JP3953551B2 - (メタ)アクリル系樹脂組成物およびその製造方法 - Google Patents
(メタ)アクリル系樹脂組成物およびその製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、重合性二重結合を有する(メタ)アクリルシラップを主成分とする(メタ)アクリル系樹脂組成物およびその製造方法に関するものである。さらに詳しくは、熱時強度に優れ、着色が少なく、貯蔵安定性に優れた(メタ)アクリル系樹脂組成物およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、(メタ)アクリル系重合体とビニル単量体との混合物、即ち、(メタ)アクリルシラップが用いられている。(メタ)アクリルシラップは、良好な耐候性と良好な外観を有する成形品を得ることができるため、人工大理石等の成形品を成形するための成形材料として特に好適に用いられる。
【0003】
(メタ)アクリルシラップの製造方法としては、従来、ポリメタクリルメタクリレート等のポリ(メタ)アクリル酸エステルを、メチルメタクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルに溶解させる方法や、メチルメタクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルを部分重合する方法等が用いられていた。
【0004】
しかしながら、上記従来の製造方法では、(メタ)アクリルシラップを重合したときに、分子が直鎖状に伸びるだけであるため、得られる硬化物の耐熱性や熱時強度が低いという問題があった。
【0005】
そこで、得られる硬化物の耐熱性や熱時強度を改善するために、(メタ)アクリルシラップ中の(メタ)アクリル系重合体に反応性二重結合を導入する方法が提案されている。上記方法によれば、(メタ)アクリルシラップを重合したときに、(メタ)アクリル系重合体が(メタ)アクリル酸エステルとの重合によって架橋される。
【0006】
(メタ)アクリルシラップ中の(メタ)アクリル系重合体に反応性二重結合が導入する方法としては、一般に、メチルメタクリレートのような(メタ)アクリル系単量体と、アクリル酸のようなカルボキシル基を含有する単量体とを部分重合させた後、不飽和エポキシ化合物を反応させる方法が用いられている。
【0007】
そして、上記の製造方法においては、重合性二重結合を効率的に導入するためには、カルボキシル基と不飽和エポキシ化合物とのエステル化反応を促進する触媒(以下、エステル化触媒と称する)の存在下で反応を行うことが不可欠である。上記エステル化触媒として、例えば、特開昭63−37101号公報には、三級アミン、四級アンモニウム塩、金属塩等が記載されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、エステル化触媒として三級アミンや四級アンモニウム塩を用いた場合には、得られる硬化物の着色が大きく、外観が悪いという問題点を有している。また、本願発明者等が検討した結果、エステル化触媒として、CoやFeを含む金属塩を用いた場合には、得られる硬化物の着色が大きい場合や、触媒作用が低く、得られる硬化物の熱時強度が低い場合があるという問題点も有している。
【0009】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、得られる硬化物の熱時強度に優れ、かつ、着色が少なく、貯蔵安定性に優れた(メタ)アクリル系樹脂組成物およびその製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本願発明者等は、上記の目的を達成すべく、得られる硬化物の熱時強度に優れ、かつ、着色が少なく、貯蔵安定性に優れた(メタ)アクリル系樹脂組成物およびその製造方法について鋭意検討した。その結果、カルボキシル基を含有する(メタ)アクリルシラップと、重合性二重結合を有するエポキシ化合物とを、Zn、SnおよびZrからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素を含有するエステル化触媒の存在下で反応させることにより、得られる硬化物の熱時強度に優れ、かつ、着色が少なく、貯蔵安定性に優れた(メタ)アクリル系樹脂組成物が得られることを見い出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
即ち、請求項1記載の発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物は、上記の課題を解決するために、(メタ)アクリル酸エステルの重合体とビニル単量体とからなり、上記((メタ)アクリル酸エステルの重合体および上記ビニル単量体の少なくとも一方がカルボキシル基を含有する(メタ)アクリルシラップに対して不飽和エポキシ化合物を用いて重合性二重結合を導入してなる(メタ)アクリルシラップと、上記重合性二重結合の導入を促進するためのZn、SnおよびZrからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素を含有する触媒とを含むことを特徴としている。
【0012】
上記構成によれば、得られる硬化物の熱時強度に優れ、かつ、着色が少なく、貯蔵安定性に優れた(メタ)アクリル系樹脂組成物を提供することができる。
【0013】
また、請求項2記載の発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物は、上記の課題を解決するために、(メタ)アクリル酸エステルの重合体とビニル単量体とからなり、上記(メタ)アクリル酸エステルの重合体および上記ビニル単量体の少なくとも一方がエステル結合を介して重合性二重結合を有する(メタ)アクリルシラップと、ZnおよびSnの少なくとも1つの元素を含有するエステル化触媒とを含むことを特徴としている。
【0014】
上記構成によれば、得られる硬化物の熱時強度に優れ、かつ、着色が少なく、貯蔵安定性に優れた(メタ)アクリル系樹脂組成物を提供することができる。
【0015】
さらに、請求項3記載の発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物の製造方法は、上記の課題を解決するために、(メタ)アクリル酸エステルの重合体とビニル単量体とからなり、上記(メタ)アクリル酸エステルの重合体および上記ビニル単量体の少なくとも一方がカルボキシル基を含有する(メタ)アクリルシラップと、不飽和エポキシ化合物とを、Zn、SnおよびZrからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素を含有する触媒の存在下で反応させることを特徴としている。
【0016】
請求項4記載の発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物の製造方法は、請求項1記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物の製造方法において、上記(メタ)アクリルシラップが、カルボキシル基を含有するビニル単量体と(メタ)アクリル酸エステルとを含む単量体成分を部分重合して得られたものであることを特徴としている。
【0017】
上記方法によれば、触媒による(メタ)アクリル系樹脂組成物の着色を防止でき、また、(メタ)アクリルシラップに対してより多くの重合性二重結合を導入することができる。従って、着色が少なく、貯蔵安定性に優れ、かつ、得られる硬化物の熱時強度に優れた(メタ)アクリル系樹脂組成物を得ることができる。
【0018】
以下に本発明を詳しく説明する。
本発明において、(メタ)アクリルシラップとは、(メタ)アクリル酸エステルの重合体とビニル単量体とからなる混合物を指すものとする。従って、カルボキシル基を含有する(メタ)アクリルシラップとは、(メタ)アクリル酸エステルの重合体とビニル単量体とからなり、(メタ)アクリル酸エステルの重合体およびビニル単量体の少なくとも一方がカルボキシル基を含有する混合物である。また、以下の説明においては、(メタ)アクリル酸エステルの重合体を(メタ)アクリル系重合体と称する。
【0019】
