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JP3938405B2 - 水和物の形成を抑制する方法 - Google Patents

水和物の形成を抑制する方法 Download PDF

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Description

技術分野
本発明は、流体中におけるクラスレート水和物の形成を抑制する方法に関するものである。より具体的には、本発明は、オイル又はガスを運搬するのに用いるパイプ中におけるガス水和物の形成を抑制する方法に関するものである。
技術背景
二酸化炭素、硫化水素及び種々の炭化水素(メタン、エタン、プロパン、ノルマルブタン及びイソブタン等)が、天然ガス中及び他の石油流体中に存在する。しかしながら、一般に、水が、種々の量で、そのような石油流体成分と混合して見出される。高圧及び低温の条件下で、クラスレート水和物が、そのような石油流体成分又は他の水和物形成体と水との混合時に形成され得る。クラスレート水和物は、水和物形成性炭化水素又はガス等のゲスト分子の周囲にかご状構造を形成する水の結晶である。水和物形成性炭化水素類には、メタン、エタン、プロパン、イソブタン、ブタン、ネオペンタン、エチレン、プロピレン、イソブチレン、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン及びベンゼンが含まれるが、これらに限定される訳ではない。水和物形成性ガスには、酸素、窒素、硫化水素、二酸化炭素、二酸化硫黄及び塩素が含まれるが、これらに限定されない。
ガス水和物結晶又はガス水和物は、天然ガス及び他の石油流体の生成及び/又は輸送の間にそれらが形成するパイプライン閉塞のために、石油工業界には興味深い一群のクラスレート水和物である。例えば、エタンは、約1MPaの圧力では4℃未満の温度で、3MPaの圧力では14℃未満の温度で、ガス水和物を形成する。そのような温度及び圧力は、天然ガス及び他の石油流体が生成及び輸送される多くの作業環境について、一般的でないとはいえない。
ガス水和物が凝集すると、それらは、天然ガス又は他の石油流体を生成及び/又は輸送するのに使用するパイプ又は導管中に水和物閉塞を形成し得る。そのような水和物閉塞の形成により、生成が停止され、従って、実質的な経済損失が生じ得る。更に、水和物閉塞を安全に除去するために有効な時間、エネルギー及び材料並びに種々の工業的装置が必要とされるため、停止した設備(特に、海外での生産又は輸送設備)の再スタートは困難である可能性がある。
オイル又はガス流中における水和物閉塞の形成を防止するために、種々の処置が、オイル及びガス工業において行われている。そのような処置には、温度及び/又は圧力を水和物形成条件外に維持すること、及びメタノール、エタノール、プロパノール又はエチレングリコール等の不凍液を導入することが含まれる。工業的観点から、温度及び/又は圧力を水和物形成条件外に維持するには、設計及び装置の変更(断熱した又はジャケットを装備した配管等)が必要である。そのような変更は、実行しかつ維持するのに費用がかかる。水和物による閉塞を防止するのに必要とされる不凍液の量は、典型的には、オイル又はガス流中に存在する水の10〜30重量%である。従って、そのような溶剤は、1日あたり数千ガロン必要とされる可能性がある。そのような量は、取扱う上で、ハンドリング、貯蔵、回収及び潜在的毒性についての問題がある。更に、これらの溶剤は、生成又は輸送流から完全に回収するのが困難である。
従って、生成又は輸送石油流体中において低濃度で有利に混合可能なガス水和物抑制剤が必要とされている。そのような抑制剤により、石油流体流中におけるガス水和物結晶の核形成、成長及び/又は凝集が低減されるべきであり、それにより石油流体流を運搬するパイプ中における水和物閉塞の形成が抑制されるべきである。
本発明を実施する方法の1つでは、オイル又はガス流中に存在する水の約0.01〜約5重量%の濃度範囲で使用可能なガス水和物抑制剤を用いる。以下でより十分に述べるように、本発明の抑制剤により、水相を有する石油流体を効果的に処理することができる。
