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JP3977532B2 - 燃料集合体、原子炉の炉心及びチャンネルボックス - Google Patents

燃料集合体、原子炉の炉心及びチャンネルボックス Download PDF

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JP3977532B2 JP36775798A JP36775798A JP3977532B2 JP 3977532 B2 JP3977532 B2 JP 3977532B2 JP 36775798 A JP36775798 A JP 36775798A JP 36775798 A JP36775798 A JP 36775798A JP 3977532 B2 JP3977532 B2 JP 3977532B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、沸騰水型原子炉に用いられる燃料集合体に係わる。特に、いわゆるD格子タイプの炉心に用いられる燃料集合体、及びその燃料集合体を用いた原子炉の炉心、並びにその燃料集合体に備えられるチャンネルボックスに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、沸騰水型原子炉の燃料集合体は、複数の燃料棒と、少なくとも1本の水ロッドとを備えている。各燃料棒には、核分裂性物質が充填されている。これら燃料棒は、n行n列(例えばn=8,9,…)の正方格子状に配列されている。それら正方格子状配列の外周は、チャンネルボックスで取り囲まれている。炉心は、このような燃料集合体を所定間隔で多数配置して構成されている。さらに炉心は、その出力調整を行うための制御棒を備えている。この制御棒は、燃料集合体間のギャップに挿入される。
【0003】
炉心における燃料集合体間のギャップ構造に関しては、いわゆるD格子と称される構造が従来より用いられてきた。このD格子炉心では、制御棒側のギャップ間隔が制御棒がない側のギャップ間隔より広くなっている。
【0004】
ところで、沸騰水型原子炉では、冷却材として炉心中の水を用いている。この冷却水が、核分裂で発生する熱を除熱する。この冷却水はまた、中性子の減速材としての役割も果たしている。燃料棒の核分裂性物質は、主に、減速された中性子(熱中性子)と反応して核分裂を起こす。したがって、中性子の減速は、沸騰水型原子炉では重要な役割を果たす。この中性子の減速作用は、一般に、水が広い領域にわたって連続的に存在しているところで大きい。したがって、燃料集合体間にある水は、中性子の減速に大きな役割を果たしている。
【0005】
一方、原子炉の炉心に関する重要な量として、線出力密度がある。原子炉の設計に関しては最大線出力密度が問題となる。これは原子炉内でもっとも大きい線出力密度のことである。この最大線出力密度が過大となると、当該燃料棒中心温度が過度に上昇する。この場合、燃料棒ペレットと被覆管の熱的健全性が確保できなくなる可能性がある。したがって、原子炉の安全上の観点から、最大線出力密度には所定の制限値が定められている。すなわち、最大線出力密度は、なるべく小さい方が好ましい。上記所定の制限値に対し熱的に余裕のある状態となるからである。
【0006】
なお、上記「燃料集合体出力」に関する重要な量として、燃料集合体限界出力がある。上述したように、沸騰水型原子炉の炉心においては、冷却材として水を用いている。すなわち、燃料集合体下部から流入した水は、燃料棒近傍を流れる間に沸騰し、燃料集合体上部から流出する。このときの沸騰の程度は、炉心への入口である燃料集合体下部では小さい。一方、炉心からの出口である燃料集合体上部では大きい。すなわち、燃料集合体の上部では蒸気の割合が大きくなり、流動様式が環状噴霧流となり、燃料棒表面は液膜で覆われた状態になっていると考えられる。燃料集合体の出力を大きくしていくとどこかの燃料棒表面の液膜が最初に蒸発等によってなくなる。この、液膜がなくなるときの出力を限界出力という。限界出力は、燃料集合体の冷却材流量等によって変化する。原子炉は全ての燃料集合体が限界出力以下であることを常にチェックしながら運転されている。
【0007】
以上のような事情に鑑み、通常、燃料集合体の設計においては、燃料棒ペレットを複数種類用意して燃料濃縮度分布を適宜設ける。あるいは、燃料棒に添加する可燃性吸収材の濃度分布を適宜設ける。これらにより、「燃料集合体の軸方向相対出力ピーキング」や、燃料集合体内の燃料棒の相対出力ピーキングである「局所出力ピーキング」を小さくして、限界出力特性等を改善し、原子炉の安全余裕の向上及び経済性の向上を図っている。
【0008】
ここで、D格子炉心では、前述したようにギャップ間隔の相違が存在する。そして、通常運転中は大半の制御棒が引き抜かれているので、間隔の広いところの方が、間隔の狭いところより中性子の減速効果が大きくなる。これにより、制御棒が引き抜かれた状態では、制御棒側の広いギャップ間隔の方が反制御棒側の狭いギャップ間隔よりも中性子の減速効果が大きくなる。すなわち、D格子炉心に燃料集合体を装荷した場合、間隔の広いところに近い燃料棒と間隔の狭いところに近い燃料棒の出力が異なることになる。すなわち、上述した局所出力ピーキングの値が比較的大きくなりやすい。したがって、最大線出力密度が大きくなる傾向にある。そのため、前述した燃料濃縮度分布や可燃性吸収材の濃度分布を細かく設ける必要が生じ、燃料集合体の設計自由度が小さくなっていた。
【0009】
そこで、その後、いわゆるC格子と称される構造が提唱された。このC格子炉心では、制御棒側のギャップ間隔と制御棒がない側のギャップ間隔とが等しくなっている。これにより、D格子炉心よりも設計自由度を大きくすることができる。これによって、比較的容易に、エネルギー効率上最適な構造とすることができる。概略的には、例えば、燃料の取り出し燃焼度(単位重量の燃料から取り出すことができるエネルギー)を、D格子炉心よりも数%大きくすることができる。このように、燃料の経済性においてC格子炉心の方がD格子炉心よりも優れている。
【0010】
このように、近年、燃料経済性の優れたC格子炉心が提唱された。しかし、そのときには既にD格子炉心が数多く稼働していた。そこで、それら格子炉心を改良し、燃料経済性を向上するための試みが提唱されている。
【0011】
そのような従来技術の一例として、特許2791132号公報がある。この公知技術は、D格子炉心用燃料集合体に関するものである。すなわち、9×9正方格子状配列において、燃料棒ピッチを小さくしている。そして、最外周燃料棒とチャンネルボックスとの距離を、制御棒側のほうを制御棒がない側よりも小さくしている。これにより、D格子炉心に配置したときに、制御棒側と制御棒がない側との燃料集合体間ギャップ間隔の差を小さくしている。したがって、その分、炉心特性をC格子炉心に近づけることができる。またこのとき、制御棒及び制御棒駆動機構については、従来のD格子炉心のものをそのまま用いることができる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記公知技術では、以下の課題が存在する。すなわち、燃料棒ピッチを小さくすることから、燃料棒間に冷却水が流れにくくなる。これにより、冷却水による除熱性能が低下し、同一の線出力密度でも、熱的余裕がより確保しにくくなる。すなわち、従来のD格子炉心用燃料集合体よりも、熱的余裕が小さくなる。
また、正方格子状に配列された燃料棒及び水ロッドは、その軸方向複数箇所を燃料スペーサで束ねられ、燃料バンドルを形成している。燃料スペーサには、燃料棒や水ロッドの間隔を所定値に保持するための保持部材(例えば、円筒部材等)が備えられている。ここで、燃料棒ピッチが変わると、それら保持部材の配置ピッチも変えなくてはならない。したがって、既存の燃料スペーサを用いることができなくなる。すなわち、新たな燃料スペーサを用意する必要がある。
【0013】
本発明の目的は、熱的余裕を小さくすることなくC格子炉心に近い燃料経済性を達成でき、かつ、既存の燃料スペーサをそのまま利用できるD格子炉心用の燃料集合体、及びその燃料集合体を用いた原子炉の炉心、並びにその燃料集合体に備えられるチャンネルボックスを提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、n行n列の正方格子状に配列された複数本の燃料棒と、該燃料棒が1本以上配列可能な領域に配置された少なくとも1本の水ロッドと、これら燃料棒及び水ロッドからなる燃料バンドルの下端を支持する下部タイプレートと、前記燃料バンドルの軸方向複数箇所を保持する燃料スペーサと、前記燃料バンドルを取り囲むチャンネルボックスと、チャンネルファスナーを固定するために設けられるガイドポストとを備えた燃料集合体において、n=9であり、前記複数本の燃料棒のピッチは、14.15[mm]以上14.65[mm]以下であり、前記チャンネルボックスの内幅は、133.5[mm]以上134.5[mm]以下であり、前記下部タイプレートの軸心位置は、前記燃料棒及び水ロッドからなる燃料バンドルを取り囲むチャンネルボックスの軸心位置と一致しており、かつ、前記燃料バンドルの軸心位置を、前記チャンネルボックスの位置はそのままにして前記下部タイプレートの軸心位置よりも前記チャンネルファスナー側に下記Yだけ偏心させて保持する偏心保持手段を設け、Y≧2 −3/2 [mm]、前記偏心保持手段は、前記下部タイプレートに設けられ、前記燃料バンドルを構成する燃料棒及び水ロッドの下端部を挿入して保持する複数の挿入孔と、前記燃料スペーサの外周部と前記チャンネルボックスの内周部の少なくとも一方に設けられた複数のタブと、前記チャンネルファスナーに設けられ、前記ガイドポストの上端部を挿入して保持する挿入孔とを備えるものとする。D格子炉心では、燃料集合体を配置したときに、制御棒側(すなわちチャンネルファスナー側)のギャップ間隔が制御棒がない側(すなわち反チャンネルファスナー側)のギャップ間隔より広くなっている。これにより、間隔の広いチャンネルファスナー側のほうが間隔の狭い反チャンネルファスナー側よりも連続した水領域が大きくなる。したがって、チャンネルファスナー側のほうが反チャンネルファスナー側より中性子の減速効果が大きくなる。これにより、チャンネルファスナー側の燃料棒の出力が相対的に大きくなり、局所出力ピーキングの値が比較的大きくなりやすい傾向となる。そこで、本発明においては、偏心保持手段(下部プレートの燃料棒下端部及び水ロッド下端部の挿入孔、燃料スペーサの複数のタブ及びチャンネルファスナーのガイドポスト挿入孔)で、燃料バンドルの軸心位置をチャンネルファスナー側に偏心させる。すなわち、上述した広いチャンネルファスナー側のギャップを狭くなる方向に、狭い反チャンネルファスナー側のギャップを広くする方向に変える。これにより、これら2つのギャップの広さの差を緩和し、連続した水領域の差を緩和することができる。したがって、チャンネルファスナー側と反チャンネルファスナー側との燃料棒の出力の差を小さくし、局所出力ピーキングを低減することができる。すなわち、炉心特性をC格子炉心に近づけることができる。
