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JP3905578B2 - イオントフォレシス用インターフェイス - Google Patents

イオントフォレシス用インターフェイス Download PDF

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JP3905578B2
JP3905578B2 JP16853496A JP16853496A JP3905578B2 JP 3905578 B2 JP3905578 B2 JP 3905578B2 JP 16853496 A JP16853496 A JP 16853496A JP 16853496 A JP16853496 A JP 16853496A JP 3905578 B2 JP3905578 B2 JP 3905578B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、イオントフォレシスを利用して薬物を経皮投与する上で有用なインターフェイス(皮膚接触体)に関する。
【0002】
【従来の技術】
イオントフォレシス(Iontophoresis)は電気を用いた経皮吸収促進システムであり、その原理は、主に通電による陽極と陰極との間の電界中を、正にチャージした分子が陽極から陰極へ、負にチャージした分子が陰極から陽極へ移動する力に基づいて、薬物分子の皮膚バリヤー透過を促進することにある[ジャーナル・オブ・コントロールド・リリース(Journal of Contorolled Release)18巻、1992年、213〜220頁;アドバンスト・ドラッグ・デリバリー・レビュー(Advanced Drug Delivery Review)9巻、1992年、119頁;ファルマシュウティカル・リサーチ(Pharmaceutical research)3巻、1986年、318〜326頁参照]。
【0003】
最近の合成技術、遺伝子工学の進歩により、天然に存在するペプチド又は蛋白質、若しくはこれらのアミノ酸組成を変化させたペプチド又は蛋白質や、化学的に修飾した誘導体を、純粋にかつ大量に生産することが可能となるとともに、これらのペプチドや蛋白質を医薬品として応用することが期待されている。一方、微量で多様な生理活性を有するこれらのペプチドや蛋白質を限定された疾病で薬効を最大限に発揮させるとともに副作用を最小限に抑制するためには、厳密な投薬コントロールが要求される。
【0004】
さらに、生理活性ペプチド又は蛋白質は、通常、胃腸管内で消化液によって分解されるとともに、消化管壁の分解酵素によって加水分解されるため、吸収効率を有効に高めることが困難である。従って、十分な薬効を期待するため、生理活性ペプチド又は蛋白質は、通常、経口投与ではなく注射による投与が行われている。しかし、注射剤として投与すると、患者に与える苦痛が大きいだけでなく、自己投与ができないため、患者には大きな負担となる。
【0005】
製薬分野において、新しい薬物送達システム(ドラッグデリバリーシステム)として、イオントフォレシスが精力的に研究がされている。すなわち、このイオントフォレシスを利用することにより、注射剤として投与されていた薬物を、患者自身が自己投与することにより、在宅治療の可能性が広がるだけでなく、通電時間の精密な制御により、薬物の吸収時間を制御することができる。特に内因性化合物の補充療法においては、生体のサーカディアンリズムを考慮して、より効果的な薬物治療が実現できると考えられる。
【0006】
このような利点を有するイオントフォレシスを利用した投与システムでは、通常、直流電源により電圧を印加するための電極と、この電極と導通可能であるとともに皮膚に対して接触可能な薬物保持体(皮膚接触体としてのインターフェイス)と、対照電極とが使用される。前記インターフェイスとしては、有機質の薬物保持層(例えば、紙材、織布、不織布などの布材、繊維材、合成樹脂連続発泡体又は吸水性樹脂などのスポンジ又は多孔質体などで構成された薬物保持層)で構成された非導電性インターフェイス、無機質の保持体(例えば、セラミック多孔体、多孔質又は毛細管構造を有するセラミックなど)で構成された非導電性インターフェイスが報告されている。
しかし、これらの薬物保持体に薬物をコーティングや含浸により担持したり、半乾燥又は乾燥してイオントフォレシスに利用すると、薬物の経皮吸収量が十分でない。そのため、薬物の生物学的利用率を高めることが困難である。経皮吸収率が小さな理由として、生理活性ペプチドや蛋白質などの薬物が薬物保持体に吸着し、利用効率が低下することが考えられる。
【0007】
特開平6−16535号公報には、非導電性材料で構成された多孔性乃至毛細管構造体を、牛血清アルブミン、人血清アルブミン、ゼラチンなどの高分子蛋白によりコーティング処理したイオントフォレシス用インターフェイス(皮膚当接体)を用いることにより、薬物の吸着を抑制し、少量の薬物で効果的に経皮吸収性を高めることが提案されている。この文献には、多孔性乃至毛細管構造体としてナイロン多孔体(例えば、バイオダイン)が好ましいと記載されている。
【0008】
しかし、インターフェイスの基材となる構造体に対する薬物の吸着に起因するためか、時間の経過にともなって有効薬物量が著しく減少し、薬物を有効に吸収させることが困難である。また、前記吸着に起因するためか、イオントフォレシスによる薬物放出性が小さい。そのため、高い再現性及び高い利用効率で薬物を経皮的に有効かつ精度よく投与することが困難である。特に、生理活性ペプチドや蛋白質を安定かつ高い保持率で保持し、高い生物学的利用率で薬物を経皮的に投与することが困難である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、薬物を高い生物学的利用率及び高い再現性で経皮的に有効かつ精度よく投与できるイオントフォレシス用インターフェイス(皮膚接触体)を提供することにある。
本発明の他の目的は、有効薬物の保持量の低下を抑制するとともに、放出性が高く、薬物を有効に投与できるイオントフォレシス用インターフェイスを提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、生理活性ペプチド又は蛋白質であっても放出性および生物学的利用率を高めることができるイオントフォレシス用インターフェイスを提供することにある。
本発明の別の目的は、前記インターフェイスを用いる薬物の経皮吸収促進方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討したところ、皮膚との接触面に、親水性を有するとともに低い蛋白吸着性の薄膜を配設すると、生理活性ペプチド及び蛋白質であっても、薬物が溶解液に接触した後、速やかに放出され、著しく高い利用効率で再現性よく経皮的に投与できることを見いだし、さらに鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成した。
すなわち、(1)本発明のイオントフォレシス用インターフェイスは、蛋白質低吸着性薄膜を備えている。このイオントフォレシス用インターフェイスにおいて、(2)薄膜の蛋白質吸着能は、1cm2 当たり10μg以下であってもよく、(3)薄膜の厚さは10〜200μmであってもよく、(4)薄膜の空隙率は60〜90%であってもよい。(5)前記薄膜には、親水化フッ素樹脂膜、親水化セルロース誘導体膜、親水化ポリスルフォン膜などが含まれる。
なお、本明細書において、「蛋白質低吸着性」とは、例えば、ヒト型PTHのN末端(1→34位)のペプチドフラグメント(hPTH(1→34)と略称する)に対する吸着量が10μg/cm2 以下であることを意味する。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に、必要に応じて図面を参照しつつ本発明を詳細に説明する。
イオントフォレシス用インターフェイスを構成する親水性で蛋白質低吸着性薄膜(以下、単に親水性薄膜又は薄膜と称する場合がある)の素材としては、薬物を乾燥状態で保持でき、薬物が透過可能であるとともに、蛋白質に対して低吸着性の親水性材料が使用できる。このような親水性材料で形成された親水性薄膜には、水に対する濡れ性の高い薄膜、例えば、親水化された疎水性(又は撥水性)ポリマー薄膜、親水性物質を含有する疎水性ポリマー薄膜などが含まれる。
【0012】
