以下、この発明の実施の形態を添付図面に従って詳細に説明する。
図1は、この発明に係る電子楽器の全体構成の一実施例を示したハード構成ブロック図である。図1に示すように、この発明に係る電子楽器は、マイクロプロセッサユニット(CPU)1、リードオンリメモリ(ROM)2、ランダムアクセスメモリ(RAM)3からなるマイクロコンピュータの制御の下に各種の処理が実行されるようになっている。CPU1は、この電子楽器全体の動作を制御するものである。このCPU1に対して、通信バス1D(例えばデータ及びアドレスバスなど)を介してリードオンリメモリ(ROM)2、ランダムアクセスメモリ(RAM)3、記憶装置4、演奏操作子5、パネル操作子6、表示機7、音源8、DSP(Digital Signal Processorの略)9、外部インタフェース11がそれぞれ接続されている。更に、CPU1にはタイマ割込み処理(インタラプト処理)における割込み時間や各種時間を計時するタイマー1Aが接続されている。すなわち、タイマー1Aは時間間隔を計数したり、楽音の自動演奏や自動伴奏(アカンパニメント)を行う際に用いる演奏テンポを設定したりするためのテンポクロックパルスを発生する。このテンポクロックパルスの周波数は、パネル操作子6の中の例えばテンポ設定スイッチ等によって調整される。このようなタイマー1AからのテンポクロックパルスはCPU1に対して処理タイミング命令として与えられたり、あるいはCPU1に対してインタラプト命令として与えられる。CPU1は、これらの命令に従ってメイン処理(後述する図3参照)等の各種処理を実行する。
ROM2は、CPU1により実行あるいは参照される各種制御プログラムや各種データなどを格納するものである。RAM3は、マルチパッドに現在対応付けられているマルチパッドデータを記憶するメモリとして、CPU1が所定のプログラムを実行する際に発生する各種データなどを一時的に記憶するワーキングメモリとして、あるいは現在実行中のプログラムやそれに関連するデータを記憶するメモリ等として使用される。RAM3の所定のアドレス領域がそれぞれの機能に割り当てられ、レジスタやフラグ、テーブル、メモリなどとして利用される。記憶装置4は、マルチパッド操作にあわせて自動演奏される楽音の元となるマルチパッドデータ、自動伴奏(アカンパニメント)される楽音の元となる自動伴奏データ、CPU1が実行する各種の制御プログラム等を記憶する。上記マルチパッドデータは2つの種類に分類することができ、1つは当該データの最後まで演奏されたらデータ再生を自動的にストップするタイプであり、もう1つはリズムパターンなど、演奏ストップが指示されるまでデータ再生を自動的に繰り返すタイプである。ところで、前記ROM2に制御プログラムが記憶されていない場合、この記憶装置4に制御プログラムを記憶させておき、それを前記RAM3に読み込むことにより、ROM2に制御プログラムを記憶している場合と同様の動作をCPU1にさせることができる。このようにすると、制御プログラムの追加やバージョンアップ等が容易に行える。なお、記憶装置4はハードディスク(HD)に限らず、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、光磁気ディスク(MO)、あるいはDVD(Digital Versatile Diskの略)等の着脱自在な様々な形態の外部記憶メディアを利用する記憶装置であってもよい。あるいは、半導体メモリなどであってもよい。
演奏操作子5は楽音の音高を選択するための複数の鍵を備えた例えば鍵盤等のようなものであり、各鍵に対応してキースイッチを有しており、この演奏操作子5(鍵盤等)はユーザによるマニュアル(手弾き)演奏のために使用できるのは勿論のこと、当該装置における各種の機器設定や自動演奏の際に用いられる各種の演奏制御パラメータなどを入力するための入力手段として使用することもできる。