JP3966501B2 - 超純水製造装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体製造工業等で使用される超純水製造装置に関し、更に詳しくは、ユースポイント直前に、超純水を更に精製するイオン吸着モジュールを有し、高度な超純水をユースポイントに安定的に供給しうる超純水製造装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
超純水(本明細書では、一般には必ずしも明確には定義分けされていない純水、超純水などの用語で説明される高純度水を総称して「超純水」という。)は、一般に、河川水、地下水及び工業用水等の被処理水を前処理工程で処理して被処理水中の懸濁物及び有機物の大半を除去し、次いで、この前処理水を1次系純水製造装置及び2次系純水製造装置(サブシステム)で順次処理することによって製造され、例えば半導体製造工業におけるウエハ洗浄などを行うユースポイントに供給される。このような超純水は、不純物の定量も困難である程の高い純度を有するが、全く不純物を含有しない訳ではない。そして、超純水に含まれる超微量成分が半導体デバイスなどの製品に与える影響は、デバイスの集積度が高くなると、無視できなくなり、従来の超純水より更に高い純度を有する超純水の必要性も検討されている。
【0003】
例えば、サブシステムで製造された超純水は配管を経てユースポイントに供給されるが、サブシステムとユースポイント間の配管は、長いときには数百メートルに及ぶ場合がある。そのため、この配管から微粒子(パーティクル)や金属イオン成分等の不純物が超純水に僅かではあるが混入し、デバイスの特性に悪影響を及ぼす場合がある。例えば、金属汚染はデバイスの電気特性を悪化させることがあり、また、パーティクルはパターン欠陥や断線、絶縁耐圧の不良を起こすことがある。さらに、超純水製造装置にて除去しきれなかった成分や超純水製造装置から何らかの理由で瞬間的に又はある期間リークが起こった場合も同様にデバイスの特性に悪影響を及ぼすことがある。
【0004】
このような状況に対処する手段として、ユースポイント直前で、超純水をさらに処理することが提案されている。たとえば、特開平4−78483号公報には、イオン交換繊維を充填したカラムをユースポイント直前に設置する方法が、また特開昭58−81483号公報には、ユースポイント直前に限外濾過膜モジュールを設置する方法が開示されている。しかしながら、イオン交換繊維充填カラムの場合には、イオン性不純物に主眼がおかれて、微粒子除去性能は不十分であり、また限外濾過膜モジュールの場合には、微粒子除去は達成されるが、イオンのような溶解性不純物の除去は不可能であるという問題を有していた。
【0005】
更に、微粒子除去性能とイオン性不純物除去性能を併せ持つモジュールとして、イオン吸着膜を充填したイオン吸着モジュールが知られている。該モジュールに用いるイオン吸着膜の形状としては、平膜から作製されるプリーツ型やスパイラル型、チューブラ型、あるいは中空糸膜(特開平8−89954号公報)があり、使用目的等に応じて適宜形状が決定され実用化されている。しかし、これらのイオン吸着膜は、オレフィン系多孔性膜などにラジカル重合や放射線重合によりイオン交換基等を導入したものであり、導入されるイオン交換基等は、その導入密度が低いうえ、導入される部位が膜表面近傍に限定されるという問題があった。すなわち、イオン交換基等の導入密度が低いため、モジュール全体としてもイオン吸着容量が小さく、イオン交換基等が不均一に存在しているので、吸着されたイオンがモジュール内において流れ方向に拡散しやすく、モジュール内におけるイオン吸着部分と未吸着部分の混在領域であるイオン交換帯は長くなり、吸着したイオンの微量リークを起こしやすい。このため、ng(ナノグラム)/l、場合によっては、pg(ピコグラム)/lの不純物を問題とする超純水の最終処理モジュールとしては、処理水純度に問題が発生しやすく、このためモジュールの交換頻度が高くなるという問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、ユースポイントに移送される超純水中に微粒子(パーティクル)やイオン成分等の極微量不純物が僅かに混入した場合でも、微粒子とイオン成分の両方を除去し、高集積デバイスの製造等に適する超純水を安定して供給し、更にモジュールの交換頻度を著しく低減する超純水製造装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
