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JP3917477B2 - 表皮材を有するプラスチック製成形体の製造方法及び当該製造方法に用いられる金型 - Google Patents

表皮材を有するプラスチック製成形体の製造方法及び当該製造方法に用いられる金型 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、化粧面(意匠面)を形成する表皮材を有するプラスチック製成形体の製造方法に関するものであり、特に、上記表皮材の成形を、凸型側に設けられた高圧エア吹出し手段を用いて行わせるようにした表皮材を有するプラスチック製成形体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の、表面側が化粧面(意匠面)を形成する表皮材を有するプラスチック製成形体の製造方法は、表皮材を別工程にて予め所定の形態に成形加工し、このような表皮材を、金型、特に雌型内に設置するとともに、このような表皮材の裏面側に、例えばインジェクション成形手段等、所定の成形手段を用いて熱可塑性プラスチック材を設けるようにしているものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来の方法においては、化粧面(意匠面)を表面側に有する表皮材を予め用意しておき、このような表皮材を金型内に設置するとともに、その裏面側に所定のプラスチック材を注入すること等によって、所定のプラスチック製成形体を形成(製造)するようにしているものであり、製造工程が大きく2工程に分かれ、生産性が良くないと言う問題点を有する。このような問題点を解決するために、成形工程に用いられる金型の一部、例えば凸型を、コア型と、当該コア型の周りに嵌め合わされる枠型との複合型からなるようにするとともに、このようなコア型と枠型との合わせ面のところに、高圧エア吹き出し手段を設けるようにし、このような高圧エア吹き出し手段等を働かせることによって表皮材を所定の形態に予備成形し、このような表皮材の裏面側に同じ金型セットを用いた状態で所定のプラスチック材を注入(インジェクション)することによってプラスチック製成形体を一体的に形成させるようにした、表皮材を有するプラスチック製成形体の製造方法、及び当該製造方法に用いられる金型を提供しようとするのが、本発明の目的(課題)である。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明においては次のような手段を講ずることとした。すなわち、請求項1記載の発明においては、表皮材を有するプラスチック製成形体の製造方法に関して、熱可塑性プラスチック材からなるシート状の表皮材を、所定の温度に加熱した状態で、凸型側には所定の高圧エア吹出し手段を有する金型内に上記加熱された表皮材のその裏面側が上記凸型側に来るように設置するとともに、このような状態において上記金型を型締めする型締め工程と、このように型締めされた状態において、上記凸型側から高圧エアを吹き出させるとともに、当該高圧エアの吹き出し手順を、凹型における深さの深い部分から先に、順次、深さの浅い部分へと吹き出させるようにして、上記表皮材を凹型側の表面形態に合わせて成形加工する表皮材成形工程と、このように所定の形態に成形された表皮材を凹型内に残した状態で上記金型内に吹き込まれた高圧エアを型外へ放出させるエア抜き工程と、このような状態において上記表皮材の裏面側に形成されたキャビティ空間内へ所定の熱可塑性プラスチック材を注入することによって上記表皮材とプラスチック製基盤とを一体化させる一体化成形工程と、からなるようにした。
【0005】
