JP4054244B2 - 画像記録材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は高度に構造が制御された高分子化合物を含有する画像記録材料に関し、詳細には、コンピュータ等のディジタル信号から直接製版できる、いわゆるダイレクト製版用の赤外線レーザ対応平版印刷版原版の記録層に好適な画像記録材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年におけるレーザの発展は目ざましく、特に近赤外から赤外に発光領域を持つ固体レーザ・半導体レーザは高出力かつ小型のものが容易に入手できる様になっている。平版印刷版原版の分野においては、コンピュータ等のディジタルデータから直接製版する際の露光光源として、これらのレーザは非常に有用である。
【0003】
赤外線レーザ用ポジ型平版印刷版原版は、アルカリ水溶液可溶性のバインダーポリマーと、光を吸収し熱を発生する赤外線吸収剤とを必須成分とし、この赤外線吸収剤が、未露光部(画像部)では、バインダーポリマーとの相互作用によりバインダーポリマーの溶解性を実質的に低下させる溶解阻止剤として働く。一方、露光部(非画像部)では、発生した熱により該赤外線吸収剤とバインダーポリマーとの相互作用が弱まりアルカリ現像液に溶解して画像を形成する。
しかしながら、このような赤外線レーザ用ポジ型平版印刷版材料では、未露光部(画像部)の強度、耐現像性と、露光部(非画像部)のアルカリ現像液に対する溶解性の差異が充分でなく、現像液の活性の変動などの使用条件のわずかな変動によっても、画像部が膜減りを生じたり(過剰現像)、非画像部に残膜が発生し(現像不良)、汚れ性が悪化するなどの問題があった。
【0004】
このような問題は、赤外線レーザ用ポジ型平版印刷版材料とUV露光により製版するポジ型平版印刷版材料との製版メカニズムの本質的な相違に由来する。すなわち、UV露光により製版するポジ型平版印刷版材料では、アルカリ水溶液可溶性のバインダー樹脂と、オニウム塩やキノンジアジド化合物類とを必須成分とするが、このオニウム塩やキノンジアジド化合物類は、未露光部(画像部)でバインダー樹脂との相互作用により溶解阻止剤として働くだけでなく、露光部(非画像部)では、光によって分解して酸を発生し、溶解促進剤として働くという二つの役割を果たすものである。
これに対し、赤外線レーザ用ポジ型平版印刷版材料におけるIR染料等は、未露光部(画像部)の溶解阻止剤として働くのみで、露光部(非画像部)の溶解を促進するものではない。露光部の支持体との界面近傍では、発生した熱が支持体へと拡散し、効率よく画像形成に使用されないこともあって、残膜が発生しやすいという問題があり、現像液の活性変動に対する許容性(現像ラチチュード)の向上が望まれていた。
【0005】
また、このような赤外線レーザ用ポジ型平版印刷版原版では、取扱い時に表面に触れる等によりわずかに表面状態が変動した場合にも、現像時に未露光部(画像部)が溶解してキズ跡状となり、耐刷性の低下や着肉性不良を引き起こすという問題があった。
【0006】
また、赤外線レーザ用ネガ型平版印刷版原版は、光を吸収し熱を発生する赤外線吸収剤と、熱によりラジカルを発生する重合開始剤と、発生したラジカルにより重合反応を生起する重合性化合物と、を含有する。未露光部(非画像部)は、もともとアルカリ現像液に可溶性であり、一方、露光部(画像部)においては、赤外線吸収剤が露光で発生した熱により、重合開始剤からラジカルが発生し、重合性化合物が重合反応を生起する。このことにより露光部の記録層が硬化し、画像部が形成されるといった記録方式を利用している。
【0007】
ネガ型の平版印刷版原版の場合においても、未露光(硬化前)の状態では、上記ポジ型と同様に、取扱い時に記録層にキズが発生し、耐刷性の劣化や着肉性不良を引き起こすという問題があった。
【0008】
上記問題を解決するための手段として、膜強度(画像強度)を向上する目的で、赤外線吸収性の官能基を側鎖に有するアルカリ可溶性樹脂を用いる例が知られている(特許文献1参照。)。即ち、アルカリ可溶性樹脂中に光熱変換機能を有する部分構造を導入して材料中の低分子量成分を減らすことにより膜強度を向上しようとするものである。しかしながら、このアルカリ可溶性樹脂は、分子量が5000以上の高分子化合物であるために、基材への密着性が多大になると共に、現像時の処理剤への溶解性が充分でなくなり、特にポジ型平版印刷版材料として用いた場合に、非画像部の溶解性が低く、除去されるべき記録層が現像処理で充分に除去されず、残膜となって非画像部に汚れが発生し易いという問題を有していた。
【0009】
また、記録層に低分子量のワックスを添加することにより、表面の滑り性を向上させ、優れた耐キズ性を発現する技術が知られているが(例えば、特許文献2参照。)、低分子量ワックス成分の添加により、平版印刷版用原版を積層する際に保護紙(合紙)、基盤裏面への転写や平版印刷版用原版製造時のローラーへの転写等の問題点を有しており、製造や搬送時の不安定要因となっていた。
【0010】
さらに、記録層上に保護層を設けて記録層表面の傷付きを防止することも考えられるが、例えば、水溶性樹脂を用いる一般的な保護層を設けた場合、特に、平版印刷版原版を積層し、高湿度下で保存された場合には、保護層と保護紙(合紙)又は支持体裏面とが接着し、剥がれ難くなって作業性が低下するという問題を有しており、いずれの手段によっても、生産性が悪いという問題を有していた。
このため、作業性を低下させず、また、画像形成性に影響を与えず、記録層のキズ付きを抑制し得る画像記録材料が所望されていた。
【0011】
【特許文献1】
米国特許6,124,425号明細書
【特許文献2】
特開2000−35666公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の技術の欠点を考慮してなされた本発明の目的は、現像ラチチュードと耐傷性とに優れ、ヒートモード対応の平版印刷版原版の記録層として有用な画像記録材料を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、連鎖移動剤を用いて末端を修飾したポリマーを含有するヒートモード画像記録材料を用いることにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成した。
【0014】
即ち、本発明の画像記録材料は、(A)赤外線吸収剤と、(B’) 下記一般式(1)で表される構造を含み、末端にpKaが12以下の酸基を有するポリマーとを有し、赤外レーザの露光により画像形成可能であることを特徴とする。
【0015】
【化3】
【0016】
一般式(1)中、X 1 は3価の連結基を表し、nは4〜40の整数を表す。
前記ポリマーが、末端に、pKaが12以下の酸基を有する、即ち、これらのポリマーの末端基が酸基であることが、現像性、及び、感度の観点から好ましい。
【0017】
本発明の画像記録材料は、赤外線レーザ用記録方式に適合し、画像形成時の現像液の変動に対する現像の寛容度(現像ラチチュード)及び、耐傷性に優れたものであり、この好ましい特性を得るための構造制御として、連鎖移動剤を用いて末端を修飾したポリマーを含有することを特徴とする。
本発明の画像記録材料を記録層として用いることにより、コンピュータ等のディジタル信号から直接製版できるいわゆるダイレクト製版用の赤外線レーザ用ポジ型平版印刷版原版が得られ、広い現像のラチチュード及び耐傷性を有する平版印刷版を提供することできる。
【0018】
本発明の画像記録材料が、上記現像ラチチュード及び耐傷性に優れるという作用機構は明確になってはいないが、以下のように推定している。
本発明に係る特定のポリマーは連鎖移動剤を用いて末端基を導入するが、この連鎖移動剤の使用によりポリマーの末端のみに選択的に極性基などの特定の官能基を導入することで、高度に構造が制御された高分子化合物を得ることができる。これは、例えば、ポリマーの末端基と、主鎖構造を形成する2価の連結基に存在する官能基との間で機能分離を行い得ることを意味する。このため、例えば、ポリマー末端のみに極性基を導入することで、極性基どうしの相互作用が効率的に形成され、これに対して側鎖構造に滑り性に優れた長鎖基を導入すると、皮膜形成時における長鎖基の最表面への配向が起こりやすくなり、末端基の相互作用による強固な皮膜と、長鎖基による表面滑り性が発現し、耐傷性の向上が実現できる。また、一般的にはポリマー末端ほど熱運動が効率的に起こるため、ポジ型画像形成材料においては、露光により発生する熱で、先に述べた末端に存在する極性基どうしの相互作用の熱解除性が高まり、その結果として、現像のラチチュードが改善されるものと推定している。
【0019】
なお、本発明において「ヒートモード対応」とは、ヒートモード露光による記録が可能であることを意味する。本発明におけるヒートモード露光の定義について詳述する。Hans−Joachim Timpe,IS&Ts NIP 15:1999 International Conference on Digital Printing Technologies.P.209に記載されているように、感光材料において光吸収物質(例えば色素)を光励起させ、化学的或いは物理的変化を経て、画像を形成するその光吸収物質の光励起から化学的或いは物理的変化までのプロセスには大きく分けて二つのモードが存在することが知られている。1つは光励起された光吸収物質が感光材料中の他の反応物質と何らかの光化学的相互作用(例えば、エネルギー移動、電子移動)をすることで失活し、その結果として活性化した反応物質が上述の画像形成に必要な化学的或いは物理変化を引き起こすいわゆるフォトンモードであり、もう1つは光励起された光吸収物質が熱を発生し失活し、その熱を利用して反応物質が上述の画像形成に必要な化学的或いは物理変化を引き起こすいわゆるヒートモードである。その他、物質が局所的に集まった光のエネルギーにより爆発的に飛び散るアブレーションや1分子が多数の光子を一度に吸収する多光子吸収など特殊なモードもあるがここでは省略する。
【0020】
上述の各モードを利用した露光プロセスをフォトンモード露光及びヒートモード露光と呼ぶ。フォトンモード露光とヒートモード露光の技術的な違いは目的とする反応のエネルギー量に対し露光する数個の光子のエネルギー量を加算して使用できるかどうかである。例えばn個の光子を用いて、ある反応を起こすことを考える。フォトンモード露光では光化学的相互作用を利用しているため、量子のエネルギー及び運動量保存則の要請により1光子のエネルギーを足し併せて使用することができない。つまり、何らかの反応を起こすためには「1光子のエネルギー量≧反応のエネルギー量」の関係が必要である。一方、ヒートモード露光では光励起後に熱を発生し、光エネルギーを熱に変換し利用するためエネルギー量の足し併せが可能となる。そのため、「n個の光子のエネルギー量≧反応のエネルギー量」の関係があれが十分となる。但し、このエネルギー量加算には熱拡散による制約を受ける。即ち、今注目している露光部分(反応点)から熱拡散により熱が逃げるまでに次の光励起−失活過程が起こり熱が発生すれば、熱は確実に蓄積加算し、その部分の温度上昇につながる。しかし、次の熱の発生が遅い場合には熱が逃げて蓄積されない。つまり、ヒートモード露光では同じ全露光エネルギー量であっても高エネルギー量の光を短い時間照射した場合と低エネルギー量の光を長い時間照射した場合とでは結果が異なり、短時間の方が熱の蓄積に有利になる。
【0021】
無論、フォトンモード露光では後続反応種の拡散の影響で似た様な現象が起こる場合もあるが基本的には、このようなことは起こらない。
即ち、感光材料の特性として見た場合、フォトンモードでは露光パワー密度(W/cm2)(=単位時間当たりのエネルギー密度)に対し感光材料の固有感度(画像形成に必要な反応のためのエネルギー量)は一定となるが、ヒートモードでは露光パワー密度に対し感光材料の固有感度が上昇することになる。従って、実際に画像記録材料として実用上、必要な生産性を維持できる程度の露光時間を固定すると、各モードを比較した場合、フォトンモード露光では通常は約0.1mJ/cm2程度の高感度化が達成できるもののどんな少ない露光量でも反応が起こるため、未露光部での低露光カブリの問題が生じ易い。これに対し、ヒートモード露光ではある一定以上の露光量でないと反応が起こらず、また感光材料の熱安定性との関係から通常は50mJ/cm2程度が必要となるが、低露光カブリの問題が回避される。
そして、事実上ヒートモード露光では、感光材料の版面での露光パワー密度は5000W/cm2以上が必要であり、好ましくは10000W/cm2以上が必要となる。但し、ここでは詳しく述べなかったが5.0×105W/cm2以上の高パワー密度レーザーを利用するとアブレーションが起こり、光源を汚す等の問題から好ましくない。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下に本発明のヒートモード画像記録材料(以下、適宜、「画像記録材料」と称する)について詳細に説明する。
本発明の画像記録材料は、連鎖移動剤を用いて末端を修飾したポリマー(以下、適宜、特定ポリマーと称する)、及び赤外線吸収剤を含有することを特徴とする。
本発明の画像形成機構には特に制限はないが、例えば、後に詳述する「水不溶性かつアルカリ可溶性樹脂」を含み、赤外レーザの露光によりアルカリ性水溶液に対する溶解性が増大するポジ型画像記録材料や、重合開始剤と重合性化合物とを含み、露光部が硬化するネガ型画像記録材料等が挙げられる。
以下、本発明の画像記録材料を構成する各成分について順次説明する。
【0023】
〔(B)連鎖移動剤を用いて末端を修飾したポリマー〕
本発明に係る特定ポリマーとは、ポリマーの末端を連鎖移動剤を用いて修飾したポリマーであるが、この末端修飾に使用する連鎖移動剤は、アルカリ現像液に対する溶解性、及び、感度の観点からpKa12以下の酸基を有することが好ましい。即ち、ポリマー末端に酸基(極性基)を有することで、該酸基の相互作用による膜性の向上と、相互作用が形成されない場合のアルカリ水溶液に対する優れた溶解性の双方が達成できる。
【0024】
このようなpKa12以下の酸基としては、下記(1)〜(6)に挙げる酸基を有するものが、アルカリ性現像液に対する溶解性、感度の点で好ましい。
(1)フェノール基(−Ar−OH)
(2)スルホンアミド基(−SO2NH−R)
(3)置換スルホンアミド系酸基(以下、「活性イミド基」という。)
〔−SO2NHCOR、−SO2NHSO2R、−CONHSO2R〕
(4)カルボン酸基(−CO2H)
(5)スルホン酸基(−SO3H)
(6)リン酸基(−OPO3H2)
【0025】
上記(1)〜(6)中、Arは置換基を有していてもよい2価のアリール連結基を表し、Rは、置換基を有していてもよい炭化水素基を表す。
上記のpKa12以下の酸基を有するモノマーの中でも、(1)フェノール基、(2)スルホンアミド基及び(3)活性イミド基(4)カルボン酸を有するモノマーが好ましく、特に、(1)フェノール基又は(2)スルホンアミド基又は(4)カルボン酸を有するモノマーが、アルカリ性現像液に対する溶解性、現像ラチチュード、膜強度を十分に確保する点から最も好ましい。
【0026】
更に、(B)連鎖移動剤を用いて末端を修飾したポリマーとしては、(B’)下記一般式(I)で表される化合物が好ましい。
【0027】
【化3】
【0028】
一般式(I)中、Yは1価の末端基を表し、Xは2価の有機基を表す。nは5以上の整数を表す。このように、ポリマーの主鎖を構成する構造単位Xの重合体の末端に選択的にYで示される末端基を導入することで、それぞれの構造の特性を生かした特定ポリマーが形成され、画像記録材料として好ましい特性を発現させることができる。以下、本発明に係る特定ポリマーの好ましい態様を挙げて、その詳細を説明する。
【0029】
上記一般式(I)中、Yで示される末端基は、アルカリ現像液に対する溶解性、及び、感度の観点からpKa12以下の酸基を有することが好ましい。このようなpKa12以下の酸基としては、前記連鎖移動剤において好ましい例として挙げた(1)〜(6)に記載の酸基を有するものが、アルカリ性現像液に対する溶解性、感度の点で、同様に好ましく、また、そのなかでも好ましい例も同様なものとして挙げられる。
即ち、本発明に係る特定ポリマーは、その末端に酸基を有する官能基を導入してなるものが最も好ましい。
【0030】
このような連鎖移動剤により修飾された末端基、すなわち、一般式(I)におけるYの具体例としては、以下のものが挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0031】
【化4】
【0032】
次に、本発明に係る特定ポリマーのモノマー骨格(主鎖構造)、即ち、一般式(I)におけるXで示される連結基について説明する。
上記一般式(I)中のXで表されるモノマー骨格は1種類のみならず、2種類以上併用したものでもよく、このXで示されるモノマー骨格に特定の機能を有する官能基を導入することで、先に好ましい例として挙げた末端に酸基を有する、相互作用形成性とアルカリ現像性とに優れた特性に加え、他の好ましいポリマー特性を付与することができる。例えば、用いられる2価のモノマーの1つとして、以下で表される長鎖アルキルモノマー骨格を含んだものを用いることで、このポリマーに優れた耐傷性を付与することができるため、この観点から好ましく挙げられる。
本発明に係る長鎖アルキル基を有するモノマーは、下記一般式(1)で表される。
【0033】
【化5】
【0034】
式(1)中、nは4〜40の整数を表し、10〜30が好ましく、12〜20が滑り性の観点でより好ましい。
X1は3価の連結基を表し、この連結基を介してポリマー側鎖に長鎖アルキル基が結合しうる。
このような一般式(1)で表される構造単位として好ましいものを下記一般式(1−2)に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0035】
【化6】
【0036】
式(1−2)中、n=4〜40の整数を表す。Wは2価の連結基を表し、Z1、Z2、Z3はそれぞれ独立に、水素原子または1価の有機基を表す。
上記Wとしては、炭素数1〜20の直鎖または分岐、鎖状または環状のアルキレン、炭素数2〜20の直鎖または分岐、鎖状または環状のアルケニレン、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜20のアリーレン(単環、複素環)、−OC(=O)−、−OC(=O)Ar−、−OC(=O)O−、−OC(=O)OAr−、−C(=O)NR−、−C(=O)NAr−、−SO2NR−、−SO2NAr−、−O−(アルキレンオキシ、ポリアルキレンオキシ)、−OAr−アリーレンオキシ、ポリアリーレンオキシ)、−C(=O)O−、−C(=O)O−Ar−、−C(=O)Ar−、−C(=O)−、−SO2O−、−SO2OAr−、−OSO2−、−OSO2Ar−、−NRSO2−、−NArSO2−、−NRC(=O)−、−NArC(=O)−、−NRC(=O)O−、−NArC(=O)O−、−OC(=O)NR−、−OC(=O)NAr−、−NAr−、−NR−、−N+RR’−、−N+RAr−、−N+ArAr’−、−S−、−SAr−、−ArS−、ヘテロ環基(ヘテロ原子としては例えば、窒素、酸素およびイオウ等を少なくとも1個以上含み、3ないし12員環の単環、縮合環)、−OC(=S)−、−OC(=S)Ar−、−C(=S)O−、−C(=S)OAr−、−C(=S)OAr−、−C(=O)S−、−C(=O)SAr−、−ArC(=O)−、−ArC(=O)NR−、−ArC(=O)NAr−、−ArC(=O)O−、−ArC(=O)O−、−ArC(=O)S−、−ArC(=S)O−、−ArO−、−ArNR−等が挙げられる。
なお、上記R、R’は、水素原子、直鎖または分岐のアルキル基、鎖状または環状のアルキル基、直鎖または分岐のアルケニル基、鎖状または環状のアルケニル基、直鎖または分岐のアルキニル基、鎖状または環状のアルキニル基を表し、Ar、Ar’はアリール基を表す。
【0037】
このような連結基の中でも炭素数6〜20のアリーレン(単環、複素環)、−C(=O)NR−、−C(=O)NAr−、−O−(アルキレンオキシ、ポリアルキレンオキシ)、−OAr−(アリーレンオキシ、ポリアリーレンオキシ)、−C(=O)O−、−C(=O)O−Ar−、−C(=O)−、−C(=O)Ar−、−S−、−SAr−、−ArS−、−ArC(=O)−、−ArC(=O)O−、−ArC(=O)O−、−ArO−、−ArNR−等が好ましく、炭素数6〜20のアリーレン(単環、複素環)、−C(=O)NR−、−C(=O)NAr−、−O−(アルキレンオキシ、ポリアルキレンオキシ)、−OAr−(アリーレンオキシ、ポリアリーレンオキシ)、−C(=O)O−、−C(=O)O−Ar−、−SAr−、−ArS−、−ArC(=O)−、−ArC(=O)O−、−ArC(=O)O−、−ArO−、−ArNR−等がより好ましい。
【0038】
また、本発明において、上記Wで表される連結基としては、ここで挙げた連結基を2種類以上組み合わせたものであっても良い。
【0039】
式(1−2)中、Z1、Z2、Z3としてはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20の直鎖または分岐、鎖状または環状のアルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ヘプタフルオロプロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、t−ペンチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、オクチル、2−エチルヘキシル、ドデシル等)、炭素数2〜20の直鎖または分岐、鎖状または環状のアルケニル基(例えばビニル、1−メチルビニル、シクロヘキセン−1−イル等)、炭素数2〜20のアルキニル基(例えば、エチニル、1−プロピニル等)、炭素数6〜20のアリール基(例えば、フェニル、ナフチル、アントリル等)、炭素数1〜20のアシルオキシ基(例えば、アセトキシ、テトラデカノイルオキシ、ベンゾイルオキシ等)、炭素数2〜20のアルコキシカルボニルオキシ基(例えば、メトキシカルボニルオキシ基、2−メトキシエトキシカルボニルオキシ基など)、炭素数2〜20のアリールオキシカルボニルオキシ基(例えばフェノキシカルボニルオキシ基など)、炭素数1〜20のカルバモイルオキシ基(例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ等)、炭素数1〜20のカルボンアミド基(例えば、ホルムアミド、N−メチルアセトアミド、アセトアミド、N−メチルホルムアミド、ベンツアミド等)、炭素数1〜20のスルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド、ドデカンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、p−トルエンスルホンアミド等)、炭素数1〜20のカルバモイル基(例えば、N−メチルカルバモイル、N,N−ジエチルカルバモイル、N−メシルカルバモイル等)、炭素数0〜20のスルファモイル基(例えば、N−ブチルスルファモイル、N,N−ジエチルスルファモイル、N−メチル−N−(4−メトキシフェニル)スルファモイル等)、炭素数1〜20のアルコキシ基(例えば、メトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、オクチルオキシ、t−オクチルオキシ、ドデシルオキシ、2−(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシ)エトキシ、ポリアルキレンオキシ等)、炭素数6〜20のアリールオキシ基(例えば、フェノキシ、4−メトキシフェノキシ、ナフトキシ等)、炭素数7〜20のアリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル、ナフトキシカルボニル等)、
【0040】
炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル等)、炭素数1〜20のN−アシルスルファモイル基(例えば、N−テトラデカノイルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル等)、炭素数1〜20のN−スルファモイルカルバモイル基(例えばN−メタンスルホニルカルバモイル基など)、炭素数1〜20のアルキルスルホニル基(例えば、メタンスルホニル、オクチルスルホニル、2−メトキシエチルスルホニル、2−ヘキシルデシルスルホニル等)、炭素数6〜20のアリールスルホニル基(例えば、ベンゼンスルホニル、p−トルエンスルホニル、4−フェニルスルホニルフェニルスルホニル等)、炭素数2〜20のアルコキシカルボニルアミノ基(例えば、エトキシカルボニルアミノ等)、炭素数7〜20のアリールオキシカルボニルアミノ基(例えば、フェノキシカルボニルアミノ、ナフトキシカルボニルアミノ等)、炭素数0〜20のアミノ基(例えばアミノ、メチルアミノ、ジエチルアミノ、ジイソプロピルアミノ、アニリノ、モルホリノ等)、炭素数3〜20のアンモニオ基(例えば、トリメチルアンモニオ基、ジメチルベンジルアンモニオ基など)、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、ヒドロキシ基、スルホ基、メルカプト基、炭素数1〜20のアルキルスルフィニル基(例えば、メタンスルフィニル、オクタンスルフィニル等)、炭素数6〜20のアリールスルフィニル基(例えば、ベンゼンスルフィニル、4−クロロフェニルスルフィニル、p−トルエンスルフィニル等)、炭素数1〜20のアルキルチオ基(例えば、メチルチオ、オクチルチオ、シクロヘキシルチオ等)、炭素数6〜20のアリールチオ基(例えば、フェニルチオ、ナフチルチオ等)、炭素数1〜20のウレイド基(例えば、3−メチルウレイド、3,3−ジメチルウレイド、1,3−ジフェニルウレイド等)、炭素数3〜20のヘテロ環基(ヘテロ原子としては例えば、窒素、酸素およびイオウ等を少なくとも1個以上含み、3ないし12員環の単環、縮合環で、例えば、2−フリル、2−ピラニル、2−ピリジル、2−チエニル、2−イミダゾリル、モルホリノ、2−キノリル、2−ベンツイミダゾリル、2−ベンゾチアゾリル、2−ベンゾオキサゾリル等)、炭素数2〜20のアシル基(例えば、アセチル、ベンゾイル、トリフルオロアセチル等)、炭素数0〜20のスルファモイルアミノ基(例えば、N−ブチルスルファモイルアミノ、N−フェニルスルファモイルアミノ等)、炭素数3〜50のシリル基(例えば、トリメチルシリル、ジメチル−t−ブチルシリル、トリフェニルシリル等)、アゾ基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)が挙げられる。
また、上記Z1〜Z3が水素原子、またはハロゲン原子以外の場合、これらはさらに置換基を有していてもよく、その置換基の例としては上記具体例として挙げた如き置換基が挙げられる。
【0041】
上記Z1〜Z3としては、水素原子、炭素数1〜20の直鎖または分岐、鎖状または環状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜20のアシルオキシ基、炭素数1〜20のカルボンアミド基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数7〜20のアリールオキシカルボニル基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数0〜20のアミノ基、シアノ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子が好ましく、水素原子、炭素数1〜20の直鎖または分岐、鎖状または環状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜20のアシルオキシ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数7〜20のアリールオキシカルボニル基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数0〜20のアミノ基、シアノ基、ハロゲン原子がより好ましい。
【0042】
上記一般式(1−2)で表される構造単位は、耐傷性の観点から、さらに下記一般式(1−3)で表される構造単位であることが好ましい。
【0043】
【化7】
【0044】
式(1−3)中、n=4〜40の整数を表し、Rは、水素原子またはメチル基を表す。
Wは上記一般式(1−2)で挙げたものと同義である。以下に、このようなWで表される2価の置換基として、耐傷性と画像形成性の観点から特に好ましい具体例を挙げるが本発明はこれらに限定されるものではない。
【0045】
【化8】
【0046】
Z1は上記一般式(1−2)で挙げたものと同義である。以下に、このようなZ1で表される1価の有機基として、耐傷性と画像形成性の観点から特に好ましい具体例を挙げるが本発明はこれらに限定されるものではない。
【0047】
【化9】
【0048】
ここで、本発明に係る長鎖アルキル基を有する構造単位の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0049】
