JP3965244B2 - 摺動部材用樹脂組成物及びこれを使用した摺動部材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、摩擦摩耗特性に優れた摺動部材用樹脂組成物及びこれを使用した摺動部材に関するものである。
【0002】
【従来技術】
従来、四ふっ化エチレン樹脂(以下「PTFE」と略称する)は、自己潤滑性を有し、摩擦係数が低く、さらには耐薬品性及び耐熱性を具有することから、軸受などの摺動部材に広く使用されている。
【0003】
しかしながら、PTFE単独からなる摺動部材は、耐摩耗性及び耐荷重性に劣るため、摺動部材の使用用途に応じ、(a)黒鉛、二硫化モリブデン等の固体潤滑剤およびまたはガラス繊維、炭素繊維等の補強材をPTFEに含有したり、(b)鋼裏金に裏打ちされた多孔質金属焼結層の孔隙および表面にPTFEを充填被覆したり、(c)金属網状体の網目および表面にPTFEを充填被覆したり、して上記欠点を補っている。
【0004】
上記(b)の態様からなる摺動部材は、所謂複層摺動部材と称されるものであり、例えば米国特許第2689380号明細書(1954年)、特公昭31−2452号公報、特公昭39−16950号公報、特公昭41−1868号公報などに開示されている。これら公報には、鋼裏金に裏打ちされた多孔質金属焼結層の孔隙および表面にPTFEまたは鉛もしくは鉛酸化物からなる充填材を含有したPTFEを充填被覆した複層摺動部材が開示されている。
【0005】
また、上記(c)の態様からなる摺動部材は、例えば特公昭55−23740号公報などに開示されている。この公報には金属織物、フルオロプラスチックならびに無機繊維の強化材を含む材料からなり、自己潤滑性を有するライニングフォイルが開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述した各種の摺動部材は、多くの異なった使用条件、例えば乾燥摩擦条件または油中ないし油潤滑条件など、また上記使用条件に加えて相手軸材の材質、例えば情報機器などにおける軽量化を目的としてアルミニウムあるいはアルミニウム合金を相手軸として使用する、など各使用条件、相手軸材に則した充填材が選択されており、すべての使用条件を満足する摺動部材とは言い難いものである。
【0007】
また、摺動部材用PTFE組成物においては、多くのエンジニアリングプラスチック用充填材として使用されている、例えば黒鉛や二硫化モリブデンもしくは他の金属硫化物、金属酸化物、またはガラス繊維や炭素繊維などの無機繊維を使用する試みが行われているが、これらの充填材は樹脂層の耐摩耗性の向上に寄与することはあるが、往々にしてPTFE固有の低摩擦性を阻害するという問題を惹起する。
【0008】
本発明は上記実情に鑑みなされたもので、その目的とするところは、相手軸の材質に左右されることなく摩擦摩耗特性に優れた摺動部材用樹脂組成物およびこれを使用した摺動部材を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成するべく鋭意検討を重ねた結果、鋼裏金上に形成された多孔質金属焼結層の孔隙および表面を覆って樹脂組成物を充填被覆してなるか、または金属網状体の網目および表面を覆って樹脂組成物を充填被覆してなる摺動部材において、樹脂組成物として、PTFEにポリカルボジイミド樹脂を特定量配合したものを使用した摺動部材は、乾燥摩擦条件下において、また相手軸材の材質に左右されることなく優れた摩擦摩耗特性を発揮し得るとの知見を得た。本発明は斯かる知見に基づき完成されたものであり、その要旨はつぎのとおりである。
【0011】
本発明の要旨は、鋼裏金上に形成された多孔質金属焼結層の孔隙および表面を覆って充填被覆してなる樹脂組成物層、または金属網状体の網目および表面を覆って充填被覆してなる樹脂組成物層からなり、樹脂組成物層が、ポリカルボジイミド樹脂5〜40重量%、硫酸バリウム3〜15重量%、残部四ふっ化エチレン樹脂からなる摺動部材に存する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。まず、本発明の摺動部材用樹脂組成物について説明する。本発明において、樹脂組成物の主成分をなすPTFEとしては、主として、ファインパウダー、例えば三井デュポンフロロケミカル社製の「テフロン6CJ(商品名)」、ダイキン工業社製の「ポリフロンF201(商品名)」、旭硝子社製の「フルオンCD−076(商品名)」「フルオンCD−4(商品名)」が使用される。
