JP3918676B2 - オーディオミキシング用信号経路設定装置およびオーディオミキシング用信号経路設定プログラム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数系統のオーディオ信号をミキシングするシステムのために、信号経路を設定するオーディオミキシング用信号経路設定装置およびオーディオミキシング用信号経路設定プログラムに関するものである。特に、複数系統のオーディオ信号を信号処理した上でミックスするオーディオミキサに適用して好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
オーディオミキサ(オーディオミキシングシステム)は、複数の入力系統の信号の中からオペレータによって指定された複数の入力系統のオーディオ信号(音声信号、楽音信号など)をミックスして、複数の出力系統の中からオペレータによって指定された出力系統に出力する。
従来の放送スタジオ用オーディオミキサは、「ミックスマイナス」という機能を備えている。アナウンサは、ミキシングされた音声をモニタしながら、マイクロフォンに音声を入力する。しかし、アナウンサが所在する場所とオーディオミキサの設置場所とが離れている場合、自分の音声が遅れて聞こえるので話しづらい。そこで、上述した「ミックスマイナス」という機能を用いて、自分の音声だけが抜かれた音声をモニタできるようにしている。
【0003】
主にホールやイベント会場で使用されているオーディオミキサにおいても、上述した「ミックスマイナス」機能を持たせれば、放送用に使用する場合などにおいて同様の問題を解決できる。
しかし、従来の放送スタジオ用のオーディオミキサにおいては、一度ミキシングが完成された信号からアナウンサの音声信号を減算する回路を用いて「ミックスマイナス」機能を実現していた。そのため、専用の回路を別途必要とし、また、信号品質が劣化するという問題があった。
これに対し、従来、ホールやイベント会場で使用されているオーディオミキサにおいては、信号入力端子および信号出力端子を多数備えている。そのため、入力系統を出力系統に接続するために自由度の高い信号経路設定機能を備えている。そこで、この信号経路設定機能を利用して「ミックスマイナス」機能を実現する方法を検討した。
【0004】
図5は、従来、ホールやイベント会場で使用されているオーディオミキサのシステム構成図である。説明を簡単にするため、本発明に関係しないブロックは省略した。
図中、51はマイクロフォン入力カードであり、入力端子、内蔵ヘッドアンプ、アナログ/デジタル変換器を有する。52はライン入力カードであり、入力端子、アナログ/デジタル変換器を有する。53はデジタル入力カードであり、デジタル出力端子を有する。これらの入力カードの1または複数枚を任意に組み合わせてボックスに実装する。
54は入力パッチであり、上述した入力カードからの各入力信号を入力チャンネル処理部55の各入力チャンネルに選択的に接続する。
55は入力チャンネル処理部であり、各入力チャンネル毎に入力信号の音量,音質等を調整し、調整前あるいは後の出力をミックスバス56,ステレオバス57の中の任意のバスに選択的に接続する。ミックスバス56には、例えば MIX1からMIX48までのバスがあり、ステレオバス57には、STEREO L,STEREO Rのバスがある。
【0005】
ミックス出力チャンネル処理部59は、対応するミックスバス56に接続され、各ミックスバス56に接続された各入力チャンネルの信号がミックスされたものが入力され、音量,音質等を調整し出力パッチ部60に出力する。
一方、ステレオ出力チャンネル処理部58は、対応するステレオバス(STEREO L,STEREO R)57に接続され、このバスに接続された各入力チャンネルの信号がミックスされて入力され、音量等を調整し出力パッチ部60に出力する。
ミックスバスMIX1〜MIX48はミックス出力チャンネルと対応し、ステレオバスSTEREO L,Rはステレオ出力チャンネルと対応する。
