JP3965821B2 - L−リジンの製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、発酵法によるL−リジンの製造法に関する。L−リジンは飼料添加物等として広く用いられている。
【0002】
【従来の技術】
従来、L−リジンは、L−リジン生産能を有するブレビバクテリウム属やコリネバクテリウム属に属するコリネ型細菌を用いて発酵法により工業生産されている。これらのコリネ型細菌は、生産性を向上させるために、自然界から分離した菌株または該菌株の人工変異株が用いられている。
【0003】
また、組換えDNA技術によりL−リジンの生合成酵素を増強することによって、L−リジンの生産能を増加させる種々の技術が開示されている。例えば、L−リジン生産能を有するコリネ型細菌において、L−リジン及びL−スレオニンによるフィードバック阻害が解除されたアスパルトキナーゼをコードする遺伝子(変異型lysC)、ジヒドロジピコリン酸レダクターゼ遺伝子(dapB)、ジヒドロジピコリン酸シンターゼ遺伝子(dapA)、ジアミノピメリン酸デカルボキシラーゼ遺伝子(lysA)遺伝子、及びジアミノピメリン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(ddh)(WO96/40934)、LysA及びDDH(特開平9−322774号)、LysC、LysA及びホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ遺伝子(ppc)(特開平10-165180号)、変異型lysC、dapB、dapA、lysA及びアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ利遺伝子(aspC)(特開平10-215883号)を導入することにより、同細菌のL−リジン生産能が向上することが知られている。
また、エシェリヒア属細菌においては、dapA、変異型lysC、dapB、ジアミノピメリン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(ddh)(又はテトラヒドロジピコリン酸スクシニラーゼ遺伝子(dapD)及びスクシニルジアミノピメリン酸デアシラーゼ遺伝子(dapE))を順次増強するとL−リジン生産能が向上することが知られている(WO 95/16042)。
【0004】
一方、グルタミン酸生産性コリネ型細菌におけるグルタミン酸の生産性の向上を目的とする技術として、コリネバクテリウム属細菌由来のグルタミン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を含む組換え体DNAを保有した細胞が開示されている(特開昭61-268185号公報)。グルタミン酸デヒドロゲナーゼは、トリカルボン酸サイクルの中間体であるα−ケトグルタル酸を酸化してL−グルタミン酸を生成する反応を触媒する酵素であり、同酵素をコードする遺伝子を増幅することによってL−グルタミン酸の生産能が向上する。また、他のグルタミン酸生合成酵素遺伝子とともにグルタミン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を増強すると、L−グルタミン酸の生産量が向上することが示されている(特開昭63-214189号)。
【0005】
しかし、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ活性とL−リジンの生産能との関係は、知られていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来よりもさらに改良された発酵法によるL−リジンの製造法、及びそれに用いる微生物を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った。そして、L−リジン生合成経路において、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼによるオキサロ酢酸からアスパラギン酸を生成する反応に必要なアミノ基の供給がL−リジン生合成の律速になっているのではないかと予想した。このアミノ基は、前記反応に伴うL−グルタミン酸からα−ケトグルタル酸への脱アミノ反応により供給される。また、ジアミノピメリン酸にアミノ基が転移されてL−リジンが生成する反応において、副基質としてL−グルタミン酸が必要になる。この反応はスクシニルジアミノピメリン酸トランスアミナーゼにより触媒されるが、ここで転移されるアミノ基もL−グルタミン酸からα−ケトグルタル酸への脱アミノ反応により供給される。そこで、生成したα−ケトグルタル酸をグルタミン酸に戻すグルタミン酸デヒドロゲナーゼの反応に着目し、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(以下、「GDH」ともいう。)をコードする遺伝子をL−リジン生産能を有するコリネ型細菌に導入し、GDH活性を増幅したところ、同細菌のL−リジンの生産能を向上させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、以下のとおりである。
