JP3910939B2 - 単一物質球形粒、それらを用いた食品、医薬及びそれらの製法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面平滑性が高く、摩損度の低い単一種類の物質の球形粒に関する。特に、本発明は、糖アルコール、塩化ナトリウム、ビタミンCからなり、医薬製造における造粒コーテイング用や食品用として有用な球形粒に関する。
【0002】
【従来の技術】
医薬用の原料として使用される球形粒は、主に徐放性製剤や腸溶性製剤のシード(seeds)として利用されている。この種の製剤用球形粒としては、例えば「NF」(National Formulary)には白糖/トウモロコシデンプンを主な原料としている「Suger spheres 」が収載されているし、また「医薬品添加物規格」(薬添規 1993)には、精製白糖(フロイント産業株式会社製、商品名、ノンパレル−103)、精製白糖・トウモロコシデンプン混合物(フロイント産業株式会社製、商品名、ノンパレル−101)、結晶セルロース粒(旭化成工業株式会社製、商品名、セルフィア)等が球形粒として収載されている。
【0003】
これらの球形粒の原料となっている物質はいずれも球形化に適した物理化学的性質を有しており、例えば、前記商品名「ノンパレル」の一群の球形粒の核(core)はグラニュー糖で、単斜晶系の8〜12面体ではあるが、その水溶液はバインダー(結合剤)としても有効に作用することから球形化に適しているし、また前記商品名「セルフィア」は核を持たない球形粒であるが、原料成分である結晶セルロースが短い繊維であることから球形化が容易な物質である。
【0004】
従来、例えば前記商品名「ノンパレル−103」の場合は、遠心転動装置(フロイント産業株式会社製、CFグラニュレーター、以下「CF装置」と略す)にグラニュー糖を仕込み、蔗糖の水溶液をバインダーとして噴霧しつつ、蔗糖の微粒子乃至微粉末を散布して核であるグラニュー糖の上にコーティングして球形に造粒することによって製造できることが知られている。このノンパレル−103の場合、グラニュー糖と蔗糖は同じ化学組成であるため蔗糖100%であるといえる。
また同様に、前記商品名「ノンパレル−101」の場合は、CF装置にグラニュー糖を仕込み、蔗糖と澱粉(スターチ)との混合水溶液をバインダーとして噴霧しつつ、蔗糖と澱粉(スターチ)との混合物の微粒子乃至微粉末を散布して、核であるグラニュー糖の上にコーティングして球形に造粒することによって製造できることが知られている。このノンパレル−101の場合、蔗糖と澱粉(スターチ)との比率は65〜85%:35〜15%である。
【0005】
また、同様に核から造粒するものとしては、特開平5−229961号公報に乳糖などの水溶性物質とセルロースなどの水不溶性物質との混合物からなる直径0.1〜1mmの球形粒子とその製造方法が開示されている。
【0006】
これらの球形粒は、いずれも製剤用の球形粒として使用できるものであるが、薬剤の中にはかかる球形粒の原料物質との間でメイラード反応等の褐変反応を起すものも少なくなく、したがって、そのような薬剤に対する使用に際しては、使用可能性を確認するために煩雑なテストを行うことが必要である。
【0007】
たとえば、乳糖は各種薬剤との間でメイラード反応を起すことが少ない反応性の低い物質であることから製剤用球形粒の製造原料として注目されており、特開平6−205959号公報には、乳糖を95%以上含有し、長径と短径との比が1.2以下であり、集合体として、カサ密度0.7g/ml以上、安息角35度以下である球形粒とその製造方法が開示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、薬物との反応性の少ない乳糖球形粒の場合、乳糖自体にバインダーとしての機能がないことに起因して、従来、球形度が高く、摩損性の低い乳糖単味の球形粒を産業ベースで造ることには成功していない。
例えば、前記特開平5−229961号公報に開示される製造方法についてみると、乳糖と結晶セルロースとの混合比率で乳糖を95%以上含有させると、巨視的には球形粒ではあるが、微視的に表面をみるために走査型電子顕微鏡を用いてみると、乳糖の粉末が表面に貼り付いた凹凸状になっており、この凹凸があるために球形粒にさらに薬剤をコーティングして徐放性製剤を製造しようとすると、摩損し易く、したがって歩留り(コーティング効率、造粒効率)の低下は免れないものであった。
【0009】
同様に、特開平6−205959号公報に開示されている製造方法の場合にも、乳糖含有率を95%以上にすると微視的に球形粒の表面が粗になる現象が生起することが本発明者らによって見出されている。
また、こうした現象は添付図でもわかるとおり、乳糖以外にも当てはまり、糖アルコール、塩化ナトリウム、ビタミンCなどでは、表面が平滑で実質的に100%単一物質からなる球形粒の製造は今までできなかった。
【0010】
本発明の目的は、蔗糖(又は蔗糖と澱粉との混合物)、結晶セルロース、乳糖と結晶セルロースとの混合物などを原料とした従来の球形粒における問題点を解消した、実質的に単一種の物質のみからなる新規な球形粒及びその製造方法を提供することにある。さらに、それらの球形粒を含有する食品及び医薬品を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、実質的に単一物質からなる球形粒の表面平滑性を高くし、摩損性を低くするために、更に研究を行なった結果、前記CF装置で製造した湿潤球形粒に対して流動層で単一物質水溶液を噴霧し、乾燥し球形粒の表面に固定化処理を施すという製造方法を確立し、本発明を完成した。