このような工程を採ることにより、本発明のものにおいては、表面に模様等の意匠面を有するプラスチック製成形体の形成を同じ金型セットを用いて一連の工程にて行うことができるようになる。従って、表皮材を有するプラスチック製成形体の製造工程の効率化を図ることができるようになる。すなわち、上記表皮材成形工程中における高圧エアの表皮材裏面への吹き付けによって、上記表皮材は凹型内面側に設けられた意匠面に倣った形態に成形加工されることとなる。従って、上記凹型内の表面側を鏡面状に仕上げておくことによって、上記表皮材の表面側に高光沢面を形成させることができるようになる。そして、このようにして形成された表皮材を凹型側に残した状態で、引き続き上記表皮材の裏面側に所定のプラスチック材をインジェクション手段等にて注入することによってプラスチック製基盤と表皮材との一体化成形を行うことができるようになる。このように、本発明のものにおいては、表皮材を有するプラスチック製成形体の製造工程全体が短縮化されるようになり、全体の生産性の向上を図ることができるようになる。
【0006】
また、本発明のものにおいては、表皮材を凹型側の内面側に形成される意匠面に密着させることができるようになり、表皮材の表面模様を鮮明な状態に、あるいは表面を高光沢な状態に形成させることができるようになる。すなわち、本発明においては、凸型側からの高圧エアの吹き出し(吹き付け)によって上記表皮材を引き延ばすように塑性変形させようとするものであるので、凹型の深い部分である塑性変形量の多い部分から先に成形加工を施すようにし、これによって、凹型内面に形成される模様等の上記表皮材表面への転写を効率的に行わせることができるようになる。その結果、表皮材全体の成形加工の効率化を図ることができるようになる。
【0007】
次に、請求項記載の発明について説明する。本発明の特徴とするところは、表皮材を有するプラスチック製成形体の製造方法に用いられる金型に関する点である。すなわち、本発明においては、請求項1記載の表皮材を有するプラスチック製成形体の製造方法に用いられる金型に関して、その凸型を、ブロック状の形態からなるコア型と、当該コア型の外側に当該コア型と印ろう合せ状に組付けられるものであって箱形の形態からなる枠型とからなるようにするとともに、上記コア型または枠型のうちのいずれか一方側の縦壁のところに、高圧エアを導入するための導入路及び当該導入路から上記コア型または枠型の表面に向かって高圧エアを吹き出させるものであって細溝にて形成される高圧エア吹出し路を設け、更に、上記コア型の適宜個所に熱可塑性プラスチック材を金型内へ供給するための供給路を設けるようにした構成を採ることとした。
【0008】
このような構成を採ることにより、本発明のものにおいては、高圧エアを吹き出させるための導入路及び高圧エア吹き出し路を、コア型と枠型との印ろう合せ部にて形成させることができるようになり、これら各路を簡単な構造のものにて形成させることができるようになる。具体的には、上記印ろう合せ部の一方側を形成するコア型または枠型のうちのいずれか一方側の縦壁側にのみ、その横断面形態が凹陥状の形態からなる溝を設けておくようにし、このようなコア型縦壁部の外側に枠型を印ろう合せ状に嵌合させることによって、例えば半円形横断面形態からなる導入路及び高圧エア吹出し路が形成されるようになる。従って、本発明のものにおいては、金型内への高圧エア吹出し用の細孔等を設ける必要がなくなり、金型の製造コストの低減化を図ることができるようになる。
【0009】
次に、請求項記載の発明について説明する。このものも、その基本的な点は上記請求項記載のものと同じである。すなわち、本発明においては、請求項記載の表皮材を有するプラスチック製成形体の製造方法に用いられる金型に関して、細溝にて形成されるものであってコア型と枠型との印ろう合せ面に形成される高圧エア吹出し路のキャビティ空間への吹出し口を、凸型側に形成される凹陥部内に設けるようにした構成を採ることした。このような構成を採ることにより、本発明のものにおいては、表皮材裏面側への高圧エアの吹付け状態が、広い範囲に拡散されるようになるので、表皮材が局部的に膨張させられるようなことがなくなり、全体的に凹型の意匠面に沿って引き延ばされるようになる。具体的には、上記高圧エア吹き出し口は、例えばリブ形成のために設けられるキャビティ空間部であって凸型側に形成される凹陥部の底のところに設けるようにしたので、当該吹出し口から吹出された高圧エアは、上記凹陥状の空間部内にて拡散され、表皮材の裏面側へは弱められた空気圧が吹き付けられるようになる。