【化10】
【0050】
【化11】
【0051】
【化12】
【0052】
本発明に係る特定ポリマー中の、該長鎖アルキル基含有モノマーの組成モル比は、画像形成性の観点から10〜90モル%であることが好ましく、20〜80モル%であることがより好ましく、30〜70モル%であることが最も好ましい。
【0053】
上記の炭素数4〜40の長鎖アルキル基含有モノマーとしては、分子内に付加重合可能なエチレン性不飽和基を有する化合物が好ましく、溶剤溶解性や感材を作製した場合の耐キズ性改良効果、表面被覆性、画像形成性への影響の小ささ等の観点から、長鎖アルキル基を有するアクリレート系化合物、長鎖アルキル基を有するメタクリレート系化合物、長鎖アルキル基を有するアクリルアミド系化合物、長鎖アルキル基を有するメタクリルアミド系化合物、長鎖アルキル基を有するスチレン系化合物、長鎖アルキル基を有するビニル系化合物、長鎖アルキル基を有するビニルエーテル系化合物、長鎖アルキル基を有するマレイン酸系化合物、長鎖アルキル基を有するフマル酸系化合物などが好ましい。
【0054】
上記一般式(I)中に含まれるXのモノマー骨格として、上記の長鎖アルキルモノマー骨格以外に以下のモノマー(1)〜(17)を共重合させても良い。
(1)フェノール基を有するモノマーとして、フェノール基を有するアクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、又はヒドロキシスチレン等が挙げられる。
(2)スルホンアミド基を有する化合物として、窒素原子に少なくとも一つの水素原子が結合したスルホンアミド基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物が挙げられる。中でも、アクリロイル基、アリル基、又はビニロキシ基と、置換或いはモノ置換アミノスルホニル基又は置換スルホニルイミノ基と、を分子内に有する低分子化合物が好ましく、例えば、下記一般式(i)〜一般式(v)で表される化合物が挙げられる。
【0055】
【化13】
【0056】
一般式(i)〜一般式(v)において、X1、X2は、各々独立に、−O−又は−NR7を表す。R1、R4は、各々独立に、水素原子又は−CH3を表す。R2、R5、R9、R12、及び、R16は、各々独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基又はアラルキレン基を表す。R3、R7、及び、R13は、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。また、R6、R17は、各々独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基を表す。R8、R10、R14は、各々独立に、水素原子又は−CH3を表す。R11、R15は、各々独立に、単結合又は置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基又はアラルキレン基を表す。Y1、Y2は、それぞれ独立に単結合又はCOを表す。
【0057】
一般式(i)〜一般式(v)で表される化合物のうち、本発明に係る平版印刷用材料では、特に、m−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド等を好適に使用することができる。
【0058】
(3)活性イミド基を有するモノマーとして、下記構造式で表される活性イミド基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物を挙げることができる。
【0059】
【化14】
【0060】
具体的には、N−(p−トルエンスルホニル)メタクリルアミド、N−(p−トルエンスルホニル)アクリルアミド等を好適に使用することができる。
【0061】
(4)カルボン酸基を有するモノマーとして、例えば、カルボン酸基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物を挙げることができる。
(5)スルホン酸基を有するモノマーとして、例えば、スルホン酸基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物を挙げることができる。
(6)リン酸基を有するモノマーとして、例えば、リン酸基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物を挙げることができる。
(7)例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレートまたは2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の脂肪族水酸基を有するアクリル酸エステル類、およびメタクリル酸エステル類。
(8)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸アミル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルアクリレート、N−ジメチルアミノエチルアクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノアルキレート等のアクリレート。
(9)メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルメタクリレート、N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート等のメタクリレート。
【0062】
(10)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−ヘキシルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド等のアクリルアミドもしくはメタクリルアミド。
(11)エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類。アルキルエーテル
(12)ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等のビニルエステル類。
【0063】
(13)スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン類。
(14)メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトン等のビニルケトン類。
(15)エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類。
【0064】
(16)N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、4−ビニルピリジン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
(17)マレイミド、N−アクリロイルアクリルアミド、N−アセチルメタクリルアミド、N−プロピオニルメタクリルアミド、N−(p−クロロベンゾイル)メタクリルアミド等の不飽和イミド。
(17)マレイン酸、マレイン酸無水物、フマル酸、イタコン酸類。
【0065】
(連鎖移動剤を用いて末端を修飾したポリマーの合成法)
本発明における連鎖移動剤を用いて末端を修飾したポリマーは、上記長鎖アルキル基を有するモノマー骨格、及び、所望により併用される、付加重合可能なエチレン性不飽和基を有するモノマー骨格、を共重合させて得たポリマーの片末端に、連鎖移動剤によるラジカル連鎖移動重合により、特定官能基を導入摺れることで合成した分子量1,000〜50,000のポリマーである。
連鎖移動剤を用いて末端を修飾したポリマーは、片末端に特定官能基、好ましくはカルボキシ基、を有するメルカプタン系連鎖移動剤、若しくは、ヨウ素系連鎖移動剤を用いることにより、或いは、アリルスルフィド系連鎖移動剤の存在下で末端に導入するモノマーをラジカル重合させることにより、又は、連鎖移動剤を使用せず、カルボキシ基を有するラジカル重合開始剤を用いてモノマーをラジカル重合させる方法を用いること、などにより合成することができる。目的とする連鎖移動剤を用いて末端を修飾したポリマーの分子量の制御が容易という観点からは、カルボキシ基を有する連鎖移動剤を用いるラジカル重合法を採用することが好ましい。
【0066】
上記連鎖移動剤を用いて末端を修飾したポリマーを合成する際にラジカル重合に用いる有機溶媒としては、トルエン、1−メトキシー2−プロパノール、メチルエチルケトン、酢酸エチル、THF,メタノール、エタノールなどのアルコール、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、シメチルスルホキシドなどを用いることができる。
【0067】
ラジカル重合に連鎖移動剤を用いる場合の好ましい使用量は、全単量体の合計量を基準にして、0.3〜20質量%である。連鎖移動剤の量及び/又は後述するラジカル重合開始剤の使用量によって、重合体の分子量を制御することができる。
【0068】
合成に用いられるラジカル重合開始剤としては、アゾ系開始剤及び過酸化物開始剤が挙げられるが、副生成物が少ないという観点からは、アゾ系開始剤を用いることが好ましい。
本発明に使用可能な重合開始剤の具体例をその略称と共に示せば、2、2−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、1−アゾビス−1−シクロヘキサンカルボニトリル(ACHN)、4、4’−アゾビス−4−シアノバレリックアシッド(ACVA)等が挙げら、これらのなかでも、ACVAは分子中にカルボキシ基を有しており、連鎖移動剤を用いない場合に好適に使用できる。
ラジカル重合開始剤の好ましい添加量としては、連鎖移動剤を併用する場合には、用いる単量体のに対して固形分で0.05〜0.8質量%程度であり、連鎖移動剤を併用しない場合には、1〜20質量%の範囲であることが好ましい。
【0069】
本発明に用いる連鎖移動剤を用いて末端を修飾したポリマーとしては、重量平均分子量が1,000以上、数平均分子量が1,000以上のものが好ましく用いられる。さらに好ましくは、ポリスチレン換算で重量平均分子量が2500〜500,000で、特に好ましくは3,000〜200,000である。このようなポリマーは、1種類を用いてもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0070】
以下に、本発明に係る特定ポリマーの具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下は、一般式(I)で示される構造において、Xが長鎖アルキル基を有するモノマー骨格のみで構成された特定ポリマーの具体例である。
【0071】
【化15】
【0072】
【化16】
【0073】
【化17】
【0074】
【化18】
【0075】
【化19】
【0076】
【化20】
【0077】
以下は、一般式(I)で示される構造において、Xが長鎖アルキル基を有するモノマー骨格と、他の併用可能なモノマー骨格により構成された特定ポリマーの具体例である。
【0078】
【化21】
【0079】
【化22】
【0080】
【化23】
【0081】
【化24】
【0082】
【化25】
【0083】
【化26】
【0084】
【化27】
【0085】
【化28】
【0086】
【化29】
【0087】
【化30】
【0088】
【化31】
【0089】
【化32】
【0090】
【化33】
【0091】
【化34】
【0092】
【化35】
【0093】
【化36】
【0094】
【化37】
【0095】
【化38】
【0096】
【化39】
【0097】
【化40】
【0098】
【化41】
【0099】
【化42】
【0100】
【化43】
【0101】
連鎖移動剤を用いて末端を修飾したポリマーの使用量は、画像記録材料の全成分の重量に対して、通常0.1〜30質量%、好ましくは0.5〜20質量%、更に好ましくは1〜10質量%の量が使用され、この範囲において、良好な結果を得ることができる。使用量が30質量%を超えると、ポジ型画像形成材料としての画像形成性や、感度が添加量の増大につれて徐々に悪化する傾向にある。一方、使用量が0.1質量%に満たない場合は、条件によっては本発明の効果である動摩擦係数の低下に起因する耐傷性向上効果が充分に得られないことがある。
【0102】
連鎖移動剤を用いて末端を修飾したポリマー中の残留モノマー量は、本発明の画像記録材料を平版印刷版用原版に適用した場合、該平版印刷版用原版を積層する際に保護紙(合紙)、基板裏面への転写や平版印刷版用原版製造時のローラーへの転写等の問題から、10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましい。
【0103】
連鎖移動剤を用いて末端を修飾したポリマーは画像形成材料中に相溶していてもよく、また、他の成分と相分離している状態であってもよい。
連鎖移動剤を用いて末端を修飾したポリマーを含む画像形成材料を製膜した場合の最表面は、平滑であっても、凹凸を有していてもよく、いずれの場合も、本発明の効果を得ることができる。
連鎖移動剤を用いて末端を修飾したポリマーを含む画像形成材料表面の空中水滴接触角は60度から140度の範囲であることが好ましい。
【0104】
以上のようにして得られた特定ポリマーは、後述する赤外線吸収剤及び所望により併用される皮膜形成性高分子化合物などと混合し、本発明の画像記録材料となる。
また、この画像記録材料はを平版印刷版原版の記録層として用いる場合には、上記特定ポリマーに、目的に応じて、後述するアルカリ可溶性樹脂やあるいは重合性化合物などを混合して、適当な溶媒に溶解し、支持体上に塗布・乾燥して記録層を形成することで適用する。
【0105】
〔(A)赤外線吸収剤〕
本発明に用いられる赤外線吸収剤としては、光エネルギー照射線を吸収し、熱を発生する物質であれば特に吸収波長域の制限はなく用いることができるが、入手容易な高出力レーザーへの適合性の観点から、波長700nm〜1200nmに吸収極大を有する赤外線吸収性染料又は顔料が好ましく挙げられる。
【0106】
そのような染料としては、市販の染料及び例えば「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、ナフタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクアリリウム色素、(チオ)ピリリウム塩、金属チオレート錯体、インドアニリン金属錯体系染料、オキソノール染料、ジイモニウム染料、アミニウム染料、クロコニウム染料、分子間CT色素等の染料が挙げられる。
【0107】
中でも、好ましい染料としては、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭59−202829号、特開昭60−78787号等に記載されているシアニン染料、または、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等に記載されているメチン染料、または、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等に記載されているナフトキノン染料、または、特開昭58−112792号等に記載されているスクアリリウム色素、または、英国特許434,875号記載のシアニン染料、等を挙げることができる。
【0108】
また、米国特許第5,156,938号記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号(米国特許第4,327,169号)記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号、同5−19702号に開示されているピリリウム化合物も好ましく用いられる。
【0109】
また、染料として好ましい別の例として米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収染料を挙げることもできる。
【0110】
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、フタロシアニン染料、オキソノール染料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、チオピリリウム染料、ニッケルチオレート錯体が挙げられる。
さらに、下記一般式(a)〜一般式(f)で示される染料が光熱変換効率に優れるため好ましく、特に下記一般式(a)で示されるシアニン色素は、本発明の画像記録材料に使用した場合に、アルカリ溶解性樹脂との高い相互作用を与え、且つ、安定性、経済性に優れるため最も好ましい。
【0111】
【化44】
【0112】
一般式(a)中、R1、R2は各々独立に炭素原子数1〜12のアルキル基を表し、アルキル基上にはアルコキシ基、アリール基、アミド基、アルコキシカルボニル基、水酸基、スルホ基、カルボキシル基より選択される置換基を有しても良い。Y1、Y2は各々独立に酸素、硫黄、セレン、ジアルキルメチレン基または−CH=CH−を表す。Ar1、Ar2は各々独立に芳香族炭化水素基を表し、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基より選択される置換基を有しても良く、Y1、Y2と隣接した連続2炭素原子で芳香環を縮環しても良い。
【0113】
Xは電荷の中和に必要なカウンターイオンを表し、色素カチオン部がアニオン性の置換基を有する場合は必ずしも必要ではない。Qはトリメチン基、ペンタメチン基、ヘプタメチン基、ノナメチン基またはウンデカメチン基より選択されるポリメチン基を表し、露光に用いる赤外線に対する波長適性と安定性の点からペンタメチン基、ヘプタメチン基またはノナメチン基が好ましく、いずれかの炭素上に連続した3つのメチン鎖を含むシクロヘキセン環またはシクロペンテン環を有することが安定性の点で好ましい。
【0114】
Qはアルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、シクロアルキル基、アリール基、オキシ基、イミニウム塩基、下記一般式(a−i)で表される置換基より選択される基で置換されていても良く、好ましい置換基としては塩素原子等のハロゲン原子、ジフェニルアミノ基等のジアリールアミノ基、フェニルチオ基等のアリールチオ基が挙げられる。
【0115】
【化45】
【0116】
一般式(a−1)中、R3及びR4はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基、又は炭素数6〜10のアリール基を表し、Y3は酸素原子又は硫黄原子を表す。
【0117】
一般式(a)で示されるシアニン色素のうち、波長800〜840nmの赤外線で露光する場合は、特に好ましいものとしては下記一般式(a−1)〜(a−4)で示されるヘプタメチンシアニン色素を挙げることができる。
【0118】
【化46】
【0119】
一般式(a−1)中、X1は、水素原子またはハロゲン原子を表す。R1及びR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。記録層塗布液の保存安定性から、R1及びR2は、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、さらに、R1とR2とは互いに結合し、5員環又は6員環を形成していることが特に好ましい。
【0120】
Ar1、Ar2は、それぞれ同じでも異なっていても良く、置換基を有していても良い芳香族炭化水素基を示す。好ましい芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環及びナフタレン環が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素原子数12個以下のアルコキシ基が挙げられる。Y1、Y2は、それぞれ同じでも異なっていても良く、硫黄原子又は炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を示す。R3、R4は、それぞれ同じでも異なっていても良く、置換基を有していても良い炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホ基が挙げられる。R5、R6、R7及びR8は、それぞれ同じでも異なっていても良く、水素原子又は炭素原子数12個以下の炭化水素基を示す。原料の入手性から、好ましくは水素原子である。また、Za-は、電荷の中和に必要な対アニオンを示し、R1〜R8のいずれかがアニオン性置換基で置換されている場合は、Za-は必要ない。好ましいZa-は、記録層塗布液の保存安定性から、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン、及びスルホン酸イオンである。上記一般式(a−1)で示されるヘプタメチン色素は、ポジ型の画像記録材料に好適に用いることができ、特にフェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂と組み合わせたいわゆる相互作用解除型のポジ感材に好ましく用いられる。
【0121】
【化47】
【0122】
一般式(a−2)中、R1およびR2はそれぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1〜12の炭化水素基を示し、R1とR2とは互いに結合し環構造を形成していても良く、形成する環としては5員環または6員環が好ましく、5員環が特に好ましい。Ar1、Ar2は、それぞれ同じでも異なっていても良く、置換基を有していても良い芳香族炭化水素基を示す。好ましい芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環およびナフタレン環が挙げられる。また、該芳香族炭化水素基上の好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、ハロゲン化アルキル基等が挙げられ、電子吸引性の置換基が特に好ましい。Y1およびY2は、それぞれ同じでも異なっていても良く、硫黄原子または炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を示す。R3およびR4は、それぞれ同じでも異なっていても良く、置換基を有していても良い炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホ基が挙げられる。R5、R6、R7およびR8は、それぞれ同じでも異なっていても良く、水素原子または炭素原子数12個以下の炭化水素基を示す。原料の入手性から、好ましくは水素原子である。R9およびR10は、それぞれ同じでも異なっていても良く、置換基を有していても良い炭素原子数6〜10の芳香族炭化水素基、炭素原子数1〜8のアルキル基、水素原子またはR9とR10とが互いに結合し下記構造の環を形成しても良い。
【0123】
【化48】
【0124】
R9およびR10は上記のうち、フェニル基等の芳香族炭化水素基が最も好ましい。
また、X-は、電荷の中和に必要な対アニオンを上記一般式(a−1)のZa-と同様の定義である。上記一般式(a−2)で示されるヘプタメチン色素は、オニウム塩等の酸および/またはラジカル発生剤を併用した画像記録材料に好適に用いることができ、特にスルホニウム塩やヨードニウム塩等のラジカル発生剤を併用したネガ型感材に好ましく用いられる。
【0125】
【化49】
【0126】
一般式(a−3)中、R1〜R8、Ar1、Ar2、Y1、Y2およびX-は、それぞれ前記一般式(a−2)におけるのと同義である。Ar3はフェニル基、ナフチル基等の芳香族炭化水素基、または窒素、酸素および硫黄原子のうち少なくとも1つを含有する単環または多環の複素球基を示し、チアゾール系、ベンゾチアゾール系、ナフトチアゾール系、チアナフテノ−7′,6′,4,5−チアゾール系、オキサゾール系、ベンゾオキサゾール系、ナフトオキサゾール系、セレナゾール系、ベンゾセレナゾール系、ナフトセレナゾール系、チアゾリン系、2−キノリン系、4−キノリン系、1−イソキノリン系、3−イソキノリン系、ベンゾイミダゾール系、3,3−ジアルキルベンゾインドレニン系、2−ピリジン系、4−ピリジン系、3,3−ジアルキルベンゾ[e]インドール系、テトラゾール系、トリアゾール系、ピリミジン系、およびチアジアゾール系よりなる群から選択される複素環基が好ましく、特に好ましい複素環基としては下記構造のものが挙げられる。
【0127】
【化50】
【0128】
【化51】
【0129】
一般式(a−4)中、R1〜R8、Ar1、Ar2、Y1およびY2は、それぞれ前記一般式(a−2)におけるのと同義である。R11およびR12は、それぞれ同じでも異なっていても良く、水素原子、アリル基、シクロへキシル基または炭素原子数1〜8のアルキル基を示す。Zは酸素原子または硫黄原子を示す。
【0130】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(a)で示されるシアニン色素の具体例としては、以下に例示するものの他、特開2001−133969明細書の段落番号[0017]〜[0019]、特開2002−40638明細書の段落番号[0012]〜[0038]、特開2002−23360明細書の段落番号[0012]〜[0023]、に記載されたものを挙げることができる。
【0131】
【化52】
【0132】
【化53】
【0133】
【化54】
【0134】
【化55】
【0135】
【化56】
【0136】
【化57】
【0137】
【化58】
【0138】
前記一般式(b)中、Lは共役炭素原子数7以上のメチン鎖を表し、該メチン鎖は置換基を有していてもよく、置換基が互いに結合して環構造を形成していてもよい。Zb+は対カチオンを示す。好ましい対カチオンとしては、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、ホスホニウム、ピリジニウム、アルカリ金属カチオン(Ni+、K+、Li+)などが挙げられる。R9〜R14及びR15〜R20は互いに独立に水素原子又はハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、カルボニル基、チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシ基、又はアミノ基から選択される置換基、或いは、これらを2つ若しくは3つ組合せた置換基を表し、互いに結合して環構造を形成していてもよい。ここで、前記一般式(b)中、Lが共役炭素原子数7のメチン鎖を表すもの、及び、R9〜R14及びR15〜R20がすべて水素原子を表すものが入手の容易性と効果の観点から好ましい。
【0139】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(b)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
【0140】
【化59】
【0141】
【化60】
【0142】
前記一般式(c)中、Y3及びY4は、それぞれ、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、又はテルル原子を表す。Mは、共役炭素数5以上のメチン鎖を表す。R21〜R24及びR25〜R28は、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、カルボニル基、チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシ基、又はアミノ基を表す。また、式中Za-は対アニオンを表し、前記一般式(a)におけるZa-と同義である。
【0143】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(c)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
【0144】
【化61】
【0145】
【化62】
【0146】
前記一般式(d)中、R29ないしR32は各々独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基を示す。R33及びR34は各々独立に、アルキル基、置換オキシ基、又はハロゲン原子を示す。n及びmは各々独立に0ないし4の整数を示す。R29とR30、又はR31とR32はそれぞれ結合して環を形成してもよく、またR29及び/又はR30はR33と、またR31及び/又はR32はR34と結合して環を形成しても良く、さらに、R33或いはR34が複数存在する場合に、R33同士あるいはR34同士は互いに結合して環を形成してもよい。X2及びX3は各々独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基を示す。Qは置換基を有していてもよいトリメチン基又はペンタメチン基であり、2価の有機基とともに環構造を形成してもよい。Zc−は対アニオンを示し、前記一般式(a)におけるZa-と同義である。
【0147】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(d)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