親水化された疎水性ポリマー薄膜には、例えば、親水化フッ素樹脂で形成された薄膜(例えば、親水性基が導入されたフッ素含有モノマーを構成成分とする単独又は共重合体の薄膜、例えばミリポア社製、親水性デュラポア等や、フッ素含有モノマーを構成成分とする単独又は共重合体の薄膜の表面を親水性に改質したもの、例えば、東洋濾紙(株)製、親水性ポリテトラフルオロエチレンなど)、親水化ポリスルフォンなどで形成された薄膜(例えば、ゲルマンサイエンス社製,スーポアなど)、親水化セルロース誘導体(例えば、親水化セルロースモノアセテート、親水化セルローストリアセテートなど)などで形成された薄膜(例えば、東洋濾紙(株)製、各種の濾紙やイオン交換濾紙など)などが挙げられる。親水性基が導入されたフッ素含有モノマーとしては、親水性基が導入されたフルオロエチレン(1−フルオロエチレン)、親水性基が導入されたフッ化ビニリデン(すなわち、1,1−ジフルオロエチレンであるビニリデンフルオライド)、1,2−ジフルオロエチレンなどが含まれる。これらのモノマーの重合体としては、親水化ポリフルオロエチレン、親水化フルオロエチレン−テトラフルフオロエチレン共重合体、親水化フルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、親水化エチレン−フルオロエチレン共重合体、親水化エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、親水化ポリビニリデンフロオライド、親水化フルオロエチレン−ビニリデンフルオライド共重合体、親水化エチレン−ビニリデンフルオライド共重合体などが挙げられる。前記フッ素含有モノマーに導入された親水性基の種類は特に制限されず、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、N−置換アミノ基(モノ又はジC1-4アルキルアミノ基など)、(ポリ)オキシアルキレン基などのエーテル基、親水性アルキル基(例えば、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基などのヒドロキシ−C1-4アルキル基、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基などのカルボキシ−C1-4アルキル基、アミノメチル、アミノエチル基などのアミノ−C1-4アルキル基、メチルアミノメチル、ジメチルアミノメチル、ジメチルアミノエチル基などのモノ又はジ−C1-4アルキルアミノ−C1-4アルキル基など)などが挙げられる。これらの親水性基は、フルオロエチレン、ビニリデンフルオライドの水素原子と置換して炭素原子に結合している場合が多い。
【0013】
親水化フッ素樹脂は、例えば、下記式で表される繰返し単位で構成されている場合が多い。
【0014】
【化1】
Figure 0003905578
(式中、R1 ,R2 は同一又は異なる親水性アルキル基を示す)
親水性アルキル基には、例えば、ヒドロキシアルキル基(特にヒドロキシ−C2-3 アルキル基)、(ポリ)オキシアルキレン基(特に(ポリ)オキシ−C2-4 アルキレン基)などが含まれる。ヒドロキシアルキル基は、ヒドロキシル基を有する重合性化合物[例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート,ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート,4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなど]などに由来してもよい。(ポリ)オキシアルキレン基は、エーテル基を有する重合性化合物、例えば、(ポリ)オキシアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート[例えば、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートなど]、(ポリ)オキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート[例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレートなど]などに由来してもよい。
これらの親水性アルキル基は、細孔を含めた多孔質フッ素樹脂薄膜の表面に、前記重合性化合物がグラフト重合することにより導入してもよく、前記重合性化合物の重合体によるコーティングなどにより導入してもよい。
【0015】
親水性物質を疎水性ポリマー薄膜に含ませ親水化した膜には、適当な湿潤剤(例えば、グリセリン、ポリビニルピロリドンなど)を添加した種々のポリマー、例えば、親水処理酢酸セルロース膜(例えば、ザルトリウス社製,アシンメトリックウルトラフィルター、東洋濾紙(株)製のセルロースアセテートタイプメンブレンなど)、親水処理ポリカーボネート膜(例えば、ミリポア社製,アイソポアメンブレンなど)、親水処理ポリテトラフルオロエチレン膜(例えば、ミリポア社製,オムニポアメンブレンなど)、親水処理ポリスルフォン膜(ゲルマンサイエンス社製,HTタフリンなど)、親水処理不織布(例えば、ポリエステル不織布を酢酸セルロースで被覆した膜(東洋濾紙(株)製のコーティッドタイプメンブレンなど)などが挙げられる。
【0016】
これらの親水性薄膜は、生理活性ペプチド及び蛋白質に対する吸着性が極めて低く、薬物溶液の浸透性が高いとともに、薬物の膜内への移動速度、薬物の溶解速度が大きい。好ましい薄膜には、蛋白質に対する吸着性が小さく、薬物の保持性の高い薄膜、例えば、親水化フッ素樹脂薄膜、親水処理セルロース誘導体膜(例えば、親水処理メチルセルロース、親水処理エチルセルロース、ハイドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースフタレートなどの膜)特に好ましくは親水化ポリビニリデンフルオライド膜(例えば、ミリポア社製,ハイドロフィリックデュラポアなど)、親水処理酢酸セルロース膜(例えば、東洋濾紙(株)製、セルロースアセテートタイプ膜など)、親水処理ポリエステス不織布(例えば、東洋濾紙(株)製、コーティッドタイプ膜)などが含まれる。
前記親水性薄膜は、蛋白質に対する吸着性が低く、蛋白質の吸着量が小さいという特色がある。薄膜に対する蛋白質の吸着量は、例えば、10μg/cm2 以下、好ましくは8μg/cm2 以下(例えば、0〜6μg/cm2 )、さらに好ましくは6μg/cm2 以下(例えば、0〜4μg/cm2 )である。なお、蛋白質の吸着量は、慣用の方法、例えば、hPTH(1→34)40μg(125IでラベルされたhPTH(1→34)をトレーサー量含む)を含む蒸留水300μlに、薄膜を、室温下で2時間浸漬した後、水溶液を吸引除去し、蒸留水1mlで3回水洗した後、残存放射活性を測定することにより測定することができる。
【0017】
これらの親水性薄膜は多孔質構造を有している。薄膜の細孔径は、薬物の保持量、放出性などを損なわず、薬物が溶解液と接触した後、速やかに膜から放出され、皮膚接触面に高濃度の薬物溶解層を形成することが可能な範囲から選択でき、例えば、平均孔径0.01〜20μm、好ましくは0.1〜15μm(例えば、0.1〜10μm)、さらに好ましくは1〜10μm(例えば、2〜8μm)程度である。また、薄膜の空隙率は、例えば、60〜90%、好ましくは65〜90%、さらに好ましくは65〜85%程度である。なお、薄膜の細孔は、慣用の方法、例えば、フィルム成形工程で延伸する延伸法、流延法、相分離法、溶出法、高エネルギー線照射法などにより形成できる。
【0018】
親水性薄膜の厚みは、薬物の保持量などに応じて選択でき、例えば、約0.1〜500μm、好ましくは1〜300μm、さらに好ましくは10〜200μm程度であり、20〜150μm程度である場合が多い。さらに、薄膜の面積は、薬物の保持量などに応じて適当に選択でき、例えば、約1〜100cm2 、好ましくは約2〜50cm2 程度である。
また、前記薄膜は非変形性であってもよいが、柔軟性や可撓性を有する場合が多い。
【0019】
前記親水性薄膜は、蛋白質の吸着をさらに抑制するため、イオン性界面活性剤で処理されていてもよい。イオン性界面活性剤には、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤が含まれる。アニオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸金属石鹸、アルキル硫酸塩(例えば、ナトリウム塩など)、アルキルベンゼンスルホン酸塩(例えば、ナトリウム塩など)、アルキルナフタレンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩(例えば、ナトリウム塩など)、N−アシルアミノ酸塩(例えば、ナトリウム塩など)、2−スルホコハク酸ジアルキル塩(例えば、ナトリウム塩など)などが挙げられる。これらのアニオン性界面活性剤は一種又は二種以上使用できる。
カチオン性界面活性剤には、例えば、N−エチルアルカンアミドアンモニウムハライド(例えば、N−エチル−C8-20アルカンアミドアンモニウムクロライド)、アルキルピリジニウムハライド(例えば、N−C10-20アルキルピリジニウムブロミドなど)、4級アンモニウム塩などが含まれ、4級アンモニウム塩には、例えば、アルキルトリメチルアンモニウムハライド(例えば、C8-20アルキルトリメチルアンモニウムクロリドなど)、ジアルキルジメチルアンモニウムハライド(例えば、ジ−C8-20アルキルジメチルアンモニウムクロリドなど)、下記式
[C65CH2N(CH32R]+-
(式中、Rはアルキル基、Xはハロゲン原子を示す)