出力パッチ部60においては、ミックス出力チャンネル処理部59、ステレオ出力チャンネル処理部58の各出力信号を、後続する任意の出力端子に選択供給する。61はアナログ出力カードであり、デジタル/アナログ変換器と出力端子を有する。62はデジタル出力カードであり、デジタル出力端子を有する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ミキシング出力信号の中から特定の入力系統の信号を除外して出力する機能を、既存の信号経路設定機能を利用して実現するオーディオミキシング用信号経路設定装置およびオーディオミキシング用信号経路設定プログラムを提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、請求項1に記載の発明においては、複数の入力系統と複数の出力系統とを備え、前記複数の入力系統の中から任意に選択された複数の入力系統のそれぞれを、前記複数の出力系統の中から、該入力系統毎に任意に選択された少なくとも1つの出力系統に接続することによりミキシングをするオーディオミキシングシステムの信号経路を設定するオーディオミキシング用信号経路設定装置において、任意に選択された所定の複数の入力系統を、前記複数の出力系統の中から任意に選択された第1の出力系統に接続する信号経路を設定する第1の信号経路設定手段と、前記複数の入力系統の中から任意に除外入力系統を設定する除外入力系統設定手段と、前記所定の複数の入力系統のうち、前記除外入力系統設定手段により設定された除外入力系統とは異なる全ての入力系統を、前記第1の出力系統とは異なる、前記複数の出力系統の中の第2の出力系統に接続する信号経路を設定する第2の信号経路設定手段を有し、前記第2の出力系統から、前記除外入力系統を有したモニタ用のミキシング信号を出力させるものである。
従って、既存の信号経路設定機能に変更を加えるだけで、除外入力系統を有したミキシング出力信号をミキシングシステムから出力させることができる。
一度生成されたミキシング信号出力から減算する方法を用いていないので、信号品質を劣化させない。
【0008】
請求項2に記載の発明においては、請求項1に記載のオーディオミキシング用信号経路設定装置において、前記複数の出力系統の中から、前記第1の出力系統とは異なる前記第2の出力系統を任意に設定する出力系統設定手段を有するものである。
【0009】
請求項3に記載の発明においては、請求項1に記載のオーディオミキシング用信号経路設定装置における、第1の信号経路設定手段、除外入力系統設定手段、および、第2の信号経路設定手段を、コンピュータプログラムの処理ステップで実行させるようにしたものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の実施の一形態を説明する信号経路図である。
図中、太線で示した信号経路は、従来の信号経路に新たに加えられた部分である。下記に示すスイッチやボリューム等の構成要素は、機能を示すものであって、必ずしも機械部品ではなく、必ずしも電気配線されたものではない。
11〜1mは信号処理部であり、第1〜第mの入力チャンネルの音質調整を行う。この信号処理部11〜1mの入力ポイントも、ミックスバス(MIX1〜MIXn)56への出力ポイント(プリイコライザ,PRE EQ)になる場合がある。
21〜2mはフェーダであり、音量調整を行う。この出力ポイントは「プリフェーダ(PRE FADER)」という。
【0011】
31〜3mはポストオンスイッチであり、フェーダ21〜2mを通った信号を後続するミックスバス(MIX1〜MIXn)56,ステレオバス57に接続するか否かを制御する。この出力ポイントを「ポストオン」(POST ON)という。
41〜4mはパン(音像定位)ボリュームであり、ポストオンスイッチ31〜3nの各出力ポイントにその摺動接点端子が接続される。
51L,51R〜5mL,5mRは、各入力チャンネルからステレオバス57への送りスイッチ(POST "TO ST"スイッチ)であり、パンボリューム41〜4mのL,R端子に接続され、各L,Rは連動してオンオフ動作をし、ステレオバス57への接続の有無を制御する。この出力ポイントを「ポスト・トゥ・ステレオ」(POST
"TO ST")という。
【0012】
611〜61nは、ミックスバス(MIX1〜MIXn)56に対する第1の入力チャンネルの出力ポイント選択スイッチである。第1の入力チャンネルの出力ポイント(PRE EQ,PRE FADER,POST ON,POST "TO ST")を選択する。
「ポスト・トゥ・ステレオ」(POST "TO ST")に関しては、パンボリューム41のL端子は、出力ポイント選択スイッチ611〜61nの奇数番目に接続され、R端子は偶数番目に接続される。
