JP3979529B2 - 圧入固定式ファスナー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プレス機械等により頭部上面を加圧し、該頭部を板状部材に圧入固定することにより、抜け止め及び、回転防止効果を高めることができる圧入固定式ファスナーに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、圧入固定式ファスナーは、頭部外周に凹凸加工を施し、該頭部を相手側部材に圧入することにより該ファスナーの回転を防止していた。その一例として特開2002−79338号報がある。
【0003】
特開2002−79338号報によれば、図10及び図11に示される如く、スペーサ(30)は、軸部(33)と該軸部(33)の一端に、外周に凹凸(32)が形成された鍔部(31)とからなり、該鍔部(31)に隣接する該軸部(33)の外表面には、環状溝(34)が形成されている。又、該環状溝(34)については、該軸部(33)と該鍔部(31)とが形成された製品素材を回転させ、工具を押し付けることにより形成されると記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記に示した従来の技術には、次のような問題があった。
【0005】
特開2002−79338号報によれば、鍔部(31)の外周に回転防止機能を持つ凹凸(32)が、型内に押し込める塑性加工により形成されている。従って、該凹凸(32)を含めた該鍔部(31)の角には、若干ではあるが丸みがついてしまう。このような加工工程で製作されたスペーサ(30)をパネル板(35)に圧入して、該スペーサ(30)を軸芯(CL)回りに回転させた場合には、該鍔部(31)が該パネル板(35)から浮き上がろうとする力が働き、該鍔部(31)の方向へ抜けやすかった。特に、該スペーサ(30)が該パネル板(35)に対して圧入不足の場合、該スペーサ(30)は、該鍔部(31)の方向へ抜けやすかった。このような圧入不足は、多数の該スペーサ(30)を1台のプレス機械等で同時に圧入固定する場合に発生しやすかった。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮し、圧入固定式ファスナーを板状部材に圧入固定し、軸心回りに回転させた場合、該ファスナーが頭部の方向へ浮き上がろうとする力が働かないようにして、抜け止めや回転防止効果を高めることができる圧入固定式ファスナーを得ることが目的である。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の本発明は、頭部と該頭部一端から延出し、該頭部より径の小さい軸部とからなり、予め、該軸部よりわずかに大きい貫通孔が設けられている板状部材に対し、該軸部を該貫通孔に挿入した後、続いて該頭部を圧入して固定する圧入固定式ファスナーにおいて、該頭部と該軸部の境界部分に凹部が形成されており、該凹部の軸心に垂直な断面形状は、緩やかな曲線をもつ4本の辺からなり、該軸心に対してほぼ対称な略正方形を形成しており、前記4本の辺の隣り合う2辺の交点部分には該凹部表面から突出し且つ前記軸部の径と同じもしくは若干大きい外径をもつ凸部が形成されていることを特徴とする圧入固定式ファスナー(但し、頭部の形状が、軸部に向かって縮径されているものを除く)。である。
【0008】
従って、前記圧入固定式ファスナーは、前記板状部材に圧入固定する際に、該ファスナーの頭部が押しのけ、塑性変形した該板状部材の材料が、該頭部と該軸部の境界部分に形成された前記凹部に充填され、該ファスナーを軸心回りに回転させた場合、該ファスナーが頭部の方向へ浮き上がろうとする力が働かないようにして、抜け止め及び、回転防止効果を高めることができる。
【0009】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の圧入固定式ファスナーにおいて、前記頭部が、周辺に凹凸がなく、高さが低い略円柱状であることを特徴とする。
【0010】
従って、前記圧入固定式ファスナーは、前記頭部に回転防止機能を持たせていないため、該頭部を高くする必要がなく、又、形成もしやすく、コストも低くできる。更に、該ファスナーが前記板状部材に対して若干圧入不足であっても、該ファスナーを軸心回りに回転させた場合に、該頭部が該板状部材から浮き上がろうとする力が働かない。又、該頭部は、高さが低く略円柱状であるため、該板状部材に圧入する際の力も比較的弱い力で良い。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の第1実施形態を、図に従って説明する。
【0012】
