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JP3998695B2 - αリポ酸水溶液及びその製造方法 - Google Patents

αリポ酸水溶液及びその製造方法 Download PDF

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JP3998695B2 JP2005304924A JP2005304924A JP3998695B2 JP 3998695 B2 JP3998695 B2 JP 3998695B2 JP 2005304924 A JP2005304924 A JP 2005304924A JP 2005304924 A JP2005304924 A JP 2005304924A JP 3998695 B2 JP3998695 B2 JP 3998695B2
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Description

本発明はシクロデキストリン(以下、CDとする)を使用した高濃度のαリポ酸水溶液及びその製造方法に関する。また、CoQ10を含有せしめたαリポ酸水溶液に関し、得られたαリポ酸水溶液を使用した飲食品、化粧品及び医薬品に関する。さらに、高濃度のαリポ酸水溶液の製造に使用するαリポ酸用可溶化促進剤、αリポ酸用可溶化促進剤セットに関する。
αリポ酸は、糖尿病の治療等を目的とする医薬品の有効成分として利用されている。しかし、その分子内にジスルフィド結合を有するために、熱、光等の物理的な影響や、酸素、水、薬理活性物質との共存等の化学的な影響によって、重合体を生成し易く不安定である。
また、メタノール、エタノール等の低級アルコールや、トルエン、ヘキサン等の有機溶媒に溶けやすく、水に溶けにくいことから、飲食品、化粧品及び医薬品等への利用が困難であるという問題がある(特許文献1、2参照)。
近年、油脂乳化技術を利用することで水溶化されたαリポ酸水溶化液などが開発され、発売されている(例えば、非特許文献1参照)。しかし、乳化技術を利用することなく、容易かつ簡便にαリポ酸水溶液を製造する方法は得られておらず、その開発が望まれている。
特公昭37−7970号公報 特許3404435号 http://www.yof-linda.co.jp/353/lipoic.htm
本発明は、CDを使用した高濃度のαリポ酸水溶液の提供及びその製造方法の提供を課題とする。また、コエンザイムQ10(以下、CoQ10とする)を含有せしめたαリポ酸水溶液の提供を課題とし、これらのαリポ酸水溶液を使用した飲食品、化粧品及び医薬品の提供を課題とする。さらに、高濃度のαリポ酸水溶液の製造に使用するαリポ酸用可溶化促進剤、αリポ酸用可溶化促進剤セットの提供を課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、CDをαリポ酸用可溶化促進剤として使用することで、αリポ酸の水溶化が促進されることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明のαリポ酸水溶液の製造方法は、αリポ酸用可溶化促進剤として、修飾型CD又は天然型CDを使用し、さらに可溶化補助剤を使用することを特徴とする。本発明の製造方法により得られたαリポ酸水溶液は、CoQ10を含有せしめた場合でも高い保存安定性を示す。これらのαリポ酸水溶液は飲食品、化粧品及び医薬品等に使用することができる。
即ち、本発明は次の(1)〜(13)のいずれかのαリポ水溶液酸の製造方法、αリポ酸水溶液及びそれを原料とする飲食品、化粧品及び医薬品、また高濃度のαリポ酸水溶液の製造に使用するαリポ酸用可溶化促進剤、αリポ酸用可溶化促進剤セットに関する。
(1)CDを含有せしめることを特徴とする高濃度のαリポ酸水溶液。
