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JP3980851B2 - 固型製剤、その製造方法、及び食品 - Google Patents

固型製剤、その製造方法、及び食品 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば医薬品、健康補助製品、食品、及び菓子類等への利用が期待される固型製剤用包摂コーティング剤、固型製剤、その製造方法、及び食品類に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、粉末原料を造粒する際には、バインダとして澱粉、ゼラチン、スクロース、或いはラクトース等の砂糖、天然ゴム、微結晶セルロース等を用いて行われてきた。これらバインダは、製剤及び食品顆粒作成時の粉末同士を固着する糊の役目を果たし、顆粒の製造を容易にし、さらにはその顆粒を利用した錠剤やカプセル剤の製造を容易にする作用を果たす。しかし、これらのバインダにて製造された顆粒、錠剤、カプセル剤では、上述の造粒作用以外の効果を期待できない。
また、経口摂取では、一度に所定量の薬効成分が生体内に取り込まれるため、薬効成分の副作用を軽減したり効力を持続することを目的とし、生体内における吸収速度を制御したり薬効成分の放出速度を遅延する材料を包皮材などとして用いる技術が各種提案されている。
例えば特開平5−310598号公報には、ポリグリセリン脂肪酸エステルにて薬効成分の放出を制御する技術が開示されている。また、特開平5−221854号公報には、ヒドロキシプロピルメチルセルロースにて薬効を制御する技術が、特表平8−512061号公報には、ヘテロ多糖ガム、カチオン架橋剤を含む賦形剤にて薬効を長期化する技術、特開平6−206833号公報には、ヘミセルロース及び助剤を外被又は糖衣剤として用いることにより薬効を遅延する技術が開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前述のように従来、多くの吸収(放出)抑制剤が提案、開示されているが、それらの概念としては、薬効成分の効力を持続させるために、一度に多量の薬効成分が消費(生体内に吸収)されて生ずる一過性の高血中濃度を避けるという点で共通している。即ち吸収速度が速く、高血中濃度を生じた場合には、血中濃度が速やかに低下してしまうため、薬効期間が短期間になるものであった。しかし、所定の血中濃度を維持するためには、摂取する薬効成分量を増量する必要があった。
本発明者らの研究によると、前述の各種の材料は、薬効成分の生体内における吸収速度を抑制し、効力をある程度持続させるという所定の目的は達することができるものの、薬効成分の一部のみが吸収されるに過ぎず、残る大部分の薬効成分は生体内に吸収されることなく分解、排出されてしまっていた。
そこで、本発明者らは、生体内における吸収速度や血中への浸透速度を向上させ、高血中濃度及び長期の血中濃度維持を可能とすることができる技術を提案することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記に鑑み提案されたもので、薬効成分に対し、1〜40重量%の還元難消化性デキストリンと1〜20重量%のグリセリン脂肪酸エステルを添加して包摂或いはコーティングし、粉末状又は顆粒状とし、或いはそれを打錠して錠剤状とした、或いはそれをカプセルに充填させたことを特徴とする固型製剤を提案する。
また、本発明は、薬効成分に対し、1〜40重量%の還元難消化性デキストリンと1〜20重量%のグリセリン脂肪酸エステルを水溶液の状態で噴霧或いは練合して乾燥し、粉末状又は顆粒状とし、或いはそれを打錠して錠剤状とした、或いはそれをカプセルに充填させたことを特徴とする固型製剤の製造方法をも提案する。
さらに、本発明は、薬効成分に対し、1〜40重量%の還元難消化性デキストリンと1〜20重量%のグリセリン脂肪酸エステルを添加して包摂或いはコーティングし、粉末状又は顆粒状とし、それを食品材料として健康食品や菓子原料中に混合させたことを特徴とする食品をも提案する。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明に使用する薬効成分としては、薬剤学的薬剤や健康補助成分を用いることができ、一般的には水溶性の固体(粉末)を用いるが、油溶性でも良いし、液体、ゲル体であっても良い。
