JP4051976B2 - 化粧シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、住宅等の建築物における壁材、天井材、床材等の内外装材や建具等の建築資材、家具什器類、家電製品等の外装材、自動車等の車両内外装材等として使用される化粧シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、係る用途に使用されている化粧シートとしては、透明又は不透明の熱可塑性樹脂フィルムからなる基材シート上に、適宜の絵柄の印刷を施し、その上に透明な熱可塑性樹脂フィルムを積層した構成のものが最も一般的である。上記熱可塑性樹脂フィルムとしては、かつてはポリ塩化ビニル樹脂フィルムが最も一般的であったが、用途によっては、例えば玄関扉の外面や窓枠、破風板等の準外装部位に要求される高度の耐候性や、化粧台やパネル類等に要求される高度の透明性や鮮映性等、ポリ塩化ビニル樹脂フィルムでは対応不可能な高度の性能が要求される場合もあり、係る要求に応えるものとしては、表面側の透明な熱可塑性樹脂フィルムとして、耐候性や透明性に優れたアクリル系樹脂フィルムが採用されるのが一般的である(例えば、実開昭55−151532号、実開昭61−47634号、特開昭63−37935号、実開昭63−170231号、特開平5−147182号等)。
【0003】
また、基材シートについても近年では、燃焼時の有害物質発生問題に鑑みて、ポリ塩化ビニル樹脂フィルムから非塩素系樹脂フィルムへの切り替えが進みつつあり、該非塩素系樹脂フィルムとしては、オレフィン系樹脂フィルムが採用されるのが最も一般的である(特開平6−262729号、特開平8−118565号、特開平9−300559号、特開平10−2092号、特開平10−109387号、特開平10−146933号、特開平10−157018号、特開平10−286930号、特開平11−105211号、特開平11−170448号、特開平11−216833号、特開平11−240113号、特開2000−15756号、特開2000−85072号、特開2000−211070号、特開2000−225672号、特開2000−280283号、特開2000−326450号、特開2000−326451号、特開2001−18251号、特開2001−80296号、特開2001−105452号、特開2001−138450号等)。なお、これらは前述した耐候性や透明性、鮮映性等を目的とする場合のほか、オレフィン系樹脂フィルムは折り曲げ加工性や真空成形積層加工性、射出成形積層加工性等の成形加工性にやや劣ることから、オレフィン系樹脂フィルムを基材シートとした化粧シートの成形加工性の改善を目的として、表面に透明アクリル系樹脂フィルムが積層された構成が採用されている場合もある。
【0004】
ところで、係る化粧シートにおける、基材シート上への透明アクリル系樹脂フィルムの積層方法としては、溶融押出ラミネート法などの提案も一部にはあるが、アクリル系樹脂は溶融押出適性があまり良くないので、熱ラミネート法又はドライラミネート法等による場合が多い。しかるに、透明アクリル系樹脂フィルムとして、表面が平滑なグロスクリヤーフィルムを用いる場合は良いが、化粧シートの用途によっては、表面を艶消し仕上げとすることが要求される場合もあり、そのために、両面が艶消し状とされた通常のマットクリヤーフィルムを用いると、基材シート上への積層時に空気を巻き込み易く、層間密着強度が不十分となったり、銀目(層間に残存する気泡が光って見える現象)や膨れ(気泡上の透明アクリル系樹脂フィルムの表面が膨らむ現象)のために外観意匠が不良となったりし易いという問題がある。
【0005】
化粧シートの表面を艶消し仕上げとするには、透明アクリル系樹脂フィルムとしてマットクリヤーフィルムを用いる方法のほか、グロスクリヤーフィルムを積層した後に、艶消剤を含む艶調整剤をトップコートする方法や、積層後に表面にマットエンボスを施す方法なども考えられる。しかし、前者に関しては、アクリル系樹脂は耐溶剤性があまり良くないので、有機溶剤系のトップコートを施すと、透明アクリル系樹脂フィルムの表面が白化して意匠性を損ない易く、アクリル系樹脂を冒さない水性のトップコートでは、アクリル系樹脂フィルムとの十分な密着性が得られない。