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JP4041705B2 - 自動車内装成形品 - Google Patents

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JP4041705B2
JP4041705B2 JP2002210655A JP2002210655A JP4041705B2 JP 4041705 B2 JP4041705 B2 JP 4041705B2 JP 2002210655 A JP2002210655 A JP 2002210655A JP 2002210655 A JP2002210655 A JP 2002210655A JP 4041705 B2 JP4041705 B2 JP 4041705B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた成形性(射出成形、射出圧縮成形、ガスアシスト成形)及び物性バランスを有すると共に、成形品の優れた外観性能、低光沢、耐傷付き性能を有する新規なポリプロピレン系樹脂組成物及び該組成物を用いた自動車内装成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリプロピレン系樹脂は、優れた加工特性、耐薬品性、耐候性、電気特性などを有していることから自動車部品、家電製品、OA機器をはじめ、各種の射出成形品、ブロー成形品、真空・圧空成形品、フィルム、シートなどの分野において幅広く用いられている。中でも、自動車の内装部品分野において使用されるポリプロピレン系樹脂は、ポリプロピレンにフィラーやゴム成分を添加することにより、剛性及び耐衝撃性等の高度な物性バランスが要求される分野でも使用されている。
近年、自動車の内装部品分野において使用されるポリプロピレン系樹脂は、更に衝撃強度を向上させる要求が高まっている。このため、ポリプロピレン成分やゴム成分の分子量を高くして衝撃強度を向上させることが行われているが、分子量を高くすると、ポリプロピレン系樹脂組成物の射出成形時、特にインストルメントパネル、バンパーなどの大型射出成形品の成形時に溶融樹脂の流動性が低下する。その結果、得られる成形品の表面にフローマークやウェルドラインを発生し、商品価値が低下するという問題があった。成形品の全面或いは部分的(フローマーク部、ウェルド部)に艶消し塗装を施して不良箇所を隠すこともできるが、コスト高になるのは免れない。従って、流動性がよく、上記問題が発生せず、塗装の必要がない材料の要求が急速に高まっている。
また、近年、インストルメントパネル等の自動車内装部品、特にシボ付きの製品においては、しっとりとした風合いを与える目的、及び、太陽光の反射率を抑えて安全率を高める目的で、光沢度の低い材料が求められている。
しかしながら、上記のような低光沢の成形品は、成形品の運送時における成形品同士の接触、部品組み付け時における軍手等の布との接触、シートベルトのバックルなどの金属との接触などにより傷が付き易く、また低光沢であるが故に、付いた傷も目立ち易いという欠点があった。このような傷付き性の問題は、上記無塗装の成形品では更に顕著だった。
上記ウェルドラインを防止して外観を改善する方法、及び低光沢化する方法としては、分子量分布、緩和時間に特徴を有する結晶性エチレン−プロピレン共重合体を用いる方法(特開平9−71714、特開平9−71619号公報)がある。また、上記フローマークを防止して外観を改善する方法、及び光沢ムラを改善する方法については、特定周波数での溶融粘度に特徴を有するエチレン−プロピレン共重合体を用いる方法(特開平9−328526号公報)などが提案されている。
さらに、耐傷つき性の改良に関しては、特定のポリエチレンを添加する技術(特開昭57−73034号公報)、特定の粒径を有するフィラーを利用する技術(特開昭57−8235号公報)、脂肪酸アミドなどの滑剤と高結晶性ポリエチレンを添加して摩擦係数を下げ、表面硬度を上げることで耐傷付き性を改良する技術(特開2001−288331号公報)などの技術が知られている。
しかしながら、これら公知の方法及びこれによって得られたポリプロピレン系樹脂組成物は、外観の改善、耐傷つき性改良に対してある程度の効果はみられるものの自動車内装成形品として使用するためには充分でない。また、低光沢で優れた物性バランスを併せ持つ自動車内装成形品の要求を考慮した場合、これら公知の方法及び得られたポリプロピレン系樹脂組成物は、充分にその要求を満たすものではない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、優れた成形性(射出成形、射出圧縮成形、ガスアシスト成形)及び物性バランスを有し、外観性能、低光沢、耐傷付き性能に優れた、新規なポリプロピレン系樹脂組成物を用いた自動車内装成形品を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、以下のようなポリプロピレン系樹脂組成物を自動車内装成形品に用いることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、ポリプロピレン(A):230℃、21.6N荷重のメルトフローレートの測定においてMFRが500〜3,000g/10分、沸騰p−キシレン可溶分が6.0質量%以下の結晶性ホモポリプロピレン、5.0〜30質量%;ポリプロピレン(B):結晶性ホモポリプロピレン(B1)と、135℃デカリン中の極限粘度が4.0〜7.0dl/g、エチレン含有量が45質量%以上80質量%以下であるエチレン−プロピレン共重合体ゴム(B2)とからなり、該エチレン−プロピレン共重合体ゴム(B2)を少なくとも10質量%含むポリプロピレン、10〜50質量%;ポリプロピレン(C):結晶性ホモポリプロピレン(C1)と、135℃デカリン中の極限粘度が5.0〜10dl/g、エチレン含有量が25質量%以上45質量%未満であるエチレン−プロピレン共重合体ゴム(C2)とからなり、該エチレン−プロピレン共重合体ゴム(C2)を少なくとも10質量%含むポリプロピレン、5.0〜30質量%;及びエチレン−α−オレフィン共重合体ゴム(D):230℃、21.6N荷重のメルトフローレートの測定においてMFRが0.1〜1.0g/10分であり、エチレン含有量が50質量%以上80質量%以下であり、及び、13C−NMRで測定したコモノマー連鎖分布が1.0〜2.0であるエチレン−α−オレフィン共重合体ゴム、5.0〜40質量%を(A)乃至(D)成分の合計が100質量%以下となるように含むポリプロピレン系樹脂組成物からなることを特徴とする、自動車内装成形品に関する。
さらに、本発明は、上記(A)乃至(D)に加え、(E)無機フィラー及び/又は(F)滑剤を含むポリプロピレン系樹脂組成物からなる自動車内装成形品に関する。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物について詳細に説明する。
(1)ポリプロピレン系樹脂組成物
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、結晶性ホモポリプロピレンであるポリプロピレン(A)、結晶性ホモポリプロピレンとエチレン−プロピレン共重合体ゴムを含むポリプロピレン(B)、結晶性ホモポリプロピレンと(B)のエチレン−プロピレン共重合体ゴムとは異なる特徴を有するエチレン−プロピレン共重合体ゴムを含むポリプロピレン(C)、及びエチレン−α−オレフィン共重合体ゴム(D)を必須成分とし、無機フィラー(E)、滑剤(F)、エラストマー(G)及び/又はその他の重合体成分(H)、及びその他の成分(I)を任意成分として含む。以下、これら各成分について詳細に説明する。
【0006】
<ポリプロピレン(A)>
本発明で使用する(A)成分のポリプロピレンとしては、結晶性のホモポリプロピレンであれば特に限定されないが、アイソタクティックであることが好ましい。
(A)成分の結晶性ホモポリプロピレンは、230℃、21.6N荷重で測定したメルトフローレート(MFR) (JIS K7210)が、500〜3,000g/10分、好ましくは800〜2,500g/10分、更に好ましくは1,000〜2,000g/10分であることが好適である。MFRが、500(g/10分)以上であれば、十分な流動性が得られ、ウェルド、フローマークなどの外観不良が発生を良好に防止できるので好ましい。また、MFRが、3,000g/10分以下であれば、耐衝撃性が低下することもないので好ましい。
本発明の(A)結晶性ホモポリプロピレンは、沸騰p−キシレン可溶分が、6.0質量%以下、好ましくは3.0質量%以下、より好ましくは、0.1〜2.0質量%であることが好適である。6.0質量%以下であれば、自動車内装品として使用するには充分な剛性が得られるので好ましい。
このような特徴を有する結晶性ホモポリプロピレンであれば、単独でも、2種類以上を併用しても良い。
【0007】
ここで、上記結晶性ホモポリプロピレンの沸騰p−キシレン可溶分は、例えば、以下のようにして求められる。沸騰p−キシレンで結晶性ホモポリプロピレン5gをソックスレー抽出し、濾液を20℃で一昼夜放置する。その後、この濾液にアセトンを加えて析出させ、析出物を濾過、乾燥する。得られた乾燥物の質量(=W1(g))を測定して、沸騰p−キシレン可溶分(%)を次式(I)により算出する。
沸騰p−キシレン可溶分(%)=(W1/5)×100 (I)
【0008】
<製造方法>
本発明のポリプロピレン(A)は、公知の重合方法で製造され得る。重合に用いられる触媒としては、結晶性ホモポリプロピレンを製造し得るすべての触媒が使用できる。中でも、特開平3−706、特開平8−170984及び特開平9−20803号公報に開示されているチタン触媒成分に複数のエーテル結合を含有する電子供与体からなる触媒を使用する重合方法が好適である。ここで、ポリプロピレン本発明のポリプロピレン(A)のMFRは、公知の調整方法を使用して調節される。この調整方法としては、例えば、重合時に水素などの分子量調節剤の量や、重合温度、圧力等の重合条件を調節して調整する方法、及び、重合後にジアシルパーオキシド、ジアルキルパーオキシド等の有機過酸化物を添加して調整する方法(特開平8−302105号公報)が挙げられる。本発明で使用されるMFRの調整方法としては、成形品外観等の点から、上記重合時に調節する方法が好ましい。
【0009】
<ポリプロピレン(B)>
