JP4046162B2 - プラズマディスプレイパネルの蛍光体層形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、PDP(プラズマディスプレイパネル)の蛍光体層の形成方法に関し、さらに詳しくは、隔壁(リブ)を有するPDPの蛍光体層の形成方法に関する。PDPは、広視野角をもった薄型表示デバイスとして注目されており、ハイビジョン分野などへの用途拡大に向けて高精細化および大画面化が進められている。
【0002】
【従来の技術】
PDPは、前面側の基板と背面側の基板とを微少間隔を設けて対向配置し、周辺を封止して放電空間に放電ガスを充填し、放電空間での放電発生時の発光を利用して表示を行う自己発光型の表示パネルである。
【0003】
このPDPでは、通常、背面側の基板に帯状の隔壁を形成する。この帯状の隔壁は、詳細には直線状や蛇行状のものがあり、直線状のものはストレートリブ構造と呼ばれ、蛇行状のものはミアンダリブ構造と呼ばれることがある。いずれの構造のPDPにしても、隔壁で囲まれた凹溝状の空間が放電空間となり、この放電空間に蛍光体層を形成する。
【0004】
このミアンダリブ構造のPDPでは、セルの面積を広くして発光輝度を高める工夫がなされており、一本の凹溝状の空間(放電空間)に幅の狭い領域(ナロー部)と幅の広い領域(ワイド部)を形成し、ナロー部を非発光領域(非放電領域)、ワイド部を発光領域(放電領域:セル)としている。この構造では、平面的に見た場合に発光領域がほぼ六角形のハニカム構造のセルがよく知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開平9−50768号公報(図1および図2)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、隔壁と隔壁との間に形成された凹溝状の放電空間に蛍光体層を形成するには、その凹溝状の放電空間に、蛍光体粉末にバインダー樹脂と溶媒とを加えた蛍光体ペーストを印刷法などで塗布し、乾燥させた後、焼成することで形成するようにしている。
【0007】
しかしながら、基板に蛇行状の隔壁を形成して、凹溝状の放電空間に蛍光体層を形成するには、以下のような問題がある。
【0008】
すなわち、図8に示すように、隔壁29と隔壁29との間に形成された凹溝状の放電空間32に、蛍光体ペースト33を塗布するのであるが(図8(a)および図8(b)参照)、その際、毛細管現象により蛍光体ペースト33が、矢印Nで示すように、ナロー部34に吸われ(図8(c)参照)、そのまま乾燥させて焼成すると、ナロー部34近傍の放電空間が狭く、かつワイド部(発光領域)35の蛍光体層が薄くなってしまう(図8(d)参照)。
【0009】
これにより、発光領域の放電が広がらないため輝度が上がらず、パネルの発光効率が予想値よりも低くなるという問題が生ずる。このため、蛍光体ペーストを塗布する際、蛍光体ペーストがナロー部に吸われないような手法の出現が望まれていた。
【0010】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、凹溝状の放電空間のナロー部に、焼失させることが可能な樹脂ペーストをあらかじめ塗布しておき、その後、凹溝状の放電空間に蛍光体ペーストを塗布し、樹脂ペーストと蛍光体ペーストを焼成することで、ナロー部に蛍光体層が形成されないようにすることを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、隣接する隔壁との間の凹溝にそれぞれ幅の狭い部分と幅の広い部分とが交互にできるように複数の隔壁が形成されたパネル基板の前記凹溝に蛍光体層を形成する方法であって、前記凹溝の幅の狭い部分に焼成により焼失する樹脂ペーストを塗布し、前記凹溝の少なくとも幅の広い部分に蛍光体粉末、バインダー樹脂および溶媒を含む蛍光体ペーストを塗布し、その後、樹脂ペーストと蛍光体ペーストを焼成することで、前記凹溝に蛍光体層を形成することからなるプラズマディスプレイパネルの蛍光体層形成方法である。