かかる実情において、本発明者らは鋭意検討を行った結果、超純水を配管移送してユースポイントに供給する超純水製造装置において、該超純水を移送する配管の途中に、特定構造の有機多孔質イオン交換体を充填したモジュールを設置すれば、ユースポイントに移送される超純水中に微粒子(パーティクル)やイオン成分等の極微量不純物が僅かに混入した場合でも、微粒子とイオン成分の両方を除去し、高集積デバイスの製造等に適する超純水を安定して供給し、更にモジュールの交換頻度を著しく低減することができること等を見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明(1)は、超純水を配管移送してユースポイントに供給する超純水製造装置において、該超純水を移送する配管の途中に、互いにつながっているマクロポアとマクロポアの壁内に平均径が1〜1,000μmの共通の開口を有する連続気泡構造を有し、全細孔容積が1ml/g〜50ml/gであり、イオン交換基が均一に分布され、イオン交換容量が0.5mg当量/g乾燥多孔質体以上である3次元網目構造を有する有機多孔質イオン交換体を充填したモジュールを設置し、該モジュールで超純水を更に処理する超純水製造装置を提供するものである。これにより、ユースポイントに供給される超純水中に極僅かの量で含まれる微粒子とイオン成分等の両方を除去し、高集積デバイスの製造等に適する超純水を安定して供給し、更に該モジュールの交換頻度を著しく低減することができる。
【0009】
また、本発明(2)は、前記マクロポアと前記共通の開口で形成される気泡の内壁に、更に平均孔径が5〜800nmの凹凸を形成した超純水製造装置を提供するものである。本発明によれば、気泡構造の内壁に不定形状の微小凹凸(ミクロポア)が形成されているため、多孔質体の強度を保持しつつ、細孔容積や比表面積を格段に大きくすることが可能であり、モジュールの微粒子捕捉能力を更に向上させることができる。
【0010】
また、本発明(3)は、前記モジュールに供給される超純水は、原水を前処理装置及び1次系純水製造装置で処理後、紫外線酸化装置、限外濾過装置及びイオン交換体が充填された非再生式のカートリッジポリッシャーからなる2次系純水製造装置で処理したものである超純水製造装置を提供するものである。これにより、通常、半導体製造工業などで使用されている超純水製造装置の超純水移送配管途中に該モジュールを設置するのみで、前記効果を奏することができる。
【0011】
また、本発明(4)は、前記有機多孔質イオン交換体が、有機多孔質カチオン交換体である超純水製造装置を提供するものである。これにより、半導体デバイスに特に悪影響を及ぼす金属類を効果的に除去することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態における超純水製造装置について、図1を参照して説明する。図1に示すように、超純水製造装置1は、前処理装置10、1次系純水製造装置20及び2次系純水製造装置(サブシステム)30、及び2次系純水製造装置30とユ−スポイント4を接続する超純水移送配管3途中に設置されるイオン吸着モジュール2とから構成される。すなわち、イオン吸着モジュール2は超純水を処理するものであり、超純水中に含まれる極微量の微粒子とイオン成分の両方を長期間に亘って安定して除去する。前処理装置10は、例えば凝集濾過装置12及び活性炭塔13からなり、1次系純水製造装置20は、例えば逆浸透膜が装填された逆浸透膜モジュール21及び2床3塔式純水製造装置又は混床式純水製造装置等のイオン交換装置22からなり、2次系純水製造装置30は、例えば紫外線酸化装置31、イオン交換樹脂が充填された非再生式のカートリッジポリッシャー32及び限外濾過膜装置33からなる。なお、符号24は1次純水貯槽であり、1次純水を貯留すると共にユースポイント4に供給される超純水の消費分以外の残部が返送される槽である。本発明において、超純水34を製造する超純水製造装置は、前記例示の装置に限定されず、少なくとも、イオン交換装置、逆浸透膜装置又は蒸留装置などを有したもので、脱イオン工程を含むものであればよい。従って、本発明における超純水とは、前述のような前処理装置、1次系純水製造装置及び2次系純水製造装置により処理されたものであるか、あるいは、抵抗率が10MΩ-cm以上のものであればよい。被処理水の純度が悪過ぎると、充填された多孔質イオン交換体が直ぐに飽和してしまいイオン吸着モジュール2の交換頻度が高くなり好ましくない。
【0013】
本例で用いるイオン吸着モジュール2は、2次系純水製造装置30と1次純水貯槽24とを接続する配管5のうち、2次系純水製造装置30とユ−スポイント4を接続する超純水移送配管3途中に設置される。イオン吸着モジュール2の設置場所としては、特に制限されないが、ユースポイント4の直近に設置することが、特に超純水移送配管3が数十メートルまたはそれ以上の長さを有する場合、該移送中の超純水に不純物が混入しても対応できる点で好適である。また、ユースポイント4における水の使用目的によっては、イオン吸着モジュール2の前段又は後段にガス溶解膜装置を設置してオゾンや水素などのガスを溶解させたり、あるいは更に後段に限外ろ過膜装置などを設置してもよい。
【0014】