一方、後者に関しては、アクリル系樹脂フィルムにマット調の微細エンボスを良好に賦型可能な温度(通例、130〜150℃程度)は、例えばオレフィン系樹脂等の様な一般的な基材シート材料の耐熱温度(通例、80〜110℃程度)よりも高いため、得られる化粧シートに極端な伸縮や歪み等の変形を発生しないエンボス温度条件では、意匠的に良好な艶消し感を得ることが困難であるという問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来の技術における上記の問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、耐候性や透明性、成形加工性等に優れた透明アクリル系樹脂フィルムが基材シート上に設けられた化粧シートにおいて、表面状態が所望の艶消し感に調整されており、しかも層間密着不良や銀目、膨れ等の意匠不良を発生することなく容易に製造可能な化粧シートを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の化粧シートは、基材シート上に透明アクリル系樹脂フィルムを積層してなる化粧シートにおいて、前記透明アクリル系樹脂フィルムの裏面(前記基材シート側の面)の表面粗さが0.2μm以下であり、表面(前記基材シートとは反対側の面)の表面粗さが0.6μm以上、且つ、60°光沢値が15以下であり、前記基材シートがオレフィン系樹脂フィルムであることを特徴とするものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の化粧シートは、例えば図1に示す様に、基材シート4の表面に、所望により適宜の絵柄を印刷してなる絵柄層3が設けられ、その上に必要に応じて接着剤層2を介して、透明アクリル系樹脂フィルム1が積層されてなるものである。そして、本発明においては、該透明アクリル系樹脂フィルム1の裏面(前記基材シート側の面)の表面粗さが0.2μm以下であり、表面(前記基材シートとは反対側の面)の表面粗さが0.6μm以上、且つ、60°光沢値が15以下であることを特徴としている。
【0010】
透明アクリル系樹脂フィルム1の裏面は、表面粗さが0.2μm以下という滑らかな面であるから、基材シート4上に熱ラミネート法又はドライラミネート法等により積層する際に、空気を巻き込むおそれがなく、従って、層間に気泡が残存することによる層間密着性の低下や、気泡が光って見える銀目や気泡箇所の膨れによる意匠性の低下などの問題が発生することがない。しかも、該透明アクリル系樹脂フィルム1の表面は、表面粗さが0.6μm以上、且つ、60°光沢値が15以下という所望の艶消し状に予め加工されている(片面グロス・片面マットクリヤーフィルム)ので、基材シート4との積層後に改めてエンボス加工又は艶消しトップコート処理等の艶消し加工を施す必要がなく、従って、エンボス加工時の熱による歪みやトップコート処理時の溶剤の作用による白化等の問題を発生することなく、所望の艶消し感を有する意匠性に優れた化粧シートを容易に得ることができる。
【0011】
透明アクリル系樹脂フィルム1を構成するアクリル系樹脂は、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体を主成分として単独又は共重合させて得られる熱可塑性樹脂であり、必要に応じて、例えば(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸等のアクリル系単量体や、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族系単量体等が共重合成分として添加されていたり、例えばスチレン−ブタジエン共重合体、メタクリル酸メチル−ブタジエン共重合体、メタクリル酸メチル−スチレン−ブタジエン共重合体等のゴム成分がグラフト共重合、ブロック共重合又はブレンドされていたりしてもよい。中でも、メタクリル酸メチルを主成分とするものが、耐候性や透明性、加工性、機械的物性や表面物性等の各種物性面で最も望ましく用いられる。
【0012】
基材シート4の材質は、本発明において特に限定されるものではなく、例えば薄葉紙、チタン紙、上質紙、樹脂混抄紙、樹脂含浸紙、紙間強化紙等の紙類や、織布又は不織布、熱可塑性樹脂フィルム、アルミニウム箔等の金属箔等、或いはそれらの2種以上の積層体等、要するに従来の化粧シートにおけるそれと同様のものを任意に用いることができる。中でも加工性や諸物性等を考慮すると熱可塑性樹脂フィルムを用いることが最も望ましい。
