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JP3991651B2 - 熱硬化性組成物 - Google Patents

熱硬化性組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定のカチオン開環重合性基を有する化合物を含有する熱硬化性組成物に関するものである。本発明の組成物は、厚膜硬化性を有し、耐熱性、耐薬品性、電気特性等に優れ、イオン性不純物が少ない硬化物を与えるため、塗料・コーティング剤、シート状材料、封止材、接着剤、成形材料、注型材料等の材料として有用である。
【0002】
【従来の技術】
従来より、エポキシ樹脂は一般に硬化剤と組み合わせてエポキシ樹脂組成物として使用されており、電気・電子材料関係の分野においても、該組成物が賞用されてきた。しかしながら、近年の電気・電子材料分野の発展に伴い、エポキシ樹脂硬化物にも高度の性能が要求されるようになっており、特に耐熱性の向上が望まれている。エポキシ樹脂硬化物の耐熱性を向上させる方法としては、エポキシ樹脂と金属酸化物の複合体を用いる方法が提案されている(特開平8−100107号公報)。当該複合体は、エポキシ樹脂を部分的に硬化させた溶液に、金属アルコキシドを加えて均質ゾル溶液とした後、金属アルコキシドを重縮合することにより得られる。しかし、かかる複合体から得られる硬化物は、単なるエポキシ樹脂の硬化物に比して、ある程度耐熱性は向上するものの、複合体中の水や硬化時に生じる水、アルコールに起因して、硬化物中にボイド(気泡)が発生する。また、耐熱性を一層向上させる目的で金属アルコキシド量を増やすと、ゾル-ゲル硬化により生成するシリカが凝集して得られる硬化物の透明性が失われて白化するうえ、多量の金属アルコキシドをゾル化するために多量の水が必要となり、その結果として硬化物のそり、クラック等を招いてしまう。このような欠陥を改良するものとして、ビスフェノール型エポキシ樹脂の水酸基を加水分解性アルコキシシランで変性した、特定のシラン変性エポキシ樹脂をエポキシ樹脂硬化剤と配合してなる熱硬化性組成物が提案されている(特開2001−59013号公報)。しかしながら、該発明により提案されている組成物においても、無機成分の形成を完結するためにはシラン残基に結合した低級アルコールの脱離が必要となり、厚膜での硬化は困難であった。このような低級アルコールの悪影響を避けるために、ビスフェノール型エポキシ樹脂の比率を高くした場合、組成物の粘度は高いものとなり使用に際して有機溶剤による希釈が必須となり煩雑な乾燥作業が必要であった。
【0003】
一般に、酸無水物やフェノール類を用いたエポキシ樹脂の熱硬化速度は比較的に遅いものである事が知られている。硬化速度を改善できる熱硬化性組成物として、熱潜在性を有するオニウム塩を用いたエポキシ化合物の熱カチオン硬化技術は公知であり、各種エポキシ化合物、各種カチオン硬化開始剤の材料が広く検討されている。しかしながら、前述のオニウム塩を用いた熱カチオン硬化においては、硬化後に残存する強酸が悪影響を与える事が懸念されるため、その適応範囲は限定された用途にかぎられていた。電気用途においては、近年、電気機器の小型化により電気回路の多層化、高密化が進んでいる。これに伴いそれに使用されるエポキシ樹脂に対しては、耐熱性、低誘電率化、耐アーク性、耐トラッキング性が要求されている。イオン性残留物は、電気絶縁性の低下、誘電率、誘電正接値の上昇等、電気特性の著しい劣化を招く事が知られており、これらの電気特性向上のためには、イオン性残留物の低減が必須である。
【0004】
このような酸の残存による悪影響を改善できるものとして、特定の有機ケイ素化合物と有機系アルミニウム化合物からなるエポキシ化合物重合用触媒(特公昭57−57488,57489,57491,57492)、この触媒を配合してなるエポキシ樹脂組成物(特公昭57−57487)、および、有機系アルミニウム化合物の替わりにアルミナを配合したエポキシ樹脂組成物(特公昭57−57490)が開示されており公知である。該発明により開示されている硬化システムにおいては、組成物に熱潜在性を付与する方法としてアルコキシシラン類を使用する事が提案されている(特公昭57−57487,57488,57490,57492)。しかしながら、熱硬化の過程において脱離した低級アルコールがボイドを形成したり、硬化物中に残存し硬化物の諸特性を低減してしまう場合があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記の問題を解決し、塗料・コーティング剤、シート状材料、封止材、接着剤、成形材料、注型材料等の材料として有用な、有機溶剤を使用する事なくて厚膜硬化可能な、イオン性不純物が少なく、耐熱性に優れた硬化物を与える硬化性組成物を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明の熱硬化性組成物は、下記水酸基およびカチオン開環重合性基を有する化合物(A-1)とアルコキシシラン類(A-2)を脱アルコール反応させて得られる化合物であって、前記( A-2 )の有する半数以上のアルコキシ基と、前記( A-1 )の有する水酸基に由来する水素原子を除いた残基が置換されたものであるシラン化合物(A)、およびシラノール基との相互作用によりプロトン酸を生成することができるアルミニウム化合物(B)を含有することを特徴とするものである。