発明の概要
本発明により、水和物形成成分を有する流体中におけるクラスレート水和物の形成を抑制する方法を提供する。その方法には、少なくとも2種のペンダント基を有するを有するポリマー主鎖を有する実質的に水溶性のポリマーを含む抑制剤を用いて、その流体を処理することが含まれ、ここで、その第1のペンダント基は、炭素、窒素及び酸素からなる群から選択された原子を少なくとも2種有し、その第2のペンダント基は、C1-3のアルキル基であり、該ポリマーの平均分子量は、約1,000〜6,000,000である。好ましくは、第2のペンダント基は、メチル基である。
発明の詳細な発明
本発明の方法
本発明の方法により、水和物形成成分を有する流体中におけるクラスレート水和物の形成を抑制する。クラスレート水和物の形成とは、クラスレート水和物の核形成、成長及び/又は凝集を意味する。そのようなクラスレート水和物は、流れている又は実質的に静止している流体中において形成され得るが、パイプ中で運ばれる流体流が流れる際に最も問題となることが多い。例えば、流体流中における部分的な又は完全な閉塞による流れの制限は、クラスレート水和物が、その流体を運ぶために使用されるパイプの内壁に付着し又は凝集した時に生じ得る。尚、本発明は、実質的に静止状態の流体中におけるクラスレート水和物の形成を抑制するために使用することもできる。
本発明の1つの態様においては、以下に記載のタイプの抑制剤1種以上の濃縮溶液又は混合物を、水性相を有する石油流体流中に導入する。本発明の抑制剤溶液又は混合物が、実質的に水性相中に溶解され又は流体流中に分散されると、それにより、クラスレート水和物が形成される割合が低減され、それにより、流動性が制限される程度が低減される。
好ましい態様においては、固体ポリマーを、最初に、適切なキャリアー溶剤又は液体中に溶解して、濃縮溶液又は混合物を製造する。抑制剤を溶解することなく、流体流の処理を効果的に促進し得る液体も数多くあると考えられる。便宜上、そのような液体を、これ以降、抑制剤溶液、エマルション又は他のタイプの混合物を生成する溶剤として言及する。溶液の主な目的は、抑制剤のキャリアーとして作用すること、及び石油流体の水性相中への抑制剤の吸収を促進することである。抑制剤を流体の水性相に運ぶのに適する如何なる溶剤をも使用することができる。そのようなキャリアー溶剤には、水、ブライン、海水、生成水(produced water)、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、グリコール、及びそのような溶剤の混合物があるが、それらに限定される訳ではない。当業者に知られている他の溶剤を使用してもよい。
キャリアー溶剤の使用は、本発明に必須のものではないが、それは、抑制剤を流体に導入するのに有利な方法であると理解されるべきである。多くの用途において、キャリアー溶剤の使用により、流体流の処理が促進されるであろう。
石油流体の水性相中において所望の最終濃度が得られる限り、キャリアー溶剤中における抑制剤の濃度は、いかなるものであってもよい。高濃度であるのが好ましく、なぜなら、それらにより、取り扱う、及び石油流体中に導入する濃縮溶液の量が低減されるからである。特定の用途において使用する実際の濃度は、選択するキャリアー溶剤、抑制剤の化学的組成、システムの温度、適用条件でのキャリアー溶剤中における抑制剤の溶解性に依存して変動するであろう。
抑制混合物は、機械装置(化学的注入ポンプ、Tパイプ(piping tee)、注入部品(injection fitting)等)、及び当業者には明らかであろう他のデバイスを用いて、石油流体の水性相中に導入する。しかしながら、そのような装置は、本発明に必須のものではない。抑制剤混合物を用いて石油流体を十分有効に処理することを確実なものにするためには、2つのポイントが考えられるべきである。