従って、表皮材は全体的に均一な状態で引き延ばされるようになる。その結果、表皮材は、凹型内表面側に設けられた意匠面に倣った状態で効率良く成形されることとなる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について、図1ないし図3を基に説明する。本実施の形態に係るものは、表面に化粧面(意匠面)を有する表皮材付きのプラスチック製成形体の製造方法に関するものであり、その一実施例について、図1を基に説明する。具体的には、熱可塑性プラスチック材からなる表皮材1を所定の温度に加熱するとともに、このように加熱された表皮材1を、所定の形態に型成形するものであって、その表面側511には所定の高圧エア吹出し口515を有する凸型5並びに内表面側が鏡面状等に仕上げられた凹型6からなる金型内に、上記予熱された表皮材1の、その裏面側が上記凸型の表面に接するように設置する表皮材セット工程(A)と、このように表皮材1がセットされた状態において上記表皮材1の表面側と凹型6の内表面側との間に所定の空間を残した状態で上記金型5、6を型締めする型締め工程(B)と、このように型締めされた状態において、上記凸型5の表面511側から所定の高圧エアを吹き出させて、上記表皮材1を凹型6の内表面形態に沿わせるように成形加工する表皮材成形工程(C)と、当該表皮材成形工程にて所定の形態に成形された状態において上記凸型5を所定量後退させて上記金型5、6内に吹き込まれた高圧エアを型外へ放出させるエア抜き工程(D)と、このようなエア抜き工程の後に、上記凹型6内に表皮材1を残した状態で上記凸型5を再度所定量前進させて上記表皮材1の裏面側に設けられたキャビティ空間内へ上記凸型5の中央部に設けられた注入ポート517を介して所定のプラスチック材を注入してプラスチック製基盤2と表皮材1とを一体化させる一体成形工程(E)と、からなることを基本とするものである。
【0011】
このような工程からなるものにおいて、上記表皮材1としては、本実施の形態においては、所定の軟質プラスチック材あるいは硬質プラスチック材が採用されるようになっている。なお、上記プラスチック材のうち、軟質プラスチック材としては、成形加工の容易なアイオノマー類、エチレン・プロピレン共重合体よりなるオレフィン系樹脂等が挙げられる。また、硬質プラスチック材としては、PP樹脂、ABS樹脂、ASA樹脂、PC樹脂、PC樹脂とABS樹脂あるいはAS樹脂とからなるアロイ樹脂等が挙げられる。そして、これら各プラスチック材は、透明な材質のもの、あるいは不透明な材質のもの等の、いずれのものであっても良い。また、上記表皮材1としては、表面に印刷手段等にて予め模様層の設けられているもの、あるいはメタリック色を含む所定の着色剤の予め混入された着色原材料にて形成されているもの等が挙げられる。また、このような表皮材1としては、その厚さが20μm程度のフィルム状のものから約3.0mm程度の厚さを有するシート状のものが用いられる。
【0012】
なお、上記表皮材1は、その予熱工程において、表面温度が約80℃〜180℃の範囲内になるように加熱される。そして、このような表面温度を有するように加熱された表皮材1が、図1の(A)において、凸型5と凹型6との間に、表皮材1の表面側が凹型6側を向くように、かつ、裏面側が凸型5の表面511に接するように設置(セット)される。なお、このとき、上記各金型5、6は、その表面温度が約15℃〜85℃の値の範囲内に入るように保持されている。また、上記凹型6の意匠面形成に寄与することとなる部分を平滑な面あるいは鏡面等に仕上げておくことによって、プラスチック製成形体の表面、すなわち、表皮材1の表面を高光沢な状態に形成させる(仕上げる)ことができるようになる。
【0013】