また、本発明においては、軸心位置をチャンネルファスナー側にY≧2−3/2[mm]だけ偏心させる。すなわち、正方格子状配列の行方向(又は列方向)には0.25[mm]以上移動することになる。これにより、偏心させない場合よりも、局所出力ピーキングを少なくとも1[%]以上減少させることができる。したがって、炉心特性を確実にC格子炉心に近づけ、燃料経済性を向上することができる。)
【0015】
(2)上記()において、好ましくは、7×2−1/2[mm]≧Y≧2−3/2[mm]とする。
n=9の場合、若干の幅はあるが、例えば"nuclear engineering INTERNATIONAL" vol.43 No.530(September,1998;Wilmington Business Publication) p12-31に記載のように、通常、燃料棒直径は約11.0[mm]である。また、熱的余裕を確保するためには、隣接燃料棒どうしの間隔は3[mm]程度必要である。すると、燃料棒9本の両端の距離は、11.0×9+3×(9−1) 123[mm]となる。ここで、燃料バンドルを取り囲むチャンネルボックスの内幅Wは約134[mm]である。したがって、正方格子状配列最外周の燃料棒とチャンネルボックス内周面との間に残された距離は、両側を合わせて134−123=11[mm]が最大値となる。そして、最外周の燃料棒とチャンネルボックス内周面との間には、通常2[mm]以上の間隙が必要とされる。なぜなら、燃料スペーサのバンドを挿入する必要があるからである。また、熱的余裕の観点からも同様の間隙が必要とされている。したがって、実際に、燃料バンドルを偏心させるために有効に利用できるのは、11−2×2=7[mm]である。すなわち、チャンネルファスナー側に偏心させるとき、正方格子状配列の行方向(又は列方向)には移動可能な実際上の最大値は、7[mm]となる。本発明においては、これに応じて、軸心位置をチャンネルファスナー側にY≦7×2−1/2[mm]だけ偏心させる。これにより、正方格子状配列の行方向(又は列方向)への移動距離を7.0[mm]以下とする構成を実現している。
【0016】
)さらに上記(1)において、好ましくは、前記偏心保持手段としての複数のタブは、前記燃料スペーサの外周部に設けられた複数のタブであり、前記複数のタブのうち前記チャンネルファスナー側に位置するタブの先端と前記正方格子状配列の最外周に位置する燃料棒との距離L1、及び前記複数のタブのうち反チャンネルファスナー側に位置するタブの先端と前記正方格子状配列の最外周に位置する燃料棒との距離L2が、L2−L1≧0.5[mm]となるように構成されている。
【0017】
)上記()において、好ましくは、7.0[mm]≧L2−L1≧0.5[mm]となるように構成されている。
【0019】
)さらに上記目的を達成するために、本発明は、n行n列の正方格子状に配列された複数本の燃料棒と、該燃料棒が1本以上配列可能な領域に配置された少なくとも1本の水ロッドと、これら燃料棒及び水ロッドからなる燃料バンドルの下端を支持する下部タイプレートと、前記燃料バンドルの軸方向複数箇所を保持する燃料スペーサと、前記燃料バンドルを取り囲むチャンネルボックスと、チャンネルファスナーを固定するために設けられるガイドポストとを備えた燃料集合体において、n=10であり、前記複数本の燃料棒のピッチは、12.65[mm]以上13.15[mm]以下であり、前記チャンネルボックスの内幅は、133.5[mm]以上134.5[mm]以下であり、前記下部タイプレートの軸心位置は、前記燃料棒及び水ロッドからなる燃料バンドルを取り囲むチャンネルボックスの軸心位置と一致しており、かつ、前記燃料バンドルの軸心位置を、前記チャンネルボックスの位置はそのままにして前記下部タイプレートの軸心位置よりも前記チャンネルファスナー側に下記Yだけ偏心させて保持する偏心保持手段を設け、Y≧2 −3/2 [mm]、前記偏心保持手段は、前記下部タイプレートに設けられ、前記燃料バンドルを構成する燃料棒及び水ロッドの下端部を挿入して保持する複数の挿入孔と、前記燃料スペーサの外周部と前記チャンネルボックスの内周部の少なくとも一方に設けられた複数のタブと、前記チャンネルファスナーに設けられ、前記ガイドポストの上端部を挿入して保持する挿入孔とを備えるものとする
【0021】
)上記()において、好ましくは、7×2−1/2[mm]≧Y≧2−3/2[mm]とする。
n=10の場合、例えば"nuclear engineering INTERNATIONAL" vol.43 No.530(September,1998;Wilmington Business Publication) p12-31に記載のように、通常、燃料棒直径は約10.05[mm]である。また、熱的余裕を確保するためには、隣接燃料棒どうしの間隔は2.5[mm]程度必要である。すると、燃料棒10本の両端の距離は、10.05×10+2.5×(10−1) 123.0[mm]となる。ここで、燃料バンドルを取り囲むチャンネルボックスの内幅は、上記文献に記載のように、約134[mm]である。したがって、正方格子状配列最外周の燃料棒とチャンネルボックス内周面との間に残された距離は、両側を合わせて134−123=11[mm]が最大値となる。そして、最外周の燃料棒とチャンネルボックス内周面との間には、通常2[mm]以上の間隙が必要とされる。したがって、実際に、燃料バンドルを偏心させるために有効に利用できるのは、11−2×2=7[mm]である。本発明においては、これに応じて、軸心位置をチャンネルファスナー側にY≦7×2−1/2[mm]だけ偏心させる。これにより、正方格子状配列の行方向(又は列方向)への移動距離を7[mm]以下とする構成を実現している。
【0022】
)さらに上記(6)において、好ましくは、前記偏心保持手段としての複数のタブは、前記燃料スペーサの外周部に設けられた複数のタブであり、前記複数のタブのうち前記チャンネルファスナー側に位置するタブの先端と前記正方格子状配列の最外周に位置する燃料棒との距離L1、及び前記複数のタブのうち反チャンネルファスナー側に位置するタブの先端と前記正方格子状配列の最外周に位置する燃料棒との距離L2が、L2−L1≧0.5[mm]となるように構成されている。
【0023】
)上記()において、好ましくは、7.0[mm]≧L2−L1≧0.5[mm]となるように構成されている。
【0029】
)さらに上記目的を達成するために、本発明は、9行9列の正方格子状に配列された複数本の燃料棒、該燃料棒が1本以上配列可能な領域に配置された少なくとも1本の水ロッド、これら燃料棒及び水ロッドからなる燃料バンドルの下端を支持する下部タイプレート、前記燃料バンドルの軸方向複数箇所を保持する燃料スペーサ、前記燃料バンドルを取り囲むチャンネルボックス、及びチャンネルファスナーを固定するために設けられるガイドポストをそれぞれ備えた複数の燃料集合体と、前記燃料集合体の間に挿入される少なくとも1つの制御棒とを備え、前記複数の燃料集合体相互間の間隔を前記制御棒側のほうが反制御棒側よりも大きくなるようにした原子炉の炉心において、前記複数の燃料集合体のうち少なくとも1つは、前記複数本の燃料棒のピッチが14.15[mm]以上14.65[mm]以下であり、前記チャンネルボックスの内幅が133.5[mm]以上134.5[mm]以下であり、前記下部タイプレートの軸心位置は、前記燃料棒及び水ロッドからなる燃料バンドルを取り囲むチャンネルボックスの軸心位置と一致しており、かつ、前記燃料バンドルの軸心位置を、前記チャンネルボックスの位置はそのままにして前記下部タイプレートの軸心位置よりも前記チャンネルファスナー側に下記Yだけ偏心させて保持する偏心保持手段を備え、Y≧2 −3/2 [mm]、前記偏心保持手段は、前記下部タイプレートに設けられ、前記燃料バンドルを構成する燃料棒及び水ロッドの下端部を挿入して保持する複数の挿入孔と、前記燃料スペーサの外周部と前記チャンネルボックスの内周部の少なくとも一方に設けられた複数のタブと、前記チャンネルファスナーに設けられ、前記ガイドポストの上端部を挿入して保持する挿入孔とを備えるものとする
【0030】
10)また上記(9)において、好ましくは、前記偏心保持手段は、前記チャンネルボックスの制御棒側に位置する内側面と前記正方格子状配列の最外周に位置する燃料棒との距離L1、及び前記チャンネルボックスの反制御棒側に位置する内側面と前記正方格子状配列の最外周に位置する燃料棒との距離L2が、L2−L1≧0.5[mm]の関係となるように、前記燃料バンドルの軸心位置を前記チャンネルボックスの軸心位置よりも前記制御棒側に偏心させて保持す
【0031】