パネル操作子6は、ファンファーレや短いフレーズあるいはリズムパターンなどの自動伴奏に比べると比較的短い楽音をその操作に応じて自動演奏するよう指示するマルチパッド、該マルチパッドの操作に応じて自動演奏が開始された楽音をストップする、あるいは操作されたマルチパッドに対応付けられている楽音をシンクロスタートにより自動演奏を開始するよう機器設定することの可能な共用スイッチ、マルチパッドに対応付けて自動演奏対象とするマルチパッドデータあるいは自動伴奏対象とする自動伴奏データを多数のデータの中から適宜に選択するデータ選択スイッチ、自動伴奏の開始(伴奏のシンクロスタート設定含む)又は停止を指示する伴奏開始指示スイッチ・伴奏停止指示スイッチ、あるいは音色(ボイス)やリズムなどの自動演奏時に用いる各種の演奏制御パラメータを個別に設定するパラメータ入力スイッチ、などの各種の操作子を含んで構成される。勿論、パネル操作子6としては上記した以外にも、音高、音色、効果等を選択・設定・制御するために用いる数値データ入力用のテンキーや文字データ入力用のキーボード、あるいは操作量に応じたピッチベンド値を設定することのできるピッチベンドホイールやスライダーなどの各種操作子を含んでいてよい。こうしたパネル操作子6の各操作子の操作状態が検出されると、その操作状態に応じたスイッチ情報が通信バス1Dを介してCPU1に出力される。
ここで、上記したパネル操作子6のうちのマルチパッド及び共用スイッチについて、図2を用いて具体的に説明する。図2は、本発明に係る電子楽器におけるパネル操作子6の具体的な構成例を示した外観図である。ただし、ここでは演奏操作子5として鍵盤を具えた鍵盤型の電子楽器を例に示している。
本発明に係る電子楽器はその上面に複数のマルチパッドMPを有し(この実施例では4個)、該マルチパッドMPを操作することに応じて予め対応付けられているマルチパッドデータに基づき所定の楽音(例えば、ファンファーレなどの効果音や演奏者がよく使用する短いフレーズあるいはリズムパターンなど)を自動演奏するように指示することのできるようになっている。このマルチパッド操作による楽音の自動演奏指示では、各マルチパッドに対応付けられた複数の異なる楽音を同時に自動演奏するよう指示することができる。一方、前記マルチパッドMPの近部に配置される共用スイッチCSは、マルチパッドMPの操作に応じて演奏開始された楽音の自動演奏をストップするためのスイッチ、又は操作されたマルチパッドMPに対応付けられている楽音の自動演奏をシンクロスタートにより開始するよう機器設定するシンクロスタートモード設定のためのスイッチとして共用される操作子であって、その操作タイミングに応じて上記いずれかのスイッチとして機能するようになっている。具体的には、例えばマルチパッドMPの操作前(つまり自動演奏開始前)に操作された場合にはシンクロスタートモードの設定スイッチとして機能し、マルチパッドMPの操作後(つまり自動演奏開始後)に操作された場合には全ての(あるいは一部の)該当する楽音の自動演奏をストップする停止スイッチなどとして機能する。
なお、マルチパッドMPは例えば復帰型のスイッチ構造、つまり押下するたびに押し込まれた状態と復帰状態(押し込まれていない状態)とを繰り返す構造であって、マルチパッドMP単独で操作するたびに楽音の自動演奏の開始・停止などの操作を行うことができる。
上記したように、共用スイッチCSは、自動演奏されている楽音の自動演奏をストップするための停止スイッチ又は楽音の自動演奏をシンクロスタートにより開始するよう機器設定するための設定スイッチのいずれかの機能を持つ操作子として共用されるものであることから、そのままではユーザがどちらの機能を持つスイッチとして動作するものであるかが操作してみないと分からない。そこで、この実施例では、マルチパッドMPをその時点における設定状態に応じたインジケータで表示するよう制御できるようにすることにより、操作時にどちらの機能のスイッチとして動作するものであるかがユーザに分かるようにしている。すなわち、この実施例ではマルチパッドMPそれぞれに二色照光可能なランプ(例えば緑とオレンジの二色など)を内蔵しておき、該ランプの色や点灯・点滅状態等によってどのマルチパッドMPがどのような状態であるかをユーザがすぐに理解しやすいようにしている。