【0012】
本発明によれば、隔壁と隔壁との間の凹溝の幅の狭い部分(ナロー部)に焼成により焼失する樹脂ペーストを塗布し、その後、凹溝に蛍光体ペーストを塗布する。したがって、蛍光体ペーストの塗布時には、ナロー部に樹脂ペーストが存在するため、蛍光体ペーストは、ナロー部に毛細管現象で吸引されることなく、凹溝の幅の広い部分(ワイド部)のみに塗布される。これにより、蛍光体ペーストを焼成した祭、ナロー部の樹脂ペーストは焼失され、凹溝の幅の広い部分(ワイド部)のみに蛍光体層が形成される。その結果、ナロー部近傍の放電空間を広くすることができ、かつワイド部(発光領域)の蛍光体層が薄くなることを防止することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明において、パネル基板としては、ガラス、石英、セラミック等の基板や、これらの基板上に、電極、絶縁膜、誘電体層、保護膜等の所望の構成物を形成した基板が含まれる。
【0014】
隔壁は、パネル基板上に、隣接する隔壁との間の凹溝にそれぞれ幅の狭い部分と幅の広い部分とが交互にできるように複数形成されたものであればよい。この観点からは、隔壁の形状は、特に限定されず、例えば直線状や、蛇行状など、どのような形状の隔壁であってもよい。例えば、直線上の隔壁であれば、直線状の隔壁に凹溝を狭めるような突起を設けるようにしてもよい。この場合、隣接する隔壁との間の凹溝にそれぞれ幅の狭い部分と幅の広い部分とが交互にできるようにするには、隣接する隔壁と半ピッチずつ順次シフトさせた蛇行状の隔壁とすることが望ましい。蛇行の形状は、滑らかに曲折する必要はなく、角張った曲折であってもよい。この隔壁は、当該分野で公知のサンドブラスト法、印刷法、フォトエッチング法等により形成することができる。例えば、基板にガラス板を用い、このガラス板にマスクを形成し、サンドブラストで基板に直接凹溝を切削することで隔壁を形成してもよい。あるいは、例えば、低融点ガラスフリット、バインダー樹脂、溶媒等からなるガラスペーストを基板上に塗布して乾燥させた後、サンドブラスト法で切削して、焼成することにより形成してもよい。またこの際、サンドブラスト法で切削することに代えて、バインダー樹脂に感光性の樹脂を使用し、マスクを用いた露光及び現像の後、焼成することにより形成してもよい。
【0015】
樹脂ペーストは、凹溝の幅の狭い部分(ナロー部)に塗布できるもので、かつ焼成により焼失するものであればよい。この樹脂ペーストは、塗布後、凹溝の幅の狭い部分に表面張力で維持されるような粘度を有していることが望ましい。一方、樹脂ペーストの塗布は、当該分野で公知の各種の塗布方法を適用することができるが、精度の点からは、スクリーン印刷法で行うことが望ましい。したがって、樹脂ペーストの粘度は、凹溝の幅の狭い部分に表面張力で維持できる粘度で、かつスクリーン印刷が可能な粘度である50〜100ポイズに調整しておくことが望ましい。
【0016】
上記の観点から、樹脂ペーストには、蛍光体ペーストに用いるものと同じバインダー樹脂と溶媒とを用いることが望ましい。つまり、蛍光体ペーストから蛍光体粉末を除去した成分のものとすることが望ましい。樹脂ペーストをこのような成分のものとすれば、蛍光体ペーストの焼成温度で樹脂ペーストを焼失させることができるので好都合である。このバインダー樹脂としては、アクリル樹脂やエチルセルロースなどが挙げられる。溶媒としては、テルピネオールなどのテルペン系溶剤や、高級アルコール類が挙げられる。
【0017】
樹脂ペーストは、不燃性の黒色材料を含有したものであってもよく、このようにした場合には、蛍光体ペーストの焼成後、凹溝のナロー部に黒色材料を残留させることができる。これにより、非発光領域(ナロー部)を暗色とすることができるので、プラズマディスプレイパネルの画面のコントラストを向上させることができる。