なお、このような表皮材1の成形工程(C)に関しては、本実施の形態においては、図1のC1工程及びC2工程に示す如く、2段階の工程が採られるようになっている。すなわち、図1のC1工程に示す如く、凹型6の裁の深さが深い方の側から表皮材1の成形を行うようにする。具体的には、裁の深さの深い側に形成される高圧エア吹出し口515から高圧エアを吹き出させる。そして、順次、裁の深さの浅い側に形成される高圧エア吹出し口から高圧エアを吹き出させるようにする。具体的には、図1のC2工程に示すように裁の深さの浅い側に形成される高圧エア吹出し口515’から高圧エアを表皮材1に向かって吹き付けるようにする。これによって、表皮材1全体を凹型6の内表面に沿わせるようにする。その結果、表皮材1の表面は凹型6の内表面に密着するようになり、凹型6の内表面に形成された模様等が表皮材1の表面に転写されるようになる。従って、上記凹型6の内表面側を鏡面状に仕上げておくことによって表皮材1の表面、すなわち、意匠面を高光沢状に形成させることができるようになる。
【0014】
また、このような表皮材成形工程において、例えば図1の(D)に示す如く、凹型6の縦壁部66のところに、所定の真空引き手段77を設けておき、このような真空引き手段77を、上記表皮材成形工程(C1,C2)に連続して、あるいは、これらと同時に作動させることによって、表皮材1の表面への模様の形成を、より効果的に行わせることができるようになる。なお、このような真空引き手段77の作動による工程(真空引き工程)は、上記一連の表皮材成形工程(C1,C2)中のどの工程中に組み込んでも良い。表皮材1の成形加工に最も適した工程中に適宜組み込むようにすれば良い。
【0015】
次に、このようにして表皮材1の成形加工が終了した状態において、当該表皮材1を凹型6内に残した状態で行われるプラスチック製基盤2を形成することとなるプラスチック材の注入工程(図1の(E))について説明する。まず、図1の(D)に示すエア抜き工程において、所定量後方に後退させてあった凸型5を所定量前進させて、凹型6内に設置されている表皮材1の裏面側に所定量のキャビティ空間を形成させ、このような状態で型締めをする。このような状態において凸型5側に設けられた供給路517を介して上記キャビティ空間内へ所定の熱可塑性プラスチック材を注入してプラスチック製基盤2を形成させるとともに、当該プラスチック製基盤2と上記表皮材1との一体化を行わせるようにする。なお、この一体化成形工程(E)においては、所定のプラスチック材のキャビティ空間内への注入によって直ちに成形加工及び一体化を行うインジェクション成形手段(射出成形手段)が採られる場合と、所定のキャビティ空間内へ低圧にて所定のプラスチック材を注入するとともに、その後に圧縮成形を行う、射出圧縮成形手段が採られる場合とがある。
【0016】
次に、このような各工程に用いられる金型5、6について、図2及び図3を基に説明する。このものは、図1に示す如く、凸型5と凹型6との組合せセットからなることを基本とするものである。このような構成からなるものにおいて、上記凸型5は、図2に示す如く、ブロック状の形態からなるコア型51と、当該コア型51の周りにコア型51と印ろう合わせ状に組付けられるものであって箱形の形態からなる枠形52との組み合わされた複合型からなるものである。
【0017】
そして、上記コア型51の縦壁部のところには、凹溝状の形態からなるものであって比較的広い横断面積を有する高圧エア導入路形成用の溝516と、当該高圧エア導入路形成用の溝516から枝分かれするように形成されるものであって細溝にて形成される高圧エア吹出し路形成用の溝514と、が設けられるようになっている。また、このような各凹溝514、516の設けられる縦壁の一方の端面側である本コア型51の表面側の中央部のところには、周辺部よりも一段高くなるように形成された表面部511が設けられるようになっている。そして、この表面部511の中央部のところにはプラスチック製基盤2を形成することとなる所定のプラスチック材をキャビティ空間内へ供給するための供給路517の開口穴(注入口)が設けられるようになっている。そして更に、このような表面部511の周辺部のところには、一段低くなるように形成された段違い部512が設けられるようになっており、このようなコア型51が枠型52内に嵌め込まれた状態において、上記段違い部512のところがリセス状の凹陥部55を形成するようになっているものである(図3参照)。また、このような段違い部512のところに、上記高圧エア吹出し路514の開口部(高圧エア吹出し口)515、515’が形成されるようになっているものである(図2,図3参照)。