具体的に説明すると、通常はマルチパッドデータが対応付けられているマルチパッドMPは「緑」で点灯されており、マルチパッドデータが対応付けられていないマルチパッドMPは点灯されていない状態にある(これを初期状態と呼ぶ)。この初期状態において共用スイッチCSを操作することなく、「緑」に点灯されているマルチパッドMPを操作した場合には対応する楽音の自動演奏がすぐに開始される一方(この場合操作されたマルチパッドMPは「緑」から「オレンジ」の点灯状態に変わり自動演奏中であることを表わす)、点灯されていないマルチパッドMPが操作された場合には自動演奏は開始されない(無点灯のまま)。また、自動演奏が開始された後に共用スイッチCSが操作された場合あるいは当該マルチパッドMPが再度操作された場合には該当する自動演奏をストップして、マルチパッドデータが対応付けされているマルチパッドMPを「緑」で点灯し、マルチパッドデータが対応付けされていないマルチパッドMPは点灯していない初期状態に戻す。なお、自動演奏を繰り返すことなく終了する場合には、自動的に初期状態に戻る。
他方、初期状態において、共用スイッチCSが操作された場合には「緑」で点灯されていた全てのマルチパッドMPが「緑」の点滅状態となって、シンクロスタートモードに設定される。すなわち、共用スイッチCSがシンクロスタート設定操作子として機能する。この「緑」の点滅状態にあるマルチパッドMPのいずれかを操作すると、当該操作されたマルチパッドMPは「緑」から「オレンジ」の点滅状態となり、これによりどのマルチパッドMPがシンクロスタート対象に設定されたのかが理解できるようになる。つまり、共用スイッチCSの操作に応じてシンクロスタートが設定された後に、演奏指示操作子であるマルチパッドMPを操作すると、操作に応じて「緑」から「オレンジ」の点滅状態となったマルチパッドMPに対応付けられている楽音のみがシンクロスタートの対象となって、ユーザによる演奏操作子の操作があったときにそれに同期するようにして自動演奏が開始される(この場合には、操作されたマルチパッドMPは「オレンジ」の点滅状態から「オレンジ」の点灯状態に変わり自動演奏中であることを表わす)。
上記シンクロスタートモードに設定されている状態で共用スイッチCSが操作された場合にはシンクロスタートモードを解除し(既に自動演奏が開始されている場合には該演奏をストップして)、「オレンジ」点滅状態(未だ自動演奏されていない場合)又は「オレンジ」点灯状態(既に自動演奏開始された場合)のいずれかの状態にあるマルチパッドMPを「緑」の点灯状態に戻す。このようにして、個々のマルチパッドMPの点灯状態により、ユーザが一見して現在の設定状態を理解できるようにしている。なお、上記したようなマルチパッドMPに配置されたランプの点灯によるインジケータ表示機能は一例であって、これ以外であってもよいことは言うまでもない。こうしたインジケータ表示機能に関する処理については後述することから(図4参照)、ここでの説明を省略する。
図1の説明に戻って、表示機7は例えば液晶表示パネル(LCD)やCRT等から構成されるディスプレイであって、マルチパッドに割り当てることが可能なマルチパッドデータあるいは自動伴奏可能な自動伴奏データなどのデータ情報、演奏制御パラメータの現在の設定状態、あるいはCPU1の制御状態などを表示する。音源8は複数のチャンネルで楽音信号の同時発生が可能であり、通信バス1Dを経由して与えられたユーザによる演奏操作子5の操作に応じて発生された演奏情報、又はマルチパッドデータあるいは自動伴奏データに基づく演奏情報を入力し、これらに基づいて楽音信号を発生する。音源8から発生された楽音信号はDSP9により所定のディジタル信号処理が施され、該信号処理された楽音信号はアンプやスピーカなどを含むサウンドシステム10に与えられて発音される。なお、効果回路(図示せず)を音源8とサウンドシステム10との間に配置して前記音源8から発生された楽音信号に対して各種効果を与えるようにしてもよい。前記音源8とDSP9とサウンドシステム10(更に効果回路)の構成には、従来のいかなる構成を用いてもよい。例えば、音源8はFM、PCM、物理モデル、フォルマント合成等の各種楽音合成方式のいずれを採用してもよく、また専用のハードウェアで構成してもよいし、CPU1によるソフトウェア処理で構成してもよい。