【0148】
【化63】
【0149】
【化64】
【0150】
前記一般式(e)中、R35〜R50はそれぞれ独立に、水素原子または置換基を有してもよい、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、水酸基、カルボニル基、チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシ基、アミノ基、オニウム塩構造を示す。Mは2つの水素原子若しくは金属原子、ハロメタル基、オキシメタル基を示すが、そこに含まれる金属原子としては、周期律表のIA、IIA、IIIB、IVB族原子、第一、第二、第三周期の遷移金属、ランタノイド元素が挙げられ、中でも、銅、ニッケル、マグネシウム、鉄、亜鉛、スズ、コバルト、アルミニウム、チタン、バナジウムが好ましく、バナジウム、ニッケル、亜鉛、スズが特に好ましい。これら金属原子は原子価を適切にするために酸素原子、ハロゲン原子等と結合していても良い。
【0151】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(e)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
【0152】
【化65】
【0153】
【化66】
【0154】
【化67】
【0155】
前記一般式(f−1)、(f−2)中、R51〜R58はそれぞれ独立に、水素原子または置換基を有してもよいアルキル基、アリール基を示す。X-は、前記一般式(a−2)におけるのと同義である。
【0156】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(f−1)、(f−2)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
【0157】
【化68】
【0158】
上記以外の赤外線吸収剤としては、特開2001−242613号公報に記載の複数の発色団を有する染料、特開2002−97384号公報、米国特許第6,124,425号に記載の高分子化合物に共有結合で発色団が連結された色素、米国特許6,248,893号に記載のアニオン染料、特開2001−347765号公報に記載の表面配向性基を有する染料等を好適に用いることができる。
【0159】
本発明において赤外線吸収剤として使用される顔料としては、市販の顔料及びカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が挙げられる。
【0160】
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。これらの顔料のうち好ましいものはカーボンブラックである。
【0161】
これら顔料は表面処理をせずに用いてもよく、表面処理を施して用いてもよい。表面処理の方法には、樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤、エポキシ化合物、ポリイソシアネート等)を顔料表面に結合させる方法等が考えられる。上記の表面処理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)及び「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0162】
顔料の粒径は0.01μm〜10μmの範囲にあることが好ましく、0.05μμm〜1μμmの範囲にあることがさらに好ましく、特に0.1μμm〜1μμmの範囲にあることが好ましい。顔料の粒径が0.01μμm未満のときは分散物の画像記録層塗布液中での安定性の点で好ましくなく、また、10μmを越えると画像記録層の均一性の点で好ましくない。
【0163】
顔料を分散する方法としては、インク製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0164】
これらの顔料もしくは染料は、記録層を構成する全固形分に対し0.01〜50質量%、好ましくは0.1〜10質量%、染料の場合特に好ましくは0.5〜10質量%、顔料の場合特に好ましくは0.1〜10質量%の割合で添加することができる。顔料もしくは染料の添加量が0.01質量%未満であると感度が低くなる傾向があり、また50質量%を越えて配合すると、配合量の増加にしたがって記録層の均一性や、皮膜の耐久性に好ましくない影響を与えるおそれがでてくる。また、用いられる染料もしくは顔料は単一の化合物であっても、2種以上の化合物を混合したものでもよく、複数の波長の露光機へ対応するために、吸収波長の異なる染料もしくは顔料を併用することも好ましくおこなわれる。
【0165】
以下、本発明の画像記録材料をポジ型平版印刷版原版およびネガ型平版印刷版原版の記録層として用いた場合を例に挙げて説明する。
【0166】
[ポジ型平版印刷版原版]
本発明に係るポジ型平版印刷版原版は、支持体上に、(A)上記特定ポリマーと、(B)上記赤外線吸収剤と、を含有し、赤外線レーザの露光によりアルカリ性水溶液に対する溶解性が増大する記録層を備えることを特徴とする。また、このような記録層には、皮膜形成能を向上させるために、(C)アルカリ可溶性樹脂を含有する必要がある。
このようなポジ型平版印刷版原版は、未露光部(画像部)では、赤外線吸収剤がアルカリ可溶性樹脂との相互作用によりアルカリ可溶性樹脂の溶解性を実質的に低下させる溶解阻止剤として働き、さらに、本発明に係る特定ポリマーに起因する強固な相互作用の形成と、長鎖アルキル基による表面耐傷性が発現し、露光部(非画像部)では、発生した熱により赤外線吸収剤とバインダーポリマー間、及び、特定ポリマーの末端基どうし、の相互作用が弱まりアルカリ現像液に溶解して画像が形成される。
〔(C)アルカリ可溶性樹脂〕
本発明に係るポジ型の画像記録層に使用できる(C)アルカリ可溶性樹脂としては、高分子中の主鎖および/または側鎖に酸基を含有する単独重合体、これらの共重合体またはこれらの混合物を包含する。酸基に関しては、あらかじめ酸基を有しているモノマーを重合して導入する方法と、重合後の高分子反応によって導入する方法、およびそれらを併用する方法のいずれの方法で導入しても良い。
【0167】
このようなアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、プラスチック・エージ株式会社“フェノール樹脂”、アイピーシー株式会社“フェノール樹脂の合成・硬化・強靱化および応用”、日刊工業新聞社“プラスチック材料講座(15)フェノール樹脂”、工業調査会株式会社“プラスチック全書(15)フェノール樹脂”等に記載されるフェノール樹脂、ポリヒドロキシスチレン、ポリハロゲン化ヒドロキシスチレン、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミドの共重合体、ハイドロキノンモノメタクリレート共重合体の他、特開平7−28244号公報記載のスルホニルイミド系ポリマー、特開平7−36184号公報記載のカルボキシル基含有ポリマー、特開昭51−34711号公報に開示されているようなフェノール性水酸基を含有するアクリル系樹脂、特開平2−866号に記載のスルホンアミド基を有するアクリル系樹脂、ウレタン系の樹脂等、種々のアルカリ可溶性の高分子化合物を用いる事ができ、特に制限はないが、下記(1)〜(6)に挙げる酸基を高分子の主鎖および/または側鎖中に有するものが、アルカリ性現像液に対する溶解性の点、溶解抑制能発現の点で好ましい。
【0168】
(1)フェノール基(−Ar−OH)
(2)スルホンアミド基(−SO2NH−R)
(3)置換スルホンアミド系酸基(以下、「活性イミド基」という。)
〔−SO2NHCOR、−SO2NHSO2R、−CONHSO2R〕
(4)カルボン酸基(−CO2H)
(5)スルホン酸基(−SO3H)
(6)リン酸基(−OPO3H2)
【0169】
上記(1)〜(6)中、Arは置換基を有していてもよい2価のアリール連結基を表し、Rは、置換基を有していてもよい炭化水素基を表す。
【0170】
上記(1)〜(6)より選ばれる酸基を有するアルカリ可溶性樹脂の中でも、(1)フェノール基、(2)スルホンアミド基(3)活性イミド基、および(4)カルボン酸基を有するアルカリ可溶性樹脂が好ましく、特に、(1)フェノール基または(2)スルホンアミド基、および(4)カルボン酸基を有するアルカリ可溶性樹脂が、アルカリ性現像液に対する溶解性、現像ラチチュード、膜強度を十分に確保する点から最も好ましい。
【0171】
上記(1)〜(6)より選ばれる酸基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、以下のものを挙げることができる。
(1)フェノール基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、ノボラック樹脂、レゾール樹脂、ポリビニルフェノール樹脂、フェノール性水酸基を有するアクリル樹脂等が挙げられる。これらの中でも画像形成性や熱硬化性の観点からノボラック樹脂、レゾール樹脂、ポリビニルフェノール樹脂が好ましく、安定性の点からノボラック樹脂、ポリビニルフェノール樹脂がより好ましく、原料入手性、汎用性の観点からノボラック樹脂が特に好ましい。
【0172】
ノボラック樹脂とは、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,5−キシレノール、3,5−キシレノール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、プロピルフェノール、n−ブチルフェノール、tert−ブチルフェノール、1−ナフトール、2−ナフトール、ピロカテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン、ピロガロール、1,2,4−ベンゼントリオール、フロログルシノール、4,4’−ビフェニルジオール、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン等のフェノール類の少なくとも1種を、酸性触媒下、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、フルフラール等のアルデヒド類(ホルムアルデヒドに代えてパラホルムアルデヒドを、アセトアルデヒドに代えてパラアルデヒドを、用いてもよい)、又は、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、の少なくとも1種と重縮合させた樹脂のことを指す。
【0173】
本発明においては、フェノール類として、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,5−キシレノール、3,5−キシレノール、レゾルシノールと、アルデヒド類又はケトン類としてホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒドとの重縮合体が好ましく、特に、m−クレゾール:p−クレゾール:2,5−キシレノール:3,5−キシレノール:レゾルシノールの混合割合がモル比で40〜100:0〜50:0〜20:0〜20:0〜20の混合フェノール類、又は、フェノール:m−クレゾール:p−クレゾールの混合割合がモル比で0〜100:0〜70:0〜60の(混合)フェノール類と、ホルムアルデヒドとの重縮合体が好ましい。
【0174】
なお、本発明に係るポジ型画像記録材料には後述する溶剤抑止剤を含有することが好ましく、その場合は、m−クレゾール:p−クレゾール:2,5−キシレノール:3,5−キシレノール:レゾルシノールの混合割合がモル比で70〜100:0〜30:0〜20:0〜20:0〜20の混合フェノール類、又は、フェノール:m−クレゾール:p−クレゾールの混合割合がモル比で10〜100:0〜60:0〜40の混合フェノール類と、ホルムアルデヒドとの重縮合体が好ましい。
【0175】
また、フェノール基を有するアルカリ可溶性樹脂として、フェノール基を有する重合性モノマーの重合体を挙げる事ができる。
【0176】
フェノール基を有する重合性モノマーとしては、フェノール基を有するアクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、またはヒドロキシスチレン等が挙げられる。
具体的には、N−(2−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、o−ヒドロキシフェニルアクリレート、m−ヒドロキシフェニルアクリレート、p−ヒドロキシフェニルアクリレート、o−ヒドロキシフェニルメタクリレート、m−ヒドロキシフェニルメタクリレート、p−ヒドロキシフェニルメタクリレート、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、2−(2−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−(3−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−(2−ヒドロキシフェニル)エチルメタクリレート、2−(3−ヒドロキシフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルメタクリレート等を好適に使用することができる。
また、酸基前駆体を重合し、高分子化した後で酸基へと誘導しても良い。例えば、酸基前駆体としてp−アセトキシスチレンを重合した後、エステル部を加水分解しフェノール性水酸基へと誘導しても良い。
また、米国特許第4,123,279号明細書に記載されているような、t−ブチルフェノールホルムアルデヒド樹脂、オクチルフェノールホルムアルデヒド樹脂のような、炭素数3〜8のアルキル基を置換基として有するフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体も好適な例として挙げる事ができる。
【0177】
(2)スルホンアミド基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、スルホンアミド基を有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成成分として構成される重合体を挙げることができる。上記のような化合物としては、窒素原子に少なくとも一つの水素原子が結合したスルホンアミド基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物が挙げられる。中でも、アクリロイル基、アリル基、またはビニロキシ基と、置換あるいはモノ置換アミノスルホニル基または置換スルホニルイミノ基と、を分子内に有する低分子化合物が好ましく、例えば、下記一般式(i)〜一般式(v)で表される化合物が挙げられる。
【0178】
【化69】
【0179】
〔式中、X1、X2は、それぞれ独立に−O−または−NR7を表す。R1、R4は、それぞれ独立に水素原子又は−CH3を表す。R2、R5、R9、R12、及び、R16は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基又はアラルキレン基を表す。R3、R7、及び、R13は、それぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。また、R6、R17は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基を表す。R8、R10、R14は、それぞれ独立に水素原子又は−CH3を表す。R11、R15は、それぞれ独立に単結合又は置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基又はアラルキレン基を表す。Y1、Y2は、それぞれ独立に単結合又はCOを表す。〕
【0180】
一般式(i)〜一般式(v)で表される化合物のうち、本発明に係るポジ型平版印刷用材料では、特に、m−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド等を好適に使用することができる。
【0181】
(3)活性イミド基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、活性イミド基を有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成成分として構成される重合体を挙げることができる。上記のような化合物としては、下記構造式で表される活性イミド基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物を挙げることができる。
【0182】
【化70】
【0183】
具体的には、N−(p−トルエンスルホニル)メタクリルアミド、N−(p−トルエンスルホニル)アクリルアミド等を好適に使用することができる。
【0184】
(4)カルボン酸基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、カルボン酸基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成成分とする重合体を挙げることができる。
【0185】
(5)スルホン酸基を有するアルカリ可溶性高分子としては、例えば、スルホン酸基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成単位とする重合体を挙げることができる。
【0186】
(6)リン酸基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、リン酸基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成成分とする重合体を挙げることができる。
【0187】
ポジ型の記録層に用いるアルカリ可溶性樹脂を構成する、前記(1)〜(6)より選ばれる酸基を有する最小構成単位は、特に1種類のみである必要はなく、同一の酸基を有する最小構成単位を2種以上、または異なる酸基を有する最小構成単位を2種以上共重合させたものを用いることもできる。
【0188】
前記共重合体は、共重合させる(1)〜(6)より選ばれる酸基を有する化合物が共重合体中に10モル%以上含まれているものが好ましく、20モル%以上含まれているものがより好ましい。10モル%未満であると、アルカリ可溶性が不十分となりやすく、現像ラチチュードの向上効果が十分達成されないことがある。
【0189】
本発明では、化合物を共重合してアルカリ可溶性樹脂を共重合体として用いる場合、共重合させる化合物として、前記(1)〜(6)の酸基を含まない他の化合物を用いることもできる。(1)〜(6)の酸基を含まない他の化合物の例としては、下記(m1)〜(m13)に挙げる化合物を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
(m1)2−ヒドロキシエチルアクリレート又は2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の脂肪族水酸基を有するアクリル酸エステル類、及びメタクリル酸エステル類。
(m2)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルアクリレート、等のアルキルアクリレート。
(m3)メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルメタクリレート、等のアルキルメタクリレート。
(m4)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−ヘキシルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド等のアクリルアミド若しくはメタクリルアミド。
【0190】
(m5)エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビ
ニルエーテル等のビニルエーテル類。
(m6)ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等のビニルエステル類。
(m7)スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン、p−アセトキシスチレン等のスチレン類。
(m8)メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトン等のビニルケトン類。
(m9)エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類。
(m10)N−ビニルピロリドン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
(m11)マレイミド、N−アクリロイルアクリルアミド、N−アセチルメタクリルアミド、N−プロピオニルメタクリルアミド、N−(p−クロロベンゾイル)メタクリルアミド等の不飽和イミド。
(m12)無水マレイン酸、イタコン酸無水物、アクリル酸クロリド、メタクリル酸クロリド等。
(m13)α位にヘテロ原子が結合したメタクリル酸系モノマー。例えば、特願2001−115595、特願2001−115598等に記載されている化合物を挙げる事ができる。
【0191】
本発明においてアルカリ可溶性樹脂が、前記(1)フェノール性水酸基を有する重合性モノマー、(2)スルホンアミド基を有する重合性モノマー、(3)活性イミド基を有する重合性モノマー、(4)カルボン酸基を有する重合性モノマー、(5)スルホン酸基を有する重合性モノマー、および(6)リン酸基を有する重合性モノマーの単独重合体或いは共重合体の場合、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定によるポリスチレン換算の重量平均分子量(以下、単に重量平均分子量という)が2,000以上、数平均分子量が500以上のものが好ましく、更に好ましくは、重量平均分子量が5,000〜300,000で、数平均分子量が800〜250,000であり、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が1.1〜10のものである。
また、本発明においてアルカリ可溶性高分子化合物がノボラック樹脂である場合には、重量平均分子量が500〜100,000であり、数平均分子量が200〜50,000のものが好ましい。特願2001−126278に記載されるような低分子成分の比率が少ないノボラック樹脂を用いても良い。
【0192】
これらアルカリ可溶性樹脂は、それぞれ1種類或いは2種類以上を組み合わせて使用してもよく、前記記録層全固形分中、30〜99質量%、好ましくは40〜95質量%、特に好ましくは50〜90質量%の添加量で用いられる。
アルカリ可溶性樹脂の添加総量が30質量%未満であると記録層の耐久性が悪化し、また、99質量%を超えると感度、画像形成性の観点で好ましくない。
【0193】
アルカリ可溶性高分子を2種類以上併用する場合、どのような組み合わせを用いても良いが、特に好適な例としては、フェノール性水酸基を有するポリマーとスルホンアミド酸基を有するポリマーとの併用、フェノール性水酸基を有するポリマーとカルボン酸基を有するポリマーとの併用、フェノール性水酸基を有するポリマー2種以上の併用、例えば米国特許第4123279号明細書に記載されているような、t−ブチルフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体や、オクチルフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体のような、炭素数3〜8のアルキル基を置換基として有するフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体、特開2000−241972号公報に記載の芳香環上に電子吸引性基を有するフェノール構造を有するアルカリ可溶性樹脂などとの併用を挙げる事ができる。
【0194】
(酸分解性化合物)
本発明に係るポジ型平版印刷版原版の記録層には(C)アルカリ可溶性樹脂に加えて、露光部のアルカリ現像性向上の目的で、酸を触媒として化学結合を開裂しアルカリ現像液に対する溶解性が増大する化合物(酸分解性化合物)を挙げることもできる。酸分解性化合物とは、分子内に酸で分解し得る結合基を有する化合物と言い代えることができる。このような化合物は、特開平9−171254号公報に「(b)酸で分解し得る結合を少なくとも1つ有する化合物」として記載されたものを用いることができる。酸で分解し得る結合としては、例えば、−(CH2CH2O)n−基(nは2〜5の整数を表す)等を好ましく挙げることができる。
このような化合物中、感度及び現像性の観点から、下記一般式(vi)で表される化合物を用いることが好ましい。
【0195】
【化71】
【0196】
上記一般式(vi)中、R、R1及びR2は、各々水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、スルホ基、カルボキシル基又はヒドロキシル基を表し、p、q及びrは、各々1〜3の整数を表し、m及びnは、各々1〜5の整数を表す。
【0197】
上記一般式(vi)において、R、R1及びR2が表すアルキル基は直鎖でも分岐でもよく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基等が挙げられ、アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペントキシ基等が挙げられ、スルホ基及びカルボキシル基はその塩を包含する。一般式(vi)で表される化合物のうち、m及びnが1又は2である化合物が特に好ましい。一般式(vi)で表される化合物は公知の方法で合成することができる。
【0198】
その他、本発明に適用し得る酸分解性化合物としては、特開昭48−89603号、同51−120714号、同53−133429号、同55−12995号、同55−126236号、同56−17345号に記載のC−O−C結合を有する化合物、特開昭60−37549号、同60−121446号に記載のSi−O−C結合を有する化合物、特開昭60−3625号、同60−10247号に記載されているその他の酸分解化合物を挙げることができ、更に特開昭62−222246号に記載されているSi−N結合を有する化合物、特開昭62−251743号に記載されている炭酸エステル、特開昭62−209451号に記載されているオルト炭酸エステル、特開昭62−280841号に記載されているオルトチタン酸エステル、特開昭62−280842号に記載されているオルトケイ酸エステル、特開昭63−010153号、特開平9−171254号、同10−55067号、同10−111564号、同10−87733号、同10−153853号、同10−228102号、同10−268507号、同282648号、同10−282670号、EP−0884547Alに記載されているアセタール、ケタール及びオルトカルボン酸エステル、特開昭62−244038号に記載されているC−S結合を有する化合物を用いることが出来る。
【0199】
上記酸分解性化合物の中でも特に、特開昭53−133429号、同56−17345号、同60−121446号、同60−37549号、同62−209451号、同63−010153号、特開平9−171254号、同10−55067号、同10−111564号、同10−87733号、同10−153853号、同10−228102号、同10−268507号、同282648号、同10−282670号、EP0884647Al各明細書に記載されているC−O−C結合を有する化合物、Si−O−C結合を有する化合物、オルト炭酸エステル、アセタール類、ケタール類及びシリルエーテル類が好ましい。
この酸分解性化合物の中でも、主鎖中に繰り返しアセタール又はケタール部分を有し、アルカリ現像液中でその溶解度が発生した酸により上昇する高分子化合物が好ましく用いられる。
【0200】
これらの酸分解性化合物は、1種のみを用いても、2種以上を組合せて用いてもよい。また、添加量としては、記録層全固形分に対し5〜70質量%、好ましくは10〜50質量%、より好ましくは15〜35質量%の割合で層中に添加される。添加量が5質量%未満の場合は、非画像部の汚れが発生し易くなり、また添加量が70質量%を越える場合は、画像部の膜強度が不充分となり、いずれも好ましくない。
【0201】
[ネガ型平版印刷版原版]
本発明の画像記録材料は、赤外線レーザの露光によりアルカリ性水溶液に対する溶解性が低下する記録層を備えるネガ型平版印刷版原版の記録層にも好適に適用することができる。ネガ型画像記録材料としては、ラジカル重合系、または、酸触媒架橋系(カチオン重合を含む)のものが挙げられる。
【0202】
<ラジカル重合系>
本発明に係るラジカル重合系平版印刷版原版は、支持体上に、(A)前記赤外線吸収剤と(B)前記特定ポリマーと、を含有し、赤外線レーザの露光により記録層中の重合性化合物が重合、硬化してアルカリ性水溶液に対する溶解性が低下する記録層を備えることを特徴とする。このような記録層には、上記赤外線吸収剤により効率よく発生された熱によりラジカルを発生する(D)ラジカル発生剤と、発生したラジカルを開始剤として重合反応を生起する(E)重合性化合物と、を含有し、さらに必要に応じて、記録層の皮膜特性向上などの目的で(F)バインダーポリマーを含有することができる。
