JP3956857B2 - 膝保護用エアバッグ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の前面衝突時に、エアバッグが、膨張用ガスを流入させて展開膨張し、運転者や助手席搭乗者等の乗員の膝を保護可能な膝保護用エアバッグ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、運転者の膝を保護する膝保護用エアバッグ装置は、折り畳まれたエアバッグが、運転者の前方の車体側における下部側に配置されたケースに収納保持されていた。そして、エアバッグは、膨張用ガスの流入時、ステアリングコラムの下面に沿うように上昇しつつ、展開膨張を完了させて、運転者の膝を保護可能としていた。
【0003】
【特許文献1】
国際公開第02/04261号パンフレット
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来のエアバッグでは、運転者等の乗員の膝の前進速度が速い場合に、乗員の膝と車体側の部位との間に割り込ませて、配設させる点に、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するもので、乗員の膝の前進速度が速くとも、乗員の膝と車体側の部位との間に割り込ませて、容易にエアバッグを配設させることが可能な膝保護用エアバッグ装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る膝保護用エアバッグ装置は、着座した乗員の前方の車体側における下部側に折り畳まれて収納されたエアバッグが、膨張用ガスの流入時、車両後方側へ突出するとともに、上昇しつつ展開膨張を完了させて、前記乗員の膝を保護可能とする膝保護用エアバッグ装置であって、
エアバッグが、
展開膨張完了時に車体側に位置する車体側壁部と、乗員側に位置する乗員側壁部と、を備えた略板形状とするとともに、内圧上昇時に車体側壁部と乗員側壁部とを剥離可能に結合させる結合部位を、部分的に備え、
膨張用ガスの流入当初から膨張可能な一次膨張部と、結合部位を周囲に配設させて形成されて、一次膨張部の膨張完了時点付近から、結合部位の車体側壁部と乗員側壁部とを剥離させて、薄い板状から厚く膨張し始める二次膨張部と、を備え、
二次膨張部が、エアバッグの上端側に配置されるとともに、
一次膨張部が、一次膨張部の膨張完了時、エアバッグの上端側の少なくとも一部を、エアバッグの膨張完了時の配置位置付近まで配置可能に、エアバッグの上端における二次膨張部以外の上縁部位を備えて、配設されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る膝保護用エアバッグ装置では、エアバッグの一次膨張部の膨張完了が、二次膨張部の容積分が無いことから、迅速に行なわれる。そして特に、一次膨張部が膨張を完了させれば、エアバッグは、上端側の少なくとも一部が、膨張完了時の配置位置付近まで、配置されることから、乗員の膝が大きく前進してくる前に、エアバッグの全体を膝の前方側に配置させることが可能となる。そして、既に膨張を完了させた一次膨張部やその後に膨張を完了させる二次膨張部によって、乗員の膝を的確に保護することが可能となる。
【0008】
したがって、本発明に係る膝保護用エアバッグ装置では、乗員の膝の前進速度が速くとも、乗員の膝と車体側の部位との間に割り込ませて、容易にエアバッグを配設させることができて、的確に乗員の膝を保護することが可能となる。
【0009】
そして、エアバッグの一次膨張部は、膨張完了時のエアバッグの下端付近から上端付近まで略直線状に延びる直線部位を備えて、構成することが望ましい。このように構成されていれば、膨張用ガスが、一次膨張部を利用して、エアバッグの下端側から上端側へ円滑に流れることから、一層、エアバッグの上端側の配置が、迅速に行なわれる。
また、膝保護用エアバッグ装置が、運転者の車両前方側のステアリングコラムの下方に配設される場合には、エアバッグは、コラムカバーの下面側におけるエアバッグの中央に二次膨張部を配置させ、二次膨張部の左右両側に、一次膨張部の直線部位を配置させて形成することが望ましい。このような構成では、運転者に接近して運転者との隙間の狭いコラムカバーの下面側では、その下面側に配置される二次膨張部が、エアバッグの膨張当初に、薄い状態で、配置されるため、コラムカバー下面と運転者の膝との隙間が、極めて狭くとも、容易に、エアバッグを配置させることができる。
【0010】
