JP3965710B2 - 回転数検出装置および該装置を使用したバルブタイミング検出装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本願発明は、回転数検出装置および該装置を使用したバルブタイミング検出装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、一方の回転体から他方の回転体へ断続的にトルクを伝達する場合の方法として、機械式のクラッチ機構とか、電磁石を用いた電磁クラッチ等が知られている。ところが、これら各クラッチ機構はいずれも摩擦材の接触・非接触によってトルク伝達の有無をコントロールするものであるため、長時間使用の後には摩擦材の摩耗とか摩擦係数の変化など、信頼性という面において問題が多かった。
【0003】
一方、非接触状態でトルク伝達を行うものとして、永久磁石の吸引力を利用したマグネットカップリングが知られている。このマグネットカップリングによれば、接触機構をもたないため、長時間の使用の後においても性能劣化が少なく、信頼性という点において優れる。また、この他に、このマグネットカップリングにおいては、励磁コイルに通電してその磁力により上記永久磁石の吸引力を調整することで該永久磁石による両回転体間の保持トルクを制御することが可能であるとか、両回転体間の相対的な回転差を上記励磁コイルのインピーダンスの変化から検出することができる、等の利点がある。かかる利点から、このマグネットカップリングをエンジンのバルブタイミングを可変とする機構に適用することが知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、従来のマグネットカップリングにおいては、上述のように励磁コイルのインピーダンスの変化から回転信号を得るようにしているが、このインピーダンスの変化はレベル的に小さいため、ノイズと判別しにくく、信頼性という点において問題が残るものであった。また、回転信号を継続的に得るためには、励磁コイルに継続的に通電する必要があり、場合によっては回転信号の検出が困難になることもある。
【0005】
そこで本願発明は、回転数を高い信頼性をもって確実に検出できるようにした回転数検出装置および該装置を使用したバルブタイミング検出装置を提案せんとしてなされたものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本願発明ではかかる課題を解決するための具体的手段として次のような構成を採用している。
【0007】
本願の第1の発明では、第1の回転部材と第2の回転部材とを同軸上に配置し、上記第1の回転部材と第2の回転部材とが近接して対峙する部位において該第1の回転部材側に、上記第2の回転部材側へ磁束を流入させて該第2の回転部材を吸引し上記第1の回転部材と第2の回転部材との一体回転を可能とする永久磁石を設ける一方、上記第2の回転部材の配置側には該第2の回転部材側に磁束を流入させて上記永久磁石による吸引力を調整して上記第1の回転部材と第2の回転部材との相対回転を可能とする直流の励磁コイルを固定配置し、さらに上記第2の回転部材における上記永久磁石及び励磁コイルの磁束経路中に上記第2の回転部材側と上記励磁コイル側との間のエアギャップが該第2の回転部材の回転に伴って周期的に変化するような回転面を設け、上記励磁コイルに発生する正弦波状の誘導電圧の周波数を計数することを特徴としている。
【0008】
本願の第2の発明では、上記第1の発明にかかる回転数検出装置において、上記第2の回転部材における上記回転面を、上記永久磁石の磁束経路上において該永久磁石に近接する位置に設けたことを特徴としている。
【0009】
本願の第3の発明では、上記第1の発明にかかる回転数検出装置において、上記第2の回転部材における上記回転面を該第2の回転部材の円周方向に向けて形成するとともに、上記回転面に対して上記第2の回転部材の径方向の内側に上記永久磁石を、径方向の外側に上記励磁コイルを配置したことを特徴としている。
【0010】
本願の第4の発明では、上記第1の発明にかかる回転数検出装置において、上記第2の回転部材における上記回転面を該第2の回転部材の径方向に向けて形成するとともに、上記回転面に対して上記第2の回転部材の軸方向の一方側に上記永久磁石と励磁コイルとを設けたことを特徴としている。
【0011】
本願の第5の発明では、上記第1の発明にかかる回転数検出装置において、上記励磁コイルの磁束方向を、上記第1の回転部材と第2の回転部材とが近接して対峙する部位において上記永久磁石の磁束のうち上記第2の回転部材のみを通って該永久磁石側に帰還する磁束の方向と同方向となるように設定したことを特徴としている。
【0012】
本願の第6の発明では、上記第5の発明にかかる回転数検出装置において、上記励磁コイルのヨーク部分に補助永久磁石を設け、該補助永久磁石の磁束方向を上記励磁コイルの磁束方向と同方向に設定するとともに、上記補助永久磁石の磁力を、上記永久磁石の磁束のうち上記励磁コイルのヨーク側に流入する磁束の磁力よりも所定値だけ大きく設定したことを特徴としている。
【0013】
本願の第7の発明では、第1の回転部材と第2の回転部材とを同軸上に配置し、上記第1の回転部材と第2の回転部材とが近接して対峙する部位において該第1の回転部材側に、上記第2の回転部材側へ磁束を流入させて該第2の回転部材を吸引し上記第1の回転部材と第2の回転部材との一体回転を可能とする永久磁石を設ける一方、上記第2の回転部材の配置側には該第2の回転部材に磁束を生成させて上記永久磁石による吸引力を調整して上記第1の回転部材と第2の回転部材との相対回転を可能とする直流の励磁コイルを固定配置し、さらに上記第2の回転部材における上記永久磁石及び励磁コイルの磁束経路中に該励磁コイル側とのエアギャップが回転に伴って周期的に変化するような回転面を設け、上記励磁コイルに発生する正弦波状の誘導電圧の周波数を計数することで上記第2の回転部材の回転数を検出するように構成された回転数検出装置を、エンジンの吸気側カムシャフトと排気側カムシャフトのそれぞれに組付けてバルブタイミングを検出するようにしたバルブタイミング検出装置において、上記吸気側カムシャフトと排気側カムシャフトのいずれか一方に気筒判別手段を備えるとともに、上記気筒判別手段が備えられたカムシャフトに対応する上記回転数検出装置は該カムシャフトを上記第1の回転部材に連結し、上記気筒判別上記が備えられていないカムシャフトに対応する上記回転数検出装置は該カムシャフトを上記第2の回転部材に連結したことを特徴としている。
【0014】
本願の第8の発明では、第1の回転部材と第2の回転部材とを同軸上に配置し、上記第1の回転部材と第2の回転部材とが近接して対峙する部位において該第1の回転部材側に、上記第2の回転部材側へ磁束を流入させて該第2の回転部材を吸引し上記第1の回転部材と第2の回転部材との一体回転を可能とする永久磁石を設ける一方、上記第2の回転部材の配置側には該第2の回転部材に磁束を生成させて上記永久磁石による吸引力を調整して上記第1の回転部材と第2の回転部材との相対回転を可能とする直流の励磁コイルを固定配置し、さらに上記第2の回転部材における上記永久磁石及び励磁コイルの磁束経路中に該励磁コイル側とのエアギャップが回転に伴って周期的に変化するような回転面を設け、上記励磁コイルに発生する正弦波状の誘導電圧の周波数を計数することで上記第2の回転部材の回転数を検出するように構成された回転数検出装置を、エンジンのカムシャフトに組付けてバルブタイミングを検出するようにしたバルブタイミング検出装置において、エンジンのクランクシャフトに気筒判別手段を備えるとともに、上記カムシャフトを上記回転数検出装置の第2の回転部材に連結したことを特徴としている。
【0015】
【発明の効果】
本願発明ではかかる構成とすることにより次のような効果が得られる。
【0016】
(1) 本願の第1の発明にかかる回転数検出装置は、同軸上に配置された第1の回転部材と第2の回転部材とが近接して対峙する部位において該第1の回転部材側に、上記第2の回転部材側へ磁束を流入させて該第2の回転部材を吸引し上記第1の回転部材と第2の回転部材との一体回転を可能とする永久磁石を設ける一方、上記第2の回転部材の配置側には該第2の回転部材側に磁束を流入させて上記永久磁石による吸引力を調整して上記第1の回転部材と第2の回転部材との相対回転を可能とする直流の励磁コイルを固定配置し、さらに上記第2の回転部材における上記永久磁石及び励磁コイルの磁束経路中に上記第2の回転部材側と上記励磁コイル側との間のエアギャップが該第2の回転部材の回転に伴って周期的に変化するような回転面を設け、上記励磁コイルに発生する正弦波状の誘導電圧の周波数を計数するようにしている。
【0017】
この発明の回転数検出装置によれば、励磁コイルの非通電時には永久磁石により生成される磁束が第2の回転部材側の回転面からエアギャップを通って該回転面に対向する上記励磁コイル側に流入し、また励磁コイルの通電時には該励磁コイルにより生成される磁束が上記エアギャップを通って上記第2の回転部材の回転面側に流入する。従って、これらいずれの場合においても、上記第2の回転部材の回転に伴って上記回転面が回転すると誘導電圧が発生する。この場合、上記回転面の回転により上記エアギャップが周期的に変化しこれに伴って磁気抵抗が周期的に変化するが、この磁気抵抗の変化時に上記誘導電圧が高くなる。このため、上記回転面の回転に伴う誘導電圧の電圧値は、該回転面の回転に対応して正弦波状の特性をもって増減変化することになる。この正弦波状の誘導電圧の周波数を計数することで上記第2の回転部材の回転数を検出することができるものである。この場合、この誘導電圧の変化はインピーダンスに比べて大きいため、ノイズに対して有利であり、それだけ信頼性の高い回転数検出が可能となるものである。
【0018】
(2) 本願の第2の発明にかかる回転数検出装置によれば、上記第1の発明にかかる回転数検出装置において、上記第2の回転部材における上記回転面を、上記永久磁石の磁束経路上において該永久磁石に近接する位置に設けているので、上記回転面部分における磁束密度が高くなり、それだけ高い電圧値の誘導電圧が得られることとなり、結果的に該誘導電圧に基づく回転数検出の信頼性が高まることになる。
【0019】
(3) 本願の第3の発明にかかる回転数検出装置によれば、上記第1の発明にかかる回転数検出装置において、上記第2の回転部材における上記回転面を該第2の回転部材の円周方向に向けて形成するとともに、上記回転面に対して上記第2の回転部材の径方向の内側に上記永久磁石を、径方向の外側に上記励磁コイルを配置しているので、上記第2の回転部材に軸方向のスラスト力が作用したとしても該第2の回転部材と上記励磁コイルとの径方向における相対位置、即ち、上記エアギャップの大きさには変化がなく、従って安定した回転数信号を得ることが可能となる。
【0020】
(4) 本願の第4の発明にかかる回転数検出装置によれば、上記第1の発明にかかる回転数検出装置において、上記第2の回転部材における上記回転面を該第2の回転部材の径方向に向けて形成するとともに、上記回転面に対して上記第2の回転部材の軸方向の一方側に上記永久磁石と励磁コイルとを設けているので、例えば上記第2の回転部材における上記回転面を該第2の回転部材の円周方向に向けて形成するとともに上記第2の回転部材の径方向の一方側に上記永久磁石を、他方側に上記励磁コイルを配置する構成の場合に比して、装置の軸方向におけるコンパクト化が図れるとともに、軸方向においてコンパクトとなった分だけ上記第2の回転部材の他方側に例えばブレーキ等の他の機器の配置が可能となるものである。
【0021】
(5) 本願の第5の発明にかかる回転数検出装置によれば、上記第1の発明にかかる回転数検出装置において、上記励磁コイルの通電方向を、上記第1の回転部材と第2の回転部材とが近接して対峙する部位において上記永久磁石の磁束のうち上記第2の回転部材のみを通って該永久磁石側に帰還する磁束の方向と同方向となるように設定しているので、上記励磁コイルに通電してその磁力により上記永久磁石の磁束調整を行う場合、上記第1の回転部材と第2の回転部材とが近接して対峙する部位においてはここを通る磁束の飽和によって上記永久磁石側の磁束が上記第2の回転部材側から第1の回転部材側に迫り出され該第1の回転部材と第2の回転部材とをその間のエアギャップを介して通る磁束の磁束密度が小さくなり、上記第1の回転部材と第2の回転部材との相対回転の保持状態が解除されこれら両者の相対回転が許容される。
【0022】
