JP3986292B2 - 薄膜磁気ヘッドの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気ディスク装置、磁気テープ装置等の磁気記録再生装置に使用される薄膜磁気ヘッドおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
磁気記録再生装置における記録方式には、信号磁化の向きを記録媒体の面内方向(長手方向)とする長手磁気記録方式と、信号磁化の向きを記録媒体の面に対して垂直な方向とする垂直磁気記録方式とがある。垂直磁気記録方式は、長手磁気記録方式に比べて、記録媒体の熱揺らぎの影響を受けにくく、高い線記録密度を実現することが可能であると言われている。
【0003】
長手磁気記録方式用の薄膜磁気ヘッドは、一般的に、記録媒体に対向する媒体対向面(エアベアリング面)と、互いに磁気的に連結され、媒体対向面側においてギャップ部を介して互いに対向する磁極部分を含む第1および第2の磁性層と、少なくとも一部が第1および第2の磁性層の間に、第1および第2の磁性層に対して絶縁された状態で設けられた薄膜コイルとを備えた構造になっている。
【0004】
一方、垂直磁気記録方式用の薄膜磁気ヘッドには、長手磁気記録方式用の薄膜磁気ヘッドと同様の構造のリングヘッドと、一つの主磁極によって記録媒体に対して垂直方向の磁界を印加する単磁極ヘッドとがある。単磁極ヘッドを用いる場合には、記録媒体としては一般的に、基板上に軟磁性層と磁気記録層とを積層した2層媒体が用いられる。
【0005】
ところで、薄膜磁気ヘッドでは、トラック密度を上げるためにトラック幅の縮小が望まれている。そして、記録媒体に印加される磁界の強度を低下させることなくトラック幅を縮小するために、磁極部分を含む磁性層を、磁極部分と、この磁極部分に対して磁気的に接続されたヨーク部分とに分け、磁極部分の飽和磁束密度をヨーク部分の飽和磁束密度よりも大きくした薄膜磁気ヘッドも種々提案されている。
【0006】
上述のように、磁極部分を含む磁性層を、磁極部分とヨーク部分とに分けた構造の薄膜磁気ヘッドの例は、特開2000−57522号公報、特開2000−67413号公報、特開平11−102506号公報等に示されている。
【0007】
上記の各公報に示された薄膜磁気ヘッドでは、いずれも、第1の磁性層と第2の磁性層のうち、記録媒体の進行方向の前側(薄膜磁気ヘッドを含むスライダにおける空気流出端側)に配置された第2の磁性層が、磁極部分とヨーク部分とに分けられている。
【0008】
また、上記の各公報に示された薄膜磁気ヘッドでは、いずれも、ヨーク部分は、第1の磁性層と第2の磁性層との磁気的な接続部分から磁極部分まで、コイルを迂回するように配置されている。
【0009】
特開2000−57522号公報に示された薄膜磁気ヘッドでは、第2の磁性層は、主磁性膜と補助磁性膜とを有している。このヘッドでは、主磁性膜の媒体対向面側の一部によって磁極部分が構成され、主磁性膜の他の部分と補助磁性膜とによってヨーク部分が構成されている。
【0010】
特開2000−67413号公報に示された薄膜磁気ヘッドでは、第2の磁性層は、磁極部分を含む磁極部分層と、ヨーク部分を含むヨーク部分層とを有している。磁極部分層は、その後端面(媒体対向面とは反対側の面)、側面(媒体対向面およびギャップ部の面に垂直な面)および上面(ギャップ部とは反対側の面)でヨーク部分層と磁気的に接続されている。
【0011】
特開平11−102506号公報に示された薄膜磁気ヘッドでは、第2の磁性層は、磁極部分を含む磁極部分層と、ヨーク部分を含むヨーク部分層とを有している。磁極部分層は、その側面および上面でヨーク部分層と磁気的に接続されている。
【0012】
一方、垂直磁気記録方式用の薄膜磁気ヘッドに関しては、「日経エレクトロニクス2000年9月25日号(no.779),p.206」における図2に、単磁極ヘッドの構造の一例が示されている。このヘッドでは、主磁極を含む磁性層は単層になっている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
例えば60ギガビット/(インチ)2以上のような大きな面記録密度を有する磁気記録再生装置を実現しようとする場合には、垂直磁気記録方式を採用することが有望視されている。しかしながら、垂直磁気記録方式に適した薄膜磁気ヘッドであって、60ギガビット/(インチ)2以上のような大きな面記録密度を有する磁気記録再生装置を実現するための性能を有するヘッドは実現できていない。それは、従来の薄膜磁気ヘッドが以下で説明するような問題点を有しているためである。
【0014】
まず、前記の各公報に示された薄膜磁気ヘッドは、いずれも、構造上、長手磁気記録方式用のヘッドであり、垂直磁気記録方式には適していない。具体的に説明すると、各公報に示された薄膜磁気ヘッドでは、いずれも、ギャップ部の厚みが小さいと共にスロートハイトが短く、ヨーク部分はコイルを迂回するように配置された構造であるため、磁極部分より発生される、記録媒体の面に垂直な方向の磁界が小さいという問題点がある。また、前記の各公報に示された薄膜磁気ヘッドでは、いずれも、第2の磁性層の磁極部分をパターニングするためのエッチングや磁極部分の形成後の工程の影響で、磁極部分のギャップ部とは反対側のエッジが湾曲しやすい。そのため、前記の各公報に示された薄膜磁気ヘッドでは、記録媒体におけるビットパターン形状に歪みが生じ、そのため線記録密度を高めることが難しいという問題点がある。また、前記の各公報に示された薄膜磁気ヘッドでは、いずれも、ヨーク部分はコイルを迂回するように配置された構造であるため、磁路長が長くなり、そのため高周波特性が悪化するという問題点がある。
【0015】
また、特開平11−102506号公報に示された薄膜磁気ヘッドでは、磁極部分層は、その側面および上面でのみヨーク部分層と磁気的に接続されている。そのため、このヘッドでは、磁極部分層とヨーク部分層との磁気的な接続部分の面積が小さく、そのため、この接続部分において磁束が飽和して、媒体対向面において磁極部分より発生される磁界が小さくなるという問題点がある。
【0016】
一方、「日経エレクトロニクス2000年9月25日号(no.779),p.206」における図2に示された薄膜磁気ヘッドでは、主磁極を含む磁性層は単層になっている。このヘッドでは、媒体対向面における磁性層の厚みを小さくするために、磁性層全体が薄くなっている。そのため、このヘッドでは、磁性層の途中で磁束が飽和しやすく、媒体対向面において主磁極より発生される磁界が小さくなるという問題点がある。また、このヘッドでは、主磁極を平坦化する必要性を考えたとき、磁性層全体を平坦化しなければならず、そのため、このヘッドでは、磁路は四角く、長くなっている。このような構造は、磁界強度および高周波特性の観点から非効率的である。
【0017】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、磁極部分より発生される、記録媒体の面に垂直な方向の磁界を大きくでき、且つ磁路長を短縮して高周波特性を向上させることができるようにした薄膜磁気ヘッドおよびその製造方法を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明の薄膜磁気ヘッドは、
記録媒体に対向する媒体対向面と、
記録媒体の進行方向の前後に所定の間隔を開けて互いに対向するように配置された磁極部分を含む第1および第2の磁性層と、
非磁性材料よりなり、第1の磁性層と第2の磁性層との間に設けられたギャップ層と、
媒体対向面から離れた位置において第1の磁性層と第2の磁性層とを磁気的に連結する連結部と、
少なくとも一部が第1および第2の磁性層の間に、第1および第2の磁性層に対して絶縁された状態で設けられた薄膜コイルとを備え、
薄膜コイルの少なくとも一部の第2の磁性層側の面は、媒体対向面におけるギャップ層の第2の磁性層側の端部の位置および連結部の第2の磁性層側の端部の位置よりも第1の磁性層側の位置に配置され、
第2の磁性層は、磁極部分を含み、媒体対向面における幅がトラック幅を規定する磁極部分層と、ヨーク部分となるヨーク部分層とを有し、
磁極部分層の飽和磁束密度は、ヨーク部分層の飽和磁束密度以上であり、
ヨーク部分層は、連結部の第2の磁性層側の端部と磁極部分層の媒体対向面とは反対側の端面とを磁気的に接続するものである。
【0019】