【0018】
このような構成からなるコア型51の嵌め込まれる枠型52は、図2に示す如く、中央部に、上記ブロック状のコア型51が嵌め込まれる開口部521を有する形態からなるものである。そして、上記開口部521の縦壁部525のところが、上記コア型51の上記各凹溝514、516の設けられた縦壁部と印ろう合わせ状に嵌合されるようになっているものである。そして、このような枠型52の表面側であって上記開口部521の周りには、所定の幅を有した状態で、かつ、突出した状態に形成される堤状の突出壁522が設けられるようになっている。この突出壁522は、本枠型52内に上記コア型51が嵌合された状態において、例えば図3に示す如く、コア型51の表面部511と同じ高さを形成するようになっているものであり、コア型51の表面部511と枠型52の上記突出壁522の表面部とにて凸型5の表面を形成するようになっているものである。
【0019】
このような構成からなるコア型51と枠型52とが、それぞれの縦壁部に形成された印ろう合わせ面を介して結合されることによって凸型5が形成されることとなる。そして、両者51、52の印ろう合わせ面のところには、図3に示す如く、高圧エア吹出し路514、及び高圧エア吹出し口515、515’が形成されるようになる。特に、上記高圧エア吹出し口515、515’は、コア型51の周辺部に形成された段違い部512と枠型52の開口部521の周辺部に形成された突出壁522とにて形成される凹陥部55の底辺部に形成されるようになる。従って、当該高圧エア吹出し口515、515’から噴射された高圧エアはこの凹陥部55の空間内にて拡散されるようになり、図3に示す表皮材1は高圧エアの局部的な噴射を受けるようなことがない。また、この凹陥部55は、プラスチック製基盤2のリブ部を形成するための空間部として予定されているものであり、このようなリブ部の端面のところに高圧エア吹出し口515、515’を形成する細孔が設けられていても、プラスチック材のインジェクション成形には何ら支障を来すようなことがない。なお、本実施の形態においては、上記構成からなるコア型51の縦壁部側に凹溝を穿ことによって高圧エア吹出し路514及び高圧エア導入路516を形成させるようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば枠型52の開口部521の縦壁部525のところに上記凹溝を設け、コア型51の縦壁部側は平滑な面からなるようにしても良い。
【0020】
このような構成からなる金型5、6を用いることによって、本実施の形態のものにおいては、表皮材1を有するプラスチック製成形体が効率良く形成されることとなる。すなわち、本実施の形態のものにおいては、表皮材1の成形加工を含めて、プラスチック製成形体の全成形工程が一組の金型セットを用いて行われるようになり、製造工程の効率化が図られるようになる。特に、本実施の形態のものにおいては、同じ金型セット内にて高圧エアの吹出しによる表皮材1のブロー成形加工と、インジェクション成形手段によるプラスチック製基盤2の一体成形加工とが連続的に行われるようになり、ワークの各工程間移動に起因するワーク表面への塵、埃の付着等が防止されるようになる。また、表皮材1に、すでに、その表面に模様等の施されたシート状部材、あるいは原材料中にメタリック色を含む所定の着色剤の予め混入された着色原材料からなるシート状部材等を用いることができるようになり、本製造工程にて形成されるプラスチック製成形体の、その表面には、成形加工後に塗装処理等を施す必要がなくなる。従って、塗装工程の省略化による製造コストの低減化を図ることができるようになる。また、塗料中に混入される有機溶剤の大気中への放出等の問題が無くなる。また、プラスチック製成形品のリサイクル工程において、塗装処理が廃止されていることによりリサイクル効率の向上を図ることができるようになる。また、本実施の形態のものにおいては、凸型5をコア型51と枠型52との複合型からなるようにするとともに、これら両型51、52の印ろう合わせ面を形成するいずれか一方の縦壁のところに、凹溝状の形態からなる高圧エア吹出し路514及び高圧エア導入路516を設けるようにしたので、上記各路514、516の成形加工が容易になるとともに、各通路周りのシール作業が簡略化されるようになる。その結果、金型5、6全体の成作コストの低減化を図ることができるようになる。
