JP3958056B2 - ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル系共重合体およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル系共重合体およびその製造方法に関するものである。さらに詳しくは、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類[単量体(A)]、(メタ)アクリル酸系単量体[単量体(B)]、およびQ値が0.6〜1.4の範囲内、かつe値が−0.4〜−1.2の範囲内にある単量体[単量体(C)]を重合させてなる共重合体およびその製造方法に関するものである。
【0002】
本発明により得られるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、医農薬原料、合成中間体、架橋剤、粉体塗料用樹脂、さらに重合性材料として広範囲に用いられる有用な化合物である。
【0003】
【従来の技術】
ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル系共重合体としては、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類と(メタ)アクリル酸エステル類との2元系共重合体が知られている。この共重合体の製造方法としては、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類と(メタ)アクリル酸エステル類の(メタ)アクリロイル基を選択的にラジカルまたはアニオン重合する方法が知られている。しかしながら、アニオン重合はわずかな水分の影響をうける等の理由により工業的に有利でない。また、ラジカル重合の場合、(メタ)アクリロイル基のみならずビニルエーテル基までも重合し、架橋したゲル状重合体が生成する可能性がある。
【0004】
このような架橋反応を抑制した重合方法として、特開平6−100628号公報に低い単量体濃度での重合方法が開示されている。また、特開平6−256426号公報にラジカル連鎖移動剤の存在下での重合方法が開示されている。
【0005】
しかしながら上記従来の方法は、用いる溶媒の量が多く効率が悪い、ラジカル連鎖移動剤が高価である、ラジカル連鎖移動剤が生成ポリマーの物性に影響を与えるといった問題点を有している。
【0006】
また、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル系共重合体として、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類とスチレン類の2元系共重合体が知られている。しかしながら、この2元系共重合体は、物性のコントロールが困難であり、種々の用途に用いることができない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記のごとき状況に鑑みてなされたものであり、ビニルエーテル基の架橋によりゲル化することなく、種々の用途へ展開可能なビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本願発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、単量体(A)と単量体(B)を共重合させる際に、単量体(C)を加えることによりゲル化することなく新規な共重合体が得られることを見出した。本発明により得られる共重合体は、単量体(B)を変化させることにより種々の用途への応用が可能となる。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明にかかるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の重合度は、数平均分子量が、下限値は、好ましくは1,000以上、より好ましくは2,000以上、特に好ましくは3,000以上であり、上限値は、好ましくは20,000,000以下、より好ましくは10,000,000以下、特に好ましくは5,000,000以下である。
【0010】
本発明にかかるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類[単量体(A)]としては、具体的には、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸6−ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸p−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−[2−(2−ビニロキシエトキシ)エトキシ]エチル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコールモノビニルエーテル等が挙げられる。
【0011】
上記単量体(A)の含有割合は、重合性単量体の総重量に対して好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、特に好ましくは1重量%以上であり、好ましくは50重量%以下、より好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは25重量%以下、特に好ましくは15重量%以下である。前記含有割合が、反応効率の面、物性の面で好ましい。
【0012】
