JP3922419B2 - 純度の高いポリa+rnaの精製方法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は高純度なポリA+RNAの精製方法及びそのための試薬に関する。さらに詳しくは、ポリA+RNAを含有する試料からオリゴdT固定化担体及びDNaseを用いて、簡便に高純度なポリA+RNAを精製する方法ならびにそのための試薬に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年種々の生物において、全ゲノムデオキシリボ核酸(DNA)塩基配列が解明されつつある。例えば、ヒトに関しては、2000年末にはドラフトシーケンスが明らかになり、そこに存在する遺伝子数は10万を越えるであろうといわれている。しかしながら、ゲノムDNA全てが生命現象を担っているわけではなく、生命現象の主たる担い手タンパク質のアミノ酸配列情報を含む領域、このタンパク質の合成を触媒するリボ核酸(RNA)、すなわち、トランスファーRNA(tRNA)及びリボゾーマルRNA(rRNA)の塩基配列情報を含む領域の他、生命現象には必要とされない領域が存在する。また、タンパク質のアミノ酸配列情報を含む領域も、必ずしも一つのタンパク質に対し一つの連続した領域からなるものではない。つまり、タンパク質の合成の前にまずRNAに転写されるが、この際その間に挟まれたアミノ酸配列情報を含まない領域(イントロン)も合わせて転写され、スプライシングと呼ばれる過程でこの領域が切除され、アミノ酸配列情報を含む領域が残ったメッセンジャーRNA(mRNA)が生成するのである。また、真核生物ではこのmRNAの3’末端がポリアデニル化されているのが特徴であり、ポリA+RNAと呼ばれる。
【0003】
このポリA+RNAの解析により、生命現象を解明する上で非常に重要な情報が提供される。ポリA+RNAの解析において、しばしばtRNA、rRNA、mRNA(ポリA+RNA)等の混合物であるTotal RNAを用いて行われるが、このTotal RNAに占めるポリA+RNAは5%以下であり、特にコピー数の少ないポリA+RNAの解析は困難である。そのため、生体材料からポリA+RNAを単離することは、これらの解析において非常に有意義である。これらの分野で頻繁に使用されるcDNAライブラリーの調製、cDNAクローニング、ノザンブロット解析、逆転写ポリメラーゼチェインリアクション(RT−PCR)などの解析法において良好な結果を得るためには、可能な限り高純度のポリA+RNAを使用することが望ましい。
【0004】
一般に、ポリA+RNAを精製するには、生体試料より、AGPC法 [Analytical Biochemistry 162, 156-159(1987)]、リチウム沈殿法(Molecular Cloning, 1.4, (1989))、あるいはBoomらにより考案されたシリカ粒子を用いた方法 [J. Clin. Microbiol. 28(3), 495-501] によりTotal RNAを抽出し、このTotal RNAのうちポリA+RNAをオリゴdTセファロース等のオリゴdT固定化担体に特異的に吸着させ、ポリA+RNAを精製する方法が用いられてきた。しかしながら、これらの方法では操作工程が長く、煩雑となるため、一度に多サンプルを処理する場合には向かない。その上操作工程が長いため、RNA分解酵素によるRNAの分解の危険性も増大する。
【0005】
一方、簡便なポリA+RNAの単離方法として、カオトロピック剤存在下で生体試料を溶解し、ポリA+RNAをオリゴdTセルロース等のオリゴdT固定化担体に吸着させ、精製する方法が考案されている。しかしながら、この方法においては、オープンカラムの操作ではRNA分解酵素の混入の危険性が高く、またバッチ法における閉鎖系では液相と担体−ポリA+RNA複合体を分離するのに遠心操作が必要とされ、一度に多サンプルを処理する場合には煩雑となる。
【0006】
オリゴdT固定化担体を使用するポリA+RNAの単離方法としては、ビオチン化オリゴdTをストレプトアビジン固定化磁性ビーズに吸着させ、このオリゴdT−ストレプトアビジン磁性ビーズにポリA+RNAを特異的に吸着する方法が考案され、磁石を用いて担体−ポリA+RNA複合体を分離でき、遠心操作を必要としない。しかしながら、この方法においても担体への吸着が多段階であるため効率が悪い。