イオン吸着モジュール2は、被処理水流入配管に接続される流入口と処理水流出配管に接続される流出口を備える容器状の支持構造物と、該支持構造物に充填される有機多孔質イオン交換体からなる。該イオン吸着モジュールに充填されるイオン交換体の基本構造は、互いにつながっているマクロポアとマクロポアの壁内に平均径が1〜1,000μm、好ましくは10〜100μmのメソポアを有する連続気泡構造であり、更に、該マクロポアと該メソポアで形成される気泡構造の内壁に、平均孔径が5〜800nm、好ましくは2〜500nmの非連続孔であるミクロポアを有していてもよい連続気泡構造である。すなわち、当該連続気泡構造は、通常、平均径2〜5,000μmのマクロポアとマクロポアが重なり合い、この重なる部分が共通の開口となるメソポアを有するもので、その大部分がオープンポア構造のものである。オープンポア構造は、水を流せば該マクロポアと該メソポアで形成される気泡構造内が流路となる。メソポアの平均径が1μm未満であると、通水時の圧力損失が大きくなってしまい、一方、メソポアの平均径が1,000μmより大きいと、水の流路が均一に形成されにくくなるため好ましくない。多孔質イオン交換体の構造が上記のような連続気泡構造となることにより、細孔容積や比表面積を格段に大きくすることができる。また、前記特定孔径のミクロポアを気泡構造の内壁に導入することにより、更に比表面積を大きくすることができる。該ミクロポアは不定形状の微小凹凸により形成されるものであり。その平均孔径は公知の水銀圧入法により求められる。
【0015】
また、該多孔質イオン交換体は、全細孔容積が1ml/g〜50ml/gである多孔質体である。全細孔容積が1ml/g未満であると、単位断面積当りの通水量が小さくなってしまい、通水量を大きく取れなくなるため好ましくない。一方、全細孔容積が50ml/gを超えると、ポリマー等の骨格部分の占める割合が低下し、多孔質体の強度が著しく低下してしまうため好ましくない。連続気泡構造を形成する骨格部分の材料は、架橋構造等の化学的拘束点や結晶部等の物理的拘束点を有する有機ポリマー材料を用いる。該ポリマー材料が架橋構造を有するポリマーである場合、ポリマー材料を構成する全構成単位に対して、5〜90モル%の架橋構造単位を含むことが好ましい。架橋構造単位が5モル%未満であると、機械的強度が不足するため好ましくなく、一方、90モル%を超えると、イオン交換基の導入が困難となり、イオン交換容量が低下してしまうため好ましくない。該ポリマー材料の種類には特に制限はなく、例えば、ポリスチレン、ポリ(α-メチルスチレン)、ポリビニルベンジルクロライド等のスチレン系ポリマーやそれらの架橋体;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンやそれらの架橋体;ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン等のポリ(ハロゲン化オレフィン)やそれらの架橋体;ポリアクリロニトリル等のニトリル系ポリマーやそれらの架橋体;ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル等の(メタ)アクリル系ポリマーやそれらの架橋体;スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、ビニルベンジルクロライド-ジビニルベンゼン共重合体等が挙げられる。上記ポリマーは、単独のモノマーを重合させて得られるホモポリマーでも、複数のモノマーを重合させて得られるコポリマーであってもよく、また、二種類以上のポリマーがブレンドされたものであってもよい。これら有機ポリマー材料中で、イオン交換基の導入の容易性と機械的強度の高さから、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体やビニルベンジルクロライド-ジビニルベンゼン共重合体が好ましい材料として挙げられる。本発明の多孔質イオン交換体の連続気泡構造は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いることで、比較的容易に観察できる。
【0016】
本発明で用いられる多孔質イオン交換体は、イオン交換基が均一に分布し、イオン交換容量が0.5mg等量/g乾燥多孔質体以上、好ましくは2.0mg等量/g乾燥多孔質体以上の多孔質イオン交換体である。イオン交換容量が0.5mg等量/g乾燥多孔質体未満であると、イオン吸着能力が不足し、モジュール交換頻度が増大するため好ましくない。また、イオン交換基の分布が不均一だと、吸着されたイオンがモジュール内において流れ方向に拡散しやすく、このため、モジュール内におけるイオン吸着部分と未吸着部分の混在領域であるイオン交換帯は長くなり、吸着したイオンの微量リークを起こしやすいので、更にモジュールの交換頻度が増大して好ましくない。なお、ここで言う「イオン交換基が均一に分布している」とは、イオン交換基の分布が少なくともμmオーダーで均一であることを言う。イオン交換基の分布状況は、電子線マイクロアナライザ(EPMA)や二次イオン質量分析法(SIMS)等を用いることで、比較的簡単に確認することができる。
【0017】
多孔質イオン交換体に導入されるイオン交換基としては、カルボン酸基、イミノ二酢酸基、スルホン酸基、リン酸基、アミノリン酸基、イミノリン酸基、芳香族水酸基等のカチオン交換基;四級アンモニウム基、三級アミノ基、二級アミノ基、一級アミノ基、ポリエチレンイミン、第三スルホニウム基、ホスホニウム基等のアニオン交換基;ベタイン、スルホベタイン等の両性イオン交換基;イミノ二酢酸基、リン酸基、リン酸エステル基、アミノリン酸基、イミノリン酸基、芳香族水酸基、脂肪族ポリオール、ポリエチレンイミン等のキレート形成基が挙げられ、これらを目的に合わせて単独または複合させて導入し、多孔質イオン交換体とすることができる。
【0018】
