JP4043206B2 - 放射性物質の輸送用容器、および密閉容器の装填方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、発熱を伴う放射性物質を収納し密閉容器、いわゆるキャニスタ、を輸送するための輸送用容器、いわゆる輸送用キャスクに関する。
【0002】
【従来の技術】
原子炉の使用済燃料に代表される高放射性物質は、解体処理されるとともに、プルトニウム等の再度燃料として使用可能な有用物質を回収するため、再処理されるが、再処理されるまでに貯蔵される場合がある。通常、使用済燃料は、原子力発電所でキャニスタに収納され、更に、このキャニスタを輸送用キャスクに収納した状態で、船舶、トラック等により貯蔵施設に搬送され貯蔵される。そして、このような使用済燃料は高放射性物質であるため、これを収納した輸送用キャスクは、放射性物質に対する高い密閉性および遮蔽性を有していることが必要となる。
【0003】
通常、キャニスタは、底面が閉塞した筒状の金属製の容器本体と、この容器本体内に配置されたバスケットと、を有し、使用済燃料は、バスケットによって支持された状態で、容器本体内に複数体封入されている。また、容器本体の上部開口は、溶接された一次蓋および二次蓋によって閉塞されている。
【0004】
輸送用キャスクは、一般に、ステンレス、炭素鋼等の金属によって形成されているとともに上端が開口したキャスク本体と、例えば高分子材料の合成樹脂により形成され容器本体の外周を覆った中性子遮蔽体と、を備え、キャスク本体の上端開口は、ボルト止めされた蓋体によって閉塞されている。
【0005】
上記構成の輸送用キャスクを用いてキャニスタを発電所から所望の施設まで輸送する場合、使用済燃料は、以下の工程によりキャニスタ内に収納され、更に、輸送用キャスク内に収納される。
【0006】
まず、除染ピットにおいて、キャニスタの空の容器本体を、その上端が開口した状態で輸送用キャスクに収納し、燃料装填準備を行う。なお、容器本体内には予めバスケットを装着しておく。続いて、容器本体が収納された輸送用キャスクを、冷却水が漲水されたキャスクローディングピット内へ移送し、冷却水の中に沈める。これにより、キャニスタ内部、およびキャスク内部が冷却水によって満たされる。
【0007】
このキャスクローディングピットにおいて、使用済燃料ピット内に保管されていた使用済燃料集合体を、ピットクレーンにより1本ずつ引き出し、キャニスタ容器本体内のバスケットに順次装填する。そして、所定本数の使用済燃料集合体を容器本体内に装填した後、容器本体の上端開口部内に遮蔽板を装着する。
【0008】
続いて、天井クレーンにより、輸送用キャスクをキャスクローディングピットから引き上げ、前述の除染ピットへ移送する。そして、除染ピットにおいて、キャスク内の冷却水の水面が使用済燃料集合体の僅か上方に位置するように、容器本体内から適量の冷却水を水抜き取るとともに、キャニスタと輸送用キャスクとの隙間に溜まっている水を抜き取る。
【0009】
この状態で、キャニスタの容器本体に対して一次蓋を溶接し容器本体の開口を閉塞した後、完全脱水、真空乾燥、不活性ガス置換、密封作業、溶接部検査及び気密漏洩検査を行う。更に、二次蓋の溶接、および一次蓋と二次蓋との間の空間における不活性ガス置換、密封作業、溶接部検査、気密漏洩検査を行うことにより、キャニスタの蓋密閉溶接が終了し、使用済燃料を収納したキャニスタが完成する。
【0010】
その後、輸送用キャスクの上端開口を蓋によって閉塞し、搬出前確認検査を行うことにより、発送前準備が完了する。そして、このようにキャニスタを収納した輸送用キャスクは、発電所から貯蔵施設まで輸送される。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
このように構成された輸送用キャスクでは、キャニスタ内に使用済燃料集合体を装填する際、キャニスタ表面および輸送用キャスク内面も冷却水に接触し放射能によって汚染される。そのため、輸送前のいずれかの段階で、キャニスタを輸送用キャスクから一旦引き出し、その外面の洗浄および汚染検査を行った後、再度、輸送用キャスク内に装填する必要がある。