【0007】
しかしながら、これらいずれの手法においてもrRNAやゲノムDNAを一度の精製では完全に除くことが出来ないため、純度の高いポリA+RNAを得るには精製操作を2回以上繰り返すことが必要である。また、ゲノムDNA上には遺伝子の他に類似の配列を持つが、遺伝子としての機能を失った領域(偽遺伝子)が存在し、しばしば研究の妨げとなっており、これを防ぐには混入DNAを完全に除くことが必要である。その方法として、DNaseによるゲノムDNAの切断という手段が採られるが、その後DNaseを変性、除去するためにはフェノール−クロロホルム抽出のような有機溶媒を用いなければならず、危険な操作である。そこで、これらの問題点を克服した方法が必要とされている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、細胞等の核酸を含有する試料から、高純度のポリA+RNAを簡便でかつ安全に精製する方法ならびにそのために用いる試薬を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ポリA+RNA中のrRNAの混入を極力抑えるために精製工程を複数回繰り返すこと、及びゲノムDNAの混入を抑えるためにDNaseで処理することに着目し、種々検討を重ねた結果、タンパク質変性剤を含む溶液にて細胞等の生体材料を溶解して、ポリA+RNAを単離し、DNaseで処理後、処理液にそのままタンパク質変性剤を含む溶液を加え、再度ポリA+RNAを精製することにより危険な有機溶媒による操作を必要とせず、安全でしかも簡便なポリA+RNAの精製が可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下のような構成からなる。
(1)以下の工程(a)〜(k)を含んでなることを特徴とするポリA+RNAの精製方法。
(a)核酸を含有する試料をタンパク質変性剤を含む溶液により溶解する工程、
(b)ポリA+RNAをオリゴdTが共有結合もしくは非共有結合により固定化された担体に特異的に吸着させるか、又はポリA+RNAを担体に特異的に結合可能な官能基を有するオリゴdTに結合させ、さらに該官能基に特異的に結合可能な部分を有する担体に結合させる工程、
(c)担体−ポリA+RNA複合体を液相より分離する工程、
(d)該複合体を洗浄する工程、
(e)ポリA+RNAを該複合体から解離させる工程、
(f)該ポリA+RNA溶液に混入するDNAをDNaseで処理する工程、
(g)該DNase処理液をタンパク質変性剤を含む溶液と混合する工程、
(h)ポリA+RNAをオリゴdTが共有結合もしくは非共有結合により固定化された担体に特異的に吸着させるか、又はポリA+RNAを担体に特異的に結合可能な官能基を有するオリゴdTに結合させ、さらに該官能基に特異的に結合可能な部分を有する担体に結合させる工程、
(i)担体−ポリA+RNA複合体を液相より分離する工程、
(j)該複合体を洗浄する工程、
(k)ポリA+RNAを該複合体から解離させる工程
(2)工程(b)及び/又は工程(h)を行う前に、緩衝液の添加を行う(1)のポリA+RNAの精製方法。
(3)タンパク質変性剤がカオトロピック剤及び/又は界面活性剤である(1)又は(2)の方法。
(4)カオトロピック剤がグアニジニウム塩、尿素、ヨウ化物及び(イソ)チオシアン酸塩からなる群より選択される少なくとも1種の化合物である(3)の方法。
(5)界面活性剤がラウリル硫酸ナトリウム、アルキル硫酸アルカリ金属塩、N−ラウロイルサルコシン、ノニデットP−40、ポリエチレングリコールモノ−p−イソオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートからなる群より選択される少なくとも1種の化合物である(3)の方法。
(6)工程(b)及び/又は工程(h)を行う前に用いられる緩衝液が200mM以下のナトリウム塩もしくはリチウム塩を含む(2)の方法。
(7)洗浄液が25〜100mMのナトリウム塩もしくはリチウム塩を含む(1)〜(5)のいずれかの方法。
(8)DNaseにRNase阻害剤を共存させる(1)〜(6)のいずれかの方法。
(9)(a)タンパク質変性剤を含有する溶解液、(b)オリゴdTが共有結合もしくは非共有結合により固定化された担体又は担体に特異的に結合可能な官能基を有するオリゴdT及び該官能基に特異的に結合可能な部分を有する担体、(c)洗浄液、(d)溶出液、及び(e)DNaseを含むことを特徴とするポリA+RNA精製用試薬。