本発明の(B)成分のポリプロピレンは、結晶性ホモポリプロピレン(B1)とエチレン−プロピレン共重合体ゴム(B2)とからなり、好ましくは2段階以上の重合工程で製造され、1段目あるいはそれ以降の重合工程で製造される結晶性ホモポリプロピレン(B1)と、エチレン−プロピレン共重合体ゴム(B2)とが連続多段重合したものである。
<結晶性ホモポリプロピレン(B1)>
本発明のポリプロピレン(B)中に含まれる結晶性ホモポリプロピレン(B1)は、アイソタクチックであることが好ましい。(B1)成分の性質については特に限定されないが、(A)成分と同様に、沸騰p-キシレン可溶分が6.0質量%以下、好ましくは3.0質量%以下であることが、剛性、耐熱温度等の物理的特性向上の観点から好適である。また、(B1)成分の230℃、21.6N荷重で測定したメルトフローレートは、例えば、1.0〜1,000g/10分であることが好ましい。ポリプロピレン(B)中の(B1)成分がこの範囲にあれば、耐衝撃性と流動性とのバランスをとることができるので好ましい。また、この範囲にある(B1)成分を2種類以上組み合わせても良い。
【0010】
<エチレン−プロピレン共重合体ゴム(B2)>
本発明のポリプロピレン(B)中のエチレン−プロピレン共重合体ゴム(B2)中のエチレン含有量は、(B2)成分の質量に対し、45〜80質量%、好ましくは45〜60質量%、更に好ましくは50〜60質量%である。エチレン含有量が45〜80質量%の範囲にあれば、(B2)成分中にポリエチレン連鎖部分が十分存在し得るので、十分な耐傷付き効果を発現することができる(T. Nomura et al. J. Appl. Polym. Sci., 55, PP1307-1315 (1995))。また、エチレン−プロピレン共重合体ゴム(B2)の135℃、デカリン中での極限粘度[η]は、4.0〜7.0dl/g、好ましくは4.0〜5.5dl/gであることが好適である。極限粘度[η]が4.0dl/g以上であれば、射出成形時に(B2)成分の流動による配向を抑えることができるため、十分な光沢低下効果が得ることができる。また、極限粘度[η]が4.0l/g以上であれば(B2)は十分な弾性回復力を発揮するため、良好な耐傷付き性を発現し得る(T. Nomura et al. J. Appl. Polym. Sci., 55, PP1307-1315 (1995))。
【0011】
一方、極限粘度[η]が7.0dl/g以下であれば、成形品表面にゲルが発生して成形品の品質を低下させることもなく、また、十分な耐衝撃改良効果が得られるので、自動車内装成形品としての要求性能を十分に満たすことができる。本発明のエチレン−プロピレン共重合体を含むポリプロピレン(B)は、上記エチレン−プロピレン共重合体ゴム(B2)を、(B)成分全体の質量に対し、少なくとも10質量%以上、好ましくは10〜60質量%、更に好ましくは15〜40質量%含有することが好適である。エチレン−プロピレン共重合体ゴム(B2)の含有量が10質量%以上であれば、光沢低下効果、耐傷付き性改良効果を十分に発現し得る。また、60質量%以下であれば、(B)成分製造時に生じるファウリング等の製造不良を有意に回避できるので好ましい。
【0012】
<製造方法>
本発明のポリプロピレン(B)は、上記結晶性ホモポリプロピレン(B1)とエチレン−プロピレン共重合体ゴム(B2)とを例えば連続多段重合等の方法で重合することにより製造される。連続多段重合とは、少なくとも1種のポリマー成分の存在下で、他のポリマーの重合を行う方法をいう。例えば、まず、第1段目のリアクターで結晶性ホモポリプロピレン(B1)を重合し、未反応のプロピレンモノマーを除去する。得られた結晶性ホモポリプロピレン(B1)を第2段目のリアクターに導入し、さらにエチレン−プロピレン共重合体ゴム(B2)重合用のモノマーであるプロピレンモノマー及びエチレンモノマーを導入し、エチレン−プロピレン共重合体ゴム(B2)を重合することによって行われる。ここで、リアクターは、例えば、重合したポリマーを直ちに次のリアクターに送ることができる装置を有することが好ましい。また、重合法としては、スラリー重合法又は気相重合法等、公知の重合方法を使用することができる。重合に際しては、アイソタクティックポリプロピレンを与える触媒、例えば、チーグラーナッタ触媒、及び、メタロセン触媒を用いることができる。さらに、重合に際して、水素のような分子量調節剤等を加えてもよい。重合は、温度、モノマー濃度等の重合条件を調整して行ってもよい。
【0013】
<ポリプロピレン(C)>
本発明の(C)成分のポリプロピレンは、(B)成分と同様、結晶性ホモポリプロピレン(C1)とエチレン−プロピレン共重合体ゴム(C2)とからなり、好ましくは2段階以上の重合工程で製造され、結晶性ホモポリプロピレン(C1)と、(B)成分中のエチレン−プロピレン共重合体ゴム(B2)とは異なる特性を有するエチレン−プロピレン共重合体ゴム(C2)とが連続多段重合したものである。
<結晶性ホモポリプロピレン(C1)>
本発明のポリプロピレン(C)に含まれる結晶性ホモポリプロピレン(C1)は、アイソタクチックであることが好ましい。(C1)成分の性質については特に限定されないが、(A)成分と同様に、沸騰p-キシレン可溶分が6.0質量%以下、好ましくは3.0質量%以下であることが、剛性、耐熱温度等の物理的特性向上の観点から好適である。また、(C1)成分の230℃、21.6N荷重で測定したメルトフローレートは、例えば、1.0〜1,000g/10分であることが好ましい。ポリプロピレン(C)中の(C1)成分がこの範囲にあれば、耐衝撃性と流動性とのバランスをとることができるので好ましい。また、(C1)成分を2種類以上組み合わせても良い。
【0014】
<エチレン−プロピレン共重合体ゴム(C2)>
本発明のポリプロピレン(C)中のエチレン−プロピレン共重合体ゴム(C2)のエチレン含有量は、(C2)成分の質量に対し、25質量%以上45質量%未満、好ましくは35質量%以上45質量%未満、更に好ましくは35〜40質量%である。エチレン含有量が25質量%以上であれば、光沢低下効果を十分に発揮できるので好ましい。また、45質量%未満であれば、(C2)成分と結晶性ホモポリプロピレン成分である(A)成分、(B1)成分、及び(C1)成分との相溶性を適度に保つことができるため、衝撃強度の改良効果を十分に発揮することができる。また、エチレン−プロピレン共重合体ゴム(C2)の135℃、デカリン中での極限粘度[η]は、5.0〜10dl/g、好ましくは5.0〜8.0dl/gであることが好適である。(C2)成分の極限粘度[η]が5.0dl/g以上であれば、210℃におけるキャピラリーレオメーターの測定(L/D=40のキャピラリー使用、L;使用するオリフィスの長さ、D;キャピラリーの直径)において、せん断速度γ=200s-1でのダイスウェルが1.15以上に保つことができる。ダイスウェルが大きくなると、成形品の製造中、成型物の金型への密着度が大きくなり、射出成形時に発生するガスが成型物と金型の間に発生することなく成型物のフロー前方に押しやられてガスの排出効果が向上する。従って、成形品表面におけるウェルド及びシルバーストリークの発生を抑制できることになり、また、金型密着性が向上するのでシボ転写性が良くなり、フローマークの発生を抑えることができる。また、成形品の良好な外観を維持することもできる。一方、極限粘度[η]が10dl/g以下であれば、成形品表面にゲルが発生して成形品の品質を低下させることもなく、また、十分な耐衝撃改良効果が得られるので、自動車内装成形品としての要求性能を十分に満たすことができる。
【0015】
本発明で使用するポリプロピレン(C)は、エチレン−プロピレン共重合体ゴム(C1)を、(C)成分全体の質量に対し、少なくとも10質量%以上、好ましくは10〜60質量%、更に好ましくは15〜40質量%含有することが好適である。エチレン−プロピレン共重合体ゴム(C1)の含有量が10質量%以上であれば、十分な耐衝撃性が発現し得るので、例えば、後述するエラストマー(G)を多量に外添することを要しない。また、60質量%以下であれば、べたつき成分が多くなって(C)成分製造時に生じるファウリング等の製造不良を有意に回避できるので好ましい。
<製造方法>
本発明のポリプロピレン(C)は、上記要件を満足するように調製できれば、その製造方法は特に限定されない。本発明のポリプロピレン(C)は、ポリプロピレン(B)の製造方法と同様の方法で製造することができる。即ち、(B1)成分の代わりに結晶性ホモポリプロピレン(C1)を第1段目のリアクターで重合し、しかる後に第2段目のリアクターで (B2)製造時と異なる重合条件で(B2)成分とは異なる構造のエチレン−プロピレン共重合体(C2)を重合する。重合に際しては、アイソタクティックポリプロピレンを与える触媒、例えば、チーグラーナッタ触媒、及び、メタロセン触媒を用いることができる。さらに、重合に際して、水素のような分子量調節剤等を加えてもよい。重合は、温度、モノマー濃度等の重合条件を調整して行ってもよい。
【0016】
<エチレン−α−オレフィン共重合体ゴム(D)>
本発明に用いられるエチレン−α−オレフィン共重合体ゴム(D)は、エチレン及びα−オレフィンを共重合することにより得られるゴムである。このエチレン−α−オレフィン共重合体ゴム(D)に使用されるα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、エチリデンノルボルネン、1、4−ヘキサジエン、1、9−デカジエン、ビニルノルボルネン等が挙げられる。これらのα−オレフィンは単独でも2種類以上を組み合わせて使用しても良い。これらのα−オレフィン中、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン及び1−オクテンが好ましい。従って、本発明で使用されるエチレン−α−オレフィン共重合体ゴム(D)としては、例えば、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−ブテン共重合体ゴム、エチレン−ヘキセン共重合体ゴム及びエチレン−オクテン共重合体ゴムが好ましい。
上記エチレン−α−オレフィン共重合体ゴム(D)のエチレン含有量は、50〜80質量%、好ましくは55〜70質量%であることが適当である。エチレン含有量が50質量%以上(α−オレフィンが50質量%以下)、80質量%以下であれば、製造時の互着を抑えることができ、製造不良を回避できる。また、十分な耐衝撃性が得られるので好ましい。