11)さらに上記目的を達成するために、本発明は、10行10列の正方格子状に配列された複数本の燃料棒、該燃料棒が1本以上配列可能な領域に配置された少なくとも1本の水ロッド、これら燃料棒及び水ロッドからなる燃料バンドルの下端を支持する下部タイプレート、前記燃料バンドルの軸方向複数箇所を保持する燃料スペーサ、前記燃料バンドルを取り囲むチャンネルボックス、及びチャンネルファスナーを固定するために設けられるガイドポストをそれぞれ備えた複数の燃料集合体と、前記燃料集合体の間に挿入される少なくとも1つの制御棒とを備え、前記複数の燃料集合体相互間の間隔を前記制御棒側のほうが反制御棒側よりも大きくなるようにした原子炉の炉心において、前記複数の燃料集合体のうち少なくとも1つは、前記複数本の燃料棒のピッチが12.65[mm]以上13.15[mm]以下であり、前記チャンネルボックスの内幅が、133.5[mm]以上134.5[mm]以下であり、前記下部タイプレートの軸心位置は、前記燃料棒及び水ロッドからなる燃料バンドルを取り囲むチャンネルボックスの軸心位置と一致しており、かつ、前記燃料バンドルの軸心位置を、前記チャンネルボックスの位置はそのままにして前記下部タイプレートの軸心位置よりも前記チャンネルファスナー側に下記Yだけ偏心させて保持する偏心保持手段を備え、Y≧2 −3/2 [mm]、前記偏心保持手段は、前記下部タイプレートに設けられ、前記燃料バンドルを構成する燃料棒及び水ロッドの下端部を挿入して保持する複数の挿入孔と、前記燃料スペーサの外周部と前記チャンネルボックスの内周部の少なくとも一方に設けられた複数のタブと、前記チャンネルファスナーに設けられ、前記ガイドポストの上端部を挿入して保持する挿入孔とを備えるものとする
【0032】
12)また上記(11)において、好ましくは、前記偏心保持手段は、前記チャンネルボックスの制御棒側に位置する内側面と前記正方格子状配列の最外周に位置する燃料棒との距離L1、及び前記チャンネルボックスの反制御棒側に位置する内側面と前記正方格子状配列の最外周に位置する燃料棒との距離L2が、L2−L1≧0.5[mm]の関係となるように、前記燃料バンドルの軸心位置を前記チャンネルボックスの軸心位置よりも前記制御棒側に偏心させて保持す
【0034】
13)また上記目的を達成するために、本発明は、横断面形状が正方形となる略四角筒形状を備え、n行n列の正方格子状に配列された複数本の燃料棒及び少なくとも1本の水ロッドからなる燃料バンドルであって、n=9であり、前記複数本の燃料棒のピッチは、14.15[mm]以上14.65[mm]以下である燃料バンドルを覆うチャンネルボックスにおいて、前記チャンネルボックスの内幅は、133.5[mm]以上134.5[mm]以下であり、前記略四角筒形状の内周部に内側に突出して前記燃料バンドルを保持する複数のタブを設け、かつ、これら複数のタブのうち、前記正方形の対角線を境に一方側に位置するタブの突出高さと、前記対角線を境に他方側に位置するタブの突出高さが異なり、かつ、前記タブの異なる突出高さの差を、前記燃料バンドルの軸心位置が前記チャンネルボックスの軸心位置よりも前記一方側にYだけ偏心して前記燃料バンドルを保持するように設定し、前記Yを、
7×2 −1/2 [mm]≧Y≧2 −3/2 [mm]
に設定したものとする。
(14)更に上記目的を達成するために、本発明は、横断面形状が正方形となる略四角筒形状を備え、n行n列の正方格子状に配列された複数本の燃料棒及び少なくとも1本の水ロッドからなる燃料バンドルであって、n=10であり、前記複数本の燃料棒のピッチは、12.65[mm]以上13.15[mm]以下である燃料バンドルを覆うチャンネルボックスにおいて、前記チャンネルボックスの内幅は、133.5[mm]以上134.5[mm]以下であり、前記略四角筒形状の内周部に内側に突出して前記燃料バンドルを保持する複数のタブを設け、かつ、これら複数のタブのうち、前記正方形の対角線を境に一方側に位置するタブの突出高さと、前記対角線を境に他方側に位置するタブの突出高さが異なり、かつ、前記タブの異なる突出高さの差を、前記燃料バンドルの軸心位置が前記チャンネルボックスの軸心位置よりも前記一方側にYだけ偏心して前記燃料バンドルを保持するように設定し、前記Yを、
7×2 −1/2 [mm]≧Y≧2 −3/2 [mm]
に設定したものとする。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。
本発明の第1の実施形態を図1〜図16により説明する。
図2は、水平横断面図であり、本実施形態による沸騰水型原子炉の炉心の部分概略配置(1/4対称)を示している。図3は、その部分拡大図である。これら図2及び図3において、原子炉圧力容器(図示せず)内に燃料集合体1が多数配置され、炉心2を構成している。炉心2においては、隣接して正方形配置をなす4個の燃料集合体1間に制御棒3が挿入される。この炉心2はいわゆるD格子炉心となっている。すなわち、燃料集合体1相互間の間隔が、制御棒3側のほうが反制御棒3側よりも大きくなっている。図3には、隣接して正方形配置をなす4個の燃料集合体の一例として、燃料集合体1A,1B,1C,1Dを示している。制御棒3は、横断面略十字形の翼を備えている。燃料集合体1A〜1Dは、構造はそれぞれ全く同一である。但し、その配置される向きのみが異なっている。すなわち、制御棒3の十字形軸心を中心に点対称配置となっている。そして、制御棒3は、各燃料集合体1の横断面正方形形状の2辺に近接するように挿入される。
【0036】
図1は、図3の部分拡大図であり、燃料集合体1Aの詳細構造を示している。図4は、縦断面図であり、図1に示した燃料集合体1Aの詳細構造を示している。これら図1及び図4において、燃料集合体1Aは、多数の燃料棒4及び2本の水ロッド5(但し図4では図示省略)からなる燃料バンドル6と、燃料スペーサ8と、上部タイプレート9と、下部タイプレート10と、チャンネルボックス11とを備えている。
【0037】
燃料バンドル6は、図1に示すように9行9列正方格子状に配列されている。そして、それら正方格子状配列の位置は、全体として図1中左上方向(後述のチャンネルファスナー方向、制御棒3方向)に偏心している。その配列の軸心位置(軸方向中心位置、以下同様)iは、チャンネルボックス11の軸心位置j(=上部タイプレート9の軸心位置及び下部タイプレート10の軸心位置)よりもチャンネルファスナー側(=制御棒3側)に偏心している。その偏心量Yは、図1中左上方向に2-1/2[mm]となっている。言い換えれば、図1中左方向に0.5[mm]かつ上方向に0.5[mm]となっている(図1参照)。このように偏心させて保持する偏心保持手段として機能するのは、チャンネルファスナー14の挿入孔14a、下部タイプレート10の燃料棒挿入孔10b及び水ロッド挿入孔10c、燃料スペーサ8のタブ8b1,8b2である。これらについては、後に順次詳述する。
【0038】
燃料棒4は、それぞれ燃料ペレットを封入している。この燃料ペレットは、核分裂性物質としてのウランを焼結して構成されている。各燃料棒4の外径dはd=11.2[mm]となっている。また燃料棒4の配列ピッチpは、p=14.4[mm]となっている。燃料棒4は、全部で74本あり、9行9列の正方格子状に配列されている。これら74本の燃料棒は、通常の燃料棒4aと、部分長燃料棒4b(但し図4には図示せず)とを含んでいる。部分長燃料棒4bは、通常の燃料棒4aよりも、燃料有効長が短くなっている。燃料棒4aは、特に図示や詳細な説明を行わないが、複数種類が存在している。そして、各種類ごとに、ペレットに含まれるウランの濃縮度分布が互いに異なっている。各種類の燃料棒4a及び燃料棒4bの配置を適宜工夫することにより、局所出力ピーキングの平坦化が図られている。また、各種類ごとに適宜軸方向の濃縮度分布を設けている。これにより、軸方向出力ピーキングの平坦化も図っている。これらの構成は、この種の燃料集合体として公知のものと同様である。
【0039】
水ロッド5は、燃料集合体1Aの略中央部に配置されている。このとき、水ロッド5は、3行3列格子の7本の燃料棒4を置き換えるように配置されている。またこの水ロッド5は、特に詳細な図示を行わないが、冷却材流路を形成する公知の構造の中空管である。そして、燃料集合体1A略中央部の熱中性子束を平坦化する。
【0040】
上部タイプレート9は、燃料バンドル6の上端部を支持する。この上部タイプレート9の制御棒3側及び反制御棒3側には、ガイドポスト9a,9bが一体に形成されている。上部タイプレート9は、ガイドポスト9aを介して、上部格子板12(後述の図5参照)によって横方向の動きが拘束支持される。上部格子板12は、沸騰水型原子炉の炉心シュラウド(図示せず)上部に固定されているものである。図5は、上面図であり、燃料集合体1A上部のその上部格子板12による支持構造を示している。なお、構造の明確化のために、制御棒3を挟んだ4体の燃料集合体1A〜1D(図3参照)の支持構造を示している。
【0041】
上部格子板12は、炉心に配置されている燃料集合体1及び制御棒3の位置に対応した格子構造となっている。すなわち、図5に示すように、上部格子板12は、4体の燃料集合体1A,1B,1C,1Dを囲む大きさの格子13を多数個備えている。格子13の下方には、それら4体の燃料集合体1A〜1Dが設けられている。それら4体の燃料集合体1A〜1Dの間には、1つの制御棒3が位置している。
【0042】
各燃料集合体1A〜1Dのガイドポスト9aの先端は、チャンネルファスナー14に設けた挿入孔14aに挿入されている。そして、図示しない固定具(例えばボルト)によってチャンネルファスナー14に固定されている。このとき、チャンネルファスナー14の挿入孔14aは、従来の9行9列燃料集合体のそれよりもコーナー側にややずれた位置に形成されている。これにより、前述したように、燃料バンドル6の軸心位置iを、上部タイプレートの軸心位置(=チャンネルボックスの軸心位置)jよりも制御棒3側に偏心させている。またチャンネルファスナー14は、チャンネルボックス11に接続されている。これによって、チャンネルボックス11とそれに囲まれる燃料バンドル6とを固定する。
【0043】
またチャンネルファスナー14は、隣接する燃料集合体1のチャンネルボックス11どうしの間隔を一定に保ち、制御棒3の挿入空間を確保する。なお、反制御棒3側のガイドポスト9bは、制御棒3側のガイドポスト9aとの重量バランスをとるためのダミーとなっている。なお、チャンネルファスナー14とチャンネルボックス11との間には、チャンネルファスナー14の過度の変形を防止するためのガード15が設けられている。
【0044】