【0013】
上記熱可塑性樹脂フィルムとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン樹脂や、エチレン−酢酸ビニル共重合体又はその鹸化物、エチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体金属中和物(アイオノマー)等のポリオレフィン系共重合体等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート、共重合ポリエステル等のポリエステル系樹脂、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂、6−ナイロン、6,6−ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等のスチレン系樹脂、セルロースアセテート、ニトロセルロース等の繊維素誘導体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の塩素系樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフロロエチレン、エチレン−テトラフロロエチレン等のフッ素系樹脂等、或いはこれらから選ばれる2種以上の混合物、共重合体、複合体、積層体等からなるフィルムを使用することができる。
【0014】
但し、近年頓に社会問題化しつつある環境問題への適応を考慮すると、上記した塩素系樹脂等のハロゲン系樹脂の使用は余り好ましいものとは言えず、塩素等のハロゲン元素を含有しない非ハロゲン系樹脂を使用することが好ましい。中でも、市場での価格や流通量、調達の容易性を始め、化粧シート用基材シートとしての適度の柔軟性と強度とのバランスや、加工性、耐磨耗性や耐溶剤性等の表面物性等の各種の側面から見て、オレフィン系樹脂又はポリエステル系樹脂からなるフィルムを使用することが望ましく、特にオレフィン系樹脂フィルムを使用することが最も望ましい。
【0015】
オレフィン系樹脂としては上掲したものを始め種々の単独重合体や共重合体が知られているが、中でも化粧シート用基材シートの素材として最も好適なのはポリプロピレン系樹脂、すなわちプロピレンを主成分とする単独又は共重合体であり、具体的には、例えばホモポリプロピレン樹脂、ランダムポリプロピレン樹脂、ブロックポリプロピレン樹脂、及び、ポリプロピレン結晶部を有し、且つプロピレン以外の炭素数2〜20のα−オレフィン、好ましくはエチレン、ブテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1又はオクテン−1、のコモノマーを15モル%以上含有するプロピレン−α−オレフィン共重合体などを例示することができる。また、通常ポリプロピレン系樹脂の柔軟化に用いられる低密度ポリエチレン、スチレン−ブタジエン共重合ゴム又はその水素添加物、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−プロピレン共重合ゴム、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体ゴム等の改質剤を添加することもできる。
【0016】
本発明の様な化粧シートには一般に、被貼着基材の表面の色彩や欠陥に対する隠蔽性が必要とされる場合が多い。そこで、目的の化粧シートに十分な隠蔽性を持たせるために、基材シート4を構成する熱可塑性樹脂に隠蔽性顔料を添加することにより、基材シート4を隠蔽性とすることもできる。また、基材シート4を隠蔽性とする代わりに、基材シート4の表面又は裏面に、隠蔽性顔料を含有する印刷インキ組成物又は塗料による隠蔽層を設けても良いし、両者を併用することも勿論可能である。また逆に、基材シート4を透明又は半透明の材質から構成し、隠蔽性の層を設けないことにより、被貼着基材の表面の色調や質感を活かすことができる透明又は半透明の化粧シートとすることも、勿論可能である。
【0017】
基材シート4や透明アクリル系樹脂フィルム1には、目的とする化粧シートの用途や要求品質等により、必要に応じて例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、抗菌剤、防黴剤、難燃剤、艶調整剤、充填剤等、従来公知の各種の添加剤の1種以上が添加されていても良い。