(10)(f)RNase阻害剤をさらに含む(9)のポリA+RNA精製用試薬。
(11)(g)溶解工程後に添加する緩衝液をさらに含む(9)のポリA+RNA精製用試薬。
(12)(f)RNase阻害剤及び(g)溶解工程後に添加する緩衝液をさらに含む(9)のポリA+RNA精製用試薬。
(13)(c)洗浄液が25〜100mMのナトリウム塩もしくはリチウム塩を含む(9)〜(12)のいずれかの試薬。
(14)(g)溶解工程後に添加する緩衝液が200mM以下のナトリウム塩もしくはリチウム塩を含む(11)又は(12)の試薬。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明においてポリA+RNAを含有する試料とは、特に限定されるものではないが、例えば、血清、血液、髄液、組織、尿、糞便、唾液、精液等の生体材料から分離した細胞及び培養細胞などの生体試料が挙げられる。
【0012】
本発明においては、まず核酸を含有する試料をタンパク質変性剤を含む溶液により溶解し、必要に応じて、pHが5〜10のTris−塩酸緩衝液、Hepes−KOH緩衝液、Hepes−NaOH、クエン酸ナトリウム緩衝液等の緩衝液を添加し、ポリA+RNAをオリゴdTが共有結合もしくは非共有結合により固定化された担体に特異的に吸着させるか、あるいはポリA+RNAを担体に特異的に結合可能な官能基を有するオリゴdTに結合させ、さらに該官能基に特異的に結合可能な部分を有する担体に結合させる。タンパク質変性剤を含む溶液とは溶解液をいうものである。また、 本発明に使用するタンパク質変性剤とはカオトロピック剤及び/又は界面活性剤である。
【0013】
カオトロピック剤とは、タンパク質及び核酸の一次構造に影響を及ぼすことなく、二次、三次または四次構造を変えることが可能である物質をいうものである。具体的には、グアニジニウム塩、尿素、ヨウ化物、及び(イソ)チオシアン酸塩等が挙げられる。該カオトロピック剤の濃度は、それぞれの化合物によっても異なるが、通常は1〜20Mである。
グアニジニウム塩としては、グアニジン無機塩またはグアニジン有機塩があり、例えば、塩酸グアニジニウム、酢酸グアニジニウム、リン酸グアニジニウム、(イソ)チオシアン酸グアニジニウム、硫酸グアニジニウム、炭酸グアニジニウムなどが例示されるが、一般にタンパク質の変性に使用されるグアニジンの塩であれば、特に限定されない。また、それらを組み合わせて用いても良く、グアニジニウム塩の濃度は2M以上の高濃度にて使用するのが望ましい。
一方、ヨウ化物としては、ヨウ化ナトリウムまたはヨウ化カリウムなどがあり、(イソ)チオシアン酸塩としては、(イソ)チオシアン酸ナトリウム、(イソ)チオシアン酸カリウムまたは(イソ)チオシアン酸アンモニウムなどがある。
【0014】
さらに、溶解液においては、細胞膜の破壊あるいは細胞に含まれるタンパク質を可溶化させる界面活性剤を単独で使用するか、あるいはカオトロピック剤と併用させても良い。カオトロピック剤と併用しない場合は、一般に細胞等から核酸抽出されるものであれば特に限定されないが、特表平11−501504号公報に開示されているようなドデシル硫酸ナトリウムやアルキル硫酸アルカリ金属塩あるいはサルコシンが望ましい。しかしながら、カオトロピック剤と併用する場合、前者2つの界面活性剤は不溶化するために用いることができない。トリトン系界面活性剤、及びツイーン系界面活性剤などの非イオン性界面活性剤、N−ラウロイルサルコシン酸ナトリウムなどの陰イオン性界面活性剤であれば特に限定されない。本発明においては、特にRNA分解酵素活性が高い試料において、カオトロピック剤との併用で0.01〜2.0%の陰イオン性界面活性剤を使用することが好ましい。
【0015】
本発明において、特にカオトロピック剤を含有する溶解液で試料を溶解した場合、溶液の粘性が非常に高まり、担体あるいはオリゴdTへの特異的な結合を妨げてしまう。そのため、pHが5〜10のTris−塩酸緩衝液、Hepes−KOH緩衝液、Hepes−NaOH、クエン酸ナトリウム緩衝液等の緩衝液、特に0〜200mMのリチウム塩もしくはナトリウム塩が含まれるこれらの緩衝液を2倍量程度加えて希釈し、粘性を下げることが好ましい。さらに、溶解された試料を20〜25Gの注射針を装着したシリンジに繰り返し通すことで、ゲノムDNAを切断して粘性を下げてもよい。
