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JP3999976B2 - 操船方法及び装置 - Google Patents

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一継 藤原
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、操船方法及びその実施に使用する装置に関し、特に、船速が遅く、潮流,風等の影響を受け易い種類の船舶に適した操船方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、海洋観測の分野にあっては、従来から有人潜水機が用いられていたが、有人潜水機は、搭乗する人員の酸素を必要とする等して、潜水時間が短く、結果としてカバーできる観測範囲に限度があり、加えて、支援母船のサポートを必要とする等、全体のシステムも大規模なものであった。
【0003】
近年では、電波を殆ど透過しない水中であっても超音波を利用して無線通信可能な手段が実用化され、観測範囲の広い無人潜水機が種々開発されている。特に、推進システムの進歩より、年々観測範囲が広くなりつつあり、広大な海洋の調査の急激な進展に寄与するとの期待が高まっている。
【0004】
このような無人潜水機には、その目的及び適用分野に応じて様々なタイプ及び呼び名のものが存在し、例えば、無人探査機,潜水調査船,深海救難艇,潜水ロボット等がある。
【0005】
上述したように、水中での通信は比較的困難であり、通信速度は空中のものよりもずっと遅い。従って、通信データの減少は、一つの課題であるが、そのような中から、最小限の指示データを与えるだけで、自身で判断して動作する所謂自律型無人潜水機(AUV:Autonomous Underwater Vehicle)の開発が進んでいる。
【0006】
ここで、自律動作の柱となるのは、姿勢制御及び航行制御であるが、このうち航行制御には、様々な目的のものが存在する。
【0007】
例えば、自動航行制御(所謂「自動操縦」)は、対象船舶を目的地点まで最短距離で到達させるように制御するものであり、主として、船体方位を目標方位に一致させるようにフィードバック制御する「方位制御」が用いられている。
【0008】
方位制御では、一般に、図6の制御ブロック図に示すような構成により制御を行う。まず、予め設定された目標地点の位置座標(目標座標)と、ジャイロ等を備えた航法装置2により検出された船体1の方位(船体方位)と、GPS受信機により検出された船体1の位置座標(船体座標)とに基づいて、目標方位演算部3が、船体方位に対する目標地点の方位(即ち、「目標方位」)αを演算し(図7参照)、旋回動作コントローラ4が、演算された目標方位αに、航法装置2により検出されたヨーレートを勘案してPID演算を行い、目標方位αが零となるような制御指示データ(旋回指令)を、潜水機が備える舵駆動装置及び/又はバウスラスタ駆動装置等の舵取り手段に与え、これによって潜水機の船体1の方位を変えるようになっている。なお、上述のPID演算にあっては、ヨーレートに代えて目標方位αの微分値を用いることも可能であるが、当該微分値は、外乱の影響を受け易いため、一般には直接的に検出されたヨーレートが用いられている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した方位制御にあっては、潮流,風等の外乱の影響下では、図8に示す如く、目標地点までの最短経路を迂回するように航行する結果となるため、最短距離を航行できず、燃料の消費量が増加するという問題があった。この問題は、低速で航行する自律型無人潜水機にあっては特に顕著である。
【0010】
具体的には、図9に示す如く、例えば、スタート地点から1m/sの低速で100m先の目標地点まで航行する場合であって、真横から潮流を受けている場合には、潮流の速度に応じて、自律型無人潜水機の航行経路が大きく迂回することになる。図9においては、潮流速度を0.1m/sから0.9m/sまで、0.1m/s刻みで示してあり、制御遅れに関しては無視してある。言うまでもないが、潮流を受けない場合には、自立型無人潜水機は、スタート地点から目標地点までの直線コースを航行する。
【0011】
このような潮流(風でも同様)による問題を解決すべく、例えば、特開昭56-95798号公報,特開昭61-247592号公報等に開示されているように、この方位制御をベースとし、目標航路からの船体座標のずれ量に基づいて方位制御値を補正する「位置制御(トラッキング制御)」が組み合わせて用いられていたが、このような制御は、そのロジックが煩雑であり、装置全体の構成が複雑となるという問題があった。
【0012】