【0013】
また、上記のファインパウダーにモールディングパウダー、例えば三井デュポンフロロケミカル社製の「テフロン7AJ(商品名)」を樹脂組成物に対して20重量%以下の範囲で配合したものも使用できる。樹脂組成物中のPTFEの配合量は、樹脂組成物量から充填材の配合量を差引いた残りの量である。
【0014】
ポリカルボジイミド樹脂としては、イソシアネートの脱炭酸反応により得られる粉末状のポリカルボジイミド樹脂が好ましく、例えば日清紡績社製の「カルボジライト(商品名)」が使用される。このカルボジライトは主鎖中にカルボジイミド基を有しており、加熱すると溶融し、内部架橋反応を起こして耐熱樹脂となるものである。このポリカルボジイミド樹脂は上記主成分をなすPTFEに配合されて、とくに耐摩耗性および耐熱性を向上させる。そしてその配合量は5〜40重量%、好ましくは10〜30重量%である。
【0015】
上述したポリカルボジイミド樹脂5〜40重量%、残部PTFEからなる樹脂組成物に、さらに所定量の固体潤滑剤およびまたは硫酸バリウムを配合した樹脂組成物とすることができる。
【0016】
固体潤滑剤としては、黒鉛、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化ホウ素が使用される。これら固体潤滑剤は上記成分組成からなる樹脂組成物の耐摩耗性を向上させる。そして、その配合量は5重量%以下、好ましくは1〜3重量%である。
【0017】
硫酸バリウムとしては、沈降性または簸性硫酸バリウムの何れでもよい。斯かる硫酸バリウムは、例えば堺化学工業社から市販されており、容易に入手することができる。硫酸バリウムは上記固体潤滑剤と同様、樹脂組成物の耐摩耗性を向上させるもので、その配合量は5〜15重量%、好ましくは5〜10重量%である。硫酸バリウムは上記固体潤滑剤のような潤滑性を示さないので、15重量%を超えて配合すると、却ってPTFE固有の低摩擦性を損なう結果となる。
【0018】
つぎに、本発明の摺動部材およびその製造方法について説明する。まず、鋼薄板からなる裏金とこれに裏打ちされた多孔質金属焼結層とからなる基材を使用した摺動部材(I)およびその製造方法について説明する。
【0019】
基材をなす裏金としては、一般構造用圧延鋼板が使用される。鋼板は、コイル状に巻いてフープ材として提供される連続条片を使用することが好ましいが、必ずしも連続条片に限られず、適当な長さに切断した条片を使用することもできる。これらの条片は、必要に応じて銅メッキあるいは錫メッキ等を施して耐蝕性を向上させたものであってもよい。
【0020】
多孔質金属焼結層を形成する金属粉末は、その金属自体、摩擦摩耗特性に優れた青銅、鉛青銅あるいはリン青銅などの、概ね100メッシュを通過する銅合金粉末が用いられるが、目的に応じては銅合金以外の、、例えばアルミニウム合金、鉄などの粉末も使用し得る。この金属粉末の粒子形態は、塊状、球状または不規則形状のものを使用し得る。この多孔質金属焼結層は、合金粉末同志および前記鋼板等の条片と強固に結合されていて、一定の厚さと必要とする多孔度を備えていなければならない。この多孔質金属焼結層の厚さは、概ね0.15〜0.40mm、就中0.2〜0.3mmであることが好ましく、多孔度は概ね10容積%以上、就中15〜40容積%であることが推奨される。
【0021】
樹脂組成物は、PTFEと前述した各充填材とを混合した後、得られた混合物に石油系溶剤を加えて攪拌混合する方法により、湿潤性が付与された樹脂組成物が得られる。PTFEと充填材との混合は、PTFEの室温転移点(19℃)以下、好ましくは10〜18℃の温度で行われ、また得られた混合物と石油系溶剤との攪拌混合も上記と同様の温度で行われる。斯かる温度条件の採用により、PTFEの繊維状化が妨げられ、均一な混合物を得ることができる。
【0022】