【0018】
上記黒色材料としては、黒色顔料などを用いることができる。この黒色顔料としては、Fe(鉄)、Mn(マンガン)、Cr(クロム)、Cu(銅)、Co(コバルト)系の複合酸化物の微粉末を適用することができる。例えば、平均粒径が2〜3μmのCr酸化物やCu酸化物などを適用することができる。Cr酸化物の例としてはCr2O3などを用いることができる。
【0019】
蛍光体ペーストは、凹溝の少なくとも幅の広い部分に塗布できるものであればよく、赤(R)、緑(G)または青(B)の蛍光体粉末に、それぞれバインダー樹脂と溶媒を加えたものを適用することができる。
【0020】
蛍光体粉末としては、当該分野で公知の蛍光体の粉末をいずれも使用することができる。たとえば、Rの蛍光体としては、Y2O3:Eu、(Y,Gd)BO3:Eu、YVO4:Euなどを適用することができる。Gの蛍光体としては、Zn2SiO4:Mn、BaAl12O19:Mn、Zn2GeO2:Mnなどを適用することができる。Bの蛍光体としては、BaMgAl10O17:Eu、BaMgAl14O23:Eu、BaMgAl16O27:Euなどを適用することができる。
【0021】
蛍光体ペーストのバインダー樹脂と溶媒は、上述の樹脂ペーストに用いたものと同じものを用いる。
【0022】
蛍光体ペーストの塗布は、精度の点からは、スクリーン印刷法で行うことが望ましい。この際、蛍光体ペーストの粘度は、樹脂ペーストの粘度と同じ50〜100ポイズに調整しておいてもよい。
【0023】
焼成は、凹溝に塗布された樹脂ペーストと蛍光体ペーストに対して行う。この焼成については、当該分野で公知の焼成方法を適用することができる。例えば、凹溝に樹脂ペーストと蛍光体ペーストが塗布された基板を、焼成炉内に搬入し、樹脂ペーストと蛍光体ペーストに含まれるバインダー樹脂と溶媒が焼失するような温度、例えば、バインダー樹脂として上記したアクリル樹脂やエチルセルロースを使用し、溶媒としてテルピネオールなどのテルペン系溶剤や、高級アルコール類を使用している場合であれば、500〜700℃程度の温度で焼成する。
【0024】
本発明は、また、隣接する隔壁との間の凹溝にそれぞれ幅の狭い部分と幅の広い部分とが交互にできるように複数の隔壁が形成されたパネル基板の前記凹溝に蛍光体層を形成する方法であって、前記凹溝に感光性材料、蛍光体粉末、バインダー樹脂および溶媒を含む蛍光体ペーストを塗布し、マスキング工程、露光工程、現像工程からなる処理により、前記凹溝の幅の狭い部分の蛍光体ペーストを除去し、その後、蛍光体ペーストを焼成することで、前記凹溝に蛍光体層を形成することからなるプラズマディスプレイパネルの蛍光体層形成方法である。この方法においても、隔壁は、蛇行状の隔壁であることが望ましい。
【0025】
本発明は、さらに、上記の蛍光体層形成方法によって隔壁と隔壁との間の凹溝に蛍光体層が形成された基板を備えたプラズマディスプレイパネルである。
【0026】
以下、図面に示す実施の形態に基づいて本発明を詳述する。なお、本発明はこれによって限定されるものではなく、各種の変形が可能である。
【0027】
実施形態1
図1〜図3は本発明の蛍光体層形成方法を用いて蛍光体層を形成したPDPの構成を示す説明図である。図1はPDPの部分分解斜視図であり、図2はPDPを平面的にみた場合の隔壁を示し、図3はPDPを平面的にみた場合の隔壁と表示電極とアドレス電極との関係を示している。
このPDPはカラー表示用のAC型3電極面放電形式のPDPであり、ミアンダリブ構造のPDPである。
【0028】
本PDPは、前面側の基板11を含む前面側のパネルアセンブリと、背面側の基板21を含む背面側のパネルアセンブリから構成されている。前面側の基板11と背面側の基板21としては、ガラス基板、石英基板、セラミック基板等を使用することができる。