本発明にかかる(メタ)アクリル酸系単量体[単量体(B)]としては、単量体(A)ではない(メタ)アクリル系単量体であり、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソステアリル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等の芳香族基含有(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸テトラフルオロエチル等のハロゲン含有(メタ)アクリル酸エステル類;グリシジル(メタ)アクリレート、α−メチルグリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル類;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート類;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の窒素原子含有(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸カリウム、(メタ)アクリル酸マグネシウム、(メタ)アクリル酸カルシウム等の(メタ)アクリル酸およびその塩;等が挙げられる。これら(メタ)アクリル酸系単量体は単独でも2種類以上を組み合わせてもよい。
【0013】
上記単量体(B)の含有割合は、重合性単量体の総重量に対して好ましくは10重量%以上、より好ましくは30重量%以上、特に好ましくは50重量%以上であり、好ましくは98重量%以下、より好ましくは95重量%以下、特に好ましくは90重量%以下である。前記含有割合が、反応効率の面、物性の面で好ましい。
【0014】
Q値およびe値とは、Alfrey−Priceの式に示される定数であり、Q値とは、単量体の共鳴因子を表し、e値とは、単量体の極性因子を表す。
【0015】
本発明にかかるQ値が0.6〜1.4の範囲内、かつe値が−0.4〜−1.2の範囲内である単量体[単量体(C)]としては、具体的には、スチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−メトキシスチレン、3,4−ジメトキシスチレン、α−アセトキシスチレン、p−アセトキシスチレン、p−クロロメチルスチレン、o−ビニルフェノール、m−ビニルフェノール、2−ビニルピリジン、5−ビニル−2−ピコリン、2−イソプロペニルナフタレン、2−(o−メチル)−4−ビニルカテコール、トリメチル(p−ビニルフェニルシラン)等の単量体が挙げられる。
【0016】
これらのうち、スチレン、α−アセトキシスチレン、p−アセトキシスチレン、m−ビニルフェノール、2−(o−メチル)−4−ビニルカテコールが好適であり、スチレンが特に好適である。
【0017】
上記単量体(C)の含有割合は、重合性単量体の総重量に対して好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、特に好ましくは1重量%以上であり、好ましくは50重量%以下、より好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは25重量%以下、特に好ましくは15重量%以下である。前記含有割合が、反応効率の面、物性の面で好ましい。
【0018】
本発明にかかるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の製造方法で得られるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、
下記一般式(1):
【化1】
(式中、R1は水素原子またはメチル基を表し、R2は有機残基を表し、R3は水素原子または有機残基を表す。)で表される構造単位(X)と、下記一般式(2):
【化2】
(式中、R4は水素原子またはメチル基を表し、R5は水素原子または有機残基またはアルカリ(土類)金属を表す。)で表される構造単位(Y)と、下記一般式(3):
【化3】
(式中、R6は置換されていてもよい芳香族基を表す。)で表される構造単位(Z)とを有することが好ましい。構造単位(X)は前記一般式(1)で表されるものであればよく、式中のR1は水素原子またはメチル基を表し、R2は有機残基を表し、R3は水素原子または有機残基を表す。
【0019】
前記一般式(1)中のR2で表される有機残基とは、例えば炭素数2〜20の直鎖状、分枝状または環状のアルキレン基、構造中にエーテル結合および/またはエステル結合により酸素原子を有する炭素数2〜20のアルキレン基、炭素数6〜11の置換されていてもよい芳香族基等が挙げられる。
【0020】
これらのうち、炭素数2〜6のアルキレン基、構造中にエーテル結合により酸素原子を有する炭素数2〜9のアルキレン基が好適に用いられる。
【0021】
前記一般式(1)中のR3で示される有機残基とは、例えば炭素数1〜10の直鎖状、分枝状または環状のアルキル基、炭素数1〜5のハロゲン化(例えば塩素化、臭素化またはフッ素化)アルキル基、炭素数6〜11の芳香族基等が挙げられる。これらのうち、炭素数1〜2のアルキル基が好適に用いられる。
【0022】
構造単位(X)は前記単量体(A)に由来するものである。
【0023】
構造単位(Y)は前記一般式(2)で表されるものであればよく、式中のR4は水素原子またはメチル基を表し、R5は水素原子または有機残基またはアルカリ(土類)金属を表す。
【0024】
前記一般式(2)中のR5で示される有機残基とは、例えば炭素数1〜18の直鎖状、分枝状または環状のアルキル基、炭素数2〜20のヒドロキシアルキル基、炭素数2〜20のアルコキシアルキル基、炭素数2〜20のアセトキシアルキル基、炭素数1〜8のハロゲン化(例えば塩素化、臭素化またはフッ素化)アルキル基、アルケニル基、炭素数6〜11の置換されていてもよい芳香族基等が挙げられる。
【0025】
構造単位(Y)は前記単量体(B)に由来するものである。
【0026】
構造単位(Z)は前記一般式(3)で表されるものであればよく、式中のR6は置換されていてもよい芳香族基を表す。
【0027】
構造単位(Z)は前記単量体(C)に由来するものが好ましい。
【0028】
本発明のビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を製造する方法としては、前記単量体(A)、(B)および(C)をラジカル重合開始剤、熱、電子線、紫外線、放射線等により共重合させればよい。これらのうち、ラジカル重合開始剤を用いる方法が好ましい。
【0029】