【0012】
本発明は、つぎの各発明を包含する。
(1)水溶性単一物質を95重量%以上含有する粒子を造粒してなるアスペクト比が1.2以下の球形であって、集合体のカサ密度が0.65g/ml以上、安息角35度以下である球形粒であって、
(イ)該水溶性単一物質が糖アルコール、ビタミンC及び塩化ナトリウムの群より選ばれた1種からなり、
(ロ)該水溶性単一物質の飽和水溶液の粘度が25℃〜45℃の範囲で10cps以下であり、
(ハ)該球形粒の摩損度が1.0%以下
であることを特徴とする球形粒。
【0013】
(2)前記糖アルコールは、D−マンニトール及び/又はエリスリトールであることを特徴とする前記(1)に記載の球形粒。
(3)前記ビタミンCは、L−アスコルビン酸及び/又は−アスコルビン酸ナトリウムであることを特徴とする前記(1)に記載の球形粒。
(4)前記単一物質は、キシリトールを95重量%以上含有する物質からなることを特徴とする前記(1)に記載の球形粒。
【0014】
(5)前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の球形粒からなることを特徴とする、食品用球形粒。
(6)前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の球形粒からなることを特徴とする、食品製造における造粒コーティング用球形粒。
【0015】
(7)前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の球形粒からなることを特徴とする、医薬製造における造粒コーティング用球形粒。
(8)糖アルコールを含有する球形粒からなることを特徴とする(7)に記載の医薬製造における造粒コーティング用球形粒。
【0016】
(9)前記(7)又は(8)に記載の球形粒を含有することを特徴とする、医薬。
(10)医薬成分として、塩酸フェニルプロパノールアミンを含有することを特徴とする(9)に記載の医薬。
【0017】
(11)前記医薬が顆粒剤又はカプセル剤であることを特徴とする、前記(9)又は(10)に記載の医薬。
【0018】
(12)前記(7)又は(8)に記載の造粒コーティング用球形粒を担体として用いることを特徴とする、医薬の製造方法。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明において使用される単一物質は、例えば医薬品に用いる場合は日本薬局方(以下局方と略す)の単一物質の規格(例えば第13改正局方)に適合したものが好ましいが、これに限定されるものでない。
【0020】
本発明において、「単一物質」とは、純粋な単一化学物質のみならず、たとえばビタミンCとして化学的、生理学的に同種の物質として知られているL−アスコルビン酸とL−アスコルビン酸ナトリウムや、糖アルコールとして化学的、生理学的に同種の物質として知られているD−マンニトールとエリスリトールのような、互いに同種の物質であるとして知られている物質同士の混合物をも意味する。
また、「単一物質」は、前記定義の単一物質が5重量%までの量で他種の物質を含んでいるようなものをも意味している。
【0021】
本発明において使用される単一物質の具備すべき特性としては、粉末状に粉砕可能な物質でなければならず、また、水溶液として使用するので、水溶性でなければならない。単一物質が結晶であると、単一物質の結晶が核の外面に張り付いて成長して球形になるため、球形粒を構成する物質の大部分は結晶構造をもったものとなる。
更に、単一物質は、その飽和水溶液の粘度が10cps以下であることが必須であり、特に使用する単一物質の飽和水溶液の粘度は、B型粘度計で、25℃から45℃で10cps以下であることが必須である。
以下に、各種の単一物質の飽和水溶液粘度をB型粘度計で測定した値を表1に示す。
【0022】
【表1】
【0023】
表1の単一物質を比べると、グラニュー糖は他の単一物質より粘度が際だって高いことがわかる。
従来、グラニュー糖がバインダー(結合剤)として用いられている事例があるが、その場合のバインダーとして使用する液の粘度は、通常100cps前後であり、加温した場合でも40cps程度である。しかし、本発明の単一物質の水溶液に求められる粘度は低く、通常の結合剤の範疇にないことがわかる。
【0024】
単一物質の例としては、糖アルコール、ビタミンC、塩化ナトリウム、乳糖などがある。とりわけ、糖アルコール、塩化ナトリウムはアルデヒド基を持たないためメイラード反応がなく、医薬の造粒コーテイング用球形粒の原料として好ましい。また、同時に食品用球形粒の原料としても好ましい。
単一物質としての糖アルコールの例としては、D−マンニトール及びエリスリトールの各単独、又はそれらの混合物などがあるが、特に好ましくはD−マンニトールである。また、単一物質としてのビタミンCの例としては、L−アスコルビン酸及びL−アスコルビン酸ナトリウムの各単独又はその混合物などが挙げられる。
【0025】
本発明において核として使用される単一物質造粒物あるいは単一物質結晶粒子は、少なくとも500μmパスの粒径であり、特にその粒径が300μmパス、150μmオンのものが好ましく用いられる。単一物質造粒物あるいは単一物質結晶粒子の粒径が大きくなると、得られる球形粒の径も大きくなる。
本発明で球形粒の製造に使用される単一物質粉末は、75μmパスの単一物質の結晶の粉末であり、好ましくは核となる単一物質造粒物あるいは単一物質粒子の平均粒径に対して5分の1〜10分の1以下のものである。単一物質粉末は、その粒径が小さい程良好であり、単一物質の結晶の微粉末を用いることができる。具体的には、糖アルコール、ビタミンC及び塩化ナトリウムなどの微粉末が挙げられる。また、圧縮されていたり、吸湿して固まっている場合は、公知の乾式粉砕機などで75μm以下になるまで粉砕して用いられる。