まず、第1に、好ましくは、抑制剤溶液が流体中に導入される位置に水性相が存在するべきである。数種の石油流体システム(特に天然ガスシステム)中においては、水が凝縮するのに十分な程度にそのガスが冷却されるまで、水性相は現れない。この場合には、好ましくは、抑制剤溶液を、水が凝縮した後に導入する。あるいはまた、抑制剤溶液を導入する際に水性相が存在しない場合、抑制剤溶液の濃度の選択は、抑制剤溶液の粘度が、その抑制剤の流体中への分散が促進され、抑制剤が水性相にまで達するのに十分な程度にまで低いものであることが確実なものとなるようにすべきである。
第2に、抑制剤は、クラスレート水和物の形成を元に戻すというよりは、主にその形成を抑制する作用をするので、クラスレート水和物の実質的な形成の前にその流体を処理することが重要である。湿潤(wet)石油流体が冷却されると、最終的に、水和物平衡解離温度(hydrate equilibrium dissociation temperature)即ちTeqとして知られる温度(それ以下の温度では、水和物の形成が、熱力学的に支持される温度)まで達するであろう。石油流体のTeqは、流体に印加される圧力及びその流体の組成の変化に従って変動するであろう。種々の流体組成及び圧力で流体のTeqを測定する種々の方法は、当業者に周知である。好ましくは、流体は、そのTeqよりも高い温度にある時に、抑制剤を用いて処理すべきである。好ましいという訳ではないが、温度が流体のTeq又はそれよりわずかに低い時に、抑制剤を導入してもよい(好ましくは、水和物が形成され始める前に行う)。
水性相溶剤を用いて石油流体中に導入する抑制剤の量は、典型的には、その流体中に存在する水の約0.01〜約5重量%の間で変動するであろう。好ましくは、抑制剤の濃度は約0.5重量%である。例えば、実験的研究により、0.5重量%のN−メチル−N−ビニルアセトアミドとメタクリロイルピロリジンのコポリマー(VIMA/MAPYD)を石油流体に添加することにより、水和物による閉塞の形成なしに、Teqより約16.4℃低い温度まで流体を冷却することができることが示された。高い抑制剤濃度を使用して、水和物による閉塞が生じる温度を降下させることができる。しかしながら、特定の適用についての適切な濃度は、そのような適用条件下での抑制剤の性能、石油流体に必要とされる抑制の程度、及び抑制剤の費用を考慮して、当業者が決定し得る。
抑制剤の説明
本件明細書に記載の用語“ホモポリマー”には、同一のモノマー性繰り返しユニットを有するポリマーが含まれ、他方、用語“コポリマー”には、異なる2種以上のモノマー性繰り返しユニットを有するポリマーが含まれる。従って、用語“ポリマー”には、ホモポリマー、コポリマー及びポリマー混合物を含む全てのタイプのポリマーが含まれる。
以下に記載のアルキル化主鎖を有する実質的に水溶性のポリマーの群に属する化合物及びそれらの混合物は、水和物の核形成、成長及び/又は凝集(水和物の形成と総称する)の抑制剤として有効である。そのようなアルキル化された主鎖ポリマーは、他の実質的に水溶性のポリマーと混合して使用することができ、それらには、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルカプロラクタム)、ポリアクリルアミド、ビニルピロリドンとビニルカプロラクタム及び/又はアクリルアミドとのコポリマー、ポリ(N−メチル−N−ビニルアセトアミド)、N−メチル−N−ビニルアセトアミドとイソプロピルメタクリルアミドとのコポリマー、N−メチル−N−ビニルアセトアミドとアクリロイルピペリジンとのコポリマー、N−メチル−N−ビニルアセトアミドとメタクリロイルピロリジンとのコポリマー、及びN−メチル−N−ビニルアセトアミドとアクリロイルピロリジンとのコポリマーが含まれるが、これらに限定される訳ではない。