上記ラジカル重合開始剤としては、具体的には、2,2’−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2.2’−アゾビス−2−メチルプロピオン酸メチル、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2’アゾビス−2−メチルバレロニトリル、1,1’−アゾビス−1−シクロヘプタンニトリル、1,1’−アゾビス−1−フェニルエタン、フェニルアゾトリフェニルメタン等のアゾ系開始剤類;過酸化ベンゾイル、過酸化アセチル、過酸化tert−ブチル、過酸化プロピオニル、過酸化ラウロイル、過酢酸tert−ブチル、過安息香酸tert−ブチル、tert−ブチルヒドロペルオキシド、tert−ブチルペルオキシピバレート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の過酸化物系開始剤類;等が挙げられる。これらのうち、アゾ系開始剤類が特に好ましい。
【0030】
上記ラジカル重合開始剤の使用量は、重合性単量体の総重量に対して好ましくは0.001重量%以上、より好ましくは0.01重量%以上、さらに好ましくは0.05重量%以上、特に好ましくは0.1重量%以上であり、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは15重量%以下、特に好ましくは10重量%以下である。前記ラジカル重合開始剤の使用量が、収率の点、経済性の点で好ましい。
【0031】
本発明にかかるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の製造方法において、溶媒を使用する必要はないが、溶媒を使用することがゲル化を防止するうえで好ましい。使用する事ができる溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;イソプロピルアルコール、n−ブタノール等の脂肪族アルコール系溶媒;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル系溶媒;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒;等の有機溶媒や水が挙げられる。
【0032】
上記有機溶媒や水の使用量は、重合性単量体の総重量が、(溶媒+重合性単量体)の総和に対して、好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上であり、好ましくは80重量%以下、より好ましくは70重量%以下、特に好ましくは50重量%以下になるように添加すればよい。
【0033】
さらに必要に応じて、連鎖移動剤、乳化剤、その他の添加物を適宜加えてもよい。
【0034】
また、重合させる際の反応温度は、好ましくは0℃以上、より好ましくは20℃以上、特に好ましくは40℃以上であり、好ましくは150℃以下、より好ましくは120℃以下、特に好ましくは100℃以下である。
【0035】
本発明のビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル系共重合体をゲル化を防止して安定的に製造するには、単量体組成物の少なくとも一部、および/または、ラジカル重合開始剤組成物の少なくとも一部を反応系に添加することが好ましい。
【0036】
単量体組成物とは、単量体(A)、(B)、(C)のいづれかの単量体を0.1重量%以上含むものであればよく、これらの単量体を組み合わせたものでもよく、溶媒、ラジカル連鎖移動剤などを含んでいてもよい。これらのうち、単量体(A)または(C)を含むことが好ましく、単量体(A)および(C)を含むことが特に好ましい。
【0037】
また、ラジカル重合開始剤組成物とは、ラジカル重合開始剤を0.1重量%以上含むものであればよく、単量体(A)、(B)、(C)以外の重合性単量体、溶媒、ラジカル連鎖移動剤などを含んでいてもよい。
【0038】
単量体組成物、および/または、ラジカル重合開始剤組成物を反応系に添加する方法としては、(a)反応系中に全量を添加する方法、(b)一部を反応系中にあらかじめ仕込み、残りを反応系中に添加する方法があげられる。
単量体組成物とラジカル重合開始剤組成物の両方を反応系に添加する場合は、別々に添加してもよいし、あらかじめ混合して添加してもよい。
【0039】
単量体組成物の少なくとも一部、および/または、ラジカル重合開始剤組成物の少なくとも一部を反応系に添加する時間としては、全反応時間に対して好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、特に好ましくは20%以上であり、連続的に添加してもよいし、間欠的に添加してもよい。
【0040】
反応溶液中および滴下溶液中の溶存酸素濃度を20ppm以下にすることがゲル化防止の面で好ましい。
【0041】
反応溶液中および滴下溶液中の溶存酸素濃度は、好ましくは20ppm以下であり、より好ましくは10ppm以下であり、さらに好ましくは5ppm以下であり、特に好ましくは3ppm以下である。
【0042】
溶存酸素濃度を20ppm以下にする方法としては、窒素などの不活性ガスを十分にバブリングする方法、減圧と不活性ガス置換を十分に繰り返す方法、不活性ガスによる加圧と開圧を十分に繰り返す方法等が挙げられる。これらの方法は単独で実施してもよいし、組み合わせて実施してもよい。
【0043】
本発明にしたがって製造されたビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、反応溶液を精製することによって得ることができる。上記精製手段としては、製造されたビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の貧溶媒に再沈殿し、ろ過後減圧乾燥させる方法、未反応の単量体や溶媒を蒸発させる方法およびGPC分取による方法等が挙げられる。これらの方法は組み合わせて実施してもよい。
【0044】
【実施例】
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0045】
溶存酸素濃度は、溶存酸素計(セントラル科学株式会社製 UC−12−SOL型)を用いて測定した。
【0046】
実施例1