尚、連続孔を有する有機多孔質体としては、粒子凝集型構造を有する多孔質体がF.Svec,Science,273,205〜211(1996)等に既に開示されている。また、特開平10-216717号公報、特開平10-192717号公報、特開平10-192716号公報、特開平8-252579号公報には、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂の混合物を結合材ポリマーを用いて結合した粒子凝集型の多孔質構造体が記載されている。これらの粒子凝集型多孔質体は、有機系微粒子や予めイオン交換基を導入した粒状イオン交換樹脂を結合材ポリマーを用いて結合したり、あるいは一定の型に該微粒子を充填して加熱溶融して結合させて多孔質構造体を形成し、更に場合によっては、結合材ポリマー部にもイオン交換基を導入して製造されている。しかし、上記の粒子凝集型多孔質体は、粒子凝集構造のため、細孔容積が小さく、メソポアも大きくできないため、低圧で大流量の処理を行う際に制約を受ける。更に、前記の粒子凝集型多孔質体では、イオン交換基等が多孔質体中に均一に分布していない。すなわち、これらの多孔質構造体では、結合ポリマー部分にイオン交換基が存在しないか又は存在したとしても、イオン交換樹脂部分とはポリマー母体およびイオン交換基の構造が異なるうえに、イオン交換基の存在密度がイオン交換樹脂部分に比べて低く、全体が均質なイオン交換体とはなっていない。このため、吸着されたイオンがモジュール内において流れ方向に拡散しやすく、モジュール内におけるイオン吸着部分と未吸着部分の混在領域であるイオン交換帯は長くなり、吸着したイオンの微量リークを起こしやすいので、モジュールの交換頻度が高くなるという問題がある。
【0019】
本発明で用いられる多孔質イオン交換体は、外部と連続したオープンセル構造を有するスポンジ構造体である。ここで言うスポンジ構造体とは、竹内雍:多孔質体の性質とその応用技術,p.2-5,フジ・テクノシステム(2000)に定義されているように、固体中に気泡が分散した気泡分散型多孔質体のことを指すものであり、特開平10-216717号公報、特開平10-192717号公報、特開平10-192716号公報、特開平8-252579号公報に開示されているような粒子凝集型多孔質体とは全く構造が異なるものである。多孔質体の構造がスポンジ構造となることにより、セル構造を均一に形成できると共に、粒子凝集型多孔質体に比べて、全細孔容積や比表面積を格段に大きくすることができるため、非常に有利である。また、本発明の多孔質イオン交換体には、前述のようにイオン交換基等が均一に分布しているので、吸着されたイオンのモジュール内の流れ方向への拡散が少なく、前記イオン交換帯は短くなり、吸着したイオンの微量リークを起こし難いので、モジュールを長期間安定して使用することができる。
【0020】
上記多孔質イオン交換体の製造方法としては、特に制限はなく、イオン交換基を含む成分を一段階で多孔質体にする方法、イオン交換基を含まない成分により多孔質体を形成し、その後、イオン交換基を導入する方法等が挙げられる。多孔質イオン交換体の製造方法の一例を次に示す。すなわち、当該多孔質イオン交換体は、イオン交換基を含まない油溶性モノマー、必要に応じて沈殿剤、界面活性剤、水及び必要に応じて重合開始剤とを混合し、油中水滴型エマルジョンを得た後、これを重合して多孔質体とし、更にイオン交換基を導入することで製造される。上記沈殿剤は該油溶性モノマーが重合してできるポリマーに対する貧溶媒でかつ油溶性モノマーを溶解する化合物であり、前記マクロポアと前記メソポアで形成される気泡構造の内壁に不定形状の微小凹凸を形成させたい場合に用いられる。
【0021】
イオン交換基を含まない油溶性モノマーとしては、カルボン酸基、スルホン酸基等のイオン交換基を含まず、水に対する溶解性が低く、親油性のモノマーを指すものである。これらモノマーの若干の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド、ジビニルベンゼン、エチレン、プロピレン、イソブテン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、トリメチロールプロパントリアクリレート、ブタンジオールジアクリレート、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸グリシジル、エチレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。これらモノマーは、単独で用いられても良いし、2種類以上を混合して用いても差し支えない。ただし、本発明においては、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート等の架橋性モノマーを少なくともモノマーの一成分として選択し、その含有量を全油溶性モノマー中、1〜90モル%、好ましくは3〜80モル%とすることが、後の工程でイオン交換基量を多く導入するに際して必要な機械的強度が得られる点で好ましい。
【0022】