【0029】
前面側の基板11の内側面には、水平方向に複数の表示電極Xと表示電極Yが等間隔に形成されている。各表示電極X,Yは、ITO、SnO2などの幅の広い透明電極12と、例えばAg、Au、Al、Cu、Cr及びそれらの積層体(例えばCr/Cu/Crの積層構造)等からなる金属製の幅の狭いバス電極13から構成されている。表示電極X、Yは、Ag、Auについては印刷のような厚膜法を用い、その他については蒸着法、スパッタ法等の薄膜法とエッチング法を組み合わせることにより、所望の本数、厚さ、幅及び間隔で形成することができる。
【0030】
表示電極X、Yの上には、表示電極X、Yを覆うように交流(AC)駆動用の誘電体層17が形成されている。誘電体層17は、低融点ガラスペーストを、前面側の基板11上にスクリーン印刷法で塗布し、焼成することにより形成している。
【0031】
誘電体層17の上には、表示の際の放電により生じるイオンの衝突による損傷から誘電体層17を保護するための保護膜(図示していない)が形成されている。この保護膜は、例えば、MgO、CaO、SrO、BaO等からなる。
【0032】
背面側の基板21の内側面には、平面的にみて表示電極X、Yと交差する方向に複数のアドレス電極(信号電極やデータ電極などとも呼ばれる)Aが形成され、そのアドレス電極Aを覆って誘電体層24が形成されている。アドレス電極Aは、スキャン用の表示電極との交差部で発光セルを選択するためのアドレス放電を発生させるものであり、例えばAg、Au、Al、Cu、Cr及びそれらの積層体(例えばCr/Cu/Crの積層構造)等から構成されている。アドレス電極Aも、表示電極X、Yと同様に、Ag、Auについては印刷のような厚膜法を用い、その他については蒸着法、スパッタ法等の薄膜法とエッチング法を組み合わせることにより、所望の本数、厚さ、幅及び間隔で形成することができる。誘電体層24は、誘電体層17と同じ材料、同じ方法を用いて形成することができる。
【0033】
隣接するアドレス電極Aとアドレス電極Aとの間の誘電体層24上には、複数の蛇行状の隔壁29が形成されている(図2参照)。隔壁29は、サンドブラスト法、印刷法、フォトエッチング法等により形成することができる。例えば、サンドブラスト法では、低融点ガラスフリット、バインダー樹脂、溶媒等からなるガラスペーストを誘電体層24上に塗布して乾燥させた後、そのガラスペースト層上に隔壁パターンの開口を有する切削マスクを設けた状態で切削粒子を吹きつけて、マスクの開口に露出したガラスペースト層を切削し、さらに焼成することにより形成する。また、フォトエッチング法では、切削粒子で切削することに代えて、バインダー樹脂に感光性の樹脂を使用し、マスクを用いた露光及び現像の後、焼成することにより形成する。
【0034】
隔壁29の側面及び隔壁間の誘電体層24上には、赤(R)、緑(G)、青(B)の蛍光体層28R、28G、28Bが形成されている。蛍光体層28R、28G、28Bは、蛍光体粉末とバインダー樹脂と溶媒とを含む蛍光体ペーストを隔壁29間の凹溝状の放電空間内にスクリーン印刷、又はディスペンサーを用いた方法などで塗布し、これを各色毎に繰り返した後、焼成することにより形成している。この蛍光体層28R、28G、28Bは、蛍光体粉末とバインダー樹脂とを含むシート状の蛍光体層材料(いわゆるグリーンシート)を使用し、フォトリソ法で形成することもできる。この場合、所望の色のシートを基板上の表示領域全面に貼り付けて、露光、現像を行い、これを各色毎に繰り返すことで、対応する隔壁間に各色の蛍光体層を形成することができる。
【0035】