本発明は、上記状況に鑑みて行なわれたものであり、船の進行方位を目標方位に一致させるように制御することにより、潮流,風の影響下であっても目標地点までの直線コースを辿ることができ、従って、目標地点までの到達時間を短縮化し、無駄な燃料消費を抑えることが可能な操船方法及び装置を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を以下のような構成からなる操船方法及び装置によって解決することができる。
【0014】
本発明に係る操船方法は、航法装置で船体座標及び船体方位を検出し、検出結果と予め設定された目標座標とに基づいて目標方位を演算し、演算結果に基づいた方位に船体方位を一致させるような旋回指令を出力する操船方法において、航法装置で船の進行方位を検出し、該船の進行方位と目標方位との偏差を演算し、該偏差に相当する方位に船体方位を一致させるような旋回指令を出力することを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る操船装置は、航法装置で船体座標及び船体方位を検出し、検出結果と予め設定された目標座標とに基づいて目標方位を演算し、演算結果に基づいた方位に船体方位を一致させるような旋回指令を出力する操船装置において、船の進行方位を検出する航法装置と、前記航法装置により検出された船の進行方位と目標方位との偏差を演算する偏差演算手段と、該偏差演算手段により演算された偏差に相当する方位に船体方位を一致させるような旋回指令を出力する旋回指令出力手段とを備えることを特徴とする。
【0016】
上記発明によれば、船の進行方位と目標方位との偏差に相当する方位に船体方位を一致させるような旋回指令を出力するので、対地進行方向と目標方向とが一致し、従って、潮流,風の影響下であっても目標地点までの直線コースを辿ることができ、従って、目標地点までの到達時間を短縮化し、無駄な燃料消費を抑えることが可能である。従って、本発明は、潮流,風の影響を受け易い速力の低い自律型無人潜水機に適している。
【0017】
上記発明においては、船速が低いときには、目標方位に船体方位を一致させるような所謂、従来の「方位制御」を行い、船速が高いときには、前記偏差に相当する方位に船体方位を一致させるような所謂、上記の「本発明制御」を行うことにより、例えば、潮流,風の向きに逆らって船体が進行しているような状態であって、実際には船速(対水速度)が潮流,風に負けて流されているような状態でも、複雑な制御なしに、船体を目標方位に確実に向けることができる。
【0018】
このような制御の切替えを実現する具体的なハードウェアとしては、上記旋回指令出力手段に、偏差演算手段により演算された偏差の絶対値が所定の値以下の場合に前記偏差を出力し、前記所定の値を超える場合に略零を出力するマスク手段と、該マスク手段により出力された偏差を積分する積分手段と、該積分手段による積分結果に基づいて目標方位を相殺する第1加算手段と、該第1加算手段による加算結果と前記マスク手段による出力結果とを加算する第2加算手段とを備えさせ、上記旋回指令出力手段が、第2加算手段による加算結果に相当する方位に船体方位を一致させるような旋回指令を出力するものである。
【0019】
以上の発明は、ソフトウェアとして実現することも可能であるため、従来の自動操縦装置の簡単な改良のみで容易に実現することができる。また、旋回指令を舵取り装置へ入力するような自動操縦装置への適用以外にも、例えば、旋回出力を表示装置にビジュアルに表示させ、船舶の操縦者がこの表示内容を見て手動で操縦するようにすることも可能である。従って、自動操縦装置を備えていない小型船舶等にも適用することが可能である。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る操船方法を実施するための装置について、船舶の自動操縦装置の例を挙げて図面を参照しながら具体的に説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施の形態に係る自動操縦装置の制御ブロック図である。図1において、本実施の形態に係る船舶は、ジャイロ等を使用した慣性航法装置,GPS受信機等の航法装置2を備えている。該航法装置2は、船体1の船体方位,船体座標等を検出し、検出結果は、自動操縦のフィードバックとして利用される。
【0022】
航法装置2が検出した船体方位及び船体座標の情報は、目標方位演算部3に入力され、目標方位演算部3は、従来と同様の方法にて、船体方位及び船体座標の情報と、予め設定された目標座標とに基づいて、目標方位αを演算し、演算結果を偏差演算部6へ与える。
【0023】
偏差演算部6は、与えられた目標方位αから、航法装置2が検出した船体1の船の進行方位βを減じて、制御偏差Δθを演算し、演算結果を旋回動作コントローラ4へ与える。旋回動作コントローラ4は、与えられた制御偏差Δθに基づいて、航法装置2が検出した船体1のヨーレートを勘案してPID演算を行い、舵駆動装置,バウスラスタ駆動装置等の舵取り装置5への旋回指令を出力する。舵取り装置5は、与えられた旋回指令に応じた舵取りを行い、船体1の方位を変更する。
