JP3982310B2 - ポリオレフィン系樹脂組成物およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は発泡能力を有するポリオレフィン系樹脂組成物、及びその製造方法に関する。さらに詳しくは建材用断熱材、産業資材、家具、家庭用電気器具、保温・保冷箱、自動車内装用材などの緩衝材、充填材、断熱材などに好適に用いられる発泡能力を有するポリオレフィン系樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ポリオレフィン系樹脂発泡体については、種々の発泡体が知られており、例えばシート状あるいは所定形状の独立気泡を内部に有する長尺架橋発泡体または長尺無架橋発泡体、単板状の独立気泡架橋ブロック発泡体または連続気泡架橋ブロック発泡体などがある。これらの発泡体は、発泡体を所定の空間に挿入する、あるいは他の物品と接合し所定形状とするには、種々の公知の加熱成形方法で成形することができる。架橋により加熱時に適度な樹脂粘度を保つことのできる架橋発泡体は、ある程度意匠制限されるものの種々の加熱成形そのものは可能である。しかしながら、架橋発泡体は極端な流動性低下により再加熱溶融を伴うリサイクルは困難である。再加熱溶融を伴うリサイクルが可能な無架橋発泡体は、加熱溶融時の粘度が極端に低下するため加熱成形の形状や条件と言った範囲が大きく制限されるといった問題があった。
【0003】
更に、ポリウレタン注入発泡のように成形加工時に発泡させ発泡層を含む構造体を成形する方法は、発泡体を所定の空間に充満するように挿入することが可能であり、また意匠性や成形加工性に優れ、加工工程を簡素化でき、様々な形状に密着した発泡構造体を造ることが容易できるが、廃棄処理やリサイクルの点では問題があった。
【0004】
上記のような、リサイクルが容易でポリウレタン注入発泡の空間充満性、意匠性や加工性などの特性を有した組成物および成形加工方法として、特開平5−228947号公報には、非発泡オレフィン系熱可塑性エラストマーと、ポリエチレン樹脂パウダーに熱分解型発泡剤を混合した組成物を、加熱した金型と粉末供給ボックスとを一体化させて回転又は揺動あるいは噴射させて金型内面に粉末を溶着させ、未溶着粉末は自動的あるいは強制的に粉末供給ボックスに回収する工法で成形する方法が開示されている。しかしながらこの方法では発泡倍率が5倍未満の低発泡倍率の発泡体しか得られず、軽量化はある程度なされるものの高発泡倍率発泡体が有する緩衝性や断熱性がといった特性が実現できない欠点があった。
【0005】
また別の成形加工方法として、特公平7−45197号公報ではポリオレフィン樹脂に、熱分解によって気体を発生する化学発泡剤と有機過酸化物などを混練し、シート化した後に合成樹脂シートと貼り合わせ、しかる後に加熱し発泡させ、直ちに真空成形とプレス成形を同時に行い成形体とする方法が開示されている。しかしながら有機過酸化物による樹脂の架橋の影響でリサイクル性に欠けることに加え、極端に増粘した樹脂粘度の影響で、縦・横方向に膨らむ展延力が増大し、形状に歪が発生したり、不均一な発泡となるなどの欠点があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上述した欠点を解消し、ポリウレタン注入発泡のように、簡素化された工程で、意匠性、成形加工性に優れ、リサイクルが容易な発泡能力を有するポリオレフィン系樹脂組成物とその製造方法の提供を目的とするものである。
【0007】
該樹脂組成物は、加熱し発泡構造体とした時、該発泡体層が緩衝性や断熱性などの発泡体基本特性を損わず、無架橋であるため加熱成形時に成形体に影響する発泡時の展延力が小さくかつリサイクル性に優れ、更に無架橋であるにもかかわらず耐熱性を有し、組成物を様々な形状とすることで加熱を伴う加工に対し密着性を高め自由度の高い発泡構造体及び加工方法を選択することのできる発泡能力を有するポリオレフィン系樹脂組成物である。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意検討した結果、本発明は、ポリオレフィン系樹脂とP,P'−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドを溶融混練してなる樹脂組成物であって、前記ポリオレフィン系樹脂は、P,P'−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドの分解開始温度以下の融点を有し、かつ190℃のメルトフローレートが1〜10g/10分の範囲であり、かつ示差走査熱量分析で測定したDSC曲線の結晶融解ピーク面積から得られる単位重量当たりの結晶融解エネルギーの内100℃以上の結晶融解エネルギーが30〜170mJ/mgのポリオレフィン系樹脂であり、該樹脂組成物を140℃〜300℃、1分〜60分加熱発泡せしめて得られる発泡体の発泡倍率が5倍以上であることを特徴とするポリオレフィン系樹脂組成物をその骨子とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物に用いるポリオレフィン系樹脂とは、オレフィン系炭化水素の重合体または共重合体である。