上記エチレン−α−オレフィン共重合体ゴム(D)の230℃、21.6N荷重で測定したメルトフローレート(MFR)(JIS K7210)は、0.1〜1.0g/10分、好ましくは0.1〜0.6g/10分であることが好適である。MFRが0.1g/10分以上であれば、十分な耐衝撃性が得られるので好ましい。また1.0g/10分以下であれば、十分な光沢低下効果が得られるので好ましい。
【0017】
また13C−NMRで測定したコモノマー連鎖分布(CSD)は、1.0〜2.0、好ましくは1.1〜1.7が好適である。CSDが1.0以上であれば共重合体ゴム(D)の組成の交互性が増すこともなく、2.0以下であればブロック性が増加することもないので好適である。また、1.0〜2.0の範囲内であれば、結晶性ホモポリプロピレン成分である(A)成分及び(B1)成分、(C1)成分との相溶性が低下することもなく、十分な耐衝撃性改良効果が得られるので好適である。
ここで、CSDは、共重合体組成のランダム性を示すパラメータである。具体的には、CSDは、エチレン−α−オレフィン共重合体組成が完全交互共重合体であると0になり、完全ブロック共重合体であると無限大になり、ランダム共重合体であると1.0になる。CSDは、13C−NMRから求められるダイアッド連鎖によるエチレン含量(モル分率;PE)とα−オレフィン含量(モル分率;Pα)との積の2倍をエチレン−α−オレフィン交互連鎖のモル分率(PE α)の二乗で割ったものであって、下記式(II)から求められる。
CSD=((2PE・Pα)/(PE α)2) (II)
式中、PE、Pα及びPE αは、例えば、次のようにして測定される。つまり、10mmφ試料管に200mgのエチレン−α−オレフィン共重合体ゴムを1、2、4−トリクロロベンゼンと重水素化ベンゼンの混合溶媒(体積比 9:1)2ml中に均一に溶解させ、13C−NMRスペクトルを下記条件にて測定する。
装置;JNM−EX270(日本電子(株)製)
測定温度;120℃
測定周波数;100.50MHz
パルス間隔;3.8sec
積算回数;5,000回
E、Pα及びPE αは、上記のようにして測定された13C−NMRスペクトルからG.J.Ray et al, Macromolecules, 10, 773 ( 1977 ), J.C.Randall et al, Macromolecules, 15, 353 ( 1982 ), J.Polym.Sci., Polym.Phy. Ed., 11, 275 ( 1973 ), K.Kimura et al, Polymer, 25, 441 ( 1984 )らの報告に基いて求めることができる。
【0018】
<製造方法>
本発明の(D)エチレン−α−オレフィン共重合体ゴムは、例えば、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等、公知の重合方法を用いて製造され得る。また、重合に用いられる触媒としては、チタン系触媒、バナジウム系触媒又はメタロセン系触媒等を用いることができる。
【0019】
<無機フィラー(E)>
本発明で使用される無機フィラーとしては、公知の無機材料が使用できる。具体的には、例えば、タルク、カオリナイト、焼成クレー、バイロフィライト、セリナイト、ウォラストナイトなどの天然珪酸又は珪酸塩;沈降性炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの炭酸塩;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの水酸化物;酸化亜鉛、亜鉛華、酸化マグネシウムなどの酸化物;及び、含水珪酸カルシウム、含水珪酸アルミニウム、含水珪酸、無水珪酸などの合成珪酸又は珪酸塩などの粉末状フィラー;マイカなどのフレーク状フィラー;塩基性硫酸マグネシウムウィスカー、チタン酸カルシウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、セピオライト、PMF(ProcessedMineral Filler)、ゾノトライト、チタン酸カリウム、及びエレスタダイトなどの繊維状フィラー;並びに、ガラスバルン、フライアッシュバルンなどのバルン状フィラー等を用いることができる。これら無機フィラーは、単独でも2種類以上併用しても良い。本発明では、これらの中でもタルクが好ましく用いられる。
本発明で使用される無機フィラーの平均粒径は、例えば、0.10〜4.0μm、好ましくは0.20〜3.0μmであることが適当である。ここで平均粒径とは、JIS Z8820に準拠した液相沈降法で測定された粒度分布測定曲線の累積値が50%となる粒子径のことを意味する。平均粒径が0.10μm以上であれば、混練時に2次凝集を起こして機械物性を低下させることもないので好ましい。また4.0μm以下であれば、機械物性、特に耐衝撃性を低下させることもないので好ましい。
本発明で使用される無機フィラーは、例えば、平均粒径5.0μm以上の粒子の含有量が10質量%以下、好ましくは8.0質量%以下であることが好ましい。平均粒径5.0μm以上の粒子の含有量が10質量%以下であれば、粗大粒子の量が増加して機械物性、特に耐衝撃性を低下させることもないので好ましい。本発明で使用される無機フィラーのアスペクト比の平均値は、例えば、3.0以上、好ましくは4.0以上であることが機械物性向上の観点から好ましい。
本発明で使用される無機フィラーは、未処理であっても、予め表面処理されていても良い。この表面処理方法の例としては、シランカップリング剤、高級脂肪酸、脂肪酸金属塩、不飽和有機酸、有機チタネート、ポリエチレングリコールなどの表面処理剤を用いる化学的又は物理的方法が挙げられる。
【0020】
<滑剤(F)>
本発明で使用される滑剤としては、例えば、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどの脂肪族炭化水素類;カプリン類;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マーガリン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸などの高級脂肪酸類並びにこれらの金属塩類(例えばリチウム塩、カルシウム塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩);パルミチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコールなどの脂肪族アルコール類;カプロン類アミド、カプリル酸アミド、カプリン酸アミド、ラウリル酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミドなどの脂肪酸アミド類;脂肪族とアルコールとのエステル類;及び、フルオロアルキルカルボン酸またはその金属塩、フルオロアルキルスルホン酸金属塩などのフッ素化合物類が挙げられる。これらの中でも、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミドが好ましく用いられる。
【0021】
<エラストマー(G)>
本発明に係るプロピレン系樹脂組成物は本発明の目的を損なわない範囲で、上記(A)乃至(D)成分とは異なる他のエラストマーを含有してもよい。このような他のエラストマーとしては、例えば、オレフィン系エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマーを挙げることができる。
オレフィン系エラストマーとしては、例えば、オレフィンを主成分とする非晶性弾性共重合体が挙げられる。具体的には、エチレン−プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどのα−オレフィン共重合エラストマーあるいはこれらと非共役ジエンとの共重合エラストマーなどが挙げられる。
ここで、非共役ジエンとしては、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、ジシクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネンなどが挙げられる。
このようなオレフィン系エラストマーとしては、具体的には、エチレン−プロピレン共重合体エラストマー、エチレン・1−ブテン共重合体エラストマー、エチレン−プロピレン・1−ブテン共重合体エラストマー、エチレン−プロピレン・非共役ジエン共重合体エラストマー、エチレン・1−ブテン・非共役ジエン共重合体エラストマー、エチレン−プロピレン・1−ブテン・非共役ジエン共重合体エラストマーなどが挙げられる。
【0022】
スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレン類と共役ジエン化合物のブロック共重合体が挙げられる。このスチレン類としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレンなどのアルキルスチレン、p−メトキシスチレン、ビニルナフタレンおよびこれらの組合せなどが挙げられる。これらの中でもスチレンが好ましい。
共役ジエン化合物としては、ブタジエン、イソプレン、ピペリレン、メチルペンタジエン、フェニルブタジエン、3,4−ジメチル−1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエンおよびこれらの組合せなどが挙げられる。これらの中でもブタジエン、イソプレンが好ましい。
このようなスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、具体的に、スチレン・ブタジエンジブロック共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレントリブロック共重合体、スチレン・イソプレンジブロック共重合体、スチレン・イソプレン・スチレントリブロック共重合体、スチレン・ブタジエンジブロック共重合体の水素添加物、スチレン・ブタジエン・スチレントリブロック共重合体の水素添加物、スチレン・イソプレンジブロック共重合体の水素添加物、スチレン・イソプレン・スチレントリブロック共重合体の水素添加物を挙げることができる。
本発明では、スチレン系化合物から導かれる単位と共役ジエン化合物から導かれる単位の質量比が、10:90〜65:35、好ましくは20:80〜50:50であるスチレン系熱可塑性エラストマーを用いることが望ましい。
なおこのスチレン系熱可塑性エラストマーの分子構造は、直鎖状、分岐状、放射状またはこれらの組み合わせなどいずれであってもよい。
【0023】
<その他の重合体成分(H)>