A-1 ):3−ヒドロキシメチル−3−メチルオキセタン若しくは3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン (A-1-1) または3−ヒドロキシメチル−3−メチルオキセタン若しくは3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタンの少なくとも一方のオキセタン化合物およびビスフェノール骨格を有するエポキシ化合物 (A-1-2)
請求項に記載の発明の熱硬化性組成物は、請求項1に記載の発明において、アルコキシシラン類(A-2)が、テトラアルコキシシランの縮合物であることを特徴とするものである。
請求項に記載の発明の熱硬化性組成物は、請求項1または2のいずれかに記載の発明において、シラン化合物(A)以外のカチオン開環重合性基を有する化合物(C)が添加されたものであることを特徴とするものである。
請求項に記載の発明の熱硬化性組成物は、請求項に記載の発明において、シラン化合物(A)以外のカチオン開環重合性基を有する化合物(C)が、一分子中に2個のオキセタニル基を有する脂肪族オキセタン化合物であることを特徴とするものである。
請求項に記載の発明の熱硬化性組成物は、請求項に記載の発明において、シラン化合物(A)以外のカチオン開環重合性基を有する化合物(C)が、脂環式エポキシ化合物であることを特徴とするものである。
以下、本発明について、更に詳しく説明する。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明のシラン化合物(A)は、一分子中に水酸基およびカチオン開環重合性基を有する化合物(A-1)とアルコキシシラン類(A-2)との脱アルコール反応により得られる。
A-1 )は、3−ヒドロキシメチル−3−メチルオキセタン若しくは3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン (A-1-1) または3−ヒドロキシメチル−3−メチルオキセタン若しくは3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタンの少なくとも一方のオキセタン化合物およびビスフェノール骨格を有するエポキシ化合物 (A-1-2) から選択される。
【0008】
水酸基およびカチオン開環重合性基を有する化合物(A-1)が、3−ヒドロキシメチル−3−メチルオキセタンまたは3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン(A-1-1)である場合は、得られる組成物が特に厚膜硬化性に優れ、硬化物の耐熱性が優れたものとなるために好ましい。
水酸基およびカチオン開環重合性基を有する化合物(A-1)が、ビスフェノール骨格を有するエポキシ化合物(ビスフェノール型エポキシ樹脂ともいう。)である場合は、得られる組成物が特に硬化物の耐熱性が優れたものとなるために好ましい。
【0009】
ビスフェノール型エポキシ樹脂は、ビスフェノール類とエピクロルヒドリンまたはβ−メチルエピクロルヒドリン等のハロエポキシドとの反応により得られるものである。使用されるビスフェノール類の例としては、ビスフェノールF、ビスフェノールA、ビスフェノールAが有する2個のメチル基がトリフルオロメチルで置換された化合物などが挙げられる。これらビスフェノール型エポキシ樹脂のなかでも、特に、ビスフェノール類として、ビスフェノールAを用いたビスフェノールA型エポキシ樹脂が、最も汎用され、低価格であり好ましい。
また、ビスフェノール型エポキシ樹脂は、アルコキシシラン類(A-2)と反応しうる水酸基を有するものである。ビスフェノール型エポキシ樹脂は、ビスフェノール単位を1個のみ有するものと2個以上有するものの混合物である場合もあり、前者は分子内に水酸基を有しておらず、後者は分子内に水酸基を1個以上有する。本発明で使用されるビスフェノール型エポキシ樹脂は、このような混合物であってもよい。なお、ビスフェノール型エポキシ樹脂のエポキシ当量は、ビスフェノール型エポキシ樹脂の構造により異なり、用途に応じたものを適宜に選択して使用できる。エポキシ当量が小さすぎるとエポキシ樹脂中のアルコール性水酸基が少ないため、アルコキシシラン類(A-2)との反応が円滑に行われず、得られるシラン化合物(A)が均一性の悪いものとなりやすく、さらに得られる硬化物が白濁する場合がある。したがって、ビスフェノール型エポキシ樹脂のエポキシ当量は180(g/eq)以上であるものが好ましい。一方、エポキシ当量が大きすぎると、エポキシ樹脂1分子中の水酸基の数が多くなり、アルコキシシラン類(A-2)との脱アルコール縮合反応時にゲル化しやすくなるため、ビスフェノール型エポキシ樹脂のエポキシ当量は1000(g/eq)以下であるものが好ましい。