(2)CDが修飾型CDであることを特徴とする上記 (1)に記載の高濃度のαリポ酸水溶液。
(3)CDが天然型CDであることを特徴とする上記(1)に記載の高濃度のαリポ酸水溶液。
(4)天然型CDと共に可溶化補助剤を含有せしめることを特徴とする上記(3)に記載の高濃度のαリポ酸水溶液。
(5)さらに、CoQ10を含有せしめることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の高濃度のαリポ酸水溶液。
(6)αリポ酸用可溶化促進剤としてCDを含有せしめることを特徴とする、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の高濃度のαリポ酸水溶液の製造方法。
(7)CDが修飾型CDであることを特徴とする上記(6)に記載の製造方法。
(8)CDが天然型CDであることを特徴とする上記(6)に記載の製造方法。
(9)天然型CDと共に可溶化補助剤を添加することを特徴とする上記(8)に記載の製造方法。
(10)CDを有効成分とするαリポ酸用可溶化促進剤。
(11)上記(10)に記載のαリポ酸用可溶化促進剤と、少なくとも一種の可溶化補助剤を組み合わせることを特徴とする、αリポ酸用可溶化促進剤セット。
(12)上記(1)〜(5)のいずれかに記載の高濃度のαリポ酸水溶液を原料とする飲食品。
(13)上記(1)〜(5)のいずれかに記載の高濃度のαリポ酸水溶液を原料とする医薬品。
(14)上記(1)〜(5)のいずれかに記載の高濃度のαリポ酸水溶液を原料とする化粧品。
本発明により、容易かつ簡便なαリポ酸水溶液の製造方法を提供することができる。また、CoQ10を含有せしめたαリポ酸水溶液を提供することができる。これらのαリポ酸水溶液は飲食品、化粧品及び医薬品等に幅広く利用することができる。
本発明の「高濃度のαリポ酸水溶液」とは、CD又はこれを有効成分として含むαリポ酸用可溶化促進剤を含有せしめることにより、αリポ酸の水への溶解度が改善されたαリポ酸水溶液のことをいう。本発明のαリポ酸水溶液に含まれるαリポ酸の濃度は高ければ高いほど良いが、少なくとも0.1mg/mLより高く、さらに1mg/mL以上であることが好ましく、特に5〜6mg/mL以上であることが好ましい。通常、αリポ酸は水には全く溶けないが(化学辞典、1994年、1511頁)、これと比較して本発明のαリポ酸水溶液は、高い濃度のαリポ酸が溶けていることから、高濃度のαリポ酸水溶液という。
本発明の「αリポ酸水溶液」は、飲食品、化粧品や医薬品の原料として使用することができ、使用の目的等に応じて、さらにカプセル剤、錠剤、顆粒剤、散剤、液剤、シロップ剤、懸濁剤、軟膏、クリーム剤、ゲル剤、注射剤等の形態とすることができる。このように調製された飲食品、化粧品や医薬品は、αリポ酸の1日当たりの可能摂取量に該当する範囲であれば、そのまま又は添加物を加えた後に、摂取したり、塗布したりしてもよい。
本発明の「高濃度のαリポ酸水溶液の製造方法」とは、本発明のαリポ酸用可溶化促進剤及び/又は可溶化補助剤を使用することで、αリポ酸の水への溶解度を改善することにより、高濃度のαリポ酸水溶液を製造する方法のことをいう。
本発明の製造方法には、高濃度のαリポ酸水溶液を製造できるいずれの方法も含む。例えば、αリポ酸を分散させた懸濁水に、αリポ酸用可溶化促進剤及び/又は可溶化補助剤を添加することで、高濃度αリポ酸水溶液を製造する方法が挙げられる。また、粉末のαリポ酸と、粉末のαリポ酸用可溶化促進剤及び/又は可溶化補助剤の混合物に水を添加する方法や、又はこの混合物を水に添加する方法が挙げられる。さらに必要に応じてこれらを数分から数時間又は数日間攪拌する方法、あるいは振盪する方法なども挙げられる。
本発明の製造方法における、αリポ酸、αリポ酸用可溶化促進剤及び/又は可溶化補助剤の水への添加の順序や添加方法等は、高濃度のαリポ酸水溶液を製造できる方法であれば特に問わない。