また、膝保護用エアバッグ装置が、運転者の車両前方側のステアリングコラムの下方に配設されて、エアバッグが、展開膨張完了時に、キーシリンダ付近の領域の車両後方側を覆うカバー部を、備えている場合には、カバー部は、エアバッグの二次膨張部の領域、若しくは、二次膨張部の近傍の領域に、配置させることが望ましい。このように構成されていれば、仮に、キーシリンダに差し込んだキーにサブキーやアクセサリー等の付属品が吊り下げられていても、付属品に干渉するカバー部は、配置当初、膨張用ガスの流入量を少なくして、薄い板状としているため、付属品の下端側と干渉しても、傷付けられるように干渉せず、逆に、付属品を弾くような状態で、展開を完了させ、その後に、ガス漏れを生ずること無く、厚く膨張できる。ちなみに、カバー部が、薄い板状でなく、厚く膨張した状態で、付属品の下端側に対して、直交状態で干渉すれば、付属品に傷付けられて、ガス漏れを発生させる虞れが生ずる。
【0011】
さらに、エアバッグの内圧上昇時に剥離可能に車体側壁部と乗員側壁部とを結合する結合部位は、破断可能に車体側壁部と乗員側壁部とを縫合する縫合糸により、形成することが望ましい。このような構成では、単に、破断可能な縫合糸によって、エアバッグの車体側壁部と乗員側壁部とを縫合するだけで、簡単に、一次膨張部と二次膨張部とを形成することができるため、エアバッグの製造が容易となる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、実施形態の膝保護用エアバッグ装置Sは、図1・8に示すように、乗員としての運転者Dの膝Kを保護できるように、運転者Dの車両前方側の車両B側における下部側、すなわち、ステアリングコラム2の下方に、配設されている。
【0013】
なお、本明細書での上下・前後・左右の関係は、エアバッグ装置Sが車両に搭載された状態を基準とするもので、搭載時の車両の上下・前後・左右の関係と一致するものである。
【0014】
ステアリングコラム2は、図1に示すように、ステアリングホイール1に連結されるメインシャフト3と、メインシャフト3の周囲を覆うコラムチューブ4と、それらの周囲を覆うコラムカバー5と、を備えて構成されている。
【0015】
コラムカバー5は、略四角筒形状等の合成樹脂製として、ステアリングホイール1の下方のメインシャフト3やコラムチューブ4を覆うように、メインシャフト3の軸方向に沿って配設されている。コラムカバー5は、インストルメントパネル(以下、インパネとする)10から斜め上後方に突出するように、配設されている。そして、コラムカバー5の右側面5cには、エンジン始動用のイグニッションキーEを挿入させるキーシリンダ6が配設されている。なお、実施形態の場合、キーシリンダ6に挿入されたイグニッションキーEには、接続環等の接続具Jを使用して、サブキー等の付属品(キー付属品)Aが、垂れ下がるように接続されている。
【0016】
膝保護用エアバッグ装置Sは、折り畳まれたエアバッグ40、エアバッグ40に膨張用ガスを供給するインフレーター21、折り畳まれたエアバッグ40とインフレーター21とを収納するとともに車両後方側を開口させたケース13、及び、ケース13の車両後方側を覆うエアバッグカバー29、を備えて構成されている。
【0017】
ケース13は、図1〜3に示すように、板金製として、ステアリングコラム2の下方側に配置されており、略四角筒形状の周壁部14と、周壁部14の車両前方側を塞ぐ底壁部17と、を備えるとともに、車両後方側に略長方形形状の開口13aを備えて、構成されている。そして、ケース13の周壁部14における上下で対向する壁部14a・14bの外表面側には、それぞれ、エアバッグカバー29の側壁部31・32をケース13に組み付けるための複数の係止部15(15U・15D)が、配設されている。
【0018】
上方側の壁部14aの外表面側に配設される係止部15Uは、エアバッグカバー29の上側壁部31の係止孔31aに挿入されて係止孔31aの周縁を係止可能な係止フックとして構成されている。係止フック15Uは、上側壁部31の係止孔31aに対応して、車両の左右方向に沿って複数配設されている。係止部15Dは、エアバッグカバー29の下側壁部32の係止孔32aに挿入可能な係止突起として構成され、この係止突起15Dも、下側壁部32の係止孔32aに対応して、車両の左右方向に沿って複数配設されている。そして、各係止突起15Dには、係止孔32aへの挿入後の係止孔32aからの抜け止めを図る閂材16が、挿入されている。閂材16は、挿入部16aを下側壁部32の外表面と各係止突起15Dの内周面との間に挿入させて、ケース13に固定されている。
【0019】
さらに、周壁部14における右方側の壁部14cには、インフレーター21の本体22の端部を挿通可能な挿通孔14dが、形成されている(図3参照)。また、底壁部17には、インフレーター21の各ボルト23dを挿通させるための二つの挿通孔17aが、形成されている。