(1)細胞中のGDH活性が増強され、かつL−リジン生産能を有するコリネ型細菌。
(2)前記GDH活性の増強が、前記細菌細胞内のGDHをコードする遺伝子のコピー数を高めることによるものである(1)のコリネ型細菌。
(3)前記GDHをコードする遺伝子がコリネ型細菌由来である(2)のコリネ型細菌。
(4)さらに、アスパルトキナーゼ活性、ジヒドロジピコリン酸レダクターゼ活性、ジヒドロジピコリン酸シンターゼ活性、及びジアミノピメリン酸デカルボキシラーゼ活性の少なくとも一つが増強された(1)のコリネ型細菌。
(5)前記(1)〜(4)のいずれか一項に記載のコリネ型細菌を培地に培養し、該培養物中にL−リジンを生成蓄積せしめ、該培養物からL−リジンを採取することを特徴とするL−リジンの製造法。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0010】
<1>本発明のコリネ型細菌
本発明のコリネ型細菌は、L−リジン生産能を有し、細胞中のGDH活性が増強されたコリネ型細菌である。
【0011】
本発明でいうコリネ型細菌としては、バージーズ・マニュアル・オブ・デターミネイティブ・バクテリオロジー(Bergey's Manual of Determinative Bacteriology)第8版599頁(1974)に定義されている一群の微生物であり、好気性,グラム陽性,非抗酸性,胞子形成能を有しない桿菌であり、従来ブレビバクテリウム属に分類されていたが現在コリネバクテリウム属細菌として統合された細菌を含み(Int. J. Syst. Bacteriol., 41, 255 (1981))、またコリネバクテリウム属と非常に近縁なブレビバクテリウム属細菌及びミクロバテリウム属細菌を含む。L−リジンの製造に好適に用いられるコリネ型細菌の菌株としては、例えば以下に示すものが挙げられる。
【0012】
コリネバクテリウム・アセトアシドフィルム ATCC13870
コリネバクテリウム・アセトグルタミクム ATCC15806
コリネバクテリウム・カルナエ ATCC15991
コリネバクテリウム・グルタミクム ATCC13032
(ブレビバクテリウム・ディバリカタム) ATCC14020
(ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム)ATCC13869
〔コリネバクテリウム・リリウム) ATCC15990
(ブレビバクテリウム・フラバム) ATCC14067
コリネバクテリウム・メラセコーラ ATCC17965
ブレビバクテリウム・サッカロリティクム ATCC14066
ブレビバクテリウム・インマリオフィルム ATCC14068
ブレビバクテリウム・ロゼウム ATCC13825
ブレビバクテリウム・チオゲニタリス ATCC19240
ミクロバクテリウム・アンモニアフィラム ATCC15354
コリネバクテリウム・サーモアミノゲネス AJ12340(FERM BP-1539)
【0013】
これらを入手するには、例えばアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションより分譲を受けることができる。すなわち、各微生物ごとに対応する登録番号が付与されており、この登録番号を引用して分譲を受けることができる。各微生物に対応する登録番号はアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションのカタログに記載されている。また、AJ12340株は、通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所にブダペスト条約に基づいて寄託されている。
【0014】
また、上記菌株以外にも、これらの菌株から誘導されたL−リジン生産能を有する変異株等も、本発明に利用できる。この様な人工変異株としては次の様なものがある。S−(2−アミノエチル)−システイン(以下、「AEC」と略記する)耐性変異株(例えば、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムAJ11082(NRRL B-11470)、特公昭56-1914号、特公昭56-1915号、特公昭57-14157号、特公昭57-14158号、特公昭57-30474号、特公昭58-10075号、特公昭59-4993号、特公昭61-35840号、特公昭62-24074号、特公昭62-36673号、特公平5-11958号、特公平7-112437号、特公平7-112438号参照)、その成長にL−ホモセリン等のアミノ酸を必要とする変異株(特公昭48-28078号、特公昭56-6499号)、AECに耐性を示し、更にL−ロイシン、L−ホモセリン、L−プロリン、L−セリン、L−アルギニン、L−アラニン、L−バリン等のアミノ酸を要求する変異株(米国特許第3708395号及び第3825472号)、DL−α−アミノ−ε−カプロラクタム、α−アミノ−ラウリルラクタム、アスパラギン酸−アナログ、スルファ剤、キノイド、N−ラウロイルロイシンに耐性を示すL−リジン生産変異株、オキザロ酢酸脱炭酸酵素(デカルボキシラーゼ)または呼吸系酵素阻害剤の耐性を示すL−リジン生産変異株(特開昭50-53588号、特開昭50-31093号、特開昭52-102498号、特開昭53-9394号、特開昭53-86089号、特開昭55-9783号、特開昭55-9759号、特開昭56-32995号、特開昭56-39778号、特公昭53-43591号、特公昭53-1833号)、イノシトールまたは酢酸を要求するL−リジン生産変異株(特開昭55-9784号、特開昭56-8692号)、フルオロピルビン酸または34℃以上の温度に対して感受性を示すL−リジン生産変異株(特開昭55-9783号、特開昭53-86090号)、エチレングリコールに耐性を示し、L−リジンを生産するブレビバクテリウム属またはコリネバクテリウム属の生産変異株(米国特許第4411997号)。
【0015】
<2>GDH活性の増幅
コリネ型細菌細胞中のGDH活性を増幅するには、GDHをコードする遺伝子断片を、該細菌で機能するベクター、好ましくはマルチコピー型のベクターと連結して組み換えDNAを作製し、これをL−リジン生産能を有するコリネ型細菌に導入して形質転換すればよい。形質転換株の細胞内のGDHをコードする遺伝子のコピー数が上昇する結果、GDH活性が増幅される。
【0016】
GDHをコードする遺伝子は、コリネ型細菌の遺伝子を用いることも、エシェリヒア属細菌等の他の生物由来の遺伝子のいずれも使用することができる。
コリネ型細菌のGDHをコードする遺伝子(gdh遺伝子)の塩基配列は既に明らかにされている(Molecular Microbiology (1992) 6 (3), 317-326)ので、その塩基配列に基づいて作製したプライマー、例えば配列表配列番号1及び2に示すプライマーを用いて、コリネ型細菌染色体DNAを鋳型とするPCR法(PCR:polymerase chain reaction; White,T.J. et al ;Trends Genet. 5,185(1989)参照)によって、gdh遺伝子を取得することができる。コリネ型細菌等の他の微生物のGDHをコードする遺伝子も、同様にして取得され得る。
【0017】
染色体DNAは、DNA供与体である細菌から、例えば、斎藤、三浦の方法(H.Saito and K.Miura Biochem.Biophys.Acta, 72,619,(1963)、生物工学実験書、日本生物工学会編、97〜98頁、培風館、1992年参照)等により調製することができる。
【0018】
PCR法により増幅されたgdh遺伝子は、エシェリヒア・コリ及び/又はコリネ型細菌の細胞内において自律複製可能なベクターDNAに接続して組換えDNAを調製し、これをエシェリヒア・コリ細胞に導入しておくと、後の操作がしやすくなる。エシェリヒア・コリ細胞内において自律複製可能なベクターとしては、プラスミドベクターが好ましく、宿主の細胞内で自立複製可能なものが好ましく、例えば pUC19、pUC18、pBR322、pHSG299、pHSG399、pHSG398、RSF1010等が挙げられる。
【0019】
コリネ型細菌の細胞内において自律複製可能なベクターとしては、pAM330(特開昭58-67699号公報参照)、pHM1519(特開昭58-77895号公報参照)等が挙げられる。また、これらのベクターからコリネ型細菌中でプラスミドを自律複製可能にする能力を持つDNA断片を取り出し、前記エシェリヒア・コリ用のベクターに挿入すると、エシェリヒア・コリ及びコリネ型細菌の両方で自律複製可能ないわゆるシャトルベクターとして使用することができる。
【0020】
このようなシャトルベクターとしては、以下のものが挙げられる。尚、それぞれのベクターを保持する微生物及び国際寄託機関の受託番号をかっこ内に示した。
pAJ655 エシェリヒア・コリAJ11882(FERM BP-136)
コリネバクテリウム・グルタミクムSR8201(ATCC39135)
pAJ1844 エシェリヒア・コリAJ11883(FERM BP-137)
コリネバクテリウム・グルタミクムSR8202(ATCC39136) pAJ611 エシェリヒア・コリAJ11884(FERM BP-138)
pAJ3148 コリネバクテリウム・グルタミクムSR8203(ATCC39137)
pAJ440 バチルス・ズブチリスAJ11901(FERM BP-140)
pHC4 エシェリヒア・コリAJ12617(FERM BP-3532)
【0021】
これらのベクターは、寄託微生物から次のようにして得られる。対数増殖期に集められた細胞をリゾチーム及びSDSを用いて溶菌し、30000×gで遠心分離して溶解物から得た上澄液にポリエチレングリコールを添加し、セシウムクロライド−エチジウムブロマイド平衡密度勾配遠心分離により分別精製する。
【0022】
GDH遺伝子とベクターを連結して組み換えDNAを調製するには、GDH遺伝子を含むDNA断片の末端に合うような制限酵素でベクターを切断する。連結は、T4DNAリガーゼ等のリガーゼを用いて行うのが普通である。