本発明に使用するαリポ酸としては、αリポ酸のラセミ体、光学的にピュアな(R)体のみ、(S)体のみ、又はこれらの混合物等のいずれも含む。これらは天然から得られたもの、化学合成されたもの等のいずれも含み、例えば、立山化成社製等の、市販のラセミ体を使用することもできる。これらのαリポ酸は、粉末、結晶状、水などに溶解した液体状でも、いずれの状態でも使用することができる。
さらに本発明に使用するαリポ酸には、チオクト酸アミド等のαリポ酸誘導体や、αリポ酸又はαリポ酸誘導体を含有する組成物も含む。医薬品、健康食品、化粧品等に利用する場合では、このような組成物に含まれるαリポ酸以外の成分も安全性の高い成分であることが必要である。
本発明の「αリポ酸用可溶化促進剤」とは、αリポ酸水溶液の製造にあたり、αリポ酸の水への溶解度を改善する剤のことをいい、αリポ酸の水への溶解度を改善する剤であればいずれも使用することができる。本発明のαリポ酸用可溶化促進剤としては、修飾型CD、天然型CD、又はこれらを有効成分として含有する剤を使用することが好ましい。
本発明の修飾型CD又はこれを有効成分とするαリポ酸用可溶化促進剤は、有効成分以外の成分を含むものを使用することもできるが、修飾型CDのみでも十分にαリポ酸の水への溶解度を改善できるため好ましい。また、天然型CD又はこれを有効成分とするαリポ酸用可溶化促進剤は、それのみでもαリポ酸の水への溶解度を改善できるが、さらに可溶化補助剤と共に使用することで、αリポ酸の水への溶解度を十分に改善することができる。
本発明の「αリポ酸用可溶化促進剤」に使用する「修飾型CD」には、酵素修飾型CD又は化学修飾型CDの少なくとも一種以上を使用することが好ましい。
酵素修飾デキストリンとしては、グリコシル化αCD、グリコシル化βCD、グリコシル化γCD又はマルトシル化αCD、マルトシル化βCDあるいはマルトシル化γCD等のイソエリートが挙げられ、少なくとも一種以上を使用することが好ましい。また、化学修飾型CDとしては、部分メチル(RM)化CD、ヒドロキシプロピル(HP)化CD、スルフォブチルエーテル(SBE)化CD、アセチル化CD又はモノクロロトリアジノ化CD等が挙げられ、少なくとも一種以上を使用することが好ましい。
これらはいずれの使用も可能であるが、特にグルコシル化CD、マルトシル化CDなどを使用することが食用という点で好ましい。例えば、αリポ酸用可溶化促進剤としてマルトシル化αCD、マルトシル化βCD及びマルトシル化γCDの混合物であるイソエリート(登録商標;横浜国際バイオ研究所製)を使用した場合、その添加濃度に応じて、αリポ酸の溶解度を改善するため好ましい。これらの修飾型CDには、一般的な方法を使用して修飾したもの、横浜国際バイオ研究所製、ワッカー社製等の市販のもの等いずれも含む。
本発明の「αリポ酸用可溶化促進剤」に使用する「天然型CD」には、αCD、βCD、γCD等が挙げられ、少なくとも一種以上を使用することが好ましい。これらはいずれも使用することができるが、それのみで使用する場合には、βCDが最も溶解度の改善に有効であるため好ましい。これらのCDは、天然から得られたもの、化学合成されたもの等のいずれも使用することができ、例えば、ワッカー社製等の、市販のものを使用することもできる。
本発明の「可溶化補助剤」とは、αリポ酸水溶液の製造にあたり、例えば、天然型のCDのような「αリポ酸用可溶化促進剤」と共に使用することでαリポ酸の水への溶解度の改善を補助する剤のことをいい、αリポ酸の水への溶解度の改善を補助する剤であればいずれも使用することができる。本発明の可溶化補助剤としては、天然添加物、水溶性ポリマー、メタルイオンの少なくとも一種以上、又はこれらの少なくとも一種以上を有効成分として含有する剤を使用することが好ましい。
本発明の天然添加物、水溶性ポリマー、メタルイオンを有効成分として使用する可溶化補助剤は、有効成分以外の成分を含むものを使用することもできるが、有効成分のみでも十分にαリポ酸の水への溶解度の改善を補助できるため好ましい。