【0010】
(A-1-1)と水酸基含有エポキシ樹脂を併用した (A-1-2) の場合、組成物の流動性や硬化物の物性を制御することができる。これらを併用する場合、その配合比は任意のものとする事が出来るが、硬化性組成物を比較的低粘度で作業性のよいものとするためには、オキセタンアルコールの配合比
が50質量%以上である事が好ましい。
【0011】
アルコキシシラン類(A-2)としては、一般的にゾル−ゲル法に用いられているものを使用できる。たとえば、一般式:R1 pSi(OR24-p(式中、pは0または1の整数を示す。R1は、炭素原子に直結した官能基を持っていてもよい低級アルキル基、アリール基又は不飽和脂肪族残基を示す。R2は水素原子または低級アルキル基を示し、R2同士はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)で表される化合物またはこれらの部分縮合物等を例示できる。上記官能基としては、例えば、ビニル基、メルカプト基、エポキシ基、グリシドキシ基等を挙げることができる。また、低級アルキル基とは、炭素数6以下の直鎖または分岐鎖のアルキル基を示す。このようなアルコキシシラン類(A-2)の具体的としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン類;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン等のトリアルコキシシラン類、またはこれらの部分縮合物等があげられる。アルコキシシラン類(A-2)としては、例示のものを特に制限なく使用できる。
【0012】
これらのなかでもテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等のテトラアルコキシシラン類またはこれらの部分縮合物等が好ましい。特に、テトラメトキシシランあるいはテトラエトキシシランの部分縮合物であるポリ(テトラメトキシシラン)あるいはポリ(テトラエトキシシラン)が好ましい。また、当該ポリ(テトラアルコキシシラン)の数平均分子量は260〜1200程度のものが好ましい。ポリ(テトラアルコキシシラン)が、構成アルコキシシラン単位の平均繰り返し単位数の値が10を超えると、溶解性が悪くなるため好ましくない。
【0013】
本発明のシラン化合物(A)は、前記の、一分子中に水酸基およびカチオン開環重合性基を有する化合物(A-1)とアルコキシシラン類(A-2)を脱アルコール縮合反応させる事により得られる。一分子中に水酸基およびカチオン開環重合性基を有する化合物(A-1)とアルコキシシラン類(A-2)の使用割合は、 A-2 )の有する半数以上のアルコキシ基と、前記( A-1 )の有する水酸基に由来する水素原子を除いた残基が置換されたものとなるようにする
これは、シラン化合物(A)が、反応性基を有していない低級アルコキシ基すなわちアルコキシシラン類(A-2)に由来するメトキシ基またはエトキシ基などの低級アルコキシ基を多く有するものである場合は、組成物を硬化させるときにシラノール基を生成するとともにメタノールまたはエタノールなどの揮発性化合物を生成しやすいため発泡することもある。したがって、シラン化合物(A)は、アルコキシシラン類(A-2)の有する半数以上のアルコキシ基が、水酸基およびカチオン開環重合性基を有する化合物( A-1 )の有する水酸基に由来する水素原子を除いた残基によって置換されたものとする。
【0014】
なお、置換反応によりシラン化合物(A)に導入された水酸基およびカチオン開環重合性基を有する化合物(A-1)の有する水酸基に由来する水素原子を除いた残基のうちの一部は、組成物を硬化させるときに水酸基およびカチオン開環重合性基を有する化合物(A-1)に転化され、同時にシラノール基を生成するが、該(A-1)成分は硬化反応するため、発泡の原因となることはない。このような反応性基を有していない低級アルコキシ基の濃度が小さく制御されたシラン化合物(A)を主成分とする組成物は、組成物を厚膜で硬化させる場合にも好適に利用できる。
【0015】
かかるシラン化合物(A)の製造は、たとえば、前記各成分を仕込み、加熱して生成するアルコールを留去しながら脱アルコール縮合反応することにより、行なわれる。反応温度は50〜250℃程度、好ましくは80〜200℃であり、全反応時間は1〜15時間程度である。この反応は、アルコキシシラン類(A-2)の重縮合反応を防止するため、および生成物が着色するのを防止するため実質的に無水条件下で行うのが好ましい。
【0016】
