JP3979004B2 - 方向性電磁鋼板の絶縁被膜形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、変圧器や発電機の鉄心に利用される方向性電磁鋼板に関し、特に鉄損が極めて低い方向性電磁鋼板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
方向性電磁鋼板は主として変圧器やその他の電気機器の鉄心材料として広く用いられているが、磁束密度および鉄損値等の磁気特性に優れることが重要であり、特にエネルギーロスを少なくするために低鉄損にすることが求められている。
【0003】
鉄損を低減するためには鋼板の板厚を薄くする方法、鋼板に有効なSiを含有させ電気抵抗を高める方法、またヒステリシス損を低下させるために有効な鋼板の結晶方位の配向性を高める方法などがあるが、さらに鋼板に張力を付与することが有効であることが知られており、そのために鋼板より熱膨張係数が小さい材質の被膜を設けることが行われている。
【0004】
例えば、最終的に結晶方位を揃える二次再結晶と鋼板の純化を兼ねる仕上焼鈍工程で、鋼板表面の酸化物と鋼板表面に塗布した焼鈍分離剤が反応してフォルステライトを主成分とする被膜が形成されるが、この被膜は鋼板に与える張力が大きく、鉄損低減に効果がある。さらに張力を上げるために、フォルステライト被膜の上に、低熱膨張性のコーティング液を上塗りして製品(方向性電磁鋼板)とする方法が行われている。
【0005】
ところが、近年、鋼板表面を磁気的に平滑化する手法が開発された。例えば、特公昭52−24499号公報には仕上焼鈍後、酸洗により表面生成物を除去し、ついで、化学研磨または電解研磨することにより鏡面状態に仕上げる方法が提案されている。また特開平5−43943号公報にはフォルステライト被膜を除去した後、1000〜1200℃の水素中でサーマルエッチングする方法が提案されている。
【0006】
そして、仕上焼鈍工程で意図的にフォルステライト被膜を除去した鋼板表面をさらに平滑に仕上げると、著しい鉄損の低減が認められることが明らかになった。このような表面処理により鉄損が低減するのは、磁化過程において鋼板の表面近傍の磁壁移動の妨げとなるピニングサイトが減少するためである。
【0007】
なお、ヒステリシス損失を減少させる磁気的に平滑な表面の状態とは、一般にRa(中心線平均粗さ)で表現される、いわゆる表面粗度だけが低減されたものではなく、特公平4−72920号公報に示される表面生成物を除去した後、ハロゲン化水溶液中で電解する結晶方位強調処理により得られるような表面状態であることが有効である。
【0008】
現在、フォルステライト被膜を有する方向性電磁鋼板に適用される張力付与型絶縁コーティング液は、Alやアルカリ土類金属のリン酸塩とコロイダルシリカ、無水クロム酸またはクロム酸塩を主成分とした処理液であり、これを塗布し、焼き付けすることが多い。張力付与型の絶縁被膜は、鋼板より熱膨張係数の小さいコロイダルシリカに代表される無機質を含有するコーティング液を高温で塗布して形成されるので、その際の地鉄と絶縁被膜との熱膨張差を利用して、常温において張力を鋼板に付与するものである。その形成方法は特公昭53−28375号公報、特公昭56−52117号公報などに記載されている。
【0009】
この方法で形成される絶縁被膜は鋼板に対する張力付与効果が大きく、鉄損低減に有効である。しかし、この方法による場合は、鋼板に対する張力付与の大きい絶縁被膜ほど下地との密着力を強くしなければ、絶縁被膜が剥離するという問題がある。すなわち、フォルステライト系の仕上焼鈍被膜が鋼板表面に存在する場合には、該焼鈍被膜の張力付与型絶縁被膜に対する密着性に問題はないが、フォルステライト系の仕上焼鈍被膜を除去し、特に鏡面化などの表面平滑化処理を行った場合には、該表面に張力付与型コーティング液を付着させることができない。このため、表面を磁気的に平滑化し、鉄損を低減する技術と張力付与型絶縁被膜による鉄損低減技術とを並立させることはできなかった。