該油溶性モノマーが重合してできるポリマーに対する貧溶媒でかつ油溶性モノマーを溶解する沈殿剤としては、油溶性モノマーの種類により種々選択することができる。例えば、油溶性モノマーとしてスチレンとジビニルベンゼンの混合物を用いた場合、沈殿剤としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-2-ブタノール、メチルイソブチルカルビノール等のアルコールを用いることができる。該沈殿剤の添加量は、油溶性モノマー中のジビニルベンゼンの含有量により変動するが、油溶性モノマーと沈殿剤の合計量に対して10〜70%、好ましくは20〜60%の範囲で選択することができる。上記沈殿剤の添加により、例えば、スチレンとジビニルベンゼンの初期の重合体が油溶性モノマー等の油分に溶解し難くなり、その結果、ミクロ粒子状で沈殿し、これらミクロ粒子状物が集合体となり、表面に微小の凹凸を発現させる。また、ミクロポアの孔径は、沈殿剤の配合量を適宜選択することや架橋性モノマーと沈殿剤の配合比率を適宜選択することで制御することができる。上記ミクロポアを形成させる方法としては、上記沈殿剤の添加以外に、例えば、油溶性モノマーの重合体である直鎖状重合体を添加する方法、該油溶性モノマーが重合してできるポリマーに対する良溶媒である膨潤化剤を上記沈殿剤と共に添加する方法および上記直鎖状重合体と膨潤化剤または沈殿剤を併用する方法が挙げられる。
【0023】
界面活性剤は、イオン交換基を含まない油溶性モノマーと水とを混合した際に、油中水滴型(W/O)エマルジョンを形成できるものであれば特に制限はなく、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等の非イオン界面活性剤;オレイン酸カリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム等の陰イオン界面活性剤;ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド等の陽イオン界面活性剤;ラウリルジメチルベタイン等の両性界面活性剤を用いることができる。これら界面活性剤は、1種単独または2種類以上を組み合わせて使用することができる。なお、油中水滴型エマルジョンとは、油相が連続相となり、その中に水滴が分散しているエマルジョンを言う。上記界面活性剤の添加量は、油溶性モノマーの種類および目的とするエマルジョン粒子(マクロポア)の大きさによって大幅に変動するため一概には言えないが、油溶性モノマーと界面活性剤の合計量に対して約2〜70%の範囲で選択することができる。また、必ずしも必須ではないが、多孔質イオン交換体の気泡形状やサイズを制御するために、メタノール、ステアリルアルコール等のアルコール;ステアリン酸等のカルボン酸;ベンゼン、トルエン、オクタン、ドデカン等の炭化水素を系内に共存させることもできる。
【0024】
重合開始剤としては、熱及び光照射によりラジカルを発生する化合物が好適に用いられる。重合開始剤は水溶性であっても油溶性であってもよく、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、過酸化ベンゾイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素-塩化第一鉄、過硫酸ナトリウム-酸性亜硫酸ナトリウム、テトラメチルチウラムジスルフィド等が挙げられる。ただし、場合によっては、重合開始剤を添加しなくても加熱のみや光照射のみで重合が進行する系もあるため、そのような系では重合開始剤の添加は不要である。
【0025】
イオン交換基を含まない油溶性モノマー、界面活性剤、水および重合開始剤とを混合し、油中水滴型エマルジョンを形成させる際の混合順序としては特に制限はなく、各成分を一括して一度に混合する方法;油溶性モノマー、界面活性剤および油溶性重合開始剤である油溶性成分と、水や水溶性重合開始剤である水溶性成分とを別々に均一溶解させた後、それぞれの成分を混合する方法等が使用できる。エマルジョンを形成させるための混合装置についても特に制限はなく、通常のミキサーやホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、遊星式攪拌装置等を用いることができ、目的のエマルジョン粒径を得ることができる乳化条件を任意に設定することができる。また、沈殿剤を用い、かつ油溶性成分と水溶性成分とを分けて調製する場合、沈殿剤は油溶性成分に配合される。
【0026】
このようにして得られた油中水滴型エマルジョンを重合させる重合条件は、モノマーの種類、重合開始剤系により様々な条件が選択できる。例えば、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル、過硫酸カリウム等を用いたときには、不活性雰囲気下の密封容器内において、30〜100℃で1〜48時間加熱重合させればよく、重合開始剤として過酸化水素-塩化第一鉄、過硫酸ナトリウム-酸性亜硫酸ナトリウム等を用いたときには、不活性雰囲気下の密封容器内において、0〜30℃で1〜48時間重合させれば良い。重合終了後、内容物を取り出し、必要であれば、未反応モノマーと界面活性剤除去を目的に、イソプロパノール等の溶剤で抽出して多孔質体を得る。
【0027】