外部インタフェース11は当該電子楽器と外部機器(図示せず)などとの間でマルチパッドデータや自動伴奏データなどの各種情報を送受信するための、例えばMIDIインタフェースや通信インタフェースなどである。MIDIインタフェースは、外部機器(この場合には、MIDI機器等)からMIDI規格の演奏情報(MIDIデータ)を当該電子楽器へ入力したり、あるいは当該電子楽器からMIDI規格の演奏情報を他のMIDI機器等へ出力するためのインタフェースである。他のMIDI機器はユーザによる操作に応じてMIDI形式のデータを発生する機器であればよく、鍵盤型、ギター型、管楽器型、打楽器型、身振り型等どのようなタイプの操作子を具えた(若しくは、操作形態からなる)機器であってもよい。通信インタフェースは、例えばLANやインターネット、電話回線等の有線あるいは無線の通信ネットワークに接続されており、該通信ネットワークを介して外部機器(この場合には、パーソナルコンピュータやサーバコンピュータ等)と接続され、当該外部機器で発生させたマルチパッドデータや自動伴奏データを電子楽器側に取り込むための通信インタフェースである。また、通信インタフェースは、通信ネットワークを介して接続されたサーバコンピュータから各種プログラムや各種データ等を当該電子楽器本体にダウンロードするためにも用いられる。なお、通信インタフェースは、有線あるいは無線のものいずれかでなく双方を具えていてよい。
なお、上記外部インタフェース11をMIDIインタフェースで構成した場合、該MIDIインタフェースは専用のMIDIインタフェースを用いるものに限らず、RS232−C、USB(ユニバーサル・シリアル・バス)、IEEE1394(アイトリプルイー1394)等の汎用のインタフェースを用いてMIDIインタフェースを構成するようにしてもよい。この場合、MIDIイベントデータ以外のデータをも同時に送受信するようにしてもよい。MIDIインタフェースとして上記したような汎用のインタフェースを用いる場合には、他のMIDI機器はMIDIイベントデータ以外のデータも送受信できるようにしてよい。勿論、データフォーマットはMIDI形式のデータに限らず他のデータ形式であってもよく、その場合はMIDIインタフェースと他のMIDI機器はそれにあった構成とする。
なお、本発明に係る電子楽器はパネル操作子6や表示機7あるいは音源8等を1つの電子楽器本体に内蔵したものに限らず、それぞれが別々に構成され、外部インタフェースや各種ネットワーク等の通信手段を用いて各装置を接続するように構成されたものであってもよい。
次に、図1に示した電子楽器で実行する「メイン処理」について、図3を用いて説明する。図3は、「メイン処理」の一実施例を示すフローチャートである。該「メイン処理」では、マルチパッドにおけるシンクロスタートモードの設定などのユーザによるパネル操作子6の操作に応じて各種の機器設定を行う「パネル設定処理」や、演奏操作子5の操作に応じて楽音の自動演奏を開始するなどの機器設定内容と演奏操作子5の操作とに基づき自動演奏・自動伴奏等を行う「演奏制御処理」を実行する。以下、図3に示したフローチャートに従って、当該「メイン処理」の詳細な動作を説明する。この「メイン処理」は当該電子楽器本体の電源がオンされるのと同時に処理が開始され、当該電子楽器本体の電源がオフされるまで繰り返し処理が続けられる。
ステップS1では、初期化を実行する。ここで実行する初期化としては、例えば各マルチパッドに対して自動演奏対象の楽音としてデフォルトのマルチパッドデータを対応付ける、マルチパッドにおけるシンクロスタートモードを解除する、あるいは各種演奏制御パラメータをクリアするなどの各種処理がある。ステップS2では、「パネル設定処理」を実行する。詳しくは後述するが(後述の図4参照)、当該「パネル設定処理」ではパネル操作子6の操作状況を取得し、該取得した操作状況に応じて当該電子楽器に対してマルチパッド操作に応じた自動演奏の設定やマルチパッドにおけるシンクロスタートモードの設定、あるいはその他の自動演奏及び自動伴奏に関する各種設定処理(例えば演奏制御パラメータの設定)などを実行する。ステップS3では、「演奏制御処理」を実行する。詳しくは後述するが(後述の図5参照)、当該「演奏制御処理」では、例えばユーザによる演奏操作子5の操作にあわせて、マルチパッドに対応付けられているマルチパッドデータに基づく楽音の自動演奏を開始する、あるいは自動演奏データに基づく自動伴奏(アカンパニメント)を開始するシンクロスタートなどの演奏に関する制御を行う。