また、本発明にかかるプロピレン系樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、本発明の(A)〜(D)及び(G)とは異なる重合体を含有していても良い。このような他の重合体としては、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を用いることができ、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ 1−ブテンなどのオレフィン単独重合体、又はα−オレフィン共重合体、α−オレフィンとビニルモノマーとの共重合体、無水マレイン酸変性ポリプロピレンなどの変性オレフィン重合体、ナイロン、ポリカーボネート、ABS、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリフェニレンオキサイド、石油樹脂、フェノール樹脂などを用いることができる。この中、本発明の(A)成分とは異なるMFR領域のホモポリプロピレンが最も好ましい。
【0024】
<(A)〜(H)成分の含有量>
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、上記(A)〜(D)成分並びに任意の(E)〜(H)成分を以下の含有量で含む。なお、以下に示す質量%は、特に断りがない限り、質量部で表される成分を除く他の成分、つまり、(F)成分を除く(A)〜(H)成分の合計質量に対する割合を示すものとする。また、以下に示す質量部は、質量%で示される成分、つまり、(A)〜(D)成分、並びに存在するときは(F)成分を除く(E)〜(H)成分の合計を100質量部とした場合の値である。なお、質量%で表される成分は、質量%で表される成分の合計が100質量%以下、好ましくは100質量%となるように含む。つまり、上記(F)成分を除く(A)〜(H)成分の合計は、(F)成分を除く(A)〜(H)成分の合計質量に対して100質量%以下となるように含む。
【0025】
上記ポリプロピレン(A)の含有量は、5.0〜30質量%、好ましくは10〜20質量%であることが適当である。5.0質量%以上であれば、十分な流動性が得られ、自動車内装品の製造時にショートショット、フローマーク、ウェルドラインなどの成形不具合が発生することもないので好ましい。また30質量%以下であれば、衝撃強度が低下することもないので好ましい。
上記ポリプロピレン(B)の含有量は、10〜50質量%、好ましくは15〜40質量%であることが適当である。10質量%以上であれば、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物中に十分な量のエチレン−プロピレン共重合体ゴム(B2)が存在することになり、光沢低下効果、耐傷つき性改良効果を十分に発揮できるので好ましい。また50質量%以下であれば、耐衝撃性を低下させることもないので好ましい。
【0026】
上記ポリプロピレン(C)の含有量は、5.0〜30質量%、好ましくは5.0〜20質量%であることが好適である。5.0質量%以上であれば、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物中に十分な量のエチレン−プロピレン共重合体ゴム(C2)が含まれるため、コスト高となる(G)成分のエラストマーを多量に添加することなく耐衝撃性を十分に発揮できるので好ましい。また、30質量%以下であれば、光沢低下効果に悪影響を与えることもないので好ましい。
上記エチレン−α−オレフィン共重合体ゴム(D)の含有量は、5.0〜40質量%、好ましくは10〜30質量%であることが適当である。5.0質量%以上であれば、光沢低下効果を十分に発揮させることができる。また40質量%以下であれば、十分に耐衝撃性を向上でき、また、コスト高になることもないので好適である。
上記無機フィラー(E)の含有量は、10〜30質量%、好ましくは15〜25質量%であることが適当である。10質量%以上であれば、自動車内装成形品として必要な剛性が低下することもなく、また30質量%以下であれば、耐衝撃性が低下することもないので好ましい。
上記滑剤(F)の含有量は、0.01〜2.0質量部、好ましくは0.1〜0.5質量部であることが適当である。0.01質量部以上であれば、滑剤としての効果が有意に発現し、また、耐傷付き性が低下することもないので好ましい。また、2.0質量部以下であれば、耐熱性、剛性が低下することもないので好ましい。
上記エラストマー(G)の含有量は、10質量%以下、好ましくは、1.0〜5.0質量%であることが適当である。10質量%以下であれば、コスト高になることもなく、自動車内装品としての衝撃強度を維持することができるので好適である。
上記他の重合体成分(H)の含有量は、40質量%以下、好ましくは、30質量%以下であることが適当である。40質量%以下であれば、本発明の必須成分である(A)〜(D)成分を本発明の効果が十分に発揮できる量含むことができるので好ましい。
【0027】
<その他の成分(I)>
さらに、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、上記(A)乃至(H)成分に加えて、本発明の目的を損なわない範囲で核剤、酸化防止剤、塩酸吸収剤、光安定剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、顔料、染料、分散剤、銅害防止剤、中和剤、可塑剤、発泡剤、気泡防止剤、架橋剤、過酸化物などの添加剤をその他の成分(I)として含んでいても良い。
【0028】
<核剤>
核剤としては、従来知られている種々の核剤が特に制限されることなく用いられる。中でも、芳香族リン酸エステル塩、ジベンジリデンソルビトールなどの核剤が好ましい。核剤を含有することにより、本発明のプロピレン重合体組成物の結晶化速度が向上され、結晶化時に結晶粒子を微細化することができるとともに、より高速で成形することができる。
ここで、芳香族リン酸エステル塩としては、具体的に、ナトリウム−2,2′−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2′−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、リチウム−2,2′−メチレン−ビス−(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、リチウム−2,2′−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2′−エチリデン−ビス(4−i−プロピル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、リチウム−2,2′−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、リチウム−2,2′−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、カルシウム−ビス[2,2′−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、カルシウム−ビス[2,2′−チオビス(4−エチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、カルシウム−ビス[2,2′−チオビス−(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、マグネシウム−ビス[2,2′−チオビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、
【0029】
マグネシウム−ビス[2,2′−チオビス−(4−t−オクチルフェニル)フォスフェート]、ナトリウム−2,2′−ブチリデン−ビス(4,6−ジ−メチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2′−ブチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2′−t−オクチルメチレン−ビス(4,6−ジ−メチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2′−t−オクチルメチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、カルシウム−ビス−(2,2′−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート) 、マグネシウム−ビス[2,2′−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、バリウム−ビス[2,2′−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、ナトリウム−2,2′−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2′−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム(4,4′−ジメチル−5,6′−ジ−t−ブチル−2,2′−ビフェニル)フォスフェート、カルシウム−ビス[(4,4′−ジメチル−6,6′−ジ−t−ブチル−2,2′−ビフェニル)フォスフェート]、ナトリウム−2,2′−エチリデン−ビス(4−m−ブチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、
【0030】