また、上記の脱アルコール縮合反応は無触媒で行う事が好ましいが、反応促進のために従来公知の触媒の内、オキセタン環、および、エポキシ環などのカチオン開環重合性基の開環反応を促進しないものを使用することができる。具体的には、ジブチル錫ジラウレート、オクチル酸錫等が挙げられる。
また、上記反応は溶剤中でも、無溶剤でも行うこともできる。溶剤としては、A-1およびA-2成分を溶解し、且つこれらに対し非活性である有機溶剤であれば特に制限はない。
【0017】
アルミニウム化合物(B)は、シラノール基との相互作用によりプロトン酸を発生させるための成分である。
(A)成分であるシラン化合物が加熱されるとシラノール基を生成し、該シラノール基とアルミニウム化合物(B)との相互作用によりプロトン酸が生成する。
アルミニウム化合物(B)としては、特公昭57−57488号公報および特公昭57489号公報に記載の有機アルミニウム化合物や、特公昭57−57491号公報および特公昭57492号公報に記載のアルミニウム錯体およびアルミナなどの無機アルミニウム化合物が挙げられる。
【0018】
具体的には、例えば、アルミニウムトリメトキシド、アルミニウムトリプロポキシド、アルミニウムトリブトキシド等のアルコキシド類、塩化アルミニウム、フッ化アルミニウム等のハロゲン化物類、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(プロピルアセテート)アルミニウム、トリス(ブチルアセトアセテート)アルミニウム、プロポキシビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム、トリス(プロピオニルアセトナト)アルミニウム、トリス(アセトアセトナト)アルミニウム等のキレート化合物、アルミナ等が挙げられる。これらのものは1種もしくは2種以上組合せて使用することができる。
【0019】
アルミニウム化合物(B)成分の配合量は、シラン化合物(A)成分の100質量部に対して約0.001〜10質量部、好ましくは約0.01〜1質量部の範囲が好適である。配合割合が約0.001重量部を下回ると硬化性が低下し、約10重量部を上回ると貯蔵安定性、耐黄変性等が低下するので好ましくない。
【0020】
本発明の熱硬化性組成物は、シラン化合物(A)およびシラノール基との相互作用によりプロトン酸を生成することができるアルミニウム化合物(B)を含有するものであるが、目的に応じてシラン化合物(A)以外のカチオン開環重合性基を有する化合物(C)が添加されたものであってもよい。
シラン化合物(A)以外のカチオン開環重合性基を有する化合物(C)としては、前記ビスフェノール型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、フタル酸、ダイマー酸などの多塩基酸類およびエピクロロヒドリンを反応させて得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂、オレフィン結合を過酢酸などの過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂および脂環式エポキシ樹脂などを用いる事が出来る。また、分子中にオキセタン環を有する化合物(オキセタン樹脂)も用いる事が出来る。もちろんこれらを併用することもできる。
シラン化合物(A)以外のカチオン開環重合性基を有する化合物(C)の使用量は特に制限はないが、シラン化合物(A)100質量部を基準として0.1〜1000質量部であることが好ましい。
【0021】
具体的な好ましいC成分の例として、一分子中に2個のオキセタニル基を有する脂肪族オキセタン化合物である、ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル)、二官能脂環式エポキシド化合物である、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等が挙げられる。
【0022】
本発明の熱硬化性組成物は、必要に応じてさらに次の成分が添加配合されたものであってもよい。
(1) 粉末状の補強剤や充填剤、例えば酸化マグネシウムなどの金属酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの金属炭酸塩、ケイソウ土粉、塩基性ケイ酸マグネシウム、焼成クレイ、微粉末シリカ、溶融シリカ、結晶シリカなどのケイ素化合物、金属水酸化物、その他、カオリン、マイカ、石英粉末、グラファイト、二硫化モリブデン等、さらに繊維質の補強剤や充填剤、たとえばガラス繊維、セラミック繊維、カーボンファイバー、炭化ケイ素繊維、ボロン繊維、ポリエステル繊維及びポリアミド繊維等である。これらは本発明の組成物100重量部に対して、10〜900重量部配合される。
(2) 着色剤、顔料、難燃剤、例えば二酸化チタン、鉄黒、モリブデン赤、紺青、群青、カドミウム黄、カドミウム赤、三酸化アンチモン、赤燐、ブロム化合物及びトリフェニルホスフェイト等である。これらは本発明の組成物100重量部に対して、0.1〜20重量部配合される。