【0018】
基材シート4や透明アクリル系樹脂フィルム1の厚さには特に制限はなく、例えば従来の一般の化粧シートにおけるそれらと同様の厚さとすることができる。具体的には、化粧シートの用途や基材シート4の構成素材の種類等にもよるが、一般的には基材シート1の厚さは20〜300μm程度、より好ましくは50〜200μm程度、表面樹脂層4の厚さは10〜200μm程度、より好ましくは20〜100μm程度の範囲内とするのが良い。
【0019】
絵柄層3は、目的とする化粧シートに任意の所望の絵柄による意匠性を付与する目的で設けられるものである。従って、例えば単なる表面着色や色彩調整のみを目的とした無地の化粧シートの様に、基材シート4の着色や隠蔽ベタ印刷層の形成等によって十分に前記目的が達せられる場合や、基材シート4自体に顔料の練り込みや昇華性乃至溶融移行性染料の移行等により絵柄が施されている場合には、絵柄層3は特に設けられない場合もある。しかし一般的には、基材シート4の表面に、印刷法等の手段により適宜の絵柄模様を有する絵柄層3が設けられる場合が多い。
【0020】
絵柄層3の構成材料や形成方法には一切制限はなく、従来より係る化粧シートの絵柄層に適用されて来た任意の画像形成材料や画像形成方法を適宜適用することができる。具体的には例えば、染料又は顔料等の着色剤を、適当なバインダー樹脂と共に、適当な溶剤中に溶解又は分散してなる印刷インキ又は塗料等を使用することができる。
【0021】
前記着色剤としては、例えばカーボンブラック、チタン白、亜鉛華、弁柄、紺青、コバルトブルー等の無機顔料や、アゾ顔料、レーキ顔料、アントラキノン顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料等の有機顔料、金粉、銀粉、銅粉、アルミニウム粉、ブロンズ粉等の金属粉顔料、魚鱗粉、塩基性炭酸鉛、酸化塩化ビスマス、酸化チタン被覆雲母等の真珠光沢顔料等、又はこれらから選ばれる2種以上の混合物等を使用することができる。
【0022】
また、バインダー樹脂としては、例えばアクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリビニル系樹脂、アルキド系樹脂、石油系樹脂、ケトン樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、繊維素誘導体、ゴム系樹脂等の各種合成樹脂、又はそれらの2種以上の混合物、共重合体等を使用することができる。
【0023】
その他、必要に応じて例えば体質顔料、可塑剤、分散剤、界面活性剤、粘着賦与剤、チキソトロピー性賦与剤、腰切り剤、レベリング剤、接着助剤、乾燥剤、安定剤、硬化剤、硬化促進剤又は硬化遅延剤等の各種の添加剤を適宜添加することもできる。
【0024】
目的の化粧シートに優れた層間密着性を持たせるためには、絵柄層3のバインダー樹脂としては、接着性や凝集力の強い樹脂を使用することが好ましく、その観点からは熱硬化性樹脂又は電離放射線硬化性樹脂等の架橋硬化性樹脂を使用することが好ましい。中でも、架橋硬化後に高い凝集力を有しつつも適度の可撓性や柔軟性を有しており、オレフィン系樹脂等の不活性な熱可塑性樹脂に対しても優れた接着性を示す点で、2液硬化型ウレタン系樹脂を主成分として少なくとも含むものを使用することが最も望ましい。
【0025】
絵柄層3の形成方法には特に制限はなく、例えばグラビア印刷法やオフセット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、静電印刷法、インクジェット印刷法等、従来公知の各種の印刷方法を使用することができる。また、例えば全面ベタ状の場合には上記した各種印刷方法のほか、例えばロールコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、ダイコート法、リップコート法、フローコート法等の各種塗工方法によることもできる。
【0026】
また、絵柄層3の形成に先立ち必要に応じて、基材シート4の表面に例えばコロナ処理、オゾン処理、プラズマ処理、電離放射線処理、酸処理、アルカリ処理、アンカー又はプライマー処理等の易接着処理を施すことによって、基材シート4と絵柄層3との間の密着性をさらに向上させることもできる。
【0027】