図1に示される如く、本実施形態の圧入固定式ファスナー(10)は、頭部(11)と該頭部(11)一端から延出し、該頭部(11)より径の小さい軸部(12)とからなり、該頭部(11)の軸心(H)における断面形状は、略円柱状となっており、更に、該頭部(11)と該軸部(12)の境界部分に凹部(13)が形成されている。又、該軸部(12)の中心には、貫通の雌ネジ(12a)が加工されている。
【0013】
図2に示される如く、前記凹部(13)の軸心(H)に垂直な断面での形状は、緩やかな曲線を持つ4本の辺(13a)からなり、該軸心(H)に対してほぼ対称な略正方形となっており、該4本の辺(13a)の交点(13b)は、ある長さを持っており、前記軸部(12)の表面と連続につながっている。
又、詳細は記載しないが、本実施例に係る圧入固定式ファスナーは、公知の圧造加工方法により、切り屑を出さずに、又、容易に製作が可能であることは、当業者にとって明らかである。参考までに、該凹部(13)の加工方法は、端面が緩やかな曲面に凹加工された4本の爪を、該頭部(11)と軸部(12)の境界部分に、同時に打込んで形成してある。
【0014】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0015】
本実施形態では、図3に示される如く、予め、軸部(12)よりわずかに大きい貫通孔(14)が設けられている板状部材(15)に圧入固定式ファスナー(10)の軸部(12)を挿入し、該軸部(12)よりわずかに大きい孔(16a)が設けられている受け台(16)の上面(16b)に、該板状部材(15)の裏面(15c)を当接する。
【0016】
前記の状態で、プレス機械(17)により前記ファスナー(10)の頭部上面(11a)を加圧し、該頭部上面(11a)が、前記板状部材(15)の表面(15a)と同一平面になるまで圧入する。この際、前記頭部(11)の高さ(11b)が低く又、該頭部(11)の形状が、周辺に凹凸がなく円柱状であるため、比較的弱い力で圧入可能である。
この結果、図4に示すが如く、前記頭部(11)が該板状部材(15)に圧入される際に、該ファスナー(10)の頭部(11)が押しのけ、塑性変形した該板状部材(15)の材料(15b)は、該頭部(11)と該軸部(12)の境界部分に形成された凹部(13)に充填される。
従って、該ファスナー(10)を軸心(H)回りに回転させた場合に、該凹部(13)に充填された該材料(15b)が抵抗となることにより、該ファスナー(10)の該板状部材(15)に対する回転防止効果を高めることができ、同時に抜け防止効果を高めることができる。更に、該凹部(13)は、該ファスナー(10)を軸心(H)回りに回転させた場合に、該ファスナー(10)が頭部方向(S)や軸部方向(T)に抜けようとする力が働かないように中立となる形状としている。
【0017】
以上においては、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは、当業者にとって明らかである。
【0018】
例えば、図5は、本発明の第2実施形態の凹部(13c)を軸心(H)に垂直な断面として、軸部(12)方向に見た形状を示しており、前記第1実施形態で説明した凹部(13)の加工方法において、緩やかな曲面に凹加工された4本の爪を、頭部と軸部の境界部分に、更に強く打込むことにより、該軸部(12)の表面から深い該凹部(13c)が形成可能である。該凹部(13c)に充填される前記板状部材(15)の材料(15b)の量が多くなること及び、凹部(13c)から見て凸状となる凸部(13d)が形成されることにより、更に高い抜け止め効果と回転防止効果を得ることができる。又、該凸部(13d)の外径が、該軸部(12)に比べ、若干大きくなる場合があるが、本発明の圧入固定式ファスナーとしては、使用上及び機能上何ら問題はない。
【0019】
又、図6は、本発明の第3実施形態の凹部(13e)の軸心(H)に垂直な断面として、軸部(12)方向に見た形状を示している。該形状は、略三角形となっており、極めて大きな回転防止効果を得ることができる。
【0020】
更に、図7は、本発明の第4実施形態の凹部(13f)の軸心(H)に垂直な断面として、軸部(12)方向に見た形状を示している。該形状は、略歯車状となっている。
【0021】
又、図8は、本発明の第5実施形態の圧入固定式ファスナー(10)の側面図を示している。凹部(13g)の形状は、軸部(12)の側が、略波状になっている。該ファスナー(10)を前記板状部品(15)に圧入固定した後、該ファスナー(10)を軸心(H)回りに回転させた場合、該軸部(12)の方へ抜けようとする力が働くが、頭部(11)の径が該軸部(12)より大きいため、抜けることはない。