(3) さらに、最終的な接着層、成形品などにおける樹脂の性質を改善する目的で種々の合成樹脂を配合することができる。例えば、フェノール樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、フッ素樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂等の1種又は2種以上の組み合わせを挙げることができる。これら樹脂類の配合割合は、本発明の樹脂組成物の本来の性質を損なわない範囲の量、すなわち本発明の組成物100重量部に対して、50重量部以下が好ましい。
【0023】
本発明の組成物及び任意成分の配合手段としては、加熱溶融混合、ロール、ニーダーによる溶融混練、適当な有機溶剤を用いての湿式混合及び乾式混合等が挙げられる。
本発明の組成物は、熱により硬化され、硬化温度は50〜300℃が好ましい。熱により重合を行う場合は一般的に知られた方法により加熱する事ができ、その条件などは特に限定されるものではない。
【0024】
【実施例】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。なお、各例中の部は質量部を意味する。
【0025】
製造例1 シラン変成オリゴマー(AS−1)
攪拌機、温度計及び蒸留装置を取り付けた300mLの四つ口ガラスフラスコに、3―エチル―3−(ヒドロキシメチル)オキセタン(東亞合成株式会社製アロンオキセタンOXT−101)100.0g(0.86モル)、テトラメトキシシランオリゴマー(三菱化学株式会社製 MKCシリケート MS51)30gを仕込み、80〜150℃にオイルバスで加熱攪拌し、メタノールを留出させながら5時間反応させた。さらに減圧下に未反応の3―エチル―3−(ヒドロキシメチル)オキセタンを留去しながら150℃で2時間加熱してシラン変成オリゴマーAS−1を得た。最終生成物の収量は53gであった。
1H-NMRから算出したオキセタニル基とメトキシ基のモル比は、98:2であった。
【0026】
製造例2 シラン変成オリゴマー(AS−2)
製造例1と同様の反応装置にエポトートYD−011(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、東都化成株式会社製)を5g、OXT−101を100.0g(0.86モル)およびMS51を30g仕込み、80〜150℃にオイルバスで加熱攪拌し、メタノールを留出させながら5時間反応させた。さらに減圧下に未反応の3―エチル―3−(ヒドロキシメチル)オキセタンを留去しながら150℃で2時間加熱してシラン変成オリゴマーAS−2を得た。最終生成物の収量は57gであった。
【0027】
実施例1および2
製造例1、2により合成したシラン変成オリゴマー(AS−1またはAS−2)100部、および、アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)0.05部を均一になるよう、室温で充分攪拌混合した後、減圧脱泡して、硬化性組成物を得た。次いで、上記組成物を容量9mlのガラス製サンプル瓶中に3g注入し、150℃のオーブン中で2時間硬化させ、それぞれの硬化物を得た。
【0028】
比較例1
エピコートE−828(油化シェルエポキシ製ビスフェノールA型エポキシ樹脂)80部、テトラメトキシシランオリゴマー(三菱化学株式会社製 MKCシリケート MS51)20部、および、アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)0.05部を均一になるよう、室温で充分攪拌混合した後、減圧脱泡して、硬化性組成物を得た。次いで、実施例1と同様な条件で硬化することにより硬化物を得た。
【0029】
比較例2
エピコートE−828を100部およびCP−66(旭電化製スルフォニウム塩系熱カチオン開始剤)2部を用いる以外は、実施例1と同様の操作を行い硬化物を得た。
【0030】
比較例3
製造例2により合成したAS−2を100部およびジブチル錫ジラウリレート(BTDL)0.05部を用いる以外は、実施例1と同様の操作を行い硬化を試みたが硬化しなかった。
【0031】
上記実施例1、2および比較例1〜3の配合組成、150℃での熱硬化物の厚膜硬化性、硬化物のイオン性物質の抽出結果を表1に示した。なお、評価は以下に示した方法で行った。
厚膜硬化性:組成物を9mlのガラス製サンプル瓶中に3g注入し、150℃のオーブン中で2時間硬化させ、硬化物の均一性を目視で評価した。発泡の無い物を○とし、発泡したものを×とした。
イオン性物質の抽出:上記硬化物1gをすり潰した後10gの水と共にフラスコ中にいれ、100℃のオイルバス中で5時間抽出を行った。冷却後、水のpHを測定し、中性のものを○、6以下のものを×とした。
【0032】
【表1】
Figure 0003991651