【0023】
上記のように調製した組換えDNAをコリネ型細菌に導入するには、これまでに報告されている形質転換法に従って行えばよい。例えば、エシェリヒア・コリK−12について報告されているような、受容菌細胞を塩化カルシウムで処理してDNAの透過性を増す方法(Mandel,M.and Higa,A.,J. Mol. Biol., 53, 159 (1970))があり、バチルス・ズブチリスについて報告されているような、増殖段階の細胞からコンピテントセルを調製してDNAを導入する方法( Duncan,C.H.,Wilson,G.A.and Young,F.E., Gene, 1, 153 (1977))がある。あるいは、バチルス・ズブチリス、放線菌類及び酵母について知られているような、DNA受容菌の細胞を、組換えDNAを容易に取り込むプロトプラストまたはスフェロプラストの状態にして組換えDNAをDNA受容菌に導入する方法( Chang,S.and Choen,S.N.,Molec. Gen. Genet., 168, 111 (1979);Bibb,M.J.,Ward,J.M.and Hopwood,O.A.,Nature, 274, 398 (1978);Hinnen,A.,Hicks,J.B.and Fink,G.R.,Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 75 1929 (1978))も応用できる。また、コリネ型細菌の形質転換は、電気パルス法(杉本ら、特開平2-207791号公報)によっても行うことができる。
【0024】
GDH活性の増強は、gdh遺伝子を上記宿主の染色体DNA上に多コピー存在させることによっても達成できる。コリネ型細菌に属する微生物の染色体DNA上にgdh遺伝子を多コピーで導入するには、染色体DNA上に多コピー存在する配列を標的に利用して相同組換えにより行う。染色体DNA上に多コピー存在する配列としては、レペッティブDNA、転移因子の端部に存在するインバーティッド・リピートが利用できる。あるいは、特開平2-109985号公報に開示されているように、gdh遺伝子をトランスポゾンに搭載してこれを転移させて染色体DNA上に多コピー導入することも可能である。いずれの方法によっても形質転換株内のgdh遺伝子のコピー数が上昇する結果、GDH活性が増幅される。
【0025】
GDH活性の増強は、上記の遺伝子増幅による以外に、染色体DNA上又はプラスミド上のgdh遺伝子のプロモーター等の発現調節配列を強力なものに置換することによっても達成される(特開平1-215280号公報参照)。たとえば、lacプロモーター、trpプロモーター、trcプロモーター、tacプロモーター、ラムダファージのPRプロモーター、PLプロモーター等が強力なプロモーターとして知られている。これらのプロモーターへの置換により、gdh遺伝子の発現が強化されることによってGDH活性が増強される。発現調節配列の改変は、gdh遺伝子のコピー数を高めることと組み合わせてもよい。
【0026】
また、本発明のコリネ型細菌は、GDH活性に加えて、他のL−リジン生合成経路又は解糖系等の酵素の活性が増強されてもよい。そのような酵素及び同酵素をコードする遺伝子の例としては、L−リジン及びL−スレオニンによる相乗的なフィードバック阻害が解除されたアスパルトキナーゼαサブユニット蛋白質又はβサブユニット蛋白質をコードする遺伝子(WO94/25605国際公開パンフレット)、コリネ型細菌由来の野生型ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ遺伝子(特開昭60-87788号公報)、コリネ型細菌由来の野生型ジヒドロジピコリン酸合成酵素をコードする遺伝子(特公平6-55149号公報)、ジヒドロジピコリン酸レダクターゼ遺伝子(特開平7-75578号公報)等が知られている。これらの酵素活性の増強は、GDH活性の増強と同様にして行うことができる。
【0027】
上記のようなL−リジン生合成系酵素遺伝子が強化されたコリネ型細菌としては、L−リジン及びL−スレオニンによるフィードバック阻害が解除されたアスパルトキナーゼをコードする遺伝子(変異型lysC)、ジヒドロジピコリン酸レダクターゼ遺伝子(dapB)、ジヒドロジピコリン酸シンターゼ遺伝子(dapA)、ジアミノピメリン酸デカルボキシラーゼ遺伝子(lysA)遺伝子、及びジアミノピメリン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(ddh)(WO96/40934)、LysA及びDDH(特開平9−322774号)、LysC、LysA及びホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ遺伝子(ppc)(特開平10-165180号)、変異型lysC、dapB、dapA、lysA及びアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ利遺伝子(aspC)(特開平10-215883号)を、それぞれ強化したコリネ型細菌が開示されている。