【0026】
本発明の単一物質造粒物とは、単一物質粉末を造粒して得られたものである。単一物質造粒物の製造は、水又は単一物質の水溶液を添加して造粒する方法であるため、単一物質は水溶性である必要がある。
【0027】
本発明の方法に使用する造粒物は、たとえば押し出し造粒方法では、単一物質粉末をニーダーに仕込み、水又は単一物質の水溶液を加えて混練りし、押し出し造粒し、乾燥後、篩分けすることによって製造される。
また、湿式攪拌造粒方法では、攪拌造粒機(深江工業株式会社製、商品名、ハイスピードミキサー)に単一物質粉末を仕込み、水又は単一物質の水溶液を加え、攪拌造粒することによって製造される。
また、遠心流動造粒法では、遠心流動造粒機(フロイント産業株式会社製、商品名、スパイラフロー)に単一物質粉末を仕込み、水又は単一物質の水溶液を加え、遠心流動造粒することによって製造される。
【0028】
また、遠心転動造粒法では、まず、ニーダーに単一物質粉末を仕込み、水又は単一物質の水溶液を加えて混練り後、パワーミルで整粒し、これを遠心転動造粒機(フロイント産業株式会社製、商品名、CFグラニュレーター)に仕込み、水又は単一物質の水溶液を加え、遠心転動造粒する。
【0029】
本発明の単一物質球形粒におけるアスペクト比とは、球形粒の長軸と短軸との比であり、真球度を示す目安となるものである。そして、長軸、短軸の比は、球形粒をスライドグラス上にランダムに置き、写真撮影し、50個の球形粒について長軸の長さ(長径)と長軸の中点から垂直に引いた短軸の長さ(短径)を各々測定し、各々について短径に対する長径の比を求め、50個の平均値で示したものである。
【0030】
本発明の単一物質球形粒におけるカサ密度は、100mlのメスシリンダー(重量W)に球形粒を軽く山盛りに入れた後、摺り切り秤量した重量Wbを秤量し、(Wb−W)/100より求めた値であり、5回測定の平均値で示される。
【0031】
本発明の単一物質球形粒における安息角の測定は、特開平6−205959号公報に記載されている野上・杉原法によって行い、5回の測定の平均値で示したものである。測定器は図2に示されているように、4枚のガラス板を貼り合わせて作成されている図2に示される装置であり、該装置による安息角の測定は、A壁に沿って試料約200mlをガラス床となっているB面上にロートを使って静かに流し込み、B面の前方開口端から試料の流れ出しが始まるまで流し込みを続け、試料の流れ出しが起った時点におけるB面上の試料層の傾斜上面がB面(水平面)となす角度を分度器Cで読み取ることによって行われる。
【0032】
本発明の単一物質球形粒の集合体における摩損度とは、粒子同士、あるいは粒子と器壁とが触れ合うときの衝撃によって、粒子は破壊されないが、粒子表面が摩耗する度合を数値化したものである。その測定は、容器に一定量の球形粒子を入れ、回転ないしは振動を与え、一定時間後に取り出して、摩耗によって球形粒子から剥離した粉末を、ふるいで取り除き元の重量との比を求め、パーセンテージで表すことによって行われる。
【0033】
具体的な摩損度の測定の一例を示すと、球形粒重量Wt(約10g)を精密に量りとり、内径32mm×深さ65mmのステンレス製円筒容器に入れ、SPEX社製ミキサーミルを用い、1100rpmで正確に10分間振とうした後、50号(300μm)ふるいに移して、篩分け操作を行い、その残留量Ws(g)を精密に量りとって次式により摩損度を求める。
【0034】
【数1】
この摩損度は、通常1.0%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5%以下である。
【0035】
本発明の単一物質球形粒の製造工程で採用されている固定化処理とは、球形粒の表面を平滑にするための処理及び摩損度の改善のための処理の双方を意味している。
本発明の単一物質からなる球形粒の製造に使用できる水溶性高分子としては、ゼラチン、カゼインなどの動物系、アルギン酸、カラギーナン、ヘミセルロース、ゼインなどの植物系、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース系、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸塩、ポリビニルアルコールなどの合成系、やプルランなどが例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
水溶性高分子は希薄水溶液として使用される。水溶性高分子の希薄水溶液の濃度は各種の水溶性高分子のバインダーとしての結合力が弱くなるように、水溶性高分子ごとに実験的に定められる。
【0037】
本発明では、5%未満の範囲で水溶性ビタミン類、解熱鎮痛剤等の種々の薬剤(薬効を有する種々の物質)から適宜選ばれた薬剤が本発明の単一物質球形粒に含まれることができる。むろん実質的に100%単一物質球形粒としてもよい。また、本発明では、5%未満の範囲で水溶性ビタミン類、香料などから適宜選ばれた食品や食品添加物を単一物質球形粒に含ませることができる。むろん実質的に100%単一物質からなる球形粒としてもよい。
【0038】