かかるポリオレフィン系樹脂は、P,P'−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドの分解を抑制し、かつ得られる発泡体の耐熱性を満足させるため、融点はP,P'−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドが分解開始する温度以下で、かつ示差走査熱量分析で測定したDSC曲線の結晶融解ピーク面積から得られる単位重量当たりの結晶融解エネルギーの内100℃以上の結晶融解エネルギーが30〜170mJ/mgの範囲であることが必要である。
【0010】
ここで示す融点および結晶融解エネルギーとは、示差走査熱量分析で測定したDSC曲線から得られるものであり、この測定方法は次に示すとおりである。
【0011】
すなわち、示差走査熱量分析装置を用い、−50℃から200℃の間で10℃/分の速度で昇温し、5分間保持した後、200℃から−50℃の間で10℃/分の速度で降温し、更に5分間保持した後、−50℃から200℃の間で10℃/分の速度で昇温した2度目の昇温で得られたDSC曲線の結晶融解ピーク温度を融点とし、このDSC曲線に25℃から融解終了温度の間に引いた直線のベースラインで囲んだ面積の単位重量当たりのエネルギーに占める100℃〜融解終了温度で囲んだ面積の単位重量当たりのエネルギーを、100℃以上の結晶融解エネルギーとして算出した。
【0012】
ポリオレフィン系樹脂の融点がP,P'−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドの分解開始温度を越えると、発泡能力を有するポリオレフィン系樹脂の調整時に加える熱が高温化し、調整時にP,P'−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドの分解が避けられない。また、低い融点の樹脂で構成した場合、実用に耐える耐熱性が不足する場合があり、実用に耐える耐熱性を確保するには示差走査熱量分析で測定したDSC曲線の結晶融解ピーク面積から得られる単位重量当たりの結晶融解エネルギーの内100℃以上の結晶融解エネルギーが30〜170mJ/mgの範囲が必要である。該融解結晶エネルギーが30mJ/mg未満であれば、実用に耐える耐熱性が不足する場合があり、該融解結晶エネルギーが170mJ/mgを超える場合は、発泡能力を有するポリオレフィン系樹脂の調整時にP,P'−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドが分解したり得られる樹脂組成物の外観不良、加熱発泡時の発泡倍率不足といった不具合が発生することがあり好ましくない。
【0013】
P,P'−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドの分解開始温度の測定は、P,P'−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド1gをポリエチレンフィルムに採取し、これを試験管の中に入れて流動パラフィン10mlを加え、この試験管を流動パラフィン浴中に浸漬し、ガスビュレットに接続したガス誘導管に接続する。その後、流動パラフィン浴を25から250℃の間に2℃/分の速度で昇温し、1分ごとにビュレットに導入されたガス量を測定する。予め測定した該試料を含まない空気の膨張量を差し引いて求めた曲線をP,P'−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドの分解曲線とする。これより得られたP,P'−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドの分解曲線で、ガス発生が認められた点を分解開始温度とする。
【0014】
本発明で使用するポリオレフィン系樹脂の種類としては特に限定されず、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−ジエン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン3元共重合体、エチレン−オクテン共重合体、低密度ポリエチレン、エチレンと炭素数が4〜12のα−オレフィンとを共重合した直鎖状のポリエチレン、エチレン系樹脂をハードセグメントとする熱可塑性エラストマーが例示され、それぞれ単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。エチレンに共重合させるα−オレフィンについては特に限定されないが、たとえばプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−オクタデセン等が好ましい。