この場合、第1の回転部材と第2の回転部材との間の保持状態を解除するために上記励磁コイル側に要求される磁束密度は、上記の如き磁束飽和を利用する場合には、例えば永久磁石の磁束方向と励磁コイルの磁束方向とを逆方向として該励磁コイルの磁束により上記永久磁石の磁束を打ち消す場合に比して少なくて良いことから、上記励磁コイルの通電電圧をより低く抑えることができるものである。
【0023】
(6) 本願の第6の発明にかかる回転数検出装置によれば、上記第1の発明にかかる回転数検出装置において、上記励磁コイルのヨーク部分に補助永久磁石を設け、該補助永久磁石の磁束方向を上記励磁コイルの磁束方向と同方向に設定するとともに、上記補助永久磁石の磁力を、上記永久磁石の磁束のうち上記励磁コイルのヨーク側に流入する磁束の磁力よりも所定値だけ大きく設定している。このため、上記励磁コイルが非励磁状態とされる上記第1の回転部材と第2の回転部材との回転位相の保持状態においては、上記補助永久磁石の磁束によって上記永久磁石の磁束のうち、上記励磁コイルのヨークから上記回転面部分に流入する磁束が打ち消され、該補助永久磁石の磁束のみが上記回転面部分からこれに対向する上記励磁コイルのヨーク側に流入し、上記第2の回転部材の回転に伴って上記回転面が回転することで正弦波状に増減変化する誘導電圧が得られ、この誘導電圧の周波数を計数することで上記第2の回転部材の回転数が検出される。
【0024】
また、この回転位相の保持状態から上記励磁コイルが励磁されてその磁束により上記永久磁石の磁束が上記第2の回転部材側から第1の回転部材側に迫り出されて回転位相の保持解除が行われる場合には、上記回転面部分に上記励磁コイルの磁束が流入するが、この磁束の方向は上記補助永久磁石の磁束方向と同方向とされているため、該励磁コイルの磁束によって上記補助永久磁石の磁束が打ち消されるということはなく、上記回転面と上記励磁コイルのヨーク部分との間には上記補助永久磁石の磁束と励磁コイルの磁束とが共に存在し、これらの磁束によって正弦波状に増減変化する誘導電圧が得られ、この誘導電圧の周波数を計数することで上記第2の回転部材の回転数が検出される。さらに、回転位相の解除状態から上記励磁コイルが非励磁とされて保持状態とされる場合には、上記回転面部分における上記励磁コイルの磁束は消滅するが、上記補助永久磁石の磁束はそのまま存在し、この補助永久磁石の磁束により上記第2の回転部材の回転数の検出が行われる。即ち、この発明によれば、回転位相の保持状態と解除状態との間における制御形態の切り替え時にも継続的に上記第2の回転部材の回転数検出が可能となるものである。
【0025】
(7) 本願の第7の発明にかかるバルブタイミング検出装置によれば、第1の回転部材と第2の回転部材とを同軸上に配置し、上記第1の回転部材と第2の回転部材とが近接して対峙する部位において該第1の回転部材側に、上記第2の回転部材側へ磁束を流入させて該第2の回転部材を吸引し上記第1の回転部材と第2の回転部材との一体回転を可能とする永久磁石を設ける一方、上記第2の回転部材の配置側には該第2の回転部材に磁束を生成させて上記永久磁石による吸引力を調整して上記第1の回転部材と第2の回転部材との相対回転を可能とする直流の励磁コイルを固定配置し、さらに上記第2の回転部材における上記永久磁石及び励磁コイルの磁束経路中に該励磁コイル側とのエアギャップが回転に伴って周期的に変化するような回転面を設け、上記励磁コイルに発生する正弦波状の誘導電圧の周波数を計数することで上記励磁コイルの回転数を検出するように構成された回転数検出装置を、エンジンの吸気側カムシャフトと排気側カムシャフトのそれぞれに組付けてバルブタイミングを検出するようにしたバルブタイミング検出装置において、上記吸気側カムシャフトと排気側カムシャフトのいずれか一方に気筒判別手段を備えるとともに、上記気筒判別手段が備えられたカムシャフトに対応する上記回転数検出装置は該カムシャフトを上記第1の回転部材に連結し、上記気筒判別上記が備えられていないカムシャフトに対応する上記回転数検出装置は該カムシャフトを上記第2の回転部材に連結しているので、上記第1の回転部材の回転信号と上記第2の回転部材の回転信号とを、それぞれ上記気筒判別手段の検出信号と比較することで、上記第1の回転部材と第2の回転部材とにそれぞれ連結された吸気側カムシャフトと排気側カムシャフトのクランクシャフトに対する回転位相量がそれぞれ検出されることになる。
【0026】
従って、この発明のバルブタイミング検出装置によれば、第1の回転部材と第2の回転部材との回転位相の保持と解除を行う機構に組み込まれた回転数検出装置を利用することで別個にカムシャフトの回転数検出用のセンサを設けることなく吸気側カムシャフトと排気側カムシャフトの回転位相を検出することができることから、装置の簡略化あるいは低コスト化を図ることができるものである。
【0027】
(8) 本願の第8の発明にかかるバルブタイミング検出装置によれば、第1の回転部材と第2の回転部材とを同軸上に配置し、上記第1の回転部材と第2の回転部材とが近接して対峙する部位において該第1の回転部材側に、上記第2の回転部材側へ磁束を流入させて該第2の回転部材を吸引し上記第1の回転部材と第2の回転部材との一体回転を可能とする永久磁石を設ける一方、上記第2の回転部材の配置側には該第2の回転部材に磁束を生成させて上記永久磁石による吸引力を調整して上記第1の回転部材と第2の回転部材との相対回転を可能とする直流の励磁コイルを固定配置し、さらに上記第2の回転部材における上記永久磁石及び励磁コイルの磁束経路中に該励磁コイル側とのエアギャップが回転に伴って周期的に変化するような回転面を設け、上記励磁コイルに発生する正弦波状の誘導電圧の周波数を計数することで上記第2の回転部材の回転数を検出するように構成された回転数検出装置を、エンジンのカムシャフトに組付けてバルブタイミングを検出するようにしたバルブタイミング検出装置において、エンジンのクランクシャフトに気筒判別手段を備えるとともに、上記カムシャフトを上記回転数検出装置の第2の回転部材に連結しているので、該第2の回転部材の回転信号を上記気筒判別手段の検出信号と比較することで上記カムシャフトのクランクシャフトに対する回転位相量を検出することができる。
【0028】
従って、この発明のバルブタイミング検出装置によれば、第1の回転部材と第2の回転部材との回転位相の保持と解除を行う機構に組み込まれた回転数検出装置を利用することで別個にカムシャフトの回転数検出用のセンサを設けることなくカムシャフトの回転位相を検出することができることから、装置の簡略化あるいは低コスト化を図ることができるものである。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本願発明を好適な実施形態に基づいて具体的に説明する。
【0030】
A:第1の実施形態
図1には、エンジンのカム軸1とクランク軸(図示省略)により回転駆動されるプーリー2とを回転角位相可変に連結する継手機構Z1を示している。この継手機構Z1には、本願発明にかかる回転数検出装置が組み込まれており、この回転数検出装置を利用することで吸・排気弁のバルブタイミングが検出できるようになっている。
【0031】
A:継手機構Z1の構成
継手機構Z1は、カム軸1と該カム軸1の端部外周に相対回転可能に支承されたプーリー2とを回転角位相可変に連結するものであって、その具体的構造は以下の通りである。
【0032】
上記カム軸1の先端側には、その外周にヘリカルスプライン3aを刻設した中空長軸状の中間軸3と、該中間軸3の先端部に外嵌された鍔つき中空軸状のボス部材4とが、締結ボルト23により上記カム軸1と同軸上に締結固定されており、これら中間軸3とボス部材4は上記カム軸1と一体回転される。尚、上記ボス部材4は、軸受32によりケーシング11側に回転自在に支承されている。
【0033】
上記中間軸3の径方向外側位置には、ディスク部5aを備えるとともにその内周面にはネジ5bを刻設した中空軸部材5が上記中間軸3と同軸上に配置されている。そして、この中空軸部材5の内周と上記中間軸3の外周との間には、該中空軸部材5側のネジ5bと該中間軸3側のヘリカルスプライン3aとに同時に噛合するアドバンシングプレート19が配置されている。また、このアドバンシングプレート19は、爪部材20を介して上記プーリー2に連結されている。さらに、上記プーリー2と中空軸部材5との間には、渦巻きバネで構成されるリターンスプリング21が設けられている。
【0034】
一方、上記ボス部材4の外周側には、図1及び図2に示すように、ドーナツ状形態をもつ永久磁石6と、該永久磁石6をその厚さ方向に挟んだ状態で配置されたドーナツ状形態をもつ左右一対のヨーク7,7とが軸方向に挟着状態で取り付けられている。この場合、上記ヨーク7は、上記永久磁石6よりも大径とされるとともに、その外周面にはその軸方向に延びる凸条で構成される凸極7c,7c,・・が形成されている。また、このヨーク7の一側には、円形の凹部7bが形成されている。この凹部7bは、上記永久磁石6をその軸方向から嵌合させて該永久磁石6の径方向及び軸方向の位置決め固定を行うものであり、その深さは上記永久磁石6の厚さ寸法の略1/3程度とされている。従って、この一対のヨーク7,7と上記永久磁石6との組付状態においては、図1に示すように、該各ヨーク7,7の一側外周部に形成された環状の環状隆起部7a,7aが所定間隔をもって対向し、これらの間に環状のエアギャップ25を形成することになる。尚、上記ボス部材4と永久磁石6とヨーク7,7とは、上記カム軸1に連結されてこれと一体回転する構造となっており、これら各部材によってインナーロータ9が構成される。また、上記ヨーク7は、特許請求の範囲中の「第1の回転部材」に該当する。
【0035】
上記インナーロータ9の径方向外側には、上記中空軸部材5の一端部に同軸状に取り付けられたヨーク8が位置している。このヨーク8は、特許請求の範囲中の「第2の回転部材」に該当するものであって、図1〜図5に示すように、上記ヨーク7の外径より所定寸法だけ大きな内径寸法をもつ円筒部8aと該円筒部8aの一端から径方向外方へ延出する複数(この実施形態のものにおいては4個)の突片部8b,8b,・・とで構成されている。尚、この突片部8b,8b,・・は、これが上記中空軸部材5のディスク部5aに取り付けられることで、該ディスク部5aの表面から隆起する凸極29,29,・・を形成する。従って、このヨーク8の突片部8b,8b,・・と上記ディスク部5aとで構成される面が特許請求の範囲中の「回転面」に該当することになる。また、このヨーク8の上記円筒部8aの内周面における上記各ヨーク7,7の外周面に対向する部位には、その軸方向に延びる凸条で構成される凸極8c,8c,・・が形成されており、これら各凸極8c,8c,・・は上記ヨーク7側の凸極7c,7c,・・とエアギャップ24をもって径方向に近接対向する。さらに、上記ヨーク8の円筒部8aの内周面における上記永久磁石6に対応する部位には、上記インナーロータ9側の上記エアギャップ25と同様の幅寸法をもつ環状の凹溝26が形成されており、この凹溝26の形成により上記円筒部8aのうち該凹溝26に対応する部位はその断面積が他の部位に比して小さくなっている(以下、この部位を「小断面部27」という)。尚、上記ヨーク8と中空軸部材5とでアウタロータ10が構成されている。
【0036】
上記ヨーク8の円筒部8aの径方向外側には、励磁コイル12が、ケーシング11側に固定され且つその内部に環状空間を形成した一対のヨーク13,14の該環状空間内に収容された状態で配置されている。この各ヨーク13,14の上記円筒部8aに近接対向する側の端部13a,14aは、上記永久磁石6と対応する部位において相互に離間し、これらの間にエアギャップ30を形成している。また、上記各ヨーク13,14のうち、上記ヨーク8の突片部8b,8b,・・、即ち、上記凸極29,29,・・に近接対向する部位の外面側には、図3〜図5に示すように、該各凸極28,28,・・にそれぞれ対応するようにして複数の凸極28,28,・・が形成されている。
【0037】
さらに、上記励磁コイル12の径方向外側には、ブレーキコイル16と該ブレーキコイル16の磁力を受けて上記中空軸部材5のディスク部5aに押圧付勢されるシュー部材17とを備えたブレーキ15が配置されている。
【0038】
B:継手機構Z1の作動等
上記継手機構Z1の作動等を説明すると次の通りである。この継手機構Z1は、上記カム軸1とエンジンのクランクシャフト(図示省略)によりタイミングベルト(図示省略)を介して回転駆動されるプーリー2とを、その回転位相を保持した状態で一体的連結して回転させる「位相保持」と、上記カム軸1とプーリー2との位相保持状態を解除してこれら両者の位相変更を可能とする「位相解除」とをエンジン回転数の運転状態に応じて選択できるものであって、上記「位相保持」はこれを上記永久磁石6の磁力により行い、上記「位相解除」はこれを上記励磁コイル12の磁力により上記永久磁石6の磁力を調整することで行うようになっている。また、「位相変更」は、「位相解除」の状態において上記ブレーキ15の制動力と上記リターンスプリング21の復元力を駆動力として上記アドバンシングプレート19の軸方向変位により行われる。さらに、この実施形態のものにおいては、この継手機構Z1の構造を有効に利用することで上記プーリー2の回転数を検出するようになっている。以下、これら各作動についてそれぞれ具体的に説明する。