本発明の単一物質球形粒の製造に使用される遠心転動装置は、処理容器底部にほぼ水平に回転する平滑な回転円板と、前記回転円板を回転させる回転軸と、処理容器の内壁部と前記回転円板の円周部に位置する縁部との間に形成される環状の空隙であるスリットと、前記スリットより処理容器内にスリットエアを供給するためのスリットエア供給装置と処理容器内の被処理物(単一物質結晶又は単一物質造粒物)へ水、単一物質水溶液、水溶性高分子の希薄水溶液から選ばれた少なくとも1種を噴霧するためのスプレーノズルと被処理物へ粉末を散布する粉末散布装置とを有するものである。この装置の例としては図1に示されるフロイント産業株式会社製のCFグラニュレータ(以下CF装置と略す)がある。(但し、スリットエア供給装置は図示せず)。
【0039】
上記のCF装置は造粒コーティング装置と呼ばれる範ちゅうに入るものであるが、本発明の方法で使用できる造粒コーティング装置は上記特定のCF装置に限定されず、前記基本的な構成を有する装置であれば各種の造粒コーティング装置が使用できる。CF装置を種々変形可能にする例としては、回転円板の上に立設される回転軸や、回転円板の縁部が上方に反っているタイプだけでなく水平なタイプでもよく、また、回転円板の上面は少なくとも粉体に接している部分が平滑である必要があるが、円板の中心部には突起物があってもよく、種々変形が可能なのはいうまでもない。
【0040】
本発明の流動層装置は、遠心転動装置で製造された湿潤球形粒を入れるための収納容器と、前記球形粒を流動させる流動エアを供給する流動エア供給装置と、前記球形粒に単一物質水溶液及び/又は水溶性高分子溶液の希薄水溶液を噴霧するためのスプレーノズルとを有するものであり、例えば、フロイント産業株式会社製、商品名、「フローコーター」(以下「FL装置」と略す)が使用可能である。この装置は流動層造粒コーティング装置の範ちゅうに入り、本発明では前記の基本的な構成を有する装置であれば前記の特定のFL装置に限定されず、通気部を有する回転円板を備えた流動層装置(例えばフロイント産業株式会社製のローターコンテナを備えたFL装置や遠心流動造粒コーティング装置、商品名「スパイラフロー」)など種々のものを用いることができる。
【0041】
本発明の単一物質球形粒の製造に使用される遠心転動装置において噴霧する液は、水単独でもよいが、所望により少量の水溶性高分子を溶解させてもよいし、単一物質水溶液、又はこれらに着色剤等を少量添加したものであってもよい。しかし、通常は水単独の使用が好ましい。
【0042】
次に本発明の単一物質球形粒製造方法を図1に示したCF装置を参照しながら説明する。
図中、符号1は造粒容器、2は回転円板、2aは円板縁部、3は回転軸、4はスリット、4aはスリットエア、5はエアチャンバー、6は除湿装置、7は熱交換器、8は単一物質粉末、9は散布装置、10は噴霧用液、11はタンク、12は定流量ポンプ、13はスプレーノズル、14は噴霧用エアー、15は製品排出装置、16はステーターカバー、17はスリットエア用空気を表す。
【0043】
図1のCF装置では、図示しないモーター等の駆動機構によって回転軸3を回転し、回転円板2を回転させながら、スリットエア用空気17が除湿装置6、熱交換器7、エアチャンバー5を通ってスリットエア4aとしてスリット4から造粒容器1内に供給され、単一物質造粒物(あるいは単一物質粒子)が回転円板上に仕込まれる。
【0044】
同時に単一物質粉末8が散布装置9よりスリットエア4aの吹き出し縁部2a付近に散布されて、これが単一物質造粒物(あるいは単一物質)と混合され、同時に噴霧用液10がタンク11よりスプレーノズル13を経てスリット4近傍の単一物質造粒物(あるいは単一物質)に噴霧され、造粒が行われて湿潤単一物質球形粒が製造される。
【0045】
このようにして製造された湿潤単一物質球形粒は、ついで図示していないFL装置に送られ、そこで流動用エアーによって流動化された状態で単一物質水溶液等の液体の噴霧条件下にコーティングと乾燥が行われる固定化処理が施されて最終製品である前記物性を備えた単一物質球形粒が製造される。
【0046】
本発明の医薬の形態としては、その内部に上記球形粒を含有する限りにおいて、製剤化可能なすべての剤形があり得るが、好ましくは、顆粒剤又は該顆粒剤を内包するカプセル剤である。
球形粒の含有割合は、それを用いる製剤の種類によって異なるが、例えば、顆粒剤の場合には、通常、製剤全体に対して、約5〜90重量%、好ましくは約20〜70重量%である。
用いる球形粒としては、薬物との安定性等の点から、球形粒を構成する単一物質がD−マンニトールを主原料として他の成分、例えばキシリトール、エリスリトール等の糖アルコールを含有するものであってもよい。
【0047】
医薬活性成分は、球形粒の内部又は外部のいずれに存在してもよいが、好ましくは外部に存在する。
医薬活性成分としては、例えば、解熱鎮痛剤、鼻炎薬、循環器系薬、消化器系薬、抗生物質、化学療法剤、ビタミン剤、麻薬性鎮痛薬、ホルモン剤、抗うつ薬、抗炎症薬、抗精神薬等が例示され、具体的には塩酸フェニルプロパノールアミン、アスピリン、イブプロフェン、インドメタシン、フェニトイン、アセトアミノフェノン、エテンザミド、モルヒネ、ニフェジピン、フェノバルビタール、セファレキシン等が例示される。
【0048】
次に本発明医薬品の代表的な製法を説明する。まず球形粒の表面に、所望により結合剤の存在下、医薬活性成分を含有する粉末又は液状物質をコーティングして主薬相を形成させ、素顆粒を調製する。その際コーティング方法としては、攪拌造粒、遠心転動造粒、流動層造粒、通常型又は通気型コーティングパン等が例示される。
次に、該素顆粒を適宜、表面処理することにより顆粒剤が得られる。この際、徐放性タイプのものを得たい場合には、表面処理の方法として、例えば、所望により撥水性物質を含有する物質を粉末コーティングしたりした後、徐放性ポリマーによりフィルムコーティングを施す等の操作を行えばよい。