【0015】
ポリオレフィン系樹脂の190℃のメルトフローレート(MFR)は1〜10g/10分の範囲であることが必要である。MFRが1g/10分未満では加熱時の流動性不足による成形不良や加熱発泡時の発泡構造体変形のよる外観不良といった不具合が発生する場合があり、MFRが10g/10分を超える場合、樹脂粘度不足による発泡不良が発生する場合があるため好ましくない。ここで示す190℃のMFRとはJIS K−6922−2に準じた測定方法で測定したものである。
【0016】
本発明で使用するポリオレフィン系樹脂は、上記した条件を満たす樹脂が使用されるが、その峻別はメルトフローレートと示差走査熱量分析を行うことで容易に可能である。また、該ポリオレフィン系樹脂を重合して製造する場合、公知の製造方法を使用することができる。
【0017】
本発明に使用するポリオレフィン系樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の樹脂を配合することもできる。
【0018】
無架橋の発泡構造体を形成するには上記したポリオレフィン系樹脂に熱分解型化学発泡剤を加える必要があり、熱分解型化学発泡剤としてはP,P'−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドに限定される。
【0019】
熱分解型化学発泡剤が例えばアゾ化合物、ニトロソ化合物、セルカルバジド化合物、アジド化合物、テトラゾール化合物、重炭酸塩、亜硝酸塩などスルホニルヒドラジド化合物以外の熱分解型化学発泡剤を使用した場合、発泡ガス逃散による発泡不良、粗大気泡による平面性や外観の不良といった不具合が発生する場合があり好ましくない。また、スルホニルヒドラジド化合物においては、例えばベンゼンスルホニルヒドラジド、トルエンスルホニルヒドラジドなどは熱分解する温度が低温であり、ポリオレフィン系樹脂が耐熱性に不充分な低融点樹脂の使用に制限されたり、ポリオレフィン系樹脂組成物の調整時に分解し、製造できない場合や該組成物の外観不良、加熱発泡し発泡構造体としたときの該発泡層の発泡倍率不足といった不具合が発生する場合があるため好ましくない。
【0020】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、該樹脂組成物を加熱発泡せしめて得られる発泡体の発泡倍率が5倍以上であることが必要である。より好ましくは5〜30倍、更に5〜20倍が好ましい。発泡倍率が5倍未満であると、緩衝性、断熱性、軽量性などの発泡体の特徴が著しく損なわれる場合があり、発泡倍率が30倍を越えると圧縮回復性や圧縮永久歪などの圧縮に対する特性が著しく損なわれる場合がある。
【0021】
ここで示す発泡倍率とは、発泡を140℃〜300℃の雰囲気温度下で、1分〜60分の時間の範囲で行った場合の発泡倍率を言い、発泡倍率の値は、得られた発泡体をJIS K−6767に準じた測定方法で測定した見掛け密度の逆数で示したものである。
【0022】
発泡倍率は、使用するポリオレフィン系樹脂の種類によっても変わるが、ポリオレフィン系樹脂に添加するP,P'−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドの添加量で制御することができる。好ましい範囲としてはポリオレフィン系樹脂100重量部に対しP,P'−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド1〜30重量部であり、更に好ましくは5〜20重量部である。添加量が1重量部未満であれば、5倍未満の発泡倍率となる場合があり、添加量が30重量部を超えると圧縮回復性や圧縮永久歪などの圧縮に対する特性が損なわれる30倍を超える発泡倍率となる場合がある。
【0023】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、必要に応じて例えば熱安定剤、耐候剤、難燃剤、難燃助剤、分散剤、顔料、流動性改良剤、離型剤、充填剤、造核剤など公知の各種添加剤を添加しても良い。
【0024】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、加熱し発泡させた時に、安定的に5倍以上の発泡倍率を確保するためには、一旦溶融したポリオレフィン系樹脂樹脂中にP,P'−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドが存在する状態で冷却固化させることが好ましい。
【0025】