【0039】
位相保持
「位相保持」は、上記励磁コイル12を非励磁とした状態において上記永久磁石6の磁力により行われる。即ち、図5に実磁束線で示すように、上記励磁コイル12を非励磁とした状態においては、上記永久磁石6により生成される磁束F1は、第1〜第3の磁束F11〜F13の三つの経路に別れる。
【0040】
第1磁束F11は、上記永久磁石6から一方のヨーク7及びエアギャップ24を経て上記ヨーク8の突片部8bに流入し、該円筒部8aの小断面部27部分を通って再び上記エアギャップ24及び他方のヨーク7を経て永久磁石6に帰還する経路をとる。
【0041】
第2の磁束F12は、上記永久磁石6側から上記ヨーク8の円筒部8aに流入した後、該円筒部8aからさらに上記励磁コイル12の一方のヨーク13に流入し、該ヨーク13から他方のヨーク14を経てそのまま上記ヨーク8側に流入し、再び上記永久磁石6側に帰還する経路をとる。
【0042】
第3の磁束F13は、上記第2の磁束F12が上記ヨーク14側において分岐して該ヨーク14からエアギャップ18を経て上記ヨーク8の突片部8b側に流入し、該突片部8bからさらに円筒部8aを通って上記永久磁石6に帰還する経路をとる。
【0043】
これら三つの磁束F11〜F13が上記各ヨーク7,7と上記ヨーク8とに跨がって流れる場合、上記各ヨーク7側の凸極7cとヨーク8側の凸極8cとが径方向において対向した時、これらの間を流れる磁束の密度が最大となり、その磁力により上記ヨーク7,7(即ち、これに連結された上記カム軸1)とヨーク8(即ち、これに連結されたプーリー2)とはその時点の回転位相を保持したまま相対回転が規制され、これら両者は一体回転可能とされる。尚、上記第2の磁束F12は上記ヨーク8と各ヨーク13,14の間に跨がって流れるが、これらの間には凸極が形成されていないのでこれら両者間に位相保持力は作用せず、該両者は相対回転可能とされる。
【0044】
この「位相保持」状態での動力伝達経路は次の通りである。即ち、上記ヨーク7とヨーク8とが「位相保持」により一体化されることで上記中空軸部材5と中間軸3(即ち、カム軸1)とが一体化され、上記アドバンシングプレート19はロック状態となる。従って、上記プーリー2の回転力は、該プーリー2から爪部材20、アドバンシングプレート19、中間軸3を順次経て上記カム軸1に伝達される。
【0045】
位相解除
「位相解除」は、上記励磁コイル12の磁力により行われる。即ち、図5に破磁束線で示すように、上記励磁コイル12が励磁されると、上記各ヨーク13,14内を循環する第1の磁束F21と、該第1の磁束F21から分岐して上記ヨーク8の突片部8b側に流入して上記ヨーク14側に帰還する第2の磁束F22とが生成される。この場合、上記第1の磁束F21と上記永久磁石6側の第1の磁束F11の上記ヨーク8の小断面部27部分における磁束方向が同方向に設定されているので、該小断面部27部分において磁束が飽和し、上記永久磁石6側の第1の磁束F11は上記励磁コイル12側の第1の磁束F21によって該永久磁石6側に迫り出され、同図に破磁束線で示す磁束F14のように、上記ヨーク8側へは流入せずにヨーク7,7側のみにおいて循環する経路をとることになる。この結果、上記ヨーク7側の凸極7cと上記ヨーク8側の凸極8cとの間を流れる磁束密度が可及的に小さくなって位相を保持することができず、結果的に上記ヨーク7とヨーク8との相対回転(即ち、上記カム軸1とプーリー2との相対回転)が許容される状態となり、位相保持状態が解除されることになる。
【0046】
位相変更
「位相変更」は、上記ブレーキ15の制動力と上記リターンスプリング21の復元力とを駆動力として上記アドバンシングプレート19により行われる。即ち、上記ブレーキ15により上記中空軸部材5に制動力をかけると、該中空軸部材5が上記プーリー2に対して進角側あるいは遅角側に相対回転し、この中空軸部材5の回転を受けて上記アドバンシングプレート19が回転して軸方向へ移動する。このアドバンシングプレート19の軸方向への移動に伴い、該アドバンシングプレート19と上記中間軸3とにおけるヘリカルスプラインの捩れ角に応じてこれら両者の回転位相が進角側あるいは遅角側に変化し、結果的に上記カム軸1が上記プーリー2に対して進角方向あるいは遅角方向へ位相変更されることになる。
【0047】
また、このブレーキ15の制動力による位相変更に伴って上記プーリー2と中空軸部材5とが相対回転するが、この相対回転により上記リターンスプリング21が復元力を増大させる方向に巻上げられる。従って、「位相解除」の時点において上記ブレーキ15が非作動である場合には、上記リターンスプリング21の復元力が上記プーリー2と中空軸部材5との間に作用し、上記アドバンシングプレート19が軸方向へ移動することで、上記カム軸1が上記プーリー2に対して遅角方向あるいは進角方向へ位相変更されることになる。
【0048】
尚、上記ブレーキ15の制動力と上記リターンスプリング21の復元力のいずれを「進角駆動力」として利用するか、あるいは「遅角駆動力」として利用するかは、所望の位相変更特性に応じて任意に選択可能である。
【0049】
また、所定の「位相変更」が完了した後は、上記励磁コイル12を非励磁として上記永久磁石6による「位相保持」が行われる。
【0050】
回転数の検出
この実施形態のものにおいては、上述の如き位相可変の継手機構Z1の構造を有効に利用して上記プーリー2側の回転数を検出するようにしている。即ち、上記カム軸1とプーリー2との「位相保持」状態においては上記永久磁石6側の第3の磁束F13が、また「位相解除」状態においては上記励磁コイル12側の第2の磁束F22が、エアギャップ18を介して上記ヨーク8の凸極29と上記ヨーク14の凸極28との間に流れている。そして、上記ヨーク14(即ち、励磁コイル12)は固定されているので、上記中空軸部材5の回転に伴い上記ヨーク8と励磁コイル12とが相対回転し、上記エアギャップ18が周期的に変化することから、該励磁コイル12には誘導電圧が発生する。この場合、この誘導電圧は、上記エアギャップ18の周期的な変化に伴なう磁気抵抗の変化に対応し、該磁気抵抗が変化する時点においては磁束密度が増大することから高くなり、この結果、誘導電圧は周期的に電圧値が増減変化する正弦波状の特性をもつことになる。従って、この誘導電圧の周波数を計数することで上記ヨーク8の回転数、即ち、上記プーリー2の回転数を検出することができるものである。
【0051】
このように、この実施形態のものにおいては、継手機構Z1の構成要素の一部(即ち、上記ヨーク8とヨーク14)を利用して凸極28,29を形成することのみによって、何ら専用のセンサを設けることなく、上記永久磁石6及び上記励磁コイル12の磁束によって上記プーリー2の回転数を検出することができるものであり、構造の簡略化あるいはコストダウンの促進という点において有利である。
【0052】
また、この場合、回転数の検出を誘導電圧の変化によって行うようにしているが、この誘導電圧の変化は、従来の回転数検出装置が回転数検出に利用していたコイルのインピーダンスの変化に比して大きいことから、回転信号がノイズ信号より左右されるということが少なく、それだけ高い信頼性をもって回転数検出を行うことができるものである。
【0053】
さらに、回転数の検出は、上記ヨーク14側の凸極28と上記ヨーク8の凸極29との間を流れる磁束による誘導電圧の変化を利用するものであるため、該各凸極28,29部分における磁束密度が高い程、高い誘導電圧値が得られ回転数の検出がさらに容易となる。かかる観点から、この実施形態のものにおいては、上記角凸極28,29の形成位置をできるだけ上記永久磁石6に近づけて設けることで、上記各凸極28,29部分における磁束の減衰の影響を可及的に回避して高い磁束密度が得られるようにしている。
【0054】
B:第2の実施形態
図6には、第2の実施形態にかかる継手機構Z2の要部を示している。この継手機構Z2は、上記第1の実施形態にかかる継手機構Z1と同様の基本構成をもつものであって、該第1の実施形態のそれと異なる点は、上記励磁コイル12の上記各ヨーク13,14の端部間に設けられていた上記エアギャップ30内に環状形態の補助永久磁石35を配置した点である。かかる構成としたのは、上記ヨーク8側の凸極29とヨーク14側の凸極28とを通る磁束による該ヨーク8の回転数(即ち、上記プーリー2の回転数)を検出するに際して、「位相保持」と「保持解除」との間の切り替え時においても継続的に上記プーリー2の回転数検出(換言すれば、回転信号の出力)が行えるようにするためである。即ち、上記第1の実施形態の場合には、上記凸極28と凸極29の間を永久磁石6側の第3の磁束F13と励磁コイル12側の第2の磁束F22とが逆方向に流れる構成とされているため、例えば永久磁石6側の第3の磁束F13によって回転数の検出が行われている「位相保持」状態から、上記励磁コイル12側の第2の磁束F22による回転数の検出が行われる「位相解除」状態への切り替え時には、瞬時ではあるが、上記磁束F13と磁束F22とが打ち消しあって磁束が消滅し、回転数の検出が行えない時期がある。このような磁束が消滅して回転数検出が行えないような事態の発生を未然に且つ確実に防止せんとするのがこの第2の実施形態の趣旨である。
【0055】
具体的には次の通りである。
【0056】
先ず、上記補助永久磁石35の磁束F3は、上記各ヨーク13,14を循環する第1の磁束F31と、該第1の磁束F31から分岐して上記ヨーク8の凸極29側に流入してから上記補助永久磁石35側に帰還する第2の磁束F32の二つの経路をとる。そして、この磁束F3は、その方向が、上記ヨーク8の小断面部27に対応する部位において上記励磁コイル12の第1の磁束F21と同方向となるように設定されている。また、この補助永久磁石35の磁力は、上記永久磁石6の第1の磁束F11を上記小断面部27から永久磁石6側に迫り出させることがなく(即ち、上記永久磁石6による位相保持作用を減殺させず)且つ該永久磁石6の第2の磁束F12を打ち消すことができるような値に設定している。
【0057】
このような設定とすることで、「位相保持」状態では、上記補助永久磁石35の第1の磁束F31によって上記永久磁石6の第2の磁束F12が打ち消され、上記凸極28と凸極29の間には上記補助永久磁石35の第2の磁束F32のみが流れ、この第2の磁束F32によって回転数検出が行われる。
【0058】
一方、「位相保持」状態から「保持解除」への切り替え時には、上記励磁コイル12が励磁されその磁束F2が生成されるが、この磁束F2のうち上記凸極28と凸極29の間を流れる第2の磁束F22と、上記補助永久磁石35の第2の磁束F32とはその磁束方向が同方向とされているので、該励磁コイル12の磁束F2によって上記補助永久磁石35の第2の磁束F32が影響を受けるということがなく、「位相保持」状態から「保持解除」への切り替え時にも継続的にプーリー2の回転数が検出されるものである。
【0059】
C:第3の実施形態
図7及び図8には、第3の実施形態にかかる継手機構Z3の要部が示されている。
【0060】
継手機構Z3の構造
この実施形態の継手機構Z3は、カム軸41の先端部に取り付けられたボス部材43に、永久磁石45とその外周面に複数の凸極(図示省略)を設けた左右一対のヨーク44,44を取り付けてこれらボス部材43とヨーク44と永久磁石45でインナーロータ39を構成している。また、上記インナーロータ39の外周側に、その内周面に複数の凸極を形成した筒状のヨーク46を配置するとともに、該ヨーク46には中間部材47を介してフランジ部材48及び中空軸部材38を取り付け、これらヨーク46と中間部材47とフランジ部材48とでアウタロータ40を構成している。さらに、上記中空軸部材38には、上記第1及び第2の実施形態の場合と同様に、図示しないプーリーがアドバンシングプレートを介して連結されるとともに、上記中空軸部材38と上記プーリーの間にはリターンスプリング(図示省略)が配置されている。
【0061】
さらに、上記ヨーク46の径方向外側には、ヨーク51を備えた励磁コイル50を配置している。そして、このように径方向に重合状態で配置された上記励磁コイル50と上記インナーロータ39との側方には、ブレーキコイル56と該ブレーキコイル56の磁力を受けて上記フランジ部材48に対して摺接せしめられるシュー部材57を備えたブレーキ55が配置されている。