【0010】
フォルステライト系被膜がない表面、さらに調整された平滑な表面に張力付与型絶縁被膜を形成する方法として、従来いくつかの方法が提案されている。例えば、前述の特公昭52−24499号公報には金属めっき後、特開平6−184762号公報には酸化ケイ素薄膜を形成させた後、張力付与型コーティング液を塗布、焼付けする方法が開示されている。
【0011】
さらに、特公昭56−4150号公報にはセラミックス薄膜を蒸着、スパッタリング、溶射などによって形成させる方法が、特公昭63−54767号公報には窒化物や炭化物のセラミックス被膜をイオンプレーティングまたはイオンプランテーションによって形成する方法が開示されている。特公平2−243770号公報にはいわゆるゾル−ゲル法によって高張力付与型のセラミックス被膜を鋼板表面に直接形成する方法が開示されている。
【0012】
これらの方法は平滑な表面を有する鋼板に張力を付与する方法として考案されたものではあるが、幾つかの問題点を有し、実用化されるに至っていない。すなわち、金属薄めっきを下地とし、その上にコーティング処理する方法では均一なめっき面の平滑さゆえに絶縁被膜の密着性が十分でなかったり、酸化ケイ素薄膜を形成させる方法は張力付与効果が劣るなど、鉄損の改善効果は十分でなかった。
【0013】
また、窒化物や炭化物あるいはその組合せからなるセラミックス被膜はいずれもその熱膨張係数が地鉄と比較してかなり低いため熱膨張係数の差による張力付与効果が大きいが、反面、地鉄と被膜との曲げ密着性に問題があった。さらに蒸着、スパッタリング、溶射、イオンプレーティングまたはイオンプランテーションによるセラミック被膜の形成は高コストである上、大面積を大量処理する際の均一性確保が困難であったり、ゾル−ゲル法では従来と同様な塗布、焼付けによる被膜形成が可能であるものの、0.5μm以上の厚さの均一美麗な被膜の形成が極めて困難なため、大きな張力付与効果をもたらすに至らず、所期の鉄損改善効果が得られなかった。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、これらの従来技術の問題点を解決し、極めて鉄損値の低い方向性電磁鋼板を低コストで工業的に生産することができる製造方法を提供することを目的としてなされたものである。本発明者は、リン酸塩系絶縁コーティング液の鋼板への密着性を改善させる組成について鋭意研究を行った結果、▲1▼コーティング液の主剤の第一リン酸塩水溶液に特定量のリン酸を添加し、▲2▼親水基または有機結合基と金属結合基を有する有機金属化合物を密着性改善剤として添加すると鋼板表面と絶縁被膜との密着性が著しく改善すること、▲3▼絶縁コーティング液の反応性向上に伴う地鉄と絶縁被膜との界面における反応を、コロイダルシリカを一定量以上添加することにより抑止し、ヒステリシス損失の増加を防止できることを知見し、本発明を完成させた。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、フォルステライトの生成を抑止またはフォルステライトを除去した方向性電磁鋼板に、リン酸塩を主成分とするコーティング液を塗布、焼き付けすることによって張力付与型絶縁被膜を形成する方法において、該液のリン酸塩のリン酸基100質量部に対して、リン酸を50〜300質量部、親水基および/または有機結合基と金属結合基を有する有機金属化合物を0.5〜30質量部、およびコロイダルシリカを20〜200質量部配合したことを特徴とする方向性電磁鋼板の絶縁被膜形成方法である。
【0016】
好ましい本発明は、コーティング液の塗布前に方向性電磁鋼板表面を平滑化することを特徴とする前記の方向性電磁鋼板の絶縁被膜形成方法である。
【0017】
【発明の実施の形態】