【0021】
【発明の効果】
本発明によれば、表皮材を有するプラスチック製成形体の製造方法に関して、熱可塑性プラスチック材からなるシート状の表皮材を、所定の温度に加熱した状態で、凸型側には所定の高圧エア吹出し手段を有する金型内に上記加熱された表皮材のその裏面側が上記凸型側に来るように設置するとともに、このような状態において上記金型を型締めする型締め工程と、このように型締めされた状態において、上記凸型側から高圧エアを吹き出させて上記表皮材を凹型側の表面形態に合わせて成形加工する表皮材成形工程と、このように所定の形態に成形された表皮材を凹型内に残した状態で上記金型内に吹き込まれた高圧エアを型外へ放出させるエア抜き工程と、このような状態において上記表皮材の裏面側に形成されたキャビティ空間内へ所定の熱可塑性プラスチック材を注入することによって上記表皮材とプラスチック製基盤とを一体化させる一体化成形工程と、からなるようにしたので、表面に模様等の意匠面を有するプラスチック製成形体の形成を同じ金型セットを用いて一連の工程にて行うことができるようになり、表皮材を有するプラスチック製成形体の製造工程の効率化を図ることができるようになった。
【0022】
特に、本発明においては、高圧エアの表皮材裏面への吹き付けによって、上記表皮材は凹型内面側に設けられた意匠面に倣った形態に成形加工することができるようになり、上記凹型内の表面側を鏡面状に仕上げておくこと等によって、上記表皮材の表面側に高光沢面を形成させることができるようになった。また、このようにして形成された表皮材を凹型側に残した状態で、引き続き上記表皮材の裏面側に所定のプラスチック材をインジェクション手段等にて注入することによってプラスチック製基盤と表皮材との一体化成形を行うことができるようになり、表皮材を有するプラスチック製成形体の製造工程全体の短縮化を図ることができるようになった。その結果、全体の生産性の向上を図ることができるようになった。
【0023】
また、本発明においては、上記表皮材成形工程における高圧エアの吹き出し手順を、凹型における裁の深さが深い部分から先に、順次、裁の深さが浅い部分へと吹き出させるようにした工程を採ることとしたので、表皮材を凹型側の内面側に形成される意匠面に密着させることができるようになり、表皮材の表面模様等を鮮明な状態に形成させることができるようになった。すなわち、本発明においては、凸型側からの高圧エアの吹き出し(吹き付け)によって上記表皮材を引き延ばすように塑性変形させようとするものであり、凹型の裁の深い部分である塑性変形量の多い部分から先に成形加工を施すようにしたので、凹型内面に形成される模様等の上記表皮材表面への転写を効率的に行わせることができるようになった。その結果、表皮材全体の成形加工の効率化を図ることができるようになった。
【0024】
また、本発明においては、本製造方法に用いられる金型、特に、その凸型を、ブロック状の形態からなるコア型と、当該コア型の外側に当該コア型と印ろう合せ状に組付けられるものであって箱形の形態からなる枠型とからなるようにするとともに、上記コア型または枠型のうちのいずれか一方側の縦壁のところに、高圧エアを導入するための導入路及び当該導入路から上記コア型または枠型の表面に向かって高圧エアを吹き出させるものであって細溝にて形成される高圧エア吹出し路を設け、更に、上記コア型の適宜個所に熱可塑性プラスチック材を金型内へ供給するための供給路を設けるようにした構成を採ることとしたので、高圧エアを吹き出させるための導入路及び高圧エア吹き出し路を、コア型と枠型との印ろう合せ部にて形成させることができるようになり、これら各路を簡単な構造のものにて形成させることができるようになった。具体的には、上記印ろう合せ部の一方側を形成するコア型または枠型のうちのいずれか一方側の縦壁側にのみ、その横断面形態が凹陥状の形態からなる溝を設けておくようにし、このようなコア型縦壁部の外側に枠型を印ろう合せ状に嵌合させることによって、例えば半円形横断面形態からなる高圧エア導入路及び高圧エア吹出し路が形成されるようになり、金型内への高圧エア吹出し用の細孔等を設ける必要がなくなった。従って、金型の製造コストの低減化を図ることができるようになった。