PDPは、上記した前面側のパネルアセンブリと背面側のパネルアセンブリとを、表示電極X、Yとアドレス電極Aとが交差するように対向配置し、周囲を封止し、隔壁29で囲まれた放電空間に放電ガスを充填することにより作製されている。このPDPでは、表示電極X、Yとアドレス電極Aとの交差部の六角形の放電空間が表示の最小単位である1つのセル領域(単位発光領域)となる。1画素は、図2において破線の三角形で示すR、G、Bの3つのセルで構成される。この配列は、三角形であるためデルタセル配列とも呼ばれる。
【0036】
表示は、まず、Y側の表示電極群をスキャン電極として用いて、それら各表示電極Yに順次スキャン電圧を印加してゆき、その間に所望のアドレス電極Aにアドレス電圧を印加し、選択されたアドレス電極Aと表示電極Yとの間でアドレス放電を発生させることで発光すべきセルを選択する。この発光セル対応の誘電体層上には壁電荷が形成されるので、次に、Y側の表示電極群とX側の表示電極群との間に交互にサスティン電圧を印加して、当該壁電荷の蓄積されたセルにおいて再び放電(維持放電または表示放電と呼称)を発生させることで、セルを発光させる。このセルの発光は、表示放電によって発生された紫外線で蛍光体を励起して、蛍光体から所望の色の可視光を発生させることにより行われる。
【0037】
表示は、上述のように表示電極Xと表示電極Yとの間で維持放電を発生させることにより行う。放電が生じるワイド部1のX,Y電極間が発光領域となり、放電が生じないナロー部2のX,Y電極間が非発光領域となる。
【0038】
図4(a)〜図4(d)は本発明の蛍光体層形成方法の実施形態1を示す説明図である。
本方法では、まず、背面側の基板に複数の蛇行状の隔壁29を形成する(図4(a)参照)。蛇行状の各隔壁29は半ピッチずつシフトさせている。このため、隔壁29と隔壁29との間の凹溝30には、幅の狭い部分であるナロー部1と、幅の広い部分であるワイド部2が形成された状態となる。この例では、ナロー部1の幅は70μm程度であり、ワイド部2の幅は300μm程度である。
【0039】
この例では、隔壁29の形成にサンドブラスト法を用いている。このサンドブラスト法で隔壁を形成するには、基板上の隔壁形成面全体に隔壁材料層を形成した後、その隔壁材料層上に、隔壁の形状に対応するマスクを介して切削粒子を吹き付けて隔壁材料層を切削する。
【0040】
次に、蛇行状の隔壁29と隔壁29との間の凹溝30内に蛍光体ペーストを塗布する前に、ナロー部1に蛍光体ペーストが流れ込まないよう、あらかじめナロー部1に樹脂ペースト3を塗布して乾燥させる(図4(b)参照)。
【0041】
ナロー部1への樹脂ペースト3の塗布は、ナロー部1の対応部分に開孔を有するスクリーンを用いて、スクリーン印刷で行う。この際、樹脂ペースト3の粘度は、塗布された樹脂ペースト3がナロー部1に表面張力で維持されるような粘度以上で、かつスクリーン印刷が可能な粘度以下である必要があり、この理由から、樹脂ペースト3の粘度を50〜100ポイズに調整しておく。樹脂ペースト3の付着量は、樹脂ペースト3の粘度を調整することによってコントロールすることが可能である。この印刷により、樹脂ペースト3はナロー部1のみに塗布され、ナロー部1を塞ぐように形成される。
【0042】
樹脂ペースト3としては、後ほど塗布する蛍光体ペーストに用いるものと同じバインダー樹脂と溶媒とを用いる。バインダー樹脂には、アクリル樹脂やエチルセルロースなどを用いる。溶媒には、テルピネオールなどのテルペン系溶剤や、高級アルコール類を用いる。
【0043】
その後、隔壁29と隔壁29との間の凹溝全体に蛍光体ペースト4を塗布して乾燥させる(図4(c)参照)。凹溝への蛍光体ペースト4の塗布も、凹溝の幅の広い部分であるワイド部2の対応部分に開孔を有するスクリーンを用いて、スクリーン印刷で行う。この際、蛍光体ペースト4の粘度も、樹脂ペーストと同じ50〜100ポイズに調整しておく。
【0044】
蛍光体ペースト4としては、当該分野で公知の蛍光体粉末を用い、この蛍光体粉末に樹脂ペースと4と同じ成分のバインダー樹脂と溶媒とを加えたものを適用する。