本発明の「可溶化補助剤」に使用する天然添加物としては、酢酸、乳酸、クエン酸、酢酸Na、乳酸Na、クエン酸Na、アミノ酸、アンモニア又は脂肪酸グリセロール等が挙げられ、少なくとも一種以上を使用することが好ましい。
また、水溶性ポリマーとしては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリアリルアミン(PPA)、ポリビニルアルコール(PVA)等が挙げられ、少なくとも一種以上を使用することが好ましく、メタルイオンとしては、NaCl、MgCl2、ZnCl2等が挙げられ、少なくとも一種以上を使用することが好ましい。
これらはいずれの使用も可能であるが、例えば、可溶化補助剤として、天然型CDと共に1w/w%のクエン酸Naを使用した場合では、天然型CDと共に使用した場合には、クエン酸Naのみを使用した場合と比べて10倍以上の溶解度を示すため好ましい。
本発明の「αリポ酸可溶化促進剤セット」とは、上記「αリポ酸用可溶化促進剤」及び「可溶化補助剤」を組み合わせたもののことをいう。例えば、βCDを「αリポ酸用可溶化促進剤」とし、クエン酸Naを「可溶化補助剤」として組み合わせてセットとすることができる。
本発明の「CoQ10を含有せしめるαリポ酸水溶液」とは、CoQ10とαリポ酸とのいずれも含む水溶液のことをいう。本発明の「CoQ10を含有せしめるαリポ酸水溶液」は、αリポ酸、αリポ酸-γCD包接体を水に溶解した水溶液や、本発明のαリポ酸水溶液にCoQ10を含有せしめることで調製することができる。このうち、本発明のαリポ酸水溶液を用いることが好ましい。また、CoQ10はいずれも用いることができるが、水溶性CoQ10(アクアQ10;日清ファルマ社製)や、CoQ10W(CoQ10−γCD(γCD)包接体;シクロケム社製)等を用いることが好ましい。
本発明の「高濃度のαリポ酸水溶液を原料とする飲食品」とは、本発明の「高濃度のαリポ酸水溶液」を原料として製造された、サプリメント、機能性食品、栄養ドリンク等の飲食品のことをいう。本発明の高濃度のαリポ酸水溶液を使用し、飲食品を製造する場合には、原料に含まれるαリポ酸の効果を有効に利用することが好ましい。
本発明の高濃度のαリポ酸水溶液を使用し、栄養ドリンク、スポーツ飲料、清涼飲料、茶飲料を製造する場合には、必要に応じて、例えば香料、着色剤、酸化防止剤及びその他の成分を加えても良い。例えばカフェインなどのキサンチン誘導体、人参、麝香、牛黄、枸杞子、地黄、ロイヤルゼリーなどの生薬、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄、銅などのミネラル、メチオニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、リシン、フェニルアラニン、トレオニン、トリプトファン、タウリンなどのアミノ酸、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKなどの油溶性ビタミン類などが例示される。
本発明の高濃度のαリポ酸水溶液を使用し、飴、グミー、ガムなどの菓子類を製造するときには、必要に応じて、例えば香料、着色剤、酸化防止剤及びその他の成分を加えても良い。
本発明の高濃度のαリポ酸水溶液を使用し、サプリメントを製造する場合には、必要に応じて、例えば、デンプン、乳糖、白糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩類等の製剤に通常使用されている添加物を加えることができる。
本発明の「高濃度のαリポ酸水溶液を原料とする医薬品」とは、本発明の「高濃度のαリポ酸水溶液」を原料として製造された医薬品のことをいう。本発明の高濃度のαリポ酸水溶液を使用し、医薬品を製造する場合には、原料に含まれるαリポ酸の効果を有効に利用することが好ましい。本発明の高濃度のαリポ酸水溶液を使用し、医薬品を製造する場合には、本発明の高濃度のαリポ酸水溶液に加え、必要な成分を配合することもできる。