ナトリウム−2,2′−メチレン−ビス(4,6−ジ−メチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2′−メチレン−ビス(4,6−ジ−エチルフェニル)フォスフェート、カリウム−2,2′−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、カルシウム−ビス[2,2′−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フオスフェート]、マグネシウム−ビス[2,2′−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、バリウム−ビス[2,2′−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、アルミニウム−トリス[2,2′−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェル)フォスフェート]、アルミニウム−トリス[2,2′−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、ナトリウム−ビス(4−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−ビス(4−メチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−ビス(4−エチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−ビス(4−i−プロピルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−ビス(4−t−オクチルフェニル)フォスフェート、カリウム−ビス(4−t−ブチルフェニル)フォスフェート、カルシウム−ビス(4−t−ブチルフェニル)フォスフェート、マグネシウム−ビス(4−t−ブチルフェニル)フォスフェート、リチウム−ビス(4−t−ブチルフェニル)フォスフェート、アルミニウム−ビス(4−t−ブチルフェニル)フォスフェートおよびこれらの組合せを例示することができる。これらのうちではナトリウム−2,2′−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェートが好ましい。
【0031】
またソルビトール系核剤の具体例としては1,3,2,4−ジベンジリデンソルビトール、1,3−ベンジリデン−2,4−p−メチルベンジリデンソルビトール、1,3−ベンジリデン−2,4−p−エチルベンジリデンソルビトール、1,3−p−メチルベンジリデン−2,4−ベンジリデンソルビトール、1,3−p−エチルベンジリデン−2,4−ベンジリデンソルビトール、1,3−p−メチルベンジリデン−2,4−p−エチルベンジリデンソルビトール、1,3−p−エチルベンジリデン−2,4−p−メチルベンジリデンソルビトール、1,3,2,4−ジ(p−メチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ(p−エチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ(p−n−プロピルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ(p−i−プロピルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ(p−n−ブチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ(p−s−ブチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ(p−t−ブチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ(2′,4′−ジメチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ(p−メトキシベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ(p−エトキシベンジリデン)ソルビトール、1,3−ベンジリデン−2−4−p−クロルベンジリデンソルビトール、1,3−p−クロルベンジリデン−2,4−ベンジリデンソルビトール、1,3−p−クロルベンジリデン−2,4−p−メチルベンジリデンソルビトール、1,3−p−クロルベンジリデン−2,4−p−エチルベンジリデンソルビトール、1,3−p−メチルベンジリデン−2,4−p−クロルベンジリデンソルビトール、1,3−p−エチルベンジリデン−2,4−p−クロルベンジリデンソルビトールおよび1,3,2,4−ジ(p−クロルベンジリデン)ソルビトールおよびこれらの組合せを例示することができる。
【0032】
中でも、1,3,2,4−ジベンジリデンソルビトール、1,3,2,4−ジ(p−メチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ(p−エチルベンジリデン)ソルビトール、1,3−p−クロルベンジリデン−2,4−p−メチルベンジリデンソルビトール、1,3,2,4−ジ(p−クロルベンジリデン)ソルビトールおよびこれらの組合せが好ましい。
さらに核剤としては、芳香族カルボン酸の金属塩、脂肪族カルボン酸の金属塩を用いることができ、具体的には、安息香酸アルミニウム塩、p−t−ブチル安息香酸アルミニウム塩、アジピン酸ナトリウム、チオフェネカルボン酸ナトリウム、ピローレカルボン酸ナトリウムなどが挙げられる。またタルクなどの無機化合物を核剤として用いることもできる。
【0033】
<酸化防止剤>
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤などを用いることができる。フェノール系酸化防止剤としては、例えば2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ステアリル(3,3−ジメチル−4−ヒドロキシベンジル)チオグリコレート、ステアリル−β−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェノール)プロピオネート、ジステアリル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート、2,4,6−トリス(3′,5′−ジ−tert−ブチル−4′−ヒドロキシベンジルチオ)−1,3,5−トリアジン、ジステアリル(4−ヒドロキシ−3−メチル−5−tert−ブチルベンジル)マロネート、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4′−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス[6−(1−メチルシクロヘキシル)p−クレゾール]、ビス[3,5−ビス[4−ヒドロキシ−3−tert−ブチルフェニル)ブチリックアシド]グリコールエステル、4,4′−ブチリデンビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、ビス[2−tert−ブチル−4−メチル−6−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルベンジル)フェニル]テレフタレート、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−tert−ブチル)ベンジルイソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス[(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル]イソシアヌレート、2−オクチルチオ−4,6−ジ(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチル)フェノキシ−1,3,5−トリアジン、4,4′−チオビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール)などのフェノール類および4,4′−ブチリデンビス(2−tert−ブチル−5−メチルフェノール)の炭酸オリゴエステル(たとえば重合度2〜10)などの多価フェノール炭酸オリゴエステル類が挙げられる。
【0034】
硫黄系酸化防止剤としては、たとえばジラウリル−、ジミリスチル−、ジステアリル−などのジアルキルチオジプロピオネートおよびブチル−、オクチル−、ラウリル−、ステアリル−などのアルキルチオプロピオン酸の多価アルコール(たとえばグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート)のエステル(例えばペンタエリスリトールテトララウリルチオプロピオネート)が挙げられる。
リン系酸化防止剤としては、たとえばトリオクチルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチル−ジフエニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(ブトキシエチル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(トリデシル)−1,1,3−トリス(2−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタンジホスファイト、テトラ(C12〜C15混合アルキル)−4,4′−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4′−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)ジホスファイト、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ホスファイト、トリス(モノ・ジ混合ノニルフェニル)ホスファイト、水素化−4,4′−イソプロピリデンジフェノールポリホスファイト、ビス(オクチルフェニル)・ビス[4,4′−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)]・1,6−ヘキサンジオールジホスファイト、フェニル・4,4′−イソプロピリデンジフェノール・ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス[4,4′−イソプロピリデンビス(2−tert−ブチルフェノール)]ホスファイト、フェニル・ジイソデシルホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト)、トリス(1,3−ジ−ステアロイルオキシイソプロピル)ホスファイト、4,4′−イソプロピリデンビス(2−tert−ブチルフェノール)・ジ(ノニルフェニル)ホスファイト、9,10−ジ−ヒドロ−9−オキサ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイトなどが挙げられる。
【0035】