711〜71nは、第1の入力チャンネルからミックスバス(MIX1〜MIXn)への送り量(SEND LEVEL)ボリュームである。個々のミックスバス(MIX1〜MIXn)56へのレベル配分を調整する。
511〜51nは、第1の入力チャンネルからミックスバス(MIX1〜MIXn)56への送りスイッチ(TO MIX1〜MIXn SENDスイッチ)である。
【0013】
同様に、6m1〜6mnは第mの入力チャンネルの出力ポイント選択スイッチ、7m1〜7mnは第mの入力チャンネルからミックスバス(MIX1〜MIXn)56への送り量(SEND LEVEL)ボリューム、5m1〜5mnは、第mの入力チャンネルからミックスバス(MIX1〜MIXn)56への送りスイッチ(TO MIX1〜MIXn SENDスイッチ)である。
各入力チャンネルの信号は、出力ポイント選択スイッチ611〜6mnの可動接点端子、送り量ボリューム711〜7mnおよび送りスイッチ511〜5mnを経て、ミックスバス(MIX1〜MIXn)56に接続可能である。
「ポスト・トゥ・ステレオ」(POST "TO ST")に関しては、パンボリューム41〜4mのL端子からの信号は、ミックスバス(MIX1〜MIXn)56の奇数番目のバスに出力可能であり、R端子からの信号は偶数番目のバスに出力可能である。
【0014】
上述した信号経路において、複数の送りスイッチ51L,51R、511〜51n、……、5m1〜5mnのオンオフ状態を設定することにより、入力チャンネル処理部55から出力される第1〜第mの入力チャンネルの信号の中からオペレータによって任意に選択された複数の入力チャンネルの信号は、ミックスバス(MIX1〜MIXn)56,ステレオバス57(STEREO L,R)の中から任意に選択されたバスに供給されることにより、ミックスされて、対応するミックス出力チャンネル(図5)59およびステレオ出力チャンネル(図5)58に出力される。
上述した複数の送りスイッチ51L,51R、511〜51n、……、5m1〜5mnのオンオフは、例えば、CPUのプログラムステップにより実行される信号経路設定手段による信号経路設定に従って実行される。
【0015】
第1の信号経路設定手段が、選択された所定の複数の入力チャンネルを放送出力用の第1の出力系統のバスに接続する信号経路を設定する。この実施の形態では、放送用の音声信号はステレオ出力チャンネルから出力することを前提としている。従って、「ミックスマイナス」を適用する前の、元のミキシング出力チャンネルは、ステレオ出力チャンネル(LまたはRチャンネル)に固定設定している。図示の例では、上述した元のミックス出力チャンネルに接続される所定の複数の入力チャンネルを、第1チャンネルおよび第mの入力チャンネルとしている。
オペレータの指示入力に従って、図示しない除外入力チャンネル設定手段は、複数の入力チャンネルの中から除外入力チャンネル(「マイナス」される入力チャンネル)を設定する。図示の例では、第1の入力チャンネルとしている。
また、オペレータの指示入力に従って、図示しないミックス出力チャンネル設定部は、複数のミックス出力チャンネルの中から、「ミックスマイナス」出力チャンネルとして、元のミックス出力チャンネルとは異なる第2のミックス出力チャンネルを設定する。オペレータは、空いているミックス出力チャンネル、使用中であるが切り替えてもよいミックス出力チャンネルの中から、除外入力系統付きの「ミックスマイナス」出力チャンネルを任意に指定して設定できる。図示の例では、第4のミックス出力チャンネル(ミックスバスMIX4)としている。
【0016】
第2の信号経路設定手段が、第1の信号経路設定手段により選択された所定の複数の入力チャンネル(第1,第mの入力チャンネル)のうち、除外入力チャンネル(第1の入力チャンネル)とは異なる全ての入力チャンネル(第mの入力チャンネル)を、第1のミックス出力チャンネル(この実施の形態では、ステレオ出力チャンネル)とは異なる第2のミックス出力チャンネル(第4の出力チャンネル)のミックスバス(MIX4)に接続する信号経路を設定する。
すなわち、図示の例では、出力ポイント選択スイッチ6m4,送り量(SEND LEVEL)ボリューム7m4(ゲイン0dB)、送りスイッチ(TO MIX4 SEND)5m4の信号経路を設定する。一方、出力ポイント選択スイッチ614,送り量(SEND LEVEL)ボリューム714(ゲイン−∞dB)、送りスイッチ(TO MIX4 SEND)514の信号経路は、ゲインが完全に絞られるので実質的に信号経路とならない。