本発明の「高濃度αリポ酸水溶液を原料とする化粧品」とは、また、本発明の「高濃度のαリポ酸水溶液」を原料として製造された、化粧水、乳液、美容クリーム、シャンプー、リンス等の化粧品のことをいう。本発明の高濃度のαリポ酸水溶液を使用し、医薬品を製造する場合には、原料に含まれるαリポ酸の効果を有効に利用することが好ましい。さらに、本発明の複合体に加え、皮膚繊維芽細胞の増殖等の効果を有するレチノール等の美容成分や、ホホバ油、植物エキス等の保湿成分を必要に応じて配合することもできる。
以下、本発明の詳細を実施例等で説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
αリポ酸用可溶化促進剤及び/又は可溶化補助剤
(1)αリポ酸用可溶化促進剤としてαCD、βCD又はγCD(いずれもWacker Biochem社製)のいずれかと、可溶化補助剤としてクエン酸Na(和光純薬社製)を使用した。
(2)αリポ酸用可溶化促進剤としてαCD、βCD又はγCD(いずれもWacker Biochem社製)、イソエリートP (イソエリートpowder;横浜国際バイオ研究所製)のいずれかを使用した。
αリポ酸用可溶化促進剤及び/又は可溶化補助剤(1)を使用した溶解方法
αリポ酸(立山化成社製)に水を加え、必要に応じて攪拌又は振盪することにより、1w/w%αリポ酸懸濁水を調製した。この1w/w%αリポ酸懸濁水に、αリポ酸用可溶化促進剤としてαCD、βCD又はγCDのいずれかを1 w/w%になるように添加した。また、可溶化補助剤としてクエン酸Naがそれぞれ1 w/w%になるように添加した。
ブランクとして何も添加しないもの、対照としてクエン酸Naのみ添加したものも調製し、これらを2日間攪拌した。各αリポ酸用可溶化促進剤及び/又は可溶化補助剤の添加量を表1に示した。
攪拌後のブランク、対照、試料1〜3についてそれぞれフィルター(ザルトリウス/lot.16534/0.2μm)濾過した後、同量のエタノールを加え、吸光光度計(333nm)でそれぞれのαリポ酸濃度を測定した。
αリポ酸10mgをエタノール5mLに完全に溶解し、更に水を5mL加え1mg/mLの標準溶液とした後、2倍希釈溶液(0.5mg/mL)、10倍希釈溶液(0.1mg/mL)を作り検量線を作成した。
得られた検量線を元に、ブランク、対照、試料1〜3に溶解したαリポ酸の濃度を調べ、結果を表2に示した。
表2に示したように、対照のクエン酸ナトリウムのみではブランクと同様で、全くαリポ酸の溶解度の改善が見られず、CDを共に使用することでその溶解度はかなり改善されることが示された。とくにβCDを併用した場合にはクエン酸ナトリウムのみを使用した場合より10倍以上溶解度は改善されることが示された。
αリポ酸用可溶化促進剤(2)を使用した溶解方法
1 w/w %αリポ酸懸濁水に、αリポ酸用可溶化促進剤としてイソエリートPを全液量の0〜10 w/w %になるように添加した。対照としてαCD、βCD又はγCDのいずれかを添加したものも調製し、これらを2日間攪拌した。
攪拌後の試料、対照1〜3についてそれぞれフィルター(ザルトリウス/lot.16534/0.2μm)濾過した後、同量のエタノールを加え、吸光光度計(333nm)でそれぞれのαリポ酸濃度を測定した。実施例2と同様に作成した検量線を使用し、ブランク、試料、対照1〜3に溶解したαリポ酸の濃度を調べ、結果を図1に示した。
図1に示したように、イソエリートPを添加したものは、イソエリートPの濃度に応じてαリポ酸の溶解度が改善されることが示された。αCDを添加したものは、1.0〜5.0w/w%添加した場合、1mg/mL前後の溶解度を示した。またβCDを添加したものでは、1mg/mL以上の溶解度を示した。一方でγCDを添加したものは1mg/mL以下で、溶解度の改善はあまり見られなかった。