石油系溶剤としては、ナフサ、トルエン、キシレンのほか、脂肪族系溶剤またはナフテン系溶剤との混合溶剤が使用される。石油系溶剤の使用割合は、PTFE粉末ト充填材との混合物100重量部に対し15〜30重量部とされる。石油系溶剤の使用割合が15重量部未満の場合は、後述する多孔質金属焼結層への充填被覆工程において、湿潤性が付与された樹脂組成物の展延性が悪く、その結果、焼結層への充填被覆にムラを生じ易くなる。一方、石油系溶剤の使用割合が30重量部を超える場合は、充填被覆作業が困難となるばかりでなく、樹脂組成物の被覆厚さの均一性が損なわれたり、樹脂組成物と焼結層との密着強度が悪くなる。
【0023】
本発明の摺動部材(I)は、以下の(a)〜(d)の工程を経て製造される。
(a)鋼薄板からなる裏金上に形成された多孔質金属焼結層上に湿潤性が付与された樹脂組成物を散布供給し、ローラで圧延して焼結層に樹脂組成物を充填させるとともに焼結層の表面に一様な厚さの樹脂組成物からなる被覆層を形成する。この工程において、被覆層の厚さは、樹脂組成物が最終製品に必要とされる被覆厚さの2〜2.2倍の厚さとされる。多孔質金属焼結層の孔隙中への樹脂組成物の充填は、当該工程でその大部分が進行する。
【0024】
(b)上記(a)工程で処理された裏金を200〜250℃の温度に加熱された乾燥炉内に数分間保持することにより、石油系溶剤を除去し、その後、乾燥した樹脂組成物をローラによって所定の厚さになるように300〜600kgf/cm2 の加圧下で加圧ローラ処理する。
【0025】
(c)上記(b)工程で処理された裏金を加熱炉に導入して360〜380℃の温度で数分ないし10数分間加熱して焼成を行なった後、炉から取り出し、再度ローラ処理によって寸法のバラツキを調整する。
【0026】
(d)上記(c)工程で寸法調整された裏金を冷却し(空冷ないし自然冷却)、その後、必要に応じて裏金のうねりなどを矯正するため、矯正ローラ処理を行い、所望の摺動部材とする。
【0027】
上記(a)〜(d)の工程を経て得られた摺動部材において、多孔質金属焼結層の厚さは0.10〜0.40mm、樹脂組成物から形成された被覆層の厚さは0.02〜0.15mmとされる。このようにして得られた摺動部材は、適宜の寸法に切断されて平板状態ですべり板として使用され、また丸曲げされて円筒状の巻きブッシュとして使用される。
【0028】
つぎに、金属網状体からなる基材を使用した本発明の摺動部材(II)およびその製造方法について説明する。基材をなす金属網状体としては、(i)直線状の刃を有する固定下型と、波形状、台形状、三角形状等の刃を有する可動上型との間に金属薄板を固定下型の刃に対し直角方向に、または固定下型の刃に対し斜方向に送入し、可動上型を上下方向に往復させて金属薄板に切り込みを入れると同時に切り込みを拡開して規則正しい網目列を形成したエキスパンドメタル、(ii)縦糸および横糸として金属細線を織ることにより形成される織組ワイヤメッシュ、(iii)金属細線を編むことによって形成される編組ワイヤメッシュ等が使用される。
【0029】
エキスパンドメタルとしては、厚さ0.3〜2mmの金属薄板にエキスパンド加工を施し、各辺(ストランド)の長さが0.1〜1.5mm、圧だが0.1〜1.0mmに形成されたものが好適である。織組ワイヤメッシュまたは編組ワイヤメッシュとしては、線径が0.1〜0.5mmの金属細線を10〜200メッシュの網目に織ったり、編んだりして形成されたものが好適である。
【0030】
エキスパンドメタル、織組または編組ワイヤメッシュを形成する金属材料としては、ステンレス鋼、銅、リン青銅、青銅、鉄などの薄板または細線が好適である。
【0031】
本発明の摺動部材(II)は、以下の(a)〜(c)の工程を経て製造され、樹脂組成物としては、前述の摺動部材(I)の製造方法において記載したものと同様の樹脂組成物が使用される。
【0032】
(a)エキスパンドメタル、織組または編組ワイヤメッシュからなる金属網状体上に樹脂組成物を散布供給し、ローラで圧延して金属網状体の網目を樹脂組成物で充填するとともに金属網状体の表面に一様な厚さの樹脂組成物からなる被服層を形成する。この工程において、被覆層の厚さは、樹脂組成物が最終製品に必要とされる被覆厚さの2〜2.5倍とされる。
【0033】
(b)上記(a)工程で処理された金属網状体を200〜250℃の温度に加熱された乾燥炉内に数分間保持することにより、石油系溶剤を除去し、その後、乾燥した樹脂組成物をローラによって所定の厚さになるように300〜600kg/cm2 の加圧下で加圧ローラ処理する。
【0034】
