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JP3955776B2 - 数値制御工作機械と数値制御工作機械のデータ変換方法 - Google Patents

数値制御工作機械と数値制御工作機械のデータ変換方法 Download PDF

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    • G05B2219/34343Generation of electronic cam data from nc program

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Description

【0001】
この発明は、数値制御工作機械と数値制御工作機械のデータ変換方法に係り、更に詳しくは、工具あるいは主軸を移動させるべく記憶されるNCプログラムが、目的の加工をより効率よく、あるいは精度良く行えるように、機上で効率よくプログラムの修正を行えるようにした数値制御工作機械と数値制御工作機械のデータ変換方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、工作機械にセッティングされた素材から、所望の形状をバイトなどの工具を利用して創成するにあたり、NCプログラムを作成し、このプログラムによってバイトなどの工具を含む各部を自動的に動作させるようにして、加工部品を得る数値制御工作機械が、そのような現場では一般に用いられている。
このような加工部品を得るために作成されたNCプログラムそのものは、通常数値制御工作機械上でも作成修正出来、加工部品の試し削りをした結果、加工部品が図面公差に入っていないなどの不具合がある場合には、機上でNCプログラムを、その不具合をなくすべく修正することが可能であり、非常に作業の効率が良いものである。
一方、NCプログラムではなく、電子カムデータを利用し、工作機械にセッティングされた素材から、所望の形状をバイトなどの工具を利用して創成することも行われている。
一般に電子カムデータを利用した数値制御工作機械では、主軸の累積回転角に対して、工具又は被加工物それぞれの位置のデータが定められるものになっているため、NCプログラムを利用しているものよりは、短時間かつ高精度に加工を行うことが出来るものになっている。電子カムデータを利用するには、通常、図面情報、指定された加工パス、加工工程、工具情報、ツーリング情報等を数値制御工作機械とは別個に設けられるパーソナルコンピュータなどにインストールされたCAMソフトなどに入力して電子カムデータを作成している。
電子カムデータを利用した数値制御工作機械では、プログラムの修正は、数値制御工作機械とは別個に設置されているパーソナルコンピュータ上のCAMソフトで行わなければならず、プログラムの修正を行う毎に、数値制御工作機械とパーソナルコンピュータとの間を作業者が行き来する必要があり、又、プログラムデータそのものをメディアに記録し直して両者の間を移動させるか、ネットワークでつないでいるのであればデータ転送を行う等が必要になっていた。
【発明が解決しようとする課題】
ところで、数値制御工作機械のユーザーは、製品を加工する上では、出来るだけ短い時間で加工準備作業を終え、一秒でも短い時間で部品を加工し、結果としてより低コストな部品を提供することが可能になることをいつでも求めている。複雑形状、単純形状の関わりなく、短い加工サイクルの中で加工を完了することが可能になることを求めている。
この要求を満足させる上では、全ての加工をNC制御により行うよりは、電子カム制御を利用した加工を行う方がより有利である。電子カム制御での加工の方が、より高速高精度な加工が可能になるケースがあるためである。
つまり、NC制御と電子カム制御の両者を利用した制御を行うことで、前述の要求をより高い次元で満足させることが可能になると考えられる。
しかしながら、単純に両方の制御を組み合わせた場合には、各々の制御を実行する際に各々に対して必要となるプログラム部分が存在することになり、電子カム制御プログラム部分の修正作業では、上述のような煩雑な作業が必要になる。修正そのものは、工場にノートPCを持ち込み工場内ネットワークに,あるいは数値制御工作機械にPCを直接接続すれば可能になると考えられるが、依然として電子カム制御プログラムとNCプログラムの両者に対しての修正作業は必要である。
又、どの加工を行う時に電子カム制御を使用し、そうではない時にNC制御を利用するのかを判別することも必要になり、適否の判断の出来ない作業者では、このような場合には部品の加工そのものが行えなくなってしまう可能性がある。
更に、電子カムプログラムによる電子カム制御をベースにして制御方法を考えた場合には、それまでに培ってきた過去の資産であるNCプログラムが無駄になってしまう問題もある。
本発明は、電子カムデータを利用した数値制御工作機械にあっても、従前のNCプログラムを利用している数値制御工作機械同様に、機上でプログラムを容易に修正可能とし従前からのソフトウエア資産を有効に活用することを可能にした数値制御工作機械を提供することを目的とする。
【0003】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る数値制御工作機械は、基準軸の回転量に対応する移動軸の位置データを定めた電子カムデータにより移動軸の位置制御が可能な数値制御工作機械において、数値制御工作機械にロードされたNCプログラムの加工テストを行うテスト手段と、該テスト手段による加工テストの結果に基づき修正情報を入力する修正情報入力手段と、該修正情報に基づいて前記NCプログラムを修正する修正手段と、該修正手段により修正が施されたNCプログラムの所定箇所を前記電子カムデータに変換する電子カムデータ化手段と、前記電子カムデータと前記NCプログラムとよりハイブリッドデータを作成するハイブリッドデータ作成手段と、を備えることを特徴とする。
これにより、従前からのように、NCプログラムの機上における修正作業と同様に修正作業が容易に行えるようにしている一方で、NCプログラムを適宜部分的に電子カムデータに変換し、電子カムデータを利用して数値制御工作機械を動作させるので、電子カムデータを利用した短時間かつ高精度の加工が必要な箇所は適切に加工する事が可能である。このように出来たことによって、電子カムデータの修正は、数値制御工作機械とは別個に設置されているパーソナルコンピュータ上のCAMソフトで行う必要はないので、プログラムの修正を行う毎に、数値制御工作機械とパーソナルコンピュータとの間を作業者が往来する必要もない。更に、又、プログラムデータそのものをメディアに記録し直して両者の間を移動させるあるいは、ネットワークでつないでいるのであればデータ転送を行う等も必要なく、プログラムの修正作業を効率よく行うことが可能になる。
更に、上述のように、NCプログラムと電子カムデータとを適切に使い分けての加工が可能になるので、加工部品の加工効率、加工精度等も改善出来る。NCプログラムの部分を変換させるものとしたので、過去のNCプログラム資産を有効に活用できる。
尚、NCプログラムの一部を変換する考え方を採用した理由は、数値制御装置自体の変更を小幅にとどめることが出来るメリットもあるためである。一般に、電子カムデータによる加工を行うときに、主軸の累積回転角に対しての軸位置というだけでは表現できない加工や補機機能が多数存在し、NCプログラムの全部を電子カムデータに変更するというわけには行かない。もし、そのようにするとしたら、NC装置そのものに非常に多くの改編を加えなくてはならず、好ましくない。そのような背景の中では、電子カムデータ化した方が好ましい機能を数値制御装置がサポートできるように、機能を取捨選択し、その対応部分が電子カムデータ化される方が性能向上と開発コストのバランスをとる上で好ましい。
又、更に、前記電子カムデータ化手段は予め前記NCプログラムに規定された変換開始行と変換終了行に基づいて前記所定箇所を電子カムデータ化することを特徴とする。これにより、電子カムデータへの変換範囲を適切に指定出来る。
又、更に、前記所定箇所に電子カムデータ化が不可能であるものが含まれているか否かを判定する電子カムデータ化可否判定手段が更に備えられており、前記電子カムデータ化手段は該判定手段の判定結果に従い電子カムデータ化を行うようにしていることを特徴とする。これによって、適切にNCプログラムが電子カムデータ化される。
【0004】
主軸回転用モータ11は、被加工物が保持可能に構成された主軸(図示せず)を回転駆動させるためのもので、駆動回路12及び主軸回転制御回路13等を介して制御ユニット部51に接続されている。また、主軸回転用モータ11には、主軸回転用モータ11の回転を検知するためのパルスエンコーダ14が設けられている。このパルスエンコーダ14の出力は制御ユニット部51及び速度信号生成回路15に接続されており、パルスエンコーダ14から出力される回転検出信号が制御ユニット部51及び速度信号生成回路15に入力される。パルスエンコーダ14は、主軸回転用モータ11(主軸)の回転に同期して回転検出信号を発生し、制御ユニット部51及び速度信号生成回路15に出力する。速度信号生成回路15は、パルスエンコーダ14から出力される回転検出信号を主軸回転用モータ11(主軸)の回転速度をあらわす主軸回転速度信号に変換する。速度信号生成回路15の出力は主軸回転制御回路13に接続されており、変換された主軸回転速度信号が主軸回転制御回路13に入力される。
【0005】