で表されるアルキルベンジルジメチルアンモニウムハライド[例えば、C8-20アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロリド(塩化ベンザルコニウム)、4−C1-10アルキルフェニルオキシエトキシエチルベンジルジメチルアンモニウムクロリド(例えば、塩化ベンゼトニウムなど)]などが含まれる。これらのカチオン性界面活性剤も一種又は二種以上混合して使用できる。
両性界面活性剤としては、例えば、アルキルベタイン、アルキルジエチレントリアミノ酢酸などが例示できる。
【0020】
好ましいイオン性界面活性剤には、カチオン性界面活性剤、特に4級アンモニウム塩、なかでも前記式で表されるアルキルベンジルジメチルアンモニウムハライド(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムなど)が含まれる。
【0021】
親水性薄膜に対するイオン性界面活性剤の処理量は、例えば、薄膜1cm2 当たりイオン性界面活性剤約0.10〜50μg、好ましくは約0.10〜30μg、より好ましくは約0.12〜12μg程度である。
イオン性界面活性剤による処理量は、親水性薄膜に対して、0.001〜10重量%、好ましくは0.005〜5重量%、さらに好ましくは0.01〜1重量%程度であり、0.005〜1重量%程度である場合が多い。
【0022】
前記薄膜をインターフェイスとして皮膚接触面に配すると、薄膜を介して、一定の面積で薬物溶液を皮膚と接触させることができ、薬物を有効かつ再現性よく経皮的に吸収させることができる。
前記薄膜(インターフェイス)を通じて投与される薬物は経皮吸収可能であるとともに水溶性である限り特に制限されず、種々の生理活性ペプチドもしくは蛋白質、核酸、または低分子量の非ペプチド性生理活性化合物が使用できる。生理活性ペプチド又は蛋白質の分子量は、例えば、100〜30000(好ましくは200〜20000、さらに好ましくは500〜10000、特に500〜8000)程度であり、低分子量の非ペプチド性生理活性化合物の分子量は、例えば、約1000以下(例えば、100〜1000)である。
【0023】
低分子量の非ペプチド性生理活性物質としては、中枢神経系用薬、アレルギー用薬、循環器官用薬、血管収縮薬、鎮痛薬、呼吸器官用薬、消化器官用薬、ホルモン剤、代謝性薬、抗腫瘍剤、抗生物質、化学療法剤などの種々の低分子量の生理活性化合物(例えば、分子量約1000以下の化合物)が使用できる。好ましい薬物には、生理活性ペプチド又は蛋白質が含まれ、生理活性ペプチド又は蛋白質の分子量は、例えば、100〜30000、好ましくは約8000以下である場合が多い。
【0024】
生理活性ペプチドとしては、例えば、次のようなペプチドが挙げられる。
黄体形成ホルモン放出ホルモン(LH−RH),LH−RHと同様な作用を有する誘導体、例えば、ナファレリン及び下記式(I):
(Pyr) Glu-R1-Trp-Ser-R2-R3-R4-Arg-Pro-R5 (I)
[式中、R1はHis,Tyr,Trpまたはp-NH2-Phe、R2はTyrまたはPhe、R3はGlyまたはD型のアミノ酸残基、R4はLeu,IleまたはNle、R5はGly-NH-R6(R6は水素原子または水酸基を有していてもよい低級アルキル基)またはNH-R6(R6は前記と同意義)を示す]
で表されるポリペプチド又はその塩(米国特許第3853837号明細書、同第4008209号明細書、同第3972859号明細書、英国特許第1423083号明細書、プロシーデイングス・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス(Rroceedings of the National Academy of Science)第78巻、6509〜6512頁(1981年)参照]。
前記式(I)において、R3 で表されるD型のアミノ酸残基としては、例えば、炭素数9までのα−D−アミノ酸(例えば、D−Leu,Ile,Nle,Val,Nval,Abu,Phe,Phg,Ser,Thr,Met,Ala,Trp,α−Aibu)などが挙げられ、これらのアミノ酸は、保護基(例えば、t−ブチル、t−ブトキシ、t−ブトキシカルボニル基など)を有していてもよい。R6 で表される低級アルキル基には、例えば、炭素数1〜6程度のアルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル基など)などが挙げられる。
なお、前記式(I)で表されるペプチドの塩(例えば、酸との塩)、金属錯体化合物もペプチド(I)と同様に使用できる。
前記式(I)で表されるポリペプチドにおいて、R1 =His,R2 =Tyr,R3 =D−Leu,R4 =Leu,R5 =NHCH2−CH3であるポリペプチド(TAP−144)が好ましい。
【0025】
LH−RH拮抗物質、例えば、下記式(II):
N-α-t-ブトキシカルボニル-O-ベンジル-Ser-Trp-Ser-Tyr-X1 -Leu-Arg-Pro-GlyNH2 (II)
(式中、X1 は D-Ser 又は D-Trp を示す)
で表されるポリペプチド又はその塩(米国特許第4086219号明細書、同第4124577号明細書、同第4253997号明細書、同第4317815号明細書参照)。
【0026】
GPIIb/IIIa拮抗作用を有する蛇毒ペプチド、例えば、バルブリン(barbourin)、Arg−Gly−Asp配列を有するペプチド、例えば、Arg−Gly−Asp−Ser,Gly−Arg−Gly−Asp−Ser−Pro,SK&F−106760(シクロ−S,S−[Ac−Cys(Nα−メチル)Arg−Gly−D−Asn−ペニシラミン]−NH2)、さらに同様の活性を有するペプチド様化合物、例えば、(S)−4−[(4−アミジノベンゾイル)グリシル]−3−メトキシ−カルボニルメチル−2−オキソピペラジン−1−酢酸、(S)−4−(4−グアニジノベンゾイルアミノ)アセチル−3−[3−(4−グアニジノベンゾイルアミノ)]プロピル−2−オキソピペラジン−1−酢酸・HCl、MK−383(2−S−(n−ブチルスルホニルアミノ)−3−[4−(N−ピペリジン−4−イル)ブチルオキシフェニル)]−プロピオン酸・HCl)、L−700462(L−Tyr−N−(ブチルスルホニル)−O−[4−(ピペリジニル)ブチル]モノハイドロクロライド)、SC−56484(エチル[[4−(アミノイミノメチル)フェニル]アミノ]−1,4−ジオキシブチル]アミノ−4−ペンチノエート)、Ro−44−9883([1−[N−(p−アミジノフェニル)−L−Tyr]−4−ピペリジニル]酢酸)、DMP728(サイクリック[D−2−アミノブチリル−N−2−メチル−L−Arg−Gly−L−Asp−3−アミノメチル−安息香酸]メタンスルホン酸塩)。
【0027】
さらに、インスリン;ソマトスタチン、ソマトスタチン誘導体、例えば、下記式(III):
【0028】
【化2】
Figure 0003905578
[式中、YはD-Ala,D-SerまたはD-Val,ZはAsnまたはAlaを示す]で表されるポリペプチド又はその塩(米国特許第4087390号明細書、同第4093574号明細書、同第4100117号明細書、同第4253998号明細書参照)、成長ホルモン;成長ホルモン放出ホルモン(GRH);プロラクチン;副腎皮質刺激ホルモン(ACTH);メラノサイト刺激ホルモン(MSH);甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)、その誘導体、例えば、下記式(IV):
【0029】
【化3】
Figure 0003905578
[式中、Xaは4〜6員複素環基を、Yaはイミダゾール−4−イルまたは4−ヒドロキシフェニル基を、ZaはCH2またはSを、R1a,R2aは同一または異なって水素原子又は低級アルキル基を、R3aは水素原子または置換基を有していてもよいアラルキル基を示す]
で表される化合物又はその塩(特開昭50−121273号公報、特開昭52−116465号公報参照)。
【0030】
甲状腺刺激ホルモン(TSH);黄体形成ホルモン(LH);卵胞刺激ホルモン(FSH);副甲状腺ホルモン(PTH)、副甲状腺ホルモンと同様な作用を有する誘導体、例えば、下記式(V)
1b−Val−Ser−Glu−Leu−R2b−His−Asn−R3b−R4b−R5b−His−Leu−Asn−Ser−R6b−R7b−Arg−R8b−Glu−R9b−Leu−R10b−R11b−R12b−Leu−Gln−Asp−Val−His−Asn−R13b (V)