上述した第2の信号経路の設定動作は、図3を参照して後述する。
【0017】
図2は、本発明の実施の形態のハードウエア構成例を示すブロック図である。
CPU15は、フラッシュメモリ16に格納された動作プログラム、パッチデータ等の各種設定データを用い、RAM17をワークエリアとして、オーディオミキサの制御動作を行う。
より具体的には、バス11を介して、コンソールパネル上の各フェーダ13,操作子14の操作を検出して、オペレータの指示を受け付け、信号処理部21にミキシング動作をさせるための設定を行う。表示画面を作成して表示器12を制御したり、フェーダのモータ制御なども行う。表示画面に、操作子を表示させ、GUI(グラフィカルユーザインターフェース)による操作も行える。
CPU15は、信号処理部21における、各入力チャンネルの設定として、エフェクト、フェーダ、出力先、出力レベル等、各ミックス出力チャンネルの設定として、エフェクト、フェーダ等の設定を行う。上述した設定の一部として、図1に示した信号経路の設定がある。設定状態は、パネル操作状態を一括して保存,読み出しされる「シーンデータ」としてフラッシュメモリ16に記憶可能である。
【0018】
AD/DIO191〜1910は、アナログ/デジタル変換ボックス、デジタルインターフェースボックスである。コネクタ201〜2010を介して信号処理部21に接続される。アナログ/デジタル変換ボックスには、図5に示したような入力カードが実装される。一方、DA/DIO231〜2310は、デジタル/アナログ変換ボックス、およびまたは、デジタルインターフェースボックスであり、信号処理部21からコネクタ221〜2210を介して接続される。図5に示した各種の出力カードが実装される。
信号処理部21は、例えばDSP(Digtal Signal Processor)である。CPU15により、設定値、信号経路等が設定され、所望の複数の入力端子から入力された信号を任意に選択してミックスし、所望の出力端子から出力する動作をする。同時並行して複数のミキシング動作が行えるので、除外する入力チャンネルがある場合も同様にして実行される。
【0019】
バス11には、外部のパーソナルコンピュータ等と接続するためのインターフェース(PC/IO)18を有し、例えば、パーソナルコンピュータは、その表示器に、表示器12と同様の表示画面を表示させて、CPU15と同様に、信号処理部21に対する設定を行うことができる。
フラッシュメモリ16に記憶されるCPU15を動作させる制御プログラムや設定データは、書き換えることができる。図示しない外部記憶装置(メモリーカードやCD-ROMなど)を用いて新たな制御プログラムや設定データをインストールしたり、インターフェース(PC/IO)18を介し、ネットワーク上のサーバコンピュータからダウンロードしてもよい。
【0020】
図3は、本発明の実施の一形態の動作例を示すフローチャートである。図2に示したCPU15あるいは外部接続されたパーソナルコンピュータが制御プログラムに従って、「ミックスマイナス」設定の各ステップを実行する。
図4は、「ミックスマイナス」設定を実行する画面の一例を示す図である。本発明に関係しない表示があるが、これらの説明は省略する。
図中、41は「チャンネル・トゥ・ミックス」表示画面、45はジョブ選択画面である。
「チャンネル・トゥ・ミックス」表示画面41において、送り元である入力チャンネルが横方向に、送り先であるステレオチャンネル,ミックス出力チャンネル(ミックスバス)が縦方向に配置されている。ただし、ミックス出力チャンネルは、偶数番目と奇数番目とを2つずつ横に並べた上で、縦方向に配列されている。表示範囲は、スクロールバーを操作して移動させる。
(51L,51R),(52L,52R),(53L,53R),(54L,54R),513,514,523,524,533,534,543,544は送りスイッチ、41,42,43,44はパンボリューム、713,714,723,724,733,734,743,744は送り量ボリュームであり、図1の送りスイッチ,パンボリューム,送り量ボリュームと対応する。
【0021】