【0012】
そのため、輸送用キャスクへのキャニスタの装填作業が非常に面倒であるとともに、輸送用キャスクに対してキャニスタの引き上げ、装填作業を行う際、誤ってキャニスタが落下し、キャニスタおよび輸送用キャスクの損傷を生じる可能性が増えてしまう。
【0013】
また、通常、上記のようにキャニスタの一次蓋および二次蓋を溶接した後、例えば、超音波センサ等を用いて溶接状態の検査を行う。しかしながら、この場合、キャニスタは輸送用キャスク内に収納された状態にあり、かつ、キャニスタ外面と輸送用キャスク内面との隙間も小さいため、キャニスタの上方からしか溶接部の検査を行うことができず、溶接状態を正確に検査することが難しい。
【0014】
この発明は以上の点に鑑みなされたもので、その目的は、放射性物質およびキャニスタを装填する際、キャニスタ外面の汚染を防止し、装填作業を簡素化することが可能な輸送用容器を提供することにある。
【0015】
また、この発明の他の目的は、キャニスタの装填作業中に落下が生じた場合でも損傷の低減を図ることが可能な輸送用容器を提供することにある。
更に、この発明の他の目的は、蓋の溶接部を確実に検査可能な輸送用容器を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、この発明に係る輸送用容器は、閉塞した下端部と上端開口部とを有しているとともに内部に放射性物質が収納されるほぼ筒状の金属製の容器本体と、上記容器本体に溶接され上記容器本体の上端開口部を閉塞した蓋と、を備えた密閉容器を収納して輸送するための輸送用容器において、底壁および上端開口を有し、その内部に、上記密閉容器を収納する収納部が設けられた本体と、上記上端開口を閉塞した蓋体と、上記上端開口の近傍で、上記密閉容器の外面と上記本体の内面との間に設けられ、これら外面と内面との間を密閉し、上記上端開口側から上記密閉容器外面と上記本体内面との間への流体の侵入を防止する環状の密閉部材と、を備え、上記密閉部材は、内部に加圧空気が供給されて膨らみ、上記本体の収納部は、上記上端開口側の端部で上記密閉容器の蓋の外側に設けられているとともに他の部分よりも大きな径を有した大径部を備え、この大径部は、上記密閉容器の外面との間に、上記容器本体に溶接された蓋の溶接状態を検査する検査器を挿入可能な検査空間を形成し、上記密閉部材は上記大径部内に配置されていることを特徴としている。
【0017】
また、この発明に係る輸送用容器に放射性物質を収納した密閉容器を装填する密閉容器の装填方法は、上端の開口した輸送用容器本体の収納部に、上端の開口した空の密閉容器の容器本体を配置する工程と、上記本体の上端開口の近傍で、上記容器本体外面と上記本体の内面との間に設けられた環状の密閉部材の内部に加圧空気を供給して容器本体外面と本体内面との間を密閉し、上記本体の上端開口側から上記容器本体と上記本体内面との間への流体の侵入を防止する工程と、上記密閉部材により上記容器本体外面と本体内面との間を密閉した状態で、上記容器本体が収納された上記本体を水中に沈める工程と、上記水中で、上記容器本体内に放射性物質を装填する工程と、上記放射性物質の装填後、水中で、上記容器本体の上端開口部内に遮蔽体を装着する工程と、上記遮蔽体の装着後、上記本体を水中から引き上げ、上記容器本体内および上記本体内から所定量の水を抜き取る工程と、上記水の抜き取り後、上記蓋を上記容器本体の内面に溶接する工程と、上記蓋の溶接後、上記溶接部の外側で、上記容器本体と上記本体との間に検査器を挿入し溶接状態を検査する工程と、を備えたことを特徴としている。
【0018】