【0020】
また、ケース13は、開口13aの周囲に、周壁部14から外方へ延びるフランジ部19を備えて構成されている。ケース13は、フランジ部19、周壁部14、及び、底壁部17の所定部位から図示しないブラケットを突出させて、車両のボディ側に固定されている。
【0021】
インフレーター21は、図2・3に示すように、軸方向を車両の左右方向に沿って配設させるシリンダタイプとして構成され、略円柱状の本体22とディフューザー23とを備えて構成されている。本体22は、略円柱状の一般部22aと、一般部22aの端面から突出する小径の小径部22bと、を備え、小径部22bの外周面に複数のガス吐出口22cを配設させて、構成されている。そして、一般部22aにおける小径部22bから離れた端面に、作動信号入力用のリード線27を結線させたコネクタ26が、接続されている。
【0022】
ディフューザー23は、本体22を覆い可能な略円筒状として、膨張用ガスを流出可能な複数のガス流出口23aを、車両搭載状態の後方側の面に配設させている。また、ディフューザー23は、車両前方側へ突出する複数(実施形態では二本)のボルト23dを備えて構成されている。さらに、ディフューザー23は、本体22を保持するための複数の挟持部23cを備えている。そして、本体22のディフューザー23への固定は、ディフューザー23内に、小径部22bを先頭にして、挿通孔23bから本体22を挿入させ、各挟持部23cを一般部22aの外周面側にさらに押圧すれば、本体22をディフューザー23に固定することができ、各ボルト23dをケース13の底壁部17の挿通孔17aに挿通させて、ナット24を締め付ければ、インフレーター21をケース13に固定することができる。
【0023】
なお、インフレーター21は、車両に搭載されたエアバッグ作動回路が、車両の前面衝突を検知した際、リード線27を介して、作動信号が入力され、その際、同時に、ステアリングホイール1に搭載された図示しないエアバッグ装置も作動される。
【0024】
エアバッグカバー29は、ケース13の開口13a付近とフランジ部19付近との車両後方側を覆い可能なように、構成されて、ケース13に連結保持されている。このエアバッグカバー29は、図1・8に示すように、アッパパネル10aとロアパネル10bとからなるインパネ10におけるコラムカバー5の周縁のロアパネル10b側に配置されて、インパネ10から突出するコラムカバー5の下側周縁を覆っている。
【0025】
そして、エアバッグカバー29は、ケース13の開口13aを車両後方側で覆っている二つの扉部37・38と、扉部37・38の周囲に配置されて車両への搭載時に周囲をロアパネル10bに囲まれる一般部30と、を備えて構成されている。このエアバッグカバー29は、扉部37・38や側壁部31・32・33・34を含めた部位を、ポリオレフィン系等の熱可塑性エラストマーから形成し、その周囲の一般部30を、ポリプロピレン等の合成樹脂から形成した二色成形品としている。
【0026】
扉部37・38は、略長方形板状に形成されて、周囲に、略H字形状となる薄肉の破断予定部36を配設させて、構成されている。破断予定部36は、扉部37・38が膨張するエアバッグ40に押された際に容易に破断するように、エアバッグカバー29の車両前方側の面に連続的若しくは断続的な凹溝を設けて、形成されている。そして、破断予定部36がエアバッグ40に押されて破断した際には、扉部37は、上端側の上側壁部31付近をヒンジ部として上開きに開き、扉部38は、下端側の下側壁部32付近をヒンジ部として下開きで開く。
【0027】
また、扉部37・38の周囲の部位には、ケース13の周壁部14の外周側において、周壁部14と隣接するように車両前方側に突出する4つの側壁部31・32・33・34が、形成されている。そして、ケース周壁部14の上部側に配置される上側壁部31と周壁部14の下部側に配置される下側壁部32とは、エアバッグカバー29をケース13に連結保持させる部位となり、これらの各壁部31・32には、既述したように、周壁部14に配設された各係止部15(15U・15D)を挿入させて、各係止部15に周縁を係止させる係止孔31a・32aが、それぞれ、形成されている。
【0028】