絵柄層3が構成する絵柄の種類には特に制限はなく、例えば従来より係る化粧シートに広く採用されている木目柄や、石目柄、布目柄、抽象柄、幾何学模様、文字又は記号等、或いはそれらの複数種の組合せ等、若しくは単なる全面着色や色彩調整を目的とする場合には単色無地であっても良く、要するに、目的の化粧シートの用途に応じ任意の所望の絵柄を採用することができる。
【0028】
基材シート4と透明アクリル系樹脂フィルム1とは、適宜の接着剤からなる接着剤層2を介して接着積層されるのが一般的である。これに使用される接着剤としては、溶剤賦活型、熱賦活型、圧力賦活型、反応硬化型等、化粧シートの用途や基材シート4の材質等に応じ任意であるが、溶剤賦活型且つ反応硬化型接着剤の一種であるドライラミネート接着剤か、若しくは熱賦活型である感熱接着剤(ヒートシール剤)が好ましく使用可能である。
【0029】
ドライラミネート接着剤は、接着性樹脂の反応前駆体を適当な溶剤に溶解した塗工液を一方又は両方の被接着体の接着面に塗布し、溶剤分を乾燥除去した後に両者を重ね合わせ、反応硬化させて接着させるものであり、ポリエステルポリオール又はポリエーテルポリオール等のポリオール類と、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のポリイソシアネート化合物との反応を利用する2液硬化型ウレタン系接着剤が最も代表的である。
【0030】
感熱接着剤は、常温では固体であり、加熱により溶融又は軟化して接着性を発現し、冷却すると固化して強固に接着する性質を有する熱可塑性樹脂を主体としたもので、これを適当な溶剤に溶解するか又は加温により溶融させるかして、一方又は両方の被接着体の接着面に塗布しておき、両者を重ね合わせて加熱加圧することにより接着させるものであり、その樹脂系としては例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂系、塩化酢酸ビニル樹脂系、アクリル樹脂系、ポリウレタン樹脂系、ポリエステル樹脂系、ポリアミド樹脂系等、或いはそれらの2種以上の混合樹脂系等がある。
【0031】
本発明の化粧シートにおける基材シート4と透明アクリル系樹脂フィルム1との接着にあたっては、両者を著しく熱変形させない程度の比較的低温で十分に接着可能でな低温接着性と共に、通常の使用条件温度範囲内では高温時でも溶融又は軟化して剥離することのない程度の加熱下凝集力が要求される。この要求を満足するものとして、アクリル−ポリエステル−塩化酢酸ビニル系樹脂からなる感熱接着剤等を好適に使用することができる。
【0032】
これは、比較的低温の加熱により優れた接着性を発現するアクリル系樹脂や塩化酢酸ビニル系樹脂の長所を活かしつつ、加熱下での凝集力の低下の少ないポリエステル系樹脂の特性を加味したものである。その各樹脂の配合比は、アクリル系樹脂10〜60重量%、ポリエステル系樹脂10〜60重量%、塩化酢酸ビニル10〜60重量%の範囲とすることが好ましく、中でもアクリル系樹脂20〜50重量%、ポリエステル系樹脂20〜50重量%、塩化酢酸ビニル系樹脂20〜50重量%の範囲が最も好ましい。
【0033】
低温接着性と耐熱性(加熱下凝集力)とを両立させるための他の手法として、接着温度において十分な接着性を発現する低融点又は低軟化点の樹脂を主体としつつ、接着温度では反応するが常温や塗工温度では反応することのない高温反応型の架橋剤を配合した組成物を使用する方法がある。具体的には、塩化酢酸ビニル−ポリオール系樹脂を主体とし、ブロックイソシアネート化合物を配合した樹脂組成物などが好適に使用可能である。これは、硬化前には主体樹脂である塩化酢酸ビニル−ポリオール系樹脂が未架橋状態であることから、接着時の加熱により容易に溶融して優れた接着性を発現すると共に、該加熱によりブロックイソシアネート化合物のブロック剤が解離して架橋反応硬化して、分子間架橋構造により優れた加熱下凝集力を発現する塩化酢酸ビニル−ウレタン系樹脂を生成するものである。
【0034】
本発明の化粧シートは、従来の化粧シートと同様、例えば木質系基材や無機質系基材等の各種の基材の表面に貼着(ラミネート)して使用されるものであり、一般的には該貼着の際には例えばウレタン系や酢酸ビニル系等の適宜の接着剤が使用されるが、基材シート4の材質によっては(例えばオレフィン系樹脂フィルムである場合等)、係る一般的なラミネート用接着剤との接着性が不十分である場合もある。その様な場合には、基材シート4の裏面に、一般的なラミネート用接着剤との接着性に優れた樹脂組成物からなる裏面プライマー層5を設けておくことが好ましい。