このように構成された輸送用容器、および密閉容器の装填方法によれば、本体の上端開口部近傍で、上記密閉容器の容器本体外面と上記本体の内面との間に、内部に加圧空気が供給されて膨らんだ環状の密閉部材を設けて容器本体外面と本体内面との間を密閉することにより、上記上端開口側から上記容器本体と上記本体内面との間への流体の侵入を防止することができる。つまり、密閉容器の容器本体が収納された本体を水中に沈めて放射性物質の装填を行う際、この水が、上記本体の上端開口側から上記容器本体と上記本体内面との間へ流入することを防止でき、その結果、容器本体の外面が上記水によって汚染されることを防止できる。従って、輸送用容器の本体から引き上げることなく密閉容器の洗浄が可能となり、放射性物質および密閉容器の装填が容易となる。そして、検査空間に、例えば、超音波センサ等の検査器を挿入することが可能となり、密閉容器の外面側で溶接部に対して垂直な方向から溶接部の溶接状態を検査することができる。従って、上記の蓋の溶接状態を確実に検査でき、信頼性の向上を図ることが可能となる。
【0019】
また、この発明に係る輸送用容器によれば、上記密閉部材は、膨張可能なチューブ状に形成され、この上記密閉部材は、上記本体の内面に固定されている。
【0020】
このような構成によれば、輸送用容器本体の収納部に対して密閉容器の容器本体を装填あるいは引き上げ操作する際、仮に容器本体が落下した場合でも、上記密閉部材によって容器本体の落下速度を大幅に低減することができ、密閉容器および本体の損傷を防止することが可能となる。
【0023】
また、この発明に係る輸送用容器によれば、上記本体は、上記密閉部材によって密閉された空間に連通し、上記本体の外部から上記空間内に流体を供給可能な供給孔を備えていることを特徴としている。
【0024】
このような構成によれば、上記密閉容器の容器本体が収納された本体を水中に沈めて放射性物質の装填を行う際、予め、上記供給孔から上記空間内に空気、あるいは純水等の流体を注入しておくことにより、汚染された水が上記空間内に侵入することを一層確実に防止することができる。更に、蓋の溶接時には、上記供給孔から空気等を供給して溶接部を冷却することにより、溶接時間の短縮を図ることが可能となる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照しながら、この発明の実施の形態に係る輸送用キャスクについて詳細に説明する。
図1に示すように、本実施の形態に係る輸送用キャスク11は、ステンレス、炭素鋼等の金属によって形成されたほぼ円筒状の本体10と、本体の外側に隙間を置いて、かつ、本体10と同軸的に配置され、キャスク外面を構成した外筒12と、本体10と外筒12との間に設けられ中性子遮蔽体として機能する、例えば、水素を含有した高分子材料からなるレジン層14と、を備えている。本体10はその上端が開口しているとともに、下端は、この本体の下端に溶接された底壁18によって閉塞されている。これにより、本体10内には収納部17が形成されている。
【0026】
そして、図1および図2に示すように、輸送用キャスク11の本体10内、つまり、収納部17には、密閉容器としてのキャニスタ30が収納され、更に、このキャニスタ30内には、放射性物質としての使用済燃料集合体が収納されている。
【0027】
詳細に述べると、図1ないし図3に示すように、キャニスタ30は、下端が閉塞されているとともに上端開口部30aを有したほぼ円筒状の容器本体32を備えている。この容器本体32は、例えば、ステンレス鋼等の金属によって形成されている。
【0028】
そして、容器本体32は、輸送用キャスク11側の本体10の内径よりも僅かに小さな外径を有し、本体10内に挿入可能となっている。容器本体32内には、バスケット34により支持された状態で、使用済燃料集合体36が複数体封入されている。バスケット34は、ボロン(B)とアルミニウム又はSUSとの複合材料によって構成されている。使用済燃料集合体36は、例えば、原子炉の使用済燃料であり、崩壊熱に伴う発熱と放射線の発生を伴う放射性物質を含んでいる。そして、キャニスタ30は、封入された放射性物質が外部に漏洩しないよう、溶接密閉構造を有している。また、容器本体32内には、ヘリウムガスが負圧状態あるいは正圧状態で充填されている。
【0029】