主軸回転制御回路13は、後述するクロック信号発生回路にて発生して出力されたクロック信号を基準にして所望の回転速度となるように被加工物(主軸)の回転を制御するためのものであり、制御ユニット部51から出力される主軸回転速度指令信号と、速度信号生成回路15から出力される主軸回転速度信号とを比較して、その差に応じた制御信号をクロック信号を基準にして生成する。主軸回転制御回路13にて生成された制御信号は、駆動回路12に出力される。
【0006】
駆動回路12は、主軸回転制御回路13から出力された制御信号に基づいて、主軸回転用モータ11(主軸)の回転速度が後述する主軸回転速度指令値となるように主軸回転用モータ11への供給電力を制御する。これら駆動回路12、主軸回転制御回路13、及び、速度信号生成回路15は、主軸回転用モータ11(主軸)の回転速度のフィードバック制御系を構成している。
【0007】
工具移動用モータ21は、被加工物を加工するための工具(旋削加工用バイト等)を、たとえば主軸回転用モータ11(主軸)の回転中心軸に対して直交する方向(X軸方向、Y軸方向)、又は主軸と平行な方向(Z軸方向)に移動させるためのもので、駆動回路22及び工具送り制御回路23を介して制御ユニット部51に接続されている。また、工具移動用モータ21には、工具移動用モータ21の回転を検出するパルスエンコーダ24が設けられている。このパルスエンコーダ24の出力は工具送り制御回路23に接続されており、パルスエンコーダ24の回転検出信号が工具送り制御回路23に入力される。パルスエンコーダ24は、工具移動用モータ21の所定回転角度毎に回転位置信号を発生して、工具送り制御回路23に出力する。
【0008】
工具送り制御回路23は、パルスエンコーダ24から出力された回転位置信号に基づいて実際の工具の移動位置を認識すると共に、認識した実際の工具の移動位置と後述する制御ユニット部51から出力される工具位置指令信号とを比較して、この比較結果に基づいて工具駆動信号を生成する。工具送り制御回路23にて生成された工具駆動信号は、駆動回路22に出力される。駆動回路22は、工具送り制御回路23から出力された工具駆動信号に基づいて工具移動用モータ21への供給電力を制御する。これら、駆動回路22及び工具送り制御回路23は、工具の移動位置のフィードバック制御系を構成している。
【0009】
被加工物移動用モータ31は、被加工物を、たとえば主軸回転用モータ11(主軸)の回転中心軸に対して平行な方向(Z軸方向)に移動させるためのもので、駆動回路32及び被加工物送り制御回路33を介して制御ユニット部51に接続されている。また、被加工物移動用モータ31には、被加工物移動用モータ31の回転を検出するパルスエンコーダ34が設けられている。このパルスエンコーダ34の出力は被加工物送り制御回路33に接続されており、パルスエンコーダ34の回転検出信号が被加工物送り制御回路33に入力される。パルスエンコーダ34は、被加工物移動用モータ31の所定回転角度毎に回転検出信号を発生して、被加工物送り制御回路33に出力する。
【0010】
被加工物送り制御回路33は、パルスエンコーダ34から出力された回転検出信号に基づいて実際の被加工物の移動位置を認識すると共に、認識した実際の被加工物の移動位置と制御ユニット部51から出力される被加工物位置指令信号とを比較して、この比較結果に基づいて被加工物駆動信号を生成する。所定回転角度毎に生成された被加工物駆動信号は、駆動回路32に出力される。駆動回路32は、所定回転角度毎に出力された被加工物駆動信号に基づいて被加工物移動用モータ31への供給電力を制御する。これら、駆動回路32及び所定回転角度毎には、被加工物の移動位置のフィードバック制御系を構成している。
【0011】
背面主軸台移動用モータ41は、背面主軸回転用モータ61を、たとえば主軸回転用モータ11(主軸)の回転中心軸に対して平行な方向(Z軸方向)又は、これと直交する方向(X軸方向)に移動させるためのもので、駆動回路42及び背面主軸台送り制御回路43を介して制御ユニット部51に接続されている。また、背面主軸台移動用モータ41には、背面主軸台移動用モータ41の回転を検出するパルスエンコーダ44が設けられている。このパルスエンコーダ44の出力は背面主軸台送り制御回路43に接続されており、パルスエンコーダ44の回転検出信号が背面主軸台送り制御回路43に入力される。パルスエンコーダ44は、背面主軸台移動用モータ41の所定回転角度毎に回転位置信号を発生して、背面主軸台送り制御回路43に出力する。
【0012】
背面主軸台送り制御回路43は、パルスエンコーダ44から出力された回転位置信号に基づいて実際の背面主軸台の移動位置を認識すると共に、認識した実際の背面主軸台の移動位置と後述する制御ユニット部51から出力される背面主軸台位置指令信号とを比較して、この比較結果に基づいて背面主軸台駆動信号を生成する。背面主軸台送り制御回路43にて生成された背面主軸台駆動信号は、駆動回路42に出力される。駆動回路42は、背面主軸台送り制御回路43から出力された駆動信号に基づいて背面主軸台移動用モータ41への供給電力を制御する。これら、駆動回路42及び穴加工用工具送り制御回路43は、背面主軸台の移動位置のフィードバック制御系を構成している。
【0013】
背面主軸回転用モータ61は、被加工物を保持可能に構成された背面主軸(図示せず)を回転駆動させるためのもので、駆動回路62及び背面主軸回転制御回路63等を介して制御ユニット部51に接続されている。また、背面主軸回転用モータ61には、背面主軸回転用モータ61の回転を検知するためのパルスエンコーダ64が設けられている。このパルスエンコーダ64の出力は制御ユニット部51及び速度信号生成回路65に接続されており、パルスエンコーダ64から出力される回転検出信号が制御ユニット部51及び速度信号生成回路65に入力される。パルスエンコーダ64は、背面主軸回転用モータ61(背面主軸)の回転に同期して回転検出信号を発生し、制御ユニット部51及び速度信号生成回路65に出力する。速度信号生成回路65は、パルスエンコーダ64から出力される回転検出信号を背面主軸回転用モータ61(背面主軸)の回転速度をあらわす背面主軸回転速度信号に変換する。速度信号生成回路65の出力は背面主軸回転制御回路63に接続されており、変換された背面主軸回転速度信号が背面主軸回転制御回路63に入力される。
【0014】
背面主軸回転制御回路63は、後述するクロック信号発生回路にて発生して出力されたクロック信号を基準にして所望の回転速度となるように被加工物(背面主軸)の回転を制御するためのものであり、制御ユニット部51から出力される背面主軸回転速度指令信号と、速度信号生成回路65から出力される背面主軸回転速度信号とを比較して、その差に応じた制御信号をクロック信号を基準にして生成する。背面主軸回転制御回路63にて生成された制御信号は、駆動回路62に出力される。
駆動回路62は、背面主軸回転制御回路63から出力された制御信号に基づいて、背面主軸回転用モータ61(背面主軸)の回転速度が後述する背面主軸回転速度指令値となるように背面主軸回転用モータ61への供給電力を制御する。これら駆動回路62、背面主軸回転制御回路63、及び、速度信号生成回路65は、背面主軸回転用モータ61(背面主軸)の回転速度のフィードバック制御系を構成している。
【0015】
制御ユニット部51は、図1に示されるように、中央演算ユニット52、パルス信号発生回路53a、53b、クロック信号発生回路54、分割タイミング信号発生回路55、NC部用RAM56、ROM57、PC部用RAM58等を有している。
【0016】
中央演算ユニット52は、制御ユニット部51全体の信号処理等をつかさどる演算部である。中央演算ユニット52は、周知のマルチプロセッシング(multi-processing)処理、すなわち多重処理を行う。多重処理は、複数の仕事(プログラム)を記憶しておき、これら複数のプログラムを短い時間で切り換えながら実行し、見かけ上、複数のプログラムが同時処理されているようにするもので、時分割処理するものや、各々の仕事に優先順位を付しておき優先順位が高い順に処理を切り換えながらタスク処理するもの等が知られている。
【0017】
パルス信号発生回路53a、53bは、それぞれ、パルスエンコーダ14、64に接続されており、パルスエンコーダ14、64のそれぞれから出力された回転検出信号がインターフェース等を介して入力される。この入力された回転検出信号に基づいて、所定回転角度毎にパルス信号を発生するように構成されている。また、パルス信号発生回路53a、53bは、中央演算ユニット52にも接続されており、所定回転角度毎に発生するパルス信号を中央演算ユニット52に出力するようにも構成されている。本実施形態において、パルス信号発生回路53a、53bは、主軸回転用モータ11(主軸)あるいは、背面主軸回転用モータ61(背面主軸)が一回転する間に、主軸回転用モータ11(主軸)、背面主軸回転用モータ(背面主軸)に同期して等間隔で4096個のパルス信号が出力されるように構成されている。
【0018】
クロック信号発生回路54は、中央演算ユニット52から出力される所定の指令信号を受けて、所定の周期、たとえば0.25ミリ秒周期のクロック信号を生成して出力するように構成されており、クロック信号発生回路54にて生成されたクロック信号は分割タイミング信号発生回路55に出力される。分割タイミング信号発生回路55は、クロック信号発生回路54から出力されたクロック信号の発生回数をカウントするように構成されており、カウントの結果たとえば1ミリ秒経過する毎に分割タイミング信号を生成して中央演算ユニット52に出力する。したがって、分割タイミング信号発生回路55は、1ミリ秒周期の分割タイミング信号を後述する割込みタイミング信号として中央演算ユニット52に出力することになる。なお、クロック信号及び分割タイミング信号の周期は上述した数値に限られることなく、中央演算ユニット52の処理能力、パルスエンコーダ24,34,44の分解能、各モータ11,21,31,41の性能等を考慮して適宜設定可能である。