421〜424は、除外入力チャンネルを設定する操作ボタンである。
431〜434は、図1に示した出力ポイント選択スイッチによって「ポスト・トゥ・ステレオ」(POST "TO ST")を選択することに対応するスイッチである。
図示の例では、ミックスマイナスボタン421〜424を、除外入力チャンネルに対応する入力チャンネルの表示位置に表示している。
ポスト・トゥ・ステレオ・ボタン431〜434は、「ポスト・トゥ・ステレオ」出力ポイントからの接続先に対応するミックス出力チャンネルがある表示位置に表示している。この図4の例では、図1の出力ポイント選択スイッチ611〜6mnとは若干異なり、奇数と偶数の2つのミックス出力チャンネルをペアとして「ポスト・トゥ・ステレオ」出力ポイントの接続先としている。従って、「ミックスマイナス」出力チャンネルは、この「ポスト・トゥ・ステレオ」出力ポイントの接続先であるペアの1つである。
【0022】
図3に示したフローチャートは、まず、図4の「チャンネル・トゥ・ミックス」表示画面41を表示させ、オペレータが「ミックスマイナス」ボタン421〜424,……,42mの1つをクリックすることにより起動する。ミキシングコンソール上の操作子を用いた操作でも起動する。
S31において、クリックしたものがミックスマイナスボタン421のときは、S31において、CH1を除外入力チャンネルとして受け付ける。
S32において、図4のジョブ選択画面44をポップアップ表示させる。その除外入力チャンネル表示部45に、チャンネル1が表示される。
S33において、オペレータは、ミックスバスリスト46の中から、1つのミックス出力チャンネル(例:ミックスバスMIX4)をクリックする。次に、OKボタン47をクリックすると、「ミックスマイナス」出力チャンネルの指定を受け付ける。なお、入力チャンネルやミックス出力チャンネルが、予め「ペア」にされていた場合(例えば、図示のMIX1&MIX2)には、ペアで受け付けられる。
【0023】
S34において、ステレオバス57に送りが設定されている複数の入力チャンネルの中から、除外入力チャンネルとは異なる全ての入力チャンネルの信号を、「ミックスマイナス」出力チャンネルに出力させるための信号経路設定を作成する。
具体的には、図中(1)〜(3)に示す信号経路設定が行われる。
(1) 「ミックスマイナス」出力チャンネル(ミックスバスMIX4)に対する全入力チャンネルの出力ポイント選択スイッチ614,624,634,…,6m4が、放送の試聴者が聞いている「ポスト・トゥ・ステレオ」(POST "TO ST")を選択するように設定する。なお、図4の例では、出力ポイント選択スイッチのペア(613,614など)は、共に「ポスト・トゥ・ステレオ」を選択している。
(2) 「ミックスマイナス」出力チャンネル(ミックスバスMIX4)に対する全入力チャンネルについて、送りスイッチ514,524,534,544,…,5m4をオンにする。
(3) 除外入力チャンネル(CH1)から「ミックスマイナス」出力チャンネル(MIX4)への送り量ボリューム714の送り量を−∞dBとする。
(4) 除外入力チャンネル(CH1)から「ミックスマイナス」出力チャンネル(MIX4)への送り量ボリューム724,734,744の送り量を0dB(nominalレベル)にする。
【0024】
上述したように、この実施の形態においては、「ミックスマイナス」の信号経路設定では、ステレオバス57に出力される所定の複数の入力チャンネルを選択(「ポスト・トゥ・ステレオ」を出力ポイントとして設けた)しているので、元の信号経路設定に応じた信号経路を一部に使用している。次に、その入力チャンネルのうち、除外入力チャンネルとは異なる全ての入力チャンネルと「ミックスマイナス」出力チャンネルとの間を接続させる。従って、元の信号経路設定に連動しているので、設定動作が簡単になる。
オペレータによって選択される除外入力チャンネルは、ステレオバス57に出力されている所定の複数の入力チャンネルの中から選択されるように、選択入力時に予め制限を設けてもよい。しかし、仮に、所定の複数の入力チャンネルの中に選択された除外入力チャンネルが含まれていなくても、誤動作をしない信号経路になっている。
【0025】
なお、図4の「チャンネル・トゥ・ミックス」表示画面41において、オペレータが、「ポスト・トゥ・ステレオ・ボタン(TO ST)」434を直接クリックして出力ポイントを「ポスト・トゥ・ステレオ」にすることもできる。