エアバッグ40は、可撓性を有したポリエステルやポリアミド糸等からなる織布から形成されて、展開膨張完了時の形状を、図1・4〜6・8に示すように、運転者Dの両膝Kを保護可能な左右方向の幅寸法を備えた略長方形板状としている。そして、エアバッグ40は、展開膨張完了時に、運転者D側に乗員側壁部41を配置させ、コラムカバー5側に車体側壁部42を配置させるように、構成されている。壁部41・42は、相互に略同形状に形成されている。なお、実施形態のエアバッグ40は、壁部41・42相互が下縁(下端)40b側で連なった一枚の織布を、下縁40bで二つ折りし、縫合糸49を使用して、外周縁相互を縫合して、形成されている。また、エアバッグ40の下縁40b側における車体側壁部42の部位43には、図3・7に示すように、二つの挿通孔43a・43aと一つの挿通孔43bとが形成されている。挿通孔43a・43aは、インフレーター21の各ボルト23dを挿通させるものであり、挿通孔43bは、インフレーター21の本体22を挿通させるものである。そして、エアバッグ40は、挿通孔43bからインフレーター21の本体22を突出させて、各挿通孔43aの周縁43を、ディフューザー23とケース13の底壁部17とに挟持させて、ケース13に取り付けられている。すなわち、このエアバッグ40は、挿通孔43aの周縁を取付部43として、この取付部43が、ケース13の底壁部17に対して、取付固定されている。
【0029】
さらに、エアバッグ40内には、左右方向に沿って配設されるテザー44・45が、上下二段に配設されている。各テザー44・45は、壁部41・42を連結して、膨張完了時のエアバッグ40を板形状に維持できるように、配設されている。なお、各テザー44・45は、それぞれ、二枚ずつの布材44a・45aから形成されている。
【0030】
また、このエアバッグ40では、車両搭載状態で、展開膨張を完了させた際、図1・6・8のB・9に示すように、上縁40a側における右縁40d付近を、キーシリンダ6の車両後方側を覆うカバー部52としている。なお、このカバー部52は、展開膨張完了時、キーシリンダ6に挿入されたキーEに接続されて垂れ下がっている付属品Aの領域も、車両後方側から覆えるように構成されている。
【0031】
そして、このエアバッグ40では、容積規制解除手段としての破断可能な縫合糸50を使用して、壁部41・42相互を部分的に縫合して、膨張用ガスの流入当初から膨張可能な一次膨張部46と、一次膨張部46の膨張完了時点付近から膨張し始める二次膨張部47と、が配設されている。
【0032】
一次膨張部46は、一次膨張部46の膨張完了時、エアバッグ40の上端40a側の少なくとも一部を、エアバッグ40の膨張完了時の配置位置付近まで配置可能に、配設されている。すなわち、実施形態の場合、二次膨張部47は、図4・6に示すように、エアバッグ40のカバー部52を含むように、エアバッグ40の上端40a側に、配設され、一次膨張部46は、エアバッグ40の上端40aにおけるカバー部52の領域以外の上縁部位40aaを、外周縁に含んで、構成されている。
【0033】
さらに、一次膨張部46は、膨張完了時のエアバッグ40の下端40b付近から上端40a付近まで略直線状に延びる部位46a・46bを備えて、構成されている。実施形態の場合、一次膨張部46は、エアバッグ40の左縁40c側の直線部位46aと、エアバッグ40の右縁40d側の直線部位46bと、を備えて構成されている。これらの直線部位46a・46bは、エアバッグ40の上下(前後)に沿う方向において、テザー44・45の配置位置からずれており、エアバッグ40の下端40b側に配置されたインフレーター21からの膨張用ガスGを、エアバッグ40の上端40a側まで、直線的に迅速に流すことができる。
【0034】
そして、実施形態の場合、二次膨張部47は、図4・6に示すように、エアバッグ40のカバー部52を含むように、エアバッグ40の上端40a側において、略長方形形状の領域に配設されている。この二次膨張部47は、二次膨張部47の外周縁における壁部41・42相互の外周縁を除いたU字状の縁に、縫合糸50を利用して、壁部41・42相互の縫合部位(結合部位)48を設けて、形成されている。なお、縫合糸50の破断強度は、一次膨張部46が膨張を完了させた後において、エアバッグ40の内圧が所定値以上に上昇した際、縫合部位48の縫合糸50を破断させて、二次膨張部47を急激に膨張させることができるように、設定されている。
【0035】
なお、このエアバッグ40の製造は、挿通孔43a・43bを設けたエアバッグ40用の一枚のシート材を、エアバッグ40の下縁40b側の部位で二つ折りする前に、そのシート材の所定位置に、布材44a・45aを縫合し、そして、布材44a相互と布材45a相互とをそれぞれ縫合するとともに、下縁40bの部位で二つ折りして、乗員側壁部41と車体側壁部42との外周縁相互を縫合し、さらに、縫合糸50を使用して、縫合部位48を形成すれば、エアバッグ40を製造することができる。なお、壁部41・42の外周縁相互の縫合は、後述するように、インフレーター32を挿入可能に、一部を縫合しないで残しておく。