【0019】
NC部用RAM56は、中央演算ユニット52における各種演算の結果を読み出し可能に一時的に記憶するように構成されている。このNC部用RAM56は、工作機械1が、NCプログラム(機械稼働用プログラム)に基づいて実際の加工動作を行う時に必要とされるNCプログラムを含むデータの全てを格納している。その一部に、第1のチャンネル加工手順記憶部56aと、第2のチャンネル加工手順記憶部56bと、第3のチャンネル加工手順記憶部56c、電子カムデータテーブル56dとが設けられている。尚、該データテーブルは、所謂電子カム制御を行うために備えられるものである。電子カム制御とは、特開2001−170843に示されるように、基準軸に取りつけられたパルスエンコーダが出力するパルス信号により時々刻々の回転位置データと、基準軸の単位回転位置ごとに対応してそれぞれ設定された移動軸の指令位置データとから時々刻々の移動軸の指令データを生成し、この移動指令データと回転位置データとから回転物の回転速度に同期する移動軸の指令速度データを生成して、生成した移動指令データと指令速度データに基づいて工具の位置を制御することである。
【0020】
ここで、第1のチャンネル加工手順記憶部56aと、第2のチャンネル加工手順記憶部56bと、第3のチャンネル加工手順記憶部56cに記憶されたNCプログラムにより、実際に作動させられる部分を図2に示す。第1のチャンネル加工手順記憶部56aに記憶されたNCプログラムにより、主軸回転用モータ11、被加工物送り用モータ31(不図示)、工具送りモータ21(不図示)が制御される。これによって、主軸S1は、矢印で示すZ1軸方向に移動制御されると共にC1回転方向に主軸回転が制御される。一方、工具TS1は、矢印で示すX1軸、Y軸方向に移動制御される。チャンネル1では、主軸台の移動制御、回転制御又は、工具TSを支持する刃物台の各矢印方向の移動制御、工具TSの中に回転工具が含まれていて、その制御が必要であるものの場合は回転等の制御を行う。第2のチャンネル加工手順記憶部56bに記憶されたNCプログラムにより、背面主軸回転モータ61、背面主軸移動用モータ41(不図示)、工具TS2の回転が制御される。これによって、背面主軸S2は、矢印で示すZ2軸方向、X2軸方向に移動制御されると共にC2回転方向に背面主軸回転が制御される。一方工具TS2そのものは、固定刃物台に設置されるものであって、バイトなどの非可動のものあるいは、ドリルなどの回転可能なものを取りつけ可能としているものである。ドリルなどの回転可能なものを使う場合には、第2のチャンネル加工手順記憶部56bに記憶されたNCプログラムにより、回転が制御される。第3のチャンネル加工手順記憶部56cに記憶されたNCプログラムにより、工具送りモータ21(不図示)が制御される。これによって、工具TS3は、矢印で示すX3,Y3,Z3軸方向に移動制御される。チャンネル3では、この工具TS3を支持する刃物台の移動制御あるいは、保持される工具の制御が必要な場合に回転等の制御を行う。尚、この実施の形態では、工具TS3は、チャンネル3に、TS2はチャンネル2に、TS1はチャンネル1に割り付けられているが、TS1あるいはTS3は、どのチャンネルで制御しても良く、必要に応じて適宜工具のチャンネル割り当ては変更できる。同様に主軸、背面主軸もチャンネル割り当ては動的に変更できる。
【0021】
NC部用RAM56の電子カムデータテーブル記憶部56dは、図3に示されるように、それぞれに識別番号Nが付与された複数の電子カムデータテーブルを記憶するものとなっている。識別番号Nが付与された各々の電子カムデータテーブルは、主軸回転用モータ11(主軸)の所定の累積回転数(A)毎に対応して設定された被加工物2の位置データ(Z)及び工具3の位置データ(X)の点群を記憶しておく為のものである。それぞれのカムデータテーブルには、加工終了を表す終了コードがそれぞれ記憶されている。なお、所定の累積回転数(A)は、主軸回転用モータ11(主軸)の所定回転角度毎(累積回転角度毎)に対応させておいてもよい。この場合、記憶容量が多くなる。
ROM57は、各種処理プログラムを記憶する記憶部であって、たとえばねじ切り加工を行う時の、所定時間間隔毎、例えば、1ミリ秒毎における被加工物2の移動位置及び工具3の移動位置を確定するための演算プログラムや、穴加工や切削加工等を行う時の、主軸回転用モータ11(主軸)の所定回転角度毎における被加工物、工具、及び穴加工用工具の移動位置を確定するための演算プログラムを記憶している。
【0022】
また、中央演算ユニット52は、ROM57内に記憶されたプログラムに基づいて、パルス信号発生回路53から出力されたパルス信号の発生回数をカウントし、カウント結果に基づいて主軸回転用モータ11(主軸)の累積回転数あるいは、累積回転角を算出する。
【0023】
PC部用RAM58は、中央演算ユニット52における各種演算の結果を読み出し可能に一時的に記憶するように構成されている。このPC部用RAM58は、最適データ変換プログラム記憶部58aが、プログラム作成ツールあるいは人手により作成されたNCプログラムを変換若しくは変更する時に、参照するデータの全てを格納している。その一部に、電子カムデータ記憶テーブル58bと、機械固有情報記憶部58cと、NCプログラム記憶部58dとが設けられている。尚、該部に記憶されるNCプログラムファイルそのものは、プログラム作成ツールあるいは、人手により予め作成されたものである。このようにして作成されたNCプログラムファイルは、プログラム作成ツールに準備される数値制御装置との通信機能あるいは、フレキシブルディスクなどのメディアを利用して数値制御装置に備えられるディスク読込装置を利用して部品の加工に先立ちロードされる。
【0024】
最適データ変換プログラム記憶部58aには、最適データ変換プログラムが格納されている。電子カムデータ記憶テーブル58bには、最適データ変換プログラムを実行したことによりNCプログラムが電子カムデータ化された際、作成データを図3に示される形態で格納している。機械固有情報記憶部58cには、工具補正値、NCプログラムに記述されるコマンドの実行に必要な時間や動作条件など最適データ変換プログラムが実行の時に参照するデータを格納している。NCプログラム記憶部58dには、最適データ変換プログラムの処理対象となるNCプログラムを格納している。
【0025】
次に、数値制御工作機械、特に数値制御装置内部で実行される本発明を含む制御について、説明をする。
本発明を含む制御を大まかに示すメインフローは図4に示される通りである。
まず、始めに、StepAにおいて、時間計測モジュールを実行する。この時間計測モジュールでは、NCコードで書かれているNC装置に記憶されているNCプログラムをシミュレートして、プログラム情報を取得保持する。具体的には、チャンネル1,2,3にて実行されるNCプログラムを最初から最後まで実行し、実行に要した時間を各ブロック毎に推定演算する。時間計測モジュールが測定するのは、NCプログラム上に記述されている待ち合せ処理の間の時間、工具選択時間である。
時間計測モジュールは、NC装置が、元々装備しているデータテーブルを利用して計算を行う。このデータテーブルは、各モータの加速度や、工具又はワークの位置に関する補正情報などの、それぞれについてのテーブルである。
【0026】
時間計測モジュールは、NCプログラムから、工具の座標値や、工具の送り速度や、主軸の回転速度、移動方法等を取得する。これらの情報を使用して、工具の移動距離、各座標での移動速度を算出し工具の移動軌跡を求める。前記工具の移動軌跡から、前記各モータの加速度を使用して移動時間を求める。NCプログラムに記載されている工具の座標値には、工具又はワークの位置に関する補正情報が含まれていない。そのため、工具の移動距離算出持に、NCプログラム上では記載されていない工具又はワークの位置に関する補正情報を加えて計算を行う。
【0027】
次に、StepA1において、StepAにて測定された時間データを、以降のStepでの処理に備えて読み込みを行う。StepBでは、NCプログラム記憶部58dに対して最適データ変換を行いたいNCプログラムを格納するべく、NCプログラムファイルの読み込みを行う。ここでの読み込みを行うことにより、実際に加工を行う為のNCプログラムを作成する元になるプログラムを保持する。つまり、オリジナルを保持することにより、変更をNCプログラム上検討できるようにする。
【0028】
StepCでは、NCプログラム上で同期加工を行うように指定されている箇所のうち、電子カムデータを呼び出して加工を行った方が、精度の向上、効率の向上あるいは加工が可能になる箇所を抽出するべく、NCプログラムを検索し、電子カムデータを呼び出す加工が必要である箇所があれば、その同期加工の電子カムデータ化を行う。
【0029】
StepDでは、更に、同期加工の電子カムデータ化を行う箇所以外の電子カムデータ化することが指定されている箇所の電子カムデータ化を行う。これは、プログラム作成ツールから或いは、人手で作成したNCプログラム内に、始めから電子カムデータを利用した方が良い加工箇所としてフラグを付与しておき、これを検索して電子カムデータ化を行うものである。加工例としては、ねじ切りあるいは、タップ加工などが挙げられる。