すなわち、容器本体32の上端部内周面には複数、例えば4つの支持台38が固定され、円周方向に沿って互いに等間隔離間して設けられている。この支持台38上には、円環状の支持板を介して、円盤状の遮蔽板40(本発明の「遮蔽体」)が載置され、容器本体32の上端開口部を閉塞している。
【0030】
そして、容器本体32の上端開口部32a内には、遮蔽板40に重ねて円盤状の一次蓋42が装着され、容器本体の上端開口32aを閉塞している。また、一次蓋42の外周部の上端側部分は、全周に亘って、容器本体32の内周面に溶接されている。
【0031】
更に、容器本体32の上端開口部32aには、一次蓋42に重ねて円盤状の二次蓋44が装着されている。二次蓋44は、上端開口部32a内で一次蓋42上に載置され、かつ、容器本体32の上端面に溶接されている。二次蓋44の内面には、複数の凹所46が形成されている。そして、二次蓋44の内面は、これらの凹所46を除き、一次蓋42の上面に密着している。なお、一次蓋42、二次蓋44は本発明の「蓋」である。
【0032】
これら複数の凹所46によって一次蓋42と二次蓋44との間には、モニタリングの検査空間として機能する密閉空間が形成され、この密閉空間内は負圧あるいは正圧に維持されている。これにより、キャニスタ30内部と外部との間に圧力障壁が形成され、モニタリングおよび気密漏洩検査が可能となる。
【0033】
このように、容器本体32の上端開口32aは、遮蔽板40、一次蓋42、および二次蓋44によって気密に閉塞されている。これら遮蔽板40、一次蓋42、および二次蓋44は、例えばステンレス鋼等の金属によって形成されている。
【0034】
上記のように構成されたキャニスタ30は、輸送用キャスク11の本体10の収納部17内に同軸的に収納され、底壁18上に載置されている。この状態において、キャニスタ30の外周面と本体10の内面との間には、僅かな隙間が形成されている。
【0035】
図1および図2に示すように、本体10の収納部17の内径は、キャニスタ30の外径よりも僅かに大きく形成されているとともに、収納部17の上端部の内径は、他の部分よりも大きく設定され、段付き状に形成されている。これにより、収納部17の上端部内には、検査器を挿入可能な環状の検査空間16が形成され、キャニスタ30の上端部外周、つまり、一次蓋42および二次蓋44の外側に位置している。
【0036】
また、この検査空間16内には、密閉部材として機能する環状の弾性チューブ50が配設されている。この弾性チューブ50は、例えば、中空ゴムによって形成され、外部から加圧空気を供給することにより膨らませることができる。そして、弾性チューブ50は、本体10の内周面に固定され、検査空間16において、本体の内周面およびキャニスタ30の外周面に液密に接触している。これにより、弾性チューブ50は、本体10内面とキャニスタ外面との間を密閉し、本体10の上端開口側から本体とキャニスタ30との間への流体の侵入を防止している。
【0037】
本体10の上端部外周には、弾性チューブ50によって密閉された空間に連通した供給孔52が1つあるいは複数形成されている。本実施の形態において、供給孔52は、弾性チューブ50の下方で検査空間16に連通している。そして、この供給孔52を通して、本体10の外側から、弾性チューブ50によって密閉されたキャニスタ30外面と本体10内面との空間へ流体を供給可能となっている。通常、供給孔52は、栓体54によって閉じられている。
【0038】
図1および図2に示すように、輸送用キャスク11の本体10の上端開口は、ステンレス、炭素鋼等の金属からなる蓋体20によって閉塞されている。この蓋体20は、複数のボルト21により本体10の上端面にボルト止めされている。そして、蓋体20の内面は、キャニスタ30の2次蓋44外面に密着している。
【0039】
更に、輸送用キャスク11は、本体10の上端部および下端部にそれぞれ装着された衝撃吸収体、すなわち、ショックアブソーバ22、24を備えている。これらのショックアブソーバ22、24は衝撃吸収材として、例えば木材によってほぼ円板状に形成されている。
【0040】