【0036】
つぎに、このエアバッグ装置Sの組み立てについて説明する。まず、各挿通孔43aからボルト23dを突出させ、挿通孔43bから本体22の端部を突出させるように、エアバッグ40内に、組付済みのインフレーター21を、収納する。ついで、エアバッグ40を、ケース13内に収納可能に、折り畳む。
【0037】
このエアバッグ40の折り畳みは、左右方向の折目を付ける横折り行程と、前後方向(上下方向)の折目を付けてエアバッグ40の左右方向の幅寸法を整える縦折り行程と、によって、行なっている。そして、実施形態の場合、横折り行程を行なった後、縦折り工程を行って、エアバッグ40を折り畳んでいる。すなわち、図7のAに示すように、車体側壁部42と乗員側壁部41とを重ねて平らにした状態として、まず、横折り行程では、図7のA・Bに示すように、左右方向に折目をつけるように、エアバッグ40の上縁40a側を、車体側壁部42の側で巻いて、下縁40b側に接近させるロール折りにより、折り畳む。ついで、縦折り行程では、ケース13に収納できる左右方向の幅寸法とするために、図7のB・Cに示すように、ロール折りした折り畳み部位54の左右の両端部54b・54bを、折り畳み部位54の中央部54aの下方に配置させるように折り畳む。
【0038】
そして、折り畳み行程の終了後には、折り崩れ防止用の破断可能な図示しないラッピングフィルムにより、エアバッグ40をくるむ。この時、挿通孔43a・43bから突出したインフレーター21のボルト23dや本体22の端部は、ラッピングフィルムから突出させておく。なお、ラッピングフィルムとしては、樹脂製のシート材の他、エアバッグ40を形成した織布等の布材・テープ材・紐材を利用してもよい。
【0039】
その後、インフレーター21の各ボルト23dを挿通孔17aから突出させるとともに、インフレーター本体22の端部を挿通孔14dから突出させるようにして、インフレーター21を、折り畳まれたエアバッグ40とともに、ケース13内に収納させ、各ボルト23dに図示しないスプリングナットを締結すれば、インフレーター21とエアバッグ40とを、ケース13に収納させるとともに、ケース13に取り付けることができる。
【0040】
ついで、エアバッグカバー29を、ケース13に組み付ける。このエアバッグカバー29のケース13への組み付けは、エアバッグカバー29の各側壁部31・32・33・34を、開口13a側のケース周壁部14に外装させ、各係止フック15Uを、上側壁部31の係止孔31aに挿入係止させるとともに、各係止突起15Dを、下側壁部32の各係止孔32aに挿入させて、下側壁部32の外表面側に突出させ、下側壁部32の外表面と各係止突起15Dの内周面との間に、閂材16の挿入部16aを挿入させ、閂材16にボルト23dを貫通させて、ナット24をボルト23dに締結すれば、エアバッグカバー29をケース13に連結保持させることができて、エアバッグ装置Sを組み立てることができる。
【0041】
そして、エアバッグ装置Sの車両への搭載は、リード線27を結線させたコネクタ26をインフレーター21の本体22に接続させるとともに、ケース13から延びる所定のブラケットを、車両のボディ側に連結固定させるとともに、リード線27をエアバッグ作動回路に接続させれば、エアバッグ装置Sを車両に搭載することができる。
【0042】
なお、この時、車両には、既に、アッパパネル10aやロアパネル10b等が取り付けられている。また、アンダーカバー11は、エアバッグ装置Sを車両に搭載した後に取り付ければよい。
【0043】
エアバッグ装置Sの車両への搭載後、リード線27を経て、インフレーター21の本体22に作動信号が入力されれば、インフレーター21のガス吐出口22cから膨張用ガスが吐出され、膨張用ガスが、ディフューザー23のガス流出口23aを経て、エアバッグ40内に流入することとなる。そして、エアバッグ40は、膨張して、図示しないラッピングフィルムを破断するとともに、エアバッグカバー29の扉部37・38を押し、破断予定部36を破断させる。そして、エアバッグ40は、扉部37・38を開かせて、図1の二点鎖線に示すように、ケース13の開口13aから車両後方側へ突出し、さらに、ステアリングコラム2のコラムカバー下面5aに沿って上方へ向かって大きく突出するように、展開膨張することとなる。
【0044】
そして、実施形態の膝保護用エアバッグ装置Sでは、エアバッグ40が、膨張用ガスを流入させてケース13から突出すれば、エアバッグ40の折り畳み行程の略逆の行程で、折りを解消して、展開膨張する。そのため、図8のA・Bに示すように、展開膨張するエアバッグ40は、折り畳み部位54の端部54b・54bを上昇させ、かつ、ロール折りの折りを解消しつつ、エアバッグ40の上縁40a側を、コラムカバー5の下面(後面)5aに沿わせて、コラムカバー5の上端5b付近まで、上昇させて、展開膨張することとなる。