【0024】
なお、本実施の形態においては、旋回動作コントローラ4がPID演算に使用するヨーレートは、航法装置2からの入力に代えて、目標方位αの微分値を使用してもよい。
【0025】
以上の如き構成により、図2に示す如く、偏差演算部6で目標方位αと船の進行方位βとの偏差、即ち制御偏差Δθが演算され、この制御偏差Δθを零とするように、つまり船の進行方位を目標方位に一致させるように、旋回動作コントローラ4が舵取り動作を行うようになっている。
【0026】
このような制御により、船体1は、外観的には図3に示す如く潮流,風等の方向に船首を向けた姿勢で、目標地点までの直線コース上に沿って進行することができる。
【0027】
図4は、真横からの潮流の速度と、この影響下において1m/sで航行する船舶が100m先の目標地点に到達するまでの時間との関係を示すグラフであり、図中、破線は従来の方位制御による結果を、実線は本願制御による結果をそれぞれ示している。なお、図4において、縦軸に100m先の目標地点への到達時間(sec)、横軸に真横からの潮流速度(m/s)をそれぞれ示してある。
【0028】
船舶が1m/sで進行する場合、もし潮流等の影響が無く目標地点までの直線コースを辿ることができるならば、100secで目標地点まで到達できる。従って、図4のグラフにおいては、潮流速度が比較的に遅い場合には、従来制御と本願制御との間の差異は殆ど見られないが、潮流速度が速くなるにつれて、従来制御における到達時間は急激に長くなっており、例えば、0.9m/sの潮流では約500secの時間を要している。これに対して、本願制御における到達時間は半分ほどしか長くならず、例えば、0.9m/sの潮流では約230secの時間しか要していない。
【0029】
以上の制御方法は、潮流,風等の速度に対して速力の大きい船舶には十分であるが、速力の小さい例えば自律型無人潜水機には十分でない場合がある。つまり、船速が非常に低い状態であって、潮流,風等の影響により船体方位に対して大きく異なる方向へ流されているような場合には、制御の挙動が不安定になることがある。
【0030】
そこで、図5に示す制御ブロック図のように、偏差演算部6と旋回動作コントローラ4との間に、偏差演算部6が演算した制御偏差Δθの絶対値が所定の値よりも大きい場合に零を出力し、該所定の値以下の場合にのみスルーするマスク部8を設け、さらに、マスク部8の出力結果を積分する積分部71を設けることも可能である。積分部71の積分結果は、第1加算部72に与えられ、目標方位αに加算される。第1加算部の加算結果には、第2加算部9でマスク部8の出力が更に加算される。
【0031】
このように構成することにより、制御偏差Δθの絶対値が大きい場合には、つまり、潮流,風等の影響により船体方位に対して大きく異なる方向へ流されているような場合には、マスク部8からは零が出力されるので、積分部71と第1加算部72とからなる方位制御部7、並びに第2加算部9へは、マスク部8からの出力はなく、従って、旋回動作コントローラ4へは目標方位αのみが与えられ、結果として、従来の方位制御と等価の動作をなす。
【0032】
一方、船速が上がる等して、潮流,風等の影響が船速に対して小さくなるにつれて、方位制御によって、船の進行方位βは目標方位αへ近づいていき、これに伴って偏差演算部6から出力される制御偏差Δθの絶対値は小さくなっていく。
【0033】
やがて、制御偏差Δθの絶対値が上記所定の値以下となると、マスク部8から制御偏差Δθがスルー(出力)され始め、積分部71に蓄積される。積分部71には、その記憶容量に応じた分だけ、制御偏差Δθが例えば先入れ先出し方式で蓄積され、蓄積された累積値(積分値)が第1加算部72へ与えられる。第1加算部72は、積分部71の積算結果に目標方位αを加算して第2加算部9に与える。第2加算部9には、マスク部8からの出力も直接的に与えられており、該第2加算部9は、この出力に第1加算部72からの出力を加算し、加算結果である(α+積分値+Δθ)を旋回動作コントローラ4へ与える。
【0034】
従って、旋回動作コントローラ4へ与えられる値は、マスク部8を通過した値に第1加算部72の加算結果を更に加算した値となり、結果として、従来の方位制御で目標方位へ船体方位を向けようとする動作よりも余計に旋回するような挙動をなし、早い段階で船体方位を目標方位側へ向けることができる。
【0035】
続いて、船体方位が目標方位に近づき始めると、制御偏差Δθが更に小さくなり、積分部71に蓄積される積分値も小さくなる。しかしながら、積分部71の記憶容量によっても異なるが、船体方位が目標方位に一致した時点では、積分部71には値が残っており、これによって、船体方位は目標方位を通り過ぎて反対側へ余分に振られる格好になる。
【0036】