【0006】
本発明に使用する還元難消化性デキストリンは、薬効成分の生体内における吸収速度や血中への浸透速度を向上し、血中濃度が高く、血中濃度維持が長期になる。
前記薬効成分に対する還元難消化性デキストリンの添加量は、前述のように1〜40重量%であるが、1重量%より少ない場合には、上述の所定の効果が得られない。また、40重量%より多い場合にはそれ以上の効果の上昇は認められず、薬効成分の配合量が制限されるため好ましくない。
【0007】
また、前記還元難消化性デキストリンと共にグリセリン脂肪酸エステルを用いると、還元難消化性デキストリンのみを用いた場合に比べて生体内における吸収速度や血中への浸透速度がより向上し、血中濃度がより高く、血中濃度維持がより長期になる。
前記薬効成分に対するグリセリン脂肪酸エステルの添加量は、1〜20重量%であるが、1重量%より少ない場合には、上述の所定の効果が得られない。また、20重量%より多い場合にはそれ以上の効果の上昇は認められず、薬効成分の配合量が制限されるため好ましくない。
【0008】
本発明では、前記薬効成分に対し、1〜40重量%の還元難消化性デキストリンを水溶液の状態で噴霧又は練合して乾燥することにより、薬効成分の生体内における吸収速度や血中への浸透速度が向上し、高血中濃度及び長期の血中濃度維持が可能となる。高血中濃度及び長期の血中濃度維持が可能となるということは、薬効成分の無駄に分解、排出される量が抑制され、より効率良く生体内へ吸収されることを意味している。
また、上述の効果は還元難消化性デキストリンを用いない薬効成分のみの同量の場合と比較したものであり、不必要な高血中濃度を抑制するためには使用量自体を低減することにより調整することができる。即ち本発明では薬効成分が極めて効率良く生体内に吸収されるため、高価な薬効成分の使用量を大幅に低減しても従来の還元難消化性デキストリンを用いない薬効成分のみの場合と比べて同等或いはそれ以上の効果を期待することができる。また、得られる製品は、粉末状でも顆粒状でも、或いはそれを打錠して錠剤状、或いはそれをカプセルに充填させた状態でも良いが、低容量化、ローコスト化することができる。
【0009】
【実施例】
以下の実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。実施例に先立ち、各実施例に用いた試験方法について説明する。
【0010】
〔実験群及び試料、その調製〕
以下に示す材料組成にて1〜5群の試料を調製した。
【0011】
1群試料;
ビタミンC・・・・・・・・・・・95重量%
還元難消化性デキストリン・・・・・5重量%
薬効成分としてビタミンCの粉末を用い、5重量%の還元難消化性デキストリンを、水溶液又はアルコール含有水溶液の状態で添加練合後乾燥又は噴霧乾燥し、ビタミンCに還元難消化性デキストリンが包摂又はコーティングされている粉末又は顆粒状の固型製剤を得た。
【0012】
2群試料;
ビタミンC・・・・・・・・・・・92重量%
還元難消化性デキストリン・・・・・5重量%
グリセリン脂肪酸エステル・・・・・3重量%
5重量%の還元難消化性デキストリン及び3重量%のグリセリン脂肪酸エステルの混合物を用いた以外は、前記1群試料の調製と全く同様にしてビタミンCに還元難消化性デキストリン及びグリセリン脂肪酸エステルが包摂又はコーティングされている粉末又は顆粒状の固型製剤を得た。
【0013】
3群試料;
ビタミンC・・・・・・・・・・・80重量%
還元難消化性デキストリン・・・・20重量%
20重量%の還元難消化性デキストリンを用いた以外は、前記1群試料の調製と全く同様にしてビタミンCに還元難消化性デキストリンが包摂又はコーティングされている粉末又は顆粒状の固型製剤を得た。
【0014】
4群試料;
ビタミンC・・・・・・・・・・・77重量%
還元難消化性デキストリン・・・・20重量%
グリセリン脂肪酸エステル・・・・・3重量%
20重量%の還元難消化性デキストリン及び3重量%のグリセリン脂肪酸エステルの混合物を用いた以外は、前記1群試料の調製と全く同様にしてビタミンCに還元難消化性デキストリン及びグリセリン脂肪酸エステルが包摂又はコーティングされている粉末又は顆粒状の固型製剤を得た。
【0015】
5群試料;
ビタミンC・・・・・・・・・・100重量%