上記の多孔質体にイオン交換基を導入する方法としては、特に制限はないが、イオン交換基を高密度かつ均一に導入できる点で高分子反応による導入方法が好ましく用いられる。例えばスルホン酸基を導入する方法としては、有機多孔質体がスチレン-ジビニルベンゼン共重合体等であればクロロ硫酸や濃硫酸、発煙硫酸を用いてスルホン化する方法等が挙げられる。また、四級アンモニウム基を導入する方法としては、有機多孔質体がスチレン-ジビニルベンゼン共重合体等であればクロロメチルメチルエーテル等によりクロロメチル基を導入した後、三級アミンと反応させる方法;有機多孔質体をクロロメチルスチレンとジビニルベンゼンの共重合により製造し、三級アミンと反応させる方法等が挙げられる。また、ベタインを導入する方法としては、上記と同様の方法により有機多孔質体に三級アミンを導入した後、モノヨード酢酸を反応させ導入する方法等が挙げられる。更に、キレート形成基である脂肪族ポリオールを導入する方法としては、クロロメチル基を有する有機多孔質体にN-メチルグルカミン等を反応させる方法が挙げられる。なお、導入するイオン交換基としては、カルボン酸基、イミノ二酢酸基、スルホン酸基、リン酸基、アミノリン酸基、イミノリン酸基、芳香族水酸基等のカチオン交換基;四級アンモニウム基、三級アミノ基、二級アミノ基、一級アミノ基、ポリエチレンイミン、第三スルホニウム基、ホスホニウム基等のアニオン交換基;ベタイン、スルホベタイン等の両性イオン交換基;イミノ二酢酸基、リン酸基、リン酸エステル基、アミノリン酸基、イミノリン酸基、芳香族水酸基、脂肪族ポリオール、ポリエチレンイミン等のキレート形成基が挙げられ、これらを単独または複合させて導入し、多孔質イオン交換体を得る。
【0028】
イオン吸着モジュールのモジュール形態としては、特に限定されるものではなく、単純な円柱状充填層に上昇流又は下降流で通水する方式、円筒状充填層に円周方向外側から内筒へ通水する外圧方式、逆方向に通水する内圧方式、細長い円筒状多孔質イオン交換体を束ねるように多数充填し、内圧式又は外圧式で通水するチューブラー方式、シート状充填層を用いる平膜方式、平膜を折り畳んだ形状に加工したプリーツ方式などが挙げられる。また、充填される多孔質イオン交換体の形状は、該モジュールの方式に応じて、ブロック状、シート状、円柱状、円筒状などが適宜選択され、その成型方法としては、ブロック状多孔質イオン交換体を切削して成型する方法及び製造過程において目的形状の型枠内に前記エマルジョンを充填して型枠内で重合を行う方法などが挙げられる。
【0029】
イオン吸着モジュールに充填する多孔質イオン交換体の種類と充填形態は、使用の目的、すなわち、吸着しようとする不純物の種類に応じて、任意に決定することができる。すなわち、モジュール内に多孔質アニオン交換体、多孔質カチオン交換体及び多孔質キレート吸着体を、単独又は混在させて充填させることができる。また、混在させる方法としては、通水方向に対する積層や小ブロックイオン交換体の混合充填などがある。更に、多孔質アニオン交換体、多孔質カチオン交換体及び多孔質キレート吸着体を、単独で充填したモジュールを任意の順序で組み合わせて用いることもできる。このうち、モジュール内に多孔質カチオン交換体を単独充填させて用いることが、半導体デバイスに特に影響を及ぼす金属類を効果的に除去することができる点で好適である。
【0030】
次に、図1の超純水製造装置1を使用して超純水を製造する方法を説明する。先ず工業用水、市水、井水、河川水等の被処理水11は凝集濾過装置12及び活性炭塔13からなる前処理装置10で処理され被処理水中の懸濁物及び有機物の大半を除去し、次いでこの前処理水は逆浸透膜が装填された逆浸透膜モジュール21で処理されイオン及びTOCを除去し、次いでイオン交換装置22で処理され1次純水23が得られる。当該1次純水23は一旦1次純水貯槽24に貯留され、紫外線酸化装置31、イオン交換樹脂が充填された非再生式のカートリッジポリッシャー32、限外濾過膜装置33からなる二次系純水製造装置30で処理されることにより1次純水中に微量残留する微粒子、コロイダル物質、有機物、金属、イオンなどの不純物が極力除去された超純水34を得る。当該超純水34はイオン吸着モジュールに供給されると、有機多孔質イオン交換体の連続気泡構造内を流通し、微粒子とイオン性不純物が共に除去される。また、気泡内壁に非連続孔のミクロポアが存在する有機多孔質イオン交換体の場合、該ミクロポアに微粒子が捕捉され、除去効率が一層高まる。不純物が除去されたイオン吸着モジュール2の処理水は、各ユースポイント4で半導体デバイスの洗浄に用いられ、残余の超純水は前記1次純水貯槽24に循環される。このように、イオン吸着モジュール2では前記特定構造の多孔質イオン交換体が充填されているため、超純水中に極僅かに含まれる微粒子とイオン成分等の両方を除去し、高集積デバイスの製造等に適する高い純度を長期に亘って安定して維持し、更に該モジュールの交換頻度を著しく低減することができる。
【0031】
【実施例】
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
実施例1
(有機多孔質体の製造)