本発明にかかるカルボキシル基を含有する(メタ)アクリルシラップ(以下、カルボキシル基含有(メタ)アクリルシラップと称する)としては、カルボキシル基を含有する(メタ)アクリル系重合体とビニル単量体とからなる(メタ)アクリルシラップが好適である。
【0020】
上記のカルボキシル基を含有する(メタ)アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸エステルとカルボキシル基を含有する単量体とを含む単量体成分(以下、単に単量体成分と記す)を重合することにより得られる重合体である。
【0021】
上記の(メタ)アクリル酸エステルとしては、具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の塩基性(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら(メタ)アクリル酸エステルは、単独で用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0022】
上記例示の化合物のうち、メチルメタクリレート、および、メチルメタクリレートを主成分とする(メタ)アクリル酸エステルが特に好ましい。メチルメタクリレートを主成分とすることにより、(メタ)アクリル系樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物の耐候性、透明性、表面の光沢等の各種物性や、外観、安全性等をより一層向上させることができる。尚、(メタ)アクリル酸エステルとして塩基性(メタ)アクリル酸エステルを用いる場合には、塩基性(メタ)アクリル酸エステルに対して 100重量%以上の中性(メタ)アクリル酸エステルを混合して用いるのが好ましい。上記の中性(メタ)アクリル酸エステルとしては、前記の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル等を用いることができる。
【0023】
上記カルボキシル基を含有する単量体(以下、カルボキシル基含有単量体と称する)としては、一分子中に、重合可能な二重結合と、カルボキシル基とを含有する化合物であればよく、特に限定されるものではない。具体的には、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ビニル安息香酸等の不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸;これら不飽和ジカルボン酸のモノエステル;酸無水物のモノエステル等の長鎖カルボキシル基含有単量体等が挙げられる。上記の不飽和ジカルボン酸のモノエステルとしては、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノオクチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノブチル、フマル酸モノオクチル、シトラコン酸モノエチル等が挙げられる。上記の酸無水物のモノエステルとしては、コハク酸モノエステル、フタル酸モノエステル、ヘキサフタル酸モノエステル等が挙げられる。これらカルボキシル基含有単量体は、単独で用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0024】
尚、上記の長鎖カルボキシル基含有単量体は、ヒドロキシル基を含有するメタ)アクリル酸エステルのヒドロキシル基を、酸無水物でエステル化することによって得られる。上記酸無水物としては、無水コハク酸、無水フタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸等が挙げられる。上記のヒドロキシル基を含有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、2-ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレートへのε−カプロラクトン開環付加物または2-ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレートへのγ−ブチロラクトンの開環付加物等を用いることができる。
【0025】
カルボキシル基含有単量体の使用量は、(メタ)アクリル酸エステルとカルボキシル基含有単量体との合計を 100重量%として、 0.5重量%〜20重量%の範囲内であることが好ましく、1重量%〜15重量%の範囲内であることがより好ましく、3重量%〜10重量%の範囲内であることがさらに好ましい。カルボキシル基含有単量体の割合が 0.5重量%未満の場合には、カルボキシル基含有(メタ)アクリルシラップに不飽和エポキシ化合物を反応させることによって導入することができる重合性二重結合の数が制限される。従って、得られる硬化物の熱時強度等の物性が低下するおそれがある。カルボキシル基含有単量体の割合が20重量%を越える場合には、得られる硬化物の耐候性および耐水性が低下するおそれがある。
【0026】
上記単量体成分は、必要に応じてカルボキシル基を含有しないビニル化合物(モノマー)を含んでいる。上記のビニル化合物としては、重合可能な二重結合を含有する化合物であればよく、具体的には、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン等のスチレン系単量体;酢酸ビニル等のビニルエステル;アリルアルコール、エチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテル等のアリル化合物;(メタ)アクリルアミド;(メタ)アクリロニトリル;N-メトキシメチルアクリルアミド、N-エトキシメチルアクリルアミド等のN-アルコキシ置換(メタ)アクリルアミド;不飽和塩基性単量体;N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド等のマレイミド系単量体等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これらビニル化合物は、一種類のみを混合してもよく、また、二種類以上を適宜組み合わせて混合してもよい。(メタ)アクリル酸エステルにビニル化合物を混合する場合における両者の混合割合、即ち、上記単量体成分におけるビニル化合物の含有量は、ビニル化合物の種類や(メタ)アクリル酸エステルとの組み合わせ等にもよるが、50重量%以下が好ましい。
【0027】
上記単量体成分を重合させる際には、重合開始剤を使用することが望ましい。上記の重合開始剤としては、具体的には、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ -2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシオクトエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、クメンヒドロパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等の有機過酸化物; 2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2-フェニルアゾ -2,4-ジメチル -4-メトキシバレロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら重合開始剤は、単独で用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。単量体成分に対する重合開始剤の添加量等は、特に限定されるものではない。
【0028】