【0045】
この時、エアバッグ40では、一次膨張部46の膨張完了が、二次膨張部47の容積分が無いことから、迅速に行なわれる。そして特に、一次膨張部46が膨張を完了させれば、エアバッグ40は、上端40a側の少なくとも一部40aaが、膨張完了時の配置位置付近まで、配置されることから、図1の二点鎖線に示すように、運転者Dの膝Kが大きく前進してくる前に、エアバッグ40の全体を膝Kの前方側に配置させることが可能となる。そして、既に膨張を完了させた一次膨張部46やその後に膨張を完了させる二次膨張部47によって、運転者Dの膝Kを的確に保護することが可能となる。
【0046】
したがって、実施形態の膝保護用エアバッグ装置Sでは、運転者Dの膝Kの前進速度が速くとも、運転者Dの膝KとボディB側におけるコラムカバー5やロアパネル10bの部位との間に割り込ませて、容易にエアバッグ40を配設させることができて、的確に運転者Dの膝Kを保護することが可能となる。
【0047】
そして、実施形態の場合、エアバッグ40は、展開膨張完了時に車体B側に位置する車体側壁部42と、乗員(運転者)D側に位置する乗員側壁部41と、を備えた略板形状として、一次膨張部46と二次膨張部47とが、破断可能に車体側壁部42と乗員側壁部41とを縫合する縫合糸50によって、形成されている。このような構成では、単に、破断可能な縫合糸50によって、エアバッグ40の車体側壁部42と乗員側壁部41との所定部位を縫合するだけで、簡単に、一次膨張部46と二次膨張部47とを形成することができるため、エアバッグ40の製造が容易となる。特に、実施形態のエアバッグ40は、壁部41・2の外周縁相互も、縫合糸49を使用して、縫合しており、二種類の縫合糸49・50を使用する縫合作業によって、容易に製造することができる。
【0048】
なお、縫合糸50を使用することなく、縫合部位(結合部位)48、若しくは、縫合部位(結合部位)48に囲まれた部位(すなわち、二次膨張部47の部位)、における壁部41・42相互を、剥離可能に結合させるように、接着剤を使用して、一次・二次膨張部46・47を形成してもよい。勿論、この場合の結合部位48の結合強度は、一次膨張部46が膨張を完了させた後において、エアバッグ40の内圧が所定値以上に上昇した際、結合部位48の壁部41・42相互を剥離させて、二次膨張部47を膨張させることができるように、設定する。
【0049】
また、実施形態の場合、エアバッグ40の一次膨張部46が、膨張完了時のエアバッグ40の下端40b付近から上端40a付近まで略直線状に延びる部位46a・46bを備えて、構成されている。そのため、インフレーター21から吐出された膨張用ガスGが、一次膨張部46の直線部位46a・46bを利用して、エアバッグ40の下端40b側から上端40a側へ円滑に流れることから、一層、エアバッグ40の上端40a側の配置が、迅速に行なわれ、運転者Dの膝Kが大きく前進してくる前に、一層、エアバッグ40の全体を膝Kの前方側に配置させることが可能となる。
【0050】
さらに、実施形態では、エアバッグ40が、展開膨張完了時に、キーシリンダ6付近の領域の車両後方側を覆うカバー部52を、備えて、このカバー部52が、エアバッグ40の二次膨張部47の領域に、配置されている。そのため、仮に、キーシリンダ6に差し込んだキーEに付属品Aが吊り下げられていても、付属品Aに干渉するカバー部52は、図9のAに示すように、配置当初、膨張用ガスの流入量を少なくして、薄い板状としているため、付属品Aの下端Ab側と干渉しても、傷付けられるように干渉せず、逆に、付属品Aを弾くような状態で、展開を完了させ、その後、図9のBに示すように、ガス漏れを生ずることなく、円滑に膨張できる。ちなみに、カバー部52が、薄い板状でなく、厚く膨張した状態で、付属品Aの下端Ab側に対して、直交状態で干渉すれば、付属品Aに傷付けられて、ガス漏れを発生させる虞れが生ずる。
【0051】
なお、実施形態のエアバッグ40では、カバー部52の領域と略同じ位置に、小容積の二次膨張部47を配設した場合を示したが、図10に示すエアバッグ40Aのように、エアバッグ40Aの左縁40c・右縁40d・下縁(下端)40bの領域に、正面から見て左右対称形のU字状に、一次膨張部46を設け、テザー44・45の中央部位を含めたエアバッグ40の上縁(上端)40a側の中央領域に、正面から見て、I字状に、大きな容積の二次膨張部47を設けてもよい。この二次膨張部47の外周縁における壁部41・42相互の外周縁を除いたU字状の部位には、縫合糸50を使用した縫合部位48が設けられて、エアバッグ40Aは形成されている。