次に、上述した「メイン処理」において実行される「パネル設定処理」(図3のステップS2参照)について説明する。図4は、「パネル設定処理」の一実施例を示すフローチャートである。この「パネル設定処理」では、当該電子楽器に対しパネル操作子6の操作に応じた機器設定を行う。
ステップS11では、パネル入力があるか否かを判定する。すなわち、パネル操作子6が演奏者により操作されたか否かを判定する。演奏者によるパネル操作子6に対する操作がなく、「パネル入力なし」と判定した場合には(ステップS11のNO)、当該電子楽器に対して何らかの機器設定を行うように指示されていないことから、以下に示す各処理を行わずに当該処理を終了する。一方、演奏者によるパネル操作子6に対する操作が行われており、「パネル入力あり」と判定した場合には(ステップS11のYES)、該パネル入力が共通スイッチCS又はマルチパッドMP、あるいはその他のパネル操作子6のいずれかが操作されたことによるものかを判定する(ステップS12及びステップS13)。すなわち、ステップS12及びステップS13のそれぞれの処理において、複数のスイッチ類から構成されるパネル操作子6のうち、いずれのパネル操作子6が操作されたことにより「パネル入力あり」としたかを判定し、操作されたパネル操作子6の種類によって以下に示すような異なる処理を実行する。
パネル操作子6のうち共用操作子が操作されたことにより「パネル入力あり」と検出された場合には(ステップS12のYES)、マルチパッドに対応付けられている演奏データ(マルチパッドデータ)に基づく楽音が既に演奏中であるか否かを判定する(ステップS15)。該当する楽音が既に演奏中である場合には(ステップS15のYES)、マルチパッドに対応付けられている演奏データ(マルチパッドデータ)に基づく楽音の全演奏を停止するよう制御する(ステップS16)。すなわち、この場合には共用操作子が演奏中である楽音の全演奏を停止するためのスイッチとなる。この際に、マルチパッドのインジケータ表示は「オレンジ」の点灯状態から「緑」の点灯状態(シンクロスタート未設定の場合)、「緑」又は「オレンジ」の点滅状態(シンクロスタート設定の場合)のいずれかとなる。他方、未だマルチパッドに対応付けられている演奏データ(マルチパッドデータ)に基づく楽音が演奏中でない場合には(ステップS15のNO)、マルチパッドにおけるシンクロスタートモードに機器設定されているか否かを判定する(ステップS17)。すなわち、マルチパッド操作前に共用操作子が操作されており、当該機器がマルチパッドにおける「シンクロスタートモード」に機器設定されているか否かを判定する。既に「シンクロスタートモード」に機器設定されていた場合には(ステップS17のYES)、「シンクロスタートモード」を全解除して(ステップS18)、インジケータをオフする(ステップS19)。すなわち、この場合には共用操作子が「シンクロスタートモード」を全解除するためのスイッチとなる。この際に、マルチパッドのインジケータ表示は「緑」又は「オレンジ」の点滅状態から「緑」の点灯状態となる。一方、現在「シンクロスタートモード」に機器設定されていない場合には(ステップS17のNO)、当該機器を新たに「シンクロモード」に機器設定し(ステップS20)、インジケータをオンする(ステップS21)。すなわち、この場合には共用操作子が「シンクロスタートモード」を設定するためのスイッチとなる。この際に、マルチパッドのインジケータ表示は「緑」の点灯状態から「緑」の点滅状態となる。