絶縁被膜と鋼板表面との密着性向上には、コーティング液の反応性を高めることが重要と考えられたので、前述した本願出願人が提案した第一リン酸塩を含むコーティング液に、フリーのリン酸(リン酸塩となっていないもの)を配合したコーティング液を調製した。そして該コーティング液の組成を変えて、下記の方法で製造、処理して得た平滑化電磁鋼板に、溝付きゴムロールを用いて片面当たり4.0g/m2塗布し、850℃で焼き付けを行い、絶縁被膜が強固に密着した電磁鋼板を得た。
【0018】
すなわち、3質量%のSiを含有する冷延鋼板(最終板厚0.23mm)を脱炭、一次再結晶焼鈍した後、マグネシアを主成分とする焼鈍分離剤を塗布し、二次再結晶過程と純化過程を含む最終焼鈍を施し、さらに硫酸酸洗し、表面のフォルステライトを除去し、ついで、リン酸−クロム酸浴中で電解研磨を行い、表面を磁気的に平滑化した鋼板を用いた。
【0019】
図1は第一リン酸アルミニウム水溶液中に含まれるリン酸塩のリン酸基(PO4 )100質量部およびコロイダルシリカ100質量部に対し、リン酸を添加した場合のコーティング液の地鉄被覆率を目視で判断した結果である。リン酸添加量が50質量部未満では、焼付け後に絶縁被膜は剥離し、密着すらしなかったのに対し、50質量部以上では絶縁被膜の密着性改善効果が現れ、ほぼ100%の被覆率を得ることができた。コーティング液中のフリーのリン酸が鋼板表面との反応性を高め、造膜過程で強固な密着力を発現させたためと考えられる。しかし、350質量部を超えて添加した場合には、絶縁被膜におねしょ模様と呼ばれるエッチング模様が現れた。これはリン酸により地鉄表面が部分的にエッチングされたために起こった現象と推定され、外観を著しく損なった。好ましい添加量は150〜250質量部である。
【0020】
図2は第一リン酸マグネシウム水溶液中に含まれるリン酸塩のリン酸基(PO4 )100質量部に対しリン酸200質量部を添加し、さらに添加するコロイダルシリカの量を変化させた時の鉄損W17/50 値の測定結果である。コロイダルシリカを全く添加していない場合、鉄損値劣化は特に大きいことから、リン酸を添加する時、コロイダルシリカを20〜200質量部、好ましくは50〜150質量部同時に添加することが重要である。
【0021】
絶縁被膜が形成された電磁鋼板の断面SEM観察を行うと、絶縁被膜と接している地鉄部で内部酸化が起こり、地鉄の内方にシリカ層が形成され、コーティング液塗布前は平滑であった平滑面が著しく乱れていた。薄膜X線回折を行うと、りん酸鉄が形成されていることもわかった。
コロイダルシリカをリン酸塩含有コーティング液に添加し、絶縁被膜を形成させることにより熱膨張係数を低下させ、鋼板の張力付与効果を向上させるが、コロイダルシリカを本発明のコーティング液に添加する場合に、添加量が20質量部未満であると、密着性の改善効果はあるものの、鉄損値劣化を招く。
【0022】
ところが、コロイダルシリカを20質量部以上添加した場合には、界面は平滑なままで、地鉄から外方へごく薄い層が形成されていた。コロイダルシリカ添加は絶縁被膜と地鉄との界面の酸化挙動を変化させ、内部酸化を抑制する効果があるものと思われる。この層の正体や形成機構は明らかではないが、地鉄の外部に形成されるため、磁気的平滑性を失うことなく、バインダーの役割を果して密着性向上に寄与しているものと推定される。コロイダルシリカを200質量部より多く添加した場合には、発粉が起こり絶縁被膜の外観も悪くなった。
【0023】
本発明の第三の特徴はコーティング液に、親水基および/または有機結合基を有し、さらに金属結合基を有する有機金属化合物を添加する点である。ここで、金属結合基は鋼板またはごく薄い形成層と化学的に結合して絶縁被膜の密着に寄与するものと推定される。また、有機結合基や親水基は同じく化学的に絶縁被膜と作用して密着に寄与するものと推定される。
【0024】