本発明の薄膜磁気ヘッドでは、第2の磁性層が磁極部分層とヨーク部分層とを有し、ヨーク部分層は、磁極部分層に磁束を導くための十分な体積を有し、また、磁極部分層の飽和磁束密度がヨーク部分層の飽和磁束密度以上であることから、第2の磁性層の途中における磁束の飽和を防止することができる。また、本発明では、薄膜コイルの少なくとも一部の第2の磁性層側の面が、媒体対向面におけるギャップ層の第2の磁性層側の端部の位置および連結部の第2の磁性層側の端部の位置よりも第1の磁性層側の位置に配置され、ヨーク部分層は、連結部の第2の磁性層側の端部と磁極部分層の媒体対向面とは反対側の端面とを磁気的に接続するので、ヨーク部分層は、連結部と磁極部分層との間に短い磁気経路で且つ強い磁気的結合を形成することができる。これらのことから、本発明では、磁極部分より発生される、記録媒体の面に垂直な方向の磁界を大きくし、且つ磁路長を短縮して高周波特性を向上させることが可能になる。
【0020】
本発明の薄膜磁気ヘッドにおいて、第1の磁性層は記録媒体の進行方向の後側に配置され、第2の磁性層は記録媒体の進行方向の前側に配置されてもよい。
【0021】
また、本発明の薄膜磁気ヘッドにおいて、ヨーク部分層は、連結部の第2の磁性層側の端部と磁極部分層の媒体対向面とは反対側の端面との間を結ぶ直線状の磁気経路が形成されるような形状を有している。
【0022】
また、本発明の薄膜磁気ヘッドにおいて、媒体対向面における磁極部分層と第1の磁性層との間の距離は、連結部の厚みよりも大きい。この場合、ヨーク部分層は、磁極部分層の媒体対向面とは反対側の端面との接続位置から連結部との接続位置にかけて、徐々に第1の磁性層に近づいていてもよい。
【0023】
また、本発明の薄膜磁気ヘッドにおいて、ヨーク部分層の少なくとも一部は、第1の磁性層側に突出する弧状に形成されていてもよい。
【0024】
また、本発明の薄膜磁気ヘッドにおいて、ヨーク部分層は、磁極部分層の媒体対向面とは反対側の端面と磁極部分層の幅方向の両側面とに磁気的に接続されていてもよい。
【0025】
また、本発明の薄膜磁気ヘッドにおいて、ヨーク部分層の媒体対向面側の端部は、媒体対向面から離れた位置に配置されていてもよい。
【0026】
また、本発明の薄膜磁気ヘッドにおいて、磁極部分層のヨーク部分層と接する部分の幅は、磁極部分層の媒体対向面における幅よりも大きくてもよい。
【0027】
また、本発明の薄膜磁気ヘッドにおいて、媒体対向面から磁極部分層の媒体対向面とは反対側の端面までの長さは2μm以上であってもよい。
【0028】
また、本発明の薄膜磁気ヘッドにおいて、更に、磁極部分層のギャップ層とは反対側の面に接する非磁性層を備えていてもよい。この場合、非磁性層は媒体対向面に露出していてもよい。また、ヨーク部分層の一部は、非磁性層を介して磁極部分層のギャップ層とは反対側の面に隣接し、非磁性層を介して磁極部分層に磁気的に接続されていてもよい。また、非磁性層は、磁極部分層を構成する材料よりもドライエッチングに対するエッチング速度が小さい材料よりなっていてもよい。
【0029】
また、本発明の薄膜磁気ヘッドにおいて、薄膜コイルの少なくとも一部は、第1の磁性層と第2の磁性層の中間の位置よりも第1の磁性層に近い位置に配置されていてもよい。
【0030】
また、本発明の薄膜磁気ヘッドにおいて、ギャップ層は、形成時に流動性を有する材料よりなり、少なくとも薄膜コイルの少なくとも一部の巻線間に充填される第1の部分と、第1の部分よりも耐食性、剛性および絶縁性が優れた材料よりなり、薄膜コイルの少なくとも一部および第1の部分を覆い、第1の磁性層、第2の磁性層および連結部に接する第2の部分とを有していてもよい。この場合、第1の部分は、有機系の非導電性非磁性材料またはスピンオングラス膜よりなっていてもよい。また、第2の部分は、無機系の非導電性非磁性材料よりなっていてもよい。
【0031】
また、本発明の薄膜磁気ヘッドにおいて、更に、再生素子としての磁気抵抗効果素子を備えていてもよい。この場合、更に、媒体対向面側の一部が磁気抵抗効果素子を挟んで対向するように配置された、磁気抵抗効果素子をシールドするための第1および第2のシールド層を備えていてもよい。また、第1の磁性層は第2のシールド層を兼ねていてもよい。
【0032】
また、本発明の薄膜磁気ヘッドは、垂直磁気記録方式に用いられるものであってもよい。
【0033】
本発明の薄膜磁気ヘッドの製造方法は、記録媒体に対向する媒体対向面と、記録媒体の進行方向の前後に所定の間隔を開けて互いに対向するように配置された磁極部分を含む第1および第2の磁性層と、非磁性材料よりなり、第1の磁性層と第2の磁性層との間に設けられたギャップ層と、媒体対向面から離れた位置において第1の磁性層と第2の磁性層とを磁気的に連結する連結部と、少なくとも一部が第1および第2の磁性層の間に、第1および第2の磁性層に対して絶縁された状態で設けられた薄膜コイルとを備え、第2の磁性層は、磁極部分を含み、媒体対向面における幅がトラック幅を規定する磁極部分層と、ヨーク部分となるヨーク部分層とを有し、磁極部分層の飽和磁束密度がヨーク部分層の飽和磁束密度以上である薄膜磁気ヘッドを製造する方法であって、
第1の磁性層を形成する工程と、
薄膜コイルの少なくとも一部の第2の磁性層側の面が、媒体対向面におけるギャップ層の第2の磁性層側の端部の位置および連結部の第2の磁性層側の端部の位置よりも第1の磁性層側の位置に配置されるように、第1の磁性層の上にギャップ層、連結部および薄膜コイルを形成する工程と、
ギャップ層および連結部の上に第2の磁性層を形成する工程とを備え、
第2の磁性層を形成する工程は、
ギャップ層の上に磁極部分層を形成する工程と、
ヨーク部分層によって連結部の第2の磁性層側の端部と磁極部分層の媒体対向面とは反対側の端面とが磁気的に接続されるように、ギャップ層および連結部の上にヨーク部分層を形成する工程とを含むものである。
【0034】
本発明の薄膜磁気ヘッドの製造方法では、第2の磁性層が磁極部分層とヨーク部分層とを有し、ヨーク部分層は、磁極部分層に磁束を導くための十分な体積を有し、また、磁極部分層の飽和磁束密度がヨーク部分層の飽和磁束密度以上となることから、第2の磁性層の途中における磁束の飽和を防止することができる。また、本発明では、薄膜コイルの少なくとも一部の第2の磁性層側の面が、媒体対向面におけるギャップ層の第2の磁性層側の端部の位置および連結部の第2の磁性層側の端部の位置よりも第1の磁性層側の位置に配置され、ヨーク部分層は、連結部の第2の磁性層側の端部と磁極部分層の媒体対向面とは反対側の端面とを磁気的に接続するので、ヨーク部分層は、連結部と磁極部分層との間に短い磁気経路で且つ強い磁気的結合を形成することができる。これらのことから、本発明では、磁極部分より発生される、記録媒体の面に垂直な方向の磁界を大きくし、且つ磁路長を短縮して高周波特性を向上させることが可能になる。
【0035】
本発明の薄膜磁気ヘッドの製造方法において、磁極部分層を形成する工程は、ギャップ層および連結部の上に、磁極部分層を構成する材料よりなる被エッチング層を形成する工程と、被エッチング層をドライエッチングによって選択的にエッチングして、磁極部分層の外形を決定すると共に連結部を露出させる工程とを含んでいてもよい。
【0036】
この場合、磁極部分層を形成する工程は、更に、被エッチング層を形成する工程の後で、研磨により、被エッチング層の上面を平坦化する工程を含んでいてもよい。また、磁極部分層を形成する工程は、更に、被エッチング層を形成する工程の前に、研磨により、被エッチング層の下地を平坦化する工程を含んでいてもよい。また、磁極部分層を形成する工程は、更に、被エッチング層を形成する工程の後で、被エッチング層の上に非磁性層を形成する工程と、非磁性層の上に、磁極部分層の形状に対応したマスクを形成する工程とを含み、被エッチング層をエッチングする工程は、マスクを用いて、非磁性層および被エッチング層をエッチングしてもよい。マスクを形成する工程は、非磁性層の上に、磁極部分層の形状に対応した空隙部を有するレジストフレームを形成し、このレジストフレームの空隙部内にマスクを形成してもよい。
【0037】
また、本発明の薄膜磁気ヘッドの製造方法において、ヨーク部分層は電気めっき法によって形成されてもよい。この場合、ヨーク部分層を形成する工程は、磁極部分層における媒体対向面側の一部を覆うレジストカバーを形成する工程と、レジストカバー、磁極部分層、ギャップ層および連結部の上に、電気めっき法のための電極層を形成する工程と、電極層を用いて、電気めっき法によってヨーク部分層を形成する工程とを含んでもよい。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の一実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの構成を示す断面図である。なお、図1は媒体対向面および基板の面に垂直な断面を示している。また、図1において記号Tで示す矢印は、記録媒体の進行方向を表している。図2は図1に示した薄膜磁気ヘッドの要部を示す斜視図である。図3は図2における磁極部分の近傍を拡大して示す斜視図である。図4は図1に示した薄膜磁気ヘッドの媒体対向面の一部を示す正面図である。図5は図4における磁極部分層および非磁性層を拡大して示す正面図である。