【0028】
ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム野生型株であるAJ12036株(FERM BP-734)に変異型lysCを含むプラスミドp399AK9Bを導入した株AJ12691は、1992年4月10日に通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(郵便番号305日本国茨城県つくば市東一丁目1番3号)に受託番号FERM P-12918として寄託され、1995年2月10日にブダペスト条約に基づく国際寄託に移管され、FERM BP-4999の受託番号で寄託されている。
【0029】
エシェリヒア・コリJM109株にdapBを含むプラスミドpCRDAPBを導入して得られた形質転換株AJ13107株は、1995年5月26日より通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(郵便番号305日本国茨城県つくば市東一丁目1番3号)に受託番号FERM BP-5114の受託番号で、ブダペスト条約に基づき国際寄託されている。
【0030】
エシェリヒア・コリJM109株にdapAを含むプラスミドpCRDAPAを導入して得られた形質転換株AJ13106株は、1995年5月26日より通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(郵便番号305日本国茨城県つくば市東一丁目1番3号)に受託番号FERM BP-5113の受託番号で、ブダペスト条約に基づき国際寄託されている。
【0031】
変異型lysC、dapB、dapAの各遺伝子は、上記寄託菌株から常法によって調製することができる。また、lysAは、コリネ型細菌、例えばブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム野生株ATCC13869株の染色体DNAから、配列表の配列番号3及び4に記載の塩基配列を有するオリゴヌクレオチドをプライマーとするPCRにより、アルギニル−tRNAシンターゼをコードするargS、lysA及びこれらを含むオペロンのプロモーターを含むDNA断片として、取得することができる。
【0032】
上記のL−リジン生合成系酵素遺伝子及びgdh遺伝子は、同一のベクター上に保持させてもよく、それぞれ別個に2又はそれ以上のベクターに保持させてもよい。
また、本発明のコリネ型細菌は、L−リジンの生合成経路から分岐してL−リジン以外の化合物を生成する反応を触媒する酵素の活性が低下または欠損していてもよい。L−グルタミン酸の生合成経路から分岐してL−グルタミン酸以外の化合物を生成する反応を触媒する酵素としては、ホモセリンデヒドロゲナーゼがある(WO 95/23864参照)。
【0033】
<3>L−グルタミン酸の生産
GDH活性が増幅され、かつL−リジン酸生産能を有するコリネ型細菌を好適な培地で培養すれば、L−リジンが培地に蓄積する。
【0034】
本発明の微生物を用いてL−リジンを製造するのに用いる培地は、炭素源、窒素源、無機イオン及び必要に応じその他の有機微量栄養素を含有する通常の培地である。炭素源としては、グルコース、ラクトース、ガラクトース、フラクトース、シュクロース、廃糖蜜、澱粉加水分解物などの炭水化物、エタノールやイノシトールなどのアルコール類、酢酸、フマール酸、クエン酸、コハク酸等の有機酸類を用いることができる。
【0035】
窒素源としては、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、酢酸アンモニウム等の無機アンモニウム塩、アンモニア、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、酵母エキス、コーン・スティープ・リカー、大豆加水分解物などの有機窒素、アンモニアガス、アンモニア水等を用いることができる。
【0036】
無機イオンとしては、リン酸カリウム、硫酸マグネシウム、鉄イオン、マンガンイオン等が少量添加される。有機微量栄養素としては、ビタミンB1などの要求物質または酵母エキス等を必要に応じ適量含有させることが望ましい。
【0037】
培養は、振とう培養、通気撹拌培養等による好気的条件下で16〜72時間実施するのがよく、培養温度は30℃〜45℃に、培養中pHは5〜9に制御する。尚、pH調整には無機あるいは有機の酸性あるいはアルカリ性物質、更にアンモニアガス等を使用することができる。
【0038】
発酵液からのL−リジンの採取は、通常イオン交換樹脂法、沈澱法その他の公知の方法を組み合わせることにより実施できる。
【0039】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。
【0040】