本発明を制限するためでなく、本発明を説明するために記載するが、アルキル化主鎖を有する、種々の水溶性アクリルアミド及びオキサゾリンポリマーを評価したが、それらには、以下のものが挙げられる:ポリ(イソプロピルメタクリルアミド)(PiPMAM)のホモポリマー、ポリ(2−イソ−プロペニル−2−オキサゾリン)(PiPpenOx)のホモポリマー、N−メチル−N−ビニルアセトアミドとイソプロピルメタクリルアミドとのコポリマー(VIMA/iPMAM)、N−メチル−N−ビニルアセトアミドとメタクリロイルピロリジンとのコポリマー(VIMA/MAPYD)及びEPOCROS(登録商標)WS−300である、メチルメタクリレートとエチルアクリレートとイソ−プロペニルオキサゾリンとのターポリマー(日本触媒製)。
ポリ(イソ−プロピルメタクリルアミド)
Figure 0003938405
N−メチル−N−ビニルアセトアミドとイソ−プロピルメタクリルアミドとのコポリマー
Figure 0003938405
N−メチル−N−ビニルアセトアミドとメタクリロイルピロリジンとのコポリマー
Figure 0003938405
ポリ(2−イソ−プロペニル−2−オキサゾリン)
Figure 0003938405
メチルメタクリレートとエチルアクリレートとイソプロペニルオキサゾリンとのターポリマー
Figure 0003938405
ガス水和物抑制剤として有効である他の、実質的に水溶性のポリマーは、また、それらの主鎖をメチル化することにより、改良された抑制作用を示すことが期待される。そのようなポリマーとしては、ビニルラクタム(ポリ(N−ビニルピロリドン)(PVP)及びポリ(N−ビニルカプロラクタム)(PVCap)等)、N−ビニルアミド(ポリ(ビニルアセトアミド)(PVIMA)及びポリ(N−ビニル−N−n−プロピルプロピオンアミド)(PVPP)等)、マレインイミド(ポリ(エチルマレインイミド)(PEME)及びポリ(シクロヘキシルマレインイミド)(PCHME)、並びにそのようなビニルラクタムとN−ビニルアミドとマレインイミドとのコポリマーが挙げられる。上記で具体的に記載したもの以外についても、アルキル化ポリマー主鎖を有する、他のアクリルアミド及びオキサゾリンのホモポリマー及びコポリマーが、改良された抑制作用を示すことが期待される。
抑制剤の合成
一般的手順
N−メチル−N−ビニルアセトアミド(VIMA)は、商業的に入手可能であり、又は公知の手順に従って、合成することができる(例えば、A. I. AskenovらのZhurnal Obschei Khimii, 57(2), pp. 1634-1637(1987)を参照されたい)。以下に記載した、種々のVIMAコポリマーを合成するのに使用するビニルモノマーの多くが、商業的に入手可能なものである。入手不可能であったアクリルアミドモノマーは、適切なアミン及びアクリロイル塩化物から、公知の手順に従って、合成した(例えば、S. Ito, Kobunshi Ronbunshu, 46(7), pp. 437-443(1989)を参照されたい)。ポリ(イソ−プロピルアクリルアミド)(PiPAM)は、メチル化主鎖を有しないが、比較のために評価した。PiPAMは、モノマーポリマーラボラトリーズ(Windham, NH)から得た。ポリ(2−イソ−プロペニル−2−オキサゾリン)(PiPpenOx)は、日本触媒(日本、東京)から得た。
当業者に公知の標準的な実験手順を用いて、上述の評価ポリマー及びコポリマーを合成した。ベンゼン又は低級アルコールを、溶剤として用いた。2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)(AIBN)を、遊離ラジカル開始剤として用いた。ポリマーを単離し、当業者には周知の技術(13C及び1H NMR及びゲル透過クロマトグラフィー)を用いて解析して、それらの構造を確認した。上述のものに類似する他のポリマー及びコポリマーを合成するのに適し得る合成手順の例をいくつか以下に記載する。
他のN−ビニルアミドモノマーの重合
他のN−ビニルアミドモノマーを用いて、N−ビニルアミドホモポリマー(例えばPVPP)の高類似物(higher analog)を、ポリマー合成の当業者に公知の文献に記載の手順に従って、生成することができる(例えば、A. I. AskenovらのZhurnal Obschei Khimii, 57(2), pp. 1634-1637(1987)、Hartwimmerらの米国特許第3,531,471号、及びLedererらの米国特許第3,696,085号を参照されたい)。