さらに他の酸化防止剤として、6−ヒドロキシクロマン誘導体、たとえばα、β、γ、δの各種トコフェロールあるいはこれらの混合物、2−(4−メチル−ペンタ−3−エニル)−6−ヒドロキシクロマンの2,5−ジメチル置換体、2,5,8−トリメチル置換体、2,5,7,8−テトラメチル置換体、2,2,7−トリメチル−5−tert−ブチル−6−ヒドロキシクロマン、2,2,5−トリメチル−7−tert−ブチル−6−ヒドロキシクロマン、2,2,5−トリメチル−6−tert−ブチル−6−ヒドロキシクロマン、2,2−ジメチル−5−tert−ブチル−6−ヒドロキシクロマンなどを用いることもできる。
【0036】
<塩酸吸収剤>
塩酸吸収剤としては、例えば、一般式 MxAly(OH)2x+3y-2z(A)z・aH2O(式中、MはMg、CaまたはZnであり;Aは水酸基以外のアニオンであり;x、y、zは正数であり、aは0または正数である)で示される複化合物を使用することができる。具体的には、Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O、Mg6Al2(OH)20CO3・5H2O、Mg5Al2(OH)14CO3・4H2O、Mg10Al2(OH)22(CO3)2・4H2O、Mg6Al2(OH)16HPO4・4H2O、Ca6Al2(OH)16CO3・4H2O、Zn6Al2(OH)16CO3・4H2O、Zn6Al2(OH)16SO4・4H2O、Mg6Al2(OH)16SO3・4H2O、Mg6Al2(OH)12CO3・3H2Oなどを塩酸吸収剤として用いることができる。
【0037】
<光安定剤>
光安定剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン−2,2′−ジ−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノンなどのヒドロキシベンゾフェノン類;2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ー5ークロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール類、フェニルサリシレート、p−tert−ブチルフェニルサリシレート、2,4−ジ−tert−ブチルフェニル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートなどのベンゾエート類;2,2′−チオビス(4−tert−オクチルフェノール)Ni塩、[2,2′−チオビス(4−tert−オクチルフェノラート)]−n−ブチルアミンNi、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホン酸モノエチルエステルNi塩などのニッケル化合物類;α−シアノ−β−メチル−β−(p−メトキシフェニル)アクリル酸メチルなどの置換アクリロニトリル類およびN′−2−エチルフェニル−N−エトキシ−5−tert−ブチルフェニルシュウ酸ジアミド、N−2−エチルフェニル−N′−2−エトキシフェニルシュウ酸ジアミドなどのシュウ酸ジアニリド類;ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン)セバシエート、ポリ[{(6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ}−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル{4−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン]、2−(4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジル)エタノールとコハク酸ジメチルとの縮合物、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ビペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレートなどのヒンダードアミン化合物が挙げられる。
【0038】
上記その他の成分(I)は、本発明のプロピレン系樹脂組成物100質量部に対して、0.0001質量部〜10質量部の量で用いることができる。特に、上記核剤は、プロピレン系樹脂組成物100質量部に対して、0.001〜10質量部、好ましくは0.01〜5質量部、特に好ましくは0.1〜3質量部の量で含有してもよい。本発明に係るプロピレン系樹脂組成物は、上記のようなその他の成分(I)を含有することによって、物性バランス、耐久性、塗装性、印刷性、耐傷付き性および成形加工性などが一層向上された成形体を形成することができる。
【0039】
(2)ポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法
本発明で使用されるポリプロピレン系樹脂組成物は、上記(A)乃至(D)、及び、必要に応じて(E)乃至(I)成分を均一に配合(混合)することによって製造される。この配合(混合)方法については、特に制限はなく、合成樹脂の分野において一般に行われている方法を適用することができる。配合(混合)方法としては、一般に行われているヘンシェルミキサー、タンブラーおよびリボンミキサーのような混合機を使用してドライブレンドする方法、ならびにオープンロール、押出混合機、ニーダー及びバンバリーのような混合機を用いて溶融混合する方法が挙げられる。この溶融混合する方法は、使用する樹脂が溶融する温度で実施される。好ましくは、樹脂が熱分解や劣化を起こさない程度の温度、一般には160〜350℃、好ましくは、170〜260℃で実施される。いっそう均一な樹脂組成物を得るために、これらの方法を二種以上併用してもよい。また、あらかじめドライブレンドした後、得られた混合物をさらに溶融混合してもよい。さらに、後述する成形方法によって成形物を製造するために、得られた混合物を、ペレタイザーを使用してペレットに成形としてもよい。
【0040】
(3)自動車内装成形品の製造方法
本発明で使用されるポリプロピレン系樹脂組成物は、公知の射出成形法、例えば、射出圧縮成形法、ガス注入射出成形法を使用して成形することにより、低光沢、耐傷付き性の良好な自動車内装成形品を得ることができる。ここで、射出成形は、使用する樹脂が溶融する温度、例えば、160〜350℃、好ましくは、170〜260℃で実施されることが適当である。
【0041】
【実施例】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。
[1](A)〜(C)成分の調製及び特性
[A]ポリプロピレン(A)の調製
(1)触媒の調製
以下に、ポリプロピレン(A)の調製に使用される触媒の調製法について説明する。なお、以下の触媒は、特開平09−020803号公報に記載された方法に従って調製した。
(1-1)微小長球形MgCl2.2.1C25OHの合成
タービン撹拌機及び吸引パイプを備えた2リットルオートクレーブ中に、不活性ガス中、常温で、無水MgCl248g、無水C25OH77g、及び灯油830mlを入れた。撹拌しながら内容物を120℃に加熱することにより、MgCl2とアルコールの間に生じた付加物を融解し、分散剤と混合した。オートクレーブ内の窒素圧は15気圧に維持した。オートクレーブの吸引パイプを加熱ジャケットで外部から120℃に加熱した。吸引パイプは内径が1mmで、加熱ジャケットの一端から他端までの長さが3メートルである。この吸引パイプを通して、得られた混合物を7m/secの速度で流した。吸引パイプの出口に、灯油2.5リットルを含み、初期温度を−40℃に維持したジャケットで外部から冷却されている5リットルフラスコをセットし、このフラスコ中に混合物を撹拌しながら流し入れ、混合物の分散液を採取した。分散液の最終温度は0℃であった。エマルションの分散相を構成する球状固体生成物を沈降させ、濾過して分離し、ヘプタンで洗浄して乾燥した。これらの操作は全て不活性ガス雰囲気中で行った。最大直径が50μm以下の、固体球状粒子形のMgCl2.3C25OHを130g得た。得られたMgCl2.3C25OHから、MgCl21モル当たりエタノール含有量が2.1モルに減少するまで、窒素気流中で温度を50℃から100℃に徐々に高めてエタノールを除去し、微小長球形MgCl2.2.1C25OHを得た。
【0042】
(1-2)9,9−ビス(ヒドロキシメチル)フルオレンの合成
500mlフラスコに、無水雰囲気中で、順に、CaH2上で蒸留したジメチルスルホキシド(DMSO)100ml、パラホルムアルデヒド(常温及び圧力266Pa(2torr)で8時間脱水)8g、及びエタノール6ml中に溶解させたナトリウムエチラート1.4gを入れた。この混合物を懸濁し、得られた懸濁液を氷浴で冷却した後(DMSO/EtOH混合物の融解温度は13℃である)、懸濁液を撹拌しながら、フルオレン16gのDMSO溶液100mlを30秒間かけて加えた。フルオレンのDMSO溶液を加え始めてから3分後、1.5mlの37%HClを加えて反応を停止させ、次いで水400mlで希釈した。得られた混合物にNaClを加えてNaClで飽和させ、さらに有機相として酢酸エチルを加え、9,9−ビス(ヒドロキシメチル)フルオレンを酢酸エチルで抽出した。次いで、水相から分離して得られた有機相を無水Na2SO4で除湿し、有機相を留別した。得られた有機相にトルエンを加えて9,9−ビス(ヒドロキシメチル)フルオレンを結晶化し、9,9−ビス(ヒドロキシメチル)フルオレン15.2g(収率70%)を得た。
【0043】
(1-3) 9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレンの合成
100mlフラスコに、窒素雰囲気中で、順に、テトラヒドロフラン(THF)30ml、上記で調製した9,9−ビス(ヒドロキシメチル)フルオレン11.3g、及びCH3I 31.1mlを入れた。この混合物を常温で撹拌しながら、鉱油中60質量%NaH 4gを2時間30分かけて加え、次いで内容物を1時間30分反応させた。得られた反応物を蒸留して未反応CH3Iを回収し、残りの反応物を水100mlで希釈し、得られた浮揚固体を濾過し、この浮揚固体を40℃で減圧乾燥した。得られた乾燥物をエタノールで結晶化させることにより、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレン11.3g(収率90%)を得た。
【0044】
(2)重合
特開平09−020803号公報記載の実施例1の方法に従って調製された上記微小長球形MgCl2.2.1C25OHとトリエチルアルミニウムとからなる固体触媒成分、プロピレンモノマー、及びMFRを調整するための水素を、容積290リットルのループ型重合槽に連続的に供給してポリプロピレン(A)を調製した。具体的には、次のようにした。