【0203】
ここに用いられるラジカル発生剤と重合性化合物との組合せは、ラジカル重合により形成される膜の強度が記録層としての要求を満たすものであれば、公知のものから適宜選択して用いることができる。また、ラジカル発生剤の反応性向上のために、オニウム塩、還元剤などの促進剤を併用することもできる。ラジカル重合層に使用し得る成分としては、例えば、特開平8−108621号公報において、熱重合性画像記録材料の構成成分として記載された化合物、特開平9−34110号公報において、画像記録材料の構成成分として記載された化合物なども好ましく使用することができる。
【0204】
〔(D)ラジカル発生剤〕
ラジカル重合系平版印刷版原版に用いられるラジカル発生剤としては、一般にラジカル重合による高分子合成反応に用いられる公知のラジカル重合開始剤を特に制限なく使用することができ、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル,2,2’−アゾビスプロピオニトリル等のアゾビスニトリル系化合物、過酸化ベンゾイル,過酸化ラウロイル,過酸化アセチル,過安息香酸−t−ブチル,α−クミルヒドロパーオキサイド,ジ−t−ブチルパーオキサイド,ジイソプロピルパーオキシジカーボネート,t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート,過酸類,アルキルパーオキシカルバメート類,ニトロソアリールアシルアミン類等の有機過酸化物、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過塩素酸カリウム等の無機過酸化物、ジアゾアミノベンゼン,p−ニトロベンゼンジアゾニウム,アゾビス置換アルカン類,ジアゾチオエーテル類,アリールアゾスルホン類等のアゾ又はジアゾ系化合物、ニトロソフェニル尿素、テトラメチルチウラムジスルフィド等のテトラアルキルチウラムジスルフィド類、ジベンゾイルジスルフィド等のジアリールジスルフィド類、ジアルキルキサントゲン酸ジスルフィド類、アリールスルフィン酸類、アリールアルキルスルホン類、1−アルカンスルフィン酸類等を挙げることができる。
【0205】
本発明に用いられるラジカル発生剤としては、光、熱或いはその両方のエネルギーによりラジカルを発生し、重合性の不飽和基を有する化合物の重合を開始、促進する化合物を示す。そのようなラジカル発生剤としては、公知の熱重合開始剤や結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物、光重合開始剤などを使用することができる。
【0206】
本発明において好適に用いられるラジカル発生発生剤は、熱エネルギーによりラジカルを発生し、重合性の不飽和基を有する化合物の重合を、開始、促進させる化合物を指す。本発明に係る熱ラジカル発生剤としては、公知の重合開始剤や結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物などを、適宜、選択して用いることとができる。また、ラジカルを発生する化合物は、単独又は2種以上を併用して用いることができる。
そのようなラジカル発生剤としては、例えば、有機ハロゲン化化合物、カルボニル化合物、有機過酸化化合物、アゾ系重合開始剤、アジド化合物、メタロセン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、有機ホウ酸化合物、ジスルホン酸化合物、オニウム塩化合物、が挙げられる。
【0207】
上記有機ハロゲン化化合物としては、具体的には、若林等、「Bull Chem.Soc Japan」42、2924(1969)、米国特許第3,905,815号明細書、特公昭46−4605号、特開昭48−36281号、特開昭55−32070号、特開昭60−239736号、特開昭61−169835号、特開昭61−169837号、特開昭62−58241号、特開昭62−212401号、特開昭63−70243号、特開昭63−298339号、M.P.Hutt“Jurnal of Heterocyclic Chemistry”1(No3),(1970)」筆に記載の化合物が挙げられ、特に、トリハロメチル基が置換したオキサゾール化合物:S−トリアジン化合物が挙げられる。
【0208】
より好適には、すくなくとも一つのモノ、ジ、又はトリハロゲン置換メチル基がs−トリアジン環に結合したs−トリアジン誘導体、具体的には、例えば、2,4,6−トリス(モノクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(ジクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2―n−プロピル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(α,α,β−トリクロロエチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3,4−エポキシフェニル)−4、6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−〔1−(p−メトキシフェニル)−2,4−ブタジエニル〕−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−スチリル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−i−プロピルオキシスチリル)−4、6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−ナトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−フェニルチオ−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ベンジルチオ−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(ジブロモメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−メトキシ−4,6−ビス(トリブロモメチル)−s−トリアジン等が挙げられる。
【0209】
上記カルボニル化合物としては、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、2−メチルベンゾフェノン、3−メチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4−ブロモベンゾフェノン、2−カルボキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、α−ヒドトキシ−2−メチルフェニルプロパノン、1−ヒドロキシ−1−メチルエチル−(p−イソプロピルフェニル)ケトン、1−ヒドロキシ−1−(p−ドデシルフェニル)ケトン、2−メチルー(4’−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノ−1−プロパノン、1,1,1−トリクロロメチル−(p−ブチルフェニル)ケトン等のアセトフェノン誘導体、チオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン誘導体、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジエチルアミノ安息香酸エチル等の安息香酸エステル誘導体等を挙げることができる。
【0210】
上記アゾ化合物としては例えば、特開平8−108621に記載のアゾ化合物等を使用することができる。
【0211】
上記有機過酸化化合物としては、例えば、トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ブタン、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−オキサノイルパーオキサイド、過酸化こはく酸、過酸化ベンゾイル、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジメトキシイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシオクタノエート、tert−ブチルパーオキシラウレート、ターシルカーボネート、3,3’,4,4’−テトラ−(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ−(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ−(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、カルボニルジ(t−ブチルパーオキシ二水素二フタレート)、カルボニルジ(t−ヘキシルパーオキシ二水素二フタレート)等が挙げられる。
【0212】
上記メタロセン化合物としては、特開昭59−152396号公報、特開昭61−151197号公報、特開昭63−41484号公報、特開平2−249号公報、特開平2−4705号公報、特開平5−83588号公報記載の種々のチタノセン化合物、例えば、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−フェニル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジ−フルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、特開平1−304453号公報、特開平1−152109号公報記載の鉄−アレーン錯体等が挙げられる。
【0213】
上記ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、例えば、特公平6−29285号、米国特許第3,479,185号、同第4,311,783号、同第4,622,286号等の各公報記載の種々の化合物、具体的には、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ブロモフェニル))4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(m−メトキシフェニル)ビイジダゾール、2,2’−ビス(o,o’−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−メチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。
【0214】
上記有機ホウ酸塩化合物としては、例えば、特開昭62−143044号、特開昭62−150242号、特開平9−188685号、特開平9−188686号、特開平9−188710号、特開2000−131837、特開2002−107916、特許第2764769号、特願2000−310808号、等の各公報、及び、Kunz,Martin“Rad Tech ’98.Proceeding April 19−22,1998,Chicago”等に記載される有機ホウ酸塩、特開平6−157623号公報、特開平6−175564号公報、特開平6−175561号公報に記載の有機ホウ素スルホニウム錯体或いは有機ホウ素オキソスルホニウム錯体、特開平6−175554号公報、特開平6−175553号公報に記載の有機ホウ素ヨードニウム錯体、特開平9−188710号公報に記載の有機ホウ素ホスホニウム錯体、特開平6−348011号公報、特開平7−128785号公報、特開平7−140589号公報、特開平7−306527号公報、特開平7−292014号公報等の有機ホウ素遷移金属配位錯体等が具体例として挙げられる。
【0215】
上記ジスルホン化合物としては、特開昭61−166544号、特願2001−132318公報等記載される化合物が挙げられる。
【0216】
上記オニウム塩化合物としては、例えば、S.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,387(1974)、T.S.Bal et al,Polymer,21,423(1980)に記載のジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055号明細書、特開平4−365049号等に記載のアンモニウム塩、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号の各明細書に記載のホスホニウム塩、欧州特許第104、143号、米国特許第5,041,358号、同第4,491,628号の各明細書、特開平2−150848号、特開平2−296514号に記載のヨードニウム塩、欧州特許第370,693号、同390,214号、同233,567号、同297,443号、同297,442号、米国特許第4,933,377号、同4,933,377号、同4,491,628号、同4,760,013号、同4,734,444号、同2,833,827号、独国特許第2,904,626号、同3,604,580号、同3,604,581号の各明細書に記載のスルホニウム塩、
【0217】
J.V.Crivello et al,Macromolecules,10(6),1307(1977)、J.V.Crivello et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,1047(1979)に記載のセレノニウム塩、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)に記載のアルソニウム塩等のオニウム塩等が挙げられる。特に反応性、安定性の面からジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩が挙げられる。本発明において、これらのオニウム塩はイオン性のラジカル重合開始剤として機能する。
本発明において好適に用いられるオニウム塩は、下記一般式(RI−I)〜(RI−III)で表されるオニウム塩である。
【0218】
【化72】
【0219】
式(RI−I)中、Ar11は置換基を1〜6有していても良い炭素数20以下のアリール基を表し、好ましい置換基としては炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルケニル基、炭素数1〜12のアルキニル基、炭素数1〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアリーロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキルアミノ基、炭素数1〜12のジアルキルアミノ基、炭素数1〜12のアルキルアミド基又はアリールアミド基、カルボニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホニル基、炭素数1〜12のチオアルキル基、炭素数1〜12のチオアリール基が挙げられる。
Z11-は1価の陰イオンを表し、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、チオスルホン酸イオン、硫酸イオンであり、安定性の面から過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオンが好ましい。
【0220】
式(RI−II)中、Ar21、Ar22は各々独立に置換基を1〜6有していても良い炭素数20以下のアリール基を表し、好ましい置換基としては炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルケニル基、炭素数1〜12のアルキニル基、炭素数1〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアリーロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキルアミノ基、炭素数1〜12のジアルキルアミノ基、炭素数1〜12のアルキルアミド基又はアリールアミド基、カルボニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホニル基、炭素数1〜12のチオアルキル基、炭素数1〜12のチオアリール基が挙げられる。
Z21-は1価の陰イオンを表し、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、チオスルホン酸イオン、硫酸イオンであり、安定性、反応性の面から過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、カルボン酸イオンが好ましい。
【0221】
式(RI−III)中、R31、R32、R33は各々独立に置換基を1〜6有していても良い炭素数20以下のアリール基又はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表し、好ましくは反応性、安定性の面から、アリール基であることが望ましい。好ましい置換基としては炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルケニル基、炭素数1〜12のアルキニル基、炭素数1〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアリーロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキルアミノ基、炭素数1〜12のジアルキルアミノ基、炭素数1〜12のアルキルアミド基又はアリールアミド基、カルボニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホニル基、炭素数1〜12のチオアルキル基、炭素数1〜12のチオアリール基が挙げられる。
Z31-は1価の陰イオンを表し、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、チオスルホン酸イオン、硫酸イオンであり、安定性、反応性の面から過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、カルボン酸イオンが好ましく、特に、特願2000−160323のカルボン酸イオン、更に好ましくは特願2001−177150、特願2000−266797のカルボン酸イオンが好ましい。
【0222】
以下に、本発明に係るラジカル重合系平版印刷版原版に好適に用いられるラジカル発生剤の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0223】
【化73】
【0224】
【化74】
【0225】
【化75】
【0226】
【化76】
【0227】
【化77】
【0228】
【化78】
【0229】
上記ラジカル発生剤は、単独で用いても2種以上併用してもよく、記録層の全固形分に対し0.5〜30質量%程度、好ましくは2〜10質量%程度含有される。
【0230】
また、後述する、オニウム塩との相互作用によりラジカルを発生する化合物も好適に使用することができる。具体的には、ハロゲン化物(α−ハロアセトフェノン類、トリクロロメチルトリアジン類等)、アゾ化合物、芳香族カルボニル化合物(ベンゾインエステル類、ケタール類、アセトフェノン類、o−アシルオキシイミノケトン類、アシルホスフィンオキサイド類等)、ヘキサアリールビスイミダゾール化合物、過酸化物などが挙げられるが、好ましくは、前記特開平9−34110号公報の第16頁に(A−1)〜(A−4)として開示されたビスイミダゾール誘導体が挙げられる。
このようなラジカル発生剤は、オニウム塩との相互作用により高感度化を達成しうる。このラジカル発生剤と併用し得るオニウム塩としては、同公報の段落番号〔0022〕〜〔0049〕に記載のホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、及びアンモニウム塩の各化合物が挙げられる。
オニウム塩の添加量は、オニウム塩の種類及び使用形態により異なるが、記録層全固形分に対して0.05〜50質量%であることが好ましい。
【0231】
また、後述する酸発生剤として好適に用いられる、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩等のオニウム塩は前記ラジカル発生剤と併用しなくても、単独でラジカル発生剤として使用することができ、その添加量は、種類及び使用形態により異なるが、記録層全固形分に対して0.05〜50質量%であることが好ましい。
【0232】
〔(E)重合性化合物〕
本発明に係るラジカル重合系平版印刷版原版の記録材料として使用可能な重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する重合性化合物であり、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。この様な化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に限定無く用いる事ができる。
【0233】
これらは、例えばモノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体およびオリゴマー、またはそれらの混合物ならびにそれらの共重合体などの化学的形態をもつ。モノマーおよびその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類があげられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基や、アミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル、アミド類と単官能もしくは多官能イソシアネート類、エポキシ類との付加反応物、単官能もしくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアナート基やエポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルまたはアミド類と、単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類およびチオール類との付加反応物、さらに、ハロゲン基やトシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルまたはアミド類と、単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類およびチオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン等に置き換えた化合物群を使用する事も可能である。
【0234】
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルである重合性化合物の具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等がある。
【0235】
メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。
【0236】
イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等がある。
【0237】
クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等がある。
【0238】
イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等がある。
【0239】
マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等がある。
【0240】
その他のエステルの例として、例えば、特公昭46−27926、特公昭51−47334、特開昭57−196231記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240、特開昭59−5241、特開平2−226149記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613記載のアミノ基を含有するもの等も好適に用いられる。
【0241】
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。
【0242】
その他の好ましいアミド系モノマーの例としては、特公昭54−21726記載のシクロへキシレン構造を有すものをあげる事ができる。
【0243】
また、イソシアネートと水酸基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報中に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記式で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
【0244】
CH2=C(R1)COOCH2CH(R2)OH 一般式
(ただし、R1およびR2は、HまたはCH3を示す。)
【0245】
また、特開昭51−37193号、特公平2−32293号、特公平2−16765号に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号、特公昭56−17654号、特公昭62−39417、特公昭62−39418号記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。
さらに、特開昭63−277653,特開昭63−260909号、特開平1−105238号に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する重合性化合物類を用いても良い。
【0246】
その他の例としては、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号、各公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートをあげることができる。また、特公昭46−43946号、特公平1−40337号、特公平1−40336号記載の特定の不飽和化合物や、特開平2−25493号記載のビニルホスホン酸系化合物等もあげることができる。また、ある場合には、特開昭61−22048号記載のペルフルオロアルキル基を含有する構造が好適に使用される。さらに日本接着協会誌vol.20、No.7、300〜308ページ(1984年)に光硬化性モノマーおよびオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
【0247】
また、高分子データハンドブック基礎編(高分子学会編)1〜193ページ、429〜471ページ(1986年)記載の重合性化合物或いはその誘導体も使用できる。具体的には、1−デセン、5−フェニル−1−ペンテン、cis−ジベンゾイルエチレンに代表されるオレフィン誘導体、テトラブロモエチレン、テトラヨードエチレンに代表されるハロゲン化エチレン誘導体、1,4−ビス(スルホニル)−1,3−ブタジエン、1,6−ジクロロ−2,4−ヘキサジエン、1−イソプロピル−1,4−シクロヘキサジエンに代表されるジエン誘導体、p−アミノフェニルアセチレン、ジフェニルアセチレン、2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオールに代表されるアセチレン誘導体、ペンタメチルスチレン、1,3−ビス(p−ビニルフェニル)プロパン、4−ビニルフェニルベンジルエーテルに代表されるスチレン誘導体、4−トルオイル酪酸ビニル、p−ブロモ安息香酸ビニル、カルバミン酸ビニルに代表されるビニルエステル誘導体、p−フェニルベンジルビニルエーテル、p−フルオロフェニルビニルエーテル、2−(2−ナフトキシ)エチルビニルエーテルに代表されるビニルエーテル誘導体、ジシンナミリデンアセトン、7,8−ベンゾクロモン、1,4−ビス(3−クロロアクリロイル)ベンゼンに代表されるビニルケトン誘導体、3−メチル−3−t−ブチルアクリル酸、α−クロロアクリル酸、β−ジクロロアクリル酸に代表されるアクリル酸、メタクリル酸誘導体、8−キノリルアクリラート、2.4.5−トリクロロフェニルアクリラート、p−ジフェニルメタクリレート、N−[2−(1−メタクリロキシアセトアミド)エチル]−N,N’−エチレン尿素に代表されるアクリル酸エステル誘導体、メタクリル酸エステル誘導体、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−(ベンゾオキシメチル)メタクリルアミド、1,2−ビスアクリルアミドブタンに代表されるアクリルアミド、メタクリルアミド誘導体、2−エチルスルホニルアクリロニトリル、3−[2]ピリジルアクリロニトリル、2−メタンスルホニルアクリロニトリルに代表されるアクリロニトリル、メタクリロニトリル誘導体、ジクロロ無水マレイン酸、N−ベンジルマレアミド酸、マレイミドに代表されるマレイン酸、マレイミド誘導体、N、N−ジフェニルビニルアミン、1,1−ジモルホリノエチレン、N−ビニルフタルイミドに代表されるビニルアミン誘導体、2−ビニルイミダゾール、2−ビニルカルバゾール、1−ビニルウラシルに代表される複素環をもつモノマー類、2−ビニルフェナントレン、1−ビニルピレン、アセナフチレンに代表される多環式炭化水素モノマー類が挙げられる。