StepEでは、工具選択指令位置の最適化を行う。これは、NCプログラムに当初設定された工具選択指令が行われるブロックを基準にして考えた時に、工具選択指令位置を変更すれば、結果的に加工時間が短縮できるかを検討し、短縮できるのであれば、その指令位置を加工時間の短縮に繋がる位置に変更する。
【0030】
StepFでは、工具選択動作の最適化を行う。ここでは、他のチャンネルとの関係で見て、自チャンネルの工具の選択に時間的な余裕がある時には、工具をゆっくり選択(移動)させるように工具の移動を電子カムデータを利用して制御する。このようにすることにより、送り用のボールネジ、あるいは、刃物台を支持するベアリングなどに入力されるショック等の負荷を低減させるようにし、工作機械の寿命、加工部品の精度などにとって悪影響が出ないようにする。
【0031】
StepGでは、機械稼働用のプログラムファイルの作成を行うと共に、NCプログラム記憶部58d、電子カムデータ記憶テーブル58bに記憶されているデータのそれぞれを、第1,2,3チャンネル加工手順記憶部56a、56b、56cに振り分けて記憶させる一方、電子カムデータテーブル56dに転送する。尚、これらの一連の処理は、数値制御部51の操作パネル(不図示)に設けられるトランスフォーマボタン59によって起動する。これは、物理的な接点操作を伴うスイッチであっても良いし、モニターをタッチパネルタイプのものとして画面を指先で操作するものでも良い。更に、ネットワークコンピュータに数値制御部がネットワークを介して接続されるものである場合には、ネットワークコンピュータから指令される入力を判断して処理を起動させるものとしても良い。更に、上記StepCからGのそれぞれの処理について詳述する。
【0032】
1.1.StepCの処理の説明
図5(A)は,同期加工の電子データ化の処理を簡略的に示すメインフローである。
ここの処理は、大まかには、作成されたNCプログラム内に、電子カムデータを利用した同期加工を行う方が好ましいブロックを検出し、そのブロックを電子カムデータを利用するプログラムにプログラム化するものである。このようにすることによって、NCプログラムでは、チャンネル間の同期が十分に取れなく、カッターマークが生じるなどの不具合が生じる加工、あるいはNCプログラムでは実現不可能な加工があることに対して、これらの問題を解消できる利点がある。
本図フローチャートの説明を行う。
【0033】
Step1では、プログラムの開始に先立ち、処理に用いる変数である行番号B並びに、チャンネルCHを、それぞれ、B=0、CH=1にリセットする。次に、Step2では、同期加工における電子カムデータへの変換可能箇所を検索する処理を行う。この処理の結果Step3において変換可能箇所の存在有無を判定する。判定が可、つまり、変換可能箇所が存在する場合には、Step4において、該箇所の変換開始行番号A、変換終了行番号Bを取得する。Step5では、更に、取得された行番号A,行番号Bの間に記述されたNCプログラムを元にして制御軸が動作する軌跡の電子カムデータ化を行う。このデータ化が済んだならば、処理がまだ済んでいない行番号Bよりも後の行のNCプログラムを対象に、上述と同様の処理を繰り返す。一方、変換可能箇所が存在しないとしてStep3の判定がNとなった時には、全ての処理が完了したので、処理を終了し図4に示されるメインフローに処理を戻す。これらの処理については、後ほど詳述する。
【0034】
全体として、このように加工方法を変換することにより、図5(B)に示される加工において、加工時間の短縮を図りつつも、カッターマークが残ることなく製品を加工することが出来る効果が得られる。つまり、段付き棒71の形成と同時に溝75を形成したい場合に、加工時間の短縮要求を満足するためには、複数の刃物に順序を付けて加工を行う同期加工を行えば良い。例えば、この場合には、工具74が段付き部72の位置に来た時に、溝75を加工する工具73が加工を始める同期加工が行われるようにNCプログラムが作成されれば目的の形状が得られる。
【0035】
しかしながら、NCプログラムでは、通常このような作業を行わせる場合には、待ち合せ処理というものを利用することになり、工具74が実線で図示される位置に停止した状態が瞬間的にではあるが維持される為、図5(C)のA部拡大図に示されるように段付き部72に沿った位置に凹みが形成されることになる。この凹み分を許容する図面公差のものを加工している場合には、これで問題ないが、許容しない場合には、この加工方法を用いることは出来ない。また、同期させる加工位置を変えた場合、二点鎖線で示される工具74'の位置などでは、対向刃物で加工する場合には、工具73からの反力が工具74'の切込み量を増やす為、其の部分にすじ状の凹みが出来てしまうため、これが許容されない場合には、同期させる加工位置を変更するということも出来ない。
【0036】
このような場合に、同期加工の電子データ化の処理を行うことにより、実線で図示の工具74は、段付き部72における小径の部分からわずかに離れた位置から大径の側に向けて退避移動する期間に、言い換えると、その小径から大径の部分の間の位置に一瞬たりとも留まることなく移動している最中に、そのタイミングに同期させて工具73を突き出させて溝を加工することが出来る為、拡大図に示される凹みが形成されることなく、両者の加工が行える。このように工具74が退避する位置に対して工具73の切りこみを同期させるのは、上述のように工具73の切込みによって工具74の切込み量が変化することを避けるようにするためである。
【0037】
1.2.同期加工の電子カムデータに変換する箇所の検索の説明
ここで、図5のStep2に示される同期加工における電子カムデータへの変換可能箇所を検索する処理に関して、図6を用いて更に詳細に説明する。まず、メインとなる処理の流れから説明する。検索処理の開始後に、Step1において現在記憶されている行番号B、カレントチャンネルCHを読み込み、検索対象箇所を指定する。Step2では、カレントチャンネルCHにおいて、行番号B+1行以降での最初のタイミング指令行Tを検索し記憶する処理を行う(タイミング指令行Tは、NCプログラムの作成段階で、プログラマーが同期加工を行いたい位置に対して、他のチャンネルの同期させたい箇所に同一のタイミングコードを記述することで、同期加工を行うようにさせるためのコマンドを含む行である。コマンドの具体的な記述としては、例えば「timing=1」などのように記述し、同一タイミング番号のもの同士を同期させる。)。Step3では、Step2においてタイミング指令行Tの取得に成功したか否かの判定を行う。成功した場合には、そのままStep4に行き、タイミング指令行Tを挟む前後の待ち合わせ行A、Bを検索し記憶する。そこで更に、Step5において、行番号A,B間は同期加工中であるか否かについての判定を行う。この判定を行うことによりプログラマーが誤ってタイミング指令行Tを記述した場合であっても、誤って行A,B間が電子カムデータ化されることが防がれる。Step5での判定がNになった場合、つまり、同期加工中ではない場合又はプログラマーにより誤ってタイミング指令行Tが記述されていた場合には、行番号B+1以降のブロックに対して、Step2以降の処理を行うべく、Step2に処理を戻している。判定が同期加工中を示すYであった場合には、更に、Step6にて記憶された行番号A,Bの区間に電子カムデータに変換出来ないものがあるか否かについて判定する。この電子カムデータに変換できないものとは、具体的には、主軸の回転数変化を行わせる指令、潤滑液の噴射命令などの補機動作を行わせる所謂Mコードなどの指令である。電子カムデータに変換出来ないものが無い、つまり判定がNである場合には、続いて、Step7において、現在カレントチャンネルCHを解析中であるか否かについて判定を行う。ここでの判定がYである場合には、そのままStep8に進み、カレントチャンネルCHでのタイミング指令行Tを挟む待ち合わせ処理行A,Bに対応した他のチャンネルのタイミング指令行Tを挟む待ち合わせ処理行A,Bを全て検索し存在すれば記憶する。次に、Step9において同じタイミングコードが一つも存在しないか否かについての判定を行う。Nの判定、つまり同じタイミングコードが一つ以上存在する場合には、カレントチャンネルCH以外の行A,BのブロックにStep6以降の処理を繰り返す。この処理の場合、カレントチャンネルCHの行A,Bを対象にした処理ではないので、Step7における判定は、必ずNになり、Step10へと処理が進む。Step10では、電子カムデータ化すべき加工を行う箇所が存在したことを意味する存在フラグをONにし、同時に、Step6をNの判定でかつStep7をYの判定で抜けた行A,Bを記憶する。この後Step10で記憶された行A,Bが最後のA,Bであるか否かの判定を行う。Yの判定がされた場合には、Step12に進み、存在フラグON、カレントチャンネルCH、Step10で記憶された全ての行番号A,Bを記憶する。これらの値は最終的に、同期加工の電子カムデータ化処理に渡される。
【0038】