ポリ(イソ−プロピルメタクリルアミド)(PiPMAM)とポリ(イソ−プロピルアクリルアミド)(PiPAM)との重合
出発材料:N−イソ−プロピルメタクリルアミド(アルドリッチ)を、2回、ヘキサンによる再結晶化を行うにより、精製した。その後、蒸留した脱イオン化水を、1時間沸騰させながら、窒素を用いてパージすることにより、脱酸化させた。パージは、水を室温にまで冷却しながら継続した。開始剤、過硫酸アンモニウムは、受け入れたままで使用した。
PiPMAM合成手順:N−イソ−プロピルメタクリルアミド(6.4g、50.3ミリモル)を、凝縮器、温度計、機械的攪拌器及び窒素入口/出口を備えた四つ口フラスコに入れた。その後、122gのパージ水の添加を攪拌しながら行い、その溶液を、反応温度を60℃に上昇させながらパージした。その溶液がその温度に達した時に、過硫酸アンモニウム(61mg、0.267モル)を添加した。反応を、攪拌しながら、窒素下において60℃で一晩継続させた。重合が進むと、溶液が濁った(turbid)。翌日、その濁った溶液を、商業的に入手可能な凍結乾燥器において、その製造業者により提供された支持に従って凍結乾燥した。乾燥ポリマーを、最小量のメタノール中に溶解し、ジエチルエーテル中に沈殿させた。ポリマーを、その後、濾過し、再溶解させ、沈澱手順を繰り返した。単離されたポリマーを、一晩かけて、減圧オーブ中において、60℃で10-3トルで乾燥させた。この材料の1H及び13C NMRスペクトルについては、PiPMAMのものと一致していた。
ポリ(イソ−プロピルアクリルアミド)(PiPAM)を製造し、PiPMAMに関連して上記に記載した手順と実質的に同様の手順により解析した。
N−メチル−N−ビニルアセトアミド(VIMA)と置換アクリルアミドとの共重合
一般に、VIMAとアクリルアミド(特にN−置換(又はN,N−ジ置換)アクリルアミド)との共重合反応は遅い。従って、2種のモノマーをバッチ共重合において共に充填(charge)する場合には、N−置換アクリルアミドがある程度重合して、ホモポリマー、又は少なくともアクリルアミドが非常に多いコポリマーとなると考えられる。この問題を軽減するために、ポンピングプロセス(pumping process)を用いて、VIMAが実質的にコポリマーに導入されることを確実なものとする。一般には、VIMAは、開始剤と共に、反応器に充填する。“急速(faster)”反応モノマーであるN−置換アクリルアミドは、VIMA溶液中にポンピング(pump)する。最適添加時間は、コモノマーの相対(relative)反応をベースとする。本件の目的のためには、2〜4時間のポンピング時間が適切なものである。VIMA/iPMAMコポリマーを生成するためのN−メチル−N−ビニルアセトアミド(VIMA)とN−イソ−プロピルメタクリルアミド(iPMAM)との共重合についてのこの手順の例を以下に記載する。
N−メチル−N−ビニルアセトアミド(VIMA)とN−イソ−プロピルメタクリルアミド(iPMAM)との共重合
N−イソプロピルメタクリルアミドを、アルドリッチから購入し、ヘキサンにより、2回、再結晶化(recrystallize)した。無水ベンゼンを、アルドリッチから購入し、更なる精製なしに使用した。トランスファー(transfer)の全てのものは、不活性雰囲気下において行った。N−メチル−N−ビニルアセトアミドを、アルドリッチから購入し、分別蒸留により精製した。AIBNをメタノールにより再結晶化した。