<1>コリネ型細菌由来のgdh遺伝子の単離とgdh遺伝子導入用プラスミドの作製コリネバクテリウム・グルタミカムの既知のgdh遺伝子配列(Molecular Microbiology (1992) 6 (3), 317-326)をもとに配列番号1及び2に示すプライマーを作製し、野生型ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムATCC13869の染色体DNAを鋳型としてPCRを行い、gdh遺伝子断片を得た。DNAの合成はApplied Biosystems社製DNA合成機 model 380Bを使用し、ホスホアミダイト法を用いて(Tetrahedron Letters(1981),22,1859参照)常法に従って合成した。PCR反応は、宝酒造(株)製DNAサーマルサイクラー PJ2000型を用い、TaqDNAポリメラーゼを用い、供給者により指定された方法に従って行なった。増幅された遺伝子断片は、TAクローニングベクターpCR2.1(Invitrogen社製)にクローン化した。構築したプラスミドをpCRGDHと命名した。
【0041】
更に、クローン化したDNA断片をコリネ型細菌に導入するために、同DNA断片をシャトルベク夕ーpVK7(特開平1O-215883号公報参照)に接続した。pCRGDHを制限酵素EcoRI(宝酒造(株)製)にて切断して、同じくEcoRIにて切断したpVK7と接続した。DNAの接続はDNAライゲーションキット(宝酒造(株)製)を用いて行った。構築したプラスミドをpGDHmと命名した。pGDHmは、マーカーとしてカナマイシン耐性遺伝子を保持する。pGDHmの構築過程を図1に示す。
【0042】
pVK7は、以下のようにして、エシェリヒア・コリ用ベクターであるpHSG299(Kmr;Takeshita, S. et al., Gene, 61, 63-74, (1987)参照)にブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムのクリプティックプラスミドであるpAM330を結合することによって構築した。pAM330は、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムATCC13869株より調製した。pHSG299を一箇所切断酵素であるAvaII(宝酒造(株)製)にて切断し、T4DNAポリメラーゼにて平滑末端化したのち、HindIII(宝酒造(株)製)にて切断し、T4DNAポリメラーゼにて平滑末端化したpAM330と接続した。pHSG299に対するpAM330の挿入方向により、生成した2種類のプラスミドをpVK6、pVK7と命名し、pVK7を以下の実験に用いた。pVK7は、E. coli及びブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムの細胞中で自律複製可能であり、かつ、pHSG299由来のマルチプルクローニングサイトとlacZ’を保持している。
【0043】
<2>gdh搭載プラスミドのブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムL−リジン生産菌への導入
(1)lysAの取得及びそれを含有するプラスミドの作製
ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム野生株ATCC13869株より常法に従い、染色体DNAを調製した。染色体DNAよりPCRにより、argS、lysA及びこれらを含むオペロンのプロモーターを含むDNA断片を増幅した。増幅に用いたDNAプライマーとしては、コリネバクテリウム・グルタミカムにおいて既知となっている配列(Molecular Microbiology 4(11), 1819-1830 (1990)、Molecular and General Genetics 212, 112-119 (1988)参照)を基にしてアルギニル−tRNAシンターゼ及びDDCをコードする約3.6kbの領域を増幅すべく、配列表の配列番号3及び4に記載の塩基配列を有する各々23merの合成DNAを用いた。DNAの合成はApplied Biosystems社製DNA合成機 model 380Bを使用し、ホスホアミダイト法を用いて(Tetrahedron Letters(1981),22,1859参照)常法に従って合成した。また、PCR反応は、宝酒造(株)製DNAサーマルサイクラー PJ2000型を用い、TaqDNAポリメラーゼを用い、供給者により指定された方法に従って行なった。増幅された3579bpの遺伝子断片のクローン化用のベクターにはpHSG399を用いた。pHSG399を制限酵素SmaI(宝酒造(株)製)にて切断し、増幅されたlysAを含むDNA断片と接続した。この様にして取得したATCC13869由来のlysAを有するプラスミドをp399LYSAと命名した。
【0044】
更に、p399LYSAをKpnI(宝酒造(株)製)とBamHI(宝酒造(株)製)で切断することにより、lysAを含むDNA断片を抽出した。このDNA断片を、pHSG299をKpnIとBamHIで切断したものと連結した。得られたプラスミドをp299LYSAと命名した。
p299LYSA構築の過程を図2に示す。