[式中、R1bはSer又はAib、R2bはMet又は天然型の脂溶性アミノ酸、R3bはLeu,Ser,Lys又は芳香族アミノ酸、R4bはGly又はD−アミノ酸、R5bはLys又はLeu、R6bはMet又は天然型の脂溶性アミノ酸、R7bはGlu又は塩基性アミノ酸、R8bはVal又は塩基性アミノ酸、R9bはTrp又は2−(1,3−ジチオラン−2−イル)Trp、R10bはArg又はHis、R11bはLys又はHis、R12bはLys,Gln又はLeu、R13bはPhe又はPhe−NH2を示す]で表されるペプチド又はその塩(特開平5−32696号公報、特開平4−247034号公報、ヨーロッパ特許公開第510662号公報、ヨーロッパ特許公開第477885号公報、ヨーロッパ特許公開第539491号公報参照)、hPTH(1→34)(ジー・ダブリュー・トレギアー(G.W. Tregear)ら,エンドクリノロジー(Endocrinology), 93, 1349-1353 (1973));バソプレシン、バソプレシン誘導体{デスモプレシン[日本内分泌学会雑誌、第54巻,第5号,第676頁〜第691頁(1978)]参照}など。
【0031】
オキシトシン;カルシトニン、カルシトニンと同様な作用を有する誘導体、例えば、下記式(VI):
【0032】
【化4】
Figure 0003905578
[式中、Xbは2−アミノスベリン酸]
で表される化合物又はその塩[エンドクリノロジー(Endocrinology)1992,131/6(2885−2890)];グルカゴン;ガストリン;セクレチン;パンクレオザイミン;コレシストキニン;アンジオテンシン;ヒト胎盤ラクトーゲン;ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)。
【0033】
エンケファリン、エンケファリン誘導体、例えば、下記式(VII):
【0034】
【化5】
Figure 0003905578
[式中、R1cとR3cは水素原子または炭素数1〜6のアルキル基、R2cは水素原子またはD-α−アミノ酸の残基、R4cは水素原子または置換されていてもよい炭素数1〜8の脂肪族アシル基を示す]
で表されるペプチド又はその塩(米国特許第4277394号明細書、ヨーロッパ特許出願公開第31567号公報参照)等のオリゴペプチドおよびエンドルフィン。
【0035】
キョウトルフィン;インターフェロン(α型,β型,γ型);インターロイキン(IからXIなど);タフトシン;サイモポイエチン;サイモスチムリン;胸線液性因子(THF);血中胸線因子(FTS)およびその誘導体、例えば、下記式(VIII):
PGlu-Xd-Lys-Ser-Gln-Yd-Zd-Ser-Asn-OH (VIII)
[式中、XdはL-またはD-Ala,YdおよびZdは各々Gly または炭素数3〜9のD-アミノ酸残基を示す]
で表されるペプチド又はその塩(米国特許第4229438号明細書参照);およびその他の胸線ホルモン[例えば、サイモシンα1およびβ4,サイミックファクターXなど、医学のあゆみ、第125巻、第10号、835頁−843頁(1983年)]。
腫瘍壊死因子(TNF);コロニー誘発因子(CSF);モチリン;デイノルフィン;ボムベシン;ニュウロテンシン;セルレイン;ブラディキニン;ウロキナーゼ;アスパラギナーゼ;カリクレイン;サブスタンスP;神経成長因子;血液凝固因子の第VIII因子,第IX因子;塩化リゾチーム;ポリミキシンB;コリスチン;グラミシジン;バシトラシン;タンパク合成刺激ペプチド(英国特許第8232082号明細書);胃酸分泌抑制ポリペプチド(GIP);バソアクティブ・インティスティナル・ポリペプチド[vasoactive intestinal polypeptide(VIP)];プレートレット−ディライブド・グロース・ファクター[platelet-derived growth factor(PDGF)];成長ホルモン分泌因子(GRF,ソマトクリニン);ボーン・モルファジェネティック・プロテイン(born morphagenetic protein (BMP));上皮成長因子(EGF);プレプロコーチスタチン(Nature, Vol.381, 242-245, (1996));エリスロポエチンなど。
【0036】
これらの生理活性ペプチドは、ヒト型であってもよく、他の動物、例えば、ウシ、ブタ、ニワトリ、サケ、ウナギ由来のものであってもよい。さらには、ヒトと前記動物由来のものとのキメラ体や、一部の構造を変化させた活性誘導体であってもよい。例えば、インスリンはブタ由来であってもよい。カルシトニンでは、ブタ、ニワトリ、サケ、ウナギ由来のカルシトニン、あるいはヒトとサケのキメラ体であって、下記式(IX)
Cys-Gly-Asn-Leu-Ser-Thr-Cys-Met-Leu-Gly-Lys-Leu-Ser-Gln-Glu-Leu-His-Lys-Leu-Gln-Thr-Tyr-Pro-Arg-Thr-Asn-Thr-Gly-Ser-Gly-Thr-Pro (IX)で表されるペプチド[エンドクリノロジー(Endocrinology)1992,131/6(2885−2890)参照]などが用いられる。
【0037】
好ましい薬物には、生理活性ペプチド類とその誘導体、例えば、カルシトニン、副腎皮質刺激ホルモン、副甲状腺ホルモン(PTH)、PTH(1→34)、インスリン、セクレチン、オキシトシン、アンギオテンシン、β−エンドルフィン、グルカゴン、バソプレッシン、ソマトスタチン、ガストリン、黄体形成ホルモン放出ホルモン、エンケファリン、ニューロテンシン、心房性ナトリウム利尿ペプチド、成長ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、ブラジキニン、サブスタンスP、ダイノルフィン、甲状腺刺激ホルモン、プロラクチン、インターフェロン、インターロイキン、G−CSF、グルタチオンパーオキシダーゼ、スーパーオキシドディスムターゼ、デスモプレシン、ソマトメジン、エンドセリン、およびこれらの塩などが含まれる。また、核酸、オリゴヌクレオチドや各種の抗原蛋白質を用いることができる。
【0038】
生理活性ペプチド又はその誘導体の塩には、例えば、塩酸、硫酸、臭化水素酸、リン酸などの無機酸との塩;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、シュウ酸、琥珀酸、酒石酸、クエン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などの有機酸との塩;カルシウム、マグネシウムなどの無機化合物との錯塩などが含まれる。
【0039】
非ペプチド性生理活性化合物には、分子量が約1000以下であり、薬理活性を有する化合物が含まれる。非ペプチド性生理活性化合物の種類は特に制限されず、例えば、抗生物質、抗真菌剤、抗高脂血症剤、循環器官用薬、血管収縮薬、抗血小板薬、抗腫瘍剤、解熱,鎮痛,消炎剤、鎮咳去たん剤、鎮静剤、筋弛緩剤、抗てんかん剤、抗潰瘍剤、抗うつ剤、抗アレルギー剤、強心剤、不整脈治療剤、血管拡張剤、降圧利尿剤、糖尿病治療剤、抗凝固剤、止血剤、抗結核剤、ホルモン剤、麻薬拮抗剤、骨吸収抑制剤、骨形成促進剤、血管新生阻害剤などが挙げられる。
【0040】
抗生物質としては、例えば、ゲンタンマイシン、リビドマイシン、シソマイシン、塩酸テトラサイクリン、アンピシリン、セファロチン、セフォチアム、セファゾリン、チエナマシン、スルファゼシンなどが例示できる。
抗真菌剤としては、例えば、2−[(1R,2R)−2−(2,4−ジフルオロフェニル−2−ヒドロキシ−1−メチル−3−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)プロピル]−4−[4−(2,2,3,3−テトラフルオロプロポキシ)フェニル]−3(2H,4H)−1,2,4−トリアゾロン、1−[(1R,2R)−2−(2−フルオロフェニル)−2−ヒドロキシ−1−メチル−3−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)プロピル]−3−[4−(2,2,3,3−テトラフルオロプロポキシ)フェニル]−2−イミダゾリジノンなどが例示できる。
抗高脂血症剤としては、例えば、プラバスタチン、シンバスタチンなどが用いられる。循環器用剤としては、例えば、塩酸デラプリルなどが用いられる。
血管収縮薬としては、例えば、プロスタグランジンE2、プロスタグランジンFなどが用いられる。
抗血小板薬としては、例えば、チクロピジン、シロスタゾール、リマプロスタット、アスピリンなどが例示できる。
抗腫瘍剤としては、例えば、塩酸ブレオマイシン、アクチノマシンD、マイトマシンC、アドリアマイシン、フルオロウラシルなどが例示される。
解熱,鎮痛,消炎剤としては、例えば、サリチル酸ナトリウム、スルピリン、インドメタシンナトリウム、ハイドロモルフォン、塩酸モルヒネ、ブプレノルフィン、フェンタニルなどが挙げられる。
鎮咳去たん剤としては、例えば、塩酸エフェドリン、リン酸コディン、塩酸ピコペリダミンなどが挙げられる。
【0041】
鎮静剤としては、例えば、塩酸クロルプロマジン、硫酸アトロピンなどが用いられる。筋弛緩剤としては、例えばメタンスルホン酸プリジノール、塩化ツボクラリンなどが用いられる。
抗てんかん剤としては、例えば、フェニトインナトリウム、エトサクシミドなどが挙げられる。抗潰瘍剤としては、例えば、メトクロプロミドなどが用いられる。抗うつ剤としては、例えば、イミプラミン、硫酸フェネルジンなどが用いられる。