一方、各燃料集合体1A〜1Dのチャンネルボックス11のチャンネルファスナー14のない側の側面は、上部格子板12によって支持されている(図5参照)。すなわち、チャンネルファスナー14の弾性力によって、上部格子板12に向かって単に押圧されることにより支持されている。
【0045】
図4に戻り、下部タイプレート10は、燃料バンドル6の下端部を支持する。図6は、上面図であり、下部タイプレート10の詳細構造を示している。この図6及び図4において、下部タイプレート10は、その上面10aに、燃料棒挿入孔10bと、水ロッド挿入孔10cと、冷却材導入孔10d,10e,10fとを備えている。
【0046】
燃料棒挿入孔10bは、74個設けられている。そして、それぞれ燃料棒4の下端部が挿入され支持される。水ロッド挿入孔10cは、2個設けられている。そして、それぞれ水ロッド5の下端部が挿入され支持される。これら燃料棒挿入孔10b及び水ロッド挿入孔10cは、図1に示した燃料バンドル6の配列(すなわち燃料棒4及び水ロッド5の配列)に対応する位置に設けられている。すなわち、これら燃料棒挿入孔10b及び水ロッド挿入孔10cも、9行9列の正方格子状に配列されている。そして、それら正方格子状配列の位置は、全体として図6中左上方向(チャンネルファスナー14方向、制御棒3方向)に偏心している。その配列の軸心位置(この場合水ロッド挿入孔10c,10c間の冷却材導入孔10foの中心位置)iは、下部タイプレート10の軸心位置jから図6中左上方向に偏心している。その偏心量Yは、前述したように、図6中左上方向に2-1/2[mm](=図6中左方向に0.5[mm]かつ上方向に0.5[mm])となっている。
【0047】
図1及び図4に戻り、チャンネルボックス11は、燃料バンドル6の周囲を取り囲み燃料集合体1Aの外壁を形成する。その内幅Wは、W=134.1[mm]となっている。
【0048】
燃料スペーサ8は、燃料バンドル6の軸方向複数箇所に設けられている。そして、各箇所おいて、燃料棒4及び水ロッド5を束ねて一定間隔に保持し、燃料バンドル6を形成する。したがって、燃料スペーサ8の軸心位置は燃料バンドル6の軸心位置iに等しい。この燃料スペーサ8は、バンド8aと、このバンド8aの外周部に外側に突出して設けられた複数(この場合8個)のタブ8bとを備えている。また燃料スペーサ8は、バンド8aの内側に、公知の円筒部材(煩雑を避けるために図3及び図1では図示省略)及びばね部材(同)を備えている。円筒部材は、燃料棒4の数に対応した数が設けられている。この円筒部材は、燃料棒4をそれぞれ1つ挿通する。そして、円筒部材に設けられたばね部材が、燃料棒4を円筒部材の反対側に向かって押圧する。これにより、燃料棒4は横方向の動きを拘束され支持される。
【0049】
図7は、側面図及びA−A断面による断面図であり、正方形形状の四辺のうちの一辺に係わる、バンド8a及びタブ8bの詳細構造を示すものである。バンド8aは、均一肉厚の帯状の部材で正方形形状の四辺を形成するようにしたものである。タブ8bは、例えばバンド8aからの押し出し加工により形成されている。その突出高さはXとなっている。
【0050】
そして、合計8箇所設けられるタブ8bのうち、正方形形状の対角線k(図1参照)を境に制御棒3側には4つのタブ8b1が設けられている。また、反制御棒3側には、4つのタブ8b2が設けられている。このとき、タブ8b2の突出高さX2と、タブ8b1の突出高さX1とは、異なっている。それらの差X2−X1は、1[mm]となっている。これにより、上述した、燃料バンドル6の軸心位置iがチャンネルボックス11の軸心位置jより制御棒3側にY=2-1/2[mm](=図1中左方向に0.5[mm]かつ上方向に0.5[mm])だけ偏心した構造を保持可能としている。このことを図1及び図8を用いて説明する。
【0051】
図1において、前述したようにバンド8aの肉厚tはすべて均一である。また前述したように、燃料スペーサ8の軸心位置は燃料バンドル6の軸心位置iと同一である。これにより、正方格子状配列最外周の燃料棒4とバンド8aとの距離uも全周で同一である。ここで、タブ8b2,8b1の先端と正方格子状配列最外周の燃料棒4との距離をそれぞれL2,L1とする。
X2=L2−(t+u)
X1=L1−(t+u)
したがって、タブ8b2,8b1の突出高さの差X2−X1は、
X2−X1=L2−L1
となる。
【0052】
ところで、偏心しない従来構造では、それらL2,L1はそれぞれLであったとする(図8(a)参照)。そして、燃料バンドル6が偏心して軸心位置iとなったとき、図1中左方向変位量及び上方向変位量をそれぞれHとする。すると、
Y=H×21/2 よって H=Y×2-1/2
L1=L−H
L2=L+H
したがって、図8(b)において、タブ8b2,8b1と正方格子状配列最外周の燃料棒4との距離の差L2−L1は、
L2−L1=2H
=Y×21/2
となる。
上述したようにX2−X1=L2−L1であるから、
X2−X1=Y×21/2 … (式1)
となる。
これにより、X2−X1を1[mm]とすることで、Y=2-1/2[mm]に設定することができる。
【0053】
次に、本実施形態の作用を以下順次説明する。
【0054】
(1)偏心構造による局所出力ピーキング低減
D格子炉心である炉心2は、燃料集合体1を配置したとき、制御棒3側(すなわちチャンネルファスナー14側)のギャップ間隔が反制御棒3側(すなわち反チャンネルファスナー14側)のギャップ間隔より広い。これにより、間隔の広いチャンネルファスナー14側のほうが間隔の狭い反チャンネルファスナー14側よりも連続した水領域が大きくなる。したがって、チャンネルファスナー14側のほうが反チャンネルファスナー14側より中性子の減速効果が大きくなる。これにより、チャンネルファスナー14側の燃料棒4の出力が相対的に大きくなり、局所出力ピーキングの値が比較的大きくなりやすい傾向となる。
【0055】
そこで、本実施形態の燃料集合体1Aにおいては、チャンネルボックス11はそのままで、燃料バンドル6の軸心位置iをチャンネルファスナー14側に偏心させる。すなわち、上述した広いチャンネルファスナー14側のギャップを狭くなる方向に、狭い反チャンネルファスナー14側のギャップを広くする方向に変える。これにより、これら2つのギャップの広さの差を緩和し、連続した水領域の差を緩和することができる。したがって、チャンネルファスナー14側と反チャンネルファスナー14側との燃料棒の出力の差を小さくし、局所出力ピーキングを低減することができる。すなわち、炉心特性をC格子炉心に近づけることができる。したがって、C格子炉心に近い燃料経済性を達成することができる。また、局所出力ピーキングを低減できるので、燃料棒4の出力の最大値も小さくできる。例えば、局所出力ピーキングが5%小さくなると、燃料棒4の最大線出力も5%減少する。これにより、燃料集合体1Aの一体から取り出せる出力の限界(限界出力)を大きくすることができる。したがって、炉心2の出力を同じとすれば燃料集合体1Aの熱的余裕を増加させることができる。また、熱的余裕を同等とすれば、炉心2の出力を大きくすることができる。
【0056】
なお、以上をさらに具体的に検討すると、以下のようになる。
通常運転中、燃料集合体1の中の水(水ロッド5内は除く)は、気体の蒸気と液体の水との気液混合状態である。このときの蒸気の体積割合は、燃料集合体1内平均で約40%である。一方、各燃料集合体1間のギャップは基本的に液体の水のみである。すなわち、蒸気の体積割合は0%である。この両者の条件で、中性子の減速に主として寄与する水中の水素原子の体積密度を計算してみる(沸騰水型原子炉の通常運転時の70気圧で計算)。すると、燃料集合体1間ギャップ(蒸気の体積割合0%)での値を1とすると、燃料集合体1内(蒸気の体積割合40%)では約0.6となる。したがって、以下の2つは、中性子の減速効果からみるとほぼ同等の効果があることになる。例えば、図1中左方向(又は上方向)にH=1[mm]だけ偏心させることと、燃料集合体間間隔を0.6mm小さくすることである。
【0057】
また、限界出力に関し、以下のことが懸念されなくもない。すなわち、偏心方向と反対側において、チャンネルボックス11の内側と最外周燃料棒4との間隔が大きくなる。これにより、この部分に水が多く流れ、燃料棒4の冷却に直接寄与する水が減る可能性がないとは言えない。しかしながらこの場合、数mm程度の間隔であれば、その部分の面積は、燃料集合体1A内の水の総流路面積と比べて十分小さい。また、一般に、限界出力と局所出力ピーキングとはほぼ1対1に対応する。ところが、限界出力と冷却に寄与する水の流量とは、1対1には対応しない。したがって、水の量が5%減っても限界出力は2〜3%程度しか変わらない。これにより、実際上、偏心によって限界出力が減少することはないと考えられる。
【0058】
さらに、上記の水の流れの不均一性を解消したい場合、以下の方策が考えられる。すなわち、偏心により広くなったチャンネルボックス11と最外周燃料棒4との間の流路を狭める工夫をすればよい。その方法の1つは、広い流路に面するチャンネルボックス11の内側にタブをたくさん設けることである。また、広い流路に面する燃料スペーサ8のバンド8aの下端か上端に別途タブを設けてもよい。但しこのとき、そのタブはタブ8b1,b2の高さ以下とする必要がある。さらに、チャンネルボックス11の広い流路に面する部分の肉厚を大きくしてもよい。また、広い流路に別途構造材を設けてもよい。これらにより、その広い流路に水を流れにくくすることができる。
【0059】
(2)偏心量設定による局所出力ピーキング低減の確保
本願発明者等は、数値解析を行い、偏心量Yと局所出力ピーキング低減効果との関係を検討し、図9に示す結果を得た。図9は、本実施形態の燃料集合体1Aにおいて偏心量Yを種々変化させたときの局所出力ピーキングの変化を示したものである。縦軸には、局所出力ピーキング値をとっている。これは、偏心量Y=0(燃料バンドル6の軸心位置iとチャンネルボックス11の軸心位置jとが一致)のときからの低減率x[%]で表している。横軸には、偏心量Yに直接相関する(X2−X1=Y×21/2、前述の式1参照)スペーサタブ8b1,8b2の突出高さの差X2−X1[mm]をとっている。
【0060】