具体的な製造方法としては、ポリオレフィン系樹脂の融点以上で押出機、ミキシングロール、加圧式ニーダなどの汎用の混練装置を用いて溶融状態にし、これにP,P'−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドや必要に応じた公知の添加剤などを混合し、ポリオレフィン系樹脂の融点以上かつP,P'−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドの分解開始温度以下の温度範囲で該混練装置を用いて溶融混練する方法や、粉末状のポリオレフィン系樹脂とP,P'−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドや必要に応じた公知の添加剤などをヘンシェルミキサーなどの汎用の混合装置を用いて混合した組成物をポリオレフィン系樹脂の融点以上かつP,P'−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドの分解開始温度以下の温度範囲で押出機、ミキシングロール、加圧式ニーダなどの汎用の混練装置用いて溶融混練する方法、または該混合した組成物を汎用のプレス加工機でポリオレフィン系樹脂の融点以上かつP,P'−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドの分解開始温度以下の温度範囲溶融プレスする方法などが好ましく使用される。かかる方法により本発明のポリオレフィン系樹脂組成物を溶融したのち、シート状やストランド状などの形状に成形し、単板カット機、ペレタイザー、粉砕機、などの汎用の裁断機で板状、チップ状、粉末状のいずれかの形状に成形する方法が好ましく用いられる。
【0026】
本発明の発泡体は、上記したポリオレフィン系樹脂を加熱発泡して得られる。加熱発泡方法は特に限定されず公知の方法を使用することができる。
【0027】
好ましくは、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物を所定の空間に挿入するか、他の物品と接合させた後、加熱発泡する方法である。所定の空間に挿入したり、他の物品と接合した場合、該樹脂組成物の充填や該組成物を加熱加工し発泡体としたときに所定の空間や他の物品との接合を隙間なく埋めることが可能であり、緩衝性、断熱性などの性能が飛躍的に向上できる。
【0028】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物を所定の空間に挿入し固定したり他の物品と接合固定する方法は特に限定されないが、例えば該ポリオレフィン系樹脂組成物をポリオレフィン系樹脂の融点以上で加熱溶融し融着する方法、所定の空間や他の物品もしくは該ポリオレフィン系樹脂組成物のいずれかまたは複数に粘着剤を塗布し接着する方法などが例示される。
【0029】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物を加熱発泡する加工方法としては特に限定されないが、雄雌の両型を有し、冷却または加熱した金型内に形状が板状、チップ状、粉末状またはこれらの混合体等である該ポリオレフィン系樹脂組成物を融着や接着などの方法で分散充填させ、密閉状態で金型を加熱し発泡充満させた後、金型を冷却する成形方法、別に設けた熱源で発泡させた後、冷却した金型でプレス成形する成形方法などが例示される。
【0030】
加熱する加熱源については特に限定されないが、熱風、赤外やセラミックなどのラジエーションヒータ、加圧蒸気、電熱ヒーターなどが例示される。
【0031】
【実施例】
次に、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限りこれらによって制限されるものではない。本発明における測定法、評価基準は次の通りである。
【0032】
1.組成物混練可否
P,P'−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドが分解しない温度で溶融混練が可能であるかを判定する。樹脂が軟化し、必要量のP,P'−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドが分解なく溶融混練できるものを合格(◎)、一部分解は認められるものの発泡倍率や気泡形状に顕著な影響を及ぼさないものを合格(○)、熱による顕著な分解の発生や必要な添加量が溶融混練できず、発泡倍率が5倍未満となるような場合を不合格(×)と判定した。
【0033】
2.発泡倍率
形状を板状、チップ状、粉末状に加工したポリオレフィン系樹脂組成物を加熱発泡加工した発泡体の見かけ密度をJIS K−6767に準じた測定方法で測定し、この見かけ密度の逆数値を発泡倍率とした。すべての形状において発泡倍率が5倍以上のものを合格(○)、5倍未満を含む場合を不合格(×)と判定した。
【0034】
3.発泡体外観
形状を板状、チップ状、粉末状に加工したポリオレフィン系樹脂組成物を加熱発泡加工した発泡体の歪み、表面の平面性、気泡の均一性を目視判定した。発泡体の歪み、表面の発泡剤分解ガス逃散穴、発泡ムラによる凹凸がなく、均一な気泡形状を保ったものを合格(◎)、前記判定項目のうち一つでも発泡体基本特性(発泡倍率、緩衝性、断熱性、加工性)に影響しない軽度な不良が見られる場合を合格(○)、前記判定項目のうち一つでも発泡体基本特性(発泡倍率、緩衝性、断熱性、加工性)に影響する顕著な不良が見られる場合を不合格(×)と判定した。