【0049】
該撥水性物質としては、例えば、硬化ヒマシ油などの硬化グリセリン脂肪酸エステル類、ステアリン酸類等の高級脂肪酸類、ステアリン酸マグネシウム等の高級脂肪酸金属塩類、ステアリルアルコール等の高級アルコール、カルナバロウ等のワックス類等が例示される。
【0050】
徐放性ポリマーとしては、エチルセルロース、メタアクリル酸エチル・メタアクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチルコポリマー(オイドラギッドRS)、セラック、高重合度ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ塩化ビニル、セルロースアセテート、ポリウレタン、テトラフルオロエタン、ポリスチレン、ポリプロピレン、乳酸重合体、ヒドロキシエチルメタアクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリカルボン酸、シアノアクリレート重合体などが例示される。
【0051】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
攪拌造粒機(深江工業株式会社製、商品名、ハイスピードミキサーFS−25)の造粒容器にD−マンニトール粉末を3kg仕込み、D−マンニトールの20重量%水溶液を加えつつ、アジテーターとチョッパーを回転しながら攪拌造粒を行い、終了後、造粒物を取り出した。この造粒物を乾燥後、355μmから500μmに篩別して、球形造粒用の核として使用するD−マンニトール造粒物を得た。
【0052】
次に、遠心転動造粒装置(フロイント産業株式会社製、商品名、CFグラニュレーターCF−360、以下CF装置と略す)の造粒容器に、核として前記のように得られたD−マンニトール造粒物を1kg仕込み、スリットエアーを供給しながら、回転円板を180rpmで回転させた。続いて、平均粒径7.4μmのD−マンニトール粉末1kgを25g/minの供給速度でD−マンニトール造粒物に散布しつつ、D−マンニトール20重量%水溶液400mlを0.8kg/cm2 の圧力を加えながら、噴霧造粒し、湿潤状態のD−マンニトール球形粒を得た。
【0053】
次に、得られた湿潤球形粒を流動層造粒装置(フロイント産業株式会社製、商品名、フローコーターFL−5、以下FL装置と略す)の造粒容器に入れ、60℃で乾燥しながら、D−マンニトールの20重量%水溶液1kgを40ml/minの速度で噴霧コーテイングした。こうして500μmから710μmのD−マンニトール球形粒が84.5%の収率で得られた。
この球形粒のアスペクト比は1.09であり、集合体としてのカサ密度は0.70g/ml、安息角は31度であった。また、この球形粒の表面は図5で示すとおり、平滑であり、摩損度は0.27%であった。
【0054】
実施例2
D−マンニトール粉末2kgをニーダーに仕込み、水200gを加えて15分間練り合わせた後、4mmスクリーンを付したパワーミルを用いてほぐし、湿潤造粒物を得た。この湿潤造粒物を核としてCF装置に仕込み、200rpmで回転し、水70mlを5ml/minの速度で噴霧造粒した。これを乾燥し、篩過して球形造粒用の核としてD−マンニトール造粒物を得た。この造粒物の粒径範囲は212μmから355μmであった。
【0055】
核としてD−マンニトール造粒物(355μm〜500μm)の代わりに前記D−マンニトール造粒物(212μm〜355μm)を用いた他は実施例1と同様に操作したところ、300μmから500μmのD−マンニトール球形粒が80.2%の収率で得られた。
この球形粒のアスペクト比は1.10であり、カサ密度は0.72g/ml、安息角は32度であった。得られた球形粒の表面は図5と同様に平滑であり、摩損度は0.34%であった。
【0056】
実施例3
実施例2で得られた核であるD−マンニトール造粒物(212μm〜355μm)1kgをCF装置に仕込み、スリットエアーを供給しながら、180rpmで回転円板を回転させた。続いて、平均粒径7.4μmの粉末D−マンニトール1kgを25g/minの供給速度で核に散布しつつ、ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達株式会社製、商品名、HPC−L)1重量%水溶液240mlを0.8kg/cm2 の圧力を加え、40分間、核に噴霧造粒した。これを乾燥し、篩別してD−マンニトール湿潤球形粒を得た。
【0057】
次に、得られた湿潤球形粒をFL装置の造粒容器に入れ、60℃で乾燥しながら、D−マンニトールの20重量%水溶液1kgを40ml/minの速度で噴霧コーテイングした。こうして300μmから500μmのD−マンニトール球形粒が78.5%の収率で得られた。
この球形粒のアスペクト比は1.15であり、カサ密度は0.71g/ml、安息角は33度であった。得られた球形粒の表面は図5と同様に平滑であり、摩損度は0.35%であった。
【0058】
実施例4
予めCF装置の造粒容器内にスリットエアーを供給しながら、180μmから355μmに篩過した結晶ビタミンC(L−アスコルビン酸)500gを核としてCF装置の回転円板上に仕込み、200rpmで回転円板を回転させた。続いて、平均粒径21.4μmの粉末ビタミンC(L−アスコルビン酸)1550gを60g/minの供給速度で核に散布しつつ、水を0.8kg/cm2 の圧力で10ml/minの速度で核に噴霧造粒し湿潤球形粒を得た。
【0059】