そうなると、積分部71には、今度はマイナスの値(制御偏差Δθ)が蓄積され、船体方位は再び目標方位に一致するように戻され始める。このようなオーバーシュートを繰り返しながら、船体方位は、目標方位に収斂し、最終的に(α+積分値+Δθ)=0 となった時点で安定する。なお、上記オーバーシュートについては、適切な制御ブロックを追加することにより調整することが可能であることは言うまでもない。
【0037】
【発明の効果】
本発明に係る操船方法及びその実施に使用する装置によれば、船の進行方位を目標方位に一致させるように制御することにより、潮流,風の影響下であっても目標地点までの直線コースを辿ることができ、従って、目標地点までの到達時間を短縮化し、無駄な燃料消費を抑えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態に係る操船方法を実施するための装置の制御系を示す制御ブロック図である。
【図2】 本発明に係る操船方法における船体方位と、これに対する目標方位、船の進行方位、及び制御偏差との関係を示す図である。
【図3】 真横から潮流,風の影響を受けて本発明に係る操船方法の制御によって航行した場合の、目標地点までの最短経路を辿って航行する軌跡を示す図である。
【図4】 真横からの潮流の速度と、この影響下において1m/sで航行する船舶が100m先の目標地点に到達するまでの時間との関係を示すグラフであり、図中、破線は従来の方位制御による結果を、実線は本願制御による結果をそれぞれ示している。
【図5】 本発明の実施の形態に係る操船方法を実施するための装置の別の制御系を示す制御ブロック図である。
【図6】 従来の操船装置の制御系を示す制御ブロック図である。
【図7】 従来の方位制御における船体方位と、これに対する目標方位との関係を示す図である。
【図8】 真横から潮流,風の影響を受けて従来の方位制御によって航行した場合の、目標地点までの最短経路を迂回するように航行する軌跡を示す図である。
【図9】 真横から0.1m/s〜0.9m/sの潮流を受けて従来の方位制御によって航行した場合であって、スタート地点から1m/sの低速で100m先の目標地点まで航行する場合の航行軌跡を示すグラフである。
【符号の説明】
1 船体
2 航法装置
3 目標方位演算部
4 旋回動作コントローラ
5 舵取り装置
6 偏差演算部
7 方位制御部
8 マスク部
9 第2加算部
71 積分部
72 第1加算部
α 目標方位
β 船の進行方位
Δθ 制御偏差

Claims (6)

  1. 航法装置で船体座標及び船体方位を検出し、検出結果と予め設定された目標座標とに基づいて目標方位を演算し、演算結果に基づいた方位に船体方位を一致させるような旋回指令を出力する操船方法において、
    航法装置で船の進行方位を検出し、該船の進行方位と目標方位との偏差を演算し、該偏差に相当する方位に船体方位を一致させるような旋回指令を出力することを特徴とする操船方法。
  2. 船速が低いときには、目標方位に船体方位を一致させるような旋回指令を出力する一方、船速が高いときには、前記偏差に相当する方位に船体方位を一致させるような旋回指令を出力することを特徴とする請求項1記載の操船方法。
  3. 航法装置で船体座標及び船体方位を検出し、検出結果と予め設定された目標座標とに基づいて目標方位を演算し、演算結果に基づいた方位に船体方位を一致させるような旋回指令を出力する操船装置において、
    船の進行方位を検出する航法装置と、
    前記航法装置により検出された船の進行方位と目標方位との偏差を演算する偏差演算手段と、
    該偏差演算手段により演算された偏差に相当する方位に船体方位を一致させるような旋回指令を出力する旋回指令出力手段と
    を備えることを特徴とする操船装置。
  4. 前記旋回指令出力手段は、船速が低いときには、目標方位に船体方位を一致させるような旋回指令を出力する一方、船速が高いときには、前記偏差に相当する方位に船体方位を一致させるような旋回指令を出力することを特徴とする請求項3記載の操船装置。
  5. 前記旋回指令出力手段は、
    前記偏差演算手段により演算された偏差の絶対値が所定の値以下の場合に前記偏差を出力し、前記所定の値を超える場合に略零を出力するマスク手段と、
    該マスク部により出力された偏差を積分する積分手段と、
    該積分手段による積分結果を目標方位に加算する第1加算手段と、
    該第1加算手段による加算結果を前記マスク手段による出力結果に加算する第2加算手段と
    を備え、
    前記第2加算手段による加算結果に相当する方位に船体方位を一致させるような旋回指令を出力する
    ことを特徴とする請求項4記載の操船装置。
  6. 前記旋回指令出力手段により出力された旋回指令に基づいて舵を駆動する舵取り装置を更に備えることを特徴とする請求項3乃至5の何れかに記載の操船装置。
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