上記単量体成分を重合させる際には、重合体の平均分子量等を調節するために、連鎖移動剤を添加するのがより望ましい。上記連鎖移動剤としては、単量体成分の重合反応を極めて容易に制御できることから、チオール化合物が特に好適に用いられるが、特に限定されるものではなく、α−メチルスチレンダイマー、四塩化炭素等を用いることもできる。上記チオール化合物としては、具体的には、例えば、t-ブチルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン;チオフェノール、チオナフトール等の芳香族メルカプタン;チオグリコール酸;チオグリコール酸オクチル、エチレングリコールジチオグリコレート、トリメチロールプロパントリス-(チオグリコレート)、ペンタエリスリトールテトラキス-(チオグリコレート)等のチオグリコール酸アルキルエステル;β−メルカプトプロピオン酸;β−メルカプトプロピオン酸オクチル、1,4-ブタンジオールジ(β−チオプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス-(β−チオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス-(β−チオプロピオネート)等のβ−メルカプトプロピオン酸アルキルエステル等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら連鎖移動剤は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0029】
連鎖移動剤の使用量は、該連鎖移動剤の種類や(メタ)アクリル酸エステル等との組み合わせ等に応じて選択すればよく、特に限定されるものではないが、単量体成分に対して 0.1重量%〜15重量%の範囲内が好適である。
【0030】
単量体成分の重合方法については、特に限定されるものではないが、単量体成分の重合を途中で停止させる方法、即ち、部分重合が好ましい。これにより、カルボキシル基含有重合体と未反応の単量体成分との混合物が得られ、一段階でカルボキシル基含有(メタ)アクリルシラップを得ることができる。
【0031】
また、単量体成分の重合方法としては、例えば、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等の公知の重合方法が挙げられるが、塊状重合が特に好ましい。懸濁重合を採用する場合には、ポリビニルアルコール等の分散安定剤を用いて、水等の分散媒中に懸濁させればよい。上記の重合を行う際の反応温度や反応時間等の反応条件は、特に限定されるものではなく、例えば、公知の反応条件を採用することができる。尚、上記の重合は、窒素雰囲気下で行うことが好ましい。
【0032】
以上のようにして、カルボキシル基を含有する(メタ)アクリル系重合体(以下、カルボキシル基含有重合体と称する)を含む反応混合物が得られる。上記(メタ)アクリル系重合体の平均分子量は、重量平均分子量(Mw)が 6,000〜 1,000,000程度、数平均分子量(Mn)が 3,000〜 500,000程度であることが特に好ましい。
【0033】
本発明にかかるカルボキシル基含有(メタ)アクリルシラップは、カルボキシル基含有重合体とビニル単量体とからなっている。
【0034】
上記ビニル単量体は、重合可能な二重結合を有する化合物であれば、特に限定されるものではない。上記ビニル単量体としては、具体的には、前記の(メタ)アクリル酸エステル、カルボキシル基含有単量体、ビニル化合物等が挙げられる。これらのうち、メタクリル酸アルキルエステル、スチレン系単量体が特に好ましい。さらに、メタクリル酸アルキルエステルとしては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、s-ブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレートが特に好ましく、スチレン系単量体としては、スチレンが特に好ましい。これにより、(メタ)アクリル系樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物の耐候性、透明性、表面の光沢等の各種物性や、外観、安全性等をより一層向上させることができる。これらビニル単量体は、単独で用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0035】
上記ビニル単量体は、前記の単量体成分と同じであってもよく、異なっていてもよい。従って、単量体成分の部分重合により得られた未反応の単量体成分を含む反応混合物は、カルボキシル基含有(メタ)アクリルシラップとして好適に用いることができる。また、ビニル単量体が単量体成分と異なるカルボキシル基含有(メタ)アクリルシラップは、例えば、前記の反応混合物から単離したカルボキシル基含有重合体とビニル単量体とを混合する方法等によって得られる。
【0036】
カルボキシル基含有(メタ)アクリルシラップにおけるカルボキシル基含有重合体とビニル単量体との割合(比率)は、両者の合計量を 100重量%として、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系重合体が7重量%〜80重量%の範囲内、ビニル単量体が93重量%〜20重量%の範囲内となるように調節するのが好ましい。
【0037】
尚、カルボキシル基含有(メタ)アクリルシラップは、(メタ)アクリル系重合体とカルボキシル基を含有する単量体成分とからなる(メタ)アクリルシラップであってもかまわないが、より好ましくは、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系重合体とビニル単量体からなる(メタ)アクリルシラップである。
【0038】
本発明にかかる(メタ)アクリル系樹脂組成物の製造方法においては、カルボキシル基含有(メタ)アクリルシラップと、不飽和エポキシ化合物とを、Zn、SnおよびZrからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素を含有する触媒の存在下で反応させる。
【0039】
これにより、カルボキシル基含有重合体が有するカルボキシル基に対し、不飽和エポキシ化合物が有するエポキシ基が反応して開環するエステル化反応によって、重合性二重結合を導入することができる。そして、カルボキシル基含有重合体を含むカルボキシル基含有(メタ)アクリルシラップに重合性二重結合を導入すると、重合性二重結合を有する側鎖がエステル結合を介して主鎖に結合した(メタ)アクリル系重合体を含む(メタ)アクリル系樹脂組成物が得られる。また、カルボキシル基を含有するビニル単量体を含むカルボキシル基含有(メタ)アクリルシラップに重合性二重結合を導入すると、重合性二重結合を有する分子鎖がエステル結合を介して結合したビニル単量体を含む(メタ)アクリル系樹脂組成物が得られる。
【0040】
上記不飽和エポキシ化合物は、カルボキシル基と反応可能なエポキシ基と、重合性の二重結合とを有する化合物であればよい。上記不飽和エポキシ化合物としては、具体的には、アリルグリシジルエーテル;グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート;エポキシ樹脂のモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これら化合物は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0041】
上記不飽和エポキシ化合物の使用量は、カルボキシル基含有(メタ)アクリルシラップとの組み合わせ等に応じて設定すればよく、特に限定されるものではないが、カルボキシル基含有(メタ)アクリルシラップの製造に用いたカルボキシル基含有単量体に対して 0.5倍モル〜2倍モルの範囲内が好ましく、 0.8倍モル〜 1.5倍モルの範囲内がより好ましい。
【0042】
上記触媒は、Zn、SnおよびZrからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素を含有する金属化合物(以下、単に金属化合物と記す)である。上記金属化合物は、触媒活性が高く、主にカルボキシル基含有(メタ)アクリルシラップが有するカルボキシル基と不飽和エポキシ化合物との反応を促進することができ、また、(メタ)アクリル系樹脂組成物を着色させることがない。さらに、上記金属化合物を用いることにより、触媒による(メタ)アクリル系樹脂組成物の貯蔵安定性の低下を防止することができる。
【0043】
上記金属化合物としては、Zn、SnおよびZrからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素を含有する無機金属化合物、オキソ酸金属塩、ポリオキソ酸金属塩、有機金属化合物、有機酸金属塩、金属錯塩等を用いることができる。