攪拌装置、温度計、冷却装置、滴下装置および窒素ガス導入管を取付けた四つ口フラスコに2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(以下、「AIBN」と呼ぶ) 1.2g、ベンゼン 43.2gを仕込み、攪拌しながら窒素ガスを十分にバブリングした(溶存酸素濃度 3.8ppm)。60℃まで昇温し、温度が一定になった後、十分に窒素ガスをバブリングしたメタクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル(以下、「VEEM」と呼ぶ)4.0g、メタクリル酸メチル(以下、「MMA」と呼ぶ) 18.2g、スチレン(Q=1、e=−0.8)1.0g、ベンゼン 24.0gの混合溶液(溶存酸素濃度 3.2 ppm)を5時間かけて滴下した。その後さらに同温で3時間攪拌し重合体を得た。これをヘキサン1Lを用いて再沈殿し、ろ過後減圧乾燥することにより精製した。得られた物質の収量は16.3gであった。
【0047】
以上のようにして得た物質をHLC−8120型ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(東ソー株式会社製、溶離液 テトラヒドロフラン;以下「GPC」と呼ぶ)および 400MHz UNITY−PLUS型核磁気共鳴装置(バリアン社製、溶媒 重クロロホルム;以下「NMR」と呼ぶ)により分析した。その結果、得られた重合体はVEEM、スチレンおよびMMAからなる共重合体であることを確認した(共重合体組成比(共重合体のNMRより算出): VEEM/スチレン/MMA=9.8/6.8/83.4(mol%))。また、得られた共重合体の数平均分子量(GPCより算出、ポリスチレン換算)は4000であった。共重合体のNMRチャートを図1に示す。
【0048】
実施例2
実施例1と同様の装置に、AIBN 1.1g、ベンゼン 36.9gを仕込み、窒素ガスを十分にバブリングした(溶存酸素濃度 3.3ppm)。60℃まで昇温し、温度が一定になった後、十分に窒素ガスをバブリングしたVEEM 4.2g、MMA 17.5g、スチレン 1.5g、ベンゼン 10.4gの混合溶液(溶存酸素濃度 3.0ppm)、および、十分に窒素ガスをバブリングしたAIBN 1.1g、ベンゼン 23.9gの混合溶液(溶存酸素濃度 2.8ppm)を6時間かけて滴下した。その後、同温で2時間攪拌し重合体を得た。これをヘキサン1Lを用いて再沈殿し、ろ過後減圧乾燥することにより精製した。得られた重合体の収量は16.6gであった。
【0049】
また、得られた共重合体をGPCおよび NMRにより分析した結果、数平均分子量は4100、共重合体組成比はVEEM/スチレン/MMA=10.2/9.5/80.3(mol%)であった。
【0050】
また、得られた共重合体の赤外吸収スペクトルを測定した。赤外吸収スペクトル図2に示す。
【0051】
【発明の効果】
本発明に従えば、種々の用途展開が可能なビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル系共重合体をビニルエーテル基によりゲル化することなく製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1で得られた共重合体のNMRチャートである。
【図2】 実施例2で得られた共重合体の赤外吸収スペクトルである。
Claims (5)
- ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の製造方法であって、
該製造方法は、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類[単量体(A)]、単量体(A)ではない(メタ)アクリル酸系単量体[単量体(B)]、およびQ値が0.6〜1.4の範囲内、かつe値が−0.4〜−1.2の範囲内にある単量体[単量体(C)]を重合させてなり、
該ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類[単量体(A)]は、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸6−ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸p−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−[2−(2−ビニロキシエトキシ)エトキシ]エチル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、又は、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコールモノビニルエーテルを必須とし、
該Q値が0.6〜1.4の範囲内、かつe値が−0.4〜−1.2の範囲内にある単量体[単量体(C)]は、スチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−メトキシスチレン、3,4−ジメトキシスチレン、α−アセトキシスチレン、p−アセトキシスチレン、p−クロロメチルスチレン、o−ビニルフェノール、m−ビニルフェノール、2−ビニルピリジン、5−ビニル−2−ピコリン、2−イソプロペニルナフタレン、2−(o−メチル)−4−ビニルカテコール、又は、トリメチル(p−ビニルフェニルシラン)を必須とする
ことを特徴とするビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の製造方法。 - 前記製造方法は、重合性単量体の総重量が、溶媒と重合性単量体との総和に対して、10重量%以上、80重量%以下になるように添加することを特徴とする請求項1又は2記載の共重合体の製造方法。
- 前記製造方法は、重合性単量体の総重量が、溶媒と重合性単量体との総和に対して、50重量%以下になるように添加することを特徴とする請求項3記載の共重合体の製造方法。
- 前記製造方法は、反応溶液中および滴下溶液中の溶存酸素濃度を20ppm以下にすることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の共重合体の製造方法。
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