ビタミンC単体を試料(包摂コーティング剤の無い試料)とした。
【0016】
〔動物群及び試料の投与方法〕
前記1〜5群の試料に対し、各群6匹の雄ラットを用いて実験前1週間の予備飼育をした。この予備飼育期間は、水及び飼料を自由摂取とし、12時間の昼夜サイクルで飼育した。また、予備飼育期間及び実験期間の飼料は、通常の飼育用飼料とした。
各群の試料の投与は、ビタミンCとして100mg/kgに相当する量を一定量の精製水で懸濁して同一時間内に経口ゾンデで投与した。
【0017】
〔血液中ビタミンC濃度の測定〕
試料を投与する直前、投与後1時間、2時間、3時間、6時間、9時間、12時間、及び24時間後に採血し、血液中のビタミンC濃度を測定した。
【0018】
〔実験結果〕
各時間ごとの血中のビタミンC濃度を表1に示し、その推移を図1に示した。
【表1】
Figure 0003980851
また、薬物動態パラメータを表2に示した。
【表2】
Figure 0003980851
【0019】
表1,2及び図1より、本発明によって製造された1〜4群試料でのラットに対するビタミンCの吸収は、5群試料であるビタミンC単体での摂取より有意に吸収性が改善され、しかも持続的に高濃度を維持することが確認された。
特に還元難消化性デキストリンとグリセリン脂肪酸エステルを併用した2群試料及び4群試料では、還元難消化性デキストリンのみを用いた1群試料及び3群試料に比べ高い吸収性を示し、しかも血中におけるビタミンC濃度を高いレベルで維持できることが確認された。
このような作用は、還元難消化性デキストリンのみを噴霧する量に依存して増強される傾向があるが、グリセリン脂肪酸エステルをさらに噴霧することでさらに増強される結果が得られた。この濃度は、1群では薬物動態パラメータAUCが5群と比較して約140%に増加し、さらに3群まで増やした場合では約170%まで増加していた。また、2群の場合ではさらに増加し、約210%と倍以上の薬物動態を示していたが、4群では2群と比較してほぼ変化していない。
これらの結果から、本発明では還元難消化性デキストリンのみを薬効成分に噴霧する製剤化においては5〜20重量%の範囲で十分に機能を発揮することが明らかとなった。また、好ましくはグリセリン脂肪酸エステルを3%程度さらに同時に噴霧することによって製する製剤ではより好ましい作用が認められる。
【0020】
【発明の効果】
以上説明したように本発明は、薬効成分に対し、1〜40重量%の還元難消化性デキストリンを水溶液の状態で噴霧、乾燥して包摂又はコーティングさせることにより、薬効成分の生体内における吸収速度や血中への浸透速度が向上し、高血中濃度及び長期の血中濃度維持が可能となる。そのため、本発明では薬効成分が極めて効率良く生体内に吸収され、高価な薬効成分の使用量を大幅に低減しても従来の還元難消化性デキストリンを用いない薬効成分のみの場合と比べて同等或いはそれ以上の効果を期待することができる。また、得られる製品は、粉末状でも顆粒状でも、或いはそれを打錠して錠剤状、或いはそれをカプセルに充填させた状態でも良いが、どのような態様においても低容量化、ローコスト化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例における固型製剤の各種試料を投与した後の血中のビタミンC濃度の推移を示すグラフである。

Claims (3)

  1. 薬効成分に対し、1〜40重量%の還元難消化性デキストリンと1〜20重量%のグリセリン脂肪酸エステルを添加して包摂或いはコーティングし、粉末状又は顆粒状とし、或いはそれを打錠して錠剤状とした、或いはそれをカプセルに充填させたことを特徴とする固型製剤。
  2. 薬効成分に対し、1〜40重量%の還元難消化性デキストリンと1〜20重量%のグリセリン脂肪酸エステルを水溶液の状態で噴霧或いは練合して乾燥し、粉末状又は顆粒状とし、或いはそれを打錠して錠剤状とした、或いはそれをカプセルに充填させたことを特徴とする固型製剤の製造方法。
  3. 薬効成分に対し、1〜40重量%の還元難消化性デキストリンと1〜20重量%のグリセリン脂肪酸エステルを添加して包摂或いはコーティングし、粉末状又は顆粒状とし、それを食品材料として健康食品や菓子原料中に混合させたことを特徴とする食品。
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