(c)上記(b)工程で処理された金属網状体を加熱炉に導入して360〜380℃の温度で数分間ないし10数分間加熱して樹脂組成物の焼成を行った後、炉から取り出し、再度、ローラ処理によって寸法のバラツキを調整し、所望の摺動部材とする。
【0035】
上記(a)〜(c)の工程を経て得られた摺動部材において、金属網状体の表面に形成された樹脂組成物からなる被覆層の厚さは、通常、0.05〜1.0mmとされる。このようにして得られた摺動部材は、適宜の寸法に切断されて平板状態ですべり板として使用され、また丸曲げされて円筒状の巻きブッシュとして使用される。
【0036】
【実施例】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例において、摺動部材(I)の摺動特性は、つぎの(1)および(2)の試験方法により、また摺動部材(II)の摺動特性は、つぎの(3)の試験方法により評価した。
【0037】
スラスト試験(1):表1に記載の条件下で摩擦係数および摩耗量を測定した。そして、摩擦係数については、試験を開始してから8時間後の値を示し、また摩耗量については、試験時間8時間後の摺動面の寸法変化量で示した。
【0038】
【表1】
【0039】
スラスト試験(2):表2に記載の条件下で摩擦係数および摩耗量を測定した。そして、摩擦係数については、試験を開始してから8時間後の値を示し、また摩耗量については、試験時間8時間後の摺動面の寸法変化量で示した。
【0040】
【表2】
【0041】
スラスト試験(3):表3に記載の条件下で摩擦係数および摩耗量を測定した。そして、摩擦係数については、試験を開始してから8時間後の値を示し、また摩耗量については、試験時間8時間後の摺動面の寸法変化量で示した。
【0042】
【表3】
【0043】
実施例1〜10および比較例1〜4
以下の諸例において、PTFEとして、「テフロン6CJ」(三井デュポンフロロケミカル社製)、石油系溶剤として、脂肪族溶剤とナフテン系溶剤との混合溶剤(エクソン化学社製の商品名「エクソール」)を使用した。
【0044】
まず、PTFEと表5〜表8に示される充填材とをヘンシェルミキサー内に供給して攪拌混合し、得られた混合物100重量部に対して石油系溶剤20重量部を配合し、PTFEに室温転移点以下の温度(15℃)で混合し、樹脂組成物を得た。
【0045】
得られた樹脂組成物を金属薄板からなる鋼裏金(厚さ0.70mm)上に形成された多孔質金属(青銅)焼結層(厚さ0.25mm)上に散布供給し、樹脂組成物の厚さが0.25mmとなるようにローラで圧延して焼結層の孔隙および表面に樹脂組成物を充填被覆した複層板を得た。得られた複層板を200℃の温度に加熱した熱風乾燥炉中に5分間保持して溶剤を除去した後、乾燥した樹脂組成物層をローラによって加圧力400kgf/cm2 にて圧延し、焼結層上に被覆された樹脂組成物層の厚さを0.10mmとした。
【0046】
つぎに、加圧処理した複層板を加熱炉で370℃、10分間加熱焼成した後、再度、ローラで加圧処理し、寸法調整およびうねり等の矯正を行って複層摺動部材を作製した。矯正の終了した複層摺動部材を切断し、一辺が30mmの複層摺動部材試験片を得た。図1は、このようにして得られた複層摺動部材を示す断面図であり、図中、符号1は鋼裏金、2は鋼裏金上に裏打ちされた多孔質金属焼結層、3は多孔質金属焼結層2の孔隙および表面に充填被覆された樹脂組成物からなる被覆層である。
【0047】
各複層摺動部材のスラスト試験(1)および(2)の結果を表5〜表7に示す。なお、表中の配合割合は重量%で示し、固体潤滑剤については使用した種類を○で示した。
(以下余白)
【0048】
【表5】
【0049】
【表6】
【0050】
【表7】
上表中、*は摩擦係数が急激に上昇したため、試験を途中で中止し、中止した時点の摩耗量を示す。また、**は表面の樹脂層が摩耗し、下地の金属焼結層が露出していることを示す。
【0051】
上述の試験結果から、本発明の実施例の複層摺動部材は、相手軸材に左右されることなく、比較例との比較においても摩擦係数は低く、摩耗量においては極めて少ないものであった。
【0052】
実施例11〜20および比較例5〜8
以下の諸例において、PTFEとして、「テフロン6CJ」(三井デュポンフロロケミカル社製)、石油系溶剤として、脂肪族溶剤とナフテン系溶剤との混合溶剤(エクソン化学社製の商品名「エクソール」)を使用した。