一方、Step6において、判定がY、つまり、記憶した行番号A,Bの間の加工が電子カムデータに変換できないものであった場合には、Step13に進み、現在カレントチャンネルCHを解析中であるのか否かの判定を行う。判定がY、つまり、カレントチャンネルCHを解析中であった場合には、タイミング指令行Tを含む行A,B間の加工は電子カムデータに変換できないので、改めて電子カムデータに変換出来る加工を検出するべく処理をStep2に戻す。判定がN、つまり、カレントチャンネルCHを解析中では無い場合、言い換えると、複数の行A,Bの組が検索抽出された場合(Step9の判定がN)には、Step14に進み、判定の対象である行A,Bの組が最後の組であるか否かの判定を行う。この判定を行うことによって、検索された複数の行A,Bの組の全てがStep6,7,10,11の処理が為されるようにする。そこで判定がNである場合、再びStep6に戻り上述した処理を繰り返す。判定がYであった場合は、Step15に進み存在フラグがONであるか否かの判定を行う。存在フラグがONではない場合には再び、Step2からの処理を繰り返す。又、存在フラグがONである場合には、Step16に進み、存在フラグON、カレントチャンネルCH、Step10で記憶された全ての行番号A,Bを次の処理に渡すべく記憶する。
尚、Step3にて、判定がNになった場合には、Step17に進み、次のチャンネルの存在有無を判定する。判定がYとなった場合には、Step18に進み次のチャンネルをカレントチャンネルCHに設定し、Step2からの処理を実行する。一方、判定がNとなった場合には、次のチャンネルが存在しないので検索処理を終了する。尚、Step6において、行A,B間に電子カムデータに変換できないものがあるかないかを判定する前に、行A,Bの間にタイミングコードが二つ以上存在するか否かの判定を行うと更に良い。いずれのタイミングコードに対して後に続く処理を行うかが適切に選択されないため、この段階で、以降の処理に対する対象から外しておく必要がある。又、行A,Bの間に3軸に対する移動指令があるか否かをも判定しておくと良い。この判定を行うことにより、該当するケースで適切に以降の処理がされない可能性を排除できる。
【0039】
繰り返しになるが、上述しているタイミングコードとは、タイミング指令行Tに単独で記述されるコマンドであり、Mコード、Gコードなどの他のコマンドと併記されない。他のチャンネルの同期させたい箇所に同一のタイミングコードを記述することで、同期加工を行うようにさせるためのコマンドである。具体的な記述としては、例えば「timing=1」などのように記述し、同一タイミング番号のもの同士を同期させる。
【0040】
1.3.同期加工の電子カムデータ化処理についての説明
次に、図7に示される同期加工の電子カムデータ化(図5Step5にて示される)処理を説明する。ここでは、まず、Step1において、図5におけるStep4にて取得されている行A,Bに基づき、それらA,Bの間の行に示されるデータ中に、どの制御軸の移動指令がされているかを特定するべく、いずれの制御軸の移動指令が存在するのかを調べる。次にStep2において、移動指令が存在するものに対して移動指令前の座標位置を取得し保持する。これは、行間の情報だけであると電子カムデータの作成に必要な情報が不足するので、これを防止する為である。Step3では、行A,B間のブロックを順に解析し要素配列を作成する。つまり、ワークあるいは工具が移動する軌跡と、移動時の速度を求める処理である。この際同時に、NCプログラム中に含まれる工具移動指令に対して、工具刃先位置の補正を行って工具座標を補正した上で、要素配列の作成処理を行う。このように補正を同時に行うことにより、NCプログラムを読み込んだ段階でも補正処理を行うのと異なり変換処理の時間の短縮を図ることが出来、利便性が向上する。次にStep4では、加減速最適化処理を行う。ここでは、主軸回転角と関連させた位置即ち点のデータを最適なワーク、あるいは工具の加減速が為されるように決定する。次にStep5では、チャンネル間の同期を取る為に、タイミング調整処理を行う。次にStep6では、要素配列を電子カムデータに変換する。ここでは、上述したように電子カムデータのテーブルを作成すると共に、該テーブルに識別番号の付与を行う。Step7では、NCプログラムの修正を行う。つまり、行A,Bの間に書かれるプログラムを削除し、行Aの次行に電子カムデータを呼ぶ為のサイクルコマンドを代入する。このサイクルコマンドは、電子カムデータテーブル毎に付与される識別番号を引数として、電子カムデータテーブルのデータを参照する。
【0041】
上述のように、電子カムデータ化されるのは、待ちあわせ処理を行うことが元のNCプログラムに指令される行Aと行Bの間である。待ちあわせ処理行A、Bのそれぞれを電子カムデータに変換する開始行と終了行にするのは、全部のチャンネルのNCプログラムが電子カムデータに変換される対象になる場合は勿論、ならない場合(つまり、いずれかのチャンネルはNCプログラムで加工される。)であっても、電子カムデータを利用して加工を行うとするなら、その制御の開始タイミングを揃える必要があるためである。逆に言えば、電子カムデータ化された加工を、他のチャンネルに対してもともとのNCプログラムで設定される同期関係を崩さず加工を行うとすれば、これ以外の位置で電子カムデータによる加工が開始されることはチャンネル間の同期関係を壊すことが懸念され、正常な加工を行い得ないことにつながる可能性がある。
【0042】
2.1.StepDの処理の説明
次に、図4tepDに示される同期以外の電子データに変換する箇所の電子データ化への処理について、説明する。この処理におけるメインのルーチンは、図8の通りである。処理が開始すると、まず、Step1において、検索する対象を規定する行番号A=0、B=0、チャンネルCH=1にイニシャライズを行う。次に、Step2において、同期加工以外の電子カムデータに変換する箇所を検索する処理を実行する。この処理において、電子カムデータに変換すべき箇所が見つけられたか否かを判定するべくStep3を実行する。Step3の判定がYとなった場合、つまり、変換すべき箇所が存在した場合には、Step4に進んで変換対象としてラベリング(後述する)された行A,Bを取得する。次に、そのままStep5に進み行A,Bの間に記述される同期加工以外の加工を指令する箇所の電子カムデータ化の処理を行う。処理終了後には、処理が完了した行番号Bを戻り値としてStep2以降を繰り返す。一方、Step3の判定がNとなった場合、つまり、変換すべき箇所が存在しない場合には、Step6に進みチャンネルCHをインクリメントし、次のチャンネルが検索されるように備える。Step7に進んだら、CH=4となったか否かを判定し、Yと判定された場合、つまり、全てのチャンネルCHのNCプログラムに対する処理が完了した場合には、処理を終了し、図4のメインルーチンに処理を戻す。Nの判定であった場合には、Step8に進み行番号B=0を代入して、改めて次チャンネルCHのNCプログラムに対しての処理を、Step2以降から繰り返す。
【0043】
2.2.同期以外の電子カムデータに変換する箇所の検索処理についての説明(図8Step2)
次に、図9に示される、同期以外の電子カムデータに変換する箇所の検索処理について、詳細に説明する。
まず、処理が開始されると、このサブルーチンを含むメインのルーチンの側で設定されている行番号BをStep1にて読み込む。続いて、Step2において、行番号B+1行以降での最初の電子カムデータ変換開始行Aを取得する。この変換開始行は、プログラムの作成段階において、予めラベルが付されたものになっている(ラベルは、NCプログラムの作成段階で、プログラマーが電子カムデータを利用した加工を行いたい位置に対して、ラベルとしての意味を持つコードを記述することで、NCプログラム部分の電子カムデータ化を行うようにさせるためのコメント文である。具体的な記述としては、例えば「DRILLINGSTART」、「DRILLING END」などのように記述して当該箇所を指定する。)。プログラムは、このラベルを検索することによって、変換開始行Aを抽出する。次にStep3に進み、変換開始行Aの取得が成功したか否かを判定する。判定がNであった、つまり、変換開始行が存在しない場合には、Step7に進んで存在しないをメインルーチンへの戻り値として処理を終了し、メインルーチン側に処理が復帰する。又、判定がYであった、つまり、変換開始行が存在した場合には、Step4に進んで行番号A+1以降での最初の電子データ変換終了行Bを取得する。ここでも上述と同様に、電子データ変換終了行にはラベルが付されており、プログラムは、このラベルを検索することによって、変換終了行Bを抽出する。
【0044】
更に、Step5に進んで取得した行番号A,Bの区間に電子カムデータに変換できないものがあるか否かの判定を行う。ここでの判定がN、つまり電子カムデータに変換不可なものはないの判定であった場合には、Step6に進んで存在するを戻り値として処理を終了する。一方、判定がY、つまり電子カムデータに変換できないものありの判定であった場合には、Stepに進みログファイル出力用にエラーフラグのセットを行う一方、処理が完了したところまでのStep4で取得した行番号Bを戻り値としてStep2以降を繰り返し実行すべく、処理をStep2に戻す。
【0045】
上述のようにラベルとは、具体的には、NCプログラムを記述するときに、単純に電子カムデータに変換することを指定するために、プログラム行に対して単独あるいは、何らかの指令に対して併記されるコメント文である。ここでは例えば「DRILLING START」、「DRILLING END」等のように該当加工動作を記述するプログラムの始めの部分と終わりの部分に記述する。この記述そのものは、プログラム作成ツールが、指定された加工方法(工具)に応じて自動的に記述するものであるのが好ましいが、人手でも入力できるようにしておくのがより好ましい。