そして、ショックアブソーバ22は、本体10の上端部に嵌合およびねじ止めされ、蓋体20の外面全体を覆っている。また、ショックアブソーバ24は、本体10の下端部に嵌合およびねじ止めされ、底壁18の外面全体を覆っている。
【0041】
次に、上記のように構成された輸送用キャスク11に使用済燃料集合体36およびキャニスタ30を装填する方法について説明する。
図4に示すように、除染ピット62において、キャニスタ30の容器本体32を、その上端が開口した状態で輸送用キャスク11の本体10に収納する。なお、この段階において、ショックアブソーバ22、24、および蓋体20は取り除かれている。また、容器本体32内には予めバスケット34を装着しておく。
【0042】
続いて、本体10の上端部内面に固定された弾性チューブ50に加圧空気を供給して弾性チューブを膨らませ、本体10の内面およびキャニスタ30の容器本体32の上端部外周に密着させる。これにより、本体10内面とキャニスタ30外面との間を弾性チューブ50によって密閉し、本体10の上端開口側から本体とキャニスタ30との間への流体の侵入を防止する。
【0043】
更に、供給孔52を通して、本体10の外側から、弾性チューブ50によって密閉されたキャニスタ30外面と本体10内面との空間へ、汚染されていない空気等の気体を充填し、栓体54によって供給孔52を閉じる。これにより、弾性チューブ50によって密閉された空間内を空気によって満たすとともに、この空間内の圧力を外部の圧力と同等以上に維持し、一層確実に流体の侵入を防止可能とする。以上の工程により、燃料装填準備が終了する。
【0044】
なお、充填する流体は、空気に限らず他の気体としても、あるいは、純水等の液体を用いてもよい。
【0045】
続いて、容器本体32が収納された輸送用キャスク11の本体10を、図示しない天井クレーンにより、冷却水64が漲水されたキャスクローディングピット65へ移送し、冷却水の中に沈める。これにより、容器本体32内部および本体10の上端部内が水によって満たされる。この際、本体10内面とキャニスタ30外面との間の空間は、弾性チューブ50によって密閉されているとともに空気が充填されていることから、汚染された冷却水64が、本体10の上端開口を通して本体10と容器本体32との間へ流入することはない。
【0046】
図4および図5に示すように、キャスクローディングピット65において、使用済燃料ピット66内の使用済燃料ラック60に保管されていた使用済燃料集合体36を、ピットクレーン67により、1本ずつ引き出し、容器本体32内のバスケット34に順次装填する。そして、所定本数の使用済燃料集合体36を容器本体32内に装填した後、容器本体32の上端開口部32a内に支持板および遮蔽板40を順次装着する。
【0047】
続いて、天井クレーンにより、輸送用キャスク11の本体10をキャスクローディングピット65から引き上げ、前述の除染ピット62へ移送する。そして、除染ピット62において、冷却水64の水面が使用済燃料集合体36の僅か上方に位置するように、容器本体32内から適量の冷却水を水抜き取る。
【0048】
この状態で、キャニスタ30の容器本体32の上端開口部32a内に一次蓋42を装着し、更に、一次蓋42の上端周縁部を容器本体32の内面に溶接し、容器本体の上端開口部を閉塞する。溶接後、図6に示すように、本体10の上端開口側から検査空間16に検査器、例えば、超音波センサ70を挿入し、溶接部の外側に配置する。そして、この超音波センサ70により、密閉容器32の外面側で一次蓋42の溶接部に対してほぼ垂直な方向から溶接部の溶接状態を検査する。なお、検査器は、超音波センサに限らず、電磁センサ等の検査器を用いてもよい。
【0049】
その後、容器本体32内の完全脱水、真空乾燥、不活性ガス置換、密封作業、溶接部検査及び気密漏洩検査を行う。次に、容器本体32の上端開口部32a内に二次蓋44を装着し、その外周縁部を容器本体の内面に溶接した後、上記と同様の方法で、超音波センサ70により溶接状態を検査する。
【0050】