図9において、X2−X1が0より大きくなると低減率xは急激に立ち上がり、X2−X10.4[mm]でx=1[%]となる。その後、X2−X10.5[mm]から増加の程度が鈍る。以降はX2−X1が大きくなるほど次第に横ばいに近づく。X2−X1=4[mm]では、x5[%]となっている。
【0061】
本願発明者等は、以上の結果から、局所出力ピーキング低減効果を確実に得て、燃料経済性を向上するためには、X2−X1≧0.5[mm]とするのが適当であると判断した。なお、これは、上記式1に対応させると、Y≧2-3/2[mm]となる。
【0062】
また本願発明者等は、上記結果を踏まえ、別の数値解析を行った。すなわち、偏心量Yと中性子無限増倍率(燃料集合体平均)の増加量との関係を検討し、図10に示す結果を得た。中性子無限増倍率とは、核分裂によって発生した中性子がどの程度有効に次の核分裂に寄与するかの指標である。図10は、本実施形態の燃料集合体1Aにおいて偏心量Yを種々変化させたときの中性子無限増倍率の増加率の変化を示したものである。縦軸には、中性子無限増倍率の増加率をとっており、偏心量Y=0のときからの増加率y[%]で表している。横軸には、図9同様、スペーサタブ8b1,8b2の突出高さの差X2−X1[mm]をとっている。
【0063】
図10において、縦軸の値が大きいほど中性子無限増倍率が増加する。すなわち、中性子が有効に使用されることから、その分燃料を節約でき、燃料経済性が向上する。図10では、X2−X1が0より大きくなると増加率yは急激に立ち上がる。しかし、X2−X1 0.5[mm]から増加の程度が鈍る。以降はX2−X1が大きくなるほど次第に横ばいに近づく。X2−X1=4[mm]では、y 0.2[%]となっている。ちなみに、無限増倍率が0.2%増加するということはU−235の濃縮度を約0.03%減少できることに対応している。
この結果からも、燃料経済性を向上するためには、X2−X1≧0.5[mm]とするのが妥当であることが裏付けられた。
【0064】
本実施形態においては、前述したように、X2−X1=1[mm]であり、またY=2-1/2[mm]である。すなわち、上記した範囲内である。これにより、局所出力ピーキング低減効果を確実に得て、燃料経済性を向上することができる。
【0065】
但し、このX2−X1の値は、いくらでも大きくできるわけではなく、実際には上限値がある。これについて、以下説明する。
9行9列正方格子状配列の燃料集合体の場合、若干の幅はあるが、例えば"nuclear engineering INTERNATIONAL" vol.43 No.530(September,1998;Wilmington Business Publication) p12-31に記載のように、通常、燃料棒直径は約11.0[mm]である。また、熱的余裕を確保するためには、隣接燃料棒どうしの間隔は3[mm]程度必要である。すると、燃料棒9本の両端の距離は、11.0×9+3×(9−1) 123[mm]となる。ここで、燃料バンドルを取り囲むチャンネルボックスの内幅Wは、上記"nuclear engineering INTERNATIONAL"や、「沸騰水型原子力発電所 9×9燃料について」(平成10年2月、株式会社 日立製作所)記載のように約134[mm]である。したがって、正方格子状配列最外周の燃料棒とチャンネルボックス内周面との間に残された距離は、両側を合わせて134−123=11[mm]が最大値となる。そして、最外周の燃料棒とチャンネルボックス内周面との間には、通常2[mm]以上の間隙が必要とされる。なぜなら、燃料スペーサのバンドを挿入する必要があるからである。また、熱的余裕の観点からも同様の間隙が必要とされている。したがって、実際に、燃料バンドルを偏心させるために有効に利用できるのは、11−2×2=7[mm]である。すなわち、チャンネルファスナー側に偏心させるとき、正方格子状配列の行方向(又は列方向)には移動可能な実際上の最大値は、7[mm]となる。
本実施形態においては、X2−X1=1[mm]であり、この範囲内となっていることはいうまでもない。
【0066】
(3)熱的余裕の低下防止
本実施形態においては、前述した特許2791132号公報と異なり、燃料バンドル6ごと偏心させる。すなわち、燃料棒ピッチは変化させない。これにより、従来のD格子炉心用燃料集合体に比べて熱的余裕が小さくなることはない。このことを図11により説明する。
【0067】
本願発明者等は、数値解析を行い、燃料棒ピッチと燃料集合体限界出力との関係を検討した。図11はその結果を示したものである。すなわち、通常のD格子炉心用の燃料集合体において、燃料棒ピッチを種々変化させたときの限界出力の変化を示している。図11では、横軸に燃料棒ピッチをとり、縦軸に限界出力をとって表している。また、9行9列配置の従来のD格子用燃料集合体における燃料棒ピッチは、上記「沸騰水型原子力発電所 9×9燃料について」に開示されているように、14.4[mm]である。その値(現行値)は、横軸の右端に相当する。
【0068】
図11に示すように、燃料棒ピッチと限界出力とは単調増加の関係にある。すなわち、現行の燃料棒ピッチからピッチを小さくするほど、限界出力も単調に減少する。これにより、上記公知技術のように燃料棒ピッチを減少させると、限界出力も減少することがわかる。したがって、上記公知例の構成では、局所出力ピーキングは改善しても、限界出力の低下によって熱的余裕は低下する。したがって、熱的余裕の低下を防止するためには、燃料棒ピッチを従来のD格子用燃料集合体とほぼ同等にしなければならない。
【0069】
なお、前述したように、従来のD格子用燃料集合体での燃料棒ピッチは14.4[mm]である。しかしながら、本願発明者等は、製造誤差等を考慮し、その範囲を14.15[mm]〜14.65[mm]とすることが適当であると判断した。
【0070】
これに対して、本実施形態においては、燃料棒ピッチpは、p=14.4[mm]である。すなわち、上記の範囲内である。したがって、上記公知例のような熱的余裕の低下を防止できる。
【0071】
(4)既存の燃料スペーサ利用可能
また、燃料スペーサには、通常、保持部材(例えば、円筒部材等)が備えられている。これによって、燃料棒や水ロッドの間隔を所定値に保持している。上記公知例のように燃料棒ピッチが変わると、それら保持部材の配置ピッチも変えなくてはならない。したがって、既存の燃料スペーサを用いることができなくなる。すなわち、新たな燃料スペーサを用意する必要がある。
【0072】
これに対して、本実施形態では、燃料棒ピッチを変えることはない。すなわち、燃料スペーサ8は、従来のものをそのまま利用できる。
【0073】
(5)炉停止余裕確保作用
一般に、沸騰水型原子炉の燃料集合体では、チャンネルボックスの大きさを小さくすると、炉停止余裕が小さくなることが知られている。例えば、特許2791132号公報の第6図に、このことが開示されている。すなわち、この図において、チャンネルボックスを小さくしてワイドウォータギャップ幅に対しナローウォータギャップ幅を大きくするほど、出力運転時冷温時反応度差が小さくなっている。これは、以下の理由による。
【0074】
炉停止余裕に対し最も大きな影響があるのは、水が連続的に存在する領域の広さである。特に、燃料集合体間ギャップは、水が広い領域にわたって連続して存在している。燃料集合体間ギャップの水領域の広さを規定するのは、チャンネルボックスである。すなわち、チャンネルボックスの大きさを大きくすれば、その分、燃料集合体間ギャップの水が減少する。これにより、炉停止余裕が小さくなる。
【0075】
したがって、従来とほぼ同等の炉停止余裕を確保するためには、チャンネルボックスの大きさを従来と同等にすればよい。
【0076】
ここで、従来のD格子用燃料集合体におけるチャンネルボックスは、例えば前述した「沸騰水型原子力発電所 9×9燃料について」や"nuclear engineering INTERNATIONAL"に記載のように、その内幅寸法が約134[mm]である。しかしながら、本願発明者等は、製造誤差等を考慮し、その範囲を133.5[mm]〜134.5[mm]とすることが適当であると判断した。
【0077】
本実施形態においては、上述したように、チャンネルボックス11の内幅Wは、W=134.1[mm]である。すなわち、上記の範囲内である。したがって、従来のD格子用燃料集合体と同等の炉停止余裕を確保できる。
【0078】
以上説明したように、本実施形態の燃料集合体1Aによれば、熱的余裕を小さくすることなくC格子炉心に近い燃料経済性を達成できる。また、既存の燃料スペーサをそのまま利用できる。
【0079】
なお、上記実施形態は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変形が可能である。それら変形例を以下順次説明する。
【0080】
▲1▼燃料スペーサのタブを溶接で固定する構造
図12は、断面図であり、この変形例による燃料スペーサ8の要部構造を示している。図1と同様、円筒部材及びばね部材の図示を省略している。この図12において、突出高さの大きなタブ8b2及び突出高さの小さなタブ8b1ともに、バンド8aに対して溶接で固定している。この場合、上記実施形態のようにバンド8aを押し出し加工する必要がなくなる。これにより、上記実施形態よりも設計自由度が大きくなる。
なお、タブ8b2のみを溶接固定とし、タブ8b1は上記実施形態と同様に押し出し加工としてもよい。この場合、加工費が少なくなるという利点がある。
▲2▼チャンネルボックスにもタブを設ける構造
図13は、断面図であり、この変形例による燃料スペーサ8の要部構造と、チャンネルボックス11の横断面構造を示している。上記図12と同様、円筒部材及びばね部材の図示を省略している。この図13に示すように、燃料スペーサ8にはすべて比較的小さな突出高さの同一のタブ8b1を設けている。そして、チャンネルボックス11の内周面のうちそれらタブ8b1に対応する位置に、内側に突出した内タブ11a1及び内タブ11a2を設けている。このとき、横断面形状正方形の対角線mを境に一方側(図13中右側、すなわち反制御棒側)には、突出高さZ2が大きい内タブ11a2を配置している。逆に、対角線mを境に他方側(図13中左側、すなわ反制御棒側)には、突出高さZ1が小さい内タブ11a1を配置している。なおこの場合、これらタブ11a1,11a2も前述した偏心保持手段として機能する。