【0062】
一方、図8及び図9に示すように、上記ヨーク46の一端には周方向に延びる凸極58,58,・・が形成されるとともに、上記励磁コイル50のヨーク51の一端側の内周面上にも上記ヨーク46側の凸極58,58,・・と対応するようにして周方向に延びる凸極59,59,・・が形成されている。
【0063】
このように、上記インナーロータ39とヨーク46と励磁コイル50を径方向に重合させて配置し、それらの側方に上記ブレーキ55を配置することで、例えば上記第1の実施形態における継手機構Z1のように上記励磁コイル12の径方向外側にさらにブレーキ15を重合状態で配置する場合に比して、該継手配置Z3の軸方向長さを短くできることになる。
【0064】
継手機構Z3の作動等
この継手機構Z 3 における「位相保持」、「保持解除」及び「位相変更」については上記第1の実施形態にかかる継手機構Z1の場合と同様であるのでその説明は省略し、本願発明の要旨である回転数の検出についてのみ説明する。
【0065】
図8に示すように、「位相保持」状態においては、上記永久磁石45の磁束が上記ヨーク44からヨーク46を経て上記凸極58部分から上記ヨーク51の凸極59側に流入する。従って、上記ヨーク46が上記励磁コイル50に対して相対回転することで該励磁コイル50に誘導電圧が発生し、その周波数を計数することで上記小断面部46aの回転数、即ち、上記プーリーの回転数が検出される。
【0066】
一方、「保持解除」状態では、図8には磁束線を示していないが、上記励磁コイル50の励磁によってその磁束が上記ヨーク46の小断面部46aにおいて上記永久磁石45側の磁束方向と同方向に向けて流れる。従って、上記小断面部46a部分における磁束飽和により上記永久磁石45側の磁束が上記ヨーク46側から永久磁石45側に迫り出され、これにより「保持解除」が行われる。この場合、上記凸極58と凸極59の間には上記励磁コイル50の磁束が流入することで上記ヨーク46の回転数、即ち、上記プーリーの回転数が検出されるものである。
【0067】
このように、誘導電圧の変化によってプーリーの回転数を検出する場合における利点等は全て上記第1及び第2の実施形態における場合と同様であるが、それに加えて、特にこの実施形態の如く回転数検出に拘わる上記各凸極58と凸極59をそれぞれヨーク46とヨーク51の周方向に形成した場合には、例え上記アウタロータ40側にスラスト力がかかってこれが軸方向へ変位したとしても、これらの間のエアギャップの大きさ、即ち、このエアギャップの量に対応した磁気抵抗の大きさが変化しないので、上記ヨーク46の回転に伴う誘導電圧をより安定的に得ることができ、延いては回転数検出の高精度化が図れるという利点が得られるものである。
【0068】
D:第4の実施形態
図10及び図11には、第4の実施形態にかかる継手機構Z4を示している。
【0069】
継手機構Z4の構造
この継手機構Z4は、カム軸41の先端部にインナーロータ39となるヨーク46を取り付けている。また、上記ヨーク46の径方向外側にボス部材43相対回転可能に配置するとともに、該ボス部材43には永久磁石45と左右一対のヨーク44,44を取り付け、これらボス部材43とヨーク44,44と永久磁石45とでアウタロータ40を構成している。また、上記ボス部材43は、中空軸部材38を介して図示しないプーリー側に連結されている。
【0070】
さらに、上記ヨーク46の径方向内側には、ケーシング42側に固定されたヨーク51に収容された状態で励磁コイル50が配置されている。また、このように径方向に重合状態で配置された上記励磁コイル50と上記アウタロータ40の軸方向側方位置には、ブレーキコイル56とシュー部材57とを備えたブレーキ55が配置され、該シュー部材57は上記ブレーキコイル56の磁力を受けて上記中空軸部材38側に固定されたフランジ部材48に摺接することでプーリー側に所定の制動力をかけるようになっている。
【0071】
一方、エアギャップ36を介して近接対向する上記ヨーク51の側面と上記ヨーク46の側面には、それぞれ径方向に延びる凸条で構成される凸極59と凸極58がそれぞれ周方向に所定間隔で形成されている。
【0072】
継手機構Z4の作動等
この継手機構Z4の基本的な作動は上記各実施形態の継手機構Z1〜Z3と同様であるのでその説明は省略し、ここでは本願発明の要旨である回転数検出を中心に説明する。
【0073】
「位相保持」状態では、図11に実磁束線で示すように上記永久磁石45の磁束の一部が上記ヨーク46側の凸極58から上記励磁コイル50のヨーク51側の凸極59側に流入しており、上記ヨーク46の回転(即ち、上記カム軸1)の回転に伴って上記両凸極58,59間の磁気抵抗が周期的に変化することで正弦波状の誘導電圧が発生し、この誘導電圧の周波数を計数することで上記カム軸41の回転数が検出されるものである。
【0074】
「保持解除」状態では、上記励磁コイル50の磁束の一部が上記凸極58と凸極59の間を流れ、この両凸極58,59間の磁束によって上記カム軸1の回転数が検出される。
【0075】
このように、この実施形態の継手機構Z4は、上記各実施形態の継手機構とは異なって、上記カム軸1の回転数を検出できる構成となっている。従って、この実施形態の継手機構Z4の如くカム軸1の回転数を検出できるものと、上記各実施形態の継手機構Z1〜Z3の如くプーリーの回転数を検出できるものとを適宜組み合わせることで、エンジンのバルブタイミングを専用の回転センサ等を設けずに容易に検出できることになる。以下、これら継手機構Z1〜Z4を用いたバルブタイミング検出装置について説明する。
【0076】
E:バルブタイミング検出装置
図12には、DOHCエンジンにおいてその排気側カム軸61と吸気側カム軸62の一端にそれぞれプーリー71,72と継手機構64,65を取り付け、上記各カム軸61,62を、これらの各プーリー71,72とクランク軸63側のプーリー73との間に掛け回したタイミングベルト74を介して該クランク軸63により回転駆動するようにした駆動系を示している。また、上記カム軸62には、気筒判別センサ66が取り付けられている。そして、この例では、上記各カム軸61,62に設けられる上記各継手機構64,65のうち、一方の継手機構64は上記第1〜第3の実施形態において説明した継手機構Z1〜Z3のようにプーリー71の回転数を検出し得る構造のものを使用し、他方の継手機構65は上記第4の実施形態において説明した継手機構Z4のように排気側カム軸62の回転数を検出し得る構造のものを使用する。
【0077】
かかる構成とすれば、図13に示す如く気筒判別センサ66と継手機構64,65からそれぞれ回転信号が出力される。ここで、排気側カム軸61のプーリー71の回転数を検出する継手機構64の回転信号を基準とし、この回転信号を、吸気側カム軸62の回転数を検出する継手機構65の回転信号と気筒判別センサ66の回転信号とを比較すると、気筒判別センサ66の回転信号における偏位量△t1が排気側カム軸61のバルブタイミングを、継手機構65の回転信号における偏位量△t2が吸気側カム軸62のバルブタイミングを、それぞれ表すことになる。
【0078】
従って、エンジン制御上の必要から本来的に設けられている上記気筒判別センサ66と、バルブタイミング可変用に設けられる上記各継手機構64,65とを利用することで、従来のように専用のカム軸回転数センサを設けなくても、各カム軸61,62のバルブタイミングを容易に検出することができるものである。
【0079】
尚、この他の例としては、例えば図12に鎖線図示するようにクランク軸63側に気筒判別センサ66を設けたものにあっては、上記排気側カム軸61と吸気側カム軸62のそれぞれに設けられる各継手機構64,65を共にカム軸の回転数を検出し得る構造とし、上記気筒判別センサ66の回転信号を基準としてこれと上記各継手機構64,65の回転信号とを比較することで排気側カム軸61と吸気側カム軸62のバルブタイミングをそれぞれ検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本願発明の第1の実施形態にかかる回転数検出装置を備えた継手機構の縦断面図である。
【図2】 図1に示した継手機構における永久磁石等の分解斜視図である。
【図3】 図1のIII-III拡大矢視図である。
【図4】 図3のIV-IV矢視図である。
【図5】 図1のV部の拡大図である。
【図6】 本願発明の第2の実施形態にかかる回転数検出装置を備えた継手機構の構造説明図である。
【図7】 本願発明の第3の実施形態にかかる回転数検出装置を備えた継手機構の縦断面図である。
【図8】 図7のVIII部の拡大図である。
【図9】 図8に示した継手機構における回転検出部の要部斜視図である。
【図10】 本願発明の第4の実施形態にかかる回転数検出装置を備えた継手機構の縦断面図である。
【図11】 図10のX部の拡大図である。
【図12】 継手機構のエンジン側への配置形態を示す斜視図である。
【図13】 回転位相量の検出方法の説明図である。
【符号の説明】
1はカム軸、2はプーリー、3は中間軸、4はボス部材、5は中空軸部材、6は永久磁石、87はヨーク、8はヨーク、9はインナーロータ、10はアウタロータ、11はケーシング、12は励磁コイル、13及びヨーク14はヨーク13、15はブレーキ、16はブレーキコイル、17はシュー部材、19はアドバンシングプレート、20は爪部材、21はリターンスプリング、23は締結ボルト、25はエアギャップ、26は凹溝、27は小断面部、28及び29は凸極、30はエアギャップ、31〜33は軸受、35は補助永久磁石、38は中空軸部材、39はインナーロータ、40はアウタロータ、41はカム軸、42はケーシング、43はボス部材、44はヨーク、45は永久磁石、46はヨーク、47は中間部材、48はフランジ部材、49はエアギャップ、50は励磁コイル、51はヨーク、52〜54は軸受、55はブレーキ、56はブレーキコイル、57はシュー部材、58及び59は凸極、61及び62はカム軸、63はクランク軸、64及び65はバルブタイミング可変装置、66は気筒判別センサ、67は検出子である。
【発明の属する技術分野】
本願発明は、回転数検出装置および該装置を使用したバルブタイミング検出装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、一方の回転体から他方の回転体へ断続的にトルクを伝達する場合の方法として、機械式のクラッチ機構とか、電磁石を用いた電磁クラッチ等が知られている。ところが、これら各クラッチ機構はいずれも摩擦材の接触・非接触によってトルク伝達の有無をコントロールするものであるため、長時間使用の後には摩擦材の摩耗とか摩擦係数の変化など、信頼性という面において問題が多かった。
【0003】
一方、非接触状態でトルク伝達を行うものとして、永久磁石の吸引力を利用したマグネットカップリングが知られている。このマグネットカップリングによれば、接触機構をもたないため、長時間の使用の後においても性能劣化が少なく、信頼性という点において優れる。また、この他に、このマグネットカップリングにおいては、励磁コイルに通電してその磁力により上記永久磁石の吸引力を調整することで該永久磁石による両回転体間の保持トルクを制御することが可能であるとか、両回転体間の相対的な回転差を上記励磁コイルのインピーダンスの変化から検出することができる、等の利点がある。かかる利点から、このマグネットカップリングをエンジンのバルブタイミングを可変とする機構に適用することが知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、従来のマグネットカップリングにおいては、上述のように励磁コイルのインピーダンスの変化から回転信号を得るようにしているが、このインピーダンスの変化はレベル的に小さいため、ノイズと判別しにくく、信頼性という点において問題が残るものであった。また、回転信号を継続的に得るためには、励磁コイルに継続的に通電する必要があり、場合によっては回転信号の検出が困難になることもある。
【0005】
そこで本願発明は、回転数を高い信頼性をもって確実に検出できるようにした回転数検出装置および該装置を使用したバルブタイミング検出装置を提案せんとしてなされたものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本願発明ではかかる課題を解決するための具体的手段として次のような構成を採用している。
【0007】