【0053】
まず、PTFEと表8に示される充填材とをヘンシェルミキサー内に供給して攪拌混合し、得られた混合物100重量部に対して石油系溶剤20重量部を配合し、PTFEに室温転移点以下の温度(15℃)で混合し、樹脂組成物を得た。
【0054】
板厚0.30mmのリン青銅合金板にエキスパンド加工を施し、各片(ストランド)が0.60mmの方形状の規則正しい網目を備えた厚さ0.43mmのエキスパンドメタルを作製し、これを基材Aとした。また、横糸および縦糸に線径0.3mmのリン青銅合金細線を使用して50メッシュの網目を有する織組ワイヤメッシュを作製し、これを基材Bとした。
【0055】
上記樹脂組成物をエキスパンドメタルからなる基材Aおよび織組ワイヤメッシュからなる基材B上にそれぞれ供給し、ローラで圧延して基材の網目を樹脂組成物で充填するとともに基材の表面に樹脂組成物の被覆層を形成した後、220℃の温度に加熱した熱風乾燥炉内に5分間保持し、樹脂組成物中の溶剤を除去した。ついで、網目および表面が樹脂組成物で充填被覆された基材を加熱炉で360℃、10分間加熱焼成した後、ローラで加圧処理し、寸法調整およびうねり等の矯正を行い、表面に0.13mmの厚さの被覆層が形成された基材を作製した。矯正の終了した基材を切断し、一辺が30mmの摺動板試験片を得た。
【0056】
図2はエキスパンドメタルを示す平面図、図3は図2に示すエキスパンドメタルを基材とした摺動部材を示す断面図であり、図中、符号4はエキスパンドメタル、5は辺(ストランド)、6は網目、7はエキスパンドメタルの網目および表面に充填被覆された樹脂組成物からなる被覆層である。また、図4は織組ワイヤメッシュを基材とした摺動部材を示す断面図で有り、図中、符号8は織組ワイヤメッシュ、9はワイヤメッシュの網目および表面に充填被覆された樹脂組成物からなる被覆層である。
【0057】
各摺動部材のスラスト試験(3)の結果を表8〜表10に示す。なお、表中の配合割合は重量%で示し、固体潤滑剤については使用した種類を○で示した。
(以下余白)
【0058】
【表8】
【0059】
【表9】
【0060】
【表10】
【0061】
上述の試験結果から、本発明の実施例の摺動部材は、比較例との比較においても試験時間を通して安定した摩擦係数を示し、摩耗量においては極めて少ないものであった。
【0062】
【発明の効果】
以上説明した本発明によれば、相手軸材の材質に左右されることなく、優れた摺動特性を発揮する摺動部材が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の摺動部材の一例を示す断面図である。
【図2】基材としてのエキスパンドメタルを示す平面図である。
【図3】基材としてエキスパンドメタルを使用した本発明の摺動部材の一例を示す断面図である。
【図4】基材として織組ワイヤメッシュを使用した本発明の摺動部材の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 鋼裏金
2 多孔質金属焼結層
3 樹脂被覆層
4 エキスパンドメタル
5 辺
6 網目
7 樹脂被覆層
8 織組ワイヤメッシュ
9 樹脂被覆層
Claims (2)
- 鋼裏金上に形成された多孔質金属焼結層の孔隙および表面を覆って充填被覆してなる樹脂組成物層、または金属網状体の網目および表面を覆って充填被覆してなる樹脂組成物層からなり、樹脂組成物層が、ポリカルボジイミド樹脂5〜40重量%、硫酸バリウム3〜15重量%、残部四ふっ化エチレン樹脂からなることを特徴とする摺動部材。
- 樹脂組成物層は、黒鉛、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化ホウ素から選択される固体潤滑剤を5重量%以下の割合で含有する請求項1に記載の摺動部材。
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1998
- 1998-04-20 JP JP12526398A patent/JP3965244B2/ja not_active Expired - Lifetime
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