濾過バリヤーを備えた500ml円筒形ガラス製反応容器に、0℃で、TiCl4を225mlを加え、さらに撹拌しながら15分間かけて上記微小長球形MgCl2.2.1C25OH 10.1g(54mmol)を入れた。次いで、温度を70℃に上げ、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレン9mmolを入れた。温度を100℃に増加し、2時間後、TiCl4を濾過により除去した。得られた濾液にTiCl4200ml及び9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレン9mmolを加え、120℃で1時間加熱後、内容物を再度濾過し、得られた濾液にさらに200mlのTiCl4を加え、120℃でさらに1時間処理を続行した。最後に、内容物を濾過し、濾液から塩素イオンが完全に消失するまで60℃のn−ヘプタンで洗浄した。このようにして得た固体触媒成分は、Ti=3.5質量%、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレン=16.2質量%を含む。
予め気体状プロピレンで70℃で1時間排気した4リットルオートクレーブ中に、常温、プロピレン気流中で、アルミニウムトリエチル7mmolおよび上記のようにして製造した固体触媒成分4mgを含む無水n−ヘキサン70mlを入れた。オートクレーブを閉じ、水素1.7Nリットル及び液体プロピレン1.2kgを導入し、撹拌機を作動させ、温度を5分間で70℃に上げた。70℃で2時間後、撹拌を停止し、未重合モノマーを除去し、内容物を常温に冷却した。ポリプロピレン380gがオートクレーブから放出された。得られたポリプロピレンは、25℃における沸騰p−キシレン可溶分が2.3質量%、メルトインデックス=4.5g/10分であった。
上記のようにして得たポリプロピレンを、トリエチルアルミニウムが、プロピレンモノマー当たりのモル分率で60molppmとなるように供給し、重合圧力4.5MPa、重合温度70℃に保ち、20kg/時間の生産速度で連続的に重合を実施した。得られたホモポリプロピレン重合体は、重合槽を出てフラッシュドラムにて未反応モノマーが除去されたのち、スチームによる触媒不活性化、乾燥工程を経て、サンプルとして採取した。
重合時、系内の水素濃度が未反応プロピレンモノマーに対し8000〜15000molppmになるように水素を導入し、MFRが1500g/10分、沸騰p−キシレン可溶分が1.1質量%の結晶性ホモポリプロピレン重合体であるポリプロピレン(A-1)を得た。
重合時の系内の水素濃度を200molppmとした以外、上記ポリプロピレン(A-1)と同様にして、MFRが30g/10分、沸騰p−キシレン可溶分が1.2質量%の結晶性ホモポリプロピレンであるポリプロピレン(A-2)を得た。なお、ポリプロピレン(A-2)は、本発明の参考例である。
【0045】
[B]ポリプロピレン(B)の調製
重合に用いた固体触媒は、高立体規則性のZiegler-Natta触媒である。これは、MgCl2上に、2.5質量%のTiと内部ドナーとしてのジイソブチルフタレートとを、欧州特許第674991号に記載の方法で、担持させたものである。
(1)触媒系及び予備重合
上記固体触媒を、トリエチルアルミニウム(TEAL)とジシクロペンチルメトキシシラン(DCPMS)との混合物に、−5℃において5分間接触させた。ここで、TEAL/DCPMS=15 wt/wt、TEAL/Ti=65 mol/molである。第1段目のリアクターで重合を行う前に、ここで得られた触媒系を液化プロピレン中に懸濁し、20℃で20分間保持した。
【0046】
(2)重合
重合は、重合したポリマー成分を直ちに次のリアクターに送ることができる装置を有した2段の気相リアクターを用いて実施した。ポリプロピレンホモポリマーは、第1段目のリアクターで、プロピレンガスを上記(1)で作成した触媒系、並びに水素(分子量調整の目的で使用)と共に連続・定速で供給することによって行った。水素、及びプロピレンモノマーはリアクター内の濃度が一定になるように連続的に分析・供給した。重合温度は70℃、水素/プロピレンのフィード比率は0.06 mol/molとした。この結果、結晶性ホモポリプロピレン(B1)を得た。
第1段目のリアクターで得られた結晶性ホモポリプロピレン(B1)から未反応モノマーを一定流量で除去し、一定流量の水素、プロピレン、及びエチレンガスとともに結晶性ホモポリプロピレン(B1)を第2段目のリアクターに導入した。重合温度を60℃、(エチレン)/(エチレン+プロピレン)のフィード比率を0.39mol/mol、及び水素/プロピレンのフィード比率を0.09mol/molとし、エチレン−プロピレン共重合体(B2)を重合した。
第2段目のリアクターに存在するポリマー粒子から反応性モノマー及び揮発分を取り除くために、スチームで処理し、ポリプロピレン(B-1)を得た。
第2段目のリアクターで(エチレン)/(エチレン+プロピレン)のフィード比率を0.24mol/mol、水素/プロピレンのフィード比率を0.24mol/molとした以外、上記ポリプロピレン(B-1)と同様にして、ポリプロピレン(B-2)を得た。なお、ポリプロピレン(B-2)は、本発明の参考例である。
得られた上記ポリプロピレン(B-1)及び(B-2)の特性を以下の表1に示す。
【0047】
表1
Figure 0004041705
* MFR(メルトフローレート)は、JIS K7210に準拠し、ペレット状の試験片を用い、温度;230℃、荷重値;21.6Nで測定した。
* 沸騰p−キシレン可溶分は、沸騰p−キシレンで結晶性ホモポリプロピレン5gをソックスレー抽出し、濾液を20℃で一昼夜放置し、この濾液にアセトンを加えて析出させた析出物を濾過、乾燥し、得られた乾燥物の質量(=W1(g))を、測定して次式(I)により算出した。
沸騰p−キシレン可溶分(%)=(W1/5)×100 (I)
【0048】
[C]ポリプロピレン(C)の調製
重合に用いた固体触媒は、上記ポリプロピレン(B)と同様の、高立体規則性のZiegler-Natta触媒である。これは、MgCl2上に、2.5質量%のTiと内部ドナーとしてのジイソブチルフタレートとを、欧州特許第674991号に記載の方法で、担持させたものである。
(1)触媒系及び予備重合
上記固体触媒を、トリエチルアルミニウム(TEAL)とジシクロペンチルメトキシシラン(DCPMS)との混合物に、−5℃において5分間接触させた。ここで、TEAL/DCPMS=15 wt/wt、TEAL/Ti=65 mol/molである。第1段目のリアクターで重合を行う前に、ここで得られた触媒系を液化プロピレン中に懸濁し、20℃で20分間保持した。
【0049】
(2)重合
重合は、重合したポリマー成分を直ちに次のリアクターに送ることができる装置を有した2段の気相リアクターを用いて実施した。ポリプロピレンホモポリマーは、第1段目のリアクターで、プロピレンガスを先に作成した触媒系、並びに水素(分子量調整の目的で使用)と共に連続・定速で供給することによって行った。水素及びプロピレンモノマーは、リアクター内の各濃度が一定になるように連続的に分析・供給した。重合温度は65℃、水素/プロピレンのフィード比率は0.002mol/molとした。この結果、結晶性ホモポリプロピレン(C1)成分を得た。
第1段目のリアクターで得られた結晶性ホモポリプロピレン(C1)から未反応モノマーを一定流量で除去し、一定流量の水素、プロピレン、及びエチレンガスとともに結晶性ホモポリプロピレン(C1)を第2段目のリアクターに導入した。重合温度を75℃、(エチレン)/(エチレン+プロピレン)のフィード比率を0.25mol/mol、及び水素/プロピレンのフィード比率を0.006mol/molとし、エチレン−プロピレン共重合体(C2)を重合した。
さらに、第2段目のリアクターで得られたポリマー成分から一定流量で未反応モノマーを除去し、一定流量の水素及びプロピレンとともにこのポリマー成分を第3段目のリアクターに導入した。重合温度を75℃、及び水素/プロピレンのフィード比率を0.644mol/molとし、さらに結晶性ホモポリプロピレン(C2)を重合した。
第3段目のリアクターに存在するポリマー粒子から反応性モノマー及び揮発分を取り除くために、スチームで処理し、ポリプロピレン(C-1)を得た。
第1段目のリアクターで水素/プロピレンのフィード比率を0.01mol/mol、第2段目のリアクターで(エチレン)/(エチレン+プロピレン)のフィード比率を0.14mol/mol、水素/プロピレンのフィード比率を0.003mol/mol、第3段目のリアクターで水素/プロピレンのフィード比率を0.400mol/molとした以外、上記ポリプロピレン(C-1)と同様にして、ポリプロピレン(C-2)を得た。なお、ポリプロピレン(C-2)は、本発明の参考例である。
得られた上記ポリプロピレン(C-1)及び(C-2)の特性を以下の表2に示す。
【0050】
表2
Figure 0004041705
* MFR(メルトフローレート)及び沸騰p−キシレン可溶分は、表1と同様にして求めた。
【0051】
[2](D)〜(I)成分の入手先及び特性
以下の表3に、本発明の実施例で使用した(D)〜(I)成分の入手先及び特性をまとめる。
表3
Figure 0004041705
なお、上記表3中、CSDは、下記式(II)から求めた。
CSD=((2PE・Pα)/(PE α)2) (II)
式中、PEは、ダイアッド連鎖によるエチレン含量(モル分率)であり、Pαは、ダイアッド連鎖によるα−オレフィン含量(モル分率)であり、及びPE αは、エチレン−α−オレフィン交互連鎖のモル分率である。これらPE、Pα及びPE αの各値は、10mmφ試料管に200mgのエチレン−α−オレフィン共重合体ゴムを1、2、4−トリクロロベンゼンと重水素化ベンゼンの混合溶媒(体積比9:1)2ml中に均一に溶解させ、13C−NMRスペクトルを、JNM−EX270(日本電子(株)製)により、測定温度;120℃、測定周波数;100.50MHz、パルス間隔;3.8sec、積算回数;5,000回の条件で測定することにより求めた。
【0052】
<実施例1>
上記各成分を、表4に示す割合で混合して、実施例1のポリプロピレン系樹脂組成物を製造した。具体的には、表4に示す各成分を、ヘンシェルミキサーを用いて600rpm、2分間攪拌混合した。その後、2軸押出し機(KTX−30、神戸製鋼製)を用い、シリンダー温度;180℃、回転数;350rpm、吐出量;30kg/時間の条件で混練、造粒して実施例1のポリプロピレン系樹脂組成物を製造した。