スチレン27.7g、ジビニルベンゼン6.9g、アゾビスイソブチロニトリル(ABIBN)0.14g及びソルビタンモノオレエート3.8gを混合し、均一に溶解させた。次に、当該スチレン/ジビニルベンゼン/アゾビスイソブチロニトリル/ソルビタンモノオレエート混合物を450mlの純水に添加し、ホモジナイザーを用いて2万回転/分で2分間攪拌し、油中水滴型エマルジョンを得た。乳化終了後、油中水滴型エマルジョンをステンレス製のオートクレーブに移し、窒素で十分置換した後密封し、静置下60℃で24時間重合させた。重合終了後、内容物を取り出し、イソプロパノールで18時間ソックスレー抽出し、未反応モノマーとソルビタンモノオレエートを除去した後、40℃で一昼夜減圧乾燥した。このようにして得られたスチレン/ジビニルベンゼン共重合体よりなる架橋成分を14モル%含有した有機多孔質体11.5gを分取し、ジクロロエタン800mlを加え、60℃で30分加熱した後、室温まで冷却し、クロロ硫酸59.1gを徐々に加え、室温で24時間反応させた。その後、酢酸を加え、多量の水中に反応物を投入し、水洗、乾燥して多孔質カチオン交換体を得た。この多孔質体のイオン交換容量は、乾燥多孔質体換算で4.4mg当量/g、湿潤体積換算で、0.32mg当量/mlであり、EPMAを用いた硫黄原子のマッピングにより、スルホン酸基が多孔質体に均一に導入されていることを確認した。また、SEM観察の結果、この有機多孔質体の内部構造は連続気泡構造を有しており、平均径30μmのマクロポアの大部分が重なり合い、マクロポアとマクロポアの重なりで形成されるメソポアの孔径は5μmであり、全細孔容積は、10.1ml/g、BET比表面積は10m2/gであった。
【0032】
(イオン吸着モジュールの製造例1)
得られた多孔質イオン交換体を湿潤状態で切削し、直径5cm、高さ5cmの円柱型多孔質イオン交換体とし、内径5cmの高密度ポリエチレン製カラムに充填して、1mol/L硝酸で再生後、超純水で充分洗浄して再生形とし、イオン吸着モジュールを得た。
【0033】
(通水試験1)
図2に示す装置を用いて、純水に水酸化ナトリウムを添加して模擬汚染純水とし、これをイオン吸着モジュールに通水して、良好な出口水質が得られることを確認した。工業用水を原水とし、これをイオン交換装置及びカートリッジポリッシャーに通水して比抵抗18.2MΩ-cmの純水を得、この純水に水酸化ナトリウム水溶液を注入して、ナトリウム濃度1.0μg/Lの模擬汚染純水とした。カートリッジポリッシャー出口における微粒子数(0.2μm以上)は、84個/mlであった。この模擬汚染純水を前記のイオン交換モジュールに通水流速1L/分で通水し、処理水のナトリウム濃度と微粒子数を測定した。ナトリウム濃度の測定は、試料水を誘導結合プラズマ−質量分析法(ICP−MS)によって、また、微粒子数は、レーザー光散乱法によって測定した。その結果、処理水のナトリウム濃度は10ng/L以下、微粒子数(0.2μm以上)は、1個/ml以下であった。
【0034】
実施例2
(有機多孔質体の製造)
スチレン32.91g、ジビニルベンゼン17.72g、n-ヘプタン21.70g、ソルビタンモノオレエート8.04gおよびアゾビスイソブチロニトリル(ABIBN)0.29gを混合し、均一に溶解させた。次に、当該スチレン/ジビニルベンゼン/n-ヘプタン/ソルビタンモノオレエート/アゾビスイソブチロニトリル混合物を450mlの純水に添加し、ホモジナイザーを用いて20000回転/分で2分間攪拌し、油中水滴型エマルジョンを得た。乳化終了後、油中水滴型エマルジョンをオートクレーブに移し、窒素で十分置換した後密封し、静置下60℃で24時間重合させた。重合終了後、内容物を取り出し、イソプロパノールで18時間ソックスレー抽出し、未反応モノマー、n−ヘプタン、水およびソルビタンモノオレエートを除去した後、85℃で一昼夜減圧乾燥した。この様にして得られたスチレン/ジビニルベンゼン共重合体よりなる架橋成分を26モル%含有した有機多孔質体の内部構造をSEMにより観察した結果を図3に示す。図3中、中央部分の「く」字状に見える部分が骨格構造の気泡構造の内壁で、右上側及び左側の暗い部分がメソポアである。また、メソポアの奥側には骨格構造の気泡の内壁が見えている。このように、当該有機多孔質体は連続気泡構造を有しており、平均径20μmのマクロポアの大部分が重なり合い、マクロポアとマクロポアの重なりで形成されるメソポアの孔径は0.8〜20.1μmの範囲にあり、平均孔径は4.3μmであり、マクロポアとメソポアで形成される気泡構造の内壁には、不定形状の微小凹凸が観察された(図3の骨格構造部分の表面の凹凸)。この気泡構造の内壁面の微小凹凸は水銀圧入法で求められる孔径が、6〜600nmの範囲にあり、平均孔径が240nmの非連続孔であるミクロポアと定義できた。また、全細孔容積は、5.0ml/g、BET比表面積は64m2/gであった。
【0035】
(有機多孔質イオン交換体の製造)
得られた有機多孔質体を切断して11.5gを分取し、ジクロロエタン800mlを加え60℃で30分加熱した後、室温まで冷却し、クロロ硫酸59.1gを徐々に加え、室温で12時間反応させた。その後、酢酸を加え、多量の水中に反応物を投入し、水洗、乾燥して多孔質カチオン交換体を得た。この多孔質体のイオン交換容量は、乾燥多孔質体換算で4.4mg当量/g、湿潤体積換算で、0.32mg当量/mlであり、EPMAを用いた硫黄原子のマッピングにより、スルホン酸基が多孔質体に均一に導入されていることを確認した。
【0036】
(イオン吸着モジュールの製造例2)