【0046】
2.3.同期以外の箇所の電子カムデータ化についての説明
次に、図10に示される、同期以外の電子カムデータに変換する箇所の電子カムデータ化処理について、詳細に説明する。
まず、処理が開始されると、図9のStep4までで得られた、変換開始行A,変換終了行B及びこれらの行間にて指定されている加工種類をStep1にて読み込む。次に、Step2にて加工種類がねじ切りであるか否かの判定を行う。判定がY、つまり、ねじ切り加工が指定されている場合には、Step3に進みねじ切り処理を設定しStep6に進む。一方、判定がN、つまり、ねじ切り加工が指定されていない場合には、Step4に進み、更にタップ加工であるか否かの判定を行う。判定がY、つまり、タップ加工が指定されていた場合には、タップ加工処理をStep5にて設定しStep6に進む。ここでも判定がNとなった場合には、Step8に進みその他の加工処理を設定し、Step6に進む。
【0047】
Step6では、行AB間のデータを電子カムデータ化するに先立ち、現在の座標値を割り出す。ここで現在の座標値を割り出すのは、行ABの間に記述されるNCコードには、現在の座標値に関して記述されていないことが多く、行Aよりも手前の行を検索し座標値に関する情報を取得する必要があるためである。この処理が済んだ後にStep7に進み、得られている情報に基づいて、それぞれの制御軸の電子カムデータ化を実行し、行ABの間に記述されるNCプログラムを電子カムデータを参照しに行くサイクルコマンドへと書き換えを行い、このサブルーチンにおける処理を終了する。尚、ここにおける具体的な電子カムデータ処理は、図7におけるのと同様であり、これ以上の説明は省略した。
【0048】
3.1.StepEの処理についての説明
次に、図4stepEに示される工具選択指令位置の最適化処理について、説明する。この処理におけるメインのルーチンは、図11(A)の通りである。処理が開始すると、まず、Step1にて、行番号A=0,B=0,C=0、工具選択指令行T=0にイニシャライズを行う。尚、これ以降の処理では、チャンネル1,3を対象に処理を行うものになっている。このStepEの技術の適用を想定している図2のような数値制御工作機械では、その割付パターンで行くと、チャンネル1,3の如く、工具同士が対抗するように用いられるチャンネル同士で意味がより大きいためである。チャンネル2との関係では、意味が希薄であるため検討対象に含めていないが勿論これを含めるように検討しても良い。
【0049】
次に、Step2において、チャンネル1,3に対して記述されるNCプログラム中から処理対象になる待ち合せ行番号A,B,Cと工具選択(請求項1第2のStep相当)指令行Tを取得する。このStep3において、Step2の取得処理が成功したか否かの判定を行う。判定がN、つまり、取得が失敗した場合には、以降の処理を行う必要のある箇所が無かったとして図4に示されるメインフローに処理が復帰する。一方、判定がY、つまり、取得が成功した場合には、Step4に進み、取得した行A,B,Cと工具選択指令行Tを記憶する。その後、Step5に進み、工具選択指令位置を最適化する処理を行う。
【0050】
説明しやすくするために具体的な例を示す。
まず、チャンネル1、チャンネル3の動作を記述するNCコードが図11(B)のように、▲1▼、▲2▼、▲3▼の行で待ち合せの処理を行っているとする。(上述した待ち合わせ行番号Aは▲1▼に、Bは▲2▼に、Cは▲3▼にそれぞれ対応するものである。)
【0051】
この例では、チャンネル1の▲1▼▲2▼の間では、加工に要すると推定される時間は10秒必要と仮定する。又、チャンネル1の▲2▼▲3▼の間の加工に要すると推定される時間は8秒と仮定する。同様に、チャンネル3の▲1▼▲2▼の間では15秒、▲2▼▲3▼の間では5秒必要であると仮定する。
【0052】
今、チャンネル1の▲2▼▲3▼の間にT1で示される工具選択指令行があるとする。又、工具選択に要する時間は2秒であると仮定する。
ここで、待ち合せ処理間に発生する無駄時間を考えると、▲1▼▲2▼の間では、チャンネル1がチャンネル3の加工が終了するまで5秒待つ必要があることが図11(C)の表から理解される。又▲2▼▲3▼の間では、チャンネル3がチャンネル1の加工が終了するまで3秒待つ必要があることが図11(C)の表から理解される。つまり、▲1▼から▲3▼までの加工が終了するまでの間に無駄時間が8秒あることが分かる。
【0053】
ここで先のT1が工具選択に2秒しか時間が必要でないことに着目すると、T1の指令を▲1▼▲2▼の間で実行することに問題が生じなければ、無駄時間を2秒減らせることに注目する。この点を踏まえて、加工完了までに必要な時間がどれくらい変化するかを検討してみると、23秒必要であったのが、21秒になっており2秒の無駄時間の削減を達成できることが図11(C)の表のT1移動のケースから理解される。
【0054】
同様のことを今度は、チャンネル3にのみ工具選択指令行T3があったとして検討してみる。(チャンネル1には工具選択指令行がないという仮定。)この工具選択に必要とする時間は1秒と仮定し、T3指令を▲1▼▲2▼の間に移動したとして検討する。この場合は、図11(C)の表のT3移動のケースに示されるように、加工完了までに要する時間は、24秒になり、当初23秒であったのが1秒延びる結果になった。
【0055】
更に、今度は、チャンネル1,3のそれぞれに工具選択指令行T1,T3のそれぞれがあった場合に、両者を移動するケースを検討する。この場合は、図11(C)の表に示されるように、加工完了までに要する時間は、22秒になり、1秒の短縮が図られることになる。
上述のように、工具選択指令を動かした場合に、無駄時間が減る場合、増える場合があることが図11(C)の表から理解される。それぞれの場合毎に時間短縮効果を評価し、その結果に従い、加工時間を最短に出来るように工具選択指令行を移動させるというのが、この処理の目的である。
【0056】
3.2.チャンネル1,3に対して処理対象の待ち合せ行番号A,B,Cと工具選択指令行Tの取得処理の説明
次に、図12に示される、チャンネル1,3に対して処理対象の待ち合せ行番号A,B,Cと工具選択指令行Tの取得処理(図11のStep2)について、詳細に説明する。
【0057】
処理が開始されると、まず、Step1において、行番号A,B,C及び工具選択指令行Tの読み込みを行う。次に、Step2に進み、チャンネル1に対し、行B以降を検索し、最初に見つかった待ち合せ処理を行う行番号A,B,Cを取得し、チャンネル3のそれに対応したA,B,Cも取得する。ただし、ここでの処理は、このStep2を一回目に通過する時にはA,B,Cの全てが取得されることになるが、後述するように、2回目以降は、A=B、B=Cが代入されることになるので、Cのみが新規に取得されることになる。
【0058】
次にStep3に進むと、待ち合わせ行番号A,B,C取得が成功したか否かの判定を行う。判定がN、つまり、取得できなかった場合には、これ以降の処理は必要がないので、そのままリターンされて、図4のメインフローに処理が復帰する。一方、判定がYであった場合には、Step4に進み、待ち合せコードが有効なコードであるか否かを判定する。判定がYである、つまり、工具選択指令行を動かしても良いと判定された場合には、そのままStep5に進む。ここで、有効なコードとは、他チャンネルとの連携を持たない待ち合わせを意味する。Step4は、工具選択指令行を移動させるにあたり、待ち合わせ処理が、他のチャンネルとの連携を持つ待ち合わせであるかを判定し、連携がある場合に工具選択指令行が移動されないようにするための判定である。ここで言う連携があるとは、例えば、チャンネル1がチャンネル3側の工具を使用したい場合に、両チャンネルが一時加工を停止している状態を作り、其の後にNCコードで指定されている動作を他チャンネルの工具にさせる時などである。
【0059】
Step5に進むと、次の工具選択指令行Tに対して処理を行うため、チャンネル1,3において行B、C間に存在している一番行番号の小さい工具選択指令行Tを取得する。Step6に進むと、チャンネル1,3のどちらでも工具選択指令行Tが取得できなかったか否かを判定する。判定がN、つまり、工具選択指令行Tが取得できた場合には、そのまま、Step7に進み、更に、Step7にて、チャンネル1,3のどちらにおいても行Tは単独指令であるか否かを判定する。尚、単独指令とは、工具選択指令以外に、主軸回転数変更指令などの補機指令を含まない、純然な工具選択指令のみからなる指令の意味である。このように、単独指令であるか否かを判定するのは、工具選択指令のみであれば、それぞれの工具選択指令に対応した時間が、時間計測モジュールから与えられるが、その他の指令を含む行になっている場合には、その時間が不明であり、上述した無駄時間の計算が適切に行われない為である。
【0060】
Step7にて判定がY、つまり、工具選択指令が単独指令であった場合には、Step8に進みチャンネル1,3のどちらにおいても行Bと工具選択指令行Tとの間に軸移動指令が存在するか否かの判定を行う。この判定を行うことによって、軸移動指令の意味が変化してしまうことを防止している。工具選択指令行Tの前にある軸移動指令は、この工具選択指令によって選択された工具に対しての軸移動指令ではなく、軸移動指令が為された時点で選択されていた工具に対してのものである。よって、軸移動指令をまたがって工具選択指令位置を変更してしまうと本来のNCプログラムの意味が変わってしまうことになる。この点を考慮する為にこの判定は為されているのである.