【0016】
本発明で使用するオリゴdTが共有結合もしくは非共有結合で固定化された担体とは、ポリA+RNAの3’末端ポリアデニル化領域(ポリAテール)に実質的に相補的な配列を固定化したものである。また、本発明において使用する担体に特異的に結合可能な官能基を有するオリゴdTとは、ポリA+RNAのポリAテールに実質的に相補的な約20〜50塩基からなる配列で担体に特異的に結合可能な官能基が付加されたものであり、担体との組み合わせにおいて具体的にはビオチン付加オリゴdTとストレプトアビジン付加担体、ジゴキシゲニン付加オリゴdTと抗ジゴキシゲニン抗体付加担体などが挙げられる。これら担体の形態としては、粒子、フィルター、及び反応器具等が具体的挙げられるが特に限定はされない。これらのうち、吸着と溶出の効率を考慮すると粒子の形態のものが好ましい。さらには、磁性シリカ粒子を用いるのがより好ましい。
【0017】
上記工程により得られた担体−ポリA+RNA複合体を液相より分離する工程では、例えば、遠心分離及び上清の除去、又は担体として磁性粒子を使用する場合は磁界を利用して液相から担体−ポリA+RNA複合体を分離するのが好ましい。また、フィルター及び反応容器等の場合は、液を排出もしくは除去するのみでもよい。
【0018】
上記工程により得られた担体−ポリA+RNAを洗浄する工程において、該複合体を適当な洗浄液により、例えばボルテックスミキサーなどを用いて懸濁し、再び液相より分離し、上清を除去するのが好ましい。該複合体の分離は、遠心分離、濾過およびカラム操作が好ましく、さらに磁性粒子を使用すれば、磁石等を用いた簡便な磁気分離法が可能となるのでより好適である。
【0019】
本発明においてしようする洗浄液は、ポリA+RNAとオリゴdTの特異的な結合を解離させない程度の低濃度の塩を含むpHが5〜10の例えばTris−塩酸緩衝液、Hepes−KOH緩衝液、Hepes−NaOH、クエン酸ナトリウム緩衝液等の緩衝液であり、オリゴdTの塩基数にも依存するが、25〜100mMのリチウム塩またはナトリウム塩を含むのがより好ましい。塩濃度が高いと担体に非特異的に吸着しているrRNA、ゲノムDNA等を十分に除けず、純度の高いポリA+RNAを得ることができない。また、カオトロピック剤、界面活性剤等を含んでいてもよいが、後にDNase等の酵素反応を行う場合には、さらに界面活性剤、カオトロピック剤を含まない低塩濃度の緩衝液にて洗浄することが必要である。
【0020】
核酸の溶出工程においては、ポリA+RNAを担体に固定化されたオリゴdTより解離させる。この場合に用いられる溶出液としては、オリゴdTからの核酸の溶離を促進するものであれば特に限定されない。具体的には、RNA分解酵素の混入がない水、トリス緩衝液 [10mMトリス緩衝液、pH7.0〜8.0] が好ましい。
また、加熱により解離を促進させてもよい。加熱温度はオリゴdTの塩基数にもよるが、ポリA+RNAに悪影響を及ぼさない程度の条件であれば特に限定されないが、具体的には60〜65℃が好ましい。
【0021】
本発明においては、上記工程にて得られたポリA+RNA溶液に混入するDNAをDNaseにより処理する。本発明で用いるDNaseとしては、DNaseI、エキソヌクレアーゼIII,ATP依存型デオキシリボヌクレアーゼ、Mung Beanヌクレアーゼ、S1ヌクレアーゼ等が挙げられるが、特に限定はされない。本発明においては、RNaseの混入のないDNaseIが好ましい。さらに、DNaseがRNAに作用しないように過剰量の酵素を加えない、氷上などの低温で酵素反応を行うことの他、DNase中のRNaseの混入が懸念されるため、RNase阻害剤を共存させることが望ましい。該RNase阻害剤としては、ヒトあるいはブタ胎盤由来のRNase Inhibitor等が挙げられるが、特に限定されない。
【0022】
本発明においては、上記処理液をタンパク質変性剤を含む溶液と混合し、必要に応じて緩衝液を添加し、ポリA+RNAをオリゴdTが共有結合もしくは非共有結合により固定化された担体に特異的に吸着させるか、又はポリA+RNAを担体に特異的に結合可能な官能基を有するオリゴdTに結合させ、さらに該官能基に特異的に結合可能な部分を有する担体に結合させる。続いて、担体−ポリA+RNA複合体を液相より分離し、必要に応じて該複合体を洗浄し、ポリA+RNAを該複合体から解離させる。