VIMA(8.43g(0.066モル))を商業的に入手可能な抑制剤除去カラム(inhibitor removal column)に通し、ベンゼン(45ml)に溶解させた。この溶液を、凝縮器、攪拌器、窒素入口/出口、及びiPMAMがポンピングされる口を備えた三つ口フラスコに入れた。VIMA/ベンゼン溶液を、更にN2を用いて30分間パージした。iPMAM溶液(ベンゼン90ml中の6.57g(0.663モル))を30分間パージし、その後、シリンジポンプに入れた。VIMA溶液を含む反応がまをパージした後、60℃にした。AIBN溶液(2ccのベンゼン中の0.115g)をVIMA溶液に入れることにより、反応を開始させた。その後、iPMAM溶液を更に2時間30分間ポンピングした。ポンピング終了後、反応混合物を、窒素下で攪拌しながら60℃で維持した。翌日、それを、過剰量のヘキサン中に沈殿させ、最小量のTHF中に再溶解させ、その後、ヘキサン中に再沈殿させた。その後、サンプルを、減圧下、60℃で10-3トルで乾燥させた。精製コポリマーの最終的な収量は、6g(40%)であった。13C NMRにより、VIMA/iPMAM比が13/87であることが示された。
抑制剤の評価
ミニループ(mini-loop)試験手順
抑制剤の有効性を評価する方法では、ミニループ装置として言及する卓上規模高圧装置を用いる。ミニループ装置は、内径約0.5インチ(約1.27センチ)で長さ約10フィート(304.8センチ)のステンレス鋼チューブのループから構成される。そのループは、また、該ループ中において流体の流れを観察するための、及び該ループ中において水和物の形成の開始を観察するための透明部分を有する。合計で約3.5%のイオン化された塩を含むSSW(合成海水)溶液約40容量%、炭化水素凝縮物(即ちC6 +)約40容量%、及び炭化水素ガス混合物20容量%を含む流体を、一定圧力で、そのループ中において循環させる。炭化水素ガス混合物は、メタン約76モル%、エタン約9モル%、プロパン約7モル%、n−ブタン約5モル%、イソ−ブタン約2モル%、及びC5 +約1モル%を含む。典型的には、抑制剤を水溶液としてループ中に注入して、水性海水塩/ガス溶液中の抑制剤の重量%濃度を所望のものとする。一般に、多くの水和物抑制剤は、水性海水塩/ガス溶液約0.5重量%で評価される。
流体は、約2.5フィート(約76センチ)/秒の一定速度で循環させる。ループ及びそのポンプは、該ループ中を循環する流体の温度を制御するために、温度調節された水浴中に入れる。水を循環させて、均一な浴中温度、及び浴からループへの間の急速な熱伝導を確実なものとする。ループの温度が変化すると又は水和物が形成されると、それにより、ループ中のガス容量が変化すると考えられる。従って、ループ中において一定の圧力を維持するためには、圧力補償デバイスが必要とされる。そのようなデバイスは、浮動ピストンにより分離されたガスセル及び作動油セル(hydraulic oil cell)を含んでいてもよい。ループ中のガス容量が変化するならば、油を添加し又は油セルから除去して、該ループに対してガスの比例(commensurate)添加又は除去を施すことができる。ミニループ試験は、典型的に、1平方インチゲージあたり約1,000ポンド(約4535kg)(p.s.i.g.)の圧力で行うことができる。しかしながら、抑制剤の性能評価のためには、0〜3,000p.s.i.g.の間の如何なる圧力を用いてもよい。
水浴の温度は、一定速度、好ましくは1時間あたり約6°F(又は3.3℃)で、初期温度約70°F(即ち約21℃)から降下させる。ある温度で、クラスレート水和物が急速に形成され始める。溶解ガスが使用されて、クラスレート水和物が形成されると、水性海水塩/ガス溶液中における溶解ガス容量の急速な低減が生じる。溶解ガスの容量についてのこの急速な低減が観察される温度は、水和物形成開始温度(Tos)として知られる。上述の記載の繰り返しだが、水和物平衡解離温度、即ちTeqは、それ以下の温度では、抑制剤を含まない水性海水塩/ガス溶液中における水和物の形成が熱力学的に支持されるという温度である。従って、抑制剤の有効性の他の評価は、抑制剤の過冷(subcooling)温度Tsubとして知られる、TeqとTos間の差である。従って、所定の圧力について、過冷温度が高くなればなるほど、抑制剤の有効性が高くなる。典型的には、抑制剤が存在しない水性海水塩/ガス溶液により、約6〜7°F、又は3.3〜3.9℃のTsubが生じる。