【0052】
このエアバッグ40Aを使用する膝保護用エアバッグ装置Sでは、作動時、図11のA・Bに示すように、まず、コラムカバー5の配置位置を除いたエアバッグ40Aの左右両側の直線部位46a・46bが膨張を完了させ、その後、縫合糸50が破断されて、コラムカバー5の下面(後面)5a側のエアバッグ40Aの中央の二次膨張部47が膨張する態様となる。すなわち、乗員としての運転者Dに接近して運転者Dとの隙間の狭いコラムカバー5の下面5a側では、その下面5a側に配置される部位47が、エアバッグ40Aの膨張当初に、薄い状態で、配置されるため、コラムカバー下面5aと運転者Dの膝Kとの隙間が、極めて狭くとも、容易に、エアバッグ40Aを配置させることができる。
【0053】
勿論、図10・11に示すエアバッグ40Aのように、大きな容積の二次膨張部47を設けなくとも、図12〜20に示すエアバッグ40B・40C・40D・40E・40F・40G・40H・40I・40Jのように、二次膨張部47の領域を小容積として、二次膨張部47を、カバー部52の領域、若しくは、そのカバー部52の近傍の領域に、半円形状、長方形状、台形状、三角形状、円形状等として、部分的に配置させてもよい。なお、二次膨張部47は、縫合糸50を使用した縫合部位48に囲まれた部位、あるいは、縫合部位48と壁部41・42相互の外周縁とによって囲まれた部位、の二種類だけで無く、図21・22に示すエアバッグ40K・40Lのように、単に、直線状若しくは曲線状の複数の縫合部位48により、部分的に囲んでも、二次膨張部47A・47B・47Cを形成することができる。さらに、一本の直線状若しくは曲線状の縫合部位48によっても、二次膨張部47を形成することができる。例えば、図22に示す二次膨張部47Dは、縫合部位48自体とその近傍部位によって、形成されている。
【0054】
また、二次膨張部47を設ける場合、図10・23に示すエアバッグ40A・40Mのように、エアバッグ40A・40Mの中心から、左右対称形として、配設すれば、エアバッグ40A・40Mの膨張状態を左右均等にすることができ、左右のバランスよく、エアバッグ40A・40Mを展開膨張させることができる。
【0055】
さらに、縫合部位48を形成する場合には、壁部41・42を相互に平らにした状態で、配設する他、図24に示すように、壁部41・42の一方にタック56を設けて、縫合部位48を設けてもよい。
【0056】
さらにまた、実施形態では、運転者用の膝保護用エアバッグ装置Sについて例示したが、勿論、本発明は、助手席前方に配置される膝保護用エアバッグ装置に適用することができる。
【0057】
さらに、実施形態では、キーシリンダ6がステアリングコラム2(コラムカバー5)自体に配置されている場合について、説明したが、キーシリンダ6が、インパネ10(例えばアッパパネル10a)の位置に配置されている場合にも、膝保護用エアバッグ装置のエアバッグ40が、そのキーシリンダ6に挿入されたキーEの付属品Aと干渉するカバー部52を有していれば、本発明を適用することができる。
【0058】
さらにまた、キーシリンダ6が、コラムカバー5の左側面や、コラムカバー5から左方側に離れたインパネ10に、配置されていても、そのキーシリンダ6に挿入されたキーEの付属品Aと干渉するカバー部を、エアバッグに設けて、本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態である膝保護用エアバッグ装置の使用状態を示す車両前後方向の概略縦断面図である。
【図2】実施形態である膝保護用エアバッグ装置の車両前後方向の概略拡大縦断面図である。
【図3】実施形態の膝保護用エアバッグ装置における車両前後方向の概略拡大横縦断面図であり、図2のIII−III部位に対応する。
【図4】実施形態のインフレーターを内蔵させた展開状態のエアバッグを示す概略正面図である。
【図5】図4のV−V部位の概略断面図である。
【図6】エアバッグの一次膨張部の膨張状態を示す概略部分断面図であり、図4のVI−VI部位に対応する。
【図7】実施形態のエアバッグの折り畳み行程を説明する図である。
【図8】実施形態の膝保護用エアバッグ装置における作動状態を順に説明する正面図である。
【図9】実施形態の膝保護用エアバッグ装置における作動状態を順に説明する側面図である。
【図10】実施形態の変形例のエアバッグにおけるインフレーターを内蔵させた展開状態を示す概略正面図である。
【図11】図10に示すエアバッグを使用した膝保護用エアバッグ装置における作動状態を順に説明する側面図である。
【図12】実施形態の変形例のエアバッグにおけるインフレーターを内蔵させた展開状態を示す概略正面図である。