【0039】
図1に示したように、本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドは、アルティック(Al2O3・TiC)等のセラミック材料よりなる基板1と、この基板1の上に形成されたアルミナ(Al2O3)等の絶縁材料よりなる絶縁層2と、この絶縁層2の上に形成された磁性材料よりなる下部シールド層3と、この下部シールド層3の上に、絶縁層4を介して形成された再生素子としてのMR(磁気抵抗効果)素子5と、このMR素子5の上に絶縁層4を介して形成された磁性材料よりなる上部シールド層6とを備えている。下部シールド層3および上部シールド層6の厚みは、それぞれ例えば1〜2μmである。
【0040】
MR素子5の一端部は、媒体対向面(エアベアリング面)ABSに配置されている。MR素子5には、AMR(異方性磁気抵抗効果)素子、GMR(巨大磁気抵抗効果)素子あるいはTMR(トンネル磁気抵抗効果)素子等の磁気抵抗効果を示す感磁膜を用いた素子を用いることができる。
【0041】
薄膜磁気ヘッドは、更に、上部シールド層6の上に形成された非磁性層7と、この非磁性層7の上に形成された磁性材料よりなる第1の磁性層8と、この第1の磁性層8の上において薄膜コイル10を形成すべき位置に形成された絶縁層9Aと、この絶縁層9Aの上に形成された薄膜コイル10と、少なくとも薄膜コイル10の巻線間に充填された絶縁層9Bとを備えている。絶縁層9Aには、媒体対向面ABSから離れた位置において、コンタクトホール9aが形成されている。
【0042】
第1の磁性層8の厚みは例えば1〜2μmである。第1の磁性層8を構成する磁性材料は、例えば鉄−ニッケル系合金すなわちパーマロイでもよいし、後述するような高飽和磁束密度材でもよい。
【0043】
絶縁層9Aは、アルミナ等の非導電性且つ非磁性の材料よりなり、その厚みは例えば0.1〜1μmである。
【0044】
薄膜コイル10は、銅等の導電性の材料よりなり、その巻線の厚みは例えば0.3〜2μmである。薄膜コイル10の巻数は任意であり、巻線のピッチも任意である。ここでは、一例として、薄膜コイル10の巻線の厚みを1.3μm、巻線の幅を0.8μm、巻線のピッチを1.3μm、巻数を8とする。
【0045】
絶縁層9Bは、形成時に流動性を有する非導電性且つ非磁性の材料よりなる。具体的には、絶縁層9Bは、例えば、フォトレジスト(感光性樹脂)のような有機系の非導電性非磁性材料によって形成してもよいし、塗布ガラスよりなるスピンオングラス(SOG)膜で形成してもよい。
【0046】
薄膜磁気ヘッドは、更に、コンタクトホール9aが形成された位置において第1の磁性層8の上に形成された磁性材料よりなる連結部12と、薄膜コイル10、絶縁層9Aおよび絶縁層9Bを覆うように形成された絶縁層9Cとを備えている。薄膜コイル10は、連結部12の回りに巻回されている。
【0047】
連結部12の形状は、例えば、厚みが2〜4μm、奥行き(媒体対向面ABSに垂直な方向の長さ)が2〜10μm、幅が5〜20μmである。連結部12を構成する磁性材料は、例えば鉄−ニッケル系合金すなわちパーマロイでもよいし、後述するような高飽和磁束密度材でもよい。
【0048】
絶縁層9Cは、絶縁層9Bよりも耐食性、剛性および絶縁性が優れた非導電性且つ非磁性の材料よりなる。このような材料としては、アルミナやシリコン酸化物(SiO2)等の無機系の非導電性非磁性材料を用いることができる。媒体対向面ABSにおける絶縁層9Aおよび絶縁層9Cの合計の厚みは、例えば2〜4μmである。また、この厚みは、連結部12の厚み以上とする。
【0049】
絶縁層9A,9B,9Cは、第1の磁性層8と後述する第2の磁性層14との間に設けられるギャップ層9を構成する。絶縁層9Bは本発明におけるギャップ層の第1の部分に対応し、絶縁層9A,9Cは本発明におけるギャップ層の第2の部分に対応する。
【0050】
薄膜磁気ヘッドは、更に、媒体対向面ABSから少なくとも連結部12まで、絶縁層9Cおよび連結部12の上に形成された磁性材料よりなる第2の磁性層14を備えている。第2の磁性層14は、磁極部分を含む磁極部分層14Aと、ヨーク部分となるヨーク部分層14Bとを有している。磁極部分層14Aは、媒体対向面ABSから、媒体対向面ABSと連結部12との間の所定の位置にかけて、絶縁層9Cの上に形成されている。ヨーク部分層14Bは、連結部12の第2の磁性層14側の端部(以下、上端部と言う。)と磁極部分層14Aの媒体対向面ABSとは反対側の端面(以下、後端面と言う。)とを磁気的に接続する。また、ヨーク部分層14Bは、連結部12の上端部と磁極部分層14Aの後端面との間を結ぶ直線状の磁気経路20が形成されるような形状を有している。薄膜磁気ヘッドは、更に、磁極部分層14Aの上に形成された非磁性層15を備えている。ヨーク部分層14Bの媒体対向面ABS側の一部は、非磁性層15を介して磁極部分層14Aの上面に隣接し、非磁性層15を介して磁極部分層14Aに磁気的に接続されている。薄膜磁気ヘッドは、更に、アルミナ等の非導電性且つ非磁性の材料よりなり、第2の磁性層14を覆うように形成された保護層17を備えている。
【0051】
薄膜コイル10の第2の磁性層14側の面は、媒体対向面ABSにおけるギャップ層9の第2の磁性層14側の端部(絶縁層9Cの磁性層14側の端部)の位置よりも第1の磁性層8側の位置に配置されている。
【0052】
磁極部分層14Aの厚みは、好ましくは0.1〜0.8μmであり、更に好ましくは0.3〜0.8μmである。ここでは、一例として、磁極部分層14Aの厚みを0.5μmとする。また、媒体対向面ABSから磁極部分層14Aの後端面までの長さは2μm以上である。ここでは、一例として、この長さを10μmとする。
【0053】
図3に示したように、磁極部分層14Aは、媒体対向面ABS側に配置された第1の部分14A1と、この第1の部分14A1よりも媒体対向面ABSから離れた位置に配置された第2の部分14A2とを含んでいる。第1の部分14A1は、第2の磁性層14における磁極部分となる。第1の磁性層8における磁極部分は、第1の磁性層8のうちギャップ層9を介して上記第1の部分14A1に対向する部分を含む。
【0054】
第1の部分14A1は、トラック幅と等しい幅を有している。すなわち、第1の部分14A1の媒体対向面ABSにおける幅がトラック幅を規定している。第2の部分14A2の幅は、第1の部分14A1との境界位置では第1の部分14A1の幅と等しく、その位置から媒体対向面ABSより遠ざかる程、徐々に大きくなった後、一定の大きさになっている。ヨーク部分層14Bの媒体対向面ABS側の一部は、非磁性層15を介して磁極部分層14Aの第2の部分14A2の上に重なっている。
【0055】
第1の部分14A1の媒体対向面ABSにおける幅、すなわちトラック幅は、好ましくは0.5μm以下であり、更に好ましくは0.3μm以下である。ヨーク部分層14Bと重なる部分における第2の部分14A2の幅は、第1の部分14A1の媒体対向面ABSにおける幅よりも大きく、例えば2μm以上である。
【0056】
ヨーク部分層14Bの厚みは、例えば1〜2μmである。ヨーク部分層14Bは、図1に示したように、磁極部分層14Aの後端面に磁気的に接続されていると共に、図3に示したように、磁極部分層14Aの幅方向の両側面に磁気的に接続されている。また、ヨーク部分層14Bの媒体対向面ABS側の端部は、媒体対向面ABSから例えば1.5μm以上離れた位置に配置されている。
【0057】
磁極部分層14Aの飽和磁束密度は、ヨーク部分層14Bの飽和磁束密度以上となっている。磁極部分層14Aを構成する磁性材料としては、飽和磁束密度が1.4T以上の高飽和磁束密度材を用いるのが好ましい。高飽和磁束密度材としては、鉄および窒素原子を含む材料、鉄、ジルコニアおよび酸素原子を含む材料、鉄およびニッケル元素を含む材料等を用いることができる。具体的には、高飽和磁束密度材としては、例えば、NiFe(Ni:45重量%,Fe:55重量%)、FeNやその化合物、Co系アモルファス合金、Fe−Co、Fe−M(必要に応じてO(酸素原子)も含む。)、Fe−Co−M(必要に応じてO(酸素原子)も含む。)の中のうちの少なくとも1種類を用いることができる。ここで、Mは、Ni,N,C,B,Si,Al,Ti,Zr,Hf,Mo,Ta,Nb,Cu(いずれも化学記号)の中から選択された少なくとも1種類である。