本願の第1の発明では、第1の回転部材と第2の回転部材とを同軸上に配置し、上記第1の回転部材と第2の回転部材とが近接して対峙する部位において該第1の回転部材側に、上記第2の回転部材側へ磁束を流入させて該第2の回転部材を吸引し上記第1の回転部材と第2の回転部材との一体回転を可能とする永久磁石を設ける一方、上記第2の回転部材の配置側には該第2の回転部材側に磁束を流入させて上記永久磁石による吸引力を調整して上記第1の回転部材と第2の回転部材との相対回転を可能とする直流の励磁コイルを固定配置し、さらに上記第2の回転部材における上記永久磁石及び励磁コイルの磁束経路中に上記第2の回転部材側と上記励磁コイル側との間のエアギャップが該第2の回転部材の回転に伴って周期的に変化するような回転面を設け、上記励磁コイルに発生する正弦波状の誘導電圧の周波数を計数することを特徴としている。
【0008】
本願の第2の発明では、上記第1の発明にかかる回転数検出装置において、上記第2の回転部材における上記回転面を、上記永久磁石の磁束経路上において該永久磁石に近接する位置に設けたことを特徴としている。
【0009】
本願の第3の発明では、上記第1の発明にかかる回転数検出装置において、上記第2の回転部材における上記回転面を該第2の回転部材の円周方向に向けて形成するとともに、上記回転面に対して上記第2の回転部材の径方向の内側に上記永久磁石を、径方向の外側に上記励磁コイルを配置したことを特徴としている。
【0010】
本願の第4の発明では、上記第1の発明にかかる回転数検出装置において、上記第2の回転部材における上記回転面を該第2の回転部材の径方向に向けて形成するとともに、上記回転面に対して上記第2の回転部材の軸方向の一方側に上記永久磁石と励磁コイルとを設けたことを特徴としている。
【0011】
本願の第5の発明では、上記第1の発明にかかる回転数検出装置において、上記励磁コイルの磁束方向を、上記第1の回転部材と第2の回転部材とが近接して対峙する部位において上記永久磁石の磁束のうち上記第2の回転部材のみを通って該永久磁石側に帰還する磁束の方向と同方向となるように設定したことを特徴としている。
【0012】
本願の第6の発明では、上記第5の発明にかかる回転数検出装置において、上記励磁コイルのヨーク部分に補助永久磁石を設け、該補助永久磁石の磁束方向を上記励磁コイルの磁束方向と同方向に設定するとともに、上記補助永久磁石の磁力を、上記永久磁石の磁束のうち上記励磁コイルのヨーク側に流入する磁束の磁力よりも所定値だけ大きく設定したことを特徴としている。
【0013】
本願の第7の発明では、第1の回転部材と第2の回転部材とを同軸上に配置し、上記第1の回転部材と第2の回転部材とが近接して対峙する部位において該第1の回転部材側に、上記第2の回転部材側へ磁束を流入させて該第2の回転部材を吸引し上記第1の回転部材と第2の回転部材との一体回転を可能とする永久磁石を設ける一方、上記第2の回転部材の配置側には該第2の回転部材に磁束を生成させて上記永久磁石による吸引力を調整して上記第1の回転部材と第2の回転部材との相対回転を可能とする直流の励磁コイルを固定配置し、さらに上記第2の回転部材における上記永久磁石及び励磁コイルの磁束経路中に該励磁コイル側とのエアギャップが回転に伴って周期的に変化するような回転面を設け、上記励磁コイルに発生する正弦波状の誘導電圧の周波数を計数することで上記第2の回転部材の回転数を検出するように構成された回転数検出装置を、エンジンの吸気側カムシャフトと排気側カムシャフトのそれぞれに組付けてバルブタイミングを検出するようにしたバルブタイミング検出装置において、上記吸気側カムシャフトと排気側カムシャフトのいずれか一方に気筒判別手段を備えるとともに、上記気筒判別手段が備えられたカムシャフトに対応する上記回転数検出装置は該カムシャフトを上記第1の回転部材に連結し、上記気筒判別上記が備えられていないカムシャフトに対応する上記回転数検出装置は該カムシャフトを上記第2の回転部材に連結したことを特徴としている。
【0014】
本願の第8の発明では、第1の回転部材と第2の回転部材とを同軸上に配置し、上記第1の回転部材と第2の回転部材とが近接して対峙する部位において該第1の回転部材側に、上記第2の回転部材側へ磁束を流入させて該第2の回転部材を吸引し上記第1の回転部材と第2の回転部材との一体回転を可能とする永久磁石を設ける一方、上記第2の回転部材の配置側には該第2の回転部材に磁束を生成させて上記永久磁石による吸引力を調整して上記第1の回転部材と第2の回転部材との相対回転を可能とする直流の励磁コイルを固定配置し、さらに上記第2の回転部材における上記永久磁石及び励磁コイルの磁束経路中に該励磁コイル側とのエアギャップが回転に伴って周期的に変化するような回転面を設け、上記励磁コイルに発生する正弦波状の誘導電圧の周波数を計数することで上記第2の回転部材の回転数を検出するように構成された回転数検出装置を、エンジンのカムシャフトに組付けてバルブタイミングを検出するようにしたバルブタイミング検出装置において、エンジンのクランクシャフトに気筒判別手段を備えるとともに、上記カムシャフトを上記回転数検出装置の第2の回転部材に連結したことを特徴としている。
【0015】
【発明の効果】
本願発明ではかかる構成とすることにより次のような効果が得られる。
【0016】
(1) 本願の第1の発明にかかる回転数検出装置は、同軸上に配置された第1の回転部材と第2の回転部材とが近接して対峙する部位において該第1の回転部材側に、上記第2の回転部材側へ磁束を流入させて該第2の回転部材を吸引し上記第1の回転部材と第2の回転部材との一体回転を可能とする永久磁石を設ける一方、上記第2の回転部材の配置側には該第2の回転部材側に磁束を流入させて上記永久磁石による吸引力を調整して上記第1の回転部材と第2の回転部材との相対回転を可能とする直流の励磁コイルを固定配置し、さらに上記第2の回転部材における上記永久磁石及び励磁コイルの磁束経路中に上記第2の回転部材側と上記励磁コイル側との間のエアギャップが該第2の回転部材の回転に伴って周期的に変化するような回転面を設け、上記励磁コイルに発生する正弦波状の誘導電圧の周波数を計数するようにしている。
【0017】
この発明の回転数検出装置によれば、励磁コイルの非通電時には永久磁石により生成される磁束が第2の回転部材側の回転面からエアギャップを通って該回転面に対向する上記励磁コイル側に流入し、また励磁コイルの通電時には該励磁コイルにより生成される磁束が上記エアギャップを通って上記第2の回転部材の回転面側に流入する。従って、これらいずれの場合においても、上記第2の回転部材の回転に伴って上記回転面が回転すると誘導電圧が発生する。この場合、上記回転面の回転により上記エアギャップが周期的に変化しこれに伴って磁気抵抗が周期的に変化するが、この磁気抵抗の変化時に上記誘導電圧が高くなる。このため、上記回転面の回転に伴う誘導電圧の電圧値は、該回転面の回転に対応して正弦波状の特性をもって増減変化することになる。この正弦波状の誘導電圧の周波数を計数することで上記第2の回転部材の回転数を検出することができるものである。この場合、この誘導電圧の変化はインピーダンスに比べて大きいため、ノイズに対して有利であり、それだけ信頼性の高い回転数検出が可能となるものである。
【0018】
(2) 本願の第2の発明にかかる回転数検出装置によれば、上記第1の発明にかかる回転数検出装置において、上記第2の回転部材における上記回転面を、上記永久磁石の磁束経路上において該永久磁石に近接する位置に設けているので、上記回転面部分における磁束密度が高くなり、それだけ高い電圧値の誘導電圧が得られることとなり、結果的に該誘導電圧に基づく回転数検出の信頼性が高まることになる。
【0019】
(3) 本願の第3の発明にかかる回転数検出装置によれば、上記第1の発明にかかる回転数検出装置において、上記第2の回転部材における上記回転面を該第2の回転部材の円周方向に向けて形成するとともに、上記回転面に対して上記第2の回転部材の径方向の内側に上記永久磁石を、径方向の外側に上記励磁コイルを配置しているので、上記第2の回転部材に軸方向のスラスト力が作用したとしても該第2の回転部材と上記励磁コイルとの径方向における相対位置、即ち、上記エアギャップの大きさには変化がなく、従って安定した回転数信号を得ることが可能となる。
【0020】
(4) 本願の第4の発明にかかる回転数検出装置によれば、上記第1の発明にかかる回転数検出装置において、上記第2の回転部材における上記回転面を該第2の回転部材の径方向に向けて形成するとともに、上記回転面に対して上記第2の回転部材の軸方向の一方側に上記永久磁石と励磁コイルとを設けているので、例えば上記第2の回転部材における上記回転面を該第2の回転部材の円周方向に向けて形成するとともに上記第2の回転部材の径方向の一方側に上記永久磁石を、他方側に上記励磁コイルを配置する構成の場合に比して、装置の軸方向におけるコンパクト化が図れるとともに、軸方向においてコンパクトとなった分だけ上記第2の回転部材の他方側に例えばブレーキ等の他の機器の配置が可能となるものである。
【0021】
(5) 本願の第5の発明にかかる回転数検出装置によれば、上記第1の発明にかかる回転数検出装置において、上記励磁コイルの通電方向を、上記第1の回転部材と第2の回転部材とが近接して対峙する部位において上記永久磁石の磁束のうち上記第2の回転部材のみを通って該永久磁石側に帰還する磁束の方向と同方向となるように設定しているので、上記励磁コイルに通電してその磁力により上記永久磁石の磁束調整を行う場合、上記第1の回転部材と第2の回転部材とが近接して対峙する部位においてはここを通る磁束の飽和によって上記永久磁石側の磁束が上記第2の回転部材側から第1の回転部材側に迫り出され該第1の回転部材と第2の回転部材とをその間のエアギャップを介して通る磁束の磁束密度が小さくなり、上記第1の回転部材と第2の回転部材との相対回転の保持状態が解除されこれら両者の相対回転が許容される。
【0022】
この場合、第1の回転部材と第2の回転部材との間の保持状態を解除するために上記励磁コイル側に要求される磁束密度は、上記の如き磁束飽和を利用する場合には、例えば永久磁石の磁束方向と励磁コイルの磁束方向とを逆方向として該励磁コイルの磁束により上記永久磁石の磁束を打ち消す場合に比して少なくて良いことから、上記励磁コイルの通電電圧をより低く抑えることができるものである。
【0023】
(6) 本願の第6の発明にかかる回転数検出装置によれば、上記第1の発明にかかる回転数検出装置において、上記励磁コイルのヨーク部分に補助永久磁石を設け、該補助永久磁石の磁束方向を上記励磁コイルの磁束方向と同方向に設定するとともに、上記補助永久磁石の磁力を、上記永久磁石の磁束のうち上記励磁コイルのヨーク側に流入する磁束の磁力よりも所定値だけ大きく設定している。このため、上記励磁コイルが非励磁状態とされる上記第1の回転部材と第2の回転部材との回転位相の保持状態においては、上記補助永久磁石の磁束によって上記永久磁石の磁束のうち、上記励磁コイルのヨークから上記回転面部分に流入する磁束が打ち消され、該補助永久磁石の磁束のみが上記回転面部分からこれに対向する上記励磁コイルのヨーク側に流入し、上記第2の回転部材の回転に伴って上記回転面が回転することで正弦波状に増減変化する誘導電圧が得られ、この誘導電圧の周波数を計数することで上記第2の回転部材の回転数が検出される。
【0024】
また、この回転位相の保持状態から上記励磁コイルが励磁されてその磁束により上記永久磁石の磁束が上記第2の回転部材側から第1の回転部材側に迫り出されて回転位相の保持解除が行われる場合には、上記回転面部分に上記励磁コイルの磁束が流入するが、この磁束の方向は上記補助永久磁石の磁束方向と同方向とされているため、該励磁コイルの磁束によって上記補助永久磁石の磁束が打ち消されるということはなく、上記回転面と上記励磁コイルのヨーク部分との間には上記補助永久磁石の磁束と励磁コイルの磁束とが共に存在し、これらの磁束によって正弦波状に増減変化する誘導電圧が得られ、この誘導電圧の周波数を計数することで上記第2の回転部材の回転数が検出される。さらに、回転位相の解除状態から上記励磁コイルが非励磁とされて保持状態とされる場合には、上記回転面部分における上記励磁コイルの磁束は消滅するが、上記補助永久磁石の磁束はそのまま存在し、この補助永久磁石の磁束により上記第2の回転部材の回転数の検出が行われる。即ち、この発明によれば、回転位相の保持状態と解除状態との間における制御形態の切り替え時にも継続的に上記第2の回転部材の回転数検出が可能となるものである。
【0025】