【0023】
一般にRNA溶液をDNaseで処理した場合、DNaseを変性失活・除去するために有害なフェノールとクロロホルムの混合液を用いて抽出操作を行うため危険である。本発明においては、処理液をタンパク質変性剤を含む溶液と混合し、DNaseを変性させ、かつポリA+RNAを吸着分離することにより、DNaseが除去されるため、有害な有機溶媒を使う必要がない。また、このポリA+RNAの吸着分離の操作により同時に混入したrRNAも除去されるため、さらに純度の高いポリA+RNAを得ることができる。
DNase処理後に使用するタンパク質変性剤を含む溶液、緩衝液、オリゴdT固定化担体または担体に特異的に結合可能な官能基を有するオリゴdTとその担体、洗浄液、溶出液等は、先の工程において用いたものと異なるものを使用してもよいが、作業効率等を考慮すれば特に異なるものを使用する必要はなく、同じものを使用することが好ましい。
【0024】
本発明によるポリA+RNAの精製方法は、危険な溶媒等を使用することなく、簡便な操作で極めて高純度なポリA+RNAを生体成分より分離することが可能であるため、ポリA+RNAの精製キットや、固相の分離操作や試薬の分注を自動化した核酸抽出装置への応用が可能であることが明らかである。また、本発明の方法により得られたポリA+RNAは、ノザンブロット解析、RT−PCR解析、cDNAライブラリーの調製、cDNAクローニングの鋳型などとして使用可能であり、不純物の混入が少ないため、上述のような解析操作の負担を軽減することができる。
【0025】
本発明におけるポリA+RNAの精製方法の一実施態様としては、次の工程を含むものである。
(a)核酸を含有する試料をタンパク質変性剤を含む溶液により溶解する工程、
(b)ポリA+RNAをオリゴdTが共有結合もしくは非共有結合により固定化された担体に特異的に吸着させるか、又はポリA+RNAを担体に特異的に結合可能な官能基を有するオリゴdTに結合させ、さらに該官能基に特異的に結合可能な部分を有する担体に結合させる工程、
(c)担体−ポリA+RNA複合体を液相より分離する工程、
(d)該複合体を洗浄する工程、
(e)ポリA+RNAを該複合体から解離させる工程、
(f)該ポリA+RNA溶液に混入するDNAをDNaseで処理する工程、
(g)該DNase処理液をタンパク質変性剤を含む溶液と混合する工程、
(h)ポリA+RNAをオリゴdTが共有結合もしくは非共有結合により固定化された担体に特異的に吸着させるか、又はポリA+RNAを担体に特異的に結合可能な官能基を有するオリゴdTに結合させ、さらに該官能基に特異的に結合可能な部分を有する担体に結合させる工程、
(i)担体−ポリA+RNA複合体を液相より分離する工程、
(j)該複合体を洗浄する工程、
(k)ポリA+RNAを該複合体から解離させる工程
工程(b)及び/又は工程(h)を行う前に、緩衝液の添加を行うことがより好ましい。
【0026】
また、本発明におけるポリA+RNA精製用試薬の一実施態様として、(a)タンパク質変性剤を含有する溶解液、(b)オリゴdTが共有結合もしくは非共有結合により固定化された担体又は担体に特異的に結合可能な官能基を有するオリゴdT及び該官能基に特異的に結合可能な部分を有する担体、(c)洗浄液、(d)溶出液、及び(e)DNaseを含むことを特徴とする。さらに、(f)RNase阻害剤及び/又は(g)溶解工程後に添加する緩衝液を含むことがより好ましい。
(c)洗浄液が25〜100mMのナトリウム塩もしくはリチウム塩を含むことが好ましい。また、(g)溶解工程後に添加する緩衝液が200mM以下のナトリウム塩もしくはリチウム塩を含むことが好ましい。
【0027】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を例示することによって、本発明の効果をより一層明確なものとする。
【0028】
実施例1 培養細胞からのポリA+RNAの精製
(1)ポリA+RNAの精製