【0058】
ヨーク部分層14Bを構成する磁性材料としては、例えば、飽和磁束密度が1.0T程度となる鉄およびニッケル元素を含む材料を用いることができる。このような材料は、耐食性に優れ、且つ磁極部分層14Aを構成する材料よりも高抵抗である。また、このような材料を用いることにより、ヨーク部分層14Bの形成が容易になる。
【0059】
また、ヨーク部分層14Bを構成する磁性材料としては、磁極部分層14Aを構成する磁性材料と同じ組成系のものを用いることもできる。この場合には、ヨーク部分層14Bの飽和磁束密度を、磁極部分層14Aの飽和磁束密度よりも小さくするために、ヨーク部分層14Bを構成する磁性材料としては、磁極部分層14Aを構成する磁性材料に比べて、鉄原子の組成比の小さい材料を用いるのが好ましい。
【0060】
非磁性層15の平面的な形状は、磁極部分層14Aと同様である。また、非磁性層15は、媒体対向面ABSに露出している。非磁性層15の厚みは、好ましくは0.5μm以下である。ここでは、一例として、非磁性層15の厚みを0.3μmとする。また、非磁性層15は、省くことも可能である。
【0061】
非磁性層15を構成する材料としては、例えば、チタンまたはタンタルを含む材料(合金および酸化物を含む。)や、アルミナやシリコン酸化物(SiO2)等の無機系の非導電性非磁性材料を用いることができる。また、磁極部分層14Aをドライエッチングによって形成する場合には、非磁性層15を構成する材料として、磁極部分層14Aを構成する材料、およびギャップ層9のうちの磁極部分層14Aに接する絶縁層9Cを構成する材料よりもドライエッチングに対するエッチング速度が小さい材料を用いるのが好ましい。このような材料としては、例えばチタンまたはタンタルを含む材料(合金および酸化物を含む。)を用いることができる。
【0062】
図4および図5に示したように、媒体対向面ABSに露出する磁極部分層14Aの面の形状は、長方形でもよいし、記録媒体の進行方向Tの後側(スライダにおける空気流入端側)に配置される下辺が上辺よりも小さい台形または三角形でもよい。また、磁極部分層14Aの側面は凹面でもよい。また、媒体対向面ABSに露出する磁極部分層14Aの面における側辺と基板1の面とのなす角度は80〜88゜が好ましい。
【0063】
以上説明したように、本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドは、記録媒体に対向する媒体対向面ABSと再生ヘッドと記録ヘッドとを備えている。再生ヘッドは、再生素子としてのMR素子5と、媒体対向面ABS側の一部がMR素子5を挟んで対向するように配置された、MR素子5をシールドするための下部シールド層3および上部シールド層6を備えている。
【0064】
記録ヘッドは、媒体対向面ABS側において記録媒体の進行方向Tの前後に所定の間隔を開けて互いに対向するように配置された磁極部分を含む第1の磁性層8および第2の磁性層14と、非磁性材料よりなり、第1の磁性層8と第2の磁性層14との間に設けられたギャップ層9と、媒体対向面ABSから離れた位置において第1の磁性層8と第2の磁性層14とを磁気的に連結する連結部12と、少なくとも一部が第1の磁性層8および第2の磁性層14の間に、これらの磁性層8,14に対して絶縁された状態で設けられた薄膜コイル10とを備えている。
【0065】
本実施の形態では、薄膜コイル10のうち磁性層8,14の間に配置された部分の第2の磁性層14側の面(図1における上側の面)は、媒体対向面ABSにおけるギャップ層9の第2の磁性層14側の端部(図1における上側の端部)の位置よりも第1の磁性層8側(図1における下側)の位置に配置されている。
【0066】
また、第2の磁性層14は、磁極部分を含み、媒体対向面ABSにおける幅がトラック幅を規定する磁極部分層14Aと、ヨーク部分となるヨーク部分層14Bとを有している。磁極部分層14Aの飽和磁束密度は、ヨーク部分層14Bの飽和磁束密度以上となっている。ヨーク部分層14Bは、連結部12の上端部と磁極部分層14Aの後端面とを磁気的に接続している。
【0067】
本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドは、垂直磁気記録方式に用いるのに適している。この薄膜磁気ヘッドを垂直磁気記録方式に用いる場合、第2の磁性層14の磁極部分層14Aにおける第1の部分14A1が主磁極となり、第1の磁性層8の磁極部分が補助磁極となる。なお、本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドを垂直磁気記録方式に用いる場合には、記録媒体としては2層媒体と単層媒体のいずれをも使用することが可能である。
【0068】
本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドでは、第2の磁性層14が磁極部分層14Aとヨーク部分層14Bとを有し、ヨーク部分層14Bは、磁極部分層14Aに磁束を導くための十分な体積を有し、また、磁極部分層14Aの飽和磁束密度がヨーク部分層14Bの飽和磁束密度以上であることから、第2の磁性層14の途中における磁束の飽和を防止することができる。
【0069】
また、本実施の形態では、薄膜コイル10のうち磁性層8,14の間に配置された部分の第2の磁性層14側の面は、媒体対向面ABSにおけるギャップ層9の第2の磁性層14側の端部の位置および連結部12の上端部の位置よりも第1の磁性層8側の位置に配置されている。そして、ヨーク部分層14Bは、連結部12の上端部と磁極部分層14Aの後端面とを磁気的に接続している。従って、ヨーク部分層14Bは、連結部12と磁極部分層14Aとの間に短い磁気経路で且つ強い磁気的結合を形成することができる。
【0070】
これらのことから、本実施の形態によれば、第2の磁性層14の磁極部分より発生される、記録媒体の面に垂直な方向の磁界を大きくし、且つ磁路長を短縮して高周波特性を向上させることが可能になる。磁極部分層14Aに高飽和磁束密度材を用いた場合には、特に、記録媒体の面に垂直な方向の磁界を大きくすることができ、保磁力の大きな記録媒体への記録も可能となる。
【0071】
また、本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドでは、記録媒体の面に垂直な方向の磁界は長手方向の磁界よりも大きく、ヘッドが発生する磁気エネルギを効率よく、記録媒体に伝達することができる。従って、この薄膜磁気ヘッドによれば、記録媒体の熱揺らぎの影響を受けにくくして、線記録密度を高めることができる。
【0072】
図1に示したように、本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドは、第1の磁性層8を記録媒体の進行方向Tの後側(薄膜磁気ヘッドを含むスライダにおける空気流入端側)に配置し、第2の磁性層14を記録媒体の進行方向Tの前側(薄膜磁気ヘッドを含むスライダにおける空気流出端側)に配置するのが好ましい。このような配置とすることにより、これとは逆の配置の場合に比べて、垂直磁気記録方式を用いた場合の記録媒体における磁化反転遷移幅が小さくなり、記録媒体において、より高密度の磁化パターンを形成することができ、その結果、線記録密度を高めることができる。
【0073】
また、図1に示したように、本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドでは、第2の磁性層14のヨーク部分層14Bは、連結部12の上端部と磁極部分層14Aの後端面との間を結ぶ直線状の磁気経路20が形成されるような形状を有している。これにより、特に磁路長を短縮でき、高周波特性を向上させることが可能になる。
【0074】
また、図3に示したように、本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドでは、媒体対向面ABSにおける磁極部分層14Aと第1の磁性層8との間の距離は、連結部12の厚み以上としている。そして、ヨーク部分層14Bは、磁極部分層14Aの後端面との接続位置から連結部12との接続位置にかけて、徐々に第1の磁性層8に近づいている。これにより、特に磁路長を短縮でき、高周波特性を向上させることが可能になる。
【0075】
また、図1に示したように、本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドでは、ヨーク部分層14Bの少なくとも一部は、第1の磁性層8側に突出する弧状に形成されている。これにより、ヨーク部分層14Bの一部が、薄膜コイル10に近くなり、薄膜コイル10によって発生される磁界をヨーク部分層14Bで効率よく吸収することが可能になる。