抗アレルギー剤としては、例えば、塩酸ジフェニルヒドラミン、塩酸トリペレナミン、塩酸クレミゾールなどが例示される。
強心剤としては、例えば、トランスパイオキソカンファー、テオフィロールなどが用いられる。不整脈治療剤としては、例えば、塩酸プロプラノール、塩酸オキシプレノールなどが用いられる。血管拡張剤としては、例えば、塩酸オキシフェドリン、塩酸トラゾリン、硫酸バメタンなどが用いられる。降圧利尿剤としては、例えば、ペントリニウム、ヘキサメトニウムブロミドなどが用いられる。 糖尿病治療剤としては、例えば、グリミジンナトリウム、グリピザイド、メトフォルミン、ピオグリタゾン、トログリタゾンなどが用いられる。抗凝血剤としては、例えば、クエン酸ナトリウムなどが挙げられる。
止血剤としては、例えば、メナジオン亜硫酸水素ナトリウム、アセトメナフトン、トラネキサム酸などが用いられる。抗結核剤としては、例えば、イソニアジド、エタンブトールなどが挙げられる。
ホルモン剤としては、例えば、βエストラジオール、テストステロン、コハク酸プレドニゾロン、デキサメタゾン硫酸ナトリウム、メチマゾールなどが挙げられる。麻薬拮抗剤としては、例えば、酒石酸レバロルファン、塩酸ナロルフィンなどが用いられる。骨吸収抑制剤としては、例えば、(硫黄含有アルキル)アミノメチレンビスフォスフォン酸などが用いられる。骨形成促進剤としては、例えば、(2R,4S)−(−)−N−[4−(ジエトキシホスホリルメチル)フェニル[−1,2,4,5−テトラヒドロ−4−メチル−7,8−メチレンジオキシ−5−オキソ−3−ベンゾチエピン−2−カルボキサミドなどが挙げられる。
【0042】
血管新生阻害剤としては、例えば、血管新生抑制ステロイド[サイエンス(Science)第221巻、719頁(1983年)参照]、フマギロール誘導体[例えば、O−モノクロロアセチルカルバモイルフマギロール、O−ジクロロアセチルカルバモイルフマギロールなど(ヨーロッパ特許出願第357061号公報、同359036号公報、同386667号公報、同4152943号公報参考)]などが例示できる。
【0043】
イオントフォレシスを利用して薬物を経皮的に投与する場合、前記薬物は、予め薄膜に保持させていてもよく、使用に際して薄膜の近傍に薬物溶液を注入してもよい。薬物を保持させる場合、薬物は、乾燥状態で薄膜の全体に亘り保持されていてもよいが、薄膜のうち、好ましくは生体皮膚との接触部位に保持されていればよい。インターフェイス(皮膚接触体)に対する薬物の保持又は担持は、例えば、滴下、注入、含浸、塗布、スプレーなどの方法により行なうことができる。なお、インターフェイスに乾燥して担持された薬物は、例えば、溶解液を適用することにより容易に溶解できる。
親水性薄膜(皮膚接触体)に対する薬物の適用量は、薬物の種類、投与対象動物、投与部位などに応じた有効量であればよい。薄膜1cm2に対する薬物の適用量は、例えば、約0.1〜100μg、好ましくは約0.5〜70μg、さらに好ましくは1〜50μg程度である。
【0044】
なお、薬物は、前記イオン性界面活性剤(特にアルキルベンジルジメチルアンモニウムハライドなどのカチオン性界面活性剤)とともに親水性薄膜に保持又は担持させてもよい。イオン性界面活性剤の保持又は担持量は、前記イオン性界面活性剤の処理量の範囲から適当に選択できる。
【0045】
薬物を溶解するための溶解液には、生理活性ペプチドや蛋白質の吸着による損失をさらに防止するため、適当な吸着防止剤を含有させるのが好ましい。吸着防止剤には、例えば、アルブミン(例えば、牛血清アルブミン(BSA)、ヒト血清アルブミン(HSA)などの血清アルブミン)、ゼラチンなどの水溶性蛋白質;アルキルベンゼンスルホン酸塩(例えば、ナトリウム塩など)などのアニオン性界面活性剤、C8-20アルキルトリメチルアンモニウムクロリド、前記式で表されるアルキルベンジルジメチルアンモニウムハライド[例えば、C8-20アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロリド(塩化ベンザルコニウム)(以下、BACと略称することがある)、4−C1-10アルキルフェニルオキシエトキシエチルベンジルジメチルアンモニウムクロリド(塩化ベンゼトニウムなど)]などのカチオン性界面活性剤、ツイーン(Tween)80などのノニオン界面活性剤などの界面活性剤、あるいはアルカリ金属塩(例えば、塩化ナトリウムなど)などが含まれる。吸着防止剤の含有量は、例えば、溶解液の量に対して、0.00001〜1%(w/w)程度、好ましくは0.0001〜0.5%(w/w)程度、より好ましくは0.001〜0.1%(w/w)程度である。なお、薬物を溶解するための液体には、薬物の吸収を促進するための吸収促進剤(例えば、モノテルペン類、脂肪酸モノグリセリド、エイゾン(商品名、ネルソン社製)、リモネン、オレイン酸、ラウリン酸、オクタノールなど)を含有させることも有効である。前記吸収促進剤の添加量は、例えば、溶解液の量に対して、0.1〜80%(w/w)程度、好ましくは0.5〜50%(w/w)程度、より好ましくは1〜30%(w/w)程度である。
【0046】
さらに、薬物溶解液は保湿剤を含有するのが有効である。保湿剤を含む溶解液を用いることにより、イオントフォレシスを利用する薬物投与システムにおいて、薬物溶解液からの水分の蒸散を抑制し長時間にわたって通電性を確保でき、薬物を高い生物学的利用率及び高い再現性で経皮吸収させることができる。
【0047】
保湿剤は、薬物溶解液からの水分の蒸散を抑制し、皮膚表面,インターフェイスの皮膚接触面および薬物保持体中で水分を保留し、皮膚に対して悪影響を及ぼさない物質であれば特に制限されない。保湿剤には、例えば、(1)多価アルコール,(2)糖アルコール,(3)アミノ酸,(4)酸性ムコ多糖などが含まれる。これらの保湿剤は単独で又は二種組合わせて使用できる。
【0048】
(1)多価アルコールには、例えば、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ペンタエリスリトール、ポリエチレングリコール、これらの多価アルコールにエチレンオキサイドが付加した付加体(例えば、ジオキシエチレングリコール、トリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体,グリセリン−エチレンオキサイド付加体、ペンタエリスリトール−エチレンオキサイド付加体など)が含まれる。これらの多価アルコールは単独で又は二種以上混合して使用できる。好ましい多価アルコールには、分子中に2ないし4個のヒドロキシル基を有する多価アルコール,特にグリセリンが含まれる。
【0049】
(2)糖アルコールには、例えば、キシリトールなどのペンチトール、ソルビトール、マンニトール、ガラクチトールなどのヘキシトールなどが含まれる。これらの糖アルコールも単独で又は二種以上混合して使用できる。
【0050】
(3)アミノ酸には、例えば、(i)蛋白質を構成するアミノ酸,(ii)微生物代謝産物あるいは動植物成分として天然界から得られるアミノ酸,(iii)有機合成法によって得られるアミノ酸などが含まれる。
(i)蛋白質を構成するアミノ酸としては、例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシンなどの脂肪族モノアミノモノカルボン酸、セリン、スレオニン等の脂肪族オキシアミノ酸、アスパラギン酸、グルタミン酸などの酸性のアミノ酸、アスパラギン、グルタミンなどの酸性のアミノ酸アミド、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファンなどの芳香族アミノ酸、プロリン、ヒドロキシプロリンなどのピロリジン環を有するアミノ酸、ピログルタミン酸(ピロリドンカルボン酸)等のピロリドン環を有するアミノ酸、アルギニン、リジン、ヒスチジンなどの塩基性のアミノ酸、メチオニン、シスチン、システインなどの硫黄含有アミノ酸などが含まれる。これらのアミノ酸も単独で又は二種以上混合して使用できる。
【0051】
(ii)微生物代謝産物あるいは動植物成分として天然界から得られるアミノ酸としては、例えば、L−α−アミノ酪酸、γ−アミノ酪酸、β−アミノイソ酪酸、β−アラニン、ホモセリン、α−メチル−D−セリン、O−カルバミル−D−セリン、δ−ハイドロキシ−γ−オキソ−ノルバリンなどの脂肪族モノアミノモノカルボン酸、L−α−アミノアジピン酸、L−β−アミノアジピン酸、L−テアニン、L−γ−メチレングルタミン酸、L−γ−メチルグルタミン酸などのモノアミノジカルボン酸、L−オルニチン、β−リジン、α,β−ジアミノプロピオン酸、L−α,γ−ジアミノ酪酸などのジアミノモノカルボン酸、ジアミノピメリン酸などのジアミノジカルボン酸、システイン酸などの含スルホン酸モノアミノモノカルボン酸、タウリンなどの含スルホン酸アミノ酸、キヌレニン、3,4−ジオキシフェニル−L−アラニンなどの芳香族アミノ酸、2,3−ジカルボキシアジリヂン、[S]−2−アミノ−3−(イソキサゾリン−5−オン−4−イル)−プロピオン酸、アンチカプシンなどの複素環アミノ酸、L−4−オキサリジン、L−4−オキソリジン、[3R,5R]−3,6−ジアミノ−5−ハイドロキシヘキサン酸などの塩基性のアミノ酸、ランチオニン、S−メチル−L−システインなどの含硫黄アミノ酸、ピペコリン酸、アゼチジン−2−カルボン酸、[1R,2S]−2−アミノシクロペンタン−1−カルボン酸などの環状アミノ酸、シトルリン、アラノシン、L−アザセリンなどの特殊官能基置換アミノ酸などが例示できる。