培養されたHeLaS3細胞5×106cellに400μlの溶解液 [4Mグアニジンチオシアン酸塩、0.5%ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、0.1Mトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)、5mMジチオトレイトール] を加え、よく溶解した。次に800μlの緩衝液 [0.1Mトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)、200mM塩化リチウム、20mM EDTA] と混合し、25G注射針を装着したシリンジに約10回通し、粘性を低下させた。新しいマイクロチューブに10mg/mlのオリゴdT固定化磁性粒子(Genovision社)を125μl分取し、磁性スタンド(Magical Trapper;東洋紡績製)に静置し、磁性粒子を回収し、上清を除去した。この磁性粒子に上記試料溶液を加え、ボルテックスミキサーでよく懸濁した後、室温で10分間放置した。
【0029】
次に、このマイクロチューブを磁性スタンドに静置し、磁性粒子を回収し、上清をピペットで除去した。次に4条件の洗浄液 [10mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)、1mM EDTA、75、50、25及び0mM塩化リチウム]を1ml加え、ボルテックスミキサーでよく懸濁し、磁性粒子を回収し、上清を除去した。この洗浄操作を3回繰り返し、上清を完全に除去した。90μlのRNA分解酵素を含まない水を加え、粒子を懸濁して、65℃、2分間加熱後、再度磁性スタンドに静置し、上清を回収した。この際、 回収液より9μl抜き取り、1回精製サンプルとした。このポリA+RNAを含む回収液に10×DNaseI Buffer [100mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)、20mM塩化マグネシウム] を10μl、1U/μlに調製したDNaseI(宝酒造製)を1μl、10U/μlに調製したRNase Inhibitor(東洋紡績製)を1μl加えて、氷上に10分間放置してDNAを処理した。この処理液にそのまま溶解液400μlを加えてよく混和した後、緩衝液で希釈した。
【0030】
新しいマイクロチューブに10mg/mlのオリゴdT固定化磁性粒子を125μl分取して、磁性スタンドに静置し、磁性粒子を回収し、上清を除去した。この磁性粒子に上記希釈済み溶液を加えて、ボルテックスミキサーでよく懸濁した後、室温で10分間放置した。次に、このマイクロチューブを磁性スタンドに静置し、磁性粒子を回収し、上清をピペットで除去した。次に4条件の洗浄液を1ml加えて、ボルテックスミキサーでよく懸濁し、磁性粒子を回収し、上清を除去した。この洗浄操作を3回繰り返し、上清を完全に除去した。30μlのRNA分解酵素を含まない水を加え、粒子を懸濁して、65℃、2分間加熱後、再度磁性スタンドに静置し、上清を回収した。
【0031】
(2)アガロース電気泳動によるポリA+RNAの解析
本発明の方法により培養細胞から得られたポリA+RNA溶液3μl及び途中で分取した1回精製サンプル9μlをそれぞれ等量の色素液(0.25%ブロモフェノールブルー、1mM EDTA、ホルムアミド)と混合し、65℃、10分間加熱した後、1%アガロースゲルに全量をスロットした。電気泳動装置はGelMate(東洋紡績製)を用い、1×MOPS緩衝液(20mM MOPS、5mM酢酸ナトリウム、1mM EDTA)中で100V、40分間泳動を行った。電気泳動終了後、ゲルをエチジウムブロマイド溶液で30分間浸せきし、水道水にて軽く洗浄後、UV照射下で核酸の蛍光を撮影した。その結果を図1に示す。図1において、レーン1、5は洗浄液中塩化リチウム濃度が75mM、レーン2、6は洗浄液中塩化リチウムが50mM、レーン3、7は洗浄液中塩化リチウムが25mM、レーン4、8は洗浄液中塩化リチウムが0mM、レーン1〜4は1回精製サンプル、レーン5〜8は本発明の方法により得られたポリA+RNAの泳動パターンを示す。いずれの洗浄条件においても1回の精製ではゲノムDNAやrRNAの混入が見られる。しかし、本発明のDNaseI処理と再精製を行うことで、特に洗浄液中の塩化リチウムを50mMとした場合に高純度のポリA+RNAが得られた。
【0032】
【発明の効果】