【0044】
上記無機金属化合物としては、Zn、SnおよびZrからなる群より選ばれる少なくとも1つの金属の金属フッ化物、金属塩化物、金属臭化物、金属ヨウ化物等の金属ハロゲン化物;金属酸化物、金属硫化物等の金属カルコゲン化物;金属窒化物;金属リン化物;金属砒化物;金属炭化物;金属ケイ化物;金属ホウ化物;金属シアン化物;金属水酸化物;金属塩化酸化物等を用いることができる。上記無機金属化合物としては、具体的には、塩化亜鉛、酸化ジルコニウム、硫化スズ等が挙げられる。
【0045】
上記オキソ酸金属塩としては、Zn、SnおよびZrからなる群より選ばれる少なくとも1つの金属の硫酸金属塩、硝酸金属塩、リン酸金属塩、ホスフィン酸金属塩、ホスホン酸金属塩、メタリン酸金属塩、ホウ酸金属塩、塩素酸金属塩、臭素酸金属塩、ヨウ素酸金属塩、ケイ酸金属塩等を用いることができる。上記オキソ酸金属塩としては、具体的には、硫酸スズ、リン酸亜鉛、硝酸ジルコニウム等が挙げられる。尚、オキソ酸金属塩には、リン酸水素亜鉛のような水素塩も含まれるものとする。
【0046】
上記ポリオキソ酸金属塩としては、Zn、SnおよびZrからなる群より選ばれる少なくとも1つの金属のポリリン酸金属塩、ポリホウ酸金属塩、ポリニオブ酸金属塩、ポリタンタル酸金属塩、ポリモリブデン酸金属塩、ポリバナジン酸金属塩、ポリタングステン酸金属塩等を用いることができる。上記ポリオキソ酸金属塩としては、具体的には、ポリリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0047】
上記有機金属化合物としては、一般式(1)
M−(R)n …(1)
(上記式中、Mは、Zn、SnおよびZrからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素であり、Rは、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ等の有機基であり、nは1〜6の整数である。)
で表される有機金属化合物を用いることができる。上記有機金属化合物としては、具体的には、ジエチル亜鉛、テトラエトキシジルコニウム等が挙げられる。
【0048】
上記有機酸金属塩としては、金属石鹸を用いることができる。上記金属石鹸としては、Zn、SnおよびZrからなる群より選ばれる少なくとも1つの金属の脂肪酸金属塩(ラウリル酸金属塩、ミリスチン酸金属塩、パルミチン酸金属塩、ステアリン酸金属塩、オレイン酸金属塩等)、ナフテン酸金属塩、オクチル酸金属塩、スルホン酸金属塩、硫酸エステル金属塩、リン酸エステル金属塩等を用いることができる。上記金属石鹸としては、具体的には、オクチル酸亜鉛、ステアリンスズ等が挙げられる。
【0049】
上記有機酸金属塩は、金属石鹸以外であってもよい。金属石鹸以外の有機酸金属塩としては、Zn、SnおよびZrからなる群より選ばれる少なくとも1つの金属の酢酸金属塩、安息香酸金属塩、サリチル酸金属塩、シュウ酸金属塩、酒石酸金属塩、乳酸金属塩、クエン酸金属塩等を用いることができる。金属石鹸以外の有機酸金属塩としては、具体的には、酢酸亜鉛、サリチル酸スズ等が挙げられる。
【0050】
上記金属錯塩としては、一般式(2)
M−(L)n …(2)
(上記式中、Mは、Zn、SnおよびZrからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素であり、Lは、アセチルアセトン等の配位子、nは1〜6の整数である。)
で表される金属錯塩を用いることができる。上記有機金属化合物としては、具体的には、アセチルアセトン亜鉛等が挙げられる。
【0051】
上記金属化合物の使用量は、その種類やカルボキシル基含有(メタ)アクリルシラップ等との組み合わせ等に応じて設定すればよく、特に限定されるものではないが、カルボキシル基含有(メタ)アクリルシラップ 100重量部に対して、0.01重量部〜5重量部の範囲内が好ましく、 0.1重量部〜3重量部の範囲内がより好ましい。
【0052】
上記エステル化反応を行う際には、重合禁止剤を共存させてもよい。上記重合禁止剤としては、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、メトキシハイドロキノン、 tert-ブチルハイドロキノン等を用いることができる。上記エステル化反応を行う際には、溶媒を用いることができる。上記溶媒としては、水および/または有機溶媒を用いることができる。
【0053】
上記エステル化反応においてカルボキシル基含有(メタ)アクリルシラップ、不飽和エポキシ化合物、および金属化合物を混合する順序や方法は、特に限定されるものではなく、カルボキシル基含有(メタ)アクリルシラップと不飽和エポキシ化合物との反応時に金属化合物が存在していればよい。
【0054】
以上のようにして、エステル結合を介して重合性二重結合が導入された(メタ)アクリルシラップ(以下、単に(メタ)アクリルシラップと記す)と、Zn、SnおよびZrからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素を含有する触媒とを含む反応混合物、即ち、本発明にかかる(メタ)アクリル系樹脂組成物が得られる。
【0055】
尚、(メタ)アクリルシラップ中の(メタ)アクリル系重合体にエステル結合を介して重合性二重結合を導入する方法は、エポキシ基を含有する(メタ)アクリル系重合体に対し、そのエポキシ基に前記のカルボキシル基含有単量体を反応させる方法であってもよい。
【0056】
上記構成によれば、触媒による(メタ)アクリル系樹脂組成物の着色を防止できる。また、(メタ)アクリルシラップに対してより多くの重合性二重結合が導入されているので、(メタ)アクリル系樹脂組成物を硬化させることにより、熱時強度に優れた硬化物を得ることができる。さらに、(メタ)アクリル系樹脂組成物は、触媒による貯蔵安定性の低下が防止されており、貯蔵安定性に優れている。
【0057】
(メタ)アクリル系樹脂組成物が、重合性二重結合が導入された(メタ)アクリル系重合体を含む場合には、該(メタ)アクリル系重合体の二重結合当量、即ち、重合性二重結合1個当たりの分子量は、 200〜10,000の範囲内であることが好ましく、 1,000〜 8,000の範囲内であることがより好ましく、 2,000〜 5,000であることが最も好ましい。(メタ)アクリル系重合体の二重結合当量が 200未満であると、(メタ)アクリル系樹脂組成物を硬化して得られる硬化物が表面平滑性、光沢等の表面性に劣る場合がある。一方、(メタ)アクリル系重合体の二重結合当量が10,000を超えると、(メタ)アクリル系樹脂組成物を硬化させることにより得られる硬化物の熱時強度が低下するおそれがある。さらに、(メタ)アクリル系重合体の二重結合当量を上記範囲内にすることによって、得られる硬化物にクラックが発生することを抑制できる。
【0058】
また、(メタ)アクリル系樹脂組成物中の(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量(Mw)は、 3,000〜 500,000の範囲内であることが好ましく、 5,000〜 100,000の範囲内であることがより好ましく、10,000〜40,000であることが最も好ましい。(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量(Mw)が 3,000未満であると、(メタ)アクリル系樹脂組成物の硬化物の物性が低下する。(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量(Mw)が 500,000を超えると、(メタ)アクリル系樹脂組成物の粘度が高くなり過ぎ、成形作業等の作業性が低下する。
【0059】
本発明にかかる(メタ)アクリル系樹脂組成物は、シートモールディングコンパウンド(以下、SMCと記す)やバルクモールディングコンパウンド(以下、BMCと記す)、プレミックス材料、注型材料、引抜き材料、射出成形材料、押出し成形材料等の成形材料として特に好適である。
【0060】