パネル操作子6のうちマルチパッドが操作されたことにより「パネル入力あり」と検出された場合には(ステップS13のYES)、操作されたマルチパッドに対応付けられた演奏データに基づく楽音が既に演奏中であるか否かを判定する(ステップS22)。既に演奏中である場合には(ステップS22のYES)、該当する演奏データに基づく楽音の演奏を停止するよう制御する(ステップS23)。すなわち、演奏中のマルチパッドを操作することで、該マルチパッドに対応付けられた楽音のみ演奏を停止することができる。この際に、マルチパッドのインジケータ表示は「オレンジ」の点灯状態から「緑」の点灯状態、「緑」又は「オレンジ」の点滅状態のいずれかとなる。未だ演奏中でない場合には(ステップS22のNO)、当該機器が現在「シンクロスタートモード」に機器設定されているか否かを判定する(ステップS24)。「シンクロスタートモード」に機器設定されていない場合には(ステップS24のNO)、該当する演奏データに基づく楽音の演奏を開始するよう、マルチパッドフラグを立てるなどの制御を行う(ステップS25)。この際に、マルチパッドのインジケータ表示は「緑」の点灯状態から「オレンジ」の点灯状態となる。一方、「シンクロスタートモード」に機器設定されている場合には(ステップS24のYES)、操作されたマルチパッドが既にシンクロスタート対象のマルチパッドとして選択済みであるか否かを判定する(ステップS26)。操作されたマルチパッドがシンクロスタート対象のマルチパッドとして選択済みでない場合には(ステップS26のNO)、シンクロスタート対象にそのマルチパッドを割り当て(ステップS27)、インジケータをオフする(ステップS28)。この際に、マルチパッドのインジケータ表示は「緑」の点滅状態から「オレンジ」の点滅状態となる。操作されたマルチパッドが既にシンクロスタート対象のマルチパッドとして選択済みである場合には(ステップS26のYES)、シンクロスタート対象からそのマルチパッドを外し(ステップS29)、インジケータをオフする(ステップS30)。この際に、マルチパッドのインジケータ表示は「オレンジ」の点滅状態から「緑」の点滅状態となる。
パネル操作子6のうち共用操作子及びマルチパッド以外の他の操作子が操作されたことにより「パネル入力あり」と検出された場合には(ステップS12及びステップS13が共にNO)、その他指示に従う処理を実行する(ステップS14)。その他指示に従う処理としては、例えばシンクロスタートさせる条件などを変更する、マルチパッドに割り当てる演奏データ(マルチパッドデータ)を変更する、音量設定や音色設定などの演奏制御パラメータを設定する、などの各種指示がある。上記シンクロスタートさせる条件としては、例えば左手鍵域の鍵のいずれかが操作された場合、左手鍵域の鍵操作でコードが成立した場合、右手鍵域の鍵のいずれかが操作された場合、鍵盤のいずれかが操作された場合、などがある。また、自動伴奏のシンクロスタートと同じ条件でシンクロスタートするような設定ができるようにしてあってもよい。こうした場合には、自動伴奏のシンクロスタートもオン状態に設定されていれば、ユーザによる演奏操作子5の操作に応じて同時に演奏が開始されることになる。
次に、上述した「メイン処理」において実行される「演奏制御処理」(図2のステップS3参照)について説明する。図5は、「演奏制御処理」の一実施例を示すフローチャートである。
ステップS31では、ユーザによる演奏操作子5の操作が行われたか否かを判定する。演奏操作子5の操作が行われていないと判定した場合には(ステップS31のNO)、ステップS43の処理へジャンプする。一方、演奏操作子5の操作が行われたと判定した場合には(ステップS31のYES)、当該操作がノートオン(例えば押鍵操作)であるか否かを判定する(ステップS32)。ノートオンであると判定した場合には(ステップS32のYES)、マルチパッドにおけるシンクロスタートモードが設定されているか否かを判定する(ステップS34)。マルチパッドにおけるシンクロスタートモードが設定されている場合には(ステップS34のYES)該操作がマルチパッドに対応付けられている楽音をシンクロスタートする所定の条件を満たしているか否かを判定し(ステップS35)、満たしている場合には(ステップS35のYES)シンクロスタートモードに設定されているマルチパッドに対応するマルチパッドフラグを立てる(ステップS36)。