上述したように、本発明により、様々な生体材料から簡便でかつ高純度にポリA+RNAを精製することが可能となった。この方法により得られたポリA+RNAは、ノザンブロット解析、RT−PCR解析、cDNAライブラリーの調製、cDNAクローニングなどの鋳型として利用でき、かつ不純物の混入が少ないため、上述したような解析操作の負担を大きく軽減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法により、培養細胞より精製されたポリA+RNAの電気泳動による解析結果を示す。
Claims (12)
- 以下の工程(a)〜(k)を含んでなることを特徴とするポリA+RNAの精製方法。
(a)核酸を含有する試料を カオトロピック剤、及び、ラウリル硫酸ナトリウム、アルキル硫酸アルカリ金属塩、N−ラウロイルサルコシン、ノニデットP−40、ポリエチレングリコールモノ−p−イソオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートからなる群より選択される少なくとも1種の化合物である界面活性剤であるタンパク質変性剤を含む溶液により溶解する工程、
(b)ポリA+RNAをオリゴdTが共有結合もしくは非共有結合により固定化された担体に特異的に吸着させるか、又はポリA+RNAを担体に特異的に結合可能な官能基を有するオリゴdTに結合させ、さらに該官能基に特異的に結合可能な部分を有する担体に結合させる工程、
(c)担体−ポリA+RNA複合体を液相より分離する工程、
(d)該複合体を洗浄する工程、
(e)ポリA+RNAを該複合体から解離させる工程、
(f)該ポリA+RNA溶液に混入するDNAをDNaseで処理する工程、
(g)該DNase処理液をタンパク質変性剤を含む溶液と混合する工程、
(h)ポリA+RNAをオリゴdTが共有結合もしくは非共有結合により固定化された担体に特異的に吸着させるか、又はポリA+RNAを担体に特異的に結合可能な官能基を有するオリゴdTに結合させ、さらに該官能基に特異的に結合可能な部分を有する担体に結合させる工程、
(i)担体−ポリA+RNA複合体を液相より分離する工程、
(j)該複合体を洗浄する工程、
(k)ポリA+RNAを該複合体から解離させる工程 - 工程(b)及び/又は工程(h)を行う前に、緩衝液の添加を行う請求項1記載のポリA+RNAの精製方法。
- カオトロピック剤がグアニジニウム塩、尿素、ヨウ化物及び(イソ)チオシアン酸塩からなる群より選択される少なくとも1種の化合物である請求項2記載の方法。
- 工程(b)及び/又は工程(h)を行う前に用いられる緩衝液が200mM以下のナトリウム塩もしくはリチウム塩を含む請求項2記載の方法。
- 洗浄液が25〜100mMのナトリウム塩もしくはリチウム塩を含む請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
- DNaseにRNase阻害剤を共存させる請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
- (a)カオトロピック剤、及び、ラウリル硫酸ナトリウム、アルキル硫酸アルカリ金属塩、N−ラウロイルサルコシン、ノニデットP−40、ポリエチレングリコールモノ−p−イソオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートからなる群より選択される少なくとも1種の化合物である界面活性剤であるタンパク質変性剤を含有する溶解液、
(b)オリゴdTが共有結合もしくは非共有結合により固定化された担体又は担体に特異的に結合可能な官能基を有するオリゴdT及び該官能基に特異的に結合可能な部分を有する担体、
(c)洗浄液、
(d)溶出液、及び
(e)DNase
を含むことを特徴とするポリA+RNA精製用試薬。 - (f)RNase阻害剤をさらに含む請求項7記載のポリA+RNA精製用試薬。
- (g)溶解工程後に添加する緩衝液をさらに含む請求項7記載のポリA+RNA精製用試薬。
- (f)RNase阻害剤及び
(g)溶解工程後に添加する緩衝液
をさらに含む請求項7記載のポリA+RNA精製用試薬。 - (c)洗浄液が25〜100mMのナトリウム塩もしくはリチウム塩を含む請求項7〜10のいずれかに記載の試薬。
- (g)溶解工程後に添加する緩衝液が200mM以下のナトリウム塩もしくはリチウム塩を含む請求項9又は10に記載の試薬。
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