以下の表1の過冷結果は、全て、上述の試験流体組成物を用いて、1,000psigで得られたものである。従って、以下の抑制剤性能結果と他の抑制剤とを比較するためには、そのような他の抑制剤は、類似の試験条件下で、特に、該試験を行った条件下での試験流体組成及び圧力に注意を払い評価すべきである。
ミニループ試験の結果
本発明を制限するためでなく、本発明を説明するために記載するが、メチル化主鎖を有する種々のホモポリマー及びコポリマーを、上述のミニループ試験手順を用いて評価した。これらの評価の結果を以下に記載する。
Figure 0003938405
表1に記載の結果から、アルキル化主鎖を有する水溶性ポリマーが、クラスレート水和物抑制剤として有効なものであることが示される。主鎖をアルキル化することにより、種々の水溶性ポリマーの水和物抑制作用が強化されると考えられる。非アルキル化主鎖を有するポリマーとアルキル化主鎖を有するポリマーの過冷結果を比較すると、PiPAM(非アルキル化)が20.0°F(11.1℃)の過冷温度を有するのに対して、PiPMAM(メチル化)についての過冷温度は24.0°F(13.3℃)であり、また、VIMA/iPAM(非アルキル化)が24.0°F(13.3℃)の過冷温度を有するのに対して、VIMA/iPMAM(メチル化)についての過冷温度は29.0°F(16.1℃)であることが分かる。また、VIMA/APYD(非アルキル化)が、約30:70の場合には26.0°F(14.4℃)の平均過冷温度を有し、約50:50の比の場合には25.0°F(13.9℃)の過冷温度を有するのに対して、VIMA/MAPYD(メチル化)についての過冷温度は29.5°F(16.4℃)である。更に、PiPpenOxの非アルキル化同等物を合成した場合、その過冷温度は、道理にかなっているとおり、PiPpenOxについての過冷温度は21.7°F(約12.1℃)であるのに対して、約18°F(約10℃)を越えない。
従って、主鎖をアルキル化することにより、驚くべきほどに、ポリマー水和物抑制剤作用についての予期せぬ強化が得られた。表1の結果に示されるように、少なくとも1種のメチル基を用いてポリマーの主鎖をアルキル化することにより、その非アルキル化同等物よりも、少なくとも約2°F(約1.1℃)高いアルキル化ポリマーについての過冷温度が得られるであろう。また、エチル又はプロピル基のいずれかを用いてポリマー主鎖をアルキル化することにより、同様に、そのポリマーの過冷温度性能が改良され得ると考えれらる。
以上には、本発明を行う手段及び方法、及び本発明を行うためのベストモードを記載した。前述の記載は単に説明的なものであって、他の方法及び技術を、本発明の範囲を逸脱することなく使用可能であると理解されるべきである。
産業上の利用可能性
本発明の方法は、流体中、具体的には、天然ガス又は他の製油流体を製造及び/又は輸送するために使用するパイプ又は導管中おけるクラスレート水和物の形成を抑制するのに有用である。

Claims (12)

  1. 水和物形成成分を有する流体中におけるクラスレート水和物の形成を抑制する方法であって、少なくとも2種のペンダント基を有するアルキル化ポリマー主鎖を有する実質的に水溶性のポリマーを含む抑制剤を用いて該流体を処理することを含み、該第1のペンダント基が、炭素、窒素及び酸素からなる群から選択された原子を少なくとも2種有し、該第2のペンダント基が、C1-3のアルキル基である、アルキル化ポリマー主鎖を有する前記ポリマーが、ポリ(イソプロピルメタクリルアミド)のホモポリマー、ポリ(2−イソ−プロペニル−2−オキサゾリン)のホモポリマー、N−メチル−N−ビニルアセトアミドとイソプロピルメタクリルアミドとのコポリマー、N−メチル−N−ビニルアセトアミドとメタクリロイルピロリジンとのコポリマー、及びメチルメタクリレートとエチルアクリレートとイソ−プロペニルオキサゾリンとのターポリマーからなる群から選択され、該ポリマーの平均分子量が、約1,000〜6,000,000であることを特徴とする該方法。