【0076】
また、図3に示したように、本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドでは、ヨーク部分層14Bは、磁極部分層14Aの後端面と両側面とに磁気的に接続されている。これにより、磁極部分層14Aの体積が小さくても、ヨーク部分層14Bと磁極部分層14Aとの接続部分の面積を増やすことができ、この接続部分における磁束の飽和を防止することができる。その結果、磁束を効率よくヨーク部分層14Bから磁極部分層14Aへ導くことができ、記録媒体に印加される磁界を大きくすることができる。
【0077】
また、図1に示したように、本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドでは、ヨーク部分層14Bの媒体対向面ABS側の端部は、媒体対向面ABSから離れた位置に配置されている。これにより、ヨーク部分層14Bの媒体対向面ABS側の端部より発生される磁界によって記録媒体に情報の書き込みが生じることを防止することができる。
【0078】
また、図2に示したように、本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドでは、磁極部分層14Aのヨーク部分層14Bと接する部分の幅は、磁極部分層14Aの媒体対向面ABSにおける幅よりも大きくなっている。これにより、磁極部分層14Aのヨーク部分層14Bと接する部分の面積を大きくすることができ、この部分での磁束の飽和を防止することができる。その結果、磁束を効率よくヨーク部分層14Bから磁極部分層14Aへ導くことができ、且つ磁極部分層14Aの媒体対向面ABSにおける露出面積を小さくすることで、記録媒体に印加される磁界を大きくすることができる。
【0079】
また、本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドにおいて、媒体対向面ABSから磁極部分層14Aの後端面までの長さを2μm以上とすることにより、磁極部分層14Aの厚みや幅を大きくすることなく、磁極部分層14Aのヨーク部分層14Bと接する部分の面積を大きくして、この部分での磁束の飽和を防止することができる。その結果、磁束を効率よくヨーク部分層14Bから磁極部分層14Aへ導くことができる。
【0080】
また、図1に示したように、本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドでは、磁極部分層14Aのギャップ層9とは反対側の面に接する非磁性層15を備えている。これにより、磁極部分層14Aをドライエッチングによって形成する際や、ヨーク部分層14Bを電気めっき法によって形成する際に、磁極部分層14Aのギャップ層9とは反対側の面がダメージを受けることを防止でき、その面を平坦にすることができる。特に、本実施の形態では、非磁性層15が媒体対向面ABSに露出しているので、媒体対向面ABSにおいて、磁極部分層14Aのギャップ層9とは反対側の端部を平坦に保つことができる。これにより、媒体対向面ABSにおいて磁極部分層14Aより発生される磁界を、トラックに交差する方向について均一化することができる。その結果、記録媒体におけるビットパターン形状の歪みを抑えて、線記録密度を向上させることができる。
【0081】
また、本実施の形態では、ヨーク部分層14Bの媒体対向面ABS側の一部は、非磁性層15を介して磁極部分層14Aのギャップ層9とは反対側の面に隣接し、非磁性層15を介して磁極部分層14Aに磁気的に接続されている。その結果、磁極部分層14Aのギャップ層9とは反対側の面からも、非磁性層15を介してヨーク部分層14Bから磁極部分層14Aの媒体対向面ABS側へ磁束を導くことができる。
【0082】
また、非磁性層15を、磁極部分層14Aを構成する材料、およびギャップ層9のうちの磁極部分層14Aと接する部分を構成する材料よりもドライエッチングに対するエッチング速度が小さい材料で構成した場合には、磁極部分層14Aをドライエッチングによって形成する際に、磁極部分層14Aのギャップ層9とは反対側の面がダメージを受けることを防止することができる。
【0083】
また、図1に示したように、本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドでは、薄膜コイル10のうち第1の磁性層8と第2の磁性層14の間に配置された部分は、第1の磁性層8と第2の磁性層14の中間の位置よりも第1の磁性層8に近い位置に配置されている。これにより、第2の磁性層14よりも体積の大きな第1の磁性層8によって、薄膜コイル10から発生する磁界を効率よく吸収でき、薄膜コイル10が第2の磁性層14に近い場合に比べて、第1の磁性層8および第2の磁性層14における磁界の吸収率を高めることができる。
【0084】
また、図1に示したように、本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドでは、ギャップ層9は、形成時に流動性を有する材料よりなり、少なくとも薄膜コイル10の巻線間に充填された第1の部分(絶縁層9B)と、この第1の部分よりも耐食性、剛性および絶縁性が優れた材料よりなり、薄膜コイル10および第1の部分を覆い、第1の磁性層8、第2の磁性層14および連結部12に接する第2の部分(絶縁層9A,9C)とを有している。ギャップ層9の第2の部分は、媒体対向面ABSに露出している。薄膜コイル10の巻線間に隙間なく非磁性材料を充填することは、スパッタリング法では困難であるが、有機系の材料のように流動性を有する非磁性材料を用いた場合には容易である。しかし、有機系の材料は、ドライエッチングに対する耐性、耐食性、耐熱性、剛性等の点で信頼性に乏しい。本実施の形態では、上述のように、形成時に流動性を有する材料によって薄膜コイル10の巻線間に充填された第1の部分(絶縁層9B)を形成し、この第1の部分よりも耐食性、剛性および絶縁性が優れた材料によって、薄膜コイル10および第1の部分を覆い、第1の磁性層8、第2の磁性層14および連結部12に接する第2の部分(絶縁層9A,9C)を形成するようにしたので、薄膜コイル10の巻線間に隙間なく非磁性材料を充填でき、且つギャップ層9の信頼性を高めることができる。
【0085】
また、本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドは、再生素子としてのMR素子5を備えている。これにより、誘導型電磁変換素子を用いて再生を行う場合に比べて、再生性能を向上させることができる。また、MR素子5は、シールド層3,6によってシールドされているので、再生時の分解能を向上させることができる。
【0086】
次に、図6ないし図8を参照して、本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの第1の変形例について説明する。図6は第1の変形例の薄膜磁気ヘッドの構成を示す断面図である。なお、図6は媒体対向面および基板の面に垂直な断面を示している。図7は図6に示した薄膜磁気ヘッドの要部を示す斜視図である。図8は図7における磁極部分の近傍を拡大して示す斜視図である。
【0087】
第1の変形例の薄膜磁気ヘッドでは、図1に示した薄膜磁気ヘッドに比べて、媒体対向面ABSから磁極部分層14Aの後端面までの長さが短くなっている。ここでは、一例として、この長さを5μmとする。非磁性層15の平面的な形状は、磁極部分層14Aと同様である。第1の変形例の薄膜磁気ヘッドのその他の構成は、図1に示した薄膜磁気ヘッドと同様である。
【0088】
次に、図9を参照して、本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの第2の変形例について説明する。図9は第2の変形例の薄膜磁気ヘッドの構成を示す断面図である。なお、図9は媒体対向面および基板の面に垂直な断面を示している。
【0089】
第2の変形例の薄膜磁気ヘッドは、上記第1の変形例の薄膜磁気ヘッドにおける上部シールド層6および非磁性層7を省き、第1の磁性層8が上部シールド層6を兼ねるようにしたものである。この構成によれば、薄膜磁気ヘッドの構造が簡単になり、製造も簡単になる。第2の変形例の薄膜磁気ヘッドのその他の構成は、第1の変形例の薄膜磁気ヘッドと同様である。
【0090】
次に、図10ないし図25を参照して、本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの製造方法について説明する。なお、ここでは、図6に示した薄膜磁気ヘッドを製造する場合を例にとって製造方法を説明するが、図1に示した薄膜磁気ヘッドを製造する場合も同様である。また、図9に示した薄膜磁気ヘッドを製造する場合も、上部シールド層6および非磁性層7を形成する工程が省かれること以外は、以下の説明と同様である。