チャンネルボックス11の肉厚は通常、燃料スペーサ8のバンド8aの肉厚よりも大きい。したがって、この場合の設計自由度は、上記実施形態よりも大きくなる。
【0081】
なお、突出高さZが小さい内タブ11a1を省略し、内タブ11a2のみを設けてもよい。その方が加工費は少なくなる。
【0082】
また、この変形例の考え方をさらに進めて、燃料スペーサ8側にはタブを全く設けないことも考えられる。すなわち、チャンネルボックス11の内タブ11a1,11a2のみとする構造である。
【0083】
さらに、図14に示すように、燃料スペーサ8にも、小さな突出高さのタブ8b1と大きな突出高さのタブ8b2とを配置してもよい。この場合、燃料バンドルの偏心量を大きくとる場合に特に好適である。
【0084】
▲3▼角型水ロッドを備えた構造への適用
上記実施形態では、9行9列正方格子状配列中に2本の水ロッド5が配置された構造に本発明を適用した。しかし、これに限られず、図15に示すような、9行9列正方格子状配列中に1本の角型水ロッド5Aが配置された構造に本発明を適用してもよい。この場合も、同様の効果を得る。
【0085】
さらに、図16に示すような、角型水ロッド5Aがオフセット配置された構造にも適用できる。
【0086】
▲4▼10×10配列への適用
上記実施形態では、本発明を、9行9列正方格子状配列の燃料集合体に適用した場合であった。しかし、これに限られず、10行10列正方格子状配列の燃料集合体に適用しても良い。
【0087】
図17は、この変形例による燃料集合体201の水平横断面図である。上記実施形態の図1にほぼ相当している。上記実施形態の燃料集合体1の各部材と対応する部材は、適宜説明を省略する。またそれらには、上記実施形態の燃料集合体1の各部材の参照番号に200を加えた参照番号を付している。
【0088】
図17において、燃料バンドル206は、10行10列正方格子状に配列されている。そして、それら正方格子状配列の位置は、図1同様、全体として図17中左上方向に偏心している。その配列の軸心位置は、チャンネルボックス211の軸心位置よりも制御棒203側に偏心している。その偏心量Yは、図17中左上方向に2-1/2[mm]となっている。言い換えれば、図17中左方向に0.5[mm]かつ上方向に0.5[mm]となっている。
【0089】
燃料棒204は、全部で92本ある。各燃料棒204の外径dは、d=10.05[mm]となっている。また燃料棒204の配列ピッチpは、p=12.9[mm]となっている。なお、これら燃料棒204の中に、適宜、図1の燃料棒4bと同様の部分長燃料棒を配置しても良い。水ロッド205は、燃料集合体201の略中央部に2本が配置されている。このとき、各水ロッド205は、2行2列格子の4本の燃料棒204を置き換えるように配置されている。チャンネルボックス211の内幅Wは、図1と同様、W=134.1[mm]となっている。
【0090】
燃料スペーサ208の軸心位置は燃料バンドル206の軸心位置に等しい。この燃料スペーサ208は、図1の燃料スペーサ8同様、バンド208aとタブ208bとを備えている。制御棒203側には4つのタブ208b1が配置され、反制御棒203側には4つのタブ8b2が配置される。このとき、図1同様、タブ208b2の突出高さX2とタブ208b1の突出高さX1との差X2−X1は1[mm]となっている。
【0091】
その他の構造は、上記実施形態の燃料集合体1とほぼ同様である。
【0092】
上記より明らかなように、本変形例においても、上記実施形態で説明した(1)偏心構造による局所出力ピーキング低減、(2)偏心量設定による局所出力ピーキング低減の確保、(3)熱的余裕の低下防止、(4)既存の燃料スペーサ利用可能、(5)炉停止余裕確保作用、の各作用を奏する。なお、これらのうち(3)に関し、従来の10行10列正方格子状配列の燃料棒ピッチと本変形例の燃料棒ピッチとの関係について、以下に詳述する。
【0093】
燃料バンドルを取り囲むチャンネルボックスの内幅Wは、上記実施形態において前述した「沸騰水型原子力発電所 9×9燃料について」(平成10年2月、株式会社 日立製作所)に記載されている。すなわち、8行8列正方格子状配列及び9行9列正方格子状配列ともに約134[mm]である。また、10行10列正方格子状配列でも、前述した"nuclear engineering INTERNATIONAL"に記載のように、その内幅寸法Wは約134[mm]である。
一方、正方格子状配列最外周の燃料棒とチャンネルボックス内周面との間に残された距離gは、上記「沸騰水型原子力発電所 9×9燃料について」に記載のように、8行8列でも9行9列でも同じである。すなわち、8行8列では燃料棒ピッチが16.3[mm]で燃料棒直径が12.3[mm]であることから、求める距離gは、
g=(134−16.3×7−12.3)/2
=3.85[mm]
9行9列では、燃料棒ピッチが14.4[mm]で燃料棒直径が11.2[mm]であることから、求める距離gは、
g=(134.1−14.4×8−11.2)/2
=3.85[mm]
となって等しい。したがって、10行10列も同様にg=3.85[mm]となる。
一方、10行10列の場合、上記"nuclear engineering INTERNATIONAL"に記載のように、通常、燃料棒直径dはd=10.05[mm]である。
上記した内幅W=134[mm]、距離g=3.85[mm]、直径d=10.05[mm]より、燃料棒ピッチpを逆算すると、
p=(134−2×3.85−10.05)/9 12.9[mm]
となる。
このように、従来の10行10列配列の燃料集合体での燃料棒ピッチは12.9[mm]である。しかしながら、本願発明者等は、製造誤差等を考慮し、その範囲を12.65[mm]〜13.15[mm]とすることが適当であると判断した。
本変形例においては、燃料棒ピッチpは、p=12.9[mm]である。すなわち、上記の範囲内である。したがって、熱的余裕の低下を防止できる。
【0094】
また、上記(2)に関し、この10行10列の場合も、9行9列の上記実施形態と同様、このX2−X1の値は、いくらでも大きくできるわけではなく、実際には上限値がある。これについて、以下説明する。
前述したように10行10列の場合、通常、燃料棒直径d 10.05[mm]である。また、熱的余裕を確保するためには、隣接燃料棒どうしの間隔は2.5[mm]程度必要である。すると、燃料棒10本の両端の距離は、10.05×10+2.5×(10−1) 123.0[mm]となる。ここで、燃料バンドルを取り囲むチャンネルボックスの内幅Wは、前述したようにW 134[mm]である。したがって、正方格子状配列最外周の燃料棒とチャンネルボックス内周面との間に残された距離は、両側を合わせて134−123=11[mm]が最大値となる。そして、最外周の燃料棒とチャンネルボックス内周面との間には、通常2[mm]以上の間隙が必要とされる。したがって、実際に、燃料バンドルを偏心させるために有効に利用できるのは、11−2×2=7[mm]である。
本変形例においては、X2−X1=1[mm]であり、この範囲内となっていることはいうまでもない。
【0095】
以上説明したように、本変形例によっても、上記実施形態と同様、熱的余裕を小さくすることなくC格子炉心に近い燃料経済性を達成できるという効果を得る。また、既存の燃料スペーサをそのまま利用できるという効果も得る。
【0096】
なお、図18に示すような、水ロッドとして角型水ロッド205Aがオフセット配置された構造にも適用できることはいうまでもない。
【0097】
▲5▼11×11配列への適用
さらに、本発明を、既に提唱されている11行11列正方格子状配列の燃料集合体に適用しても良い。
図19は、この変形例による燃料集合体301の水平横断面図である。上記実施形態の図1にほぼ相当している。上記実施形態の燃料集合体1の各部材と対応する部材は、適宜説明を省略する。またそれらには、上記実施形態の燃料集合体1の各部材の参照番号に300を加えた参照番号を付している。
【0098】
図19において、燃料バンドル306は、11行11列正方格子状に配列されている。そして、それら正方格子状配列の位置は、図1同様、全体として図19中左上方向に偏心している。その配列の軸心位置は、チャンネルボックス311の軸心位置よりも制御棒303側に偏心している。その偏心量Yは、図19中左上方向に2-1/2[mm]となっている。言い換えれば、図19中左方向に0.5[mm]かつ上方向に0.5[mm]となっている。
【0099】
燃料棒304は、全部で112本ある。各燃料棒304の外径dは、d=9.2[mm]となっている。これら燃料棒304の中に、適宜、図1の燃料棒4bと同様の部分長燃料棒を配置しても良い。また燃料棒304の配列ピッチpは、p=11.7[mm]となっている。水ロッド305は、角型であり、燃料集合体301の略中央部に1本が配置されている。このとき、水ロッド305は、3行3列格子の9本の燃料棒304を置き換えるように配置されている。チャンネルボックス311の内幅Wは、図1と同様、W=134.1[mm]となっている。
【0100】
燃料スペーサ308の軸心位置は燃料バンドル306の軸心位置に等しい。この燃料スペーサ308は、図1の燃料スペーサ8同様、バンド308aとタブ308bとを備えている。このとき、図1同様、反制御棒303側のタブ208b2の突出高さX2と、制御棒303側のタブ308b1の突出高さX1との差が、X2−X1=1[mm]となっている。
【0101】
その他の構造は、上記実施形態の燃料集合体1とほぼ同様である。
【0102】
本変形例においても、上記実施形態で説明した(1)偏心構造による局所出力ピーキング低減、(2)偏心量設定による局所出力ピーキング低減の確保、(3)熱的余裕の低下防止、(4)既存の燃料スペーサ利用可能、(5)炉停止余裕確保作用、の各作用を奏する。なお、これらのうち(3)に関し、従来の11行11列正方格子状配列の燃料棒ピッチと本変形例の燃料棒ピッチとの関係について、以下に詳述する。