【0061】
このStep8での判定がN、つまり、軸移動指令が存在しない場合であれば、本ルーチンでの処理を終了して、図11で示されるメインルーチンに処理が復帰する。
尚、Step4での判定がN、Step6での判定がY、Step7での判定がN、Step8での判定がYのいずれかである場合には、Step9にて行番号Bを行番号Aに、行番号Cを行番号Bに置換してStep2以降の処理を繰り返す。
【0062】
3.3.工具選択指令位置を最適化する処理についての説明
次に、図13に示される、チャンネル1,3に対して工具選択指令位置の最適化に伴い実行する評価処理について、詳細に説明する。
まず、図12の処理によって得られた行番号A,B,C及び工具選択指令行TをStep1において読み込む。次に、Step2において次のように定義される記号の各々の時間情報を時間計測モジュールから取得する。
【0063】
チャンネル1
行Aから行B間までの実行に要する時間:TimeAB1
行Bから行C間までの実行に擁する時間:TimeBC1
工具選択時間 :TimeT1
チャンネル3
行Aから行B間までの実行に要する時間:TimeAB3
行Bから行C間までの実行に擁する時間:TimeBC3
工具選択時間 :TimeT3
*工具選択指令行が存在しない場合にはTimeT1、TimeT3は0になる。
【0064】
次にStep3に進み、下記の数式に基づきOpti1(定義:チャンネル1側の工具選択指令のみを移動させた場合の最適度)を計算する。
Opti1=(|TimeAB1-TimeAB3|-|(TimeAB1+TimeT1)-TimeAB3|)
+(|TimeBC1-TimeBC3|-|(TimeBC1-TimeT1)-TimeBC3|)
次にStep4に進み、下記の数式に基づきOpti3(定義:チャンネル3側の工具選択指令のみを移動させた場合の最適度)を計算する。
Opti3=(|TimeAB1-TimeAB3|-|TimeAB1-(TimeAB3+TimeT3|)
+(|TimeBC1-TimeBC3|-|TimeBC1-(TimeBC3-TimeT3|)
次にStep5に進み、下記の数式に基づきOpti13(定義:チャンネル1と3の工具選択指令を移動させた場合の最適度)を計算する。
Opti13=(|TimeAB1-TimeAB3|-|(TimeAB1+TimeT1)-(TimeAB3+TimeT3|)
+(|TimeBC1-TimeBC3|-|(TimeBC1-TimeT1)-(TimeBC3-TimeT3)|)
【0065】
次に、Step6に進み、最適度Opti1と最適度Opti3の比較を行う。判定がY、つまり、最適度Opti1が最適度Opti3よりも大きい場合には、Step7に進み、更に、最適度Opti1と最適度Opti13との比較を行う。ここでも判定がY、つまり、最適度Opti1が最適度Opti13よりも大きい場合には、そのままStep8に進み最適度Opti1が正か否かの判定を行う。ここでの判定がYであった場合には、チャンネル1の工具選択指令行Tを行Bの直前行に移動する。このように直前行に移動することにより、上述した移動指令の前側に工具選択指令が移動して軸移動指令の意味合いが変化することを、工具選択指令が移動した後にあっても防止している。又Step7において、判定がN、つまり、最適度Opti13が最適度Opti1よりも大きい場合には、そのままStep11に進む。Step11にて最適度Opti13の正負の判定を行い、判定がN、つまり、負であった場合には上述と同様の理由により、工具選択指令行の移動は行わず、処理を図11のメインフローに復帰させる。又、判定がY、つまり正であった場合には、Step12に進みチャンネル1と3の工具選択指令行Tを行Bの直前行に移動する。 尚、Step8において最適度Opti1が負となる場合には無駄時間が延びる場合になるので、工具選択指令行の移動は行わず、処理を図No.11のメインフローに復帰させる。
【0066】
次に、Step6において判定がN、つまり、最適度Opti3が最適度Opti1よりも大きい場合を説明する。この場合には、Step10に進み最適度Opti3を更に最適度Opti13と比較し、ここでの判定がN、つまり最適度Opti13が最大である場合には、Step7での判定がNとなった時と同様に、Step11以降の処理を行う。更に、Step10における判定がY、つまり、最適度Opti3が最大である場合には、更に、Step13にて最適度Opti3の正負の判定を行い、判定がN、つまり、負であった場合には上述と同様の理由により、工具選択指令行の移動は行わず、処理を図No.11のメインフローに復帰させる。又、判定がY、つまり正であった場合には、Step14に進みチャンネル3の工具選択指令行Tを行Bの直前行に移動する。
【0067】
4.1.StepFの処理についての説明
次に、図4のstepFに示される工具選択動作の電子データ化への処理について、説明する。この処理におけるメインのルーチンは、図14の通りである。処理が開始すると、まず、Step1にて、行番号B=0、CH=1にするイニシャライズを行う。
【0068】
次に、Step2に進み、電子カムデータに変換する工具選択指令行Tとそれを挟む待ち合せ行A,Bを取得する。そのまま、Step3に進み、工具選択指令行Tとこれを挟む待ち合せ行A,Bが存在したか否かにつき判定する。判定がY、つまり、存在した場合には、続いてStep4にて行番号A,B,Tを読込、Step5において、工具選択動作の電子カムデータ化処理を実行し、取得された行B以降の行に対して同様の操作を行うべくStep2以降を繰り返す。又、Step3での判定がN、つまり、存在しなかった場合には、Step6に進み処理対象を次チャンネルに設定すべく、チャンネルCHを更新する。Step3において、存在しなかったということは、もともと、そのチャンネルに設定されたNCプログラムには、電子カムデータへの変換に値する工具選択指令行Tが存在しなかった、あるいは、存在したが、行B以降の残り行にはなかったということであるため、処理対象を次のチャンネルに設定するのである。
【0069】
更に、Step7に進んで、CH=4になったか否かについて判定する。CH=4ではない場合には、Step8に進み、行A,B、工具選択指令行Tをイニシャライズし、Step2以降を繰り返す。又、CH=4であった場合には、全部のチャンネルのNCプログラムの検索が終了したので、図のメインフローに処理が復帰する。
【0070】
4.2.電子カムデータに変換する工具選択指令行Tとそれを挟む待ち合せ行A,Bの取得処理についての説明
次に、図15に示される、電子データに変換する工具選択指令行Tとそれを挟む待ち合せ行A,Bを取得する処理を説明する。
【0071】
まず、処理が開始されると、Step1にて、行番号Bの読み込みが行われる。次に、Step2にて、行番号B+1以降で最初の工具選択単独指令行Tを取得する。次に、Step3に進み、工具選択指令行Tの取得を成功したか否かの判定を行う。判定がN、つまり、工具選択指令行Tを取得できなかった場合には、そのまま図14に示されるフローチャートに処理が移行する。又、Step3にて判定がY、つまり、工具選択指令行Tの取得に成功した場合には、Step4に進み工具選択指令行Tを挟む前後の待ち合せ行A,Bの取得を行う。Step5に進むと、待ち合せコードは有効なコードであるか否かの判定を行う。Step5での判定がN、つまり、待ち合せコードが有効でない場合にはStep2からの処理を改めて繰り返す。つまり、X1−X3同期など、チャンネル間での連携を持つように待ちあわせコードを設定している場合に、目的の処理を行うことで、その連携関係が損なわれてしまう処理が対象から除外されるようにしているものである。判定がY、つまり、待ち合せコードが有効な場合には、次に、Step6に進み、待ち合わせをしている他のチャンネルと比較し、待ち合せ間が一番長い時間になっているか否かを判定し、判定がY、つまり、一番長い時間になっている場合には、Step2からの処理を繰り返すべく処理をStep2に戻す。一方、判定がN、つまり、一番長い時間になっていない場合には、Step7に進み、工具選択指令行T、待ち合せ開始行A,終了行Bの三者を記憶保持する。このように、一番長い時間になっているか否かを判定することによって、その工具選択指令行Tによる工具選択に対して実際に余裕時間として存在する時間が他チャンネル工具選択に比較し、余裕があるかないかを判定している。尚、ここでは、NCプログラムの作成時に何らかの検討を最適データ変換プログラムにて行うように指定しているものになっていないため、工具選択指令行Tの取得がNCプログラム変換位置指定手段に一見該当しないように理解されるが、変換プログラム側が指定されたコマンドを検出するようにしており、NCプログラムの作成段階で指定するか、変換プログラム側での指定をするかの違いがあるのみである。プログラムで何らかの操作を加えたい要求に従い、プログラム側から特定されるという意味では同一の意味づけが為されている。このような処理を行うことにより、要は、電子カムデータ化される対象にされるわけである。
【0072】
次に、Step8に進み、現在チャンネル3を処理中であるか否かを判定する。判定がY、つまり、チャンネル3を処理中である時には、更に、Step9に進み、チャンネル1と待ち合せをしている場合であってチャンネル1側の工具選択が電子カムデータ化されているか否かを判定する。ここでの判定がY、つまり、チャンネル1側の工具選択が電子カムデータ化されている場合には、Step10に進み、Step7にて記憶保持した工具選択指令行T、待ち合せ開始行A,終了行Bの三者の記憶保持をキャンセルし、「存在しない」の側で処理を終了し、図14に示されるメインフローへ処理を復帰させる。つまり、チャンネル1とチャンネル3で同時に工具選択動作をさせることは希であり、又、両者を電子カムデータすることは非常に処理が複雑になり好ましくない。このため、既に、一方が電子カムデータされている場合には、処理の異常の発生を招かないためにも他方の電子カムデータ化は行わないようにしている。一方、Step9における判定がN、つまり、チャンネル1側の工具選択が電子カムデータ化されていない場合には、上述した不具合は生じないのでStep7にて取得したA,B,Tを保持し図に示される「存在する」の側で処理を終了し図14に示されるメインフローに処理を復帰させる。当然ながら、Step8にて判定がN、つまり、チャンネル3の処理中ではない場合であれば、少なくともチャンネル1側で行A,B,Tが取得されているので、「存在する」の側で処理を終了し図14に示されるメインフローに処理を復帰させる。