【0248】
その他、特許第2763775号、特開平10−17614、特開2000−187322記載の酸基含有アクリル系樹脂と脂環式エポキシ含有不飽和化合物(例えば、下記式1〜4)との反応により得られる側鎖に不飽和基を有する光硬化性樹脂型架橋剤および側鎖に不飽和基を有するアルカリ可溶性樹脂型架橋剤なども挙げられる。
【0249】
【化79】
【0250】
(式中、R1は水素原子又はメチル基を示す。R2は炭素数1〜6の2価の脂肪族飽和炭化水素基を示す。)
【0251】
また、Radiation Physics and Chemistry(2002)、63(3−6)、463−473記載のラジカル重合とカチオン重合の両方の機能を備えたいわゆるハイブリッド重合性のイソブチルビニルエーテル化合物、Pigment and Resin Technology(2001)、30(5)、278−286或いはMacromolecular Chemistry and Phsics(1998)、199(5)、751−756記載のエポキシ基またはビニルエーテル基を有するハイブリッド重合性のアクリレート化合物、米国6,031,015記載の重合性液晶モノマー、特開平8−160414記載の重合性ディスコチック液晶モノマー等も挙げることができる。
【0252】
このような(E)重合性化合物は単独で用いても2種以上併用してもよい。これらの重合性化合物について、どの様な構造を用いるか、単独で使用するか併用するか、添加量はどうかといった、使用方法の詳細は、最終的な記録材料の性能設計にあわせて、任意に設定できる。
画像記録材料中の重合性化合物の配合比に関しては、多い方が感度的に有利であるが、多すぎる場合には、好ましくない相分離が生じたり、画像記録層の粘着性による製造工程上の問題(例えば、記録層成分の転写、粘着に由来する製造不良)や、現像液からの析出が生じる等の問題を生じうる。これらの観点から、重合性化合物の好ましい配合比は、多くの場合、組成物全成分に対して5〜80質量%、好ましくは20〜75質量%である。本発明において、前記(B)特定ポリマーに(E)重合性化合物を併用する場合、(B)成分と(E)成分の比率は、質量比で、1:0.05〜1:3の範囲で併用され、好ましくは1:01〜1:2の範囲、さらに好ましくは1〜0.3〜1:1.5の範囲である。
重合性化合物の使用法は、所望の特性から適切な構造、配合、添加量を任意に選択でき、さらに場合によっては下塗り、上塗りといった層構成・塗布方法も実施しうる。
【0253】
〔(F)バインダーポリマー〕
本発明に係る重合系平版印刷版原版においては、形成する記録層の皮膜特性向上などの目的で、必要に応じて、さらにバインダーポリマーを使用することができる。バインダーとしては線状有機ポリマーを用いることが好ましい。このような「線状有機ポリマー」としては、公知のものを任意に使用できる。好ましくは水現像あるいは弱アルカリ水現像を可能とするために、水あるいは弱アルカリ水に可溶性又は膨潤性である線状有機ポリマーが選択される。線状有機ポリマーは、画像記録材料の皮膜形成剤としてだけでなく、水、弱アルカリ水あるいは有機溶剤現像剤としての用途に応じて選択使用される。例えば、水可溶性有機ポリマーを用いると水現像が可能になる。
【0254】
このような線状有機ポリマーとしては、側鎖にカルボン酸基を有するラジカル重合体、例えば特開昭59−44615号、特公昭54−34327号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭54−92723号、特開昭59−53836号、特開昭59−71048号に記載されているもの、すなわち、カルボキシル基を有するモノマーを単独あるいは共重合させた樹脂、酸無水物を有するモノマーを単独あるいは共重合させ酸無水物ユニットを加水分解もしくはハーフエステル化もしくはハーフアミド化させた樹脂、エポキシ樹脂を不飽和モノカルボン酸および酸無水物で変性させたエポキシアクリレート等が挙げられる。カルボキシル基を有するモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、4−カルボキシルスチレン等があげられ、酸無水物を有するモノマーとしては、無水マレイン酸等が挙げられる。
【0255】
また同様に側鎖にカルボン酸基を有する酸性セルロース誘導体がある。この他に水酸基を有する重合体に環状酸無水物を付加させたものなどが有用である。
共重合してアルカリ可溶性樹脂を共重合体として用いる場合、共重合させる化合物として、先にあげたモノマー以外の他のモノマーを用いることもできる。他のモノマーの例としては、下記(1)〜(12)の化合物が挙げられる。
【0256】
(1)2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート等の脂肪族水酸基を有するアクリル酸エステル類、及びメタクリル酸エステル類。
【0257】
(2)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、ビニルアクリレート、2−フェニルビニルアクリレート、1−プロペニルアクリレート、アリルアクリレート、2−アリロキシエチルアクリレート、プロパルギルアクリレート等のアルキルアクリレート。
【0258】
(3)メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルメタクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート、ビニルメタクリレート、2−フェニルビニルメタクリレート、1−プロペニルメタクリレート、アリルメタクリレート、2−アリロキシエチルメタクリレート、プロパルギルメタクリレート等のアルキルメタクリレート。
【0259】
(4)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−ヘキシルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド、ビニルアクリルアミド、ビニルメタクリルアミド、N,N−ジアリルアクリルアミド、N,N−ジアリルメタクリルアミド、アリルアクリルアミド、アリルメタクリルアミド等のアクリルアミド若しくはメタクリルアミド。
【0260】
(5)エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類。
(6)ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等のビニルエステル類。
(7)スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン、p−アセトキシスチレン等のスチレン類。
【0261】
(8)メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトン等のビニルケトン類。
(9)エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類。
(10)N−ビニルピロリドン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
(11)マレイミド、N−アクリロイルアクリルアミド、N−アセチルメタクリルアミド、N−プロピオニルメタクリルアミド、N−(p−クロロベンゾイル)メタクリルアミド等の不飽和イミド。
(12)α位にヘテロ原子が結合したメタクリル酸系モノマー。例えば、特願2001−115595、特願2001−115598等に記載されている化合物を挙げる事ができる。
【0262】
これらの中で、側鎖にアリル基やビニルエステル基とカルボキシル基を有する(メタ)アクリル樹脂及び特開2000−187322号、特開2002−62698に記載されている側鎖に二重結合を有するアルカリ可溶性樹脂や、特開2001−242612に記載されている側鎖にアミド基を有するアルカリ可溶性樹脂が膜強度、感度、現像性のバランスに優れており、好適である。
【0263】
また、特公平7−12004号、特公平7−120041号、特公平7−120042号、特公平8−12424号、特開昭63−287944号、特開昭63−287947号、特開平1−271741号、特願平10−116232号等に記載される酸基を含有するウレタン系バインダーポリマーや、特開2002−107918に記載される酸基と二重結合を側鎖に有するウレタン系バインダーポリマーは、非常に、強度に優れるので、耐刷性・低露光適性の点で有利である。
【0264】
また、EP993966、EP1204000、特開2001−318463等に記載の酸基を有するアセタール変性ポリビニルアルコール系バインダーポリマーは、膜強度、現像性のバランスに優れており、好適である。
【0265】
さらにこの他に水溶性線状有機ポリマーとして、ポリビニルピロリドンやポリエチレンオキサイド等が有用である。また硬化皮膜の強度を上げるためにアルコール可溶性ナイロンや2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンとエピクロロヒドリンのポリエーテル等も有用である。
【0266】
本発明で使用されるバインダーポリマーの重量平均分子量については好ましくは5、000以上であり、さらに好ましくは1万〜30万の範囲であり、数平均分子量については好ましくは1、000以上であり、さらに好ましくは2、000〜25万の範囲である。多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は1以上が好ましく、さらに好ましくは1.1〜10の範囲である。
これらのポリマーは、ランダムポリマー、ブロックポリマー、グラフトポリマー等いずれでもよい。
【0267】
本発明で使用されるバインダーポリマーは従来公知の方法により合成できる。合成する際に用いられる溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、エチレンジクロリド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、メタノール、エタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−メトキシエチルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、トルエン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、ジメチルスルホキシド、水等が挙げられる。これらの溶媒は単独で又は2種以上混合して用いられる。
【0268】
本発明で使用されるバインダーポリマーは単独で用いても混合して用いてもよい。これらポリマーを添加する際には、画像記録材料全固形分に対し20〜95質量%、好ましくは30〜90質量%の割合で画像記録材料中に添加される。添加量が20質量%未満の場合は、画像形成した際、画像部の強度向上効果が充分に得られない。また添加量が95質量%を越える場合は、画像形成されない。
【0269】
また、本発明においては、塗布液の調製中或いは保存中においてラジカル重合可能なエチレン性不飽和二重結合を有する化合物の不要な熱重合を阻止するために少量の熱重合防止剤を添加することが望ましい。適当な熱重合防止剤としてはハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩等が挙げられる。熱重合防止剤の添加量は、全組成物の質量に対して約0.01質量%〜約5質量%が好ましい。また必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で記録層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、全組成物の約0.1質量%〜約10質量%が好ましい。
また、感度を向上させるため上述した赤外線吸収剤を添加してもよい。
【0270】
また、酸素クエンチャーとして添加しうる化合物としては、米国特許第4,772,541号の第11カラム58行目〜第12カラム35行目に記載の化合物等のN,N−ジアルキルアニリン誘導体が挙げられる。
さらに、膜質向上のため、可塑剤を用いることができ、例えば、フタル酸エステル類、トリメリット酸エステル類、アジピン酸エステル類、その他飽和或いは不飽和カルボン酸エステル類、クエン酸エステル類、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油、ステアリン酸エポキシ類、正リン酸エステル類、亜燐酸エステル類、グリコールエステル類等が挙げられる。
【0271】
加熱により酸を発生しラジカル発生剤の分解を促進する添加剤として、酸発生剤を併用することも好ましい。この酸発生剤については、下記酸触媒架橋系画像記録材料の説明において詳述するものを用いることができる。
【0272】
<酸触媒架橋系>
本発明に係る酸触媒架橋系平版印刷版原版は、(B)特定ポリマーと、(A)赤外線吸収剤と、を含有し、さらに赤外線レーザの露光により発生した熱により架橋構造を形成してアルカリ性水溶液に対する溶解性が低下する記録層を備えることを特徴とする。また、このような記録層には上記赤外線吸収剤により効率よく発生された熱により酸を発生する(G)酸発生剤と、発生した酸を触媒として架橋構造を形成し得る(H)架橋剤、および(J)バインダーポリマーと、を含有する。このような酸触媒架橋系平版印刷版原版においては、発生した酸を触媒として、上記架橋剤とバインダーポリマーとの間、或いは架橋剤同士で強固な架橋構造が形成され、これにより、露光部の記録層におけるアルカリ可溶性が低下して、現像液に不溶となる。
【0273】
このような特性を有する酸触媒架橋系の画像記録材料としては、公知の同様の特性を有する層の構成成分を用いることができる。例えば、特開平7−20629号公報に記載されるレゾール樹脂、ノボラック樹脂、潜伏性ブレンステッド酸、及び赤外吸収剤を含んでなる放射線感受性組成物からなる層の構成成分として記載された化合物が挙げられる。ここで、「潜伏性ブレンステッド酸」とは、分解してブレンステッド酸を生成する先駆体を指し、本発明における酸発生剤と酸架橋剤との双方の特性を有する化合物である。ブレンステッド酸は、レゾール樹脂とノボラック樹脂との間のマトリックス生成反応を触媒すると考えられており、この目的に適切なブレンステッド酸の例としては、トリフルオロメタンスルホン酸及びヘキサフルオロホスホン酸である。
【0274】
更に、イオン性潜伏性ブレンステッド酸が好ましく、これらの例は、オニウム塩、特にヨードニウム、スルホニウム、ホスホニウム、セレノニウム、ジアゾニウム、及びアルソニウム塩を包含する。非イオン性潜伏性ブレンステッド酸もまた好適に用いることができ、例えば、下記の化合物:RCH2X、RCHX2、RCX3、R(CH2X)2、及びR(CH2X)3、(式中、Xは、Cl、Br、F、若しくはCF3、SO3であり、Rは、芳香族基、脂肪族基若しくは芳香族基及び脂肪族基の結合体である)を挙げることができる。
【0275】
また、特開平11−95415号公報に記載の酸架橋性化合物と高分子量結合剤とを含有する画像記録材料も好適なものとして挙げられる。これは、活性光線の照射により酸を発生し得る化合物、例えば、ジアゾニウム、ホスホニウム、スルホニウム、及びヨードニウムのなどの塩、有機ハロゲン化合物、オルトキノン−ジアジドスルホニルクロリド、及び有機金属/有機ハロゲン化合物と、前記酸の存在下で架橋しうる結合を少なくとも1つ有する化合物、例えば、官能基としてアルコキシメチル基、メチロール基、アセトキシメチル基等を少なくとも2個有するアミノ化合物、官能基としてアルコキシメチル基、メチロール基、アセトキシメチル基等を有する少なくとも2置換の芳香族化合物、レゾール樹脂及びフラン樹脂、特定の単量体から合成されるアクリル樹脂など、とを含有する記録層であり、これを使用することができる。
【0276】
以下、本発明に係る酸触媒架橋系平版印刷版原版の画像記録材料に含まれる各構成成分について説明する。
〔(G)酸発生剤〕
本発明において光又は熱により酸を発生する、(G)酸発生剤とは、赤外線の照射や、100℃以上の加熱によって分解し酸を発生する化合物を指す。発生する酸としては、スルホン酸、塩酸等のpKaが2以下の強酸であることが好ましい。
【0277】
本発明において好適に用いられる酸発生剤としては、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩等のオニウム塩が挙げられる。具体的には、US4,708,925号や特開平7−20629号に記載されている化合物を挙げることができる。特に、スルホン酸イオンを対イオンとするヨードニウム塩、スルホニウム塩、ジアゾニウム塩が好ましい。ジアゾニウム塩としては、米国特許第3,867,147号記載のジアゾニウム化合物、米国特許第2,632,703号明細書記載のジアゾニウム化合物や特開平1−102456号及び特開平1−102457号の各公報に記載されているジアゾ樹脂も好ましい。また、US5,135,838号やUS5,200,544号に記載されているベンジルスルホナート類も好ましい。更に、特開平2−100054号、特開平2−100055号及び特開平9−197671号に記載されている活性スルホン酸エステルやジスルホニル化合物類も好ましい。他にも、特開平7−271029号に記載されている、ハロアルキル置換されたS−トリアジン類も好ましい。
【0278】
これらの酸発生剤は、酸触媒架橋系画像記録材料の全固形分に対し0.01〜50質量%、好ましくは0.1〜40質量%、より好ましくは0.5〜30質量%の割合で酸架橋層中に添加される。添加量が0.01質量%未満の場合は、画像が得られない。また添加量が50質量%を越える場合は、印刷時非画像部に汚れを発生する。
【0279】
これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。なお、ここに挙げた酸発生剤は、紫外線照射によっても分解できるため、このような形態の画像記録材料を用いれば、赤外線だけではなく紫外線の照射によっても画像記録可能である。
【0280】
〔(H)架橋剤〕
本発明に係る酸触媒架橋系平版印刷版原版の画像記録材料に用い得る架橋剤は、酸を触媒として、架橋構造を形成しうる化合物であれば特に制限はないが、下記一般式(I)で表されるフェノール誘導体(以下、適宜、低分子フェノール誘導体と称する)、下記一般式(II)で表される、環上に2又は3個のヒドロキシメチル基を有するフェノール環を分子内に3個以上有する多核型フェノール性架橋剤、及び、前記低分子フェノール誘導体と多核型フェノール性架橋剤及び/又はレゾール樹脂との混合物、などが好ましく使用される。
【0281】
【化80】
【0282】
上記一般式(I)中、Ar1は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環を示す。R1及びR2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子又は炭素数12個以下の炭化水素基を示す。R3は、水素原子又は炭素数12個以下の炭化水素基を示す。mは、2〜4の整数を示す。nは、1〜3の整数を示す。Xは2価の連結基を示し、Yは前記の部分構造を有する1価乃至4価の連結基或いは末端が水素原子である官能基を示し、ZはYが末端基である場合には存在せず、或いは、Yの連結基の数に応じて存在する1価乃至4価の連結基又は官能基を示す。
【0283】
【化81】
【0284】
上記一般式(II)中、Aは、炭素数1〜20のr価の炭化水素連結基を示し、rは3〜20の整数を示す。pは、2〜3の整数を示す。
一般式(I)で表されるフェノール誘導体については、本願出願人が先に提出した特願平11−352210号明細書段落番号〔0098〕〜〔0155〕に詳述されており、一般式(II)で表される、環上に2又は3個のヒドロキシメチル基を有するフェノール環を分子内に3個以上有する多核型フェノール性架橋剤についても、同明細書段落番号〔0156〕〜〔0165〕に詳述されている。
【0285】
これらの架橋剤は単独で使用してもよく、また2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明において、架橋剤は酸触媒架橋系画像記録材料の固形分中、5〜70質量%、好ましくは10〜65質量%の添加量で用いられる。架橋剤の添加量が5質量%未満であると画像記録した際の画像部の膜強度が悪化し、また、70質量%を越えると保存時の安定性の点で好ましくない。
【0286】
〔(J)バインダーポリマー〕
本発明に係る酸触媒架橋系平版印刷版原版の画像記録材料に用い得る、(J)バインダーポリマーとしては、ヒドロキシ基又はアルコキシ基が直接結合した芳香族炭化水素環を側鎖又は主鎖に有するポリマーが挙げられる。アルコキシ基としては、感度の観点から、炭素数20個以下のものが好ましい。また、芳香族炭化水素環としては、原料の入手性から、ベンゼン環、ナフタレン環又はアントラセン環が好ましい。これらの芳香族炭化水素環は、ヒドロキシ基又はアルコキシ基以外の置換基、例えば、ハロゲン基、シアノ基等の置換基を有していてもよいが、感度の観点から、ヒドロキシ基又はアルコキシ基以外の置換基を有さない方が好ましい。
【0287】
本発明の酸触媒架橋系画像記録材料において、好適に用いることができるバインダーポリマーは、下記一般式(III)で表される構成単位を有するポリマー、又はノボラック樹脂等のフェノール樹脂である。
【0288】
【化82】
【0289】
上記一般式(III)中、Ar2は、ベンゼン環、ナフタレン環又はアントラセン環を示す。R4は、水素原子又はメチル基を示す。R5は、水素原子又は炭素数20個以下のアルコキシ基を示す。X1は、単結合又は、C、H、N、O、Sより選ばれた1種以上の原子を含み、かつ炭素数0〜20個の2価の連結基を示す。kは、1〜4の整数を示す。
【0290】
本発明では、バインダーポリマーとして、一般式(III)で表される構成単位のみから成る単独重合体を用いてもよいが、この特定構成単位とともに、他の公知のモノマーより誘導される構成単位を有する共重合体を用いてもよい。
これらを用いた共重合体中に含まれる一般式(III)で表される構成単位の割合は、50〜100質量%であることが好ましく、更に好ましくは60〜100質量%である。
【0291】
また、使用し得る上記バインダーポリマーの重量平均分子量は好ましくは5,000以上であり、更に好ましくは1万〜30万の範囲であり、数平均分子量は好ましくは1,000以上であり、更に好ましくは2,000〜25万の範囲である。多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は1以上が好ましく、更に好ましくは1.1〜10の範囲である。
これらのバインダーポリマーは、ランダムポリマー、ブロックポリマー、グラフトポリマー等のいずれでもよいが、ランダムポリマーであることが好ましい。
【0292】
次に、ノボラック類について述べる。本発明で好適に用いられるノボラック樹脂は、フェノールノボラック、o−、m−、p−の各種クレゾールノボラック、及びその共重合体、ハロゲン原子、アルキル基等で置換されたフェノールを利用したノボラックが挙げられる。
これらのノボラック樹脂の重量平均分子量は、好ましくは1,000以上であり、更に好ましくは2,000〜2万の範囲であり、数平均分子量は好ましくは1000以上であり、更に好ましくは2,000〜15,000の範囲である。多分散度は1以上が好ましくは、更に好ましくは1.1〜10の範囲である。
【0293】
また、バインダーポリマーとして、環内に不飽和結合を有する複素環基を有するポリマーを用いることも好ましい態様である。
ここで、複素環とは、環系を構成する原子の中に、炭素以外のヘテロ原子を1個以上含むものをいう。用いられるヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、珪素原子が好ましい。このような複素環基を有するポリマーを用いることにより、本複素環に存在するローンペアの機能により、化学構造的に反応し易くなり、耐刷性の良好な膜が形成されると考えられる。
【0294】
以上説明した本発明で使用されるバインダーポリマーは単独で用いても2種類以上を混合して用いてもよい。これらポリマーは、酸触媒架橋系画像記録材料の全固形分に対し20〜95質量%、好ましくは40〜90質量%の割合で添加される。添加量が20質量%未満の場合は、画像形成した際、画像部の強度が不足する。また添加量が95質量%を越える場合は、画像形成されない。
【0295】
また、この酸触媒架橋系画像記録材料の形成に際して、塗布性、膜質の向上などの目的で界面活性剤などの種々の添加物を併用することもできる。
【0296】
〔その他の添加剤〕
上述された本発明のポジ型及びネガ型平版印刷版原版に好適な画像記録材料には、更に必要に応じて、種々の添加剤を添加することができる。
<添加剤:溶解抑制剤>
本発明に係るポジ型の画像記録材料には、オニウム塩、o−キノンジアジド化合物、芳香族スルホン化合物、芳香族スルホン酸エステル化合物等の熱分解性であり、分解しない状態ではアルカリ可溶性樹脂の溶解性を実質的に低下させる物質を併用することが、画像部の現像液への溶解阻止性の向上を図る点で好ましい。オニウム塩としてはジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、アルソニウム塩等を挙げる事ができる。
【0297】
本発明において用いられるオニウム塩として、好適なものとしては、例えばS.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,387(1974)、T.S.Bal et al,Polymer,21,423(1980)、特開平5−158230号公報に記載のジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号、特開平3−140140号の明細書に記載のアンモニウム塩、D.C.Necker et al,Macromolecules,17,2468(1984)、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)、米国特許第4,069,055号明細書、同4,069,056号明細書に記載のホスホニウム塩、J.V.Crivello et al,Macromorecules,10(6),1307(1977)、Chem.&Eng.News,Nov.28,p31(1988)、欧州特許第104,143号明細書、米国特許第339,049号明細書、同第410,201号明細書、特開平2−150848号公報、特開平2−296514号公報に記載のヨードニウム塩、J.V.Crivello et al,Polymer J.17,73(1985)、J.V.Crivello et al.J.Org.Chem.,43,3055(1978)、W.R.Watt et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,22,1789(1984)、J.V.Crivello et al,Polymer Bull.,14,279(1985)、J.V.Crivello et al,Macromorecules,14(5),1141(1981)、J.V.Crivello et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed., 17,2877(1979)、欧州特許第370,693号明細書、同233,567号明細書、同297,443号明細書、同297,442号明細書、米国特許第4,933,377号明細書、同3,902,114号明細書、同410,201号明細書、同339,049号明細書、同4,760,013号明細書、同4,734,444号明細書、同2,833,827号明細書、独国特許第2,904,626号明細書、同3,604,580号明細書、同3,604,581号明細書に記載のスルホニウム塩、J.V.Crivello et al,Macromorecules,10(6),1307(1977)、J.V.Crivello et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,1047(1979)に記載のセレノニウム塩、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)に記載のアルソニウム塩等があげられる。
オニウム塩のなかでも、ジアゾニウム塩が特に好ましい。また、特に好適なジアゾニウム塩としては特開平5−158230号公報記載のものがあげられる。
【0298】
