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JP4052113B2 - ゴルフクラブヘッド - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属製中空ゴルフクラブヘッドに係り、特にウッド型又はそれに近似した形状のゴルフクラブヘッドに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ドライバーやフェアウェーウッドなどのウッド型ゴルフクラブヘッドとして、中空の金属製のものが広く用いられている。一般に、中空のウッド型のゴルフクラブヘッドは、ボールをヒットするためのフェース部と、ゴルフクラブヘッドの上面部を構成するクラウン部と、ゴルフクラブヘッドの底面部を構成するソール部と、ゴルフクラブヘッドのトウ側、バック側及びヒール側の側面部を構成するサイド部と、ホゼル部とを有している。このゴルフクラブヘッドのホゼル部にシャフトが挿入され、接着剤等によって固定される。なお、最近では、ユーティリティクラブと称されるゴルフクラブヘッドも多く市販されており、このユーティリティゴルフクラブヘッドの1種として、上記ウッド型ゴルフクラブヘッドに類似した(即ち、フェース部、ソール部、サイド部及びクラウン部を有した)ゴルフクラブヘッドも各種市販されている。
【0003】
この中空ゴルフクラブヘッドを構成する金属としては、アルミニウム合金、ステンレスやチタン合金が用いられているが、近年は特にチタン合金が広く用いられている。
【0004】
特開平9−192273号公報、特開2001−286586号公報には、フェース部の中央に肉厚部を設けると共に該肉厚部の周囲を肉薄部とすることにより、フェース部の撓み作用(スプリング効果)を効かせ、打球の飛距離を増大させることが記載されている。
【0005】
【特許文献1】
特開平9−192273号公報
【特許文献2】
特開2001−286586号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ヘッドスピードの遅いゴルファーにとっては、この種の高反発系ゴルフクラブヘッドはフェース面の変形が少なく、ボール初速を上げる効果が少なく、また、ボールが上がらない(打ち出し角度が低い)為、飛距離が延びないことがある。
【0007】
本発明は、フェース部中央が肉厚部であり、その周囲が肉薄部である高反発系のゴルフクラブヘッドにおいて、ヘッドスピードが遅いゴルファーが使用しても、打ち出し角度が高くなり、その結果として飛距離を増大させることができるゴルフクラブヘッドを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明のゴルフクラブヘッドは、金属製の中空のゴルフクラブヘッドであって、フェース部の中央部が厚さの大きい肉厚部となっており、該肉厚部の周囲がそれよりも厚さの小さい肉薄部となっているゴルフクラブヘッドにおいて、該肉厚部の上側の肉薄部にのみ凹部が設けられ、該凹部の底部がフェース部で最も肉厚が小さい最薄部となっていることを特徴とするものである。
【0009】
かかる本発明のゴルフクラブヘッドにあっては、肉厚部の上側の肉薄部にのみ最薄部を設けているので、インパクト時に肉厚部の上側が下側よりも大きく変形する。そのため、ヘッドスピードの遅い初心者や非力なプレーヤーが使用した場合でも打ち出し角が高くなると共に、ボールの初速が大きくなる。そして、これらの作用が重畳することにより、飛距離が増大する。
【0010】
この最薄部は、フェース部の裏面に凹部を設けることにより形成される。本発明の一態様では、この凹部はフェース部の幅方向に延在する溝により構成される。
【0011】