従って、天然型のCDをαリポ酸用可溶化促進剤として使用した場合では、βCDを添加した場合に高い溶解度の改善が示されることが確認された。また、天然型のCDより、修飾型のCDを使用した場合に、高い溶解度の改善が示されることが確認された。
CoQ10を含むαリポ酸水溶液の調製
αリポ酸、αリポ酸-γCD包接体又はαリポ酸水溶液について、CoQ10を用いることにより、CoQ10を含むαリポ酸水溶液を調製した。なお、αリポ酸-γCD包接体は、22.5w/w%のαリポ酸を含有するγCD包接体粉体として次のように調製したものを用いた。すなわち、αリポ酸(3g)に対し、10mLの水を加え、ホモジナイザー(IKA製 ULTRA-TURRAX T25:8,000rpm、2min)を用いて剪断力をかけて予備攪拌した。これにγCD(10.3g:乾燥重量)を加え、同様に攪拌した(8,000-12,000rpm、15-30min)。得られた乳化物を一晩放置した後、凍結乾燥することで調製した。
各水溶液は、表3に示す各組成に応じてαリポ酸濃度 が 0.5mg/ml、CoQ10濃度が0.5mg/ml、βCD濃度が0.1w/w%含まれるように添加した。各水溶液の調製は以下のように行った。
1.水溶液1〜3(αリポ酸使用)
1)αリポ酸を一旦NaOH水(アルカリ)にて溶解し、クエン酸で中性に戻すことで透明な水溶液を得た。
2)1)の水溶液に水溶性CoQ10もしくはCoQ10Wを加え、水で100mlにメスアップした。
3)2)を更に1時間攪拌した後、70℃のドライオーブンで静置した。
2.水溶液4〜6(αリポ酸-γCD包接体使用)
1)βCD0.1w/w%水溶液にαリポ酸-γCD包接体を加え、よく攪拌した後、水で100mlにメスアップした。
2)1)にCoQ10を加え、更に1時間攪拌した後、70℃のドライオーブンで静置した。
3.水溶液7〜9(αリポ酸水溶液使用)
1)水にαリポ酸水溶液を加え、よく攪拌した後、50mlにメスアップした。
2)1)にCoQ10を加え、更に1時間攪拌した後、70℃のドライオーブンで静置した。
CoQ10を含むαリポ酸水溶液の安定性
調製された各水溶液を、それぞれフィルター(ザルトリウス/lot.16534/0.2μm)濾過した後、同量のエタノールを加え、吸光光度計(333nm)でそれぞれのαリポ酸濃度を測定した。また、調製後70℃、遮光状態で保存された各水溶液の保存後0、1、2、7日後のαリポ酸濃度を測定し、各水溶液中のαリポ酸の安定性を調べ、結果を表4及び図2に示した。
表4及び図2に示したように、水溶液7〜9のαリポ酸水溶液を用いた水溶液は、水溶液1〜3のαリポ酸を用いた水溶液、及び水溶液4〜6のαリポ酸-γCD包接体を用いた水溶液よりも7日後の残存率が高いことが示された。
また、水溶液8、9のCoQ10を含むαリポ酸水溶液を用いた水溶液は、調製7日後でいずれも残存率が低下するものの、94%以上を保持しており、水溶液2、3のαリポ酸及び水溶液5、6のαリポ酸-γCD包接体を用いたCoQ10を含む水溶液と比べて、高い残存率を有し、安定性が保持されていることが示された。
さらに、水溶液9のCoQ10Wを含むαリポ酸水溶液を用いた水溶液では、調製2日後まで、残存率の低下が見られず、高い安定性を有することが示された。
従って、CoQ10を含むαリポ酸水溶液の調製におけるその水溶液の安定性において、αリポ酸又はαリポ酸-γCD包接体を用いることも可能であるが、αリポ酸水溶液を用いることが特に好ましいことが確認された。
保湿クリームの製造
本発明の高濃度のαリポ酸水溶液を用い、保湿クリームを製造した。
高濃度のαリポ酸水溶液は、上記実施例3と同様に調製したものを用いた。即ち、上記実施例2で調製した1w/w%αリポ酸懸濁水に、αリポ酸用可溶化促進剤としてイソエリートPを全液量の5w/w %になるように添加することで、αリポ酸が2mg/mL含まれる高濃度のαリポ酸を調製した。