上述した例では、除外入力チャンネルと「ミックスマイナス」出力チャンネルとの間を接続しないようにするため、信号接続経路にある送り量ボリューム714のゲインを−∞(dB)として完全に絞り込んでいる。これに代えて、送りスイッチ514をオフにしてもよい。
あるいは、ステレオ出力チャンネルに接続される所定の複数の入力チャンネルに含まれている除外入力チャンネルについては、除外入力チャンネルの信号レベルを所定量だけ減衰させて「ミックスマイナス」出力チャンネルに接続する信号経路を設定してもよい。すなわち、送り量ボリューム714により所定量だけ減衰させて、アナウンサには自分の音声が小さく聞こえるようにしてもよい。
【0026】
また、「ミックスマイナス」に2つのモードを設けてもよい。所定の複数の入力チャンネルのうち、除外入力チャンネルとは異なる全ての入力チャンネルを、「ミックスマイナス」出力チャンネルに接続する第1のモードと、所定の複数の入力チャンネルの全ての入力チャンネルを上述した「ミックスマイナス」出力チャンネルとしたミックス出力チャンネルに接続する第2のモードを設け、モード指定手段によりモードを切り替えてもよい。
図1に示した信号経路の設定は一例に過ぎない。入力チャンネルとミックス出力チャンネル間の信号経路設定によって、同様の「ミックスマイナス」機能が実行できればよい。
【0027】
例えば、ポスト・トゥ・ステレオ(POST TO ST)のL端子またはR端子を出力ポイントとするのではなく、パンボリューム41〜4nのL端子,R端子にそれぞれ新たなスイッチを設け、新たなスイッチのL端子,R端子を新たな出力ポイントとする。送りスイッチ(POST "TO ST"スイッチ)51L,51Rに連動して(元の信号経路設定に応じて)この新たなスイッチをオンオフさせる。
この他、「ポストオン」(POST ON)に新たに1つのスイッチを設け、その出力側を新たな出力ポイントとし、送りスイッチ(POST "TO ST"スイッチ)51L,51Rに連動して(元の信号経路設定に応じて)オンオフさせてもよい。この新たな1つのスイッチの出力側は、ミックスバス(MIX1〜MIXn)56の全てのバスに接続可能にする。この場合、パンボリュームを経由しないので異なったモニタ音となってしまうが、パンボリュームの設定状態に影響されないモニター音となる。
【0028】
ところで、「ミックスマイナス」する前の元のミックス出力チャンネルに接続されている入力チャンネル、その出力ポイント、送り量などのパラメータ情報は、フラッシュメモリ16に記憶されている。従って、これらの情報を、「ミックスマイナス」出力チャンネルに対してコピーし、次に、除外する入力チャンネルに関しては、送りスイッチをオフに設定するか、または、送り量を完全にあるいは不完全に減衰させるように変更することによって、「ミックスマイナス」機能を実行することもできる。
この場合、図1に示した信号経路として、通常のミキシング用の信号経路と、「ミックスマイナス」用の信号経路が入出力間で併存することになる。
【0029】
上述した説明では、ステレオ出力チャンネル(ステレオバス)に送られる信号を対象として「ミックスマイナス」を実行した。しかし、「ミックスマイナス」の対象とするミックス出力チャンネル(ミックスバス)を、任意に設定できるようにしてもよい。
また、「ポスト・トゥ・ステレオ」のL,Rのように、2つのミックス出力チャンネルを1対として同時に「ミックスマイナス」(例えば、ステレオモニタ出力のミックスマイナスとなる)を実行してもよい。
【0030】
上述した「ミックスマイナス」ミキシングの信号経路設定を反映して、新たな表示画面を作成して表示させる。図4に示した「チャンネル・トゥ・ミックス」表示画面41は、既に変更設定後の表示画面を示している。
変更設定前から、送りスイッチ(51L,51R)、(52L,52R)は、オン表示(押圧状態、緑)になっていて、第1,第2入力チャンネルが、ステレオチャンネルにミックス出力されている。
変更設定後、例えば、ミックスマイナスボタン421をオン表示(押圧状態、緑)に、ポスト・トゥ・ステレオ・ボタン432をオン表示(押圧状態、ON、緑)に、送りスイッチ514,524,534,544をオン表示(押圧状態、ON、緑)にする。送り量ボリューム714の送り量表示は「−∞」に、送り量ボリューム724,734,744,……の送り量表示は「0」にする。