【0073】
4.3.工具選択動作の電子カムデータ化処理の説明
次に、図16に示される、工具選択動作の電子カムデータ化の処理を説明する。まず、処理が開始されると、Step1にて工具選択指令行T、待ち合せ開始行A,終了行Bの読み込みを行う。続いて、Step2に進み,他のチャンネルの一番長い待ち合せ間の時間との差ΔTを演算する。Step3に進んで、待ち合せ行A,B間に含まれる工具選択単独指令行とその選択時間を全て読み込まれているNCプログラムファイル及び時間計測モジュールから読み込む。次に、Step4に進んでΔTを選択時間の長さの比で分配する。次に、Step5に進み、工具選択動作を分配された時間分ゆっくりと動作するような電子カムデータに変換する。次に、Step6に進み、処理が完了した行番号Bを記憶保持し、もとのフローに処理が復帰する。
【0074】
このようにすることで、先に演算した工具選択指令毎に得られる余裕時間を、工具選択時間の比率に応じて工具選択時間として割り当てる。通常NCコード等によって指定される工具選択では、この時間が与えられたところで、工具選択は素早く移動される結果、時間を余らせるように実行されるが、本実施例では余裕時間を含み、割り当てられた時間全部を利用して工具選択が行われる為、工具選択そのものはNCコードを利用して行われるものと比較してゆっくりと為されることになる。その結果として、刃物台送り軸、あるいは、それを含む各回転部を支持する軸受け(ボールベアリングなど)に対してショック荷重などの入力が防止される。この結果、軸、ボールベアリングなどの寿命を延長させることが可能となり、加工部品の精度も上がる。
【0075】
一方、更に、具体的には、上記Step5において、工具の選択動作を加工終了に伴う退避の動作速度は速くし、工具の選択位置までへの移動などはゆっくりするように、動作毎で工具選択動作の速度を変更すると更に良い。これは、退避動作のみを従来と同様にしておくことにより、工具が他工具や被加工物などと干渉する危険をNCコード等によって指令される工具選択動作と同じ程度までに軽減するためである。以上の実施例の中では、数値制御工作機械における数値制御部に記憶されるプログラムファイルを一旦編集して、その後、NC部用RAM56に記憶させるようにしたが、NC部用RAM56からCPUがNCプログラムを読み出す段階において、読み出しと同時に上述した処理を実行してもよい。この場合は、NCプログラムを適宜先読みして解釈を行い上述の処理を行った上で数値制御工作機械を動作させると良い。更に、図17を用いて、本発明を具現化するシステムの一連の操作を説明する。まず、機外パソコンにインストールされたCAMソフトに対して、図面情報ファイルから図面情報を呼び出す操作を行う。図面情報が表示された画面上から、加工パス、加工工程、工具情報、ツーリング情報、加工指示等の入力を行う。上述したタイミング指令コード「timing=1」、ラベル「DRILLING START」、「DRILLING END」などは、基本的にはこの段階で入力される。タイミング指令コードは、作業者が画面を見て、画面のある部分を複数の工具で同時に加工する場合に、その複数の工具同士を同期させたいと判断した場合に、それらの工具を選択してタイミング指令コードを入力する。又、ラベルは、画面において、ドリルやタップなどの所定の工具を選んだ場合にCAMソフトがそれらが選択されたことを判断して作成されるNCプログラムに自動で記述される。尚、これによって作成されたNCプログラム自体を編集する機能はCAMソフトに当然備えられるもので、その編集機能を利用して直接ラベルを入力するあるいは削除するようにすることも可能である。ここで出来上がったNCプログラムを利用して3次元バーチャルシュミレーションを行う。これを行うことによって、工程の確認、工具同士の干渉あるいは工具と機体の干渉チェック、それぞれの工程の時間計測を行う。ここまでの確認がすんだならば、パソコンから数値制御工作機械に向けてNCプログラムをネットワークを介して転送する。転送されたNCプログラムは機上において一旦加工テストを行う。NCプログラムの修正を行う情報を得るためである。加工の結果に基づきNCプログラムの修正情報を数値制御装置に入力する。その後、トランスフォーマボタン59が押されて、ハイブリッドデータの作成が指令されると、最適データ変換プログラムは、この入力値を参照すると共に、機械固有の情報を参照する。ハイブリッドデータの生成が数値制御装置の画面に確認されたら、図面通りの所望の加工部品が作成されることを確認し、量産に入る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る数値制御工作機械の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る数値制御工作機械のチャンネル構成を示す図である。
【図3】制御ユニット部のRAMに含まれる電子カムデータテーブルの構成を説明する為の図である。
【図4】本発明が含まれる制御プログラムのメインのフローチャートである。
【図5】(A)は、図4における同期加工の電子データ化の処理のメインとなるフローチャートである。(B)は、本発明の実施形態に係る工作機械における、被加工物の加工動作の一例を説明する為の図である。(C)は、(B)におけるA部の拡大図である。
【図6】図5における、同期加工の電子カムデータに変換する箇所を検索する処理を説明するフローチャートである。
【図7】図5における行A、B間を電子カムデータ化する処理を説明するフローチャートである。
【図8】図4における同期加工による電子カムデータに変換する箇所以外の電子カムデータ化処理を説明するメインのフローチャートである。
【図9】図8における、同期加工以外の電子カムデータに変換する箇所を検索する処理を説明するフローチャートである。
【図10】図8における、同期加工以外の箇所の電子カムデータ化の処理を説明するフローチャートである。
【図11】(A)は、図4における、工具選択指令位置の最適化処理を説明するメインのフローチャートである。(B)は、この処理を適用して意味のある具体例を示す図である。(C)は、(B)の例の結果を示す表である。
【図12】図11における、チャンネル1,3に対して処理対象の待ち合せ行番号A,B,Cと工具選択指令行Tを取得する処理を説明するフローチャートである。
【図13】図11における、工具選択指令位置を最適化する処理を説明するフローチャートである。
【図14】図4における、工具選択動作の電子カムデータ化の処理を説明するフローチャートである。
【図15】図14における、電子カムデータに変換する工具選択指令行Tとそれを挟む待ち合せ処理行A,Bを取得する処理を説明するフローチャートである。
【図16】図14における、工具選択動作の電子カムデータ化の処理を説明するフローチャートである。
【図17】ハイブリッドデータが作成されるまでの一連の操作の流れを説明する図である。
【符号の説明】
1…数値制御工作機械、51…制御ユニット部、52…中央演算ユニット、56…NC部用RAM、56a…第1のチャンネル加工手順記憶部、56b…第2のチャンネル加工手順記憶部、56c…第3のチャンネル加工手順記憶部、56d…電子カムデータテーブル、57…ROM、58…PC部用RAM 58a…最適データ変換プログラム記憶部 58b…電子カムデータテーブル 58c…機械固有情報記憶部 58d…NCプログラム記憶部 59…トランスフォーマボタン。

Claims (4)

  1. 基準軸の回転量に対応する移動軸の位置データを定めた電子カムデータにより移動軸の位置制御が可能な数値制御工作機械において、
    数値制御工作機械にロードされたNCプログラムの加工テストを行うテスト手段と、
    該テスト手段による加工テストの結果に基づき修正情報を入力する修正情報入力手段と、
    該修正情報に基づいて前記NCプログラムを修正する修正手段と、
    該修正手段により修正が施されたNCプログラムの所定箇所を前記電子カムデータに変換する電子カムデータ化手段と、
    前記電子カムデータと前記NCプログラムとよりハイブリッドデータを作成するハイブリッドデータ作成手段と、
    を備えることを特徴とする数値制御工作機械。
  2. 前記電子カムデータ化手段は予め前記NCプログラムに規定された変換開始行と変換終了行に基づいて前記所定箇所を電子カムデータ化することを特徴とする請求項1に記載の数値制御工作機械。
  3. 前記所定箇所に基準軸の回転量に対応した移動軸の位置データとして表現できない指令が含まれているか否かにより電子カムデータ化の可否を反対する電子カムデータ化可否判定手段が更に備えられており、
    前記電子カムデータ化手段は該判定手段の判定結果に従い電子カムデータ化を行うようにしていることを特徴とする請求項2に記載の数値制御工作機械。
  4. 数値制御工作機械にロードされたNCプログラムを基準軸の回転量に対応する移動軸の位置データを定めた電子カムデータに変換する数値制御工作機械のデータ変換方法であって、前記ロードされたNCプログラムの加工テストを実行し、該加工テストの結果に基づき修正情報を入力し、該修正情報に基づいて前記NCプログラムを修正し、修正が施された前記NCプログラムの所定箇所を前記電子カムデータに変換し、前記電子カムデータと前記NCプログラムとよりハイブリッドデータを作成することを特徴とする数値制御工作機械のデータ変換方法。
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