【0091】
本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの製造方法では、まず、基板1の上に絶縁層2を形成する。次に、絶縁層2の上に下部シールド層3を形成する。なお、図10ないし図25では、基板1および絶縁層2を省略している。
【0092】
次に、図10に示したように、下部シールド層3の上に、絶縁層4の一部となる絶縁膜を形成し、この絶縁膜の上にMR素子5と、このMR素子5に接続される図示しないリードとを形成する。次に、MR素子5およびリードを、絶縁層4の他の一部となる新たな絶縁膜で覆い、MR素子5およびリードを絶縁層4内に埋設する。
【0093】
次に、絶縁層4の上に上部シールド層6を形成し、その上に非磁性層7を形成する。次に、この非磁性層7の上に、第1の磁性層8を所定の形状に形成する。次に、図示しないが、非磁性層7および第1の磁性層8をアルミナ等の非磁性材料で覆い、第1の磁性層8が露出するまで非磁性材料を研磨して、第1の磁性層8の上面を平坦化する。
【0094】
次に、図11に示したように、第1の磁性層8の上に、アルミナ等の非導電性且つ非磁性の材料をスパッタして、絶縁層9Aを形成する。次に、周知のフォトリソグラフィ技術とドライエッチング技術とを用いて、連結部12を形成すべき位置において、絶縁層9Aにコンタクトホール9aを形成する。
【0095】
次に、図12に示したように、周知のフォトリソグラフィ技術および成膜技術(例えば電気めっき法)を用いて、絶縁層9Aの上に薄膜コイル10を形成する。
【0096】
次に、図13に示したように、周知のフォトリソグラフィ技術を用いて、少なくとも薄膜コイル10の巻線間に充填される絶縁層9Bを形成する。
【0097】
次に、図14に示したように、周知のフォトリソグラフィ技術および成膜技術(例えば電気めっき法)を用いて、コンタクトホール9aが形成された位置において第1の磁性層8の上に連結部12を形成する。連結部12の厚みは、例えば2〜4μmとする。
【0098】
次に、図15に示したように、スパッタ法を用いて、薄膜コイル10、絶縁層9A、絶縁層9Bおよび連結部12を覆うように絶縁層9Cを形成する。この時点で、絶縁層9Cの厚みは、連結部12の厚み以上、例えば2〜6μmとする。
【0099】
次に、図16に示したように、例えば化学機械研磨を用いて、絶縁層9Cの厚みが所定の記録ギャップ長と等しくなるまで絶縁層9Cの表面を研磨して、絶縁層9Cおよび連結部12の上面を平坦化する。この時点で、第1の磁性層8の上面から絶縁層9Cおよび連結部12の上面までの距離は、例えば2〜4μmとする。なお、この時点では、必ずしも連結部12を露出させる必要はなく、後の工程で露出させてもよい。
【0100】
次に、図17に示したように、絶縁層9Cおよび連結部12の上に、第2の磁性層14の磁極部分層14Aを構成する材料よりなる被エッチング層14Aeを形成する。被エッチング層14Aeの厚みは、好ましくは0.1〜0.8μmとし、更に好ましくは0.3〜0.8μmとする。被エッチング層14Aeの形成方法は、電気めっき法でもよいし、スパッタ法でもよい。被エッチング層14Aeの表面の粗さが大きい場合(例えば、算術平均粗さRaが12オングストローム以上の場合)は、化学機械研磨等によって被エッチング層14Aeの表面を研磨して平坦化することが好ましい。
【0101】
次に、被エッチング層14Aeの上に、非磁性層15eを形成する。非磁性層15eの厚みは、好ましくは0.5μm以下とする。
【0102】
次に、図示しないが、非磁性層15eの上に、スパッタ法により、電気めっき法のための電極層を形成する。この電極層の厚みは0.1μm以下とし、材料は例えば鉄−ニッケル合金とする。
【0103】
次に、図18に示したように、フォトリソグラフィ技術を用いて、上記電極層の上に、フォトレジストによって、磁極部分層14Aの形状に対応した空隙部を有するレジストフレーム31を形成する。次に、このレジストフレーム31を用いて、電気めっき法(フレームめっき法)によって、上記電極層の上に、磁極部分層14Aの形状に対応したマスク32となるめっき膜を形成する。このめっき膜の厚みは1〜4μmとし、材料は例えば鉄−ニッケル合金とする。次に、レジストフレーム31を除去する。
【0104】
次に、図19に示したように、マスク32を用いて、イオンミリング等のドライエッチング技術によって、非磁性層15eおよび被エッチング層14Aeをエッチングして、非磁性層15および磁極部分層14Aの外形を決定する。このとき、マスク32のうち、少なくとも媒体対向面ABSに対応する部分は完全に除去することが好ましいが、マスク32が非磁性で、耐食性等の点で信頼性が十分にあれば、この限りではない。
【0105】
上記のエッチングにより、図4および図5に示したように、媒体対向面ABSに露出する磁極部分層14Aの面の形状を長方形、あるいは記録媒体の進行方向Tの後側(スライダにおける空気流入端側)に配置される下辺が上辺よりも小さい台形または三角形とする。また、磁極部分層14Aの側面は凹面でもよい。また、上記のエッチングにより、媒体対向面ABSにおける磁極部分層14Aの幅を、トラック幅の規格に一致するように規定してもよい。
【0106】
また、上記のエッチングにより、非磁性層15および磁極部分層14Aの外形が決定されるのと同時に、絶縁層9Cがエッチングされると共に連結部12が露出する。なお、このときに連結部12が露出するように、連結部12の厚みは予め所望の厚み以上に大きくしておく。
【0107】
なお、上述のようにめっき膜によるマスク32を形成する代りに、フォトリソグラフィ技術を用いて、非磁性層15eの上に、フォトレジストによって、磁極部分層14Aの形状に対応したレジストパターンを形成してもよい。そして、このレジストパターンをマスクとして、非磁性層15eおよび被エッチング層14Aeをエッチングして、非磁性層15および磁極部分層14Aの外形を決定すると共に連結部12を露出させ、その後、レジストパターンを除去してもよい。
【0108】
次に、図20に示したように、フォトリソグラフィ技術を用いて、フォトレジストによって、磁極部分層14Aおよび非磁性層15における媒体対向面ABS側の一部を覆うレジストカバー33を形成する。このレジストカバー33の厚みは、後述するヨーク部分層形成用のフレームの厚み以下とするのが好ましい。
【0109】
次に、図21に示したように、レジストカバー33、磁極部分層14A(および非磁性層15)、絶縁層9C(ギャップ層9)および連結部12の上に、スパッタ法により、電気めっき法のための電極層34を形成する。この電極層34の厚みは0.1μm以下とし、材料は例えば鉄−ニッケル合金とし、下地にTi(チタン)を成膜してもよい。
【0110】
次に、図22に示したように、電極層34の上に、フォトレジストによって、ヨーク部分層14Bの形状に対応した空隙部を有するレジストフレーム35を形成する。
【0111】
次に、図23に示したように、レジストフレーム35を用いて、電気めっき法(フレームめっき法)によって、電極層34の上にヨーク部分層14Bを形成する。次に、レジストフレーム35を除去する。なお、ヨーク部分層14Bは、リフトオフ法を用いて形成することも可能であるが、ヨーク部分層14Bの形状を下地の形状に追従させるためには電気めっき法を用いるのが最も好ましい。
【0112】
次に、図24に示したように、電極層34のうち、ヨーク部分層14Bの下に存在する部分以外の部分をドライエッチングで除去する。
【0113】
次に、図25に示したように、レジストカバー33を除去する。次に、第2の磁性層14を覆うように保護層17を形成する。次に、保護層17の上に配線や端子等を形成し、スライダ単位で基板を切断し、媒体対向面ABSの研磨、浮上用レールの作製等を行って、薄膜磁気ヘッドが完成する。
【0114】
本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの製造方法によれば、本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドと同様の作用、効果の他に、以下のような作用、効果が得られる。
【0115】