この湿潤球形粒をFL装置に仕込み、60℃で流動乾燥した。乾燥終了後、同一の流動条件下にビタミンC(L−アスコルビン酸)20重量%水溶液800gを40ml/minの速度で噴霧、乾燥してコーテイングした。こうして355μmから600μmの実質的に100%ビタミンC(L−アスコルビン酸)のみからなる球形粒が75%の収率で得られた。この球形粒のアスペクト比は1.10であり、集合体としてのカサ密度0.86g/ml、安息角は31度であった。得られた球形粒の表面は図7に示すように平滑であり、摩損度は0.46%であった。
【0060】
実施例5
75μmの篩いを通過した粉末ビタミンC(L−アスコルビン酸ナトリウム結晶)1kgに10重量%HPC−L水溶液100mlを加え、ニーダーで練り合わせてた後、0.5mmのスクリーンで押し出し造粒し、乾燥し、整粒し、篩いを用いて粒径500μmから710μmのビタミンC(L−アスコルビン酸ナトリウム)造粒物を得た。
【0061】
予めCF装置の造粒容器内にスリットエアーを供給しながら、前記ビタミンC造粒物(L−アスコルビン酸ナトリウム)500gを核としてCF装置の回転円板上に仕込み、200rpmで回転円板を回転させた。続いて、平均粒径21.4μmの粉末ビタミンC(L−アスコルビン酸ナトリウム結晶)1000gを60g/minの供給速度で核に散布しつつ、水を0.8kg/cm2 の圧力で10ml/minの速度で核に噴霧造粒し湿潤球形粒を得た。
この湿潤球形粒をFL装置に仕込み、60℃で流動乾燥した。乾燥終了後、同一の流動条件下にビタミンC(L−アスコルビン酸ナトリウム)20重量%水溶液800gを40ml/minの速度で噴霧、乾燥してコーテイングした。
【0062】
こうして710μmから1000μmの実質的に100%ビタミンC(L−アスコルビン酸ナトリウム)のみからなる球形粒が82%の収率で得られた。この球形粒のアスペクト比は1.09であり、カサ密度0.80g/ml、安息角は31度であった。得られた球形粒の表面は図7と同様に平滑であり、摩損度は0.39%であった。
【0063】
実施例6
予めCF装置の造粒容器内にスリットエアーを供給しながら、300μmから500μmに篩過した塩化ナトリウム結晶1000gを核としてCF装置の回転円板上に仕込み、200rpmで回転円板を回転させた。続いて、平均粒径25.7μmの予め粉砕された塩化ナトリウム粉末1200gを60g/minの供給速度で核に散布しつつ、水を0.8kg/cm2 の圧力で10ml/minの速度で核に噴霧造粒し湿潤球形粒を得た。
【0064】
この湿潤球形粒をFL装置に仕込み、60℃で流動乾燥した。こうして355μmから600μmの実質的に100%塩化ナトリウム結晶のみからなる球形粒が75%の収率で得られた。この球形粒のアスペクト比は1.10であり、カサ密度1.09g/ml、安息角は31度であった。得られた球形粒の表面は図8に示すように平滑であり、摩損度は0.46%であった。
【0065】
実施例7
遠心転動造粒装置(CF−360)を使用し、スリットエアを供給しながら、355〜500μmのD−キシリトール結晶300gを仕込み、160〜200rpmで回転円板を回転させた。次いで、平均粒径25.7μmの粉砕D−キシリトール2400gを30g/minの速度で散布しつつ、1.0kg/cm2 の圧力でD−キシリトール50%水溶液を5ml/minの速度で噴霧し、造粒した。
得られた湿潤球形粒を流動層造粒装置(FLO−5)に入れ、60℃で乾燥した。次いで、この球形粒200gを流動層造粒装置(FLO−MINI)に入れ、5重量%シェラックエタノール/水溶液80gを4ml/minの速度で噴霧コーティングした。710〜1000μmの球形粒が82.0%の収率で得られた。この球形粒の長径/短径比は1.09であり、かさ密度は0.710、安息角は31°である、走査型電子顕微鏡で表面を観察したところ、結晶は見えず、平滑であった。
【0066】
比較例1
実施例7で使用したD−キシリトール水溶液の代わりに5重量%のHPC−L水溶液を使用した以外は実施例7と同様の方法で造粒した。得られた造粒物は、長径/短径比が1.2以上であり、目的とする球形粒は形成されなかった。
【0067】
比較例2
実施例7で得られた湿潤球形粒を流動層造粒装置FLO−5に入れ、60℃で乾燥した。この方法により710〜1000μmの球形粒が83.2%収率で得られた。この球形粒の長径/短径比が1.09であり、かさ密度は0.706g/ml、安息角は31°であった。得られた球形粒の表面は平滑とは言いがたく、数十μmオーダーの粉末が付着した状態であった。また、室内で数時間放置しておくと、D−キシリトールの吸湿性が高いことから凝集が起こっていた。
【0068】
実施例8
比較例2で得られた球形粒200gを流動層造粒装置(FLO−MINI)に入れ、6重量%ツェインエタノール/水溶液66.7gを5ml/minの速度で噴霧コーティングした。710〜1000μmの球形粒が82.2%収率で得られた。この球形粒の長径/短径比が1.09であり、かさ密度は0.715g/ml、安息角は31°であり、走査型電子顕微鏡で表面を観察したところ、結晶は見えず平滑であった。また、室内で放置しても凝集は起こらなかった。
【0069】
実施例9
比較例2で得られた球形粒200gを流動層造粒装置(FLO−MINI)に入れ、5重量%ポリ酢酸ビニル酢酸エチル溶液80gを4ml/minの速度で噴霧コーティングした。710〜1000μmの球形粒が81.4%収率で得られた。この球形粒の長径/短径比が1.09であり、かさ密度は0.714g/ml、安息角は31°であり、走査型電子顕微鏡で表面を観察したところ、結晶は見えず平滑であった。また、室内で放置しても凝集は起こらなかった。
【0070】
比較例3