【0033】
実施例3〜6
製造例1により合成したシラン変成オリゴマーAS−1、OXT−221(商品名、東亞合成製:ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル)、UVR−6110(商品名、ユニオンカーバイド製:3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、および、アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)を表2に示した組成にて室温で充分攪拌混合した後、減圧脱泡して、硬化性樹脂組成物を得た。
実施例1と同様な条件で硬化することにより硬化物を得た。
また、上記組成物を型枠内に流し込み、80℃で1時間、100℃で1時間、さらに200℃で2時間オーブン中硬化することにより粘弾性測定用の試験片を得た。
【0034】
比較例4〜7
表2に示したように、比較例3、4ではUVR−6110、MS51、アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)、また、比較例5、6ではエピコートE−828、UVR−6110およびCP−66を用いる以外は、実施例3と同様の操作を行い、硬化物を得た。
【0035】
上記実施例3〜6および比較例4〜7の組成物より得られた硬化物の粘弾性特性を下記の方法により測定した。
配合組成および粘弾性測定の貯蔵弾性率(E’)の200、250℃における測定結果を表2に、また、粘弾性スペクトルを図1および2に示した。
粘弾性測定:JIS K7198に従い、厚さ1mmの硬化物をセイコーインスツルメント社製のDMS−6100型動的粘弾性測定装置を用いて10Hzの周波数において引っ張り振動モードにて測定した。
【0036】
【表2】
Figure 0003991651
【0037】
表1に示したように、実施例1および2に示された組成物は、厚膜硬化性に優れ、また、硬化物中のイオン性残留物は少ないものであった。しかしながら、比較例1に示した組成物は加熱時に脱離したメタノール起因と考えられる発泡が生じ、比較例2にではイオン性残留物が見られた。
表2および図1、2から明らかなように、実施例3〜5の組成物より得られた硬化物は、200℃および250℃においても貯蔵弾性率は高い値を維持していたが、比較例4〜7の組成物からの硬化物はこの温度において貯蔵弾性率が大きく低下していた。
【0038】
【発明の効果】
実施例からも明らかなように、本発明により提供される熱硬化性組成物は、厚膜硬化性を有し、耐熱性、耐薬品性、電気特性等に優れ、イオン性不純物が少ない硬化物を与える事が可能であり、広範な用途に応用展開が可能である。特に、塗料・コーティング剤、シート状材料、封止材、接着剤、成形材料、注型材料等の材料として電気・電子分野等の用途において有利に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例3〜5で得られた硬化物の貯蔵弾性率測定結果を示すグラフ。
【図2】 比較例4〜7で得られた硬化物の貯蔵弾性率測定結果を示すグラフ。

Claims (5)

  1. 下記水酸基およびカチオン開環重合性基を有する化合物(A-1)とアルコキシシラン類(A-2)を脱アルコール反応させて得られる化合物であって、前記( A-2 )の有する半数以上のアルコキシ基と、前記( A-1 )の有する水酸基に由来する水素原子を除いた残基が置換されたものであるシラン化合物(A)、およびシラノール基との相互作用によりプロトン酸を生成することができるアルミニウム化合物(B)を含有する熱硬化性組成物。
    A-1 ):3−ヒドロキシメチル−3−メチルオキセタン若しくは3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン (A-1-1) または3−ヒドロキシメチル−3−メチルオキセタン若しくは3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタンの少なくとも一方のオキセタン化合物およびビスフェノール骨格を有するエポキシ化合物 (A-1-2)
  2. アルコキシシラン類(A-2)が、テトラアルコキシシランの縮合物である請求項1に記載の熱硬化性組成物。
  3. シラン化合物(A)以外のカチオン開環重合性基を有する化合物(C)が添加されたものである請求項1または2に記載の熱硬化性組成物。
  4. シラン化合物(A)以外のカチオン開環重合性基を有する化合物(C)が、一分子中に2個のオキセタニル基を有する脂肪族オキセタン化合物である請求項に記載の熱硬化性組成物。
  5. シラン化合物(A)以外のカチオン開環重合性基を有する化合物(C)が、脂環式エポキシ化合物である請求項に記載の熱硬化性組成物。
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