる構造の免震装置が設置され、
前記上部構造体の柱脚下位置に設置される免震装置は、直交レール式の免震アイソレータであり、前記上部構造体の柱脚間を結ぶ床梁下位置に設置される免震装置は、2次形状係数が3以下の積層ゴムであり、
前記直交レール式の免震アイソレータのうち、前記上部構造体全体で見て4隅に位置するものは、床大梁の水平延在方向と平行にならないように傾斜角を有して配置されていることを特徴とする免震建物。 - 前記積層ゴムは、クロロプレンゴム、アクリムゴム、シリコーンゴム等、
高減衰性を有するゴム状弾性体により構成されていることを特徴とする請求項1記載の免震建物。 - 前記積層ゴムは、前記床梁の1次あるいは2次固有振動モ-ドの腹に対応する位置に設置されていることを特徴とする請求項1又は2記載の免震建物。
- 前記積層ゴムの無変形時の鉛直ばね定数と前記上部構造体の質量とから求められる振動数が、床梁の2次固有振動数より高いことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の免震建物。
- 前記積層ゴムは、前記上部構造体側と前記地盤側のいずれか一方にのみ締結接続され、他方は非締結であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の免震建物。
- 前記非締結側の積層ゴムと前記上部構造体側あるいは前記地盤側との接合面の摩擦係数は、前記積層ゴムの水平剛性・減衰が正常に性能を発揮する限界の相対変位時に発生する前記積層ゴムの水平剛性で両者が滑り変位する値に設定されていることを特徴とする請求項5記載の免震建物。
- 前記積層ゴムの水平剛性は、前記上部構造体の重心と剛心との間の距離がほぼ0となるように設定されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の免震建物。
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