比較例2で得られた球形粒200gを流動層造粒装置(FLO−MINI)に入れ、5重量%HPMC水溶液80gを4ml/minの速度で噴霧コーティングした。710〜1000μmの球形粒が80.3%収率で得られた。この球形粒の長径/短径比が1.09であり、かさ密度は0.716g/ml、安息角は31°であり、走査型電子顕微鏡で表面を観察したところ、結晶は見えず平滑であった。しかし、室内で放置すると凝集が起こっていた。
【0071】
実施例10
実施例1で得られたD−マンニトール球形粒3kgを遠心流動造粒装置(CF360型、フロイント産業(株))に仕込み、スリットエアーを供給しながら回転円盤を200rpmで回転させた。続いて塩酸フェニルプロパノールアミンの粉末2.7kgを徐々に散布しながら、エチルセルロースの2%エタノール溶液を4〜6g/minの速度でスプレーして被覆造粒し、素顆粒を得た。次に該素顆粒5kgを流動層造粒装置(WSG5型、(株)大川原製作所)に仕込み、50℃の乾燥空気を送って流動させた。そこに、エチルセルロース水分散液(アクアコート、旭化成)に可塑剤としてクエン酸トリエチル、滑沢剤としてタルクを配合して調製した15%濃度のコーティング液を、15g/minの速度でスプレーした後、60℃で5時間キュアリングを行うことにより徐放性顆粒剤を得た。
【0072】
比較例4
実施例1で得られた湿潤球形粒をFL装置に仕込み、60℃で乾燥して、500μmから710μmのD−マンニトール球形粒を81.8%の収率で得た。この球形粒のアスペクト比は1.09であり、カサ密度は0.69g/ml、安息角は31度であった。図4に示すように、得られた球形粒の表面には、数十μmオーダーの粉末が付着していた。また、表面平滑性が乏しいことに由来して摩損度が大きく11.3%であった。
【0073】
比較例5
実施例2で得られた核であるD−マンニトール造粒物(212μm〜355μm)1kgをCF−360に仕込み、スリットエアーを供給しながら、180rpmで回転円板を回転させた。続いて、平均粒径7.4μmの粉末D−マンニトール1kgを25g/minの供給速度で散布しつつ、ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達株式会社製、商品名、HPC−L)5重量%水溶液240mlを0.8kg/cm2 の圧力を加え、40分間、噴霧造粒した。
できあがった湿潤粒子は核に付着しなかった粉末が多く、粗大粒が多くあった。この粒子のアスペクト比は1.2以上であり、目的とする球形粒は得られなかった。
【0074】
比較例6
実施例4で得られた湿潤球形粒をFL装置に仕込み、60℃で乾燥した結果、355μmから600μmの球形粒が73%の収率で得られた。この球形粒のアスペクト比は1.10であり、集合体としてのカサ密度は0.81g/ml、安息角は31度であった。
図6に示すように、球形粒の表面状態は数μmの粉末ビタミンC(L−アスコルビン酸)が付着した状態であり、表面平滑性に乏しく、摩損度は10.40%と大きなものであった。
【0075】
比較例7
実施例6の水の代わりにHPC−Lの5重量%水溶液を使用した以外は実施例6と同様な方法で造粒したところ、できあがった造粒物のアスペクト比が1.2を越えており、目的とする球形粒はできなかった。
【0076】
実施例6と比較例7とを比べると、HPC−Lなどの水溶性高分子をバインダー(結合剤)として用いると、水溶性高分子の結合力の強さが障害になって、球形粒が形成されない結果になった。
また、実施例6と比較例7の比較から、水の代わりにHPC−Lなどの水溶性高分子を用いる場合は、水溶性高分子のバインダー(結合剤)としての結合力が弱くなるように、水溶性高分子は希薄水溶液として用いる必要があることが分かる。このような水溶性高分子の希薄水溶液の濃度は、各水溶性高分子ごとに実験的に求めることができる。
【0077】
試験例1
各種添加剤について、球形粒用原料としての適合性をさらに検討するために、塩酸フェニルプロパノールアミンとの配合性を熱分析法により求めた。結果を表2に示す。
【0078】
【表2】
【0079】
測定条件:
(1)薬物及び添加剤を5mgずつ混合(混練処理)
(2)測定温度:25℃→250℃
(3)昇温速度:5℃/分
(4)T:急激な熱分解開始温度
【0080】
塩酸フェニルプロパノールアミンとの相互作用が小さい球形粒の原料としては、従来タイプ(参考例)よりも本発明用(実施例)の添加剤の方がよく、中でもD−マンニトールを併用した場合には、薬物単独の場合と比べて、ほとんど熱分解開始温度の低下が認められないことが判明した。
【0081】
試験例2
医薬活性成分として塩酸フェニルプロパノールアミンを含有する本発明顆粒について、保存安定性を調べた。本発明顆粒としては、実施例7で得られたマンニトール球形粒含有のものを、また対照としては結晶セルロース球形粒含有のものをそれぞれ使用した。結果を表3に示す。
【0082】
【表3】
顆粒の保存安定性は、球形粒成分として結晶セルロースよりもD−マンニトールを主成分として用いた場合の方が著しく高いことが判明した。
【0083】
【発明の効果】
以上に説明した本発明の単一物質球形粒は、糖アルコール、ビタミンC、塩化ナトリウムなどの結晶を主成分としているので、従来の蔗糖(又は蔗糖と澱粉との混合物)を用いた球形粒に比べて低カロリーあるいはノンカロリーであるという利点がある。また、水に溶け難い結晶セルロースを主成分とする球形粒のように崩壊が全く起こらないという難点もなく、適度の崩壊性を有することから、溶出制御医薬の核として理想的な特性を具備する球形粒である。
【0084】