【0045】
このスクリーン印刷の際、ナロー部1は乾燥した樹脂ペースト3により塞がれているので、蛍光体ペースト4はナロー部1に流れ込まない。
【0046】
この蛍光体ペース4を各色ごとに印刷した後、蛍光体ペースト4を乾燥させ、その後、焼成することで、凹溝のワイド部2に各色の蛍光体層28R,28G,28Bを形成する(図4(d)参照)。
【0047】
焼成は、樹脂ペーストと蛍光体ペーストのバインダー樹脂としてアクリル樹脂やエチルセルロースを用いた場合、500〜700℃程度の温度で行う。この温度で焼成することで、これらの樹脂成分を焼失させることができる。溶媒は、乾燥時点でほとんど失われるが、残留した溶媒もこの温度で焼失する。
【0048】
すなわち、この焼成で、最初に塗布した樹脂ペースト3が蛍光体ペースト4の樹脂成分と一緒に焼失され、最終的にワイド部2のみに蛍光体粉末が固化した蛍光体層28R,28G,28Bが形成される。これにより、ナロー部1の蛍光体層が薄い、あるいは、ナロー部1に蛍光体層がまったくない構造を実現することができる。その結果、ワイド部2に広い面積で一定の厚みの蛍光体層を形成することができ、安定した発光輝度のPDPとすることができる。
【0049】
また、このナロー部1の蛍光体層が薄い、あるいは、ナロー部1に蛍光体層がまったくない構造とすることにより、放電空間に存在する不純物ガスを排気したり、放電空間に放電ガスを導入する際の通気性を向上させることができる。
【0050】
図5および図6は樹脂ペーストに黒色顔料を加えて焼成した例を示す説明図である。図6は図5のK−K断面を示している。
前述した樹脂ペースト3には、焼成によって焼失されない黒色顔料を加えておいてもよい。このように樹脂ペースト3に黒色顔料を加えておけば、蛍光体ペーストを焼成した際、ナロー部1に黒色顔料が固化して残留し、黒色顔料層6となる。その結果、ナロー部1である非発光領域を暗色にして、PDPにブラックマトリクスの効果を生じさせることができる。
【0051】
黒色顔料としては、Fe(鉄)、Mn(マンガン)、Cr(クロム)、Cu(銅)、Co(コバルト)系の複合酸化物の微粉末を適用する。例えば、平均粒径が2〜3μmのCr酸化物やCu酸化物などを適用する。Cr酸化物の例としてはCr2O3などを用いる。
【0052】
このように、非発光領域に黒色顔料層を形成することにより、PDPの表示の際のコントラストを向上させることができる。
【0053】
なお、ナロー部1に蛍光体層がまったくない構造とした場合でも、背面側の基板21に形成する誘電体層21(図1参照)に黒色顔料を加えて、この誘電体層21を暗色にしておけば、蛍光体層のない部分についてはこの誘電体層21が表示面側から見えるため、非発光領域に黒色顔料層を形成した場合と同様に、PDPの表示の際のコントラストを向上させることができる。
【0054】
実施形態2
図7(a)〜図7(d)は本発明の蛍光体層形成方法の実施形態2を示す説明図である。
本方法では、まず、実施形態1と同様に、背面側の基板に、ナロー部1とワイド部2を有する複数の蛇行状の隔壁29を形成する(図7(a)参照)。
【0055】
次に、感光性材料を含む蛍光体ペースト4aを用い、この蛍光体ペースト4aを、蛇行状の隔壁29と隔壁29との間の凹溝30全体に塗布して乾燥させる(図7(b)参照)。感光性材料は、蛍光体ペーストの所望の部分をフォトリソグラフの手法によって除去するためのものであり、この感光性材料としては、当該分野で公知の各種の材料を適用することができる。蛍光体ペーストの他の成分については実施形態1と同じものを用いる。凹溝30内への蛍光体ペースト4aの塗布はスクリーン印刷で行う。
【0056】
次に、フォトマスクを用いて露光を行い、現像することにより、ナロー部1の蛍光体ペースト4aを除去する(図7(c)参照)。フォトマスクの形状は、感光性材料にネガ型を用いるのかポジ型を用いるのかで適宜選択する。