【0052】
(iii)有機合成法によって得られるアミノ酸には、例えば、トリメチルグリシン、6−アミノヘキサン酸、8−アミノオクタン酸、12−アミノドデカン酸などの脂肪族アミノカルボン酸、4−アミノ安息香酸、4−(アミノメチル)安息香酸、4−(N−(カルボキシメチル)アミノメチル)安息香酸などの芳香族アミノカルボン酸などが含まれる。
【0053】
アミノ酸は塩として使用してもよい。アミノ酸の塩には、例えば、塩基[アンモニア、アルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウムなど)などの無機塩基、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどの有機塩基]との塩、酸[塩酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸、酢酸、プロピオン酸、p−トルエンスルホン酸などの有機酸]との塩が含まれる。
【0054】
好ましいアミノ酸には、含窒素複素環を有するアミノ酸(例えば、プロリン、ヒドロキシプロリンなどのピロリジン環を有するアミノ酸、ピロリドンカルボン酸、ヒスチジン,トリプトファンなどの蛋白質を構成するアミノ酸など)又はその塩が含まれる。特に非芳香族性含窒素5員複素環を有するアミノ酸(例えば、プロリン、ヒドロキシプロリンなどのピロリジン環を有するアミノ酸、ピロリドンカルボン酸など)又はその塩が含まれる。
(4)酸性ムコ多糖には、例えば、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸などの他、それらの塩[例えば、アルカリ金属(ナトリウム、カリウムなど)などとの塩)]などが含まれる。
【0055】
これらの保湿剤のうち、多価アルコール(特にグリセリン)、アミノ酸又はその塩(特にプロリンなどの含窒素複素環を有するアミノ酸)が好ましい。アミノ酸(特にプロリンなどの含窒素複素環を有するアミノ酸)又はその塩を用いると、通電に伴う皮膚刺激性を大きく低減できるとともに、時間的に間隔をおいて複数回経皮吸収させるとき、第1回目の通電に後続する通電時の通電量を高めることができ、経皮吸収効率を改善できる。
【0056】
水溶液で構成された薬物溶解液中の保湿剤の含量は、保湿剤の種類に応じて、薬物溶解液からの水分の蒸散を抑制し、皮膚表面および薬物保持体中で水分を保留できる範囲から適当に選択でき、例えば、溶解液の量に対し、1〜90重量%、好ましくは1〜80重量%(例えば、5〜80重量%)、さらに好ましくは1〜50重量%程度の範囲から選択できる。前記保湿剤のうちアミノ酸又はその塩は、少量であっても高い保湿性を確保できる。より具体的には、保湿剤がグリセリンなどの多価アルコールである場合、薬物溶解液中の保湿剤の含量は、例えば、5〜50重量%(例えば、10〜50重量%)、好ましくは20〜40重量%程度であり、保湿剤がアミノ酸又はその塩である場合、薬物溶解液中の保湿剤の含量は、例えば、1〜30重量%、好ましくは5〜25重量%、さらに好ましくは10〜20重量%程度である。
なお、保湿剤は、必要に応じて薬物及び/又はイオン性界面活性剤とともに、前記親水性薄膜に保持又は担持させてもよい。
薬物が生理活性ペプチド又は蛋白質である場合、前記薬物を含む水溶液には、例えば、二糖類(例えば、トレハロース、マルトース、マンニトール、イノシトールなど)を添加し、乾燥状態での薬物の安定性を増大させてもよい。二糖類の添加量は、例えば、0.1〜10mg/ml、好ましくは1〜5mg/ml(例えば、1〜4mg/ml)程度である。
【0057】
薄膜(薬物保持体)に保持された薬物は、乾燥状態で保存することにより薬物の活性を維持しつつ長期間保存できる。乾燥状態で薬物を保存するには、具体的には、例えば、薬物を保持させた薬物保持体をよく乾燥した後、水分透過性の小さなフィルム(例えば、アルミニウム製フィルムなど)で真空密封包装する方法などが採用できる。さらに、乾燥状態を確実に維持するため、乾燥剤(例えば、東海化学(株)製,「セラム」などのゼオライト製乾燥剤、シリカゲル製乾燥剤など)とともに、薬物を保持した薬物保持体を真空密封包装してもよい。また、薬物が酸素により酸化分解する場合、前記乾燥剤に加えて、酸素吸収剤(例えば、三菱ガス化学(株)製,「エイジレス」)を同封してもよい。
【0058】
前記薄膜で構成されたインターフェイスは、皮膚に対して適用可能な種々のアプリケーターを用いて、イオントフォレシスにより、薬物を経皮的に投与する上で有用である。図1および図2は前記インターフェースを備えたアプリケーターの一例を示す断面図である。
図1に示すアプリケーターは、柔軟性を有するとともに、開口部20が形成された支持体4と、銀電極などの電極1を備えているとともにNaCl含有ポリビニルアルコール(PVA)、含水ゲルなどの導電性ゲル、又は水を含んだ不織布や海綿などの導電体2を収容し、前記支持体4上のうち前記開口部20に対応する部位に配置された容器3とを備えている。また、支持体4の開口部20に対応する部位には、前記容器3の導電体2と対向するイオン交換膜5を介して、インターフェース(親水性薄膜)6が粘着テープ7によって積層されている。粘着テープ7は皮膚にアプリケーターを貼付するために用いられる。前記容器3の導電体2は、前記電極1と導通可能であるとともに、前記開口部20を通じて、イオン交換膜5と接触可能である。そして、前記イオン交換膜5とインターフェース6との間には、注液可能な注液部21が形成されている。
【0059】
このようなアプリケーターは、使用時に、注液用チップ8のノズル先端を、イオン交換膜5とインターフェース6との間の注液部21に挿入して、薬物溶液を注入したり、インターフェイスが薬物を保持する場合には、注射用蒸留水などの薬物溶解用液体をインターフェース6に対して注入すればよい。液体の注入量は、アプリケーターのサイズ、インターフェースの表面積、薬物の保持量などに応じて選択でき、通常、30〜500μl、好ましくは50〜200μl程度である場合が多い。
【0060】
なお、アプリケーターの支持体には、図2に示すように容器3から離れた開口部に、注射用蒸留水などの薬物溶解用の液体10を貯留するリザーバーとしての第2の容器9を配設し、イオン交換膜の外面に、第1の容器3の部位から第2の容器9の部位に至る領域に配された不織布8aを介して、インターフェース(親水性薄膜)6を積層してもよい。このようなアプリケーターは、使用時に、針などで突き刺し、支持体と第2の容器9とが通じる孔を形成することにより、薬物溶解用の液体又は薬物溶液10を、不織布8aに浸透させて、インターフェース6に保持された薬物を溶解したり、薬物溶液をインターフェイスに到達させればよい。
【0061】
なお、前記容器は、例えば、ポリエチレンなどの合成樹脂などで形成できる。また、イオン交換膜としては、イオン交換能を有する種々の膜、例えば、旭化成(株)製の商品名「AC220膜」などが利用でき、不織布としては、液体が浸透可能な種々の不織布、例えば、旭化成(株)製の商品名「ベンベルグハーフ」などが使用できる。さらに、粘着テープとしては、皮膚に対する粘着性を有する種々の粘着テープ、例えば、3M社製の商品名「ブレンダーム」などが利用できる。
【0062】
図3に示されたアプリケーターは、電極を収納するための凹部を有する容器11(例えばポリエステル製など)と前記凹部に収納された電極12(例えば、円形の箔型銀電極)を備え、前記電極には、不織布13(例えば、日本バイリーン社製の「WP−2085」など)、イオン交換膜14(例えば、旭化成(株)製の「AC201膜」、東洋濾紙(株)製のイオン交換濾紙など)、不織布15(例えば、日本バイリーン社製の「LMW−9007」など)が順次配設されている。また、電極部には電源と接続可能なように接続端子16が取り付けられている。このようなアプリケーターは、予め粘着テープ17(3M社製の「ブレンダーム」など)に貼付けした、薬物を保持してなる親水性薄膜18を貼付し、薬物保持膜が皮膚に接触するようにして用いられる。なお、電気伝導層液ならびに薬物溶解液は不織布13ならびに15に含浸されている場合が多い。
【0063】