本発明にかかる重合性二重結合が導入された(メタ)アクリル系重合体を含む(メタ)アクリル系樹脂組成物は、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、およびゴムからなる群より選ばれる少なくとも1種の高分子(以下、熱可塑性高分子と称する)を含有していてもよく、その場合、上記熱可塑性高分子が(メタ)アクリルシラップ中に分散しているのが、より望ましい。
【0061】
上記構成によれば、熱可塑性高分子が、(メタ)アクリルシラップ中に分散しているので、硬化時に熱膨張することによって(メタ)アクリル系樹脂組成物の収縮を効率的に抑制することができる。この結果、上記(メタ)アクリル系樹脂組成物は、硬化時の体積収縮率が低く、また、(メタ)アクリル系樹脂組成物を硬化させることにより、表面平滑性、光沢等の表面性に優れた硬化物を得ることができる。
【0062】
上記熱可塑性高分子は、(メタ)アクリルシラップ中に分散し、(メタ)アクリルシラップの加熱硬化時に膨張して、(メタ)アクリル系樹脂組成物の収縮を抑制することができる熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、およびゴムからなる群より選ばれる少なくとも1種の高分子であればよい。
【0063】
ここで、熱可塑性エラストマーは、分子構造内に、弾性を有するゴム成分(軟質成分)と、塑性変形を防止するための樹脂成分(硬質成分)とを有し、常温でゴム弾性を示し、高温で可塑性を示す熱可塑性の高分子である。また、熱可塑性樹脂は、分子構造内に、樹脂成分(硬質成分)のみを有し、常温でゴム弾性を示さない熱可塑性の高分子である。さらに、ゴムは、常温および高温でゴム弾性を示す高分子である。
【0064】
上記熱可塑性エラストマーは、(メタ)アクリルシラップの種類に応じて選択すればよく、特に限定されるものではないが、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体(SEPS)、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレン共重合体(SEBS)、無水マレイン酸変性スチレン・エチレン・ブチレン・スチレン共重合体(MA変性SEBS)、スチレン・イソプレン・スチレン共重合体(SIS)、スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体(SBS)、スチレン・エチレン・プロピレン共重合体(SEP)等のスチレン系熱可塑性エラストマー;ポリエステル系熱可塑性エラストマー;ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらのうち、スチレン系熱可塑性エラストマーが特に好ましい。上記スチレン系熱可塑性エラストマーのスチレン含有率は、(メタ)アクリルシラップ中に含まれるビニル単量体が、メチルメタクリレートおよび/またはスチレンである場合には、10〜25%の範囲内が好ましく、13〜20%の範囲内がより好ましい。(メタ)アクリルシラップ中に含まれるビニル単量体が、メチルメタクリレートおよびスチレン以外の単量体、例えばt-ブチルメタクリレートである場合には、上記スチレン系熱可塑性エラストマーのスチレン含有率は、10〜40%の範囲内が好ましく、13〜30%の範囲内がより好ましい。これにより、熱可塑性エラストマーがさらに安定的に(メタ)アクリルシラップ中に分散するので、(メタ)アクリルシラップの加熱硬化時に効率的に膨張することができる。従って、(メタ)アクリル系樹脂組成物の収縮をさらに効率的に抑制することができる。これら熱可塑性エラストマーは、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。尚、上記スチレン系熱可塑性エラストマーは、直鎖状であってもよく、ラジアル状であってもよい。
【0065】
上記熱可塑性樹脂は、(メタ)アクリルシラップの種類に応じて選択すればよく、特に限定されるものではないが、酸変性ポリ酢酸ビニル(酸変性PVAc)、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体(VCl−VAc)、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、セルロースアセテートブチレート(CAB)、アクリロニトリル・エチレンプロピレンジエンゴム・スチレン共重合体(AES)、アクリルゴム・アクリロニトリル・スチレン共重合体(AAS)等が挙げられる。これら熱可塑性樹脂は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0066】
上記ゴムは、(メタ)アクリルシラップの種類に応じて選択すればよく、特に限定されるものではないが、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、水素添加スチレン・ブタジエンゴム(HSBR)、ニトリル・ブタジエンゴム(NBR)、ブタジエンゴム(BR)、天然ゴム、イソプレンゴム等のジエン系ゴム;クロロプレンゴム;ブチルゴム;エチレン−プロピレンゴム;アクリルゴム(ACM);ウレタンゴム等が挙げられる。これらゴムは、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0067】
上記の熱可塑性高分子のガラス転移温度(以下、Tgと記す)は、−100 ℃〜80℃であることが好ましく、−70℃〜30℃であることがより好ましく、−60℃〜0℃であることが最も好ましい。上記熱可塑性高分子のTgが−100 ℃未満であると、(メタ)アクリル系樹脂組成物を硬化して得られる硬化物の表面光沢が低下する。一方、上記熱可塑性高分子のTgが80℃を超えると、熱可塑性高分子が熱膨張しにくくなり、(メタ)アクリル系樹脂組成物を低収縮化する効果が不十分となる。尚、本発明において、熱可塑性高分子のTgとは、熱可塑性高分子が熱可塑性エラストマーである場合には、ゴム成分のTg、即ち、低温側のTgを表すものとする。
【0068】
上記熱可塑性高分子の添加量は、(メタ)アクリルシラップと熱可塑性高分子との合計を 100重量部として、2〜50重量%であることが好ましく、5〜30重量%であることがより好ましく、10〜20重量%であることが最も好ましい。熱可塑性高分子の添加量が2重量%未満であると、(メタ)アクリル系樹脂組成物の収縮を抑制する効果が不十分となる。従って、硬化時の体積収縮率を十分低下させることができず、表面性に優れた硬化物を得ることができないおそれがある。一方、上記熱可塑性高分子の添加量が50重量%を超えると、粘度が上昇し過ぎてコンパウンドの作成が困難となる。
【0069】
上記熱可塑性高分子は、(メタ)アクリルシラップ中に分散していればよいが、粒径が5nm〜 800μmの分散相を形成していることが好ましく、粒径が50nm〜 500μmの分散相を形成していることがより好ましく、粒径が 100nm〜 100μmの分散相を形成していることがさらに好ましい。
【0070】
本発明にかかる(メタ)アクリル系樹脂組成物には、熱可塑性高分子が(メタ)アクリルシラップに分散した状態を安定化させるために、分散安定剤を添加してもよい。これにより、さらに広範囲の(メタ)アクリルシラップと熱可塑性高分子との組み合わせが可能となる。上記分散安定剤は、分子内に、(メタ)アクリルシラップとの親和性が高い部分と、熱可塑性高分子との親和性が高い部分とを有する重合体であればよい。具体的には、例えば、(メタ)アクリルシラップが(メタ)アクリル酸エステルを主成分とし、熱可塑性高分子がスチレン系熱可塑性エラストマーである場合には、スチレン・酢酸ビニル共重合体やスチレン・メタクリル酸メチル共重合体等が好適である。
【0071】
本発明にかかる(メタ)アクリルシラップに熱可塑性高分子を分散させる方法としては、(メタ)アクリルシラップに熱可塑性高分子を添加して攪拌する方法;前記の単量体成分に熱可塑性高分子を添加して攪拌した後、重合する方法;ビニル単量体に熱可塑性高分子を添加して攪拌した後、(メタ)アクリル系重合体を添加する方法;ビニル単量体に熱可塑性高分子を添加して攪拌した後、(メタ)アクリルシラップを添加する方法等を用いることができる。これらの方法のうち、(メタ)アクリルシラップに熱可塑性高分子を添加して攪拌する方法が、製造上最も簡便で効率良く(メタ)アクリル系樹脂組成物を得ることができるため、好ましい。上記方法において、攪拌は、例えば、高速攪拌機を用いて10,000rpm 程度の攪拌速度で行われる。また、攪拌時間については、攪拌速度等に応じて適宜選択すればよいが、1分以上が好ましく、10分以上がより好ましい。