【0103】
まず、従来の10行10列正方格子状配列の燃料集合体における燃料棒の本数は、上記実施形態において前述した"nuclear engineering INTERNATIONAL"に記載のように、91本である。すなわち、燃料有効長が通常の燃料棒(以下、全長燃料棒という)が83本と部分長燃料棒が8本である。このとき、部分長燃料棒の燃料有効長の長さは特に明記されていない。しかし、従来の9行9列正方格子状配列(例えば上記「沸騰水型原子力発電所 9×9燃料について」に記載)と同様に通常燃料棒の約15/24とする。そうすると、これら91本の燃料棒は、全長燃料棒換算で、
83+8×(15/24)=88本
となる。
【0104】
一方、既に提唱されている従来の11行11列正方格子状配列の燃料集合体で、本変形例のように燃料棒本数が112本である場合を想定する。そして、部分長燃料棒が占める割合を上記10行10列の場合と同じとする。すると、部分長燃料棒の本数は、
112×(8/91) 10本
となる。すなわち、従来の11行11列配列の場合、全長燃料棒が102本と部分長燃料棒が10本となる。部分長燃料棒の燃料有効長を上記と同様に全長燃料棒の15/24とすると、全長燃料棒換算では、
102+10×(15/24)=108本
となる。
【0105】
ここで、従来の11行11列配列の燃料集合体において、燃料有効長の値は特に明示されていない。しかし、既存の沸騰水型原子炉の炉心高さは通常ある程度の範囲内に定まっている。したがって、燃料有効長は、10行10列配列の場合とほぼ同じであると考えられる。また、燃料インベントリについても、ほぼ同じであると考えられる。この燃料インベントリ同一という条件は、燃料有効長同一の前提のもとでは、
(燃料棒ペレット直径)×(全長燃料棒換算本数)=(一定)
と表される。
10行10列における燃料棒ペレット直径は、上記"nuclear engineering INTERNATIONAL"に記載のように、通常、8.67[mm]である。また全長燃料棒換算本数は上記したように88本である。一方、11行11列における全長燃料棒換算本数は上記したように108本である。したがって、11行11列における燃料棒ペレット直径をDとすると、
8.67×88=D×108
これにより、D=7.83[mm]となる。
【0106】
一方、燃料棒直径dと燃料棒ペレット直径Dとの関係を考えてみる。9行9列正方格子状配列では、上記実施形態において前述した「沸騰水型原子力発電所 9×9燃料について」(平成10年2月、株式会社 日立製作所)に記載のように、
Figure 0003977532
となる。
10行10列正方格子状配列では、上記"nuclear engineering INTERNATIONAL"に記載のように、
Figure 0003977532
となる。すなわち、n行n列のnの値に関係なくほぼ一定値となる。したがって、11行11列の場合も0.86とすると、前述のように燃料ペレット直径D=7.83[mm]であることから、燃料棒直径dは、
Figure 0003977532
となる。
【0107】
また、上記▲4▼で前述したように、燃料バンドルを取り囲むチャンネルボックスの内幅Wは、n行n列のnの値に関係なくW 134[mm]である。
【0108】
以上により、11行11列正方格子状配列における燃料棒ピッチpを求めると、
Figure 0003977532
となる。
【0109】
このように、従来の11行11列配列の燃料集合体での燃料棒ピッチは11.7[mm]となる。しかしながら、本願発明者等は、製造誤差等を考慮し、その範囲を11.45[mm]〜11.95[mm]とすることが適当であると判断した。
本変形例においては、燃料棒ピッチpは、p=11.7[mm]である。すなわち、上記の範囲内である。したがって、熱的余裕の低下を防止できる。
【0110】
また、上記(2)に関し、この11行11列の場合も、9行9列の上記実施形態と同様、このX2−X1の値は、いくらでも大きくできるわけではなく、実際には上限値がある。これについて、以下説明する。
前述したように11行11列の場合、通常、燃料棒直径d 9.2[mm]である。また、熱的余裕を確保するためには、隣接燃料棒どうしの間隔は2.0[mm]程度必要である。すると、燃料棒10本の両端の距離は、9.2×11+2.0×(11−1) 121.2[mm]となる。チャンネルボックスの内幅Wは、前述したようにW 134[mm]である。したがって、正方格子状配列最外周の燃料棒とチャンネルボックス内周面との間に残された距離は、両側を合わせて134−121.2=12.8[mm]が最大値となる。そして、最外周の燃料棒とチャンネルボックス内周面との間には、通常2[mm]以上の間隙が必要とされる。したがって、実際に、燃料バンドルを偏心させるために有効に利用できるのは、12.8−2×2=8.8[mm]である。
本変形例においては、X2−X1=1[mm]であり、この範囲内となっていることはいうまでもない。
【0111】
以上説明したように、本変形例によっても、上記実施形態と同様、熱的余裕を小さくすることなくC格子炉心に近い燃料経済性を達成できるという効果を得る。また、既存の燃料スペーサをそのまま利用できるという効果も得る。
【0112】
なお、図20に示すような、角型水ロッド305Aがオフセット配置した構造にも適用できることはいうまでもない。
【0113】
【発明の効果】
本発明によれば、チャンネルファスナー側と反チャンネルファスナー側との燃料棒の出力の差を小さくし、炉心特性をC格子炉心に近づけることができる。したがって、C格子炉心に近い燃料経済性を達成することができる。また、燃料バンドルごと偏心させるので、燃料棒ピッチは変化しない。これにより、従来のD格子炉心用燃料集合体に比べて熱的余裕が小さくなることはない。また、既存の燃料スペーサをそのまま利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態による燃料集合体の詳細構造を表す拡大水平断面図である。
【図2】図1に示した燃料集合体が配置される沸騰水型原子炉の炉心の部分概略配置(1/4対称)を示す水平横断面図である。
【図3】図2の部分拡大図である。
【図4】図1に示した燃料集合体の詳細構造を示す縦断面図である。
【図5】燃料集合体上部の上部格子板による支持構造を示す上面図である。
【図6】下部タイプレートの詳細構造を示す上面図である。
【図7】正方形形状の四辺のうちの一辺に係わるバンド及びタブの詳細構造を示す側面図及びA−A断面による断面図である。
【図8】偏心量を確保する原理を説明する図である。
【図9】図1の燃料集合体において偏心量を種々変化させたときの局所出力ピーキングの変化を示す図である。
【図10】図1の燃料集合体において偏心量を種々変化させたときの中性子無限増倍率の増加率の変化を示した図である。
【図11】燃料棒ピッチと燃料集合体限界出力との関係を検討した結果を示す図である。
【図12】燃料スペーサのタブを溶接で固定する変形例の要部構造を示す図である。
【図13】チャンネルボックスにもタブを設ける変形例による燃料スペーサの要部構造と、チャンネルボックスの横断面構造を示す図である。
【図14】図13の構造に対し、さらに燃料スペーサにも小さな突出高さのタブと大きな突出高さのタブを追加配置した例を示す図である。
【図15】9行9列正方格子状配列中に1本の角型水ロッドが配置された構造を示す図である。
【図16】角型水ロッドがオフセット配置された構造を示す図である。
【図17】10×10配列に適用した変形例による燃料集合体の水平横断面図である。
【図18】角型水ロッドがオフセット配置された構造を示す図である。
【図19】11×11配列に適用した変形例による燃料集合体の水平横断面図である。
【図20】角型水ロッドがオフセット配置された構造を示す図である。
【符号の説明】
1 燃料集合体
1A〜D 燃料集合体
2 炉心
3 制御棒
4 燃料棒
5 水ロッド
6 燃料バンドル
8 燃料スペーサ
8a バンド
8b1,b2 タブ(偏心保持手段)
9 上部タイプレート
9a ガイドポスト
10 下部タイプレート
10b 燃料棒挿入孔(偏心保持手段)
10c 水ロッド挿入孔(偏心保持手段)
11 チャンネルボックス
11a1,a2 タブ(偏心保持手段)
14 チャンネルファスナー
14a 挿入孔(偏心保持手段)

Claims (14)

  1. n行n列の正方格子状に配列された複数本の燃料棒と、該燃料棒が1本以上配列可能な領域に配置された少なくとも1本の水ロッドと、これら燃料棒及び水ロッドからなる燃料バンドルの下端を支持する下部タイプレートと、前記燃料バンドルの軸方向複数箇所を保持する燃料スペーサと、前記燃料バンドルを取り囲むチャンネルボックスと、チャンネルファスナーを固定するために設けられるガイドポストとを備えた燃料集合体において、
    n=9であり、
    前記複数本の燃料棒のピッチは、14.15[mm]以上14.65[mm]以下であり、
    前記チャンネルボックスの内幅は、133.5[mm]以上134.5[mm]以下であり、
    前記下部タイプレートの軸心位置は、前記燃料棒及び水ロッドからなる燃料バンドルを取り囲むチャンネルボックスの軸心位置と一致しており、
    かつ、前記燃料バンドルの軸心位置を、前記チャンネルボックスの位置はそのままにして前記下部タイプレートの軸心位置よりも前記チャンネルファスナー側に下記Yだけ偏心させて保持する偏心保持手段を設け、
    Y≧2−3/2[mm]
    前記偏心保持手段は、前記下部タイプレートに設けられ、前記燃料バンドルを構成する燃料棒及び水ロッドの下端部を挿入して保持する複数の挿入孔と、前記燃料スペーサの外周部と前記チャンネルボックスの内周部の少なくとも一方に設けられた複数のタブと、前記チャンネルファスナーに設けられ、前記ガイドポストの上端部を挿入して保持する挿入孔とを備えることを特徴とする燃料集合体。
  2. 請求項1記載の燃料集合体において、
    7×2−1/2[mm]≧Y≧2−3/2[mm]