保湿クリームの製造にあたり、下記(A)、(B)の材料をそれぞれ秤取し、各々を80℃に加温撹拌した。下記(C)の材料を常温で撹拌して分散させた。その後、(A)をホモミキサーで攪拌しながら80℃を維持して(B)を徐々に添加した。添加終了後、パドルミキサーで攪拌して冷却し、50℃でさらに(C)を加えて、35℃まで撹拌冷却することで、保湿クリームを製造した。
(A)
モノステアリン酸デカグリセリル 2.0
水添レシチン 1.0
セタノール 1.0
パルミチン酸セチル 1.0
ステアリン酸 2.0
スクワラン 5.0
トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル 6.0
メチルポリシロキサン(100mm2/S) 1.0
パラオキシ安息香酸プロピル 0.1
(B)
L−アルギニン 0.2
1,3−ブチレングリコール 8.0
パラオキシ安息香酸メチル 0.2
精製水 67.4
(C)
αリポ酸(2mg/mL)水溶液 0.1
精製水 5.0
______________________________________________________________________
合計(A)〜(C) 100.0w/w%
ホワイトニングローションの製造
本発明の高濃度のαリポ酸水溶液を用い、ホワイトニングローションを製造した。高濃度のαリポ酸水溶液は、αリポ酸(2mg/mL)水溶液として、上記実施例5と同様に調製したものを用いた。
ホワイトニングローションの製造にあたり、下記(A)の材料を40℃で加温溶解した。下記(B)の材料は常温で溶解し、下記(C)は分散させた。その後、(A)を攪拌しながら(B)、(C)の順に添加し、室温まで冷却することで、ホワイトニングローションを製造した。
(A)
PPG−6デシルテトラデセテス‐30 1.0
1,3−ブチレングリコール 5.0
キサンタンガム(2%水溶液) 5.0
フェノキシエタノール 0.5
パラオキシ安息香酸メチル 0.2
精製水 64.9
(B)
リン酸アスコルビルマグネシウム 3.0
グルタミン酸ナトリウム 0.3
精製水 15.0
(C)
αリポ酸(2mg/mL)水溶液 0.1
精製水 5.0
_______________________________________________________________________
合計(A)〜(C) 100.0 w/w%
ボディゲルの調整
本発明の高濃度のαリポ酸水溶液を用い、ボディゲルを製造した。高濃度のαリポ酸水溶液は、αリポ酸(2mg/mL)水溶液として、上記実施例5と同様に調製したものを用いた。
ボディゲルの製造にあたり、下記(A)の材料を70℃で均一混合後、50℃まで冷却した。50℃を維持しながら、撹拌しながら均一に分散させた下記(B)及び(C)を徐々に添加した。均一化後に、室温に戻し、ボディゲルを製造した。
(A)
カルボキシビニルポリマー(2%水溶液) 10.0
キサンタンガム(2%水溶液) 10.0
1,3−ブチレングリコール 7.0
フェノキシエタノール 0.5
精製水 47.25
(B)
水添レシチン 1.0
精製水 9.0
(C)
αリポ酸(2mg/mL)水溶液 0.1
リノール酸−αCD複合体
(商品名:CAVAMAX W6-Linoleic Acid、wacker社) 5.0
L−アルギニン 0.15
精製水 10.0
________________________________________________________________________
合計(A)〜(C) 100.0 w/w%
βCDを用いた高濃度のαリポ酸水溶液の製造
αリポ酸(立山化成社製)に水を加え、必要に応じて攪拌又は振盪することにより、1w/w%αリポ酸懸濁水を調製した。この1w/w%αリポ酸懸濁水に、αリポ酸用可溶化促進剤としてβCD(Wacker Biochem社製)を1 w/w%になるように添加した。また、可溶化補助剤としてクエン酸Naがそれぞれ1 w/w%になるように添加することで、αリポ酸(1mg/ml)水溶液を得た。