(7) 本願の第7の発明にかかるバルブタイミング検出装置によれば、第1の回転部材と第2の回転部材とを同軸上に配置し、上記第1の回転部材と第2の回転部材とが近接して対峙する部位において該第1の回転部材側に、上記第2の回転部材側へ磁束を流入させて該第2の回転部材を吸引し上記第1の回転部材と第2の回転部材との一体回転を可能とする永久磁石を設ける一方、上記第2の回転部材の配置側には該第2の回転部材に磁束を生成させて上記永久磁石による吸引力を調整して上記第1の回転部材と第2の回転部材との相対回転を可能とする直流の励磁コイルを固定配置し、さらに上記第2の回転部材における上記永久磁石及び励磁コイルの磁束経路中に該励磁コイル側とのエアギャップが回転に伴って周期的に変化するような回転面を設け、上記励磁コイルに発生する正弦波状の誘導電圧の周波数を計数することで上記励磁コイルの回転数を検出するように構成された回転数検出装置を、エンジンの吸気側カムシャフトと排気側カムシャフトのそれぞれに組付けてバルブタイミングを検出するようにしたバルブタイミング検出装置において、上記吸気側カムシャフトと排気側カムシャフトのいずれか一方に気筒判別手段を備えるとともに、上記気筒判別手段が備えられたカムシャフトに対応する上記回転数検出装置は該カムシャフトを上記第1の回転部材に連結し、上記気筒判別上記が備えられていないカムシャフトに対応する上記回転数検出装置は該カムシャフトを上記第2の回転部材に連結しているので、上記第1の回転部材の回転信号と上記第2の回転部材の回転信号とを、それぞれ上記気筒判別手段の検出信号と比較することで、上記第1の回転部材と第2の回転部材とにそれぞれ連結された吸気側カムシャフトと排気側カムシャフトのクランクシャフトに対する回転位相量がそれぞれ検出されることになる。
【0026】
従って、この発明のバルブタイミング検出装置によれば、第1の回転部材と第2の回転部材との回転位相の保持と解除を行う機構に組み込まれた回転数検出装置を利用することで別個にカムシャフトの回転数検出用のセンサを設けることなく吸気側カムシャフトと排気側カムシャフトの回転位相を検出することができることから、装置の簡略化あるいは低コスト化を図ることができるものである。
【0027】
(8) 本願の第8の発明にかかるバルブタイミング検出装置によれば、第1の回転部材と第2の回転部材とを同軸上に配置し、上記第1の回転部材と第2の回転部材とが近接して対峙する部位において該第1の回転部材側に、上記第2の回転部材側へ磁束を流入させて該第2の回転部材を吸引し上記第1の回転部材と第2の回転部材との一体回転を可能とする永久磁石を設ける一方、上記第2の回転部材の配置側には該第2の回転部材に磁束を生成させて上記永久磁石による吸引力を調整して上記第1の回転部材と第2の回転部材との相対回転を可能とする直流の励磁コイルを固定配置し、さらに上記第2の回転部材における上記永久磁石及び励磁コイルの磁束経路中に該励磁コイル側とのエアギャップが回転に伴って周期的に変化するような回転面を設け、上記励磁コイルに発生する正弦波状の誘導電圧の周波数を計数することで上記第2の回転部材の回転数を検出するように構成された回転数検出装置を、エンジンのカムシャフトに組付けてバルブタイミングを検出するようにしたバルブタイミング検出装置において、エンジンのクランクシャフトに気筒判別手段を備えるとともに、上記カムシャフトを上記回転数検出装置の第2の回転部材に連結しているので、該第2の回転部材の回転信号を上記気筒判別手段の検出信号と比較することで上記カムシャフトのクランクシャフトに対する回転位相量を検出することができる。
【0028】
従って、この発明のバルブタイミング検出装置によれば、第1の回転部材と第2の回転部材との回転位相の保持と解除を行う機構に組み込まれた回転数検出装置を利用することで別個にカムシャフトの回転数検出用のセンサを設けることなくカムシャフトの回転位相を検出することができることから、装置の簡略化あるいは低コスト化を図ることができるものである。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本願発明を好適な実施形態に基づいて具体的に説明する。
【0030】
A:第1の実施形態
図1には、エンジンのカム軸1とクランク軸(図示省略)により回転駆動されるプーリー2とを回転角位相可変に連結する継手機構Z1を示している。この継手機構Z1には、本願発明にかかる回転数検出装置が組み込まれており、この回転数検出装置を利用することで吸・排気弁のバルブタイミングが検出できるようになっている。
【0031】
A:継手機構Z1の構成
継手機構Z1は、カム軸1と該カム軸1の端部外周に相対回転可能に支承されたプーリー2とを回転角位相可変に連結するものであって、その具体的構造は以下の通りである。
【0032】
上記カム軸1の先端側には、その外周にヘリカルスプライン3aを刻設した中空長軸状の中間軸3と、該中間軸3の先端部に外嵌された鍔つき中空軸状のボス部材4とが、締結ボルト23により上記カム軸1と同軸上に締結固定されており、これら中間軸3とボス部材4は上記カム軸1と一体回転される。尚、上記ボス部材4は、軸受32によりケーシング11側に回転自在に支承されている。
【0033】
上記中間軸3の径方向外側位置には、ディスク部5aを備えるとともにその内周面にはネジ5bを刻設した中空軸部材5が上記中間軸3と同軸上に配置されている。そして、この中空軸部材5の内周と上記中間軸3の外周との間には、該中空軸部材5側のネジ5bと該中間軸3側のヘリカルスプライン3aとに同時に噛合するアドバンシングプレート19が配置されている。また、このアドバンシングプレート19は、爪部材20を介して上記プーリー2に連結されている。さらに、上記プーリー2と中空軸部材5との間には、渦巻きバネで構成されるリターンスプリング21が設けられている。
【0034】
一方、上記ボス部材4の外周側には、図1及び図2に示すように、ドーナツ状形態をもつ永久磁石6と、該永久磁石6をその厚さ方向に挟んだ状態で配置されたドーナツ状形態をもつ左右一対のヨーク7,7とが軸方向に挟着状態で取り付けられている。この場合、上記ヨーク7は、上記永久磁石6よりも大径とされるとともに、その外周面にはその軸方向に延びる凸条で構成される凸極7c,7c,・・が形成されている。また、このヨーク7の一側には、円形の凹部7bが形成されている。この凹部7bは、上記永久磁石6をその軸方向から嵌合させて該永久磁石6の径方向及び軸方向の位置決め固定を行うものであり、その深さは上記永久磁石6の厚さ寸法の略1/3程度とされている。従って、この一対のヨーク7,7と上記永久磁石6との組付状態においては、図1に示すように、該各ヨーク7,7の一側外周部に形成された環状の環状隆起部7a,7aが所定間隔をもって対向し、これらの間に環状のエアギャップ25を形成することになる。尚、上記ボス部材4と永久磁石6とヨーク7,7とは、上記カム軸1に連結されてこれと一体回転する構造となっており、これら各部材によってインナーロータ9が構成される。また、上記ヨーク7は、特許請求の範囲中の「第1の回転部材」に該当する。
【0035】
上記インナーロータ9の径方向外側には、上記中空軸部材5の一端部に同軸状に取り付けられたヨーク8が位置している。このヨーク8は、特許請求の範囲中の「第2の回転部材」に該当するものであって、図1〜図5に示すように、上記ヨーク7の外径より所定寸法だけ大きな内径寸法をもつ円筒部8aと該円筒部8aの一端から径方向外方へ延出する複数(この実施形態のものにおいては4個)の突片部8b,8b,・・とで構成されている。尚、この突片部8b,8b,・・は、これが上記中空軸部材5のディスク部5aに取り付けられることで、該ディスク部5aの表面から隆起する凸極29,29,・・を形成する。従って、このヨーク8の突片部8b,8b,・・と上記ディスク部5aとで構成される面が特許請求の範囲中の「回転面」に該当することになる。また、このヨーク8の上記円筒部8aの内周面における上記各ヨーク7,7の外周面に対向する部位には、その軸方向に延びる凸条で構成される凸極8c,8c,・・が形成されており、これら各凸極8c,8c,・・は上記ヨーク7側の凸極7c,7c,・・とエアギャップ24をもって径方向に近接対向する。さらに、上記ヨーク8の円筒部8aの内周面における上記永久磁石6に対応する部位には、上記インナーロータ9側の上記エアギャップ25と同様の幅寸法をもつ環状の凹溝26が形成されており、この凹溝26の形成により上記円筒部8aのうち該凹溝26に対応する部位はその断面積が他の部位に比して小さくなっている(以下、この部位を「小断面部27」という)。尚、上記ヨーク8と中空軸部材5とでアウタロータ10が構成されている。
【0036】
上記ヨーク8の円筒部8aの径方向外側には、励磁コイル12が、ケーシング11側に固定され且つその内部に環状空間を形成した一対のヨーク13,14の該環状空間内に収容された状態で配置されている。この各ヨーク13,14の上記円筒部8aに近接対向する側の端部13a,14aは、上記永久磁石6と対応する部位において相互に離間し、これらの間にエアギャップ30を形成している。また、上記各ヨーク13,14のうち、上記ヨーク8の突片部8b,8b,・・、即ち、上記凸極29,29,・・に近接対向する部位の外面側には、図3〜図5に示すように、該各凸極28,28,・・にそれぞれ対応するようにして複数の凸極28,28,・・が形成されている。
【0037】
さらに、上記励磁コイル12の径方向外側には、ブレーキコイル16と該ブレーキコイル16の磁力を受けて上記中空軸部材5のディスク部5aに押圧付勢されるシュー部材17とを備えたブレーキ15が配置されている。
【0038】
B:継手機構Z1の作動等
上記継手機構Z1の作動等を説明すると次の通りである。この継手機構Z1は、上記カム軸1とエンジンのクランクシャフト(図示省略)によりタイミングベルト(図示省略)を介して回転駆動されるプーリー2とを、その回転位相を保持した状態で一体的連結して回転させる「位相保持」と、上記カム軸1とプーリー2との位相保持状態を解除してこれら両者の位相変更を可能とする「位相解除」とをエンジン回転数の運転状態に応じて選択できるものであって、上記「位相保持」はこれを上記永久磁石6の磁力により行い、上記「位相解除」はこれを上記励磁コイル12の磁力により上記永久磁石6の磁力を調整することで行うようになっている。また、「位相変更」は、「位相解除」の状態において上記ブレーキ15の制動力と上記リターンスプリング21の復元力を駆動力として上記アドバンシングプレート19の軸方向変位により行われる。さらに、この実施形態のものにおいては、この継手機構Z1の構造を有効に利用することで上記プーリー2の回転数を検出するようになっている。以下、これら各作動についてそれぞれ具体的に説明する。
【0039】
位相保持
「位相保持」は、上記励磁コイル12を非励磁とした状態において上記永久磁石6の磁力により行われる。即ち、図5に実磁束線で示すように、上記励磁コイル12を非励磁とした状態においては、上記永久磁石6により生成される磁束F1は、第1〜第3の磁束F11〜F13の三つの経路に別れる。
【0040】
第1磁束F11は、上記永久磁石6から一方のヨーク7及びエアギャップ24を経て上記ヨーク8の突片部8bに流入し、該円筒部8aの小断面部27部分を通って再び上記エアギャップ24及び他方のヨーク7を経て永久磁石6に帰還する経路をとる。
【0041】
第2の磁束F12は、上記永久磁石6側から上記ヨーク8の円筒部8aに流入した後、該円筒部8aからさらに上記励磁コイル12の一方のヨーク13に流入し、該ヨーク13から他方のヨーク14を経てそのまま上記ヨーク8側に流入し、再び上記永久磁石6側に帰還する経路をとる。
【0042】
第3の磁束F13は、上記第2の磁束F12が上記ヨーク14側において分岐して該ヨーク14からエアギャップ18を経て上記ヨーク8の突片部8b側に流入し、該突片部8bからさらに円筒部8aを通って上記永久磁石6に帰還する経路をとる。
【0043】
これら三つの磁束F11〜F13が上記各ヨーク7,7と上記ヨーク8とに跨がって流れる場合、上記各ヨーク7側の凸極7cとヨーク8側の凸極8cとが径方向において対向した時、これらの間を流れる磁束の密度が最大となり、その磁力により上記ヨーク7,7(即ち、これに連結された上記カム軸1)とヨーク8(即ち、これに連結されたプーリー2)とはその時点の回転位相を保持したまま相対回転が規制され、これら両者は一体回転可能とされる。尚、上記第2の磁束F12は上記ヨーク8と各ヨーク13,14の間に跨がって流れるが、これらの間には凸極が形成されていないのでこれら両者間に位相保持力は作用せず、該両者は相対回転可能とされる。
【0044】