続いて、一次蓋42と二次蓋44との間の空間における不活性ガス置換、密封作業、溶接部検査、気密漏洩検査を行うことにより、キャニスタ30の蓋密閉溶接が終了し、使用済燃料を収納したキャニスタが完成する。
【0051】
そして、輸送用キャスク11の本体10の上端開口を蓋体20によって閉塞した後、本体10を洗浄するとともに、栓体54を取り外し前述した密閉空間に充填されていた空気あるいは純水等を抜き出す。最後に、本体10の上端および下端にショックアブソーバ22、24を装着した後、搬出前確認検査を行うことにより、発送前準備が完了する。このようにしてキャニスタ30を収納した輸送用キャスク11は、船舶、トラック等により発電所から貯蔵施設まで輸送される。
【0052】
以上のように構成された輸送用キャスク11によれば、本体10の上端開口部近傍で、キャニスタ30容器本体32外面と本体10の内面との間に環状の弾性チューブ50を設けて容器本体32外面と本体10内面との間を密閉することにより、本体10の上端開口側から容器本体32と本体10内面との間への流体の侵入を防止することができる。つまり、キャニスタ30の密閉容器32が収納された本体20を冷却水64に沈めて使用済燃料集合体36の装填を行う際、この冷却水が、本体10の上端開口側から容器本体32と本体10内面との間へ流入することを防止でき、その結果、容器本体32の外面が冷却水によって汚染されることを防止できる。
【0053】
また、上記構成の輸送用キャスクによれば、キャニスタ30の容器本体32が収納された本体10を冷却水中に沈めて放射性物質の装填を行う際、予め、供給孔52から上記密閉された空間内に空気、あるいは純水等の流体を注入しておくことにより、汚染された冷却水が上記空間内に侵入することを一層確実に防止することができる。
【0054】
従って、使用済燃料集合体36を装填した後、密閉容器32を本体10から引き上げて洗浄する必要がなく、装填作業が容易な輸送用キャスクおよび装填方法を得ることができる。
更に、一次蓋および二次蓋の溶接時、供給孔52から空気等を供給して溶接部を冷却することにより、溶接時間の短縮を図ることも可能となる。
【0055】
また、弾性チューブ50が輸送用キャスク11の本体10内面に固定されていることから、本体10の収納部17に対してキャニスタ30を装填あるいは引き上げ操作する際、仮にキャニスタ30が落下した場合でも、弾性チューブ50によってキャニスタの落下速度を大幅に低減することができ、キャニスタおよびキャスク本体10の損傷を防止することが可能となる。
【0056】
一方、上記構成の輸送用キャスク11によれば、本体10の上端部とキャニスタ30の容器本体32上端部との間には環状の検査空間16が形成されているため、この検査空間に超音波センサ70等の検査器を挿入することができ、キャニスタ30における一次蓋42および二次蓋44の溶接部に対して垂直な方向から溶接部の溶接状態を検査することができる。従って、一次蓋42および二次蓋44の溶接状態を確実に検査でき、信頼性の向上を図ることが可能となる。
【0057】
なお、この発明は上述した実施の形態に限定されることなく、この発明の範囲内で種々変形可能である。例えば、流体の侵入を防止する環状の密閉部材は、弾性チューブに限らず、中実の部材としてもよく、その材質は必要に応じて選択可能である。
【0058】
【発明の効果】
以上詳述したように、この発明の輸送用容器および密閉容器の装填方法によれば、放射性物質およびキャニスタを装填する際、キャニスタ外面の汚染を防止し、装填作業を簡素化することが可能になり、蓋の溶接部を確実に検査可能となる。更に、この発明によれば、キャニスタの装填作業中に落下が生じた場合でも損傷の低減を図ることが可能な輸送用容器および密閉容器の装填方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態に係る輸送用キャスクの縦断面図。
【図2】上記輸送用キャスクの本体上部、および輸送用キャスクに収納されたキャニスタの上端部を拡大して示す断面図。
【図3】上記キャニスタの一部を破断して示す斜視図。