有機金属化合物の添加量は地鉄と絶縁被膜との界面に作用すればよいので少量でよく、0.5〜30質量部、特に5〜15質量部であるのが好ましい。0.5質量部未満では絶縁被膜の密着性改善効果がなく、逆に30質量部を超える場合には、コーティング液の造膜に悪影響を及ぼし、短時間内では成膜しにくくなる。
【0025】
本発明に用いる有機金属化合物はメタン、エタン、プロパン、ブタンなどの直鎖状炭化水素、シクロヘキサンなどの脂環状炭化水素などの炭化水素に、Al、Fe、Si、Ti、Zrなどの金属が一つ(金属単体)または二つ以上結合した化合物などを骨格とするものであるが、もちろん例示したものに限定されるものではない。本発明の有機金属化合物は、上記骨格に加えて、親水基および/または有機結合基と金属結合基を有するものであるが、ビニルトリクロロシランのように、骨格の炭化水素が有機結合基を兼ねるものも含む。
【0026】
金属結合基としては、メトキシ基、エトキシ基などの加水分解によってM−O−Fe型の金属結合を生じるアルコキシル基やその加水分解基、アセトキシ基などのアシル基、メトキシカルボニル基などの低級アルコキシカルボニル基や塩素原子などのハロゲン原子を挙げることができる。ここにMは有機金属化合物中の金属であり、上記したAl、Fe、Si、Ti、Zrなどの一つまたは二つ以上であるが、Siが後述のように安定した結合を形成できるのでより好ましい。
【0027】
親水基としてはアミノ基、カルボキシル基、水酸基、カルボニル基、スルホ基などを挙げることができる。
【0028】
有機結合基としてはビニル基、エポキシ基、メタクリル基、メタクリロキシ基、メルカプト基、ウレイド基、グリシドキシ基など、単純なアルキル基以外の有機基や塩素原子などのハロゲン原子を挙げることができる。
【0029】
好適な有機金属化合物はシランカップリング剤として知られる有機ケイ素化合物、またはそのオリゴマーである。具体的にはビニルトリクロロシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシランなどの有機結合基含有系有機金属化合物、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどの親水基含有系有機金属化合物を挙げることができる。好ましいのはγ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランである。
【0030】
本発明のコーティング液が塗布される対象の方向性電磁鋼板は、フォルステライトの生成を抑止されたか、またはフォルステライトを除去する仕上焼鈍後のものである。仕上焼鈍後の金属表面としては、単にフォルステライトなどの無機質被膜を除去しただけの地鉄面でも有効ではあるが、さらに表面に平滑化処理を施した方が鉄損値の低下の点からより有効である。例えば、サーマルエッチングや化学研磨などにより表面の粗度を極力小さくし、鏡面状態に仕上げた表面やハロゲン化物水溶液中での電解による結晶方位強調処理で得られるグレイニング様面などとしたものが好適である。
【0031】
以下、本発明の電磁鋼板の成分組成について説明する。
電磁鋼板の成分としては、Siを1.5〜7.0質量%含有させることが望ましい。すなわち、Siは製品の電気抵抗を高め、鉄損を低減するのに有効な成分であるが、Si含有量が7.0質量%を超えると硬度が高くなり、製造や加工が困難になりがちである。Si含有量が1.5質量%未満であると最終仕上焼鈍中に変態を生じて安定した二次再結晶組織が得られない。
【0032】
インヒビター元素としてAlを初期鋼中に0.006質量%以上含有させることにより結晶配向性をより一層向上させることができる。上限は0.06質量%で、これを超えると再び結晶配向性の劣化が始まる。窒素も同様の作用があり、上限はふくれ欠陥の発生から100ppm が好ましい。窒素の含有量の下限値は特に規定しないが、工業的規模で20ppm 未満に低下させるのは経済的に困難であり、20ppm が好適である。
【0033】