【0072】
上記(メタ)アクリル系樹脂組成物は、成形材料として用いられる場合、必要に応じて、増粘剤や、コハク酸誘導体、補強材等を含んでいてもよい。尚、以下の説明においては、(メタ)アクリル系樹脂組成物における補強材以外の成分をコンパウンドと称することにする。
【0073】
上記の増粘剤としては、具体的には、例えば、酸化マグネシウム、酸化カルシウム等のアルカリ土類金属酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら増粘剤は、単独で用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。増粘剤の使用量は、その種類や(メタ)アクリルシラップとの組み合わせ、(メタ)アクリル系樹脂組成物の用途等にもよるが、(メタ)アクリルシラップ 100重量部に対して、5重量部以下の範囲内が好ましい。上記の範囲内で増粘剤を使用することにより、コンパウンドの増粘後の粘度を、成形作業等に好適な所定の値に設定することができる。増粘剤の使用量が5重量部よりも多い場合には、コンパウンドの増粘後の粘度が高くなり過ぎ、成形作業等の作業性が低下すると共に、得られる成形品の耐候性および耐水性が低下するおそれがある。
【0074】
上記のコハク酸誘導体は、増粘剤による過剰な増粘挙動、特に初期の増粘挙動を抑制する働きを備えている。コハク酸誘導体は、分子内にコハク酸骨格またはコハク酸無水物骨格を備え、かつ、該骨格のエチレン基部分に、アルキル基、アルケニル基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基等の置換基を有する化合物であればよく、特に限定されるものではないが、全炭素数が8〜30である化合物が好ましい。全炭素数が7以下のコハク酸誘導体は、(メタ)アクリルシラップに対する溶解性に劣る。また、全炭素数が31以上のコハク酸誘導体は、該コハク酸誘導体を使用することにより期待される作用・効果が乏しくなる。つまり、増粘剤による過剰な増粘挙動を抑制する効果が低い。
【0075】
コハク酸誘導体としては、具体的には、例えば、ヘキシルコハク酸、ヘプチルコハク酸、オクチルコハク酸、ノニルコハク酸、デシルコハク酸、ドデシルコハク酸、テトラデシルコハク酸、ペンタデシルコハク酸、ヘキサデシルコハク酸、ヘプタデシルコハク酸、オクタデシルコハク酸、ペンタドデシルコハク酸、エイコシルコハク酸等の炭素数が4以上のアルキル基を有する化合物;ヘキセニルコハク酸、ヘプテニルコハク酸、オクテニルコハク酸、ノネニルコハク酸、デセニルコハク酸、ドデセニルコハク酸、テトラデセニルコハク酸、ペンタデセニルコハク酸、ヘキサデセニルコハク酸、ヘプタデセニルコハク酸、オクタデセニルコハク酸、ペンタドデセニルコハク酸、エイコセニルコハク酸等のアルケニル基を有する化合物;シクロドデシルコハク酸、シクロドデセニルコハク酸等の脂環式炭化水素基を有する化合物;ジフェニルブテニルコハク酸等の芳香族炭化水素基を有する化合物;およびこれらコハク酸の無水物等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これらコハク酸誘導体は、単独で用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。尚、コハク酸誘導体の調製方法は、特に限定されるものではない。
【0076】
コハク酸誘導体の添加量は、その種類や、(メタ)アクリルシラップおよび増粘剤等との組み合わせ、(メタ)アクリル系樹脂組成物の用途等にもよるが、(メタ)アクリルシラップ 100重量部に対して、0.01重量部〜10重量部の範囲内が好ましい。コハク酸誘導体の添加量が0.01重量部よりも少ない場合には、コハク酸誘導体を使用することにより期待される作用・効果が乏しくなる。つまり、増粘剤による過剰な増粘挙動を抑制する効果が乏しくなるおそれがある。コハク酸誘導体の添加量が10重量部よりも多い場合には、コンパウンドの増粘後の粘度が、成形作業等に好適な所定の値に達しないか、若しくは達するまでに長時間を有するおそれがある。
【0077】
上記の補強材としては、具体的には、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、セラミックからなる繊維等の無機繊維;アラミドやポリエステル等からなる有機繊維;天然繊維等が挙げられるが、特に限定されるものではない。また、繊維の形態は、例えば、ロービング、クロス、マット、織物、チョップドロービング、チョップドストランド等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら補強材は、単独で用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。補強材の使用量は、その種類や(メタ)アクリルシラップ等との組み合わせ、(メタ)アクリル系樹脂組成物の用途や所望される物性等に応じて設定すればよく、特に限定されるものではない。また、補強材とコンパウンドとを混合する方法は、特に限定されるものではなく、該補強材の形態に応じて適宜設定すればよい。例えば、補強材の形態がマットやクロス等である場合には、該補強材にコンパウンドを含浸させればよい。また、例えば、補強材の形態がロービングやチョップトストランド等である場合には、該補強材とコンパウンドとを混練すればよい。補強材を含む(メタ)アクリル系樹脂組成物は、例えばSMCやBMCとして好適である。
【0078】
本発明にかかる(メタ)アクリル系樹脂組成物は、成形材料として用いられる場合、硬化剤(重合開始剤)を含んでいることが望ましく、また、必要に応じて、充填剤、架橋性単量体、添加剤等をさらに含んでいてもよい。上記の硬化剤としては、例えば、カルボキシル基含有(メタ)アクリルシラップを製造する際に用いられる前記例示の重合開始剤が挙げられるが、特に限定されるものではない。硬化剤の添加量は、その種類や(メタ)アクリルシラップ等との組み合わせ等に応じて設定すればよく、特に限定されるものではないが、(メタ)アクリルシラップ 100重量部に対して、 0.1重量部〜5重量部の範囲内が好適である。
【0079】
上記の充填剤としては、具体的には、例えば、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、クレー、タルク、ミルドファイバー、珪砂、川砂、珪藻土、雲母粉末、石膏、寒水砂、アスベスト粉、ガラス粉等の無機系充填剤、および、ポリマービーズ等の有機系充填剤が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら充填剤は、単独で用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。尚、充填剤の平均粒径等の形態は、特に限定されるものではない。
【0080】
充填剤の配合量は、その種類や(メタ)アクリルシラップ等との組み合わせ、(メタ)アクリル系樹脂組成物の用途や所望される物性等に応じて設定すればよく、特に限定されるものではないが、(メタ)アクリルシラップ 100重量部に対して、10重量部〜 600重量部の範囲内が好適である。そして、(メタ)アクリル系樹脂組成物がSMCとして用いられる場合には、充填剤の配合量は、(メタ)アクリルシラップ 100重量部に対して、30重量部〜 300重量部の範囲内がより好ましい。(メタ)アクリル系樹脂組成物がBMCとして用いられる場合には、充填剤の配合量は、(メタ)アクリルシラップ 100重量部に対して、 150重量部〜 600重量部の範囲内がより好ましい。(メタ)アクリル系樹脂組成物が注型材料として用いられる場合には、充填剤の配合量は、(メタ)アクリルシラップ 100重量部に対して、30重量部〜 250重量部の範囲内がより好ましい。(メタ)アクリル系樹脂組成物が引抜き成形用の成形材料として用いられる場合には、充填剤の配合量は、(メタ)アクリルシラップ 100重量部に対して、10重量部〜 200重量部の範囲内がより好ましい。