この「位相保持」状態での動力伝達経路は次の通りである。即ち、上記ヨーク7とヨーク8とが「位相保持」により一体化されることで上記中空軸部材5と中間軸3(即ち、カム軸1)とが一体化され、上記アドバンシングプレート19はロック状態となる。従って、上記プーリー2の回転力は、該プーリー2から爪部材20、アドバンシングプレート19、中間軸3を順次経て上記カム軸1に伝達される。
【0045】
位相解除
「位相解除」は、上記励磁コイル12の磁力により行われる。即ち、図5に破磁束線で示すように、上記励磁コイル12が励磁されると、上記各ヨーク13,14内を循環する第1の磁束F21と、該第1の磁束F21から分岐して上記ヨーク8の突片部8b側に流入して上記ヨーク14側に帰還する第2の磁束F22とが生成される。この場合、上記第1の磁束F21と上記永久磁石6側の第1の磁束F11の上記ヨーク8の小断面部27部分における磁束方向が同方向に設定されているので、該小断面部27部分において磁束が飽和し、上記永久磁石6側の第1の磁束F11は上記励磁コイル12側の第1の磁束F21によって該永久磁石6側に迫り出され、同図に破磁束線で示す磁束F14のように、上記ヨーク8側へは流入せずにヨーク7,7側のみにおいて循環する経路をとることになる。この結果、上記ヨーク7側の凸極7cと上記ヨーク8側の凸極8cとの間を流れる磁束密度が可及的に小さくなって位相を保持することができず、結果的に上記ヨーク7とヨーク8との相対回転(即ち、上記カム軸1とプーリー2との相対回転)が許容される状態となり、位相保持状態が解除されることになる。
【0046】
位相変更
「位相変更」は、上記ブレーキ15の制動力と上記リターンスプリング21の復元力とを駆動力として上記アドバンシングプレート19により行われる。即ち、上記ブレーキ15により上記中空軸部材5に制動力をかけると、該中空軸部材5が上記プーリー2に対して進角側あるいは遅角側に相対回転し、この中空軸部材5の回転を受けて上記アドバンシングプレート19が回転して軸方向へ移動する。このアドバンシングプレート19の軸方向への移動に伴い、該アドバンシングプレート19と上記中間軸3とにおけるヘリカルスプラインの捩れ角に応じてこれら両者の回転位相が進角側あるいは遅角側に変化し、結果的に上記カム軸1が上記プーリー2に対して進角方向あるいは遅角方向へ位相変更されることになる。
【0047】
また、このブレーキ15の制動力による位相変更に伴って上記プーリー2と中空軸部材5とが相対回転するが、この相対回転により上記リターンスプリング21が復元力を増大させる方向に巻上げられる。従って、「位相解除」の時点において上記ブレーキ15が非作動である場合には、上記リターンスプリング21の復元力が上記プーリー2と中空軸部材5との間に作用し、上記アドバンシングプレート19が軸方向へ移動することで、上記カム軸1が上記プーリー2に対して遅角方向あるいは進角方向へ位相変更されることになる。
【0048】
尚、上記ブレーキ15の制動力と上記リターンスプリング21の復元力のいずれを「進角駆動力」として利用するか、あるいは「遅角駆動力」として利用するかは、所望の位相変更特性に応じて任意に選択可能である。
【0049】
また、所定の「位相変更」が完了した後は、上記励磁コイル12を非励磁として上記永久磁石6による「位相保持」が行われる。
【0050】
回転数の検出
この実施形態のものにおいては、上述の如き位相可変の継手機構Z1の構造を有効に利用して上記プーリー2側の回転数を検出するようにしている。即ち、上記カム軸1とプーリー2との「位相保持」状態においては上記永久磁石6側の第3の磁束F13が、また「位相解除」状態においては上記励磁コイル12側の第2の磁束F22が、エアギャップ18を介して上記ヨーク8の凸極29と上記ヨーク14の凸極28との間に流れている。そして、上記ヨーク14(即ち、励磁コイル12)は固定されているので、上記中空軸部材5の回転に伴い上記ヨーク8と励磁コイル12とが相対回転し、上記エアギャップ18が周期的に変化することから、該励磁コイル12には誘導電圧が発生する。この場合、この誘導電圧は、上記エアギャップ18の周期的な変化に伴なう磁気抵抗の変化に対応し、該磁気抵抗が変化する時点においては磁束密度が増大することから高くなり、この結果、誘導電圧は周期的に電圧値が増減変化する正弦波状の特性をもつことになる。従って、この誘導電圧の周波数を計数することで上記ヨーク8の回転数、即ち、上記プーリー2の回転数を検出することができるものである。
【0051】
このように、この実施形態のものにおいては、継手機構Z1の構成要素の一部(即ち、上記ヨーク8とヨーク14)を利用して凸極28,29を形成することのみによって、何ら専用のセンサを設けることなく、上記永久磁石6及び上記励磁コイル12の磁束によって上記プーリー2の回転数を検出することができるものであり、構造の簡略化あるいはコストダウンの促進という点において有利である。
【0052】
また、この場合、回転数の検出を誘導電圧の変化によって行うようにしているが、この誘導電圧の変化は、従来の回転数検出装置が回転数検出に利用していたコイルのインピーダンスの変化に比して大きいことから、回転信号がノイズ信号より左右されるということが少なく、それだけ高い信頼性をもって回転数検出を行うことができるものである。
【0053】
さらに、回転数の検出は、上記ヨーク14側の凸極28と上記ヨーク8の凸極29との間を流れる磁束による誘導電圧の変化を利用するものであるため、該各凸極28,29部分における磁束密度が高い程、高い誘導電圧値が得られ回転数の検出がさらに容易となる。かかる観点から、この実施形態のものにおいては、上記角凸極28,29の形成位置をできるだけ上記永久磁石6に近づけて設けることで、上記各凸極28,29部分における磁束の減衰の影響を可及的に回避して高い磁束密度が得られるようにしている。
【0054】
B:第2の実施形態
図6には、第2の実施形態にかかる継手機構Z2の要部を示している。この継手機構Z2は、上記第1の実施形態にかかる継手機構Z1と同様の基本構成をもつものであって、該第1の実施形態のそれと異なる点は、上記励磁コイル12の上記各ヨーク13,14の端部間に設けられていた上記エアギャップ30内に環状形態の補助永久磁石35を配置した点である。かかる構成としたのは、上記ヨーク8側の凸極29とヨーク14側の凸極28とを通る磁束による該ヨーク8の回転数(即ち、上記プーリー2の回転数)を検出するに際して、「位相保持」と「保持解除」との間の切り替え時においても継続的に上記プーリー2の回転数検出(換言すれば、回転信号の出力)が行えるようにするためである。即ち、上記第1の実施形態の場合には、上記凸極28と凸極29の間を永久磁石6側の第3の磁束F13と励磁コイル12側の第2の磁束F22とが逆方向に流れる構成とされているため、例えば永久磁石6側の第3の磁束F13によって回転数の検出が行われている「位相保持」状態から、上記励磁コイル12側の第2の磁束F22による回転数の検出が行われる「位相解除」状態への切り替え時には、瞬時ではあるが、上記磁束F13と磁束F22とが打ち消しあって磁束が消滅し、回転数の検出が行えない時期がある。このような磁束が消滅して回転数検出が行えないような事態の発生を未然に且つ確実に防止せんとするのがこの第2の実施形態の趣旨である。
【0055】
具体的には次の通りである。
【0056】
先ず、上記補助永久磁石35の磁束F3は、上記各ヨーク13,14を循環する第1の磁束F31と、該第1の磁束F31から分岐して上記ヨーク8の凸極29側に流入してから上記補助永久磁石35側に帰還する第2の磁束F32の二つの経路をとる。そして、この磁束F3は、その方向が、上記ヨーク8の小断面部27に対応する部位において上記励磁コイル12の第1の磁束F21と同方向となるように設定されている。また、この補助永久磁石35の磁力は、上記永久磁石6の第1の磁束F11を上記小断面部27から永久磁石6側に迫り出させることがなく(即ち、上記永久磁石6による位相保持作用を減殺させず)且つ該永久磁石6の第2の磁束F12を打ち消すことができるような値に設定している。
【0057】
このような設定とすることで、「位相保持」状態では、上記補助永久磁石35の第1の磁束F31によって上記永久磁石6の第2の磁束F12が打ち消され、上記凸極28と凸極29の間には上記補助永久磁石35の第2の磁束F32のみが流れ、この第2の磁束F32によって回転数検出が行われる。
【0058】
一方、「位相保持」状態から「保持解除」への切り替え時には、上記励磁コイル12が励磁されその磁束F2が生成されるが、この磁束F2のうち上記凸極28と凸極29の間を流れる第2の磁束F22と、上記補助永久磁石35の第2の磁束F32とはその磁束方向が同方向とされているので、該励磁コイル12の磁束F2によって上記補助永久磁石35の第2の磁束F32が影響を受けるということがなく、「位相保持」状態から「保持解除」への切り替え時にも継続的にプーリー2の回転数が検出されるものである。
【0059】
C:第3の実施形態
図7及び図8には、第3の実施形態にかかる継手機構Z3の要部が示されている。
【0060】
継手機構Z3の構造
この実施形態の継手機構Z3は、カム軸41の先端部に取り付けられたボス部材43に、永久磁石45とその外周面に複数の凸極(図示省略)を設けた左右一対のヨーク44,44を取り付けてこれらボス部材43とヨーク44と永久磁石45でインナーロータ39を構成している。また、上記インナーロータ39の外周側に、その内周面に複数の凸極を形成した筒状のヨーク46を配置するとともに、該ヨーク46には中間部材47を介してフランジ部材48及び中空軸部材38を取り付け、これらヨーク46と中間部材47とフランジ部材48とでアウタロータ40を構成している。さらに、上記中空軸部材38には、上記第1及び第2の実施形態の場合と同様に、図示しないプーリーがアドバンシングプレートを介して連結されるとともに、上記中空軸部材38と上記プーリーの間にはリターンスプリング(図示省略)が配置されている。
【0061】
さらに、上記ヨーク46の径方向外側には、ヨーク51を備えた励磁コイル50を配置している。そして、このように径方向に重合状態で配置された上記励磁コイル50と上記インナーロータ39との側方には、ブレーキコイル56と該ブレーキコイル56の磁力を受けて上記フランジ部材48に対して摺接せしめられるシュー部材57を備えたブレーキ55が配置されている。
【0062】
一方、図8及び図9に示すように、上記ヨーク46の一端には周方向に延びる凸極58,58,・・が形成されるとともに、上記励磁コイル50のヨーク51の一端側の内周面上にも上記ヨーク46側の凸極58,58,・・と対応するようにして周方向に延びる凸極59,59,・・が形成されている。
【0063】
このように、上記インナーロータ39とヨーク46と励磁コイル50を径方向に重合させて配置し、それらの側方に上記ブレーキ55を配置することで、例えば上記第1の実施形態における継手機構Z1のように上記励磁コイル12の径方向外側にさらにブレーキ15を重合状態で配置する場合に比して、該継手配置Z3の軸方向長さを短くできることになる。
【0064】
継手機構Z3の作動等
この継手機構Z 3 における「位相保持」、「保持解除」及び「位相変更」については上記第1の実施形態にかかる継手機構Z1の場合と同様であるのでその説明は省略し、本願発明の要旨である回転数の検出についてのみ説明する。
【0065】
図8に示すように、「位相保持」状態においては、上記永久磁石45の磁束が上記ヨーク44からヨーク46を経て上記凸極58部分から上記ヨーク51の凸極59側に流入する。従って、上記ヨーク46が上記励磁コイル50に対して相対回転することで該励磁コイル50に誘導電圧が発生し、その周波数を計数することで上記小断面部46aの回転数、即ち、上記プーリーの回転数が検出される。
【0066】
一方、「保持解除」状態では、図8には磁束線を示していないが、上記励磁コイル50の励磁によってその磁束が上記ヨーク46の小断面部46aにおいて上記永久磁石45側の磁束方向と同方向に向けて流れる。従って、上記小断面部46a部分における磁束飽和により上記永久磁石45側の磁束が上記ヨーク46側から永久磁石45側に迫り出され、これにより「保持解除」が行われる。この場合、上記凸極58と凸極59の間には上記励磁コイル50の磁束が流入することで上記ヨーク46の回転数、即ち、上記プーリーの回転数が検出されるものである。
【0067】
このように、誘導電圧の変化によってプーリーの回転数を検出する場合における利点等は全て上記第1及び第2の実施形態における場合と同様であるが、それに加えて、特にこの実施形態の如く回転数検出に拘わる上記各凸極58と凸極59をそれぞれヨーク46とヨーク51の周方向に形成した場合には、例え上記アウタロータ40側にスラスト力がかかってこれが軸方向へ変位したとしても、これらの間のエアギャップの大きさ、即ち、このエアギャップの量に対応した磁気抵抗の大きさが変化しないので、上記ヨーク46の回転に伴う誘導電圧をより安定的に得ることができ、延いては回転数検出の高精度化が図れるという利点が得られるものである。