  2. 前記抑制剤が、更に、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルカプロラクタム)、ポリアクリルアミド、ビニルピロリドンとビニルカプロラクタム及び/又はアクリルアミドとのコポリマー、ポリ(N−メチル−N−ビニルアセトアミド)、N−メチル−N−ビニルアセトアミドとイソ−プロピルメタクリルアミドとのコポリマー、N−メチル−N−ビニルアセトアミドとアクリロイルピペリジンとのコポリマー、N−メチル−N−ビニルアセトアミドとメタクリロイルピロリジンとのコポリマー、及びN−メチル−N−ビニルアセトアミドとアクリロイルピロリジンとのコポリマーからなる群から選択された添加剤を含む請求項1に記載の方法。
  3. 前記抑制剤が、更に、溶剤を含む請求項1に記載の方法。
  4. 前記溶剤が、水、ブライン、海水、生成水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、グリコール及びそれらの混合物からなる群から選択される請求項3に記載の方法。
  5. 前記抑制剤を、流体中に存在する水の約0.01〜約5重量%の濃度範囲で添加する請求項1に記載の方法。
  6. 前記抑制剤を、流体中に存在する水の約0.5重量%の濃度で添加する請求項1に記載の方法。
  7. 水和物形成成分を有する流体中におけるクラスレート水和物の形成を抑制する方法であって、少なくとも2種のペンダント基を有するアルキル化ポリマー主鎖を有する実質的に水溶性のポリマーを含む抑制剤を用いて該流体を処理することを含み、該第1のペンダント基が、炭素、窒素及び酸素からなる群から選択された原子を少なくとも2種有し、該第2のペンダント基が、C1-3のアルキル基である、アルキル化ポリマー主鎖を有する前記ポリマーが、ポリ(イソプロピルメタクリルアミド)のホモポリマー、ポリ(2−イソ−プロペニル−2−オキサゾリン)のホモポリマー、N−メチル−N−ビニルアセトアミドとイソプロピルメタクリルアミドとのコポリマー、N−メチル−N−ビニルアセトアミドとメタクリロイルピロリジンとのコポリマー、及びメチルメタクリレートとエチルアクリレートとイソ−プロペニルオキサゾリンとのターポリマーからなる群から選択され、該ポリマーの平均分子量が、約1,000〜6,000,000であり、該アルキル基により、該第1のペンダント基を有するが、該第2のペンダント基を有しない同等物たるポリマーのクラスレート水和物抑制作用が強化されることを特徴とする該方法。
  8. 前記アルキル基により、前記同等物たるポリマーの過冷温度が上昇する請求項7に記載の方法。
  9. 前記アルキル基により、前記同等物たるポリマーの過冷温度が少なくとも約2°F(約1.1℃)上昇する請求項8に記載の方法。
  10. 前記過冷温度の上昇が、1,000psigで行った加圧試験により測定した、前記ポリマーと前記同等物たるポリマーについての過冷温度の差である請求項9に記載の方法。
  11. 前記試験を、オートクレーブ、サファイアセル及びミニループ装置からなる群から選択された装置を用いて行う請求項10に記載の方法。
  12. 少なくとも2種のペンダント基を有するアルキル化ポリマー主鎖を有する実質的に水溶性のポリマーであって、該第1のペンダント基が、炭素、窒素及び酸素からなる群から選択された原子を少なくとも2種有し、該第2のペンダント基が、C1-3のアルキル基である、アルキル化ポリマー主鎖を有する前記ポリマーが、ポリ(イソプロピルメタクリルアミド)のホモポリマー、ポリ(2−イソ−プロペニル−2−オキサゾリン)のホモポリマー、N−メチル−N−ビニルアセトアミドとイソプロピルメタクリルアミドとのコポリマー、N−メチル−N−ビニルアセトアミドとメタクリロイルピロリジンとのコポリマー、及びメチルメタクリレートとエチルアクリレートとイソ−プロペニルオキサゾリンとのターポリマーからなる群から選択され、該ポリマーの平均分子量が、約1,000〜6,000,000である、前記ポリマーを含有することを特徴とする、水和物形成成分を有する流体中におけるクラスレート水和物の形成を抑制するための組成物。
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