オニウム塩の対イオンとしては、四フッ化ホウ酸、六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸、5−ニトロ−o−トルエンスルホン酸、5−スルホサリチル酸、2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸、2−ニトロベンゼンスルホン酸、3−クロロベンゼンスルホン酸、3−ブロモベンゼンスルホン酸、2−フルオロカプリルナフタレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、1−ナフトール−5−スルホン酸、2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイル−ベンゼンスルホン酸、及びパラトルエンスルホン酸等を挙げることができる。これらの中でも特に六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸や2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸のごときアルキル芳香族スルホン酸が好適である。
【0299】
好適なキノンジアジド類としては、o−キノンジアジド化合物を挙げることができる。本発明に用いられるo−キノンジアジド化合物は、少なくとも1個のo−キノンジアジド基を有する化合物で、熱分解によりアルカリ可溶性を増すものであり、種々の構造の化合物を用いることができる。つまり、o−キノンジアジドは熱分解により結着剤の溶解抑制能を失うことと、o−キノンジアジド自身がアルカリ可溶性の物質に変化することの両方の効果により感材系の溶解性を助ける。本発明に用いられるo−キノンジアジド化合物としては、例えば、J.コーサー著「ライト−センシティブ・システムズ」(John Wiley&Sons.Inc.)第339〜352頁に記載の化合物が使用できるが、特に種々の芳香族ポリヒドロキシ化合物或いは芳香族アミノ化合物と反応させたo−キノンジアジドのスルホン酸エステル又はスルホン酸アミドが好適である。また、特公昭43−28403号公報に記載されているようなベンゾキノン(1,2)−ジアジドスルホン酸クロライド又はナフトキノン−(1,2)−ジアジド−5−スルホン酸クロライドとピロガロール−アセトン樹脂とのエステル、米国特許第3,046,120号明細書及び同第3,188,210号明細書に記載されているベンゾキノン−(1,2)−ジアジドスルホン酸クロライド又はナフトキノン−(1,2)−ジアジド−5−スルホン酸クロライドとフェノール−ホルムアルデヒド樹脂とのエステルも好適に使用される。
【0300】
さらに、ナフトキノン−(1,2)−ジアジド−4−スルホン酸クロライドとフェノールホルムアルデヒド樹脂或いはクレゾール−ホルムアルデヒド樹脂とのエステル、ナフトキノン−(1,2)−ジアジド−4−スルホン酸クロライドとピロガロール−アセトン樹脂とのエステルも同様に好適に使用される。その他の有用なo−キノンジアジド化合物としては、数多くの特許に報告され知られている。例えば、特開昭47−5303号、特開昭48−63802号、特開昭48−63803号、特開昭48−96575号、特開昭49−38701号、特開昭48−13354号、特公昭41−11222号、特公昭45−9610号、特公昭49−17481号の各公報、米国特許第2,797,213号、同第3,454,400号、同第3,544,323号、同第3,573,917号、同第3,674,495号、同第3,785,825号、英国特許第1,227,602号、同第1,251,345号、同第1,267,005号、同第1,329,888号、同第1,330,932号、ドイツ特許第854,890号等の各明細書中に記載されているものを挙げることができる。
【0301】
o−キノンジアジド化合物の添加量は、好ましくは画像記録材料全固形分に対し、1〜50質量%、更に好ましくは5〜30質量%、特に好ましくは10〜30質量%の範囲である。これらの化合物は単一で使用できるが、数種の混合物として使用してもよい。
【0302】
o−キノンジアジド化合物以外の添加剤の添加量は、好ましくは1〜50質量%、更に好ましくは5〜30質量%、特に好ましくは10〜30質量%である。本発明に係る添加剤と結着剤は、同一層へ含有させることが好ましい。
【0303】
<添加剤:現像促進剤>
本発明に係るポジ型およびネガ型の画像記録材料には、更に必要に応じて、感度を高めるための環状酸無水物、フェノール類、有機酸類を添加することができる。また、露光後直ちに可視像を得るための焼き出し剤、画像着色剤としての染料、その他のフィラーなどを加えることができる。
環状酸無水物としては米国特許第4,115,128号明細書に記載されているように無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドオキシ〜Δ4〜テトラヒドロ無水フタル酸、テトラクロル無水フタル酸、無水マレイン酸、クロル無水マレイン酸、α−フェニル無水マレイン酸、無水コハク酸、無水ピロメリット酸等がある。フェノール類としては、ビスフェノールA、p−ニトロフェノール、p−エトキシフェノール、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノン、4,4’,4”−トリヒドロキシ−トリフェニルメタン、4,4’,3”,4”−テトラヒドロキシ−3,5,3’,5’−テトラメチルトリフェニルメタンなどが挙げられる。
【0304】
有機酸類としては、特開昭60−88942号公報、特開平2−96755号公報などに記載されている、スルホン酸類、スルフィン酸類、アルキル硫酸類、ホスホン酸類、ホスフィン酸類、リン酸エステル類、カルボン酸類などがあり、具体的には、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルフィン酸、エチル硫酸、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、リン酸フェニル、リン酸ジフェニル、安息香酸、イソフタル酸、アジピン酸、p−トルイル酸、3,4−ジメトキシ安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、1,4−シクロヘキセン−2,2−ジカルボン酸、エルカ酸、ラウリン酸、n−ウンデカン酸、アスコルビン酸などが挙げられる。
上記の環状酸無水物類、フェノール類、有機酸類の画像記録材料中に占める割合は、0.05〜15質量%が好ましく、より好ましくは、0.1〜5質量%である。
【0305】
<添加剤:焼出し剤>
本発明に係るポジ型およびネガ型の画像記録材料には、露光後、直ちに可視像を得るための焼き出し剤として、露光によって酸を放出する感光性化合物と、酸と塩を形成して色調を変える有機染料とを組み合わせたものを添加することができる。
露光によって酸を放出する感光性化合物としては、例えば、特開昭50−36,209号公報に記載されているo−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸ハロゲニド;特開昭53−36223号公報に記載されているトリハロメチル−2−ビロンやトリハロメチル−s−トリアジン;特開昭55−62444号公報に記載されている種々のo−ナフトキノンジアジド化合物;特開昭55−77742号公報に記載されている2−トリハロメチル−5−アリール−1,3,4−オキサジアゾール化合物;ジアゾニウム塩などを挙げることができる。
これらの化合物は、単独または混合して使用することができ、その添加量は、画像記録材料全固形分に対し、0.3〜15質量%の範囲が好ましい。
【0306】
<添加剤:酸変色する染料>
本発明に係るポジ型およびネガ型の画像記録材料には、光分解して酸性物質を発生する化合物の光分解生成物と相互作用することによってその色調を変える有機染料を少なくとも一種類以上添加することができる。
このような有機染料としては、ジフェニルメタン系、トリアリールメタン系、チアジン系、オキサジン系、フェナジン系、キサンテン系、アントラキノン系、イミノナフトキノン系、アゾメチン系の色素を用いることができる。具体的には次のようなものである。
【0307】
ブリリアントグリーン、エオシン、エチルバイオレット、エリスロシンB、メチルグリーン、クリスタルバイオレット、ベイシックフクシン、フェノールフタレイン、1,3−ジフェニルトリアジン、アリザリンレッドS、チモールフタレイン、メチルバイオレット2B、キナルジンレッド、ローズベンガル、チモールスルホフタレイン、キシレノールブルー、メチルオレンジ、オレンジIV、ジフェニルチオカルバゾン、2,7−ジクロロフルオレセイン、パラメチルレッド、コンゴーレッド、ベンゾプルプリン4B、α−ナフチルレッド、ナイルブルー2B、ナイルブルーA、フエナセタリン、メチルバイオレット、マラカイトグリーン、パラフクシン、オイルブルー#603〔オリエント化学工業(株)製〕、オイルピンク#312〔オリエント化学工業(株)製〕、オイルレッド5B〔オリエント化学工業(株)製〕、オイルスカーレット#308〔オリエント化学工業(株)製〕、オイルレッドOG〔オリエント化学工業(株)製〕、オイルレッドRR〔オリエント化学工業(株)製〕、オイルグリーン#502〔オリエント化学工業(株)製〕、スピロンレッドBEHスペシャル〔保土谷化学工業(株)製〕、ビクトリアピュアーブルーBOH〔保土谷化学工業(株)製〕、パテントピュア−ブルー〔住友三国化学工業(株)製〕、スーダンブルーII〔BASF社製〕、m−クレゾールパープル、クレゾールレッド、ローダミンB、ローダミン6G、ファーストアッシドバイオレットR、スルホローダミンB、オーラミン、4−p−ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2−カルボキシアニリノ−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2−カルボステアリルアミノ−4−p−ジヒドロオキシエチル−アミノ−フェニルイミノナフトキノン、p−メトキシベンゾイル−p′−ジエチルアミノ−o′−メチルフェニルイミノアセトアニリド、シアノ−p−ジエチルアミノフェニルイミノアセトアニリド、1−フェニル−3−メチル−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノ−5−ピラゾロン、1−β−ナフチル−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノ−5−ピラゾロン等。
【0308】
特に好ましい有機染料は、トリアリールメタン系染料である。トリアリールメタン系染料では、特開昭62−2932471号公報、特許第2969021号公報に示されているような対アニオンとしてスルホン酸化合物を有するものが特に有用である。
【0309】
これらの染料は単独又は混合して使用することができ、添加量は画像記録材料の総質量に対して0.3〜15質量%が好ましい。また必要に応じて他の染料、顔料と併用でき、その使用量は染料及び顔料の総質量に対して70質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。
【0310】
<添加剤:着肉剤>
本発明に係るポジ型およびネガ型の画像記録材料には、画像のインキ着肉性を向上させるための、疎水基を有する各種樹脂、例えばオクチルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂、t−ブチルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂、t−ブチルフェノール・ベンズアルデヒド樹脂、ロジン変性ノボラック樹脂、及びこれら変性ノボラック樹脂のo−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル等;塗膜の可撓性を改良するための可塑剤、例えばフタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、ブチルグリコレート、リン酸トリクレジル、アジピン酸ジオクチル等、種々の目的に応じて各種添加剤を加えることができる。これらの添加量は画像記録材料全固形分に対して、0.01〜30質量%の範囲が好ましい。
【0311】
<添加剤:耐磨耗性向上樹脂>
本発明に係るポジ型およびネガ型の画像記録材料には、皮膜の耐摩耗性を更に向上させるための公知の樹脂を添加できる。これらの樹脂としては、例えばポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、ナイロン、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂等があり、単独または混合して使用することができる。添加量は画像記録材料の全固形分に対して、2〜40質量%の範囲が好ましい。
【0312】
<添加剤:現像抑制剤(界面活性剤)>
本発明に係るポジ型およびネガ型の画像記録材料には、現像のラチチュードを広げるために、特開昭62−251740号公報や、特開平4−68355号公報に記載されているような非イオン性界面活性剤、特開昭59−121044号公報、特開平4−13149号公報に記載されているような両性界面活性剤を添加することができる。非イオン性界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどが挙げられ、両性界面活性剤の具体例としては、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、アモーゲンK(商品名、第一工業製薬(株)製、N−テトラデシル−N,N−ベタイン型)、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、レボン15(商品名、三洋化成(株)製、アルキルイミダゾリン系)などが挙げられる。
上記非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤の画像記録材料の全固形分中に占める割合は、0.05〜15質量%が好ましく、より好ましくは、0.1〜5質量%である。
【0313】
<添加剤:塗布面質向上剤(界面活性剤)>
本発明に係るポジ型およびネガ型の画像記録材料には、塗布面質の向上のために界面活性剤、例えば、特開昭62−170950号公報、特開2002−72474に記載されているようなフッ素系界面活性剤を添加することができる。好ましい添加量は、画像記録材料の全固形分中、0.001〜1.0質量%であり、更に好ましくは0.005〜0.5質量%である。
【0314】
<添加剤:黄色染料>
本発明に係るポジ型およびネガ型の画像記録材料には、黄色系染料、好ましくは417nmの吸光度が436nmの吸光度の70%以上ある黄色系染料を添加することができる。
【0315】
(平版印刷版原版の作製)
本発明に係る平版印刷版原版は、上述のポジ型或いはネガ型の画像記録材料の各成分や、後述する保護層等の所望の層の塗布液用成分等を溶剤に溶かして、適当な支持体上に塗布・乾燥することにより製造することができる。
【0316】
<塗布溶剤>
本発明に係る画像記録材料の各成分の溶解・塗布に用いられる塗布溶剤としては、公知慣用の有機溶剤をいずれも使用することができる。
好ましくは、沸点40℃〜200℃、特に60℃〜160℃の範囲のものが、乾燥の際における有利さから選択される。
そのような有機溶剤としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、n−またはイソ−プロピルアルコール、n−またはイソ−ブチルアルコール、ジアセトンアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルアミルケトン、メチルヘキシルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、アセチルアセトン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、メトキシベンゼン等の炭化水素類、エチルアセテート、n−またはイソ−プロピルアセテート、n−またはイソ−ブチルアセテート、エチルブチルアセテート、ヘキシルアセテート等の酢酸エステル類、メチレンジクロライド、エチレンジクロライド、モノクロルベンゼン等のハロゲン化物、イソプロピルエーテル、n−ブチルエーテル、ジオキサン、ジメチルジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、
【0317】
エチレングリコール、メチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブ、ジエチルセロソルブ、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブ、ブチルセロソルブアセテート、メトキシメトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール等の多価アルコールとその誘導体、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド等の特殊溶剤などが単独あるいは混合して好適に使用される。
本発明に係る画像記録層は、このような塗布溶剤に、上述の画像記録材料の各成分を溶解して記録層塗布液とし、支持体上に塗布・乾燥することで設けられる。また、記録層塗布中の画像記録材料固形分の濃度を、2〜50質量%とするのが適当である。
【0318】
<塗布方法>
本発明に係る平版印刷版原版における上記記録層塗布液の塗布方法としては、例えばロールコーティング、ディップコーティング、エアナイフコーティング、グラビアコーティング、グラビアオフセットコーティング、ホッパーコーティング、ブレードコーティング、ワイヤドクターコーティング、スプレーコーティング等の方法が用いられ、乾燥後の質量にして0.3〜4.0g/m2が好ましい。塗布量が小さくなるにつれて画像を得るための露光量は小さくて済む(高感度である)が、膜強度は低下する。塗布量が大きくなるにつれ、露光量を必要とするが感光膜は強くなり、例えば、印刷版として用いた場合、印刷可能枚数の高い(高耐刷の)印刷版が得られる。
【0319】
<乾燥方法>
支持体上に塗布された記録層塗布液の乾燥は、通常加熱された空気によって行われる。加熱は30℃〜200℃特に、40℃〜140℃の範囲が好適である。乾燥の温度は乾燥中一定に保たれる方法だけでなく段階的に上昇させる方法も実施し得る。また、乾燥風は除湿することによって好結果が得られる場合もある。加熱された空気は、塗布面に対し0.1m/秒〜30m/秒、特に0.5m/秒〜20m/秒の割合で供給するのが好適である。
【0320】
<マット層>
上記のようにして設けられた記録層の表面には、真空焼き枠を用いた密着露光の際の真空引きの時間を短縮し、且つ焼きボケを防ぐため、マット層を設けることが好ましい。具体的には、特開昭50−125805号、特公昭57−6582号、同61−28986号の各公報に記載されているようなマット層を設ける方法、特公昭62−62337号公報に記載されているような固体粉末を熱融着させる方法などが挙げられる。
【0321】
<オーバーコート層>
本発明に係る記録層上に記録層の保護の目的でオーバーコート層を設けても良い。
また、記録層がラジカル重合系の場合には、記録層中における空気中の酸素に起因する重合阻害を防止し、感度の安定性を向上を目的に酸素遮断性のオーバーコート層を設けることができる。
オーバーコート層には、現像時に容易に除去されること且つ酸素遮断性に優れた薄膜を形成し得る点から、水溶性高分子、特にポリビニルアルコールが好適に用いられる。
【0322】
ポリビニルアルコールは、必要な水溶性を有する実質的量の未置換ビニルアルコール単位を含有してさえいれば、一部がエステル、エーテル、およびアセタールで置換されていても良い。また、同様に一部が他の共重合成分を含有しても良い。ポリビニルアルコールの具体例としては、71〜100%加水分解され、重合度が300〜2400の範囲のものがあげられる。具体的には、市販品として、株式会社クラレ製PVA−105、PVA−110、PVA−117、PVA−117H、PVA−120、PVA−124、PVA−124H、PVA−CS、PVA−CST、PVA−HC、PVA−203、PVA−204、PVA−205、PVA−210、PVA−217、PVA−220、PVA−224、PVA−217EE、PVA−220、PVA−224、PVA−217EE、PVA−217E、PVA−220E、PVA−224E、PVA−405、PVA−420、PVA−613、L−8等があげられる。上記の共重合体としては、88〜100%加水分解されたポリビニルアセテートクロロアセテートまたはプロピオネート、ポリビニルホルマールおよびポリビニルアセタールおよびそれらの共重合体があげられる。
【0323】
これらのポリビニルアルコールは、オーバーコート層全固形分に対して、50〜99.7質量%であることが好ましく、70〜99.5質量%であることがより好ましい。含有量が50質量%未満であると酸素透過防止効果が不充分で、感度が低下する傾向があり、99.7質量%を超えるとインク着肉性が低下するため、いずれも好ましくない。
【0324】
このオーバーコート層には、前記ポリビニルアルコールなどの高分子のほか、本発明の効果を損なわない範囲において、他の水溶性高分子を併用することができる。
併用し得る水溶性高分子としては、水溶性の天然高分子および合成高分子から選ばれ、水溶性樹脂単独もしくは架橋剤とともに用いて塗布乾燥された時にフィルム形成できるものである。本発明に好ましく用いられる水溶性樹脂の具体例としては、天然高分子では、アラビアガム、水溶性大豆多糖類、繊維素誘導体(例えば、カルボキシメチルセルローズ、カルボキシエチルセルローズ、メチルセルローズ等)、その変性体、ホワイトデキストリン、プルラン、酵素分解エーテル化デキストリン等、合成高分子では、ポリビニルアルコール(ポリ酢酸ビニルの加水分解率65%以上のもの)、ポリアクリル酸、そのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、ポリアクリル酸共重合体、そのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、ポリメタクリル酸、そのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、ビニルアルコール/アクリル酸共重合体およびそのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、ポリアクリルアミド、その共重合体、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリビニルピロリドン、その共重合体、ポリビニルメチルエーテル、ビニルメチルエーテル/無水マレイン酸共重合体、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、そのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸共重合体、そのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、セロハン、水溶性アクリル樹脂等を挙げることができる。
また、目的に応じて、これらの樹脂を二種以上混合して用いることもできる。しかし、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0325】
また、オーバーコート層にはさらに塗布性を向上させるための界面活性剤、皮膜の物性を改良するための水溶性の可塑剤等の公知の添加剤を加えても良い。水溶性の可塑剤としてはたとえばプロピオンアミド、シクロヘキサンジオール、グリセリン、ソルビトール等がある。また、水溶性の(メタ)アクリル系ポリマーなどを添加しても良い。さらにまた、これらのポリマーに記録層との密着、経時安定性の向上等のために添加剤を加えても良い。
【0326】
オーバーコート層は、通常上記各成分を前述の塗布溶剤または水などに溶かして、記録層上に塗布することにより、形成することができる。塗布溶剤としては、好ましくは、蒸留水を用いる。
オーバーコート層塗布液の塗布方法は、前述した記録層の塗布と同様に、公知の塗布方法を用いればよい。オーバーコート層の塗布、乾燥後に得られる塗布量は、0.5〜10g/m2であり、好ましくは1〜5g/m2である。
【0327】
<支持体>
本発明に係る平版印刷版原版に使用される支持体は、寸度的に安定な板状物であれば特に制限はなく使用することができる。そのような支持体としては、紙、プラスチックス(例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなど)がラミネートされた紙、例えばアルミニウム(アルミニウム合金も含む)、亜鉛、鉄、銅などのような金属の板、例えば二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酪酸酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタールなどのようなプラスチックスのフイルム、上記のような金属がラミネートもしくは蒸着された紙もしくはプラスチックフィルムなどが含まれるが、特にアルミニウム板が好ましい。アルミニウム板には純アルミニウム板及びアルミニウム合金板が含まれる。アルミニウム合金としては種々のものが使用でき、例えばケイ素、銅、マンガン、マグネシウム、クロム、亜鉛、鉛、ビスマス、ニッケルなどの金属とアルミニウムの合金が用いられる。これらの組成物は、いくらかの鉄およびチタンに加えてその他無視し得る程度の量の不純物をも含むものである。
【0328】
支持体は、必要に応じて表面処理される。本発明に係る平版印刷版原版の支持体表面は、親水化処理が施されることが好ましい。また金属、特にアルミニウムの表面を有する支持体の場合には、砂目立て処理、ケイ酸ソーダ、弗化ジルコニウム酸カリウム、リン酸塩等の水溶液への浸漬処理、あるいは陽極酸化処理などの表面処理がなされていることが好ましい。また、米国特許第2,714,066号明細書に記載されているように、砂目立てしたのちケイ酸ナトリウム水溶液に浸漬処理したアルミニウム板、米国特許第3,181,461号明細書に記載されているようにアルミニウム板を陽極酸化処理を行った後にアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液に浸漬処理したものも好適に使用される。
上記陽極酸化処理は、例えば、リン酸、クロム酸、硫酸、ホウ酸等の無機酸、若しくはシュウ酸、スルファミン酸等の有機酸またはこれらの塩の水溶液又は非水溶液の単独又は二種以上を組み合わせた電解液中でアルミニウム板を陽極として電流を流すことにより実施される。
【0329】
また、米国特許第3,658,662号明細書に記載されているようなシリケート電着も有効である。これらの親水化処理は、支持体の表面を親水性とする為に施される以外に、その上に設けられる記録層との有害な反応を防ぐ為や、記録層との密着性を向上させる為に施されるものである。アルミニウム板を砂目立てするに先立って、必要に応じて表面の圧延油を除去すること及び清浄なアルミニウム面を表出させるためにその表面の前処理を施しても良い。
前者のためには、トリクレン等の溶剤、界面活性剤等が用いられている。又後者のためには水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ・エッチング剤を用いる方法が広く行われている。
【0330】
砂目立て方法としては、機械的、化学的および電気化学的な方法のいずれの方法も有効である。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラスト研磨法、軽石のような研磨剤の水分散スラリーをナイロンブラシで擦りつけるブラシ研磨法などがあり、化学的方法としては、特開昭54−31187号公報に記載されているような鉱酸のアルミニウム塩の飽和水溶液に浸漬する方法が適しており、電気化学的方法としては塩酸、硝酸またはこれらの組合せのような酸性電解液中で交流電解する方法が好ましい。このような粗面化方法の内、特に特開昭55−137993号公報に記載されているような機械的粗面化と電気化学的粗面化を組合せた粗面化方法は、感脂性画像の支持体への接着力が強いので好ましい。上記の如き方法による砂目立ては、アルミニウム板の表面の中心線表面粗さ(Ra)が0.3〜1.0μmとなるような範囲で施されることが好ましい。このようにして砂目立てされたアルミニウム板は必要に応じて水洗および化学的にエッチングされる。
【0331】
エッチング処理液は、通常アルミニウムを溶解する塩基あるいは酸の水溶液より選ばれる。この場合、エッチングされた表面に、エッチング液成分から誘導されるアルミニウムと異なる被膜が形成されないものでなければならない。好ましいエッチング剤を例示すれば、塩基性物質としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸二カリウム等;酸性物質としては硫酸、過硫酸、リン酸、塩酸及びその塩等であるが、アルミニウムよりイオン化傾向の低い金属例えば亜鉛、クロム、コバルト、ニッケル、銅等の塩はエッチング表面に不必要な被膜を形成するから好ましくない。これ等のエッチング剤は、使用濃度、温度の設定において、使用するアルミニウムあるいは合金の溶解速度が浸漬時間1分あたり0.3グラムから40g/m2になる様に行なわれるのが最も好ましいが、これを上回るあるいは下回るものであっても差支えない。