【図4】上記キャニスタへの使用済燃料装填工程および蓋溶接工程を概略的に示す図。
【図5】上記使用済燃料装填工程において、輸送用キャスク本体を水中に沈めた状態を示す断面図。
【図6】上記蓋溶接工程の後、溶接部を検査する状態を示した、上記輸送用キャスクの本体上部、および輸送用キャスクに収納されたキャニスタの上端部の断面図。
【符号の説明】
10…本体
11…輸送用キャスク
12…外筒
14…レジン層
16…検査空間
20…蓋体
22、24…ショックアブソーバ
30…キャニスタ
32…容器本体
32a…上端開口部
36…使用済燃料集合体
42…一次蓋
44…二次蓋
50…弾性チューブ
52…供給孔
70…赤外線センサ
Claims (6)
- 閉塞した下端部と上端開口部とを有しているとともに内部に放射性物質が収納されるほぼ筒状の金属製の容器本体と、上記容器本体に溶接され上記容器本体の上端開口部を閉塞した蓋と、を備えた密閉容器を収納して輸送するための輸送用容器において、
底壁および上端開口を有し、その内部に、上記密閉容器を収納する収納部が設けられた本体と、
上記上端開口を閉塞した蓋体と、
上記上端開口の近傍で、上記密閉容器の外面と上記本体の内面との間に設けられ、これら外面と内面との間を密閉し、上記上端開口側から上記密閉容器外面と上記本体内面との間への流体の侵入を防止する環状の密閉部材と、を備え、
上記密閉部材は、内部に加圧空気が供給されて膨らみ、
上記本体の収納部は、上記上端開口側の端部で上記密閉容器の蓋の外側に設けられているとともに他の部分よりも大きな径を有した大径部を備え、
この大径部は、上記密閉容器の外面との間に、上記容器本体に溶接された蓋の溶接状態を検査する検査器を挿入可能な検査空間を形成し、
上記密閉部材は上記大径部内に配置されていることを特徴とする放射性物質の輸送用容器。 - 上記密閉部材は、膨張可能なチューブ状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の放射性物質の輸送用容器。
- 上記密閉部材は、上記本体の内面に固定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の放射性物質の輸送用容器。
- 上記本体は、上記密閉部材によって密閉された空間に連通し、上記本体の外部から上記空間内に流体を供給可能な供給孔を備えていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の放射性物質の輸送用容器。
- 請求項1ないし4のいずれか1項に記載の輸送用容器に放射性物質を収納した密閉容器を装填する密閉容器の装填方法において、
上端の開口した輸送用容器本体の収納部に、上端の開口した空の密閉容器の容器本体を配置する工程と、
上記本体の上端開口の近傍で、上記容器本体外面と上記本体の内面との間に設けられた環状の密閉部材の内部に加圧空気を供給して容器本体外面と本体内面との間を密閉し、上記本体の上端開口側から上記容器本体と上記本体内面との間への流体の侵入を防止する工程と、
上記密閉部材により上記容器本体外面と本体内面との間を密閉した状態で、上記容器本体が収納された上記本体を水中に沈める工程と、
上記水中で、上記容器本体内に放射性物質を装填する工程と、
上記放射性物質の装填後、水中で、上記容器本体の上端開口部内に遮蔽体を装着する工程と、
上記遮蔽体の装着後、上記本体を水中から引き上げ、上記容器本体内および上記本体内から所定量の水を抜き取る工程と、
上記水の抜き取り後、上記蓋を上記容器本体の内面に溶接する工程と、
上記蓋の溶接後、上記溶接部の外側で、上記容器本体と上記本体との間に検査器を挿入し溶接状態を検査する工程と、
を備えたことを特徴とする密閉容器の装填方法。 - 上記密閉部材により密閉された空間に加圧された流体を充填した後、上記本体を水中に沈めることを特徴とする請求項5に記載の密閉容器の装填方法。
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