本発明は、250cc特に300ccとりわけ350ccを超える体積を有した大型のゴルフクラブヘッドに適用するのに好適である。このゴルフクラブヘッドとしてはドライバーが例示される。ただし、本発明は、フェアウェーウッドや、ウッド型に類似したユーティリティゴルフクラブヘッド等にも適用可能である。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。図1は実施の形態に係るゴルフクラブヘッド1の斜視図、図2は図1のII−II線に沿う断面図、図3は図1のIII−III線に沿う断面図、図4はゴルフクラブヘッド1の正面図である。
【0013】
中空部を有する金属製のゴルフクラブヘッド1は、フェース部2と、クラウン部3と、ソール部4と、サイド部5と、ホゼル部6とを有する。このホゼル部6にシャフト7が挿入され、接着剤で固定されることによりゴルフクラブが構成される。
【0014】
この実施の形態では、フェース部2の裏面の中央部に凸部が設けられることにより、該中央部が肉厚の大きな肉厚部9となっており、その周囲が肉厚の小さな肉薄部10となっている。この肉厚部9の上側の肉薄部10にあっては、フェース部2の幅方向に延在する溝8が設けられており、この溝8の溝底部がフェース部2の最も肉厚の小さい最薄部となっている。なお、フェース部2の前面にはスコアラインと称される浅い溝がフェース部幅方向に設けられることが多いが、本明細書では、フェース部の肉厚についてはこのスコアラインの深さについては捨象するものとし、フェース部最前面からフェース部裏面までの距離を肉厚とする。
【0015】
上記の肉厚部9は、フェース部2の中心点Cを包含する。この中心点Cは、ゴルフクラブヘッド1を水平な平坦面Sにソールし、ソール部4のトウ側及びヒール側と該平坦面との間隔t,tを均等にした状態においてソール部4が該平坦面Sと接する点を通る鉛直面とフェース部2との交線上に位置する。また、この中心点Cは、該鉛直面とフェース部2との交線のうちフェース部2の上縁に位置する点Aと下縁に位置する点Bとの中間に位置する。
【0016】
肉厚部9は、この実施の形態では、フェース部2を裏から視認した場合に略楕円形の輪郭形状を有しているが、フェース部幅方向に延在する輪郭形状であればよく、長方形のほか、六角形、八角形等の多角形でもよく、また後述の図5,6のように上辺が凹となっていてもよい。
【0017】
肉厚部9の中心は、上下方向には23mm以上延在することが好ましい。この23mmはゴルフボールの直径に由来する。肉厚部9の左右幅は、肉厚部9の上下幅よりも大きいことが好ましく、特に2.0〜5.0倍程度が好ましい。これは、一般に、ゴルフクラブヘッドのフェース形状が上下幅より左右幅が大きいためである。
【0018】
肉厚部9の周縁の上下左右の最端部からフェース部2の周縁部までの距離は、肉厚部9の上側では上下方向に10〜18mm程度存在することが好ましく、肉厚部9の下側では上下方向に3〜18mm程度存在することが好ましく、肉厚部9のトウ側では左右方向に10〜20mm程度存在することが好ましく、肉厚部9のヒール側では左右方向に10〜20mm程度存在することが好ましい。
【0019】
肉厚部9の厚さは一様であってもよく、肉厚部9の中心ほど段階的に又は連続的に厚くなるものであってもよい。肉厚部9の厚さ(不均一厚の肉厚部の場合は、平均厚さ)は、肉薄部10の厚さ(ただし溝等の凹部を除く部分の肉厚)の1.4〜4.0倍特に1.5〜3.0倍であることが好ましい。ゴルフクラブヘッドの材質が75000〜11000kgf/mm(7.35〜10.78×10Pa)のチタン合金等である場合、肉厚部9の厚さは2.2〜3.5mm程度が好ましい。この厚さが過度に大きいと、ゴルフクラブヘッドの重心が浅くなり、バックスピン量が減少して打球が上がりにくくなるおそれがある。肉薄部10の厚さは上記ヤング率の合金の場合1.8〜2.2mm程度が好ましい。
【0020】
溝8の深さは、溝8以外の領域における肉薄部10の肉厚の10〜30%程度が好ましい。肉薄部が1.8〜2.2mmの場合、溝8の深さは約0.2〜0.5mm程度が好ましい。溝8の幅は0.2〜2mm特に0.5〜1.5mm程度が好ましい。