【0332】
エッチングは上記エッチング液にアルミニウム板を浸漬したり、該アルミニウム板にエッチング液を塗布すること等により行われ、エッチング量が0.5〜10g/m2の範囲となるように処理されることが好ましい。上記エッチング剤としては、そのエッチング速度が早いという特長から塩基の水溶液を使用することが望ましい。この場合、スマットが生成するので、通常デスマット処理される。デスマット処理に使用される酸は、硝酸、硫酸、リン酸、クロム酸、フッ酸、ホウフッ化水素酸等が用いられる。エッチング処理されたアルミニウム板は、必要により水洗及び陽極酸化される。陽極酸化は、この分野で従来より行なわれている方法で行なうことができる。
【0333】
具体的には、硫酸、リン酸、クロム酸、シュウ酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸等あるいはそれらの二種類以上を組み合せた水溶液又は非水溶液中でアルミニウムに直流または交流の電流を流すと、アルミニウム支持体表面に陽極酸化被膜を形成させることができる。
【0334】
陽極酸化の処理条件は使用される電解液によって種々変化するので一般には決定され得ないが一般的には電解液の濃度が1〜80質量%、液温5〜70℃、電流密度0.5〜60アンペア/dm2、電圧1〜100V、電解時間30秒〜50分の範囲が適当である。これらの陽極酸化処理の内でも、とくに英国特許第1,412,768号明細書に記載されている硫酸中で高電流密度で陽極酸化する方法および米国特許第3,511,661号明細書に記載されているリン酸を電解浴として陽極酸化する方法が好ましい。上記のように粗面化され、さらに陽極酸化されたアルミニウム板は、必要に応じて親水化処理しても良く、その好ましい例としては米国特許第2,714,066号及び同第3,181,461号に開示されているようなアルカリ金属シリケート、例えばケイ酸ナトリウム水溶液または特公昭36−22063号公報に開示されている弗化ジルコニウム酸カリウムおよび米国特許第4,153,461号明細書に開示されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法がある。
【0335】
<有機下塗層>
本発明に係る平版印刷版原版には記録層を塗設する前に有機下塗層を設けることが非画像部の記録層残りを減らす上で好ましい。かかる有機下塗層に用いられる有機化合物としては例えば、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、アラビアガム、2−アミノエチルホスホン酸などのアミノ基を有するホスホン酸類、置換基を有してもよいフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アルキルホスホン酸、グリセロホスホン酸、メチレンジホスホン酸およびエチレンジホスホン酸などの有機ホスホン酸、置換基を有してもよいフェニルリン酸、ナフチルリン酸、アルキルリン酸およびグリセロリン酸などの有機リン酸、置換基を有してもよいフェニルホスフィン酸、ナフチルホスフィン酸、アルキルホスフィン酸およびグリセロホスフィン酸などの有機ホスフィン酸、グリシンやβ−アラニンなどのアミノ酸類、およびトリエタノールアミンの塩酸塩などのヒドロキシル基を有するアミンの塩酸塩などから選ばれるが、二種以上混合して用いてもよい。
【0336】
また、有機下塗り層にオニウム基を有する化合物を含有することも好ましい。オニウム基を有する化合物は特開2000−10292号、特開2000−108538等に詳述されている。
その他ポリ(p−ビニル安息香酸)などで代表される構造単位を分子中に有する高分子化合物群の中から選ばれる少なくとも1種の化合物を用いることができる。より具体的にはp−ビニル安息香酸とビニルベンジルトリエチルアンモニウム塩との共重合体、p−ビニル安息香酸とビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロリドとの共重合体などがあげられる。
【0337】
この有機下塗層は次のような方法で設けることができる。即ち、水またはメタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤もしくはそれらの混合溶剤に上記の有機化合物を溶解させた溶液をアルミニウム板上に塗布、乾燥して設ける方法と、水またはメタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤もしくはそれらの混合溶剤に上記の有機化合物を溶解させた溶液に、アルミニウム板を浸漬して上記有機化合物を吸着させ、しかる後、水などによって洗浄、乾燥して有機下塗層を設ける方法である。前者の方法では、上記の有機化合物の0.005〜10質量%の濃度の溶液を種々の方法で塗布できる。例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布などいずれの方法を用いてもよい。また、後者の方法では、溶液の濃度は0.01〜20質量%、好ましくは0.05〜5質量%であり、浸漬温度は20〜90℃、好ましくは25〜50℃であり、浸漬時間は0.1秒〜20分、好ましくは2秒〜1分である。これに用いる溶液は、アンモニア、トリエチルアミン、水酸化カリウムなどの塩基性物質や、塩酸、リン酸などの酸性物質によりpHを調節し、pH1〜12の範囲で使用することもできる。また、感光性平版印刷版の調子再現性改良のために黄色染料を添加することもできる。さらにこの溶液には、下記一般式で示される化合物を添加することもできる。
(HO)x−R−(COOH)y ・・・一般式
但し、Rは置換基を有してもよい炭素数14以下のアリーレン基を表し、x、yは独立して1から3の整数を表す。上記一般式で示される化合物の具体的な例として、3−ヒドロキシ安息香酸、4−ヒドロキシ安息香酸、サリチル酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、10−ヒドロキシ−9−アントラセンカルボン酸などが挙げられる。有機下塗層の乾燥後の被覆量は、1〜100mg/m2が適当であり、好ましくは2〜70mg/m2である。上記の被覆量が2mg/m2より少ないと十分な耐刷性能が得られない。また、100mg/m2より大きくても同様である。
【0338】
<バックコート層>
支持体の裏面には、必要に応じてバックコート層が設けられる。かかるバックコート層としては特開平5−45885号公報記載の有機高分子化合物および特開平6−35174号公報記載の有機または無機金属化合物を加水分解および重縮合させて得られる金属酸化物からなる被覆層が好ましく用いられる。これらの被覆層のうち、Si(OCH3)4、Si(OC2H5)4、Si(OC3H7)4、Si(OC4H9)4などのケイ素のアルコキシ化合物が安価で入手し易く、それから得られる金属酸化物の被覆層が耐現像液に優れており特に好ましい。
【0339】
<露光光源>
上記のようにして作製された平版印刷版原版は、通常、像露光、現像処理を施される。像露光に用いられる活性光線の光源としては、近赤外から赤外領域に発光波長を持つ光源が好ましく、固体レーザ、半導体レーザが特に好ましい。
【0340】
<現像液>
本発明に係る平版印刷版原版の現像処理に適用することのできる現像液は、pHが9.0〜14.0の範囲、好ましくは12.0〜13.5の範囲にある現像液である。現像液(以下、補充液も含めて現像液と呼ぶ)には、従来より知られているアルカリ水溶液が使用できる。例えば、ケイ酸ナトリウム、同カリウム、第3リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、第2リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、ほう酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、水酸化ナトリウム、同アンモニウム、同カリウムおよび同リチウムなどの無機アルカリ塩が挙げられる。また、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジンなどの有機アルカリ剤が挙げられる。これらのアルカリ水溶液は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0341】
上記のアルカリ水溶液の内、特に本発明による効果が発揮される現像液は、一つは塩基としてケイ酸アルカリを含有した、又は塩基にケイ素化合物を混ぜてケイ酸アルカリとしたものを含有した、所謂「シリケート現像液」と呼ばれるpH12以上の水溶液で、もう一つのより好ましい現像液は、ケイ酸アルカリを含有せず、非還元糖(緩衝作用を有する有機化合物)と塩基とを含有した所謂「ノンシリケート現像液」である。
前者においては、アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液はケイ酸塩の成分である酸化ケイ素SiO2とアルカリ金属酸化物M2Oの比率(一般に〔SiO2〕/〔M2O〕のモル比で表す)と濃度によって現像性の調節が可能であり、例えば、特開昭54−62004号公報に開示されているような、SiO2/Na2Oのモル比が1.0〜1.5(即ち〔SiO2〕/〔Na2O〕が1.0〜1.5)であって、SiO2の含有量が1〜4質量%のケイ酸ナトリウムの水溶液や、特公昭57−7427号公報に記載されているような、〔SiO2〕/〔M〕が0.5〜0.75(即ち〔SiO2〕/〔M2O〕が1.0〜1.5)であって、SiO2の濃度が1〜4質量%であり、かつ該現像液がその中に存在する全アルカリ金属のグラム原子を基準にして少なくとも20%のカリウムを含有している、アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液が好適に用いられる。
【0342】
また、ケイ酸アルカリを含有せず、非還元糖と塩基とを含有した所謂「ノンシリケート現像液」も、本発明に係る平版印刷版材料の現像に適用するのに好ましい。この現像液を用いて、平版印刷版材料の現像処理を行うと、記録層の表面を劣化させることがなく、かつ記録層の着肉性をより良好な状態に維持することができる。
この現像液は、その主成分が、非還元糖から選ばれる少なくとも一つの化合物と、少なくとも一種の塩基からなり、液のpHが9.0〜13.5の範囲であることが好ましい。かかる非還元糖とは、遊離のアルデヒド基やケトン基を持たず、還元性を示さない糖類であり、還元基同士の結合したトレハロース型少糖類、糖類の還元基と非糖類が結合した配糖体および糖類に水素添加して還元した糖アルコールに分類され、何れも好適に用いられる。トレハロース型少糖類には、サッカロースやトレハロースがあり、配糖体としては、アルキル配糖体、フェノール配糖体、カラシ油配糖体などが挙げられる。また糖アルコールとしてはD,L−アラビット、リビット、キシリット、D,L−ソルビット、D,L−マンニット、D,L−イジット、D,L−タリット、ズリシットおよびアロズルシットなどが挙げられる。更に二糖類の水素添加で得られるマルチトールおよびオリゴ糖の水素添加で得られる還元体(還元水あめ)が好適に用いられる。
これらの中で特に好ましい非還元糖は糖アルコールとサッカロースであり、特にD−ソルビット、サッカロース、還元水あめが適度なpH領域に緩衝作用があることと、低価格であることで好ましい。
【0343】
これらの非還元糖は、単独もしくは二種以上を組み合わせて使用でき、それらの現像液中に占める割合は0.1〜30質量%が好ましく、更に好ましくは、1〜20質量%である。
この範囲以下では十分な緩衝作用が得られず、またこの範囲以上の濃度では、高濃縮化し難く、また原価アップの問題が出てくる。尚、還元糖を塩基と組み合わせて使用した場合、経時的に褐色に変色し、pHも徐々に下がり、よって現像性が低下するという問題点がある。
【0344】
非還元糖に組み合わせる塩基としては従来より知られているアルカリ剤が使用できる。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸三アンモニウム、リン酸二ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸二アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウムなどの無機アルカリ剤が挙げられる。また、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジンなどの有機アルカリ剤も用いられる。
【0345】
これらのアルカリ剤は単独もしくは二種以上を組み合わせて用いられる。これらの中で好ましいのは水酸化ナトリウム、水酸化カリウムである、その理由は、非還元糖に対するこれらの量を調整することにより広いpH領域でpH調整が可能となるためである。また、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどもそれ自身に緩衝作用があるので好ましい。
これらのアルカリ剤は現像液のpHを9.0〜13.5の範囲になるように添加され、その添加量は所望のpH、非還元糖の種類と添加量によって決められるが、より好ましいpH範囲は10.0〜13.2である。
【0346】
現像液には更に、糖類以外の弱酸と強塩基からなるアルカリ性緩衝液が併用できる。かかる緩衝液として用いられる弱酸としては、解離定数(pKa)が10.0〜13.2のものが好ましい。
このような弱酸としては、Pergamon Press社発行のIONISATION CONSTANTS OF ORGANIC ACIDS IN AQUEOUS SOLUTIONなどに記載されているものから選ばれ、例えば2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール−1(PKa12.74)、トリフルオロエタノール(同12.37)、トリクロロエタノール(同12.24)などのアルコール類、ピリジン−2−アルデヒド(同12.68)、ピリジン−4−アルデヒド(同12.05)などのアルデヒド類、サリチル酸(同13.0)、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸(同12.84)、カテコール(同12.6)、没食子酸(同12.4)、スルホサリチル酸(同11.7)、3,4−ジヒドロキシスルホン酸(同12.2)、3,4−ジヒドロキシ安息香酸(同11.94)、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン(同11.82)、ハイドロキノン(同11.56)、ピロガロール(同11.34)、o−クレゾール(同10.33)、レゾルシノール(同11.27)、p−クレゾール(同10.27)、m−クレゾール(同10.09)などのフェノール性水酸基を有する化合物、
【0347】
2−ブタノンオキシム(同12.45)、アセトキシム(同12.42)、1,2−シクロヘプタンジオンジオキシム(同12.3)、2−ヒドロキシベンズアルデヒドオキシム(同12.10)、ジメチルグリオキシム(同11.9)、エタンジアミドジオキシム(同11.37)、アセトフェノンオキシム(同11.35)などのオキシム類、アデノシン(同12.56)、イノシン(同12.5)、グアニン(同12.3)、シトシン(同12.2)、ヒポキサンチン(同12.1)、キサンチン(同11.9)などの核酸関連物質、他に、ジエチルアミノメチルホスホン酸(同12.32)、1−アミノ−3,3,3−トリフルオロ安息香酸(同12.29)、イソプロピリデンジホスホン酸(同12.10)、1,1−エチリデンジホスホン酸(同11.54)、1,1−エチリデンジホスホン酸1−ヒドロキシ(同11.52)、ベンズイミダゾール(同12.86)、チオベンズアミド(同12.8)、ピコリンチオアミド(同12.55)、バルビツル酸(同12.5)などの弱酸が挙げられる。
【0348】
これらの弱酸の中で好ましいのは、スルホサリチル酸、サリチル酸である。これらの弱酸に組み合わせる塩基としては、水酸化ナトリウム、同アンモニウム、同カリウムおよび同リチウムが好適に用いられる。これらのアルカリ剤は単独もしくは二種以上を組み合わせて用いられる。上記の各種アルカリ剤は濃度および組み合わせによりpHを好ましい範囲内に調整して使用される。
【0349】
現像液には、現像性の促進や現像カスの分散および印刷版画像部の親インキ性を高める目的で必要に応じて種々界面活性剤や有機溶剤を添加できる。好ましい界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系および両性界面活性剤が挙げられる。
界面活性剤の好ましい例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、しょ糖脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシドなどの非イオン性界面活性剤、
【0350】
脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩、N−アルキルスルホ琥珀酸モノアミド二ナトリウム塩、石油スルホン酸塩類、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩類、スチレン/無水マレイン酸共重合物の部分鹸化物類、オレフィン/無水マレイン酸共重合物の部分鹸化物類、
【0351】
ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類などのアニオン界面活性剤、アルキルアミン塩類、テトラブチルアンモニウムブロミド等の第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体などのカチオン性界面活性剤、カルボキシベタイン類、アミノカルボン酸類、スルホべタイン類、アミノ硫酸エステル類、イミダゾリン類などの両性界面活性剤が挙げられる。以上挙げた界面活性剤の中でポリオキシエチレンとあるものは、ポリオキシメチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレンなどのポリオキシアルキレンに読み替えることもでき、それらの界面活性剤もまた包含される。
【0352】
更に好ましい界面活性剤は分子内にパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系の界面活性剤である。かかるフッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステルなどのアニオン型、パーフルオロアルキルベタインなどの両性型、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩などのカチオン型およびパーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基および親水性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基および親油性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基、親水性基および親油性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基および親油性基含有ウレタンなどの非イオン型が挙げられる。上記の界面活性剤は、単独もしくは2種以上を組み合わせて使用することができ、現像液中に0.001〜10質量%、より好ましくは0.01〜5質量%の範囲で添加される。
【0353】
現像液には、種々の現像安定化剤を用いることができる。それらの好ましい例として、特開平6−282079号公報記載の糖アルコールのポリエチレングリコール付加物、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドなどのテトラアルキルアンモニウム塩、テトラブチルホスホニウムブロマイドなどのホスホニウム塩およびジフェニルヨードニウムクロライドなどのヨードニウム塩が好ましい例として挙げられる。更には、特開昭50−51324号公報記載のアニオン界面活性剤または両性界面活性剤、また特開昭55−95946号公報記載の水溶性カチオニックポリマー、特開昭56−142528号公報に記載されている水溶性の両性高分子電解質を挙げることができる。
【0354】
更に、特開昭59−84241号公報のアルキレングリコールが付加された有機ホウ素化合物、特開昭60−111246号公報記載のポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロック重合型の水溶性界面活性剤、特開昭60−129750号公報のポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンを置換したアルキレンジアミン化合物、特開昭61−215554号公報記載の重量平均分子量300以上のポリエチレングリコール、特開昭63−175858号公報のカチオン性基を有する含フッ素界面活性剤、特開平2−39157号公報の酸またはアルコールに4モル以上のエチレンオキシドを付加して得られる水溶性エチレンオキシド付加化合物と、水溶性ポリアルキレン化合物などが挙げられる。
【0355】
現像液には更に必要により有機溶剤が加えられる。かかる有機溶剤としては、水に対する溶解度が約10質量%以下のものが適しており、好ましくは5質量%以下のものから選ばれる。例えば、1−フェニルエタノール、2−フェニルエタノール、3−フェニル−1−プロパノール、4−フェニル−1−ブタノール、4−フェニル−2−ブタノール、2−フェニル−1−ブタノール、2−フェノキシエタノール、2−ベンジルオキシエタノール、o−メトキシベンジルアルコール、m−メトキシベンジルアルコール、p−メトキシベンジルアルコール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール、3−メチルシクロヘキサノールおよび4−メチルシクロヘキサノール、N−フェニルエタノールアミンおよびN−フェニルジエタノールアミンなどを挙げることができる。
【0356】
有機溶剤の含有量は使用液の総質量に対して0.1〜5質量%である。その使用量は界面活性剤の使用量と密接な関係があり、有機溶剤の量が増すにつれ、界面活性剤の量は増加させることが好ましい。これは界面活性剤の量が少なく、有機溶剤の量を多く用いると有機溶剤が完全に溶解せず、従って、良好な現像性の確保が期待できなくなるからである。
【0357】
現像液には更に還元剤を加えることができる。これは印刷版の汚れを防止するものである。好ましい有機還元剤としては、チオサリチル酸、ハイドロキノン、メトール、メトキシキノン、レゾルシン、2−メチルレゾルシンなどのフェノール化合物、フェニレンジアミン、フェニルヒドラジンなどのアミン化合物が挙げられる。更に好ましい無機の還元剤としては、亜硫酸、亜硫酸水素酸、亜リン酸、亜リン酸水素酸、亜リン酸二水素酸、チオ硫酸および亜ジチオン酸などの無機酸のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などを挙げることができる。
これらの還元剤のうち汚れ防止効果が特に優れているのは亜硫酸塩である。これらの還元剤は使用時の現像液に対して好ましくは、0.05〜5質量%の範囲で含有される。
【0358】
現像液には更に有機カルボン酸を加えることもできる。好ましい有機カルボン酸は炭素原子数6〜20の脂肪族カルボン酸および芳香族カルボン酸である。脂肪族カルボン酸の具体的な例としては、カプロン酸、エナンチル酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸およびステアリン酸などがあり、特に好ましいのは炭素数8〜12のアルカン酸である。また炭素鎖中に二重結合を有する不飽和脂肪酸でも、枝分かれした炭素鎖のものでもよい。芳香族カルボン酸としてはベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環などにカルボキシル基が置換された化合物で、具体的には、o−クロロ安息香酸、p−クロロ安息香酸、o−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、o−アミノ安息香酸、p−アミノ安息香酸、2,4−ジヒドロシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、没食子酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸、1−ナフトエ酸、2−ナフトエ酸などがあるがヒドロキシナフトエ酸は特に有効である。
【0359】
上記脂肪族および芳香族カルボン酸は水溶性を高めるためにナトリウム塩やカリウム塩またはアンモニウム塩として用いるのが好ましい。本発明で用いる現像液の有機カルボン酸の含有量は格別な制限はないが、0.1質量%より低いと効果が十分でなく、また10質量%以上ではそれ以上の効果の改善が計れないばかりか、別の添加剤を併用する時に溶解を妨げることがある。従って、好ましい添加量は使用時の現像液に対して0.1〜10質量%であり、より好ましくは0.5〜4質量%である。
【0360】
現像液には、更に必要に応じて、防腐剤、着色剤、増粘剤、消泡剤および硬水軟化剤などを含有させることもできる。硬水軟化剤としては例えば、ポリリン酸およびそのナトリウム塩、カリウム塩およびアンモニウム塩、エチレンジアミンテトラ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、ニトリロトリ酢酸、1,2−ジアミノシクロヘキサンテトラ酢酸および1,3−ジアミノ−2−プロパノールテトラ酢酸などのアミノポリカルボン酸およびそれらのナトリウム塩、カリウム塩およびアンモニウム塩、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、トリエチレンテトラミンヘキサ(メチレンホスホン酸)、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ(メチレンホスホン酸)および1−ヒドロキシタエン−1,1−ジホスホン酸やそれらのナトリウム塩、カリウム塩およびアンモニウム塩を挙げることができる。
【0361】
このような硬水軟化剤はそのキレート化と使用される硬水の硬度および硬水の量によって最適値が変化するが、一般的な使用量を示せば、使用時の現像液に0.01〜5質量%、より好ましくは0.01〜0.5質量%の範囲である。この範囲より少ない添加量では所期の目的が十分に達成されず、添加量がこの範囲より多い場合は、色抜けなど、画像部への悪影響がでてくる。現像液の残余の成分は水である。現像液は、使用時よりも水の含有量を少なくした濃縮液としておき、使用時に水で希釈するようにしておくことが運搬上有利である。この場合の濃縮度は、各成分が分離や析出を起こさない程度が適当である。
【0362】
本発明に係る平版印刷版の現像液としてはまた、特開平6−282079号公報記載の現像液も使用できる。これは、SiO2/M2O(Mはアルカリ金属を示す)のモル比が0.5〜2.0の珪酸アルカリ金属塩と、水酸基を4以上有する糖アルコールに5モル以上のエチレンオキシドを付加して得られる水溶性エチレンオキシド付加化合物を含有する現像液である。糖アルコールは糖のアルデヒド基およびケトン基を還元してそれぞれ第一、第二アルコール基としたものに相当する多価アルコールである。糖アルコールの貝体的な例としては、D,L−トレイット、エリトリット、D,L−アラビット、リビット、キシリット、D,L−ソルビット、D,L−マンニット、D,L−イジット、D,L−タリット、ズルシット、アロズルシットなどであり、更に糖アルコールを縮合したジ、トリ、テトラ、ペンタおよびヘキサグリセリンなども挙げられる。上記水溶性エチレンオキシド付加化合物は上記糖アルコール1モルに対し5モル以上のエチレンオキシドを付加することにより得られる。さらにエチレンオキシド付加化合物には必要に応じてプロピレンオキシドを溶解性が許容できる範囲でブロック共重合させてもよい。これらのエチレンオキシド付加化合物は単独もしくは二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0363】
これらの水溶性エチレンオキシド付加化合物の添加量は現像液(使用液)に対して0.001〜5質量%が適しており、より好ましくは0.001〜2質量%である。
この現像液にはさらに、現像性の促進や現像カスの分散および印刷版画像部の親インキ性を高める目的で必要に応じて、前述の種々の界面活性剤や有機溶剤を添加できる。
【0364】
<フィニッシャー>
かかる組成の現像液で現像処理された平版印刷版原版は水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体等を主成分とするフィニッシャーや保護ガム液で後処理を施される。本発明に係る平版印刷版原版の後処理にはこれらの処理を種々組み合わせて用いることができる。
【0365】
<自動現像機〜印刷>