    としたことを特徴とする燃料集合体。
  3. 請求項1記載の燃料集合体において、
    前記偏心保持手段としての複数のタブは、前記燃料スペーサの外周部に設けられた複数のタブであり、
    前記複数のタブのうち前記チャンネルファスナー側に位置するタブの先端と前記正方格子状配列の最外周に位置する燃料棒との距離L1、及び前記複数のタブのうち反チャンネルファスナー側に位置するタブの先端と前記正方格子状配列の最外周に位置する燃料棒との距離L2が、
    L2−L1≧0.5[mm]
    となるように構成されていることを特徴とする燃料集合体。
  4. 請求項3記載の燃料集合体において、
    7.0[mm]≧L2−L1≧0.5[mm]
    となるように構成されていることを特徴とする燃料集合体。
  5. n行n列の正方格子状に配列された複数本の燃料棒と、該燃料棒が1本以上配列可能な領域に配置された少なくとも1本の水ロッドと、これら燃料棒及び水ロッドからなる燃料バンドルの下端を支持する下部タイプレートと、前記燃料バンドルの軸方向複数箇所を保持する燃料スペーサと、前記燃料バンドルを取り囲むチャンネルボックスと、チャンネルファスナーを固定するために設けられるガイドポストとを備えた燃料集合体において、
    n=10であり、
    前記複数本の燃料棒のピッチは、12.65[mm]以上13.15[mm]以下であり、
    前記チャンネルボックスの内幅は、133.5[mm]以上134.5[mm]以下であり、
    前記下部タイプレートの軸心位置は、前記燃料棒及び水ロッドからなる燃料バンドルを取り囲むチャンネルボックスの軸心位置と一致しており、
    かつ、前記燃料バンドルの軸心位置を、前記チャンネルボックスの位置はそのままにして前記下部タイプレートの軸心位置よりも前記チャンネルファスナー側に下記Yだけ偏心させて保持する偏心保持手段を設け、
    Y≧2−3/2[mm]
    前記偏心保持手段は、前記下部タイプレートに設けられ、前記燃料バンドルを構成する燃料棒及び水ロッドの下端部を挿入して保持する複数の挿入孔と、前記燃料スペーサの外周部と前記チャンネルボックスの内周部の少なくとも一方に設けられた複数のタブと、前記チャンネルファスナーに設けられ、前記ガイドポストの上端部を挿入して保持する挿入孔とを備えることを特徴とする燃料集合体。
  6. 請求項5記載の燃料集合体において、
    7×2−1/2[mm]≧Y≧2−3/2[mm]
    としたことを特徴とする燃料集合体。
  7. 請求項6記載の燃料集合体において、
    前記偏心保持手段としての複数のタブは、前記燃料スペーサの外周部に設けられた複数のタブであり、
    前記複数のタブのうち前記チャンネルファスナー側に位置するタブの先端と前記正方格子状配列の最外周に位置する燃料棒との距離L1、及び前記複数のタブのうち反チャンネルファスナー側に位置するタブの先端と前記正方格子状配列の最外周に位置する燃料棒との距離L2が、
    L2−L1≧0.5[mm]
    となるように構成されていることを特徴とする燃料集合体。
  8. 請求項7記載の燃料集合体において、
    7.0[mm]≧L2−L1≧0.5[mm]
    となるように構成されていることを特徴とする燃料集合体。
  9. 9行9列の正方格子状に配列された複数本の燃料棒、該燃料棒が1本以上配列可能な領域に配置された少なくとも1本の水ロッド、これら燃料棒及び水ロッドからなる燃料バンドルの下端を支持する下部タイプレート、前記燃料バンドルの軸方向複数箇所を保持する燃料スペーサ、前記燃料バンドルを取り囲むチャンネルボックス、及びチャンネルファスナーを固定するために設けられるガイドポストをそれぞれ備えた複数の燃料集合体と、前記燃料集合体の間に挿入される少なくとも1つの制御棒とを備え、前記複数の燃料集合体相互間の間隔を前記制御棒側のほうが反制御棒側よりも大きくなるようにした原子炉の炉心において、
    前記複数の燃料集合体のうち少なくとも1つは、前記複数本の燃料棒のピッチが14.15[mm]以上14.65[mm]以下であり、前記チャンネルボックスの内幅が133.5[mm]以上134.5[mm]以下であり、
    前記下部タイプレートの軸心位置は、前記燃料棒及び水ロッドからなる燃料バンドルを取り囲むチャンネルボックスの軸心位置と一致しており、
    かつ、前記燃料バンドルの軸心位置を、前記チャンネルボックスの位置はそのままにして前記下部タイプレートの軸心位置よりも前記チャンネルファスナー側に下記Yだけ偏心させて保持する偏心保持手段を備え、
    Y≧2−3/2[mm]
    前記偏心保持手段は、前記下部タイプレートに設けられ、前記燃料バンドルを構成する燃料棒及び水ロッドの下端部を挿入して保持する複数の挿入孔と、前記燃料スペーサの外周部と前記チャンネルボックスの内周部の少なくとも一方に設けられた複数のタブと、前記チャンネルファスナーに設けられ、前記ガイドポストの上端部を挿入して保持する挿入孔とを備えることを特徴とする原子炉の炉心。
  10. 請求項9記載の原子炉の炉心において、
    前記偏心保持手段は、前記チャンネルボックスの制御棒側に位置する内側面と前記正方格子状配列の最外周に位置する燃料棒との距離L1、及び前記チャンネルボックスの反制御棒側に位置する内側面と前記正方格子状配列の最外周に位置する燃料棒との距離L2が、L2−L1≧0.5[mm]の関係となるように、前記燃料バンドルの軸心位置を前記チャンネルボックスの軸心位置よりも前記制御棒側に偏心させて保持することを特徴とする原子炉の炉心。
  11. 10行10列の正方格子状に配列された複数本の燃料棒、該燃料棒が1本以上配列可能な領域に配置された少なくとも1本の水ロッド、これら燃料棒及び水ロッドからなる燃料バンドルの下端を支持する下部タイプレート、前記燃料バンドルの軸方向複数箇所を保持する燃料スペーサ、前記燃料バンドルを取り囲むチャンネルボックス、及びチャンネルファスナーを固定するために設けられるガイドポストをそれぞれ備えた複数の燃料集合体と、前記燃料集合体の間に挿入される少なくとも1つの制御棒とを備え、前記複数の燃料集合体相互間の間隔を前記制御棒側のほうが反制御棒側よりも大きくなるようにした原子炉の炉心において、
    前記複数の燃料集合体のうち少なくとも1つは、前記複数本の燃料棒のピッチが12.65[mm]以上13.15[mm]以下であり、前記チャンネルボックスの内幅が、133.5[mm]以上134.5[mm]以下であり、
    前記下部タイプレートの軸心位置は、前記燃料棒及び水ロッドからなる燃料バンドルを取り囲むチャンネルボックスの軸心位置と一致しており、
    かつ、前記燃料バンドルの軸心位置を、前記チャンネルボックスの位置はそのままにして前記下部タイプレートの軸心位置よりも前記チャンネルファスナー側に下記Yだけ偏心させて保持する偏心保持手段を備え、
    Y≧2−3/2[mm]
    前記偏心保持手段は、前記下部タイプレートに設けられ、前記燃料バンドルを構成する燃料棒及び水ロッドの下端部を挿入して保持する複数の挿入孔と、前記燃料スペーサの外周部と前記チャンネルボックスの内周部の少なくとも一方に設けられた複数のタブと、前記チャンネルファスナーに設けられ、前記ガイドポストの上端部を挿入して保持する挿入孔とを備えることを特徴とする原子炉の炉心。
  12. 請求項11記載の原子炉の炉心において、
    前記偏心保持手段は、前記チャンネルボックスの制御棒側に位置する内側面と前記正方格子状配列の最外周に位置する燃料棒との距離L1、及び前記チャンネルボックスの反制御棒側に位置する内側面と前記正方格子状配列の最外周に位置する燃料棒との距離L2が、L2−L1≧0.5[mm]の関係となるように、前記燃料バンドルの軸心位置を前記チャンネルボックスの軸心位置よりも前記制御棒側に偏心させて保持することを特徴とする原子炉の炉心。
  13. 横断面形状が正方形となる略四角筒形状を備え、n行n列の正方格子状に配列された複数本の燃料棒及び少なくとも1本の水ロッドからなる燃料バンドルであって、n=9であり、前記複数本の燃料棒のピッチは、14.15[mm]以上14.65[mm]以下である燃料バンドルを覆うチャンネルボックスにおいて、
    前記チャンネルボックスの内幅は、133.5[mm]以上134.5[mm]以下であり、
    前記略四角筒形状の内周部に内側に突出して前記燃料バンドルを保持する複数のタブを設け、かつ、これら複数のタブのうち、前記正方形の対角線を境に一方側に位置するタブの突出高さと、前記対角線を境に他方側に位置するタブの突出高さが異なり、
    かつ、前記タブの異なる突出高さの差を、前記燃料バンドルの軸心位置が前記チャンネルボックスの軸心位置よりも前記一方側にYだけ偏心して前記燃料バンドルを保持するように設定し、前記Yを、
    7×2 −1/2 [mm]≧Y≧2 −3/2 [mm]
    に設定したことを特徴とするチャンネルボックス。
  14. 横断面形状が正方形となる略四角筒形状を備え、n行n列の正方格子状に配列された複数本の燃料棒及び少なくとも1本の水ロッドからなる燃料バンドルであって、n=10であり、前記複数本の燃料棒のピッチは、12.65[mm]以上13.15[mm]以下である燃料バンドルを覆うチャンネルボックスにおいて、
    前記チャンネルボックスの内幅は、133.5[mm]以上134.5[mm]以下であり、
    前記略四角筒形状の内周部に内側に突出して前記燃料バンドルを保持する複数のタブを設け、かつ、これら複数のタブのうち、前記正方形の対角線を境に一方側に位置するタブの突出高さと、前記対角線を境に他方側に位置するタブの突出高さが異なり、
    かつ、前記タブの異なる突出高さの差を、前記燃料バンドルの軸心位置が前記チャンネルボックスの軸心位置よりも前記一方側にYだけ偏心して前記燃料バンドルを保持するように設定し、前記Yを、
    7×2 −1/2 [mm]≧Y≧2 −3/2 [mm]
    に設定したことを特徴とするチャンネルボックス。
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