【0021】
溝8の長手方向と直交方向の断面形状は、半円形、半楕円形、U字形、V字形、方形、台形、五角形など任意であるが、応力集中が起きないようにするために、半円形、半楕円形又はU字形が好ましい。
【0022】
溝8の長さは、溝8を通るフェース部2の左右幅方向長さの25〜60%程度特に30〜50%程度が好ましい。なお、溝8の長さは、肉厚部9の最大左右幅よりも大きいことが望ましい。
【0023】
溝8の左右方向の中心は前記フェース部2の中心を通る鉛直線上に位置するのが好ましいが、若干ずれても構わない。
【0024】
溝8の本数は1〜4本程度特に2〜3本程度が好ましい。
【0025】
溝8は左右方向に延在する直線であってもよく、上方に凸に湾曲した曲線であってもよい。
【0026】
このように構成されたゴルフクラブヘッド1にあっては、フェース部2の肉厚部9の上側に溝8を設けているので、インパクト時にフェース部2は上半側の方が下半側よりも深く撓むようになる。
【0027】
そのため、ヘッドスピードの遅いプレーヤーが使用しても、ボールの打ち出し角度が大きくなると共に、大きな反発が得られると共に、ボールの初速が大きくなる。これらの作用により、ヘッドスピードの遅いプレーヤー(例えばヘッドスピードが約43m/sec以下のプレーヤー)が使用した場合でも大きな飛距離を得ることが可能となる。
【0028】
図5,6を参照して別の実施の形態に係るゴルフクラブヘッド1Aについて説明する。この実施の形態では、フェース部2Aの中央部に肉厚部20が設けられ、その周囲が肉薄部10となっている。この肉厚部20は、フェース部2Aの裏面から突出するものであり、最外周側の第1肉厚部21、その内側の第2肉厚部22、及び中心部の第3肉厚部23よりなる。なお、前記図1〜4の肉厚部9のように一様厚みであってもよく、また肉厚は2段階もしくは4段階以上にわたって変化してもよい。さらに、肉厚は中心に向って連続的に大きくなるものであってもよい。肉厚部20の大きさは前記肉厚部9と同程度で良い。
【0029】
この肉厚部20の左右幅方向の中央付近にあっては、上辺側が下方に食い込んでいる。この肉厚部の上辺部の上側の肉薄部10に凹部30が形成され、この凹部30の底面がフェース部2Aの最薄部となっている。
【0030】
この凹部30におけるフェース部2Aの肉厚は、凹部30以外の肉薄部10の肉厚の75〜90%程度が好ましい。凹部30の最大左右幅は25〜45mm程度が好ましく、最大上下幅は8〜12mm程度が好ましい。
【0031】
このゴルフクラブヘッド1Aにおいても、ショット時にフェース部2Aの上側が下側よりも大きく撓むようになり、図1〜4の場合と同様の効果を得ることができる。
【0032】
なお、ソール部は、肉厚を厚くして撓みにくくすることが好ましい。このようにすればゴルフクラブヘッドを低重心にすることもできる。
【0033】
ヘッドは鋳造により作る方が、溝やリブを作りやすいので好ましいが、板材を用い、彫刻などにより溝加工を施したり、圧延加工時に溝やリブを設ける事ができるので、鋳造やプレス成形によっても製造可能である。ゴルフクラブヘッドは、全体として同一の金属材料で製造されてもよく、異種の金属材料を結合させて製造されてもよい。ゴルフクラブヘッドを全体として同一の金属材料にて製造する場合、各部分を溶接により接合し易い。
【0034】
このゴルフクラブヘッドを構成する金属材料は、マルエージング鋼、ステンレス鋼、チタニウム合金、アモルファス合金などが例示されるが、中でもヤング率の低いチタニウム合金又はアモルファス合金が好ましい。
【0035】