近年、型版・印刷業界では製版作業の合理化および標準化のため、PS版用の自動現像機が広く用いられている。この自動現像機は、一般に現像部と後処理部からなり、PS版を搬送する装置と、各処理液槽およびスプレー装置からなり、露光済みのPS版を水平に搬送しながら、ポンプで汲み上げた各処理液をスプレーノズルから吹き付けて現像および後処理するものである。また、最近は処理液が満たされた処理液槽中に液中ガイドロールなどによってPS版を浸漬搬送させて現像処理する方法や、現像後一定量の少量の水洗水を版面に供給して水洗し、その廃水を現像液原液の希釈水としで再利用する方法も知られている。
【0366】
このような自動処理においては、各処理液に処理量や稼動時間等に応じてそれぞれの補充液を補充しながら処理することができる。また、実質的に未使用の処理液で処理するいわゆる使い捨て処理方式も適用できる。このような処理によって得られた平版印刷版はオフセット印刷機に掛けられ、多数枚の印刷に用いられる。
【0367】
以上のようにして得られた平版印刷版は所望により不感脂化ガムを塗布したのち、印刷工程に供することができるが、より一層の高耐刷力の平版印刷版としたい場合にはバーニング処理が施される。
平版印刷版をバーニング処理する場合には、該バーニング処理前に、特公昭61−2518号、同55−28062号、特開昭62−31859号、同61−159655号の各公報に記載されているような整面液で処理することが好ましい。
その方法としては、該整面液を浸み込ませたスポンジや脱脂綿にて、平版印刷版上に塗布するか、整面液を満たしたバット中に印刷版を浸漬して塗布する方法や、自動コーターによる塗布などが適用される。また、塗布した後でスキージ、或いは、スキージローラーで、その塗布量を均一にすることは、より好ましい結果を与える。
【0368】
整面液の塗布量は一般に0.03〜0.8g/m2(乾燥質量)が適当である。
整面液が塗布された平版印刷版は必要であれば乾燥された後、バーニングプロセッサー(例えば、富士写真フイルム(株)より販売されているバーニングプロセッサー:「BP−1300」)などで高温に加熱される。この場合の加熱温度及び時間は、画像を形成している成分の種類にもよるが、180〜300℃の範囲で1〜20分の範囲が好ましい。
【0369】
バーニング処理された平版印刷版は、必要に応じて適宜、水洗、ガム引きなどの従来より行われている処理を施こすことができるが、水溶性高分子化合物等を含有する整面液が使用された場合には、ガム引きなどのいわゆる不感脂化処理を省略することができる。
この様な処理によって得られた平版印刷版はオフセット印刷機等にかけられ、多数枚の印刷に用いられる。
【0370】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0371】
[合成例]
<合成例1:連鎖移動剤を用いて末端を修飾した特定ポリマーAの合成>
コンデンサー、攪拌機を取り付けた1000ml三口フラスコに、1−メトキシ−2−プロパノール51.6gを入れ、80℃に加熱した。窒素雰囲気下、撹拌しながら、メタクリル酸n−ステアリル50.8g、3−メルカプトプロピオン酸0.8g、及び熱重合開始剤V−601(商品名、和光純薬工業(株)製)576mgの1−メトキシ−2−プロパノール51.6gの混合溶液を2時間かけて滴下した。滴下終了後、引き続き、80℃で3時間攪拌しながら反応させた。反応後、反応溶液をメタノールで十分洗浄し、白色沈殿した末端にカルボキシ基を有する下記ポリマーAを51.8g得た。ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により、重量平均分子量を測定した結果、5,000であった。
【0372】
【化83】
【0373】
<合成例2:連鎖移動剤を用いて末端を修飾した特定ポリマーBの合成>
窒素雰囲気下80℃で攪拌した1−メトキシー2−プロパノール64.5g溶液に、メタクリル酸n−ドデシル50.4g、3−メルカプトプロピオン酸1.1g、及び熱重合開始剤V−601(商品名、和光純薬工業(株)製)760mgの1−メトキシー2−プロパノール64.5gの混合溶液を2時間かけて滴下した。滴下終了後、引き続き、80℃で更に3時間攪拌した。反応後、反応溶液をメタノールで十分洗浄し、白色沈殿した末端にカルボキシ基を有するポリマーBを50.8g得た。ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により、重量平均分子量を測定した結果、5,200であった。
【0374】
【化84】
【0375】
<合成例3〜7:特定ポリマーC〜特定ポリマーIの合成>
以下、合成例1又は合成例2と同様にして、下記表1に示した連鎖移動剤とモノマーを用い、本発明に係る特定ポリマーC〜特定ポリマーIを合成した。更にGPCにより分子量を測定した。得られた特定ポリマーの構造および重量平均分子量を以下に示す。
【0376】
【表1】
【0377】
【化85】
【0378】
【化86】
【0379】
−ポジ型平版印刷版原版−
[支持体Aの作製]
厚さ0.24mmのアルミニウム板(Si:0. 06質量%、Fe:0.30質量%、Cu:0. 014質量%、Mn:0.001質量%、Mg:0.001質量%、Zn:0.001質量%、Ti:0.03質量%を含有し、残部はAlと不可避不純物のアルミニウム合金)に対し以下に示す表面処理を連続的に行った。
比重1.12の研磨剤(ケイ砂)と水との懸濁液を研磨スラリー液としてアルミニウム板の表面に供給しながら、回転するローラ状ナイロンブラシにより機械的な粗面化を行った。その後、カセイソーダ濃度2.6質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%、温度70℃でスプレーによるエッチング処理を行い、アルミニウム板を6g/m2溶解し、スプレーによる水洗を行った。更に、温度30℃の硝酸濃度1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、スプレーで水洗した。その後、60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸10g/L水溶液(アルミニウムイオンを5g/L、アンモニウムイオンを0.007質量%含む。)、温度80℃であった。水洗後、アルミニウム板をカセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%でスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.20g/m2 溶解し、スプレーによる水洗を行った。その後、温度60℃の硫酸濃度25質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、スプレーによる水洗を行った。
二段給電電解処理法の陽極酸化装置を用いて陽極酸化処理を行った。電解部に供給した電解液としては、硫酸を用いた。その後、スプレーによる水洗を行った。最終的な酸化皮膜量は2.7g/m2であった。
陽極酸化処理により得られたアルミニウム支持体を温度30℃の3号ケイ酸ソーダの1質量%水溶液の処理層中へ、10秒間、浸せきすることでアルカリ金属ケイ酸塩処理(シリケート処理)を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。
上記のようにして得られたアルカリ金属ケイ酸塩処理後のアルミニウム支持体上に、下記組成の下塗り液を塗布し、塗膜を80℃で15秒間乾燥し支持体Aを得た。乾燥後の塗膜の被覆量は15mg/m2であった。
【0380】
<下塗り液>
・下記化合物 0.3g
・メタノール 100g
・水 1g
【0381】
【化87】
【0382】
[支持体Bの作成]
厚さ0.24mmのアルミニウム板(Si:0. 06質量%、Fe:0.30質量%、Cu:0. 014質量%、Mn:0.001質量%、Mg:0.001質量%、Zn:0.001質量%、Ti:0.03質量%を含有し、残部はAlと不可避不純物のアルミニウム合金)に対し以下に示す表面処理を連続的に行った。
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸10g/L水溶液(アルミニウムイオンを5g/L、アンモニウムイオンを0.007質量%含む。)、温度80℃であった。水洗後、アルミニウム板をカセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%でスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.20g/m2溶解し、スプレーによる水洗を行った。その後、温度60℃の硫酸濃度25質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、スプレーによる水洗を行った。
二段給電電解処理法の陽極酸化装置を用いて陽極酸化処理を行った。電解部に供給した電解液としては、硫酸を用いた。その後、スプレーによる水洗を行った。最終的な酸化皮膜量は2.7g/m2であった。
陽極酸化処理により得られたアルミニウム支持体を温度30℃の3号ケイ酸ソーダの1質量%水溶液の処理層中へ、10秒間、浸漬することでアルカリ金属ケイ酸塩処理(シリケート処理)を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。
上記のようにして得られたアルカリ金属ケイ酸塩処理後のアルミニウム支持体上に、前記組成の下塗液を支持体Aにおけるのと同様に塗布し、80℃で15秒間乾燥し、塗膜を形成て支持体Bを得た。乾燥後の塗膜の被覆量は15mg/m2であった。
〔実施例1〕
得られた支持体B上に、以下の組成の記録層塗布液1を塗布量が1.0g/m2になるよう塗布したのち、TABAI社製、PERFECT OVEN PH200にてWind Controlを7に設定して140℃で50秒間乾燥して記録層を形成し、実施例1の平版印刷版原版を得た。
【0383】
【0384】
【化88】
【0385】
〔実施例2〕
得られた支持体Bに、以下の組成の記録層塗布液2を塗布量が1.8g/m2になるよう塗布したのち、実施例1と同様の条件で乾燥し記録層を形成し、実施例2の平版印刷版原版を得た。
【0386】
【0387】
〔実施例3〜9〕
実施例1の記録層塗布液1において、連鎖移動剤を用いて末端を修飾したポリマーAの代わりに、表3に記載の前記合成例で得たポリマーを用いた以外は実施例1と同様にして平版印刷版用原版3〜9を得た。なお、以下の表2には、実施例1及び2で用いた塗布液、特定ポリマー化合物も併記する。
【0388】
【表2】
【0389】
〔比較例1〕
実施例1の記録層塗布液1において、特定ポリマーAを添加しなかった以外は、実施例1と同様にして比較例1の平版印刷版原版を得た。
【0390】
〔比較例2〕
実施例1の記録層塗布液1において、特定ポリマーAに代えて、ステアリン酸n−ドデシル0.02gを用いた以外は実施例1と同様にして比較例2の平版印刷版原版を得た。
【0391】
〔比較例3〕
実施例2の記録層塗布液2において、特定ポリマーAを添加しなかった以外は、実施例2と同様にして、比較例3の平版印刷版原版を得た。
【0392】
〔実施例10〕
前記支持体A上に、以下の組成の記録層塗布液3を塗布量が2.0g/m2になるようワイヤーバーで塗布したのちTABAI社製PERFECT OVENPH200にてWindControlを7に設定して130℃50秒で乾燥した。更にその上に記録層塗布液4を塗布量が0.40g/m2になるようワイヤーバーで塗布したのち140℃60秒で乾燥し、2層構成の記録層を有する実施例10の平版印刷版原版を得た。
【0393】
【0394】
【0395】
〔実施例11〕
実施例10において、記録層塗布液3を記録層塗布液5に、記録層塗布液4を記録層塗布液6に変えた以外は、実施例10と同様にして、2層構成の記録層を有する実施例11の平版印刷版原版を得た。
【0396】
【0397】
【0398】
【化89】
【0399】
〔実施例12〜19〕
実施例10の記録層塗布液4において、特定ポリマーAを下記表3に示す他の特定ポリマーに変更した以外は実施例10と同様にして実施例12〜19の平版印刷版原版を得た。
【0400】
〔実施例20〜27〕
実施例11の記録層塗布液6において、特定ポリマーAを下記表3に示す他の特定ポリマーに変更した以外は実施例11と同様にして実施例20〜27の平版印刷版原版23〜30を得た。
【0401】
〔比較例4〕
実施例10の記録層塗布液4において、特定ポリマーAを添加しなかった以外は、実施例10と同様にして、比較例4の平版印刷版原版を得た。
【0402】
【表3】
【0403】
[ポジ型平版印刷版原版の評価]
〔動摩擦係数の測定〕
本発明の画像記録材料における特徴的な、動摩擦係数(dynamic orkinetic coefficient of friction)(μk)を標準ASTM D1894に従って測定した。なお、平版印刷版原版の記録層の表面がステンレススチールと接触するように置いて測定した。
得られた本発明の実施例1〜27の平版印刷版用原版及び比較例1〜4の平版印刷版用原版を使い、前記方法によりステレンススチールに対する動摩擦係数を測定した。結果を表4に示す。動摩擦係数が低いほど、表面滑り性が高いことを示す。
【0404】
〔耐傷性テスト〕
得られた実施例1〜27及び比較例1〜4の平版印刷版原版をロータリー・アブレーション・テスター(TOYOSEIKI社製)を用い、250gの加重下、アブレーザーフェルトCS5で15回摩擦した。
その後、富士写真フイルム(株)製現像液DT−1(1:8で希釈したもの)及び富士写真フイルム(株)製フィニッシャーFP2W(1:1で希釈したもの)を仕込んだ富士写真フイルム(株)製PSプロセッサー900Hを用い、液温30℃、現像時間12秒にて現像した。この時の現像液の電導度は、45mS/cmであった。
【0405】
耐キズ性の評価は下記基準により行った。結果を下記表3に示す。
〇:摩擦した部分の記録層膜の光学濃度が全く変化しなかったもの
△:摩擦した部分の記録層膜の光学濃度が目視で僅かに観測されたもの
×:摩擦した部分の記録層膜の光学濃度が非摩擦部の2/3以下になったもの
【0406】
〔現像ラチチュードの評価〕
得られた実施例1〜27及び比較例1〜4の平版印刷版原版を、Creo社製Trendsetterにてビーム強度9W、ドラム回転速度150rpmでテストパターン画像のIRレーザー描き込みを行った。
その後、富士写真フイルム(株)製現像液DT−1を水道水で希釈し、種々の電導度を有する現像液を調製した。この液を用いて富士写真フイルム製PSプロセッサー900Hに仕込み、液温30度、現像時間12秒にて現像した。なお、ガム液としてFP−2W(1:1で水道水希釈したもの)を使用した。
【0407】
上記の現像条件において、平版印刷版原版の記録層の未露光部(画像部)の光学濃度低下を目視評価し、濃度低下が観測された時に使用された現像液電導度を(X)mS/cmとする。また、同現像条件において、平版印刷版原版の記録層の露光部(非画像部)の光学濃度低下を目視評価し、濃度低下が観測された時に使用された現像液電導度を(Y)mS/cmとする。本実施例においては、現像ラチチュードを(X)−(Y)と定義した。現像ラチチュードの値が大きいほど、露光部(非画像部)における残膜の発生がしにくく、かつ、未露光部(画像部)の濃度低下も起きにくいことから、現像液の活性に対するラチチュードが広いといえる。結果を下記表4に示す。
【0408】
〔現像カスの評価〕
浸漬型現像槽を有する市販の自動現像機LP−900H(富士写真フイルム(株)製)の現像処理槽に、下記組成のアルカリ現像処理液A(pH約13)を20リットル仕込み、30℃に保温した。LP−900Hの第二浴目には、水道水を8リットル、第三浴目には、FP−2W(富士写真フイルム(株)製):水=1:1希釈したフィニッシングガム液を8リットル仕込んだ。
【0409】
自動現像機LP−900H内臓の現像補充制御インピーダンス値を40.5ms/cmとして、下記の現像補充液Bを補充しながら、露光した平版印刷版(650mm×550mm×0.3mm厚)を一日当たり100版づつ現像処理した。
【0410】
【0411】
前記各実施例、比較例の平版印刷版原版(650mm×550mm×0.3mm厚)をプレートセッター(Luxcel Platesetter 9000CTP(富士写真フイルム(株)製)を用いて(出力216mW、回転数1000rpm、解像度2438dpi、画像面積約20%)で露光し、一日当たり100版現像処理し、合計500m2になるまで約14日処理を続けた。
その後、現像浴中のカスの発生の程度を目視で観察した。カスが全くないものを○、カスが多いものを△、カスが堆積しているものを×として評価した。結果を下記表4に示す。
【0412】
【表4】
【0413】
表4に明らかなように、本発明に係る特定ポリマーを記録層に含有した実施例1〜27の平版印刷版原版は、特定ポリマーを含有しない比較例1〜4の平版印刷版原版との対比において、現像ラチチュードを示す数値が大きく、良好な現像ラチチュードを示した。従って、本発明に係る平版印刷版原版は、非画像部における残膜の発生がしにくく、且つ、画像部の濃度低下も起きにくいことがわかった。
また、実施例1〜27の平版印刷版原版は、本発明に係る特定ポリマーを記録層に用いなかった比較例1、3及び4の平版印刷版原版との対比において、滑り性(動摩擦係数)、耐キズ性及び現像カス抑制に優れていることが分かった。このため、取扱い時に発生する「キズ」に起因する、耐刷性の低下や着肉不良を起こすことなく、良好な印刷物が多数枚えられるものと予想される。また、滑り性向上のためステアリン酸n−ドデシルを添加した比較例2の平版印刷版原版は、各実施例の平版印刷版原版と同等の良好な滑り性及び耐キズ性を示したが、現像カスの問題が発生することが判明した。
【0414】
−ネガ型平版印刷版原版−
[支持体の作製]
99.5%以上のアルミニウムと、Fe 0.30%、Si 0.10%、Ti 0.02%、Cu 0.013%を含むJIS A 1050合金の溶湯に清浄化処理を施し、鋳造した。清浄化処理には、溶湯中の水素などの不要なガスを除去するために脱ガス処理し、セラミックチューブフィルタ処理をおこなった。鋳造法はDC鋳造法で行った。凝固した板厚500mmの鋳塊を表面から10mm面削し、金属間化合物が粗大化してしまわないように550℃で10時間均質化処理を行った。次いで、400℃で熱間圧延し、連続焼鈍炉中で500℃、60秒中間焼鈍した後、冷間圧延を行って、板圧0.30mmのアルミニウム圧延板とした。圧延ロールの粗さを制御することにより、冷間圧延後の中心線平均表面粗さRaを0.2μmに制御した。その後、平面性を向上させるためにテンションレベラーにかけた。
【0415】
次に、平版印刷版支持体とするための表面処理を行った。
まず、アルミニウム板表面の圧延油を除去するため10%アルミン酸ソーダ水溶液で50℃30秒間脱脂処理を行い、30%硫酸水溶液で50℃30秒間中和、スマット除去処理を行った。
【0416】
次いで、支持体と記録層の密着性を良好にし、かつ非画後部に保水性を与えるため、支持体の表面を粗面化する、いわゆる、砂目立て処理を行った。1%の硝酸と0.5%の硝酸アルミを含有する水溶液を45℃に保ち、アルミウェブを水溶液中に流しながら、間接給電セルにより電流密度20A/dm2、デューティー比1:1の交番波形でアノード側電気量240C/dm2を与えることで電解砂目立てを行った。その後10%アルミン酸ソーダ水溶液で50℃30秒間エッチング処理を行い、30%硫酸水溶液で50℃30秒間中和、スマット除去処理を行った。
【0417】
更に、耐摩耗性、耐薬品性、保水性を向上させるために、陽極酸化によって支持体に酸化皮膜を形成させた。電解質として硫酸20%水溶液を35℃で用い、アルミウェブを電解質中に通搬しながら、間接給電セルにより14A/dm2の直流で電解処理を行うことで2.5g/m2の陽極酸化皮膜を作成した。
【0418】
その後、印刷版非画像部としての親水性を確保するため、シリケート処理を行った。処理は3号珪酸ソーダ1.5%水溶液を70℃に保ちアルミウェブの接触時間が15秒となるよう通搬し、更に水洗した。Siの付着量は10mg/m2であった。以上により作成した支持体のRa(中心線表面粗さ)は0.25μmであった。
【0419】
〔実施例28〜30、比較例5〜7〕
その後、下記記録層塗布液7を調製し、上記のようにして得られたアルミニウム支持体にワイヤーバーを用いて塗布し、温風式乾燥装置にて115℃で45秒間乾燥して記録層を形成し、実施例28〜30および比較例5〜7の平版印刷版原版を得た。乾燥後の被覆量は1.2〜1.3g/m2の範囲内であった。
【0420】
【0421】
【表5】
【0422】
前記記録層塗布液7(ネガ型記録層)に使用したバインダーポリマー、赤外線吸収剤、ラジカル発生剤及び重合性化合物の構造を下記に示す。
【0423】
【化90】
【0424】
【化91】
【0425】
【化92】
【0426】
【化93】
【0427】
(露光)
得られた実施例28〜30および比較例5〜7の平版印刷版原版を、水冷式40W赤外線半導体レーザを搭載したCreo社製Trendsetter3244VFSにて、出力6.5W、外面ドラム回転数81rpm、版面エネルギー188mJ/cm2、解像度2400dpiの条件で露光した。
【0428】
(現像処理)
露光後、富士写真フイルム(株)製自動現像機スタブロン900NPを用い現像処理した。現像液は、下記(D−1)を仕込み液、下記(D−2)を補充液に用いた。現像欲浴の温度は30℃、現像時間を12秒で処理した。この際、補充液は自動現像機の現像浴中の現像液の電気伝導度が一定となるように調整しつつ自動的に投入した。また、フィニッシャーは、富士写真フイルム(株)製FN−6の1:1水希釈液を用いた。
【0429】
<現像液(D−1)>
・水酸化カリウム 3g
・炭酸水素カリウム 1g
・炭酸カリウム 2g
・亜硫酸ナトリウム 1g
・ポリエチレングリコールモノナフチルエーテル 150g
・ジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム塩 50g
・エチレンジアミン4酢酸4ナトリウム塩 8g
・水 785g
【0430】
<現像液(D−2)>
・水酸化カリウム 6g
・炭酸カリウム 2g
・亜硫酸ナトリウム 1g
・ポリエチレングリコールモノナフテルエーテル 150g
・ジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム塩 50g
・ヒドロキシエタンジホスホン酸カリウム塩 4g
・シリコンTSA−731(東芝シリコーン社(株)製) 0.1g
・水 786.9g
【0431】
〔耐刷性の評価〕
前記のように、露光現像を行なって製版した実施例及び比較例の各平版印刷版を、小森コーポレーション(株)製印刷機リスロンを用いて印刷した。この際、どれだけの枚数が充分なインキ濃度を保って印刷できるかを目視にて測定し、耐刷性を評価した。結果を前記表5に併記する。
【0432】
〔耐キズ性の評価〕
上記記録層を塗布した実施例28〜30および比較例5〜7の平版印刷版原版の耐キズ性についての評価を行った。機器としては、HEIDON社製Scratching TESTER HEIDON−14を用い、引っ掻き針として0.4mmRダイヤ針を用い、針上の荷重を変化させながら、400mm/minの速さで記録層表面を引っ掻いた。引っ掻いた後の原版を上述の現像処理を行い、残膜が目視で観測された荷重の大きさを評価した。荷重が大きいほど、キズ残膜が生じにくく、耐キズ性に優れることになる。結果を前記表5に併記する。
【0433】
以上、表5に明らかなように、本発明に係る特定ポリマーを記録層に含有した実施例28〜30の平版印刷版原版は、特定ポリマーを記録層に含有しない比較例5〜7に比べ、優れた耐刷性及び耐キズ性を達成していることがわかる。また、いずれの試料にも、露光時のアブレーションは見られなかった。
【0434】
〔実施例31〜32、比較例8〜9〕
実施例28〜30及び比較例5〜7で用いたのと同様のアルミニウム支持体上に、下記に示す下塗り層用塗布液を塗布し、80℃雰囲気下で30秒間乾燥した。乾燥塗布量は、10mg/m2であった。
【0435】
下記組成の化合物を混合し、下塗り層用塗布液を調製した。
<下塗り層用塗布液>
・2−アミノエチルホスホン酸 0.5g
・メタノール 40g
・純水 60g
【0436】
その後、下記に示す記録層塗布液8を前記下塗り層の形成された支持体上に、ワイヤーバーで塗布し、温風式乾燥装置にて115℃で45秒間乾燥して実施例31〜32および比較例8〜9の平版印刷版原版を得た。乾燥後の被覆量は、1.2〜1.3g/m2の範囲内であった。
【0437】
【0438】
【表6】
【0439】
(露光)
得られた実施例31〜32および比較例8〜9の平版印刷版原版を、水冷式40W赤外線半導体レーザを搭載したCreo社製Trendsetter3244VFSにて、出力6.5W、外面ドラム回転数81rpm、版面エネルギー188mJ/cm2、解像度、解像度2400dpiの条件で露光した。
【0440】
(現像処理)
露光後、富士写真フイルム(株)製自動現像機スタブロン900NPを用い現像処理した。現像液は、仕込み液、補充液共に富士写真フイルム(株)製DP−4の1:8水希釈液を用いた。現像欲浴の温度は30℃、現像時間を12秒で処理した。この際、補充液は自動現像機の現像浴中の現像液の電気伝導度が一定となるように調整しつつ自動的に投入した。また、フィニッシャーは、富士写真フイルム(株)製FN−6の1:1水希釈液を用いた。
【0441】
〔耐刷性及び汚れ性の評価〕
得られた実施例31〜32および比較例8〜9の平版印刷版原版を、それぞれ60℃で3日間保存、及び、45℃、湿度75%RHで3日間保存して強制経時させた後、前記実施例28〜30及び前記比較例5〜7におけるのと同様にして露光、現像した後、印刷を行い、耐刷性を評価した。結果を前記表6に併記する。
表6に明らかなように、本発明に係る特定ポリマーを記録層に含有する実施例31〜32の平版印刷版原版は、特定ポリマーを記録層に含有しない比較例8〜9に比べ、非画像部の汚れもなく、耐刷性に優れ、また、高温、高湿環境下で保存した後も、耐刷性、非画像部の汚れ性が低下せず、経時安定性にも優れていることがわかった。
【0442】
〔実施例33〜34、比較例10〜11〕
実施例28〜30及び比較例5〜7で用いたのと同様のアルミニウム支持体上に、下記記録層塗布液9を調製し、上記アルミニウム支持体にワイヤーバーを用いて塗布し、温風式乾燥装置にて115℃で45秒間乾燥して実施例33〜34および比較例10〜11の平版印刷版原版を得た。乾燥後の被覆量は1.2〜1.3g/m2の範囲内であった。
【0443】
【0444】
【表7】
【0445】
(露光)
得られた実施例33〜34および比較例10〜11の平版印刷版原版を、水冷式40W赤外線半導体レーザを搭載したCreo社製Trendsetter3244VFSにて、出力9W、外面ドラム回転数210rpm、版面エネルギー100mJ/cm2、解像度2400dpiの条件で露光した。
【0446】
(現像処理)
露光後、富士写真フイルム(株)製自動現像機スタブロン900Nを用い現像処理した。現像液は、仕込み液、補充液ともに富士写真フイルム(株)製DN−3Cの1:1水希釈液を用いた。現像欲浴の温度は30℃とした。また、フィニッシャーは、富士写真フイルム(株)製FN−6の1:1水希釈液を用いた。
【0447】
〔耐刷性及び耐キズ性の評価〕
次に、ハイデルベルクSOR−KZ印刷機を用いて印刷した。この際、どれだけの枚数が充分なインキ濃度を保って印刷できるかを計測し、耐刷性を評価した。
また、実施例28〜30及び比較例5〜7と同様に耐キズ性について評価を行った。結果を表7に併記する。
【0448】
以上、表7に明らかなように、本発明に係る特定ポリマーを記録層に含有する実施例33〜34の平版印刷版原版は、特定ポリマーを記録層に含有しない比較例10〜11に比べ、優れた耐刷性及び耐キズ性を達成していることがわかる。
【0449】
〔滑り性の評価〕
更に、実施例28の平版印刷版原版を30枚積層し、版材供給装置に装填し、全自動で連続して、露光、現像処理し、ストッカーへ排出した。装置の運転中、平版印刷版原版同士の密着や、それに起因する搬送不良などが見られなかったことから、良好な滑り性を有していることがわかった。また、実施例29〜34の平版印刷版原版においても同様の結果が得られた。
【0450】
以上、実施例で明らかなように、本発明の画像記録材料をポジ型およびネガ型記録層として用いた平版印刷版原版は、耐傷性、耐刷性及び滑り性に優れていた。また、滑り性素材に起因する現像カスの発生が抑制されているという優れた効果が見られた。
【0451】
【発明の効果】
本発明によれば、現像ラチチュードと耐傷性とに優れ、ヒートモード対応の平版印刷版原版の記録層として有用な画像記録材料を提供することができる。
Claims (4)
- 前記酸基が、pKaが12以下の酸基を有する連鎖移動剤により前記ポリマーの末端に修飾された酸基であることを特徴とする請求項1に記載のヒートモード画像記録材料。
- 前記酸基が、フェノール基、スルホンアミド基、又はカルボン酸を有する末端基であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のヒートモード画像記録材料。
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