【0035】
4.耐熱温度
形状を板状、チップ状、粉末状に加工したポリオレフィン系樹脂組成物を加熱発泡加工した発泡体から15×15cmの正方形サンプルを切り出し、その中心の厚みZ0 cmの測定及び各辺に平行となる各々長さ10cmの直交した標線を書き、このサンプルを熱風循環オ−ブンに入れ22時間加熱後、取出し、室温になるまで自然冷却する。この加熱処理サンプルの厚みZ1 cm及び各縦横の標線長さL1、L2 cmを測定し、下記の式に従って加熱体積変化率を算出した。
加熱体積変化率(%)=[{(10×10×Z0)−(L1×L2×Z1)}/(10×10×Z0)]×100 (%)
10℃間隔に設定した各熱風温度の加熱体積変化を測定し、±5%以下となる最高温度を耐熱温度とし、実用上の耐熱温度として100℃未満を不合格(×)、100℃以上を合格(○)と判定した。
【0036】
5.総合評価
上記の判定項目のすべてが合格判定であるものを総合評価で合格、1つでも不合格(×)の判定項目があるものを総合評価で不合格と判定した。
【0037】
(実施例1)
ポリオレフィン系樹脂として低密度ポリエチレン(融点111℃、MFR3.7g/10分、100℃以上の結晶融解エネルギー78.1mJ/mg)100重量部、P,P'−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(分解開始温度131℃)10重量部、熱安定剤として“Irganox1010”0.3重量部を130℃に設定したミキシングロールで溶融混練した。この溶融混練した組成物を130℃に設定したプレス加工機で厚さ1.5mmのシートに作成した。このシートを裁断機、粉砕機で加工し、板状、チップ状、粉末状の組成物を作成し、各形状の該組成物3種類を、それぞれ180℃の熱風オーブン中で10分加熱発泡成形し発泡体を得た。該組成物の溶融混練状態及び発泡体の発泡倍率、外観、耐熱温度を評価した結果を表1に示す。いずれの評価項目においても合格であった。
【0038】
(実施例2)
ポリオレフィン系樹脂として低密度ポリエチレン(融点112℃、MFR8.0g/10、100℃以上の結晶融解エネルギー76.8mJ/mg)100重量部としたほかは実施例1と同様にポリオレフィン系樹脂組成物及びその発泡体を得た。該組成物及び発泡体の評価結果を表1に示す。いずれの評価項目においても合格であった。
【0039】
(実施例3)
ポリオレフィン系樹脂として低密度ポリエチレン(融点111℃、MFR3.7g/10分)40重量部とエチレン−オクテン共重合体(融点98℃、MFR3.0g/10分)60重量部の構成(構成樹脂の100℃以上の結晶融解エネルギー40.8mJ/mg)にした他は実施例1と同様にポリオレフィン系樹脂組成物及びその発泡体を得た。該組成物及び発泡体の評価結果を表1に示す。いずれの評価項目においても合格であった。
【0040】
(実施例4)
ポリオレフィン系樹脂として直鎖状低密度ポリエチレン(融点126℃、MFR3.0g/10分、100℃以上の結晶融解エネルギー139.4mJ/mg)100重量部としたほかは実施例1と同様にポリオレフィン系樹脂組成物及びその発泡体を得た。該組成物及び発泡体の評価結果を表1に示す。いずれの評価項目においても合格であった。
【0041】
(実施例5)
P,P'−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドを25重量部とした他は実施例1と同様にポリオレフィン系樹脂組成物及びその発泡体を得た。該組成物及び発泡体の評価結果を表1に示す。発泡体の気泡に粗大な部分が見られ、また発泡体が淡黒褐色に変色した部分も見られたが、いずれも軽微であり、全ての評価項目において合格であった。
【0042】
(比較例1)
ポリオレフィン系樹脂として低密度ポリエチレン(融点113℃、MFR0.3g/10分、100℃以上の結晶融解エネルギー88.6mJ/mg)100重量部とした他は実施例1と同様にポリオレフィン系樹脂組成物及びその発泡体を得た。該組成物及び発泡体の評価結果を表2に示す。混練中に一部の発泡剤分解が認められ、組成物の形状によっては発泡倍率が加熱加工発泡体が緩衝性や断熱性などの発泡体基本特性を満足しない5倍未満であり、形状によっては成形加工性や緩衝性に影響する顕著な発泡体の歪みがあり、総合評価として不合格であった。
【0043】
(比較例2)
ポリオレフィン系樹脂として低密度ポリエチレン(融点105℃、MFR24.0g/10分、100℃以上の結晶融解エネルギー66.4mJ/mg)100重量部とした他は実施例1と同様にポリオレフィン系樹脂組成物及びその発泡体を得た。該組成物及び発泡体の評価結果を表2に示す。発泡倍率が加熱加工発泡体が緩衝性や断熱性などの発泡体基本特性を満足しない5倍未満で、粗大な気泡形状で外観不良であり、総合評価として不合格であった。