<実施例2〜及び比較例〜3>
上記各成分を、表4に示す割合で混合した他は、上記実施例1と同様の方法により、実施例2〜及び比較例〜3のポリプロピレン系樹脂組成物を製造した。
【0053】
【表1】
Figure 0004041705
【0054】
<評価>
(1)物性評価
上記実施例及び比較例のポリプロピレン系樹脂組成物の機械物性測定用試験片を作成し、物性評価を行った。試験片は、射出成形機(Funac α100C、(株)ファナック製)及び試験片金型を用い、シリンダー温度;200℃、金型温度;40℃、射出圧力;50MPa、冷却時間;20秒の成形条件にて作製した。得られた試験片を使用して、以下の物性試験を行った。
▲1▼曲げ弾性率
得られた試験片(12.7(幅)×4.0(厚み)×127mm(長さ))の曲げ弾性率を、JIS K7171に準拠し、温度;23℃、スパン間;60mm、曲げ速度;2.0mm/分の条件で測定した。なお、曲げ弾性率は、1800MPa以上、好ましくは、2000MPa以上であることが好適である。
▲2▼アイゾッド衝撃試験
得られた試験片のアイゾッド衝撃値を、更に機械切削にてノッチ加工して得た試験片(12.7(幅)×4.0(厚み)×64mm(長さ))を用いて、JIS K7110に準拠して測定を行った。なお、アイゾット衝撃値は、10kg/m2以上、好ましくは、13kg/m2以上であることが好適である。
▲3▼荷重たわみ温度
得られた試験片(12.7(幅)×6.4(厚み)×127mm(長さ))の荷重たわみ温度を、JIS K7191に準拠し、荷重値;0.46MPa、温度;30〜160℃、昇温速度;2℃/分の条件で測定した。なお、荷重たわみ温度は、100℃以上、好ましくは、110℃以上であることが好適である。
【0055】
(2)スパイラル流動長
上記実施例及び比較例のポリプロピレン系樹脂組成物の流動性を評価するために、スパイラル流動長を射出成形機(J100E−P、日本製鋼製)、及び厚さ3mmのスパイラルフロー金型を用いて測定した。具体的には、スパイラルフロー金型での流動長を、シリンダー温度;170℃、金型温度;40℃、射出圧力;93MPa、冷却時間;20秒の条件で測定した。流動長が80cm以上、好ましくは、90cm以上であれば、ポリプロピレン系樹脂組成物の流動性が良好であるといえる。
(3)外観評価(その1)
上記実施例及び比較例のポリプロピレン系樹脂組成物の試験平板を作成し、外観評価を行った。試験平板は、IS150射出成形機(東芝機械製)を用い、シリンダー温度;210℃、金型温度;40℃、射出時間;11秒、冷却時間;20秒の成形条件にて作製した。得られた試験平板(300(縦)×140(横)×3mm(厚み))を使用して、以下の外観評価を行った。
▲1▼光沢値
得られた試験平板の光沢値を、JIS K7105に準拠し、入射光と反射光の角度60°で測定した。光沢値は、30%以下、好ましくは、28%以下であることが好適である。
▲2▼フローマークの評価
IS150射出成形機(東芝機械製)にて成形される本発明のポリプロピレン系樹脂組成物の平板を観察して、フローマークの評価を、ゲートからフローマークが発生し始めるまでの位置と、目視によるフローマークの目立ち具合とから行った。評価は、発生位置と目視評価との積で判定した。この積が90以上であれば、本発明の自動車内装成形品として好適である。なお、目立ち易さは、以下の4段階で評価した。
4;フローマークなし或いは極めて目立ちにくい。
3;フローマーク目立ちにくい。
2;フローマークやや目立つ。
1;フローマーク目立つ。
【0056】
(4)外観評価(その2)
上記実施例及び比較例のポリプロピレン系樹脂組成物の外観性能を評価するために、ダイスウェル比を測定した。ダイスウェル比は、せん断速度γ=200s-1のオリフィス内径に対するダイスウェル比を、キャピラリレオメータ(Capirograph 1B、(株)東洋精機製作所製)を用いて測定した。具体的には、シリンダー温度;210℃、L(オリフィスの長さ)/D(オリフィスの内径)=40、せん断速度;50〜50,000s-1まで変化させて測定した。せん断速度;200s-1におけるダイスウェル比が、1.15以上、好ましくは、1.20以上であれば、ガス排出性、金型密着性が良好になり、シボ転写性が向上するので、本発明の自動車内装成形品として好適な外観特性を有することになる。
【0057】
(5) 耐傷付き性評価
上記実施例及び比較例のポリプロピレン系樹脂組成物の試験平板を作製し、耐傷付き性評価を行った。試験平板は、IS150射出成形機(東芝機械製)を用い、シリンダー温度;210℃、金型温度;40℃、射出時間;11秒、冷却時間;20秒の成形条件にて作製した。金型は、#540シボ入りの300(縦)×140(横)×3mm(厚み)(棚澤八光社製)を使用した。評価はこの平板を用いて、下記ツメ治具を使用し、下記傷付き条件で短冊状に1mmピッチで傷を付けて、一般部との光沢の増減を5人のモニターによる目視判定により評価を行った。判定基準は5人のモニターの評点を平均して3点以上を合格とした。
<ツメ治具>
【0058】
〔図1〕
Figure 0004041705
【0059】
<傷付き条件>
荷重:500g
速度:550mm/分
ストローク:50mm
ピッチ送り:180度回転(1.0mm)
引っ掻き回数:17本(幅17mm)以上
<判定基準及び評点>
5点;光沢増加が全く認められない。
4点;光沢増加がわずかに認められる。
3点;光沢増加が認められる。
2点;光沢増加が著しく認められる。
1点;光沢増加が特に著しく認められる。
上記(1)〜(5)の評価の結果を表5に示す。
【0060】
【表2】
Figure 0004041705
【0061】
【発明の効果】
上述のように、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、高いメルトフローレイトを有する結晶性ホモポリプロピレンを基材として使用することにより、射出成型時の流動性を高め、エチレン−α−オレフィン共重合体ゴムを使用することにより、耐衝撃性の面で基材である上記結晶性ホモポリプロピレンの物性を補助し、これに、結晶性ホモポリプロピレンとエチレン含有量の異なるエチレン−プロピレン共重合体ゴムとを含む2種類の結晶性エチレン−プロピレン共重合体を加えることにより、結晶性ホモポリプロピレンとの相溶性を保ちつつ光沢性、キズ付防止性及び耐衝撃性のバランスを達成するという、これまでにない組み合わせに基づく新規な組成物である。本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、優れた成形性(射出成形、射出圧縮成形、ガスアシスト成形)と物性バランスを有している。また、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物からなる成形品は、外観、低光沢性、耐傷付き性に優れている。従って、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、特に低光沢性と耐傷付き性が要求される家電製品、OA機器、オートバイ、自動車、航空機等の内装成形品の材料として好適である。

Claims (7)

  1. ポリプロピレン(A)
    230℃、21.6N荷重のメルトフローレートの測定においてMFRが500〜
    3,000g/10分、沸騰p−キシレン可溶分が6.0質量%以下の結晶性ホモポ
    リプロピレン、5.0〜30質量%;
    ポリプロピレン(B)
    結晶性ホモポリプロピレン(B1)と、135℃デカリン中の極限粘度が4.0〜7
    .0dl/g、エチレン含有量が45質量%以上80質量%以下であるエチレン−プ
    ロピレン共重合体ゴム(B2)とからなり、該エチレン−プロピレン共重合体ゴム(B2)
    を少なくとも10質量%含むポリプロピレン、10〜50質量%;
    ポリプロピレン(C)
    結晶性ホモポリプロピレン(C1)と、135℃デカリン中の極限粘度が5.0〜1
    0dl/g、エチレン含有量が25質量%以上45質量%未満であるエチレン−プロ
    ピレン共重合体ゴム(C2)とからなり、該エチレン−プロピレン共重合体ゴム(C2)を
    少なくとも10質量%含むポリプロピレン、5.0〜30質量%;及び
    エチレン−α−オレフィン共重合体ゴム(D)
    230℃、21.6N荷重のメルトフローレートの測定においてMFRが0.1〜
    1.0g/10分であり、エチレン含有量が50質量%以上80質量%以下であり、
    及び、13C−NMRで測定したコモノマー連鎖分布が1.0〜2.0であるエチレン
    −α−オレフィン共重合体ゴム、5.0〜40質量%;及び
    ( ) 無機フィラー、10〜30質量%、
    を含むポリプロピレン系樹脂組成物からなり、
    さらに、
    ( ) 乃至 ( ) 成分の合計100質量部に対し、(F)滑剤、0.01〜2.0質量部を含むポリプロピレン系樹脂組成物からなることを特徴とする、自動車内装成形品。
  2. (E)成分がタルクである、請求項に記載の自動車内装成形品。
  3. (F)成分が脂肪酸アミド又はその誘導体である、請求項又はに記載の自動車内装成形品。
  4. JIS K7171に基づいて測定した曲げ弾性率の値が1,800MPa以上であり、JIS K7110に基づいて測定した10℃でのアイゾッド衝撃値の値が10kJ/m2以上であり、JIS K7191に基づいて測定した0.46MPaの荷重値での荷重たわみ温度が100℃以上である、請求項1乃至のいずれかに記載の自動車内装成形品。
  5. シリンダー温度170℃、射出圧力93MPaの射出成形条件において厚み3mmのスパイラルフロー金型での流動長が80cm以上である、請求項1乃至のいずれかに記載の自動車内装成形品。
  6. シリンダー温度210℃、L/D=40のキャピラリーを用いたキャピラリーレオメーターにおいてせん断速度γ=200s-1におけるダイスウェル比が1.15以上である、請求項1乃至のいずれかに記載の自動車内装成形品。
  7. JISK7105に基づいて測定した入射光と反射光の角度60°の光沢値が30%以下である、請求項1乃至のいずれかに記載の自動車内装成形品。
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