なお、イオントフォレシスによる薬物の経皮的投与は、前記アプリケーターの電極と対照電極とに、電圧を印加し、通電することにより行うことができる。電圧としては交流電圧を用いることもできるが、直流電圧を用いる場合が多い。直流電圧としては、連続直流電圧に限らず、脱分極型パルス直流電圧も利用できる。好ましくは、脱分極型パルス直流電圧、特に方形型パルス直流電圧を印加できる電源が使用される。パルス直流電圧の周波数は、例えば、0.1〜200kHz、好ましくは1〜100kHz、さらに好ましくは5〜80kHz程度の範囲から選択できる。また、パルス直流電圧のオン/オフ(ON/OFF)の比は、例えば、1/100〜20/1、好ましくは1/50〜15/1、さらに好ましくは1/30〜10/1程度の範囲から選択できる。印加電圧は、生体の皮膚を損傷せず、経皮吸収率を損なわない範囲から選択でき、例えば、1〜20V、好ましくは3〜15V程度である。また、1日あたりの通電時間は、例えば、連続通電においては、24時間以下、好ましくは12時間以下、特に6時間以下である場合が多い。間欠通電では、通電時間の総計が24時間以下、好ましくは12時間以下、特に6時間以下である場合が多い。
【0064】
【発明の効果】
本発明のインターフェイスは、蛋白質に対する吸着能が低い親水性薄膜を皮膚接触面に用いており、イオントフォレシスを利用して、投与量を精度よくコントロールしながら、薬物を高い生物学的利用率及び高い再現性で経皮的に効率よく投与できる。また、前記親水性薄膜により、薬物の放出性を高めることができるとともに、薬物の浸透性が高く、薬物を有効に投与できる。さらに、生理活性ペプチド又は蛋白質であっても放出性が高く、薬物の浸透性を高め、生理活性ペプチド又は蛋白質の生物学的利用率を高めることができる。
【0065】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例1及び比較例1及び2においては、ペントバルビタール麻酔下でSDラット雄性(7週齢)の腹部皮膚をバリカンで剃毛、シェーバーで処理した後、70%エタノール水溶液を含む脱脂綿で軽く擦り脱脂消毒した。ラット腹部皮膚に本発明のインターフェイスを設置した図1のアプリケーターを貼付して、10%PVAゲル(NaCl 0.9%含有,厚み2mm)を用い、前記アプリケーターに、対照電極(陰電極)としての塩化銀電極(2.5cm2)を固定した。また、イオントフォレシスにおいては、貼付後1時間の非通電時間をおいた後、脱分極型パルス直流電流(40kHz;duty30%;電圧値12V)を15分通電した後、5分間通電を停止するサイクルを3回繰り返した。そして、血清中のペプチド濃度をラジオイムノアッセイ法により測定した。
【0066】
実施例1
親水化ポリビニリデンフルオライド薄膜(ミリポア社製,ハイドロフィリックデュラポア,厚み125μm,平均気孔径5μm,空隙率70%,膜面積3.5cm2 ,蛋白質吸着量3μg/cm2 )1枚当たり、ヒト型副甲状腺ホルモン(PTH)のN末端ペプチドフラグメント(hPTH(1→34))40μgを乾燥保持させ、インターフェイスを作製した。得られたインターフェイスを皮膚接触面として粘着テープによりラット腹部皮膚に貼付して固定した。そして、注入チップを通じて、0.003%塩化ベンザルコニウム(BAC)を含む蒸留水100μlを注液部から供給し、ペプチドを溶解し、イオントフォレシスにより、経皮的に投与し、血清中のペプチド濃度を測定した。このような操作を異なるラットについて3回繰り返した。
【0067】
実施例2
皮膚接触面として実施例1の親水化ポリビニリデンフルオライド薄膜を粘着テープによりラット腹部皮膚に貼付して固定した。そして、注入チップを通じて、hPTH(1→34)40μg及びBAC0.0025%を含む蒸留水120μlを注液部から供給し、イオントフォレシスにより、経皮的に投与し、血清中のペプチド濃度を測定した。このような操作を異なるラットについて4回繰り返した。
【0068】
比較例1
皮膚接触面に親水性薄膜を配置することなく、注入チップを通じて、hPTH(1→34)40μg及びBAC0.0025%を含む蒸留水120μlを注液部から供給し、イオントフォレシスにより、経皮的に投与し、血清中のペプチド濃度を測定した。このような操作を異なるラットについて4回繰り返した。
【0069】
比較例2
0.01%BACで前処理した表面修飾ナイロン膜(日本ポール社製,バイオダインプラス,厚み150μm,膜面積3.5cm2 ,蛋白質吸着量13μg/cm2 )1枚当たり、hPTH(1→34)40μgを乾燥保持させ、インターフェイスを作製した。得られたインターフェイスを皮膚接触面として粘着テープによりラット腹部皮膚に貼付して固定した。そして、注入チップを通じて、蒸留水120μlを注液部から供給し、ペプチドを溶解し、イオントフォレシスにより、経皮的に投与し、血清中のペプチド濃度を測定した。このような操作を異なるラットについて5回繰り返した。
【0070】
前記実施例及び比較例で得られた結果を図4に示す。
から明らかなように、実施例1及び実施例2では、比較例1及び比較例2に比べて、高い血清中のペプチド濃度が再現性よく得られた。また、hPTH(1→34)を2μg/kgで静脈内投与により得られた血清中のペプチド濃度−時間曲線下面積(AUC)値の比として得られる薬物の生物学的利用率は、比較例1では9.2%、比較例2では6.7%であるのに対して、実施例1では12.8%、実施例2では14.0%であり、極めて高い生物学的利用率が再現性よく得られた。
【0071】
実施例3〜4及び比較例3〜4
吸着性を調べる目的で下記の薄膜に、それぞれ、膜1枚当たりhPTH(1→34)40μgとトレーサー量の125I標識したhPTH(1→34)とを乾燥保持させた。これらの膜を室温下で蒸留水300μl中に浸漬し、一定時間経過後に膜を引き上げ、放射活性を測定することにより、膜からのhPTH(1→34)の放出量を算出した。また、上記の操作を各実施例及び比較例についてそれぞれ3回繰り返した。
【0072】
実施例3:実施例1で用いた親水化ポリビニリデンフルオライド薄膜
実施例4:BAC0.01%で処理した親水化ポリビニリデンフルオライド薄膜
比較例3:比較例2で用いた表面修飾ナイロン膜
比較例4:BAC0.01%で処理した表面修飾ナイロン膜
結果を図5に示す。図5に示されるように、実施例の親水性薄膜は薬物に対する吸着能が小さく、ペプチドを極めて速やかに放出する。
【0073】
実施例5〜6及び比較例5〜6
薬物の膜からの放出性を調べる目的で、実施例1で用いた親水化ポリビニリデンフルオライド薄膜(実施例5)、BAC0.01%で処理した親水化ポリビニリデンフルオライド薄膜(実施例6)、比較例2で用いた表面修飾ナイロン膜(比較例5)およびBAC0.01%で処理した表面修飾ナイロン膜(比較例6)に、それぞれ、膜1枚当たりhPTH(1→34)40μgとトレーサー量の125I標識したhPTH(1→34)とを乾燥保持させた。これらの膜を蒸留水10ml又はBACを0.01%含む蒸留水10mlにそれぞれ浸漬し、4℃で3日間静置した。そして、放射活性を測定することにより、膜からのhPTH(1→34)の放出量を算出した。また、各実施例及び比較例についてそれぞれ3回繰り返した。
【0074】
結果を図6に示す。図6に示されるように、比較例5〜6では、膜からペプチドが30%以下しか放出又は溶出しなかった。これに対して、実施例5〜6では、ペプチドの80%以上が膜から放出又は溶出しており、薬物に対する吸着能が小さく、ペプチドを極めて速やかに放出する。
【0075】
実施例7
実施例7として、コーティッドタイプメンブラン(ポリエステル不織布を酢酸セルロースおよび湿潤剤で処理した膜、東洋濾紙(株)製)に、膜1枚当たりhPTH(1→34)40μgとトレーサー量の125I標識したhPTH(1→34)とを乾燥保持させた。この膜に関して、図6に示される放出試験と同様の薬物放出試験を行った。(図7)
その結果、ペプチドの80%以上が膜から放出又は溶出しており、薬物に対する吸着能が小さく、ペプチドを極めて速やかに放出することを示した。
【0076】
以下の実施例8〜10においては、エーテル麻酔下でSDラット雄性(7週齢)の腹部皮膚をバリカンで剃毛、シェーバーで処理した後、70%エタノール水溶液を含む脱脂綿で軽く擦り脱脂消毒した。ラット腹側部皮膚に本発明のインターフェイスを設置した図3のアプリケーターを貼付し、さらに対照電極(陰電極)として12%PVAゲル(NaCl 0.9%含有、厚み2mm)に固定した塩化銀電極(2.5cm2 )を貼付した。アプリケーターと対照電極の貼付後、ラットをボルマンケージに固定した。
【0077】
なお、図3のアプリケーターにおいて、不織布13ならびに15には、電気伝導層液ならびに薬物溶解液として、10%L−プロリンを含有するクエン酸緩衝液(33mM,pH5)を100〜200μl含浸させた。また、アプリケーターは、容器11(ポリエステル製、内径21mm)、円形箔型銀電極12(直径18mm、厚さ0.04mm)、不織布13(日本バイリーン社製「WP−2085」;直径18mm、厚さ0.63mm)、イオン交換膜14(旭化成(株)製「AC201膜」;直径21mm、厚さ0.23mm)、不織布15(日本バイリーン社製「LMW−9007」;直径18mm、厚さ0.23mm)、接続端子16、直径18mmの孔を有する粘着テープ17(3M社製「ブレンダーム」)及び親水性薄膜18(直径21mm)を備えている。
【0078】