【0044】
(比較例3)
熱分解型化学発泡剤として尿素と酸化亜鉛を加えたアゾジカルボンアミド(分解開始温度135℃)とした他は実施例1と同様にポリオレフィン系樹脂組成物及びその発泡体を得た。該組成物及び発泡体の評価結果を表2に示す。発泡倍率が加熱加工発泡体が緩衝性や断熱性などの発泡体基本特性を満足しない5倍未満で、形状によっては粗大な気泡形状で外観不良であり、総合評価として不合格であった。
【0045】
(比較例4)
ポリオレフィン系樹脂としてエチレン−オクテン共重合体(融点98℃、MFR3.0g/10分、100℃以上の結晶融解エネルギー15.9mJ/mg)100重量部とした他は実施例1と同様にポリオレフィン系樹脂組成物及びその発泡体を得た。ポリオレフィン系樹脂の100℃以上の結晶融解エネルギーが30mJ/mg未満であるため耐熱性が100℃未満であり、総合評価として不合格であった。
【0046】
(比較例5)
ポリオレフィン系樹脂として低密度ポリエチレン(融点111℃、MFR3.7g/10分)40重量部と高密度ポリエチレン(融点135℃、MFR5.0g/10分)60重量部の構成(構成樹脂の100℃以上の結晶融解エネルギー156.3mJ/mg)とし、ポリオレフィン系樹脂と熱安定剤を150℃に設定した東洋精機製ラボプラストミルで充分混練した後、130℃に降温し熱分解型発泡剤を混練した他は実施例1と同様にポリオレフィン系樹脂組成物及びその発泡体を得た。該組成物及び発泡体の評価結果を表2に示す。本例ではポリオレフィン系樹脂がP,P'−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドの分解開始温度を超える融点を有するため、混練中一部軽度な発泡剤の分解が見られ、形状によっては発泡倍率が加熱加工発泡体が緩衝性や断熱性などの発泡体基本特性を満足しない5倍未満で、また形状によっては粗大な気泡形状で外観不良であり、総合評価として不合格であった。
【0047】
(比較例6)
ポリオレフィン系樹脂として高密度ポリエチレン(融点134℃、MFR8.0g/10分、100℃以上の結晶融解エネルギー215.4mJ/mg)100重量部とした他は実施例1と同様の操作を行った。評価結果を表2に示す。樹脂溶融不足によりP,P'−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドが混練できなかった。混練温度を樹脂が混練可能な溶融状態となる140℃に上昇したところ、顕著なP,P'−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドの分解が認められ、組成物そのものが得られなかった。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
【発明の効果】
本発明の樹脂組成物によれば、耐熱性、リサイクル性などの特性を有した発泡能力を有するポリオレフィン系樹脂組成物が容易に得られる。
Claims (4)
- ポリオレフィン系樹脂とP,P'−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドを含む樹脂組成物であって、前記ポリオレフィン系樹脂は、P,P'−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドの分解開始温度以下の融点を有し、かつ190℃のメルトフローレートが1〜10g/10分の範囲であり、かつ示差走査熱量分析で測定したDSC曲線の結晶融解ピーク面積から得られる単位重量当たりの結晶融解エネルギーの内100℃以上の結晶融解エネルギーが30〜170mJ/mgのポリオレフィン系樹脂であり、該樹脂組成物を140℃〜300℃、1分〜60分加熱発泡せしめて得られる発泡体の発泡倍率が5倍以上であることを特徴とするポリオレフィン系樹脂組成物。
- 前記ポリオレフィン系樹脂とP,P'−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドを含む樹脂組成物を、該ポリオレフィン系樹脂の融点以上かつP,P'−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドの分解開始温度以下の温度で溶融したのち、板状、チップ状および粉末状のいずれかの形状に成形することを特徴とする請求項1記載のポリオレフィン系樹脂組成物の製造方法。
- 請求項1記載のポリオレフィン系樹脂組成物または請求項2記載の製造方法で得られたポリオレフィン系樹脂組成物を加熱発泡してなる発泡体。
- 前記ポリオレフィン系樹脂組成物を所定の空間に挿入するか、他の物品と接合させた後、加熱発泡してなる請求項3記載の発泡体。
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-
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