シャンプーの製造
本発明の高濃度のαリポ酸水溶液を用い、シャンプーを製造した。高濃度のαリポ酸水溶液は、βCD及びクエン酸Naを用いた水溶液として、上記実施例8と同様に調製したものを用いた。
シャンプーの製造にあたり、下記(A)の材料と下記(B)の材料を80℃で加温しながら均一化した。(A)に(B)を加えて攪拌した。攪拌しながら冷却し40℃でシャンプーを製造した。
(A)
ラウレス硫酸Na 31.0
ラウレス2−硫酸アンモニウム 15.0
コカミドプロピルベタイン 10.0
ジステアリン酸グリコール 2.0
コカミドDEA 2.0
1,3−ブチレングリコール 3.0
エデト酸塩 0.1
(B)
αリポ酸(1mg/mL)水溶液 0.2
パラオキシ安息香酸メチル 0.2
クエン酸 適当量
精製水 残量
___________________________________________________________________________
合計(A)〜(B) 100.0 w/w%
茶飲料の製造
本発明の高濃度のαリポ酸水溶液を用い、茶飲料を製造した。高濃度のαリポ酸水溶液は、αリポ酸(2mg/mL)水溶液として、上記実施例5と同様に調製したものを用いた。
イオン交換水(pH5.9)800mLを70℃に加温し市販の緑茶(仕上茶)20gを添加した後1分毎に撹拌しながら3分30秒間抽出した。抽出液に高濃度のαリポ酸水溶液20mLを加えた。
その後粗濾過(150メッシュ)し、室温まで冷却し、ネル(50um)により濾過した。得られた抽出液にアスコルビン酸0.4gを添加し7,000rpm、10分遠心分離後、上清を微細濾過し、濾液にアスコルビン酸0.6gを加え、イオン交換水と重曹とを用いてBriX0.3、pH6.0 に調整して「加熱殺菌前調合液」を得た。この「加熱殺菌前調合液」を97℃まで熱した後、缶に充填し、急冷後121℃、7分間のレトルト殺菌を行い冷却して茶飲料を製造した。
清涼飲料の製造
本発明の高濃度のαリポ酸水溶液を用い、清涼飲料を製造した。高濃度のαリポ酸水溶液は、αリポ酸(2mg/mL)水溶液として、上記実施例5と同様に調製したものを用いた。
イオン交換水800mLを40℃に加温し高濃度のαリポ酸水溶液20mLを加え溶解した。砂糖48g、クエン酸ナトリウム2.4g及びビタミンC80mgを加えて溶解した。85℃に加熱殺菌した後、缶に充填し、117℃、26分間のレトルト殺菌を行い冷却して清涼飲料を製造した。
本発明により、容易かつ簡便なαリポ酸水溶液の製造方法を提供することができる。この方法により得られたαリポ酸水溶液は飲食品、化粧品及び医薬品等に幅広く利用することができる。
αリポ酸の溶解度を示した図である(実施例3)。 CoQ10を含有せしめたαリポ酸水溶液の安定性を示した図である(実施例4)。

Claims (7)

  1. 天然型シクロデキストリンと共にクエン酸Naを含有せしめることを特徴とする、1mg/mL以上のαリポ酸を含む高濃度のαリポ酸水溶液。
  2. さらに、CoQ10を含有せしめることを特徴とする請求項に記載のαリポ酸水溶液。
  3. 天然型シクロデキストリンと共にクエン酸Naを含有せしめることを特徴とする請求項1または2に記載の高濃度のαリポ酸水溶液の製造方法。
  4. 天然型シクロデキストリンと、クエン酸Naを組み合わせることを特徴とする、αリポ酸可溶化促進剤セット。
  5. 請求項1または2に記載の高濃度のαリポ酸水溶液を原料とする飲食品。
  6. 請求項1または2に記載の高濃度のαリポ酸水溶液を原料とする医薬品。
  7. 請求項1または2に記載の高濃度のαリポ酸水溶液を原料とする化粧品。
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