【0045】
(2)変異型lysC、dapA及びdapBを併せ持つプラスミドの作製
WO96/40934号国際公開パンフレットに記載のブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム由来のdapAを有するプラスミドpCRDAPAをKpnIおよびEcoRIにて切断し、dapAを含むDNA断片を抽出し、ベクタープラスミドpHSG399をKpnIおよびEcoRIにて切断したものと接続した。得られたプラスミドをp399DPSと命名した。p399DPSをEcoRI、SphIにて分解し、平滑末端化した後、dapAの断片を抽出した。この断片を、WO96/40934号国際公開パンフレットに記載のブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム由来の変異型lysCを含むプラスミドp399AK9をSalIにて切断し平滑末端化したものとライゲーションし、変異型lysCとdapAが共存したプラスミドp399CAを構築した。
【0046】
尚、上記プラスミドpCRDAPAは、エシェリヒア・コリAJ13106(FERM BP-5113)から常法によって調製することができる。また、p399AK9は、p399AK9BをBamHIで切断し、コリネ型細菌中でプラスミドを自律複製可能にする能力をもつDNA断片(以下「Brevi.-ori」と記す)を切り出し、セルフライゲーションすることにより、得ることができる。また、p399AK9Bは、エシェリヒア・コリAJ12691(FERM BP-4999)から常法によって調製することができる。
【0047】
次に、WO96/40934号国際公開パンフレットに記載のブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム由来のdapBを有するプラスミドpCRDAPBをEcoRIにて切断、平滑末端化した後、SacIにて切断し、dapBを含む2.0kbのDNA断片を抽出した。dapA及び変異型lysCを有するプラスミドp399CAをSpeIにて切断、平滑末端化した後、SacIにて切断し、抽出したdapB断片と接続し、変異型lysC、dapA及びdapBを含むプラスミドを得た。このプラスミドをp399CABと命名した。pCRDAPBは、エシェリヒア・コリAJ13107(FERM BP-5114)から常法によって調製することができる。
【0048】
次に、p399CABにBrevi.-oriを導入した。pHM1519由来のBrevi.-oriを有するプラスミドpHK4を制限酵素BamHI(宝酒造(株)製)にて切断し、切断面を平滑末端化した。平滑末端化はDNA Blunting kit(宝酒造(株)製)を用い、指定された方法にて行なった。平滑末端化後、リン酸化済みKpnIリンカー(宝酒造(株)製)を接続し、pHK4よりBrevi.-ori部分のDNA断片をKpnIのみによる切断によって切り出される様改変した。このプラスミドをKpnIにより切断し、生じたBrevi.-ori DNA断片を同じくKpnIにて切断したp399CABに接続し、コリネ型細菌中で自律増殖可能でかつ変異型lysC、dapAおよびdapBを併せ持つプラスミドを作製し、pCABと命名した。pCABの構築の過程を図3に示す。
【0049】
(3)変異型lysC、dapA、dapB及びlysAを併せ持つプラスミドの作製
lysAを有するプラスミドp299LYSAをKpnI及びBamHIにて切断し、平滑末端化した後、lysAの断片を抽出した。この断片を、pCABをHpaI(宝酒造(株)製)にて切断し平滑末端化したものとライゲーションし、コリネ型細菌中で自律増殖可能でかつ変異型lysC、dapA、dapB、及びlysAを併せ持つプラスミドを作製し、pCABLと命名した。pCABLは、マーカーとしてクロラムフェニコール耐性遺伝子を保持する。pCABL構築の過程を図4に示す。尚、pCABL中で、lysAの断片はdapBを含むDNA断片内のHpaI部位に挿入されているが、このHpaI部位は、dapBのプロモーターよりも上流に位置しており、dapBは分断されていない。
【0050】
(4)gdh遺伝子で形質転換されたコリネ型細菌L−リジン生産菌の作製
上記のようにして作製したプラスミドpCABLで、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムL−リジン生産菌であるAJ11082(NRRL B-11470)を形質転換し、AJ11802/pCABLを得た。AJ11082株は、AEC耐性の性質を有する。
【0051】