【0035】
裏面プライマー層5としては、例えばウレタン系、アクリル系、エチレン−酢酸ビニル共重合体系、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系等の各種のプライマー剤が知られており、これらの中から基材シート4の材質に合わせたものを選んで使用すればよい。なお、裏面プライマー層5に例えばシリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の粉末を添加しておくと、裏面プライマー層5の表面が粗面化することによって、化粧シートの巻取保存時のブロッキングが防止できると共に、投錨効果による上記ラミネート用接着剤との接着性の向上を図ることもできる。
【0036】
【実施例】
以下に、本発明の化粧シートの具体的な実施例及び比較例を挙げ、本発明をより詳細に説明する。
【0037】
実施例1
厚さ90μmのポリプロピレン樹脂フィルムを基材シートとし、その表面に、ウレタン系印刷インキにて絵柄層を印刷形成し、さらにヒートシール剤(アクリル/塩化酢酸ビニル/ポリエステル=1/1/1)を乾燥後の膜厚1μmに塗布して接着剤層を形成し、該接着剤層面に、下面の表面粗さが0.2μmであり、上面の表面粗さが0.6μm、60°光沢値が5である厚さ50μmの透明アクリル系樹脂フィルム(片面マットクリヤータイプ)の下面を向けて重ね合わせ、フィルム表面温度120℃の条件で熱ラミネートし、最後に基材シートの裏面にシリカ粉末を添加したウレタン系プライマー剤を乾燥後の膜厚1μmに塗布して裏面プライマー層を形成して、本発明の化粧シートを作製した。
【0038】
比較例1
上記実施例1において、上記透明アクリル系樹脂フィルムを、上下両面とも表面粗さが0.6μm、60°光沢値が5であるもの(両面マットクリヤータイプ)に変更し、その他は上記実施例1と同一の条件で化粧シートを作製した。
【0039】
比較例2
上記実施例1において、上記透明アクリル系樹脂フィルムを、上下両面とも表面粗さが0.2μm、60°光沢値が18であるもの(両面グロスタイプ)に変更し、その他は上記実施例1と同一の条件で化粧シートを作製した。
【0040】
評価
上記実施例1及び比較例1〜2の化粧シートについて、表面の60°光沢値、艶消し感(目視評価、○=良好、×=不良)及び面状態(貼り合わせ面の気泡の有無を目視評価、○=気泡なし、×=気泡有り)を評価したところ、結果は以下の通りであった。
【0041】
【0042】
【発明の効果】
以上詳細に説明した様に、本発明の化粧シートは、基材シート上に透明アクリル系樹脂フィルムを積層してなる化粧シートにおいて、前記透明アクリル系樹脂フィルムとして、裏面(前記基材シート側の面)の表面粗さが0.2μm以下であり、表面(前記基材シートとは反対側の面)の表面粗さが0.6μm以上、且つ、60°光沢値が15以下であるものを使用したことにより、意匠的に良好な艶消し感を有しており、しかも、基材シートと透明アクリル系樹脂フィルムとの積層時に空気を巻き込むことがなく、層間密着性に優れ、銀目や膨れ等の意匠不良のない高品質の化粧シートを、容易に製造することができる。以て、例えば、玄関ドアや破風板等の準外装部位の様に耐候性が要求される用途において、所望の艶消し感を有する化粧シートを容易に得ることができる等、実用上の優れた利点を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の化粧シートの実施の形態を示す側断面図である。
【符号の説明】
1‥‥透明アクリル系樹脂フィルム
2‥‥接着剤層
3‥‥絵柄層
4‥‥基材シート
5‥‥裏面プライマー層
Claims (1)
- 基材シート上に透明アクリル系樹脂フィルムを積層してなる化粧シートにおいて、前記透明アクリル系樹脂フィルムの裏面(前記基材シート側の面)の表面粗さが0.2μm以下であり、表面(前記基材シートとは反対側の面)の表面粗さが0.6μm以上、且つ、60°光沢値が15以下であり、前記基材シートがオレフィン系樹脂フィルムであることを特徴とする化粧シート。
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