【0068】
D:第4の実施形態
図10及び図11には、第4の実施形態にかかる継手機構Z4を示している。
【0069】
継手機構Z4の構造
この継手機構Z4は、カム軸41の先端部にインナーロータ39となるヨーク46を取り付けている。また、上記ヨーク46の径方向外側にボス部材43相対回転可能に配置するとともに、該ボス部材43には永久磁石45と左右一対のヨーク44,44を取り付け、これらボス部材43とヨーク44,44と永久磁石45とでアウタロータ40を構成している。また、上記ボス部材43は、中空軸部材38を介して図示しないプーリー側に連結されている。
【0070】
さらに、上記ヨーク46の径方向内側には、ケーシング42側に固定されたヨーク51に収容された状態で励磁コイル50が配置されている。また、このように径方向に重合状態で配置された上記励磁コイル50と上記アウタロータ40の軸方向側方位置には、ブレーキコイル56とシュー部材57とを備えたブレーキ55が配置され、該シュー部材57は上記ブレーキコイル56の磁力を受けて上記中空軸部材38側に固定されたフランジ部材48に摺接することでプーリー側に所定の制動力をかけるようになっている。
【0071】
一方、エアギャップ36を介して近接対向する上記ヨーク51の側面と上記ヨーク46の側面には、それぞれ径方向に延びる凸条で構成される凸極59と凸極58がそれぞれ周方向に所定間隔で形成されている。
【0072】
継手機構Z4の作動等
この継手機構Z4の基本的な作動は上記各実施形態の継手機構Z1〜Z3と同様であるのでその説明は省略し、ここでは本願発明の要旨である回転数検出を中心に説明する。
【0073】
「位相保持」状態では、図11に実磁束線で示すように上記永久磁石45の磁束の一部が上記ヨーク46側の凸極58から上記励磁コイル50のヨーク51側の凸極59側に流入しており、上記ヨーク46の回転(即ち、上記カム軸1)の回転に伴って上記両凸極58,59間の磁気抵抗が周期的に変化することで正弦波状の誘導電圧が発生し、この誘導電圧の周波数を計数することで上記カム軸41の回転数が検出されるものである。
【0074】
「保持解除」状態では、上記励磁コイル50の磁束の一部が上記凸極58と凸極59の間を流れ、この両凸極58,59間の磁束によって上記カム軸1の回転数が検出される。
【0075】
このように、この実施形態の継手機構Z4は、上記各実施形態の継手機構とは異なって、上記カム軸1の回転数を検出できる構成となっている。従って、この実施形態の継手機構Z4の如くカム軸1の回転数を検出できるものと、上記各実施形態の継手機構Z1〜Z3の如くプーリーの回転数を検出できるものとを適宜組み合わせることで、エンジンのバルブタイミングを専用の回転センサ等を設けずに容易に検出できることになる。以下、これら継手機構Z1〜Z4を用いたバルブタイミング検出装置について説明する。
【0076】
E:バルブタイミング検出装置
図12には、DOHCエンジンにおいてその排気側カム軸61と吸気側カム軸62の一端にそれぞれプーリー71,72と継手機構64,65を取り付け、上記各カム軸61,62を、これらの各プーリー71,72とクランク軸63側のプーリー73との間に掛け回したタイミングベルト74を介して該クランク軸63により回転駆動するようにした駆動系を示している。また、上記カム軸62には、気筒判別センサ66が取り付けられている。そして、この例では、上記各カム軸61,62に設けられる上記各継手機構64,65のうち、一方の継手機構64は上記第1〜第3の実施形態において説明した継手機構Z1〜Z3のようにプーリー71の回転数を検出し得る構造のものを使用し、他方の継手機構65は上記第4の実施形態において説明した継手機構Z4のように排気側カム軸62の回転数を検出し得る構造のものを使用する。
【0077】
かかる構成とすれば、図13に示す如く気筒判別センサ66と継手機構64,65からそれぞれ回転信号が出力される。ここで、排気側カム軸61のプーリー71の回転数を検出する継手機構64の回転信号を基準とし、この回転信号を、吸気側カム軸62の回転数を検出する継手機構65の回転信号と気筒判別センサ66の回転信号とを比較すると、気筒判別センサ66の回転信号における偏位量△t1が排気側カム軸61のバルブタイミングを、継手機構65の回転信号における偏位量△t2が吸気側カム軸62のバルブタイミングを、それぞれ表すことになる。
【0078】
従って、エンジン制御上の必要から本来的に設けられている上記気筒判別センサ66と、バルブタイミング可変用に設けられる上記各継手機構64,65とを利用することで、従来のように専用のカム軸回転数センサを設けなくても、各カム軸61,62のバルブタイミングを容易に検出することができるものである。
【0079】
尚、この他の例としては、例えば図12に鎖線図示するようにクランク軸63側に気筒判別センサ66を設けたものにあっては、上記排気側カム軸61と吸気側カム軸62のそれぞれに設けられる各継手機構64,65を共にカム軸の回転数を検出し得る構造とし、上記気筒判別センサ66の回転信号を基準としてこれと上記各継手機構64,65の回転信号とを比較することで排気側カム軸61と吸気側カム軸62のバルブタイミングをそれぞれ検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本願発明の第1の実施形態にかかる回転数検出装置を備えた継手機構の縦断面図である。
【図2】 図1に示した継手機構における永久磁石等の分解斜視図である。
【図3】 図1のIII-III拡大矢視図である。
【図4】 図3のIV-IV矢視図である。
【図5】 図1のV部の拡大図である。
【図6】 本願発明の第2の実施形態にかかる回転数検出装置を備えた継手機構の構造説明図である。
【図7】 本願発明の第3の実施形態にかかる回転数検出装置を備えた継手機構の縦断面図である。
【図8】 図7のVIII部の拡大図である。
【図9】 図8に示した継手機構における回転検出部の要部斜視図である。
【図10】 本願発明の第4の実施形態にかかる回転数検出装置を備えた継手機構の縦断面図である。
【図11】 図10のX部の拡大図である。
【図12】 継手機構のエンジン側への配置形態を示す斜視図である。
【図13】 回転位相量の検出方法の説明図である。
【符号の説明】
1はカム軸、2はプーリー、3は中間軸、4はボス部材、5は中空軸部材、6は永久磁石、87はヨーク、8はヨーク、9はインナーロータ、10はアウタロータ、11はケーシング、12は励磁コイル、13及びヨーク14はヨーク13、15はブレーキ、16はブレーキコイル、17はシュー部材、19はアドバンシングプレート、20は爪部材、21はリターンスプリング、23は締結ボルト、25はエアギャップ、26は凹溝、27は小断面部、28及び29は凸極、30はエアギャップ、31〜33は軸受、35は補助永久磁石、38は中空軸部材、39はインナーロータ、40はアウタロータ、41はカム軸、42はケーシング、43はボス部材、44はヨーク、45は永久磁石、46はヨーク、47は中間部材、48はフランジ部材、49はエアギャップ、50は励磁コイル、51はヨーク、52〜54は軸受、55はブレーキ、56はブレーキコイル、57はシュー部材、58及び59は凸極、61及び62はカム軸、63はクランク軸、64及び65はバルブタイミング可変装置、66は気筒判別センサ、67は検出子である。
Claims (8)
- 第1の回転部材と第2の回転部材とを同軸上に配置し、
上記第1の回転部材と第2の回転部材とが近接して対峙する部位において該第1の回転部材側に、上記第2の回転部材側へ磁束を流入させて該第2の回転部材を吸引し上記第1の回転部材と第2の回転部材との一体回転を可能とする永久磁石を設ける一方、
上記第2の回転部材の配置側には該第2の回転部材側に磁束を流入させて上記永久磁石による吸引力を調整して上記第1の回転部材と第2の回転部材との相対回転を可能とする直流の励磁コイルを固定配置し、
さらに上記第2の回転部材における上記永久磁石及び励磁コイルの磁束経路中に上記第2の回転部材側と上記励磁コイル側との間のエアギャップが該第2の回転部材の回転に伴って周期的に変化するような回転面を設け、上記励磁コイルに発生する正弦波状の誘導電圧の周波数を計数することを特徴とする回転数検出装置。 - 請求項1において、
上記第2の回転部材における上記回転面が、上記永久磁石の磁束経路上において該永久磁石に近接する位置に設けられていることを特徴とする回転数検出装置。 - 請求項1において、
上記第2の回転部材における上記回転面が該第2の回転部材の円周方向に向けて形成されるとともに、
上記回転面に対して上記第2の回転部材の径方向の内側に上記永久磁石が、径方向の外側に上記励磁コイルが配置されていることを特徴とする回転数検出装置。 - 請求項1において、
上記第2の回転部材における上記回転面が該第2の回転部材の径方向に向けて形成されるとともに、上記回転面に対して上記第2の回転部材の軸方向の一方側に上記永久磁石と励磁コイルとが設けられていることを特徴とする回転数検出装置。 - 請求項1において、
上記励磁コイルは、その磁束方向が、上記第1の回転部材と第2の回転部材とが近接して対峙する部位において上記永久磁石の磁束のうち上記第2の回転部材のみを通って該永久磁石側に帰還する磁束の方向と同方向となるように設定されていることを特徴とする回転数検出装置。 - 請求項5において、
上記励磁コイルのヨーク部分に補助永久磁石を設け、
該補助永久磁石の磁束方向を上記励磁コイルの磁束方向と同方向に設定するとともに、
上記補助永久磁石の磁力を、上記永久磁石の磁束のうち上記励磁コイルのヨーク側に流入する磁束の磁力よりも所定値だけ大きく設定したことを特徴とする回転数検出装置。 - 第1の回転部材と第2の回転部材とを同軸上に配置し、上記第1の回転部材と第2の回転部材とが近接して対峙する部位において該第1の回転部材側に、上記第2の回転部材側へ磁束を流入させて該第2の回転部材を吸引し上記第1の回転部材と第2の回転部材との一体回転を可能とする永久磁石を設ける一方、上記第2の回転部材の配置側には該第2の回転部材に磁束を生成させて上記永久磁石による吸引力を調整して上記第1の回転部材と第2の回転部材との相対回転を可能とする直流の励磁コイルを固定配置し、さらに上記第2の回転部材における上記永久磁石及び励磁コイルの磁束経路中に該励磁コイル側とのエアギャップが回転に伴って周期的に変化するような回転面を設け、上記励磁コイルに発生する正弦波状の誘導電圧の周波数を計数することで上記第2の回転部材の回転数を検出するように構成された回転数検出装置を、エンジンの吸気側カムシャフトと排気側カムシャフトのそれぞれに組付けてバルブタイミングを検出するようにしたバルブタイミング検出装置であって、
上記吸気側カムシャフトと排気側カムシャフトのいずれか一方に気筒判別手段が備えられるとともに、
上記気筒判別手段が備えられたカムシャフトに対応する上記回転数検出装置は該カムシャフトが上記第1の回転部材に連結され、
上記気筒判別上記が備えられていないカムシャフトに対応する上記回転数検出装置は該カムシャフトが上記第2の回転部材に連結されていることを特徴とするバルブタイミング検出装置。 - 第1の回転部材と第2の回転部材とを同軸上に配置し、上記第1の回転部材と第2の回転部材とが近接して対峙する部位において該第1の回転部材側に、上記第2の回転部材側へ磁束を流入させて該第2の回転部材を吸引し上記第1の回転部材と第2の回転部材との一体回転を可能とする永久磁石を設ける一方、上記第2の回転部材の配置側には該第2の回転部材に磁束を生成させて上記永久磁石による吸引力を調整して上記第1の回転部材と第2の回転部材との相対回転を可能とする直流の励磁コイルを固定配置し、さらに上記第2の回転部材における上記永久磁石及び励磁コイルの磁束経路中に該励磁コイル側とのエアギャップが回転に伴って周期的に変化するような回転面を設け、上記励磁コイルに発生する正弦波状の誘導電圧の周波数を計数することで上記第2の回転部材の回転数を検出するように構成された回転数検出装置を、エンジンのカムシャフトに組付けてバルブタイミングを検出するようにしたバルブタイミング検出装置であって、
エンジンのクランクシャフトに気筒判別手段が備えられるとともに、
上記カムシャフトが上記回転数検出装置の第2の回転部材に連結されていることを特徴とするバルブタイミング検出装置。
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