本実施の形態では、第2の磁性層14の磁極部分層14Aを形成する工程は、ギャップ層9および連結部12の上に、磁極部分層14Aを構成する材料よりなる被エッチング層14Aeを形成する工程と、被エッチング層14Aeおよびギャップ層9をドライエッチングによって選択的にエッチングして、磁極部分層14Aの外形を決定すると共に連結部12を露出させる工程とを含む。本実施の形態では、被エッチング層14Aeおよびギャップ層9をドライエッチングすることによって、磁極部分層14Aの後端面から連結部12の上端部にかけて緩やかな傾斜を持つように、ヨーク部分層14Bの下地の形状が決定される。従って、この下地の上にヨーク部分層14Bを形成することにより、連結部12と磁極部分層14Aとの間を結ぶ直線状の磁気経路を形成することが可能になる。
【0116】
また、本実施の形態において、被エッチング層14Aeを形成する工程の後で、研磨により、被エッチング層14Aeの上面を平坦化した場合には、媒体対向面ABSにおいて、磁極部分層14Aのギャップ層9とは反対側の端部を完全に平坦化することができる。これにより、媒体対向面ABSにおいて磁極部分層14Aより発生される磁界を、トラックに交差する方向について均一化することができ、その結果、記録媒体におけるビットパターン形状の歪みを抑えて、線記録密度を向上させることができる。
【0117】
また、本実施の形態では、被エッチング層14Aeを形成する工程の前に、研磨により、被エッチング層14Aeの下地となる絶縁層9Cおよび連結部12の上面を平坦化している。これにより、媒体対向面ABSにおいて、磁極部分層14Aのギャップ層9側の端部を平坦化することができる。また、被エッチング層14Aeをスパッタ法によって形成する場合には、被エッチング層14Aeの成膜時の膜厚均一性がよいため、媒体対向面ABSにおいて、磁極部分層14Aのギャップ層9とは反対側の端部も平坦化することができる。これらのことから、媒体対向面ABSにおいて磁極部分層14Aより発生される磁界を、トラックに交差する方向について均一化することができ、その結果、記録媒体におけるビットパターン形状の歪みを抑えて、線記録密度を向上させることができる。
【0118】
また、本実施の形態において、磁極部分層14Aを形成する工程は、被エッチング層14Aeを形成する工程の後で、被エッチング層14Aeの上に非磁性層15eを形成する工程と、非磁性層15eの上に、磁極部分層14Aの形状に対応したマスク32を形成する工程とを含み、被エッチング層14Aeをエッチングする工程は、このマスク32を用いて、非磁性層15eおよび被エッチング層14Aeをエッチングしてもよい。この場合には、被エッチング層14Aeの上面を非磁性層15eで保護した状態で磁極部分層14Aの外形を決定でき、磁極部分層14Aのギャップ層9とは反対側の端部の平坦性を維持することが可能になる。
【0119】
また、マスク32を形成する工程は、非磁性層15eの上に、磁極部分層14Aの形状に対応した空隙部を有するレジストフレーム31を形成し、このレジストフレーム31の空隙部内にマスク32を形成してもよい。この場合には、マスク32をレジストで形成する場合に比べて、ドライエッチングに対する耐性に優れたマスク32を形成することが可能になる。これにより、磁極部分層14Aを構成する材料がドライエッチングに対する耐性に優れている場合でも、マスク32を用いたドライエッチングによって磁極部分層14Aの外形を決定することが可能になる。
【0120】
また、本実施の形態において、ヨーク部分層14Bを形成する工程は、電気めっき法によってヨーク部分層14Bを形成してもよい。この場合には、ヨーク部分層14Bを容易に形成できると共に、ヨーク部分層14Bを、その下地の形状によく追従した形状に形成することが可能になる。
【0121】
また、ヨーク部分層14Bを形成する工程は、磁極部分層14Aの媒体対向面ABS側の一部を覆うレジストカバー33を形成する工程と、レジストカバー33、磁極部分層14A、ギャップ層9および連結部12の上に、電気めっき法のための電極層34を形成する工程と、電極層34を用いて、電気めっき法によってヨーク部分層14Bを形成する工程とを含んでもよい。この場合には、磁極部分層14Aの媒体対向面ABS側の一部の側面に電極層が付着し、残留することを防止することができ、電極層の付着、残留によってトラック幅が大きくなることを防止することができる。更に、電極層をドライエッチングによって除去する際に、エッチングされた材料が磁極部分層14Aの媒体対向面ABS側の一部の側面に付着し、残留して薄膜磁気ヘッドの信頼性が低下してしまうことを防止することもできる。
【0122】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1ないし7のいずれかに記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法によれば、第2の磁性層が磁極部分層とヨーク部分層とを有し、ヨーク部分層は、磁極部分層に磁束を導くための十分な体積を有し、また、磁極部分層の飽和磁束密度がヨーク部分層の飽和磁束密度以上であることから、第2の磁性層の途中における磁束の飽和を防止することができる。また、本発明では、薄膜コイルの少なくとも一部の第2の磁性層側の面が、媒体対向面におけるギャップ層の第2の磁性層側の端部の位置および連結部の第2の磁性層側の端部の位置よりも第1の磁性層側の位置に配置され、ヨーク部分層は、連結部の第2の磁性層側の端部と磁極部分層の媒体対向面とは反対側の端面とを磁気的に接続するので、ヨーク部分層は、連結部と磁極部分層との間に短い磁気経路で且つ強い磁気的結合を形成することができる。これらのことから、本発明によれば、磁極部分より発生される、記録媒体の面に垂直な方向の磁界を大きくし、且つ磁路長を短縮して高周波特性を向上させることが可能になるという効果を奏する。
【0140】
また、請求項1ないし7のいずれかに記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法では、磁極部分層を形成する工程は、ギャップ層および連結部の上に、磁極部分層を構成する材料よりなる被エッチング層を形成する工程と、被エッチング層およびギャップ層をドライエッチングによって選択的にエッチングして、磁極部分層の外形を決定すると共に連結部を露出させる工程とを含む。これにより、本発明によれば、磁極部分層の媒体対向面とは反対側の端面から連結部の第2の磁性層側の端部にかけて緩やかな傾斜を持つように、ヨーク部分層の下地の形状を決定することができ、この下地の上にヨーク部分層を形成することにより、連結部と磁極部分層との間を結ぶ直線状の磁気経路を形成することが可能になるという効果を奏する。
【0141】
また、請求項2記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法によれば、被エッチング層を形成する工程の後で、研磨により、被エッチング層の上面を平坦化するようにしたので、媒体対向面において、磁極部分層のギャップ層とは反対側の端部を完全に平坦化することができ、これにより、媒体対向面において磁極部分層より発生される磁界を、トラックに交差する方向について均一化することができ、その結果、記録媒体におけるビットパターン形状の歪みを抑えて、線記録密度を向上させることができるという効果を奏する。
【0142】
また、請求項3記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法によれば、被エッチング層を形成する工程の前に、研磨により、被エッチング層の下地を平坦化するようにしたので、媒体対向面において、磁極部分層のギャップ層側の端部を平坦化することができる。また、これにより、被エッチング層をスパッタ法によって形成する場合には、媒体対向面において、磁極部分層のギャップ層とは反対側の端部も平坦化することができる。これらのことから、本発明によれば、媒体対向面において磁極部分層より発生される磁界を、トラックに交差する方向について均一化することができ、その結果、記録媒体におけるビットパターン形状の歪みを抑えて、線記録密度を向上させることができるという効果を奏する。
【0143】
また、請求項4または5記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法によれば、被エッチング層を形成する工程の後で、被エッチング層の上に非磁性層を形成し、この非磁性層の上に、磁極部分層の形状に対応したマスクを形成し、このマスクを用いて、非磁性層および被エッチング層をエッチングして、磁極部分層の外形を決定するようにしたので、被エッチング層の上面を非磁性層で保護した状態で磁極部分層の外形を決定でき、磁極部分層のギャップ層とは反対側の端部の平坦性を維持することが可能になるという効果を奏する。
【0144】