【0022】
更に、軸部の形状に関しては、図9に示されるが如く、凹部(13)に隣接する軸部(12b)の大きさが、前記板状部材(15)に予め設けられた貫通孔(14)よりわずかに小さく、且つ、該孔(14)に挿入可能であれば、軸部(12)の形状は問わない。
本図は、ボルトとして応用された圧入固定式ファスナー(10)の例を示す。
【0023】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る圧入固定式ファスナーを使用することにより、該ファスナーの頭部が押しのけ、塑性変形した前記板状部材の材料が、該頭部と該軸部の境界部分に形成された凹部に充填されることにより、該ファスナーを軸心回りに回転させた場合、該ファスナーが頭部の方向へ浮き上がろうとする力が働かないようにして、抜け止めや回転防止効果を高めることができる。又、該ファスナーが該板状部材に対して若干圧入不足になった場合でも、該ファスナーが頭部の方向へ浮き上がろうとする力が働かない。
又、該ファスナーは、前記頭部に回転防止機能を持たせていないため、該頭部周辺に凹凸がない円柱状で、且つ、高さを低くできるため、形成もしやすく、コストも低くでき、該板状部材に圧入する際の力も比較的弱い力で良い。
又、比較的弱い力で該板状部材に圧入されるということは、比較的小さなプレス機等を使用して、該ファスナーを圧入固定することができるため、省エネルギーであると同時に、該ファスナーの頭部の変形や傷が防止でき、例えば、該ファスナーにめっきや塗装等の表面処理を施してあっても美観が損なわれることがない。
更に、本発明の圧入固定式ファスナーは、公知の圧造加工方法により切り屑を出さずに、又、容易に製作が可能であるため、省資源、省エネルギー、製造コストダウンを図ることができる。
又、本発明の圧入固定式ファスナーは、電子機器に組み込まれる板状部材に取付けられる圧入固定式のスペーサナットとして特に有用である。該板状部材、スペーサナットは、ともにアルミニウムで製作される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る圧入固定式ファスナーを示す一部断面の側面図である。
【図2】図1の第1実施形態に係る圧入固定式ファスナーの溝を示すA−A断面図である。
【図3】図1の第1実施形態に係る圧入固定式ファスナーを板状部材に圧入する際の状態を示す側断面図である。
【図4】図1の第1実施形態に係る圧入固定式ファスナーを板状部材に圧入固定した状態を示す側断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る圧入固定式ファスナーの凹部を軸心に垂直な断面として、軸部方向に見た断面図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る圧入固定式ファスナーの凹部を軸心に垂直な断面として、軸部方向に見た断面図である。
【図7】本発明の第4実施形態に係る圧入固定式ファスナーの凹部を軸心に垂直な断面として、軸部方向に見た断面図である。
【図8】本発明の第5実施形態に係る圧入固定式ファスナーを示す側面図である。
【図9】本発明の第6実施形態に係る圧入固定式ファスナーを示す側面図である。
【図10】従来のスペーサを示す外観斜視図である。
【図11】図10の従来のスペーサをパネル板にかしめる際の状態を示す断面図である。
【符号の説明】
10 圧入固定式ファスナー
11 頭部
11b 頭部の高さ
12 軸部
13 凹部
13a 辺
13b 交点
14 貫通孔
15 板状部材
15b 材料
16 受け台
17 プレス機械
30 スペーサ
31 鍔部
32 凹凸
33 軸部
34 環状溝
35 パネル板
H 軸心
Claims (2)
- 頭部と該頭部一端から延出し、該頭部より径の小さい軸部とからなり、予め、該軸部よりわずかに大きい貫通孔が設けられている板状部材に対し、該軸部を該貫通孔に挿入した後、続いて該頭部を圧入して固定する圧入固定式ファスナーにおいて、該頭部と該軸部の境界部分に凹部が形成されており、該凹部の軸心に垂直な断面形状は、緩やかな曲線をもつ4本の辺からなり、該軸心に対してほぼ対称な略正方形を形成しており、前記4本の辺の隣り合う2辺の交点部分には該凹部表面から突出し且つ前記軸部の径と同じもしくは若干大きい外径をもつ凸部が形成されていることを特徴とする圧入固定式ファスナー(但し、頭部の形状が、軸部に向かって縮径されているものを除く)。
- 前記頭部が、周辺に凹凸がなく、高さが低い略円柱状であることを特徴とする請求項1に記載の圧入固定式ファスナー。
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