得られた多孔質イオン交換体を湿潤状態で切削し、直径5cm、高さ5cmの円柱型多孔質イオン交換体とし、内径5cmの高密度ポリエチレン製カラムに充填して、1mol/L硝酸で再生後、超純水で充分洗浄して再生形とし、イオン吸着モジュールを得た。
【0037】
(通水試験2)
イオン吸着モジュールとして、製造例2で得られたイオン吸着モジュールを用いた他は、実施例1と同様の方法により通水試験を行った。その結果、処理水のナトリウム濃度は10ng/L以下、微粒子数(0.2μm以上)は、1個/ml以下であった。
【0038】
比較例1
イオン吸着モジュールとして、高密度ポリエチレンの膜に強酸性カチオン交換基を化学修飾させた膜モジュール(日本ポール株式会社製「イオンクリーンAQ」、型番:DFA1UPWSW44、ろ過面積0.16m2、イオン交換容量8.3mg当量/モジュール、外形寸法φ72mm×H114.5mm)を用いた他は、前記通水試験1と同様の試験を行い、処理水ナトリウム濃度10ng/L、微粒子数(0.2μm以上)は、1個/ml以下の結果を得た。
【0039】
実施例1、実施例2及び比較例1より、本発明のイオン交換モジュールを用いれば、従来のイオン吸着モジュールを用いたときと同等以上の処理水質が得られることが判った。
【0040】
実施例3
実施例1のイオン吸着モジュールを用いて、モジュールの寿命試験を行った。イオン吸着モジュールに通水する模擬汚染純水のナトリウム濃度を50mg/Lとし、イオン吸着モジュールへの通水流速を0.2L/分とした以外は、通水試験1と同様に通水試験を行い、一定時間ごとに処理水を採取してナトリウム濃度を測定した。その結果、処理水ナトリウム濃度が1mg/Lを越えたのは、模擬汚染純水通水開始57分後であった。
【0041】
比較例2
比較例1のイオン吸着モジュールを用いた以外は、実施例3と同様にモジュールの寿命試験を行った。その結果、処理水ナトリウム濃度が1mg/Lを越えたのは、模擬汚染純水通水開始11分後であった。
【0042】
実施例3と比較例2より、本発明のイオン吸着モジュールを用いれば、純水が何らかの原因で汚染を受けた時にも、安定して良好な出口水質を長時間維持しうるとともに、イオン吸着モジュールの交換頻度を著しく低減できることが判った。更に、処理水ナトリウム濃度が1mg/Lを越えた時点での、モジュール内総交換容量に対する流入イオン負荷量を算出すると、実施例において79%、比較例において58%となり、本発明のイオン吸着モジュールにおいては、イオン交換基の利用率が著しく高い。また、体積当たりの交換容量が大きいことに加えて、その利用率の高さが、著しい長寿命化を可能にすることが判った。
【0043】
【発明の効果】
本発明によれば、ユースポイントに接続される超純水移送配管途中に特定構造の有機多孔質イオン交換体が充填されたイオン吸着モジュールを用いるため、微粒子(パーティクル)やイオン成分等の極微量不純物が移送中の超純水に僅かに混入した場合でも、微粒子とイオン成分等の両方を除去し、高集積デバイスの製造等に適する高い純度の純水を安定して得ることができる。また、該モジュールの交換頻度を著しく低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態における超純水製造装置のフロー図である。
【図2】実施例と比較例で用いられた通水試験装置のフロー図である。
【図3】本発明の有機多孔質体の微細構造を示す走査型電子顕微鏡写真である。
【符号の説明】
1 超純水製造装置
2、45 イオン吸着モジュール
3 超純水移送配管
4 ユースポイント
10 前処理装置
11、41 原水
20 1次系純水製造装置
22、42 イオン交換装置
30 2次系純水製造装置
32、43 カートリッジポリッシャー
40 通水試験装置
44 水酸化ナトリウム水溶液注入設備
Claims (4)
- 超純水を配管移送してユースポイントに供給する超純水製造装置において、該超純水を移送する配管の途中に、互いにつながっているマクロポアとマクロポアの壁内に平均径が1〜1,000μmの共通の開口を有する連続気泡構造を有し、全細孔容積が1ml/g〜50ml/gであり、イオン交換基が均一に分布され、イオン交換容量が0.5mg当量/g乾燥多孔質体以上である3次元網目構造を有する有機多孔質イオン交換体を充填したモジュールを設置し、該モジュールで超純水を更に処理することを特徴とする超純水製造装置。
- 前記マクロポアと前記共通の開口で形成される気泡の内壁に、更に平均孔径が5〜800nmの凹凸を形成したことを特徴とする請求項1記載の超純水製造装置。
- 前記モジュールに供給される超純水は、原水を前処理装置及び1次系純水製造装置で処理後、紫外線酸化装置、限外濾過装置及びイオン交換体が充填された非再生式のカートリッジポリッシャーからなる2次系純水製造装置で処理したものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の超純水製造装置。
- 前記有機多孔質イオン交換体が、有機多孔質カチオン交換体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の超純水製造装置。
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