また、請求項5記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法によれば、マスクを形成する工程は、非磁性層の上に、磁極部分層の形状に対応した空隙部を有するレジストフレームを形成し、このレジストフレームの空隙部内にマスクを形成するようにしたので、ドライエッチングに対する耐性に優れたマスクを形成することが可能になり、その結果、磁極部分層を構成する材料がドライエッチングに対する耐性に優れている場合でも、マスクを用いたドライエッチングによって磁極部分層の外形を決定することが可能になるという効果を奏する。
【0145】
また、請求項6または7記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法によれば、電気めっき法によってヨーク部分層を形成するようにしたので、ヨーク部分層を容易に形成できると共に、ヨーク部分層を、その下地の形状によく追従した形状に形成することが可能になるという効果を奏する。
【0146】
また、請求項7記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法によれば、ヨーク部分層を形成する工程は、磁極部分層における媒体対向面側の一部を覆うレジストカバーを形成する工程と、レジストカバー、磁極部分層、ギャップ層および連結部の上に、電気めっき法のための電極層を形成する工程と、電極層を用いて、電気めっき法によってヨーク部分層を形成する工程とを含むようにしたので、磁極部分層における媒体対向面側の一部の側面に電極層やエッチング時の付着物が残留することを防止することができ、電極層の残留によってトラック幅が大きくなったり、エッチング時の付着物の残留により薄膜磁気ヘッドの信頼性が低下したりすることを防止することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの構成を示す断面図である。
【図2】図1に示した薄膜磁気ヘッドの要部を示す斜視図である。
【図3】図2における磁極部分の近傍を拡大して示す斜視図である。
【図4】図1に示した薄膜磁気ヘッドの媒体対向面の一部を示す正面図である。
【図5】図4における磁極部分層および非磁性層を拡大して示す正面図である。
【図6】本発明の一実施の形態における第1の変形例の薄膜磁気ヘッドの構成を示す断面図である。
【図7】図6に示した薄膜磁気ヘッドの要部を示す斜視図である。
【図8】図7における磁極部分の近傍を拡大して示す斜視図である。
【図9】本発明の一実施の形態における第2の変形例の薄膜磁気ヘッドの構成を示す断面図である。
【図10】本発明の一実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの製造方法における一工程を示す断面図である。
【図11】図10に続く工程を示す断面図である。
【図12】図11に続く工程を示す断面図である。
【図13】図12に続く工程を示す断面図である。
【図14】図13に続く工程を示す断面図である。
【図15】図14に続く工程を示す断面図である。
【図16】図15に続く工程を示す断面図である。
【図17】図16に続く工程を示す断面図である。
【図18】図17に続く工程を示す断面図である。
【図19】図18に続く工程を示す断面図である。
【図20】図19に続く工程を示す断面図である。
【図21】図20に続く工程を示す断面図である。
【図22】図21に続く工程を示す断面図である。
【図23】図22に続く工程を示す断面図である。
【図24】図23に続く工程を示す断面図である。
【図25】図24に続く工程を示す断面図である。
【符号の説明】
3…下部シールド層、4…絶縁層、5…MR素子、6…上部シールド層、7…非磁性層、8…第1の磁性層、9…ギャップ層、9A,9B,9C…絶縁層、10…薄膜コイル、12…連結部、14…第2の磁性層、14A…磁極部分層、14B…ヨーク部分層、15…非磁性層。
Claims (7)
- 記録媒体に対向する媒体対向面と、記録媒体の進行方向の前後に所定の間隔を開けて互いに対向するように配置された磁極部分を含む第1および第2の磁性層と、非磁性材料よりなり、前記第1の磁性層と第2の磁性層との間に設けられたギャップ層と、前記媒体対向面から離れた位置において前記第1の磁性層と第2の磁性層とを磁気的に連結する連結部と、少なくとも一部が前記第1および第2の磁性層の間に、前記第1および第2の磁性層に対して絶縁された状態で設けられた薄膜コイルとを備え、前記第2の磁性層は、磁極部分を含み、媒体対向面における幅がトラック幅を規定する磁極部分層と、ヨーク部分となるヨーク部分層とを有し、前記磁極部分層の飽和磁束密度が前記ヨーク部分層の飽和磁束密度以上である薄膜磁気ヘッドの製造方法であって、
前記第1の磁性層を形成する工程と、
前記薄膜コイルの少なくとも一部の第2の磁性層側の面が、媒体対向面における前記ギャップ層の第2の磁性層側の端部の位置および前記連結部の第2の磁性層側の端部の位置よりも第1の磁性層側の位置に配置されるように、前記第1の磁性層の上に前記ギャップ層、前記連結部および前記薄膜コイルを形成する工程と、
前記ギャップ層および前記連結部の上に前記第2の磁性層を形成する工程とを備え、
前記第2の磁性層を形成する工程は、
前記ギャップ層の上に前記磁極部分層を形成する工程と、
前記ヨーク部分層によって前記連結部の第2の磁性層側の端部と前記磁極部分層の媒体対向面とは反対側の端面とが磁気的に接続されるように、前記ギャップ層および前記連結部の上に前記ヨーク部分層を形成する工程と
を含み、
媒体対向面における前記磁極部分層と前記第1の磁性層との間の距離は、前記連結部の厚みよりも大きく、
前記ヨーク部分層は、前記連結部の第2の磁性層側の端部と前記磁極部分層の媒体対向面とは反対側の端面との間を結ぶ直線状の磁気経路が形成されるような形状を有し、
前記磁極部分層を形成する工程は、
前記ギャップ層および前記連結部の上に、前記磁極部分層を構成する材料よりなる被エッチング層を形成する工程と、
前記被エッチング層およびギャップ層をドライエッチングによって選択的にエッチングして、前記磁極部分層の外形を決定し、前記連結部を露出させると共に、前記磁極部分層の媒体対向面とは反対側の端面から前記連結部の第2の磁性層側の端部にかけて傾斜を持つように、前記ヨーク部分層の下地の形状を決定する工程とを含む
ことを特徴とする薄膜磁気ヘッドの製造方法。 - 前記磁極部分層を形成する工程は、更に、前記被エッチング層を形成する工程の後で、研磨により、前記被エッチング層の上面を平坦化する工程を含むことを特徴とする請求項1記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。
- 前記磁極部分層を形成する工程は、更に、前記被エッチング層を形成する工程の前に、研磨により、前記被エッチング層の下地を平坦化する工程を含むことを特徴とする請求項1または2記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。
- 前記磁極部分層を形成する工程は、更に、前記被エッチング層を形成する工程の後で、前記被エッチング層の上に非磁性層を形成する工程と、前記非磁性層の上に、磁極部分層の形状に対応したマスクを形成する工程とを含み、
前記被エッチング層をエッチングする工程は、前記マスクを用いて、前記非磁性層および前記被エッチング層をエッチングすることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。 - 前記マスクを形成する工程は、前記非磁性層の上に、磁極部分層の形状に対応した空隙部を有するレジストフレームを形成し、このレジストフレームの空隙部内に前記マスクを形成することを特徴とする請求項4記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。
- 前記ヨーク部分層は電気めっき法によって形成されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。
- 前記ヨーク部分層を形成する工程は、前記磁極部分層における媒体対向面側の一部を覆うレジストカバーを形成する工程と、前記レジストカバー、前記磁極部分層、前記ギャップ層および前記連結部の上に、電気めっき法のための電極層を形成する工程と、前記電極層を用いて、電気めっき法によってヨーク部分層を形成する工程とを含むことを特徴とする請求項6記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。
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