ステップS37では、自動伴奏におけるシンクロスタートモードが設定されているか否かを判定する。自動伴奏におけるシンクロスタートモードが設定されている場合には(ステップS37のYES)該操作が自動伴奏をシンクロスタートする所定の条件を満たしているか否かを判定し(ステップS38)、満たしている場合には(ステップS38のYES)、アカンパニメントフラグを立てる(ステップS39)。ステップS40では、演奏操作子5の操作に応じた楽音を発音させる。すなわち、ノートオンに対応させてその操作された演奏操作子5に割り当てられた音色音高などの演奏制御パラメータに従って、発音制御を行う。なお、自動伴奏等において、コードに関する演奏操作を行った場合に該コードを発音することなく自動伴奏を発音するコードマッチ機能が設定されている場合には、演奏操作子5の操作に応じた楽音の発音制御を行なわなくてよい。他方、ユーザによる演奏操作子5の操作がノートオン(例えば押鍵操作)でなくノートオフ(例えば離鍵操作)であると判定した場合には(ステップS33のYES)、発音中の該当する楽音を停止させる(ステップS41)。ユーザによる演奏操作子5の操作がノートオン、ノートオフ以外である場合には(ステップS33のNO)、操作に対応して演奏制御パラメータを変更する(ステップS42)。
ステップS43では、マルチパッドフラグが立っているものがあるか否かを判定する。マルチパッドフラグが立っているものがある場合には(ステップS43のYES)、フラグが立っているマルチパッドにおける対応付けられた演奏データを読み出し、これに基づき楽音を自動演奏する(ステップS44)。ステップS45では、アカンパニメントフラグが立っているか否かを判定する。アカンパニメントフラグが立っている場合には(ステップS45のYES)、該当する自動伴奏データを読み出し(ステップS46)、必要に応じてノートを変換し(ステップS47)、これに基づき自動伴奏を行う(ステップS48)。
なお、ユーザによるコードの演奏操作にあわせてマルチパッドを鳴らすことのできるコードマッチ機能を有していてよい。このコードマッチ機能とは、左手鍵盤で弾いたコードにあわせてマルチパッド再生のピッチが、スタイル再生(自動伴奏)と同じように自動的に変化する機能である。
なお、上述した実施例においては、マルチパッドにおけるシンクロスタートのために共用操作子を用いる例を示したがこれに限らず、例えば自動伴奏におけるシンクロスタートのために共用操作子を用いるようにしてもよい。
なお、本発明に係る電子楽器で用いられる演奏データ(マルチパッドデータ)や自動伴奏データの形式はSMF(Standard MIDI Fileの略)形式のようなディジタル符号化されたものであってもよいし、PCM、DPCM、ADPCMのような波形サンプルデータ方式からなるものであってもよい。また、これらの演奏データのフォーマットは、イベントの発生時刻を曲や小節内における絶対時間で表した『イベント+絶対時間』形式のもの、イベントの発生時刻を1つ前のイベントからの時間で表した『イベント+相対時間』形式のもの、音符の音高と符長あるいは休符と休符長で演奏データを表した『音高(休符)+符長』形式のもの、演奏の最小分解能毎にメモリの領域を確保し、演奏イベントの発生する時刻に対応するメモリ領域にイベントを記憶した『ベタ方式』形式のものなど、どのような形式のものでもよい。複数チャンネル分の演奏データが存在する場合は、複数のチャンネルのデータが混在した形式であってもよいし、各チャンネルのデータがトラック毎に別れているような形式であってもよい。さらに、演奏データの自動演奏時における処理方法は、設定されたテンポに応じて処理周期を変更する方法、処理周期は一定で1回の処理において演奏データ中のタイミングデータの計数の仕方をテンポに応じて変更する方法等、どのようなものであってもよい。
1…CPU、1A…タイマー、2…ROM、3…RAM、4…記憶装置、5…演奏操作子、6…パネル操作子、7…表示機、8…音源、9…DSP、10…サウンドシステム、11…外部インターフェース、1D…通信バス、MP…マルチパッド、CS…共用操作子