また、一次再結晶焼鈍後に増窒素処理を行う工程の付加も有効である。
増窒素処理を行わない場合には、副インヒビターとしてMnSe、MnSを析出させるために、初期鋼中に0.02〜0.2質量%のMnと、Seおよび/またはSを両元素の和で0.01〜0.06質量%含有させることが重要である。それぞれの含有量が少なすぎると二次再結晶を生じるための析出物が過少となり、また多すぎると熱延前の固溶が困難となる。増窒素処理を行う場合は、Mnを必ずしも添加する必要はないが、鋼板の延性改善などの目的で適宜添加するのがよい。
【0034】
鋼中には、上記の元素の他に、方向性電磁鋼板の製造に適するインヒビター成分としてB、Bi、Sb、Mo、Te、Sn、P、Ge、As、Nb、Ni、Cr、Ti、Cu、Pb、ZnおよびInから選ばれる元素を単独、または複合で0.0005〜2.0質量%程度含有させることができる。
【0035】
また、C、S、Nなどの不純物はいずれも、磁気特性上有害な作用があり、特に鉄損を劣化させるので、それぞれC:0.003質量%以下、S:0.002質量%以下、N:0.002質量%以下に低減することが好ましい。
【0036】
つぎに本発明の電磁鋼板の製造方法について好適条件とその理由を説明する。
所定の成分に調整された鋼は通常スラブ加熱に供された後、熱間圧延により熱延コイルとされるが、このスラブの加熱温度は1300℃以上の高温、1250℃以下の低温のいずれでもよい。また、近年、スラブ加熱を行わず、連続鋳造後、直接熱間圧延を行う方法が開発されているが、この方法による鋼板にも、本発明の方法が適用できる。
【0037】
熱間圧延後の鋼板に必要に応じて熱延板焼鈍を施し、1回の冷延または中間焼鈍を挟む複数回の圧延によって最終冷間圧延板とする。これらの圧延については、動的時効を狙った、いわゆる温間圧延や静的時効を狙ったパス間時効を施したものであってもよい。
【0038】
最終冷間圧延後の鋼板は脱炭焼鈍を兼ねる一次再結晶焼鈍を施され、最終仕上げ焼鈍により二次再結晶処理され、方向性を得る。最終仕上げ焼鈍を行う場合には、通常一次再結晶焼鈍後に焼鈍分離剤を塗布し、これにより酸化物被膜を形成させるが、この焼鈍分離剤の組成を調整して、鋼板表面上の酸化物被膜の生成を抑制することもできる。
【0039】
このようにして得られた鋼板に、さらなる鉄損低減を目的としてレーザーまたはプラズマ炎などを照射して、磁区の細分化を行っても、絶縁被膜の密着性にはなんらの問題もない。また、本発明の方向性電磁鋼板の製造工程の任意の段階で、磁区細分化のため、表面にエッチングや歯形ロールで一定間隔の溝を形成することも一層の鉄損低減を図る手段として有効である。
【0040】
【実施例】
(実施例1〜4、比較例1〜6)
Siを3質量%含有する冷間圧延鋼板(最終板厚0.23mm)を脱炭、一次再結晶焼鈍した後、マグネシアに対して塩化鉛を0.3質量%含む焼鈍分離剤を用いて、フォルステライト膜の形成を抑制しつつ、磁区細分化のために溝形成を行った後、二次再結晶させて方向性電磁鋼板を得た。
【0041】
リン酸基100質量部の第一リン酸マグネシウムに、重クロム酸カリウム15質量部を加えた水溶液に、コロイダルシリカ、リン酸、および金属結合基としてエトキシ基、親水基としてアミノ基を有するアミノプロピルエトキシシランを表1に示す割合で混合してコーティング液を調製した。該液をロールコーターで上記鋼板に塗布し、800℃で焼付けして、約4.0g/m2の厚さの被膜を形成した。
【0042】
得られた鋼板の被膜密着性と鉄損W17/50 値を下記の方法により評価した。液組成と評価結果を表1にまとめて示した。
【表1】
鉄損は50Hzの周波数で1.7Tに磁化させた場合の損失[W17/50 (W/kg)]を測定した。
被膜の密着性は種々の径を持つ丸棒に試料を巻き付け、被膜が剥離しない最小径(mm)で評価した。
また、外観は目視によった。
【0043】