【0081】
上記の架橋性単量体は、硬化物の架橋密度を増加させる働きを備えている。架橋性単量体は、(メタ)アクリルシラップに含まれる官能基と反応する官能基を複数含有する化合物であればよい。該架橋性単量体としては、具体的には、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート;エポキシ(メタ)アクリレート類;ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられるが、特に限定されるものではない。架橋性単量体の添加量は、その種類や(メタ)アクリルシラップ等との組み合わせ、(メタ)アクリル系樹脂組成物の用途や所望される物性等に応じて設定すればよく、特に限定されるものではない。
【0082】
上記の添加剤は、一般に用いられている各種の添加剤を採用することができ、特に限定されるものではないが、例えば、(内部)離型剤、着色剤、重合禁止剤等が挙げられる。これら添加剤は、例えば、(メタ)アクリル系樹脂組成物の用途や所望される物性等に応じて適宜添加すればよい。また、添加剤の添加量は、該添加剤の種類や(メタ)アクリルシラップ等との組み合わせ等に応じて設定すればよく、特に限定されるものではない。
【0083】
離型剤としては、具体的には、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸アミド、トリフェニルホスフェート、アルキルホスフェート;一般に用いられているワックス類、シリコーンオイル等の離型剤等が挙げられる。着色剤としては、公知の無機顔料や有機顔料が挙げられる。
【0084】
本発明にかかる(メタ)アクリル系樹脂組成物は、SMC、BMC、注型材料等として特に好適である。SMCは、いわゆるSMC製造装置を用いて容易に製造することができる。BMCは、双腕型ニーダ等の混練機を用いて容易に製造することができる。注型材料は、混合機を用いて容易に製造することができる。そして、SMCやBMCは、例えば60℃〜 160℃で加熱・加圧成形(プレス成形)することにより成形品とされる。また、注型材料は、例えば室温〜70℃でセル内に注入(注型)することにより成形品とされる。尚、(メタ)アクリル系樹脂組の硬化方法は、特に限定されるものではない。本発明にかかる(メタ)アクリル系樹脂組成物は、種々の成形方法に適用可能である。
【0085】
本発明にかかる(メタ)アクリル系樹脂組成物を成形してなる成形品としては、例えば、いわゆる採光ドーム、ベンチ、テーブル、タンク、公告板、防水板等の、屋外で使用される各種物品;浄化槽、自動車、鉄道車両、船舶等を構成する構成材;屋根・壁等の、構造物の外装材;バスタブやキッチンカウンタとして好適な人工大理石;電気部品等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0086】
【実施例】
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。尚、実施例および比較例に記載の「部」は、「重量部」を示し、「%」は、「重量%」を示す。
また、実施例および比較例における成形板の荷重たわみ温度(HDT;熱変形温度)は、JIS 6911に準ずる方法で測定した。さらに、実施例および比較例における注型材料の貯蔵安定性は、室温で3時間以上経過してもゲル化しなかったものを「良好」、室温で3時間経過するまでにゲル化したものを「不良」とした。
【0087】
〔実施例1〕
温度計、冷却器、窒素ガス導入管、および攪拌機を備えた反応器に、(メタ)アクリル酸エステルとしてのメチルメタクリレート93部と、カルボキシル基含有単量体としてのメタクリル酸7部とを仕込んだ後、反応器内を窒素ガス置換した。次に、上記の混合物を攪拌しながら80℃に昇温した後、重合開始剤としての 2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBNと記す)1部と、連鎖移動剤としてのn-ドデシルメルカプタン4部とを添加して、4時間共重合反応を行い、カルボキシル基含有(メタ)アクリルシラップを得た。
【0088】
次いで、上記カルボキシル基含有(メタ)アクリルシラップに、不飽和エポキシ化合物としてのグリシジルメタクリレート10部と、エステル化触媒としてのオクチル酸亜鉛0.03部と、重合禁止剤としてのハイドロキノン0.01部とを添加した後、100 ℃に昇温して、空気雰囲気下で5時間かけてエステル化反応を行った。これにより、(メタ)アクリルシラップを得た。該(メタ)アクリルシラップは、固形分濃度が52%、粘度が36 poiseであり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した重量平均分子量(Mw)が17,000であった。また、上記(メタ)アクリルシラップは、無色透明であった。
【0089】
続いて、上記の(メタ)アクリルシラップ 100部に、硬化剤としてのベンゾイルパーオキサイド2部を添加して溶解させた。これにより、(メタ)アクリル系樹脂組成物としての注型材料を得た。得られた注型材料は、減圧することにより脱泡した。この注型材料は、室温で3時間以上ゲル化しなかった。つまり、この注型材料は、貯蔵安定性に優れていた。
【0090】
次いで、注型材料を、互いの間隔(隙間)が7mmとなるようにして対向配置された2枚のガラス板の周囲をいわゆる弾力ガスケットにて閉鎖してなるセルを用いて注型した。即ち、注型材料を上記のセル内に注入した後、60℃に加熱して硬化させた。
【0091】
さらに、硬化した注型材料を脱型後、 120℃で2時間かけて後硬化(いわゆる、アフターキュア)させることにより、成形板を得た。得られた成形板の荷重たわみ温度(HDT)をJIS 6911に準ずる方法で測定したところ、 120℃であった。上記の主な反応条件を表1に示す。また、得られた結果を表2に示す。
【0092】
〔実施例2〕
実施例1におけるオクチル酸亜鉛をオクチル酸スズに変更する以外は、実施例1と同様の反応を行い、(メタ)アクリルシラップを得た。該(メタ)アクリルシラップは、固形分濃度が52%、粘度が35 poiseであり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した重量平均分子量(Mw)が16,000であった。また、上記(メタ)アクリルシラップは、無色透明であった。
【0093】
続いて、実施例1と同様の操作を行い、注型材料を得た。得られた注型材料は、貯蔵安定性に優れていた。次いで、実施例1と同様の操作を行い、成形板を得た。得られた成形板の荷重たわみ温度(HDT)は、 118℃であった。上記の主な反応条件を表1に示す。また、得られた結果を表2に示す。
【0094】
〔実施例3〕
実施例1におけるオクチル酸亜鉛をオクチル酸ジルコニウムに変更する以外は、実施例1と同様の反応を行い、(メタ)アクリルシラップを得た。該(メタ)アクリルシラップは、固形分濃度が52%、粘度が35 poiseであり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した重量平均分子量(Mw)が16,000であった。また、上記(メタ)アクリルシラップは、無色透明であった。
【0095】
続いて、実施例1と同様の操作を行い、注型材料を得た。得られた注型材料は、貯蔵安定性に優れていた。次いで、実施例1と同様の操作を行い、成形板を得た。得られた成形板の荷重たわみ温度(HDT)は、 118℃であった。上記の主な反応条件を表1に示す。また、得られた結果を表2に示す。
【0096】
〔実施例4〕
実施例1におけるオクチル酸亜鉛をステアリン酸亜鉛に変更する以外は、実施例1と同様の反応を行い、(メタ)アクリルシラップを得た。該(メタ)アクリルシラップは、固形分濃度が52%、粘度が36 poiseであり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した重量平均分子量(Mw)が17,000であった。また、上記(メタ)アクリルシラップは、無色透明であった。