次に、上記形質転換体AJ11802/pCABLを、pGDHmで形質転換した。pCABLがブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム細胞中での複製起点としてpHM1519由来のものを利用し、マーカー遺伝子としてクロラムフェニコール耐性遺伝子を使用しているのに対し、pGDHmはブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム細胞中での複製起点としてpAM33O由来のものを利用し、マーカーとしてカナマイシン耐性遺伝子を用いているため、両プラスミドがブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム細胞中で安定に保持される。この様にしてL−リジン生合成系遺伝子を含むプラスミドとgdh遺伝子を含むプラスミドが共存した菌株、AJ11082/pCABL/pGDHmを取得した。
【0052】
<3>各形質転換体のGDH活性の測定
AJ11082、AJ11082/pCABL及びAJ11082/pCABL/pGDHmのGDH活性を測定した。GDH活性は、E. R. Bormanらの方法(Molecular Microbiology (1992) 6 (3), 317-326)に従って行った。フラスコ培養液約10mlを、1500rpmで20秒遠心してCaCO3を除いた後、上清を3000rpmで6分遠心して集菌した。集めた菌体を、200mM KP Buffer(pH 6.9)で2回洗浄した後、KP Buffer 300μlに懸濁し、超音波破砕した。破砕液を3000rpmで10分遠心した後、上清を粗酵素液として以降の酵素反応実験に使用した。反応液(100mM Tris-HCl (pH 8.0), 20mM NH4Cl, 10mMα-ケトグルタル酸, 0.25mM NADPH)に粗酵素液を加え、340nmでの吸光度の変化を測定した。結果を表1に示す。表中、lysC*は変異型lysC遺伝子を表す。また、GDH活性は、AJ11082の活性を1としたときの相対値で示した。その結果、AJ11082/pCABL/pGDHmは、AJ11082/pCABLに比べ、GDH活性が約7倍上昇していた。
【0053】
【表1】
【0054】
<4>L−リジンの製造
AJ11O82、AJ11082/pCABL及びAJ11082/pCABL/pGDHmをL−リジン生産培地にて培養し、そのL−リジン生産能を評価した。L−リジン生産培地の組成は以下に示す通りである。
【0055】
〔L−リジン生産培地〕
炭酸カルシウム以外の下記成分(1L中)を溶解し、KOHでpH8.0に調製し、115℃で15分殺菌した後、別に乾熱殺菌した炭酸カルシウムを50g加える。
【0056】
グルコース 100 g
(NH4)2SO4 55 g
KH2PO4 1 g
MgSO4・7H2O 1 g
ビオチン 500 μg
チアミン 2000 μg
FeSO4・7H2O 0.01 g
MnSO4・7H2O 0.01 g
ニコチンアミド 5 mg
蛋白質加水分解物(豆濃) 30 ml
炭酸カルシウム 50 g
【0057】
上記組成の培地に各形質転換体及び親株を植菌し、31.5℃にて往復振盪培養を行った。培養40時間、72時間後のL−リジン生成量、及び72時間後の生育(OD562)を表2に示す。生育は101倍希釈した後、562nmにてODを測定することにより定量した。その結果、表2に示す通り、GDH強化株においてはL−リジンの生産能の向上が確認された。
【0058】
【表2】
【0059】
【発明の効果】
本発明により、コリネ型細菌のL−リジンの生産能を向上させることができる
。
【0060】
【配列表】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【図面の簡単な説明】
【図1】 gdhを有するプラスミドpGDHmの構築の過程を示す図。
【図2】 lysAを有するプラスミドp299LYSAの構築の過程を示す図。
【図3】 変異型lysC、dapA、dapB及びBrevi.-oriを有するプラスミドpCABの構築の過程を示す図。
【図4】 変異型lysC、dapA、dapB、lysA及びBrevi.-oriを有するプラスミドpCABLの構築の過程を示す図。
Claims (3)
- グルタミン酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子のコピー数を高めることまたは同遺伝子の発現調節配列を改変することによって細胞中のグルタミン酸デヒドロゲナーゼ活性が増強され、かつL−リジン生産能を有するコリネ型細菌を培地に培養し、該培養物中にL−リジンを生成蓄積せしめ、該培養物からL−リジンを採取することを特徴とするL−リジンの製造法。
- 前記グルタミン酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子がコリネ型細菌由来である請求項1記載の製造法。
- 前記コリネ型細菌が、さらに、アスパルトキナーゼ活性、ジヒドロジピコリン酸レダクターゼ活性、ジヒドロジピコリン酸シンターゼ活性、及びジアミノピメリン酸デカルボキシラーゼ活性の少なくとも一つが、これらの酵素をコードする遺伝子のコピー数を高めることまたは同遺伝子の発現調節配列を改変することによって増強されたコリネ型細菌である、請求項1または2に記載の方法。
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