表1から明らかなように、試料2、8、9、10は本発明のコーティング液組成に適合するので、優れた外観と被膜密着性(最小曲げ剥離径)と鉄損W17/50 値を示している。これらに対し、リン酸、コロイダルシリカ、または金属結合基を有する有機金属化合物の添加量が本発明の組成に適合しない、すなわち、試料1、3〜7は密着性や外観が悪かったり、磁気特性が劣化した。
【0044】
(実施例5〜8、比較例7〜12)
Siを3質量%含有する冷間圧延鋼板(最終板厚0.23mm)に、磁区細分化のために5mm間隔のエッチング溝を形成、脱炭、一次再結晶焼鈍した後、マグネシアを主成分とし塩化鉛を0.3質量%含む焼鈍分離剤を塗布し、最終仕上げ焼鈍板を得た。さらに追加処理として塩化ナトリウム水溶液中での電解による結晶方位強調処理である平滑化処理を施し、表面を磁気的に平滑化した。
【0045】
リン酸基100質量部の第一リン酸アルミニウムとクロム酸10質量部を含む水溶液に、コロイダルシリカ、リン酸、および金属結合基としてメトキシ基、有機結合基としてグリシドキシ基を有するグリシドキシプロピルトリメトキシシランを混合して調製したコーティング液を、上記の鋼板に塗布し、850℃で焼付け、約5.0g/m2の厚さの被膜を形成した。該電磁鋼板の外観、密着性および磁気特性を評価し、評価結果を液組成とともに表2にまとめて示した。
【表2】
【0046】
表2から明らかなように、試料12、16、19、20は本発明のコーティング液組成に適合するので、優れた外観と被膜密着性と鉄損W17/50 値を示している。これらに対し、リン酸やコロイダルシリカ、または金属結合基を有する有機金属化合物の添加量が本発明の組成に適合しない、試料11、13〜15、17、18は絶縁被膜がうまく成膜しなかったり、磁気特性が劣化した。
【0047】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、仕上げ焼鈍被膜のない平滑な方向性電磁鋼板の表面に密着性のよい絶縁被膜を形成でき、鉄損低減が大幅に改善された方向性電磁鋼板を低コストで工業的規模で製造することができる。得られた鋼板は変圧器などの鉄心材料として好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 コーティング液のリン酸添加量とコーティング液の鋼板に対する被覆率との関係を示すグラフ。
【図2】 コーティング液のコロイダルシリカ添加量と絶縁被膜が形成された鋼板の鉄損値との関係を示すグラフ。
Claims (2)
- フォルステライトの生成を抑止またはフォルステライトを除去した方向性電磁鋼板に、リン酸塩を主成分とするコーティング液を塗布、焼き付けすることによって張力付与型絶縁被膜を形成する方法において、
該液のリン酸塩のリン酸基100質量部に対して、リン酸を50〜350質量部、親水基および/または有機結合基を有し、さらに金属結合基を有する、Al、Fe、Si、TiおよびZrからなる群から選ばれる一つまたは二つ以上が炭化水素に結合した有機金属化合物を0.5〜30質量部、およびコロイダルシリカを20〜200質量部配合し、
前記親水基がアミノ基、カルボキシル基、水酸基、カルボニル基およびスルホ基からなる群から選ばれる一つまたは二つ以上であり、
前記有機結合基がビニル基、エポキシ基、メタクリル基、メタクリロキシ基、メルカプト基、ウレイド基、グリシドキシ基およびハロゲン原子からなる群から選ばれる一つまたは二つ以上であり、
前記金属結合基がアルコキシル基、アルコキシル基の加水分解基、アシル基、低級アルコキシカルボニル基およびハロゲン原子からなる群から選ばれる一つまたは二つ以上である、方向性電磁鋼板の絶縁被膜形成方法。 - コーティグ液の塗布前に、方向性電磁鋼板表面を平滑化することを特徴とする請求項1に記載の方向性電磁鋼板の絶縁被膜形成方法。
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