また、固定化処理による表面平滑化により、球形粒の上にコーティングする薬剤や溶出制御層のコーティング厚さの均一化がはかられ、従って厚さによって溶出速度が変化する溶出制御層の厚さのコントロールや有効血中濃度を担保する薬剤量のコントロールが可能となり、徐放性製剤として最適な設計ができるようになった。
【0085】
本発明の単一物質球形粒は、その表面を固定化処理していることにより、表面平滑度にすぐれ、摩損しにくい球形粒となったため、徐放性製剤等を製造する際、造粒効率あるいはコーティング効率が上がり、生産性の向上と原価低減が見込まれるという利点をもっている。
また、球形粒中に薬剤を入れられるようになったため、球形粒の上にコーティングする薬剤層及び溶出制御層をそれぞれ2層にすれば、合わせて3層の徐放性薬剤となり、溶解性のpH依存性を何段階かに変えた制御層を設けることにより、今までにない徐放性製剤ができるようになった。
【0086】
本発明の糖アルコール球形粒や塩化ナトリウム球形粒は、単一物質のみであるかあるいは単一物質の比率がきわめて高いため、薬物との反応が少なく、球形粒中に薬物を入れられる長所をもっている。特に単一物質単独の構成で表面が平滑な球形粒は従来製造できず、本発明により初めて医薬業界へ提供できるものである。
【0087】
本発明の糖アルコール球形粒や塩化ナトリウム球形粒からなる単一物質単独あるいは単一物質の比率がきわめて高い球形粒は、メイラード反応がないか、あるいは少なく、球形粒中に食品や食品添加物を入れられる長所をもっている。特に単一物質単独の構成で表面が平滑な球形粒は従来製造できなかったものであり、本発明により初めて食品業界へ提供できるものである。
【0088】
本発明のビタミンC球形粒はビタミンC単独あるいはビタミンCの比率がきわめて高く、その表面が平滑な球形粒は従来製造できず、本発明により初めて医薬業界や食品業界へ提供できるものである。
【0089】
本発明により提供される球形粒含有医薬は保存安定性にすぐれている。特にD−マンニトールを主成分とする球形粒を含有する顆粒剤やそのカプセル剤は、例えば塩酸フェニルプロパノールアミン等のアミン類との反応性が小さいので、とりわけ好ましい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で使用できる造粒コーティング装置の一例を示す図である。
【図2】単一物質球形粒の安息角の測定法を説明する図である。
【図3】電子顕微鏡で観察した本発明で用いられる粉末単一物質(粉末D−マンニトール)の表面状態を示す写真である。
【図4】電子顕微鏡で観察した固定化処理を行わない単一物質(D−マンニトール)球形粒の表面状態を示す写真である。
【図5】電子顕微鏡で観察した本発明の単一物質(D−マンニトール)球形粒の表面状態を示す写真である。
【図6】電子顕微鏡で観察した固定化処理を行わない単一物質(L−アスコルビン酸)球形粒の表面状態を示す写真である。
【図7】電子顕微鏡で観察した本発明の単一物質(L−アスコルビン酸)球形粒の表面状態を示す写真である。
【図8】電子顕微鏡で観察した本発明の単一物質(塩化ナトリウム)球形粒の表面状態を示す写真である。
【符号の説明】
1:造粒容器、2:回転円板、3:回転軸、4:スリット、5:エアチャンバー、6:除湿装置、7:熱交換器、8:単一物質粉末、9:散布装置、10:噴霧用液、11:タンク、12:定流量ポンプ、13:スプレーノズル、14:噴霧用エアー、15:製品排出装置、16:ステーターカバー、17:スリットエア用空気
Claims (12)
- 水溶性単一物質を95重量%以上含有する粒子を造粒してなるアスペクト比が1.2以下の球形であって、集合体のカサ密度が0.65g/ml以上、安息角35度以下である球形粒であって、
(イ)該水溶性単一物質が糖アルコール、ビタミンC及び塩化ナトリウムの群より選ばれた1種からなり、
(ロ)該水溶性単一物質の飽和水溶液の粘度が25℃〜45℃の範囲で10cps以下であり、
(ハ)該球形粒の摩損度が1.0%以下
であることを特徴とする球形粒。 - 前記糖アルコールは、D−マンニトール及び/又はエリスリトールであることを特徴とする請求項1に記載の球形粒。
- 前記ビタミンCは、L−アスコルビン酸及び/又はL−アスコルビン酸ナトリウムであることを特徴とする請求項1に記載の球形粒。
- 前記単一物質は、キシリトールを95重量%以上含有する物質からなることを特徴とする請求項1に記載の球形粒。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の球形粒からなることを特徴とする、食品用球形粒。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の球形粒からなることを特徴とする、食品製造における造粒コーティング用球形粒。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の球形粒からなることを特徴とする、医薬製造における造粒コーティング用球形粒。
- 糖アルコールを含有する球形粒からなることを特徴とする請求項7に記載の医薬製造における造粒コーティング用球形粒。
- 請求項7又は8に記載の球形粒を含有することを特徴とする、医薬。
- 医薬成分として、塩酸フェニルプロパノールアミンを含有することを特徴とする請求項9に記載の医薬。
- 前記医薬が顆粒剤又はカプセル剤であることを特徴とする、請求項9又は10に記載の医薬。
- 請求項7又は8に記載の造粒コーティング用球形粒を担体として用いることを特徴とする、医薬の製造方法。
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