【図13】実施形態の変形例の他のエアバッグにおけるインフレーターを内蔵させた展開状態を示す概略正面図である。
【図14】実施形態の変形例のさらに他のエアバッグにおけるインフレーターを内蔵させた展開状態を示す概略正面図である。
【図15】実施形態の変形例のさらに他のエアバッグにおけるインフレーターを内蔵させた展開状態を示す概略正面図である。
【図16】実施形態の変形例のさらに他のエアバッグにおけるインフレーターを内蔵させた展開状態を示す概略正面図である。
【図17】実施形態の変形例のさらに他のエアバッグにおけるインフレーターを内蔵させた展開状態を示す概略正面図である。
【図18】実施形態の変形例のさらに他のエアバッグにおけるインフレーターを内蔵させた展開状態を示す概略正面図である。
【図19】実施形態の変形例のさらに他のエアバッグにおけるインフレーターを内蔵させた展開状態を示す概略正面図である。
【図20】実施形態の変形例のさらに他のエアバッグにおけるインフレーターを内蔵させた展開状態を示す概略正面図である。
【図21】実施形態の変形例のさらに他のエアバッグにおけるインフレーターを内蔵させた展開状態を示す概略正面図である。
【図22】実施形態の変形例のさらに他のエアバッグにおけるインフレーターを内蔵させた展開状態を示す概略正面図である。
【図23】実施形態の変形例のさらに他のエアバッグにおけるインフレーターを内蔵させた展開状態を示す概略正面図である。
【図24】実施形態の変形例のさらに他のエアバッグの部分縦断面図である。
【符号の説明】
2…ステアリングコラム、
5…コラムカバー、
6…キーシリンダ、
40・40A・40B・40C・40D・40E・40F・40G・40H・40I・40J・40K・40L・40M…エアバッグ、
40a…(エアバッグの)上端・上縁、
40b…(エアバッグの)下端・下縁、
41…乗員側壁部、
42…車体側壁部、
46…一次膨張部、
47…二次膨張部、
48…縫合部位、
50…(容積規制解除手段)縫合糸、
52…カバー部、
E…キー、
A…(キー付属品)付属品、
D…乗員・運転者、
K…膝、
B…車体・ボディ、
S…膝保護用エアバッグ装置。
Claims (5)
- 着座した乗員の前方の車体側における下部側に折り畳まれて収納されたエアバッグが、膨張用ガスの流入時、車両後方側へ突出するとともに、上昇しつつ展開膨張を完了させて、前記乗員の膝を保護可能とする膝保護用エアバッグ装置であって、
前記エアバッグが、
展開膨張完了時に車体側に位置する車体側壁部と、乗員側に位置する乗員側壁部と、を備えた略板形状とするとともに、内圧上昇時に前記車体側壁部と前記乗員側壁部とを剥離可能に結合させる結合部位を、部分的に備え、
膨張用ガスの流入当初から膨張可能な一次膨張部と、前記結合部位を周囲に配設させて形成されて、前記一次膨張部の膨張完了時点付近から、前記結合部位の前記車体側壁部と前記乗員側壁部とを剥離させて、薄い板状から厚く膨張し始める二次膨張部と、を備え、
前記二次膨張部が、前記エアバッグの上端側に配置されるとともに、
前記一次膨張部が、該一次膨張部の膨張完了時、前記エアバッグの上端側の少なくとも一部を、前記エアバッグの膨張完了時の配置位置付近まで配置可能に、前記エアバッグの上端における前記二次膨張部以外の上縁部位を備えて、配設されていることを特徴とする膝保護用エアバッグ装置。 - 前記一次膨張部が、膨張完了時の前記エアバッグの下端付近から上端付近まで略直線状に延びる直線部位を備えて、構成されていることを特徴とする請求項1に記載の膝保護用エアバッグ装置。
- 運転者の車両前方側のステアリングコラムの下方に配設され、
前記エアバッグが、コラムカバーの下面側における前記エアバッグの中央に前記二次膨張部を配置させ、該二次膨張部の左右両側に前記一次膨張部の直線部位を配置させて形成されていることを特徴とする請求項2に記載の膝保護用エアバッグ装置。 - 運転者の車両前方側のステアリングコラムの下方に配設され、
前記エアバッグが、展開膨張完了時に、キーシリンダ付近の領域の車両後方側を覆うカバー部を、備え、
該カバー部が、前記エアバッグの二次膨張部の領域、若しくは、前記二次膨張部の近傍の領域に、配置されていることを特徴とする請求項1若しくは請求項2に記載の膝保護用エアバッグ装置。 - 前記結合部位が、破断可能に前記車体側壁部と前記乗員側壁部とを縫合する縫合糸により、形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の膝保護用エアバッグ装置。
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