イオントフォレシスにおいては短絡スイッチによるパルス脱分極(周波数30kHz、on/off比3/7、電圧値10V)を用い、45分間通電(15分間通電5分間通電停止を3回繰り返し)を行い、60分間非通電時間を置くパターンを3回繰り返した。そして、血清中のペプチド濃度をラジオイムノアッセイ法により測定した。このような操作を異なるラットについて4ないし5回繰り返した。
【0079】
実施例8
実施例1と同様の親水化ポリビニリデンフルオライド薄膜に、薄膜1枚当たりhPTH(1→34)200μgを乾燥保持させたインターフェイスを用いた。
【0080】
実施例9
セルロースアセテート薄膜(東洋濾紙(株)製、「セルロースアセテートタイプメンブレン」;厚み125μm、平均気孔径5μm、空隙率72%、膜面積3.5cm2 )1枚当たり、hPTH(1→34)200μgを乾燥保持させたインターフェイスを用いた。
【0081】
実施例10
親水処理ポリテトラフルオロエチレン薄膜(ミリポア社製、「オムニポア」;厚み80μm、平均気孔径10μm、空隙率80%、膜面積3.5cm2 、蛋白質吸着量4μg/cm2 )1枚当たり、hPTH(1→34)200μgを乾燥保持させたインターフェイスを用いた。
【0082】
前記実施例で得られた結果の平均値を図8に示す。いずれの実施例においても高い血清中のペプチド濃度が得られた。また、hPTH(1→34)2μg/kgを静脈内投与することにより得られたAUC値の比として得られる薬物の生物学的利用率は、驚くべきことに実施例8では29%、実施例9では32%、実施例10では33%であり、極めて高い生物学的利用率が再現性よく得られた。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1はアプリケーターの一例を示す断面図である。
【図2】図2はアプリケーターの他の例を示す断面図である。
【図3】図3はアプリケーターの他の例を示す断面図である。
【図4】図4は実施例1,2及び比較例1,2における結果を示すグラフである。
【図5】図5は実施例3〜4及び比較例3〜4における結果を示すグラフである。
【図6】図6は実施例5〜6及び比較例5〜6における結果を示すグラフである。
【図7】図7は実施例7及び比較例5における結果を示すグラフである。
【図8】図8は実施例8〜10における結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1…電極
2…導電体
3…容器
4…支持体
5…イオン交換膜
6…親水性薄膜
7…粘着テープ
8…注液用チップ
8a…不織布
9…容器(第2)
10…薬物溶解液
11…容器
12…電極
13…不織布
14…イオン交換膜
15…不織布
16…接続端子
17…粘着テープ
18…親水性薄膜
20…開口部
21…注液部

Claims (22)

  1. イオン性界面活性剤で処理された蛋白質低吸着性薄膜を備えているインターフェイスであって、前記薄膜が、(A)ヒドロキシ−C2−3アルキル基及び/又は(ポリ)オキシアルキレン基を有するフッ素含有モノマーを構成成分とする単独又は共重合体で構成された親水化フッ素樹脂の薄膜、(B)親水化ポリスルフォンの薄膜、又は(C)セルロースモノ酢酸薄膜又はセルローストリ酢酸薄膜をグリセリン又はポリビニルピロリドンから選ばれた湿潤剤で処理した親水化セルロース酢酸の薄膜であるイオントフォレシス用インターフェイス。
  2. フッ素含有モノマーが、ヒドロキシ−C2−3アルキル基及び/又は(ポリ)オキシアルキレン基を有するフルオロエチレン、ヒドロキシ−C2−3アルキル基及び/又は(ポリ)オキシアルキレン基を有するフッ化ビニリデンである請求項1記載のイオントフォレシス用インターフェイス。
  3. 親水化フッ素樹脂が、ポリフルオロエチレン、フルオロエチレン−テトラフルフオロエチレン共重合体、フルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、エチレン−フルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、ポリビニリデンフロオライド、フルオロエチレン−ビニリデンフルオライド共重合体、およびエチレン−ビニリデンフルオライド共重合体からなる群から選択された少くとも一種であって、ヒドロキシ−C2−3アルキル基及び/又は(ポリ)オキシアルキレン基が導入されている請求項1記載のイオントフォレシス用インターフェイス。
  4. 薄膜の蛋白質吸着能が、1cm当たり10μg以下である請求項1記載のイオントフォレシス用インターフェイス。
  5. 薄膜の厚さが1〜300μmである請求項1記載のイオントフォレシス用インターフェイス。
  6. 薄膜が、平均孔径0.01〜20μmの気孔を有する多孔質膜である請求項1記載のイオントフォレシス用インターフェイス。
  7. 薄膜の空隙率が60〜90%である請求項1記載のイオントフォレシス用インターフェイス。
  8. 薬物が保持又は担持されている請求項1記載のイオントフォレシス用インターフェイス。
  9. 薬物が、(1)生理活性ペプチドもしくは蛋白質、(2)非ペプチド性生理活性化合物、または(3)核酸である請求項8記載のイオントフォレシス用インターフェイス。
  10. 薬物が、(1)分子量100〜30000の生理活性ペプチド又は蛋白質、または(2)分子量100〜1000の非ペプチド性生理活性化合物である請求項8記載のイオントフォレシス用インターフェイス。
  11. 薬物が、カルシトニン、副腎皮質刺激ホルモン、副甲状腺ホルモン(PTH)、PTH(1→34)、インスリン、セクレチン、オキシトシン、アンギオテンシン、β−エンドルフィン、グルカゴン、バソプレッシン、ソマトスタチン、ガストリン、黄体形成ホルモン放出ホルモン、エンケファリン、ニューロテンシン、心房性ナトリウム利尿ペプチド、成長ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、ブラジキニン、サブスタンスP、ダイノルフィン、甲状腺刺激ホルモン、プロラクチン、インターフェロン、インターロイキン、G−CSF、グルタチオンパーオキシダーゼ、スーパーオキシドディスムターゼ、デスモプレシン、ソマトメジン、エンドセリン、およびこれらの塩からなる群から選択された少くとも一種の生理活性ペプチド類またはその誘導体である請求項8記載のイオントフォレシス用インターフェイス。
  12. 薄膜1cmに対する薬物の保持又は担持量が0.1〜100μgである請求項8記載のイオントフォレシス用インターフェイス。
  13. イオン性界面活性剤が、カチオン性界面活性剤である請求項記載のイオントフォレシス用インターフェイス。
  14. イオン性界面活性剤が、4級アンモニウム塩である請求項記載のイオントフォレシス用インターフェイス。
  15. イオン性界面活性剤が、下記式
    [CCHN(CH)R]
    (式中、Rはアルキル基、Xはハロゲン原子を示す)
    で表されるアルキルベンジルジメチルアンモニウムハライドである請求項記載のイオントフォレシス用インターフェイス。
  16. 薬物とアルキルベンジルジメチルアンモニウムハライドとが薄膜に保持又は担持されている請求項1記載のイオントフォレシス用インターフェイス。
  17. イオン性界面活性剤で処理され、かつ1cm当たり薄膜の蛋白質吸着能8μg以下、平均孔径0.1〜15μm、空隙率65〜90%の親水化フッ素樹脂薄膜、親水化ポリスルフォン薄膜又は親水化セルロース酢酸薄膜に、生理活性ペプチドが保持又は担持されているインターフェイスであって、前記親水化フッ素樹脂薄膜が、ヒドロキシ−C2−3アルキル基及び/又は(ポリ)オキシアルキレン基を有するフッ素含有モノマーを構成成分とする単独又は共重合体で構成された薄膜であり、親水化セルロース酢酸薄膜が、セルロースモノ酢酸薄膜又はセルローストリ酢酸薄膜をグリセリン又はポリビニルピロリドンから選ばれた湿潤剤で処理した薄膜であるイオントフォレシス用インターフェイス。
  18. 親水化フッ素樹脂が親水化ポリビニリデンフルオライドである請求項17記載のイオントフォレシス用インターフェイス。
  19. 薄膜が、(1)アルキルベンジルジメチルアンモニウムハライドで処理された薄膜、または(2)生理活性ペプチドとともにアルキルベンジルジメチルアンモニウムハライドが保持または担持された薄膜である請求項1記載のイオントフォレシス用インターフェイス。
  20. 薄膜が、厚さ10〜200μm、面積1〜10cmを有する請求項1記載のイオントフォレシス用インターフェイス。
  21. 蛋白質低吸着性薄膜に薬物を保持又は担持させる請求項1記載のイオントフォレシス用インターフェイスの製造方法。
  22. 電圧が印加可能な電極と、この電極と導通可能であり、かつ皮膚に対して接触可能であるとともに、薬物が保持又は担持され、しかも薬物溶解液が供給可能な請求項1記載のインターフェイスとを備え、前記インターフェイスが蛋白質に対する低吸着性薄膜で構成されているアプリケーター。
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