【0057】
この蛍光体ペース4aの塗布、乾燥、露光、現像を各色ごとに繰り返し、その後、焼成することで、凹溝のワイド部2に各色の蛍光体層28R,28G,28Bを形成する(図7(d)参照)。
【0058】
この場合、上記では、各色ごとに蛍光体ペースト4aの塗布、乾燥、露光、現像を繰り返したが、各色の蛍光体ペーストを全て塗布した後、乾燥させ、その後、一度に露光、現像を行って、ナロー部1の各色の蛍光体ペースト4aを一度に除去するようにしてもよい。蛍光体ペーストの焼成温度は実施形態1と同じである。
【0059】
これにより、ナロー部1の蛍光体層が薄い、あるいは、ナロー部1に蛍光体層がまったくない構造を実現することができる。
【0060】
本実施形態では、実施形態1と比較して、フォオトリソグラフの手法を用いるので、高い精度でワイド部2のみに蛍光体層を形成することができるという利点がある。
【0061】
【発明の効果】
本発明によれば、隔壁と隔壁との間の凹溝の幅の広い部分、つまり発光部にのみ蛍光体層を形成するので、輝度が高く、放電効率の高いデルタセル配列のPDPを作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の蛍光体層形成方法を用いて蛍光体層を形成したPDPの構成を示す説明図であり、PDPの部分分解斜視図である。
【図2】本発明の蛍光体層形成方法を用いて蛍光体層を形成したPDPの構成を示す説明図であり、PDPを平面的にみた場合の隔壁を示す説明図である。
【図3】本発明の蛍光体層形成方法を用いて蛍光体層を形成したPDPの構成を示す説明図であり、PDPを平面的にみた場合の隔壁と表示電極とアドレス電極との関係を示す説明図である。
【図4】本発明の蛍光体層形成方法の実施形態1を示す説明図である。
【図5】樹脂ペーストに黒色顔料を加えて焼成した例を示す説明図である。
【図6】図5のK−K断面を示す説明図である。
【図7】本発明の蛍光体層形成方法の実施形態2を示す説明図である。
【図8】従来の蛍光体層形成方法を示す説明図である。
【符号の説明】
1 ナロー部
2 ワイド部
3 樹脂ペースト
4,4a 蛍光体ペースト
6 黒色顔料層
11 前面側の基板
12 透明電極
13 バス電極
17,24 誘電体層
21 背面側の基板
28,28R、28G、28B 蛍光体層
29 隔壁
30 凹溝
A アドレス電極
X、Y 表示電極
Claims (6)
- 隣接する隔壁との間の凹溝にそれぞれ幅の狭い部分と幅の広い部分とが交互にできるように複数の隔壁が形成されたパネル基板の前記凹溝に蛍光体層を形成する方法であって、
前記凹溝の幅の狭い部分に焼成により焼失する樹脂ペーストを塗布し、
前記凹溝の少なくとも幅の広い部分に蛍光体粉末、バインダー樹脂および溶媒を含む蛍光体ペーストを塗布し、
その後、樹脂ペーストと蛍光体ペーストを焼成することで、前記凹溝に蛍光体層を形成することからなるプラズマディスプレイパネルの蛍光体層形成方法。 - 樹脂ペーストが、塗布後、前記凹溝の幅の狭い部分に表面張力で維持されるような粘度を有してなる請求項1記載のプラズマディスプレイパネルの蛍光体層形成方法。
- 樹脂ペーストが、蛍光体ペーストに含まれるバインダー樹脂と溶媒からなる請求項2記載のプラズマディスプレイパネルの蛍光体層形成方法。
- 樹脂ペーストが不燃性の黒色材料を含有してなる請求項1記載のプラズマディスプレイパネルの蛍光体層形成方法。
- 前記凹溝の幅の狭い部分への樹脂ペーストの塗布が、スクリーン印刷法で行われる請求項1記載のプラズマディスプレイパネルの蛍光体層形成方法。
- 隔壁が蛇行状の隔壁である請求項1記載のプラズマディスプレイパネルの蛍光体層形成方法。
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