【0031】
もちろん、「チャンネル・トゥ・ミックス」表示画面41であるので、通常のミキシングの、複数の入力チャンネルとステレオ出力チャンネル,ミックス出力チャンネル間の信号経路を構成する操作子およびボリュームの状態が表示されているので、これに重ねて上述した「ミックスマイナス」ミキシングの信号経路の設定状態が表示される。
図4の例では、ミックス出力チャンネルを偶数番目と奇数番目とを対にして表示しているので、ポスト・トゥ・ステレオ・ボタン431〜434と、送りスイッチ514,524,534,544のオン表示を見ることによって一方の「ミックスマイナス」出力チャンネル(チャンネル4)に特定される。
【0032】
【発明の効果】
本発明は、上述した説明から明らかなように、特定の入力系統の信号の除外を、従来の信号接続設定機能に変更を加えるだけで、音質を低下させることなく実現できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の一形態を説明する信号経路図である。
【図2】 本発明の実施の形態のハードウエア構成例を示すブロック図である。
【図3】 本発明の実施の一形態の動作例を示すフローチャートである。
【図4】 「ミックスマイナス」設定を実行する画面の一例を示す図である。
【図5】 従来、ホールやイベント会場で使用されているオーディオミキサのシステム構成図である。
【符号の説明】
11〜1n…信号処理部、21〜2n…フェーダ、31〜3n…ポストオンスイッチ、41〜4n…パンボリューム、51L,51R,511〜51n…送りスイッチ、611〜61n,6m1〜6mn…出力ポイント選択スイッチ、711〜71n,7m1〜7mn…送り量ボリューム
Claims (3)
- 複数の入力系統と複数の出力系統とを備え、前記複数の入力系統の中から任意に選択された複数の入力系統のそれぞれを、前記複数の出力系統の中から、該入力系統毎に任意に選択された少なくとも1つの出力系統に接続することによりミキシングをするオーディオミキシングシステムの信号経路を設定するオーディオミキシング用信号経路設定装置において、
任意に選択された所定の複数の入力系統を、前記複数の出力系統の中から任意に選択された第1の出力系統に接続する信号経路を設定する第1の信号経路設定手段と、
前記複数の入力系統の中から任意に除外入力系統を設定する除外入力系統設定手段と、
前記所定の複数の入力系統のうち、前記除外入力系統設定手段により設定された除外入力系統とは異なる全ての入力系統を、前記第1の出力系統とは異なる、前記複数の出力系統の中の第2の出力系統に接続する信号経路を設定する第2の信号経路設定手段、
を有し、前記第2の出力系統から、前記除外入力系統を有したモニタ用のミキシング信号を出力させることを特徴とするオーディオミキシング用信号経路設定装置。 - 前記複数の出力系統の中から、前記第1の出力系統とは異なる前記第2の出力系統を任意に設定する出力系統設定手段、
を有することを特徴とする請求項1に記載のオーディオミキシング用信号経路設定装置 - 複数の入力系統と複数の出力系統とを備え、前記複数の入力系統の中から任意に選択された複数の入力系統のそれぞれを、前記複数の出力系統の中から、該入力系統毎に任意に選択された少なくとも1つの出力系統に接続することによりミキシングをするオーディオミキシングシステムの信号経路の設定をコンピュータに実行させるためのオーディオミキシング用信号経路設定プログラムにおいて、
任意に選択された所定の複数の入力系統を、前記複数の出力系統の中から任意に選択された第1の出力系統に接続する信号経路を設定する第1の信号経路設定ステップと、
前記複数の入力系統の中から任意に除外入力系統を設定する除外入力系統設定ステップと、
前記所定の複数の入力系統のうち、前記除外入力系統設定ステップにより設定された除外入力系統とは異なる全ての入力系統を、前記第1の出力系統とは異なる、前記複数の出力系統の中の第2の出力系統に接続する信号経路を設定する第2の信号経路設定ステップ、
を有し、前記第2の出力系統から、前記除外入力系統を有したモニタ用のミキシング信号を出力させることを特徴とするオーディオミキシング用信号経路設定プログラム。
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