【0025】
また、本発明においては、金型に関して、細溝にて形成されるものであってコア型と枠型との印ろう合せ面に形成される高圧エア吹出し路のキャビティ空間への吹出し口を、凸型側に形成される凹陥部内に設けるようにした構成を採ることしたので、表皮材裏面側への高圧エアの吹付け状態が、広い範囲に拡散されるようになり、表皮材が局部的に膨張させられるようなことがなくなった。その結果、表皮材は全体的に凹型の意匠面に沿って引き延ばされるようになり、凹型内表面に設けられた意匠面に倣った状態で効率良く成形されるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる製造方法を示す工程説明図である。
【図2】本発明の製造方法に用いられる金型のうち、凸型の構成を示す展開斜視図である。
【図3】本発明の製造方法に用いられる金型における高圧エア吹き出し口周りの構成を示す部分断面図である。
【符号の説明】
1 表皮材
2 プラスチック製基盤
5 凸型
51 コア型
511 表面部
512 段違い部
514 高圧エア吹出し路
515 高圧エア吹出し口
515’ 高圧エア吹出し口
516 高圧エア導入路
517 プラスチック材供給路
52 枠型
521 開口部
522 突出壁
525 縦壁部
55 凹陥部
6 凹型
66 縦壁部
77 真空引き手段

Claims (3)

  1. 熱可塑性プラスチック材からなるシート状の表皮材を、所定の温度に加熱した状態で、凸型側には所定の高圧エア吹出し手段を有する金型内に上記加熱された表皮材のその裏面側が上記凸型側に来るように設置するとともに、このような状態において上記金型を型締めする型締め工程と、このように型締めされた状態において、上記凸型側から高圧エアを吹き出させるとともに、当該高圧エアの吹き出し手順を、凹型における深さの深い部分から先に、順次、深さの浅い部分へと吹き出させるようにして、上記表皮材を凹型側の表面形態に合わせて成形加工する表皮材成形工程と、このように所定の形態に成形された表皮材を凹型内に残した状態で上記金型内に吹き込まれた高圧エアを型外へ放出させるエア抜き工程と、このような状態において上記表皮材の裏面側に形成されたキャビティ空間内へ所定の熱可塑性プラスチック材を注入することによって上記表皮材とプラスチック製基盤とを一体化させる一体化成形工程と、からなるようにしたことを特徴とする表皮材を有するプラスチック製成形体の製造方法。
  2. 請求項1記載の表皮材を有するプラスチック製成形体の製造方法に用いられる金型に関して、その凸型を、ブロック状の形態からなるコア型と、当該コア型の外側に当該コア型と印ろう合せ状に組付けられるものであって箱形の形態からなる枠型とからなるようにするとともに、上記コア型または枠型のうちのいずれか一方側の縦壁のところに、高圧エアを導入するための導入路及び当該導入路から上記コア型または枠型の表面に向かって高圧エアを吹き出させるものであって細溝にて形成される高圧エア吹出し路を設け、更に、上記コア型の適宜個所に熱可塑性プラスチック材を金型内へ供給するための供給路を設けるようにしたことを特徴とする表皮材を有するプラスチック製成形体の製造方法に用いられる金型。
  3. 請求項2記載の表皮材を有するプラスチック製成形体の製造方法に用いられる金型において、細溝にて形成されるものであってコア型と枠型との印ろう合せ面に形成される高圧エア吹出し路のキャビティ空間への吹出し口を、凸型側に形成される凹陥部内に設けるようにしたことを特徴とする表皮材を有するプラスチック製成形体の製造方法に用いられる金型。
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