この金属としては、ヤング率が75000〜11000kgf/mm(7.35〜10.78×10Pa)程度のものが好ましい。このようにヤング率の低い金属を用いることによってフェース部を撓み易くすることができる。β型チタニウム合金の中には、熱処理後においても、ヤング率が11000(kgf/mm)〔108×10(Pa)〕以下となるものがあり、特に好ましい。具体的にはTi−20V−4Al−1SnやTi−13V−11Cr−3Alなどが良い。また、Zr系のアモルファス合金はヤング率が75000〜90000(kgf/mm)〔73×10〜88×10(Pa)〕とアルミニウムとチタニウムとの中間的な値であり、ボールインパクト時に最も効率よくボールを反発するので好適である。
【0036】
【実施例】
[実施例1]
図1〜4に示すゴルフクラブヘッドをチタン合金にて製造した。フェース部はTi−20V−4Al−1Snチタン合金を冷間鍛造により製造した。その他の部分はTi−6Al−4Vチタン合金の鋳造により製造し、これらを溶接により接合して体積300ccのドライバー用ゴルフクラブヘッドを製造した。
【0037】
なお、フェース部の各部分の肉厚等は次の通りである。
▲1▼ 肉厚部9は、横長の楕円形であり、長径は40mm、短径は23mm、肉厚は3mmの一様とした。
▲2▼ 肉薄部10の肉厚は2.2mmとした。
▲3▼ 溝8は、長さ56mm、幅1mm、深さ0.5mmのU字型断面形状であり、図示の通り一直線状であり、2本設けられている。2本の溝8の間隔は3.5mm、下側の溝8から肉厚部9の上端までの距離は6mmである。
【0038】
[比較例1]
フェース部2をTi−6Al−4Vにて2.8mmの均一厚にて製造した。肉厚部9、肉薄部10及び溝8は設けられていない。その他は実施例1と同様とした。
【0039】
実施例1及び比較例1のゴルフクラブヘッドに45インチ(114cm)のカーボンシャフトを装着してゴルフクラブを製作した。このゴルフクラブヘッドのスイングロボット(ヘッドスピード43.1m/sec)での試打評価結果を表1に示す。
【0040】
【表1】
Figure 0004052113
【0041】
表1の通り、本発明のゴルフクラブヘッドは、比較例のゴルフクラブヘッドに比べ、0.3°ほど打ち出し角が上がった。また、飛距離が4mほど大きい。
【0042】
【発明の効果】
以上の通り、本発明のゴルフクラブヘッドによると、ヘッドスピードが遅いゴルファーが使用しても、打ち出し角度が高くなり、飛距離を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態に係るゴルフクラブヘッドの斜視図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】図1のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】実施の形態に係るゴルフクラブヘッドの正面図である。
【図5】別の実施の形態に係るゴルフクラブヘッドの断面図である。
【図6】図5のVI−VI線に沿う断面図である。
【符号の説明】
1,1A ゴルフクラブヘッド
2,2A フェース部
3 クラウン部
4 ソール部
5 サイド部
6 ホゼル部
8 溝
9 肉厚部
10 肉薄部
20 肉厚部
30 凹部

Claims (3)

  1. 金属製の中空のゴルフクラブヘッドであって、フェース部の中央部が厚さの大きい肉厚部となっており、該肉厚部の周囲がそれよりも厚さの小さい肉薄部となっているゴルフクラブヘッドにおいて、
    該肉厚部の上側の肉薄部にのみ凹部が設けられ、該凹部の底部がフェース部で最も肉厚が小さい最薄部となっていることを特徴とするゴルフクラブヘッド。
  2. 請求項において、該凹部はフェース部の左右方向に延在する溝であり、1条又は複数条の該溝が設けられていることを特徴とするゴルフクラブヘッド。
  3. 請求項2において、
    溝の深さは溝以外の肉薄部の肉厚の10〜30%であり、
    溝の幅は0.2〜2mmであり、
    溝の長さは、該溝を通るフェース部の左右幅方向長さの25〜60%であることを特徴とするゴルフクラブヘッド。
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