【0097】
続いて、実施例1と同様の操作を行い、注型材料を得た。得られた注型材料は、貯蔵安定性に優れていた。次いで、実施例1と同様の操作を行い、成形板を得た。得られた成形板の荷重たわみ温度(HDT)は、 120℃であった。上記の主な反応条件を表1に示す。また、得られた結果を表2に示す。
【0098】
〔実施例5〕
実施例1におけるオクチル酸亜鉛を安息香酸亜鉛に変更する以外は、実施例1と同様の反応を行い、(メタ)アクリルシラップを得た。該(メタ)アクリルシラップは、固形分濃度が52%、粘度が37 poiseであり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した重量平均分子量(Mw)が17,000であった。また、上記(メタ)アクリルシラップは、無色透明であった。
【0099】
続いて、実施例1と同様の操作を行い、注型材料を得た。得られた注型材料は、貯蔵安定性に優れていた。次いで、実施例1と同様の操作を行い、成形板を得た。得られた成形板の荷重たわみ温度(HDT)は、 120℃であった。上記の主な反応条件を表1に示す。また、得られた結果を表2に示す。
【0100】
〔実施例6〕
実施例1におけるオクチル酸亜鉛を塩化亜鉛(ZnCl2)に変更する以外は、実施例1と同様の反応を行い、(メタ)アクリルシラップを得た。該(メタ)アクリルシラップは、固形分濃度が51%、粘度が37 poiseであり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した重量平均分子量(Mw)が18,000であった。また、上記(メタ)アクリルシラップは、無色透明であった。
【0101】
続いて、実施例1と同様の操作を行い、注型材料を得た。得られた注型材料は、貯蔵安定性に優れていた。次いで、実施例1と同様の操作を行い、成形板を得た。得られた成形板の荷重たわみ温度(HDT)は、 120℃であった。上記の主な反応条件を表1に示す。また、得られた結果を表2に示す。
【0102】
〔実施例7〕
実施例1におけるオクチル酸亜鉛をリン酸水素亜鉛(ZnHPO4)に変更する以外は、実施例1と同様の反応を行い、(メタ)アクリルシラップを得た。該(メタ)アクリルシラップは、固形分濃度が51%、粘度が36 poiseであり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した重量平均分子量(Mw)が17,000であった。また、上記(メタ)アクリルシラップは、無色透明であった。
【0103】
続いて、実施例1と同様の操作を行い、注型材料を得た。得られた注型材料は、貯蔵安定性に優れていた。次いで、実施例1と同様の操作を行い、成形板を得た。得られた成形板の荷重たわみ温度(HDT)は、 120℃であった。上記の主な反応条件を表1に示す。また、得られた結果を表2に示す。
【0104】
〔実施例8〕
実施例1におけるオクチル酸亜鉛をアセチルアセトン亜鉛(Zn(acac)2)に変更する以外は、実施例1と同様の反応を行い、(メタ)アクリルシラップを得た。該(メタ)アクリルシラップは、固形分濃度が52%、粘度が45 poiseであり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した重量平均分子量(Mw)が21,000であった。また、上記(メタ)アクリルシラップは、無色透明であった。
【0105】
続いて、実施例1と同様の操作を行い、注型材料を得た。得られた注型材料は、貯蔵安定性に優れていた。次いで、実施例1と同様の操作を行い、成形板を得た。得られた成形板の荷重たわみ温度(HDT)は、 121℃であった。上記の主な反応条件を表1に示す。また、得られた結果を表2に示す。
【0106】
〔実施例9〕
実施例1におけるn-ドデシルメルカプタンを3-メルカプトプロピオン酸に変更する以外は、実施例1と同様の反応を行い、(メタ)アクリルシラップを得た。該(メタ)アクリルシラップは、固形分濃度が51%、粘度が37 poiseであり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した重量平均分子量(Mw)が18,000であった。また、上記(メタ)アクリルシラップは、無色透明であった。
【0107】
続いて、実施例1と同様の操作を行い、注型材料を得た。得られた注型材料は、貯蔵安定性に優れていた。次いで、実施例1と同様の操作を行い、成形板を得た。得られた成形板の荷重たわみ温度(HDT)は、 125℃であった。上記の主な反応条件を表1に示す。また、得られた結果を表2に示す。
【0108】
【表1】
【0109】
【表2】
【0110】
〔比較例1〕
実施例1におけるオクチル酸亜鉛をオクチル酸コバルトに変更する以外は、実施例1と同様の反応を行い、(メタ)アクリルシラップを得た。該(メタ)アクリルシラップは、固形分濃度が54%、粘度が40 poiseであり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した重量平均分子量(Mw)が19,000であった。また、上記(メタ)アクリルシラップは、濃青色であった。
【0111】
続いて、実施例1と同様の操作を行い、注型材料を得た。得られた注型材料は、貯蔵安定性に劣っていた。次いで、実施例1と同様の操作を行い、成形板を得た。得られた成形板の荷重たわみ温度(HDT)は、 115℃であった。上記の主な反応条件を表3に示す。また、得られた結果を表4に示す。
【0112】
〔比較例2〕
実施例1におけるオクチル酸亜鉛をオクチル酸鉄に変更する以外は、実施例1と同様の反応を行い、(メタ)アクリルシラップを得た。該(メタ)アクリルシラップは、固形分濃度が51%、粘度が35 poiseであり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した重量平均分子量(Mw)が15,000であった。また、上記(メタ)アクリルシラップは、茶褐色であった。
【0113】
続いて、実施例1と同様の操作を行い、注型材料を得た。得られた注型材料は、貯蔵安定性に劣っていた。次いで、実施例1と同様の操作を行い、成形板を得た。得られた成形板の荷重たわみ温度(HDT)は、 105℃であった。上記の主な反応条件を表3に示す。また、得られた結果を表4に示す。
【0114】
〔比較例3〕
実施例1におけるオクチル酸亜鉛をトリエチルアミンに変更する以外は、実施例1と同様の反応を行い、(メタ)アクリルシラップを得た。該(メタ)アクリルシラップは、固形分濃度が52%、粘度が36 poiseであり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した重量平均分子量(Mw)が17,000であった。また、上記(メタ)アクリルシラップは、茶褐色であった。
【0115】
続いて、実施例1と同様の操作を行い、注型材料を得た。得られた注型材料は、貯蔵安定性に劣っていた。次いで、実施例1と同様の操作を行い、成形板を得た。得られた成形板の荷重たわみ温度(HDT)は、 120℃であった。上記の主な反応条件を表3に示す。また、得られた結果を表4に示す。
【0116】
〔比較例4〕
実施例1におけるオクチル酸亜鉛をトリエチルベンジルアンモニウムクロライドに変更する以外は、実施例1と同様の反応を行い、(メタ)アクリルシラップを得た。該(メタ)アクリルシラップは、固形分濃度が53%、粘度が36 poiseであり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した重量平均分子量(Mw)が16,000であった。また、上記(メタ)アクリルシラップは、淡茶色であった。
【0117】
続いて、実施例1と同様の操作を行い、注型材料を得た。得られた注型材料は、貯蔵安定性に劣っていた。次いで、実施例1と同様の操作を行い、成形板を得た。得られた成形板の荷重たわみ温度(HDT)は、 110℃であった。上記の主な反応条件を表3に示す。また、得られた結果を表4に示す。
【0118】
〔比較例5〕
実施例1におけるグリシジルメタクリレートの添加を行わない以外は、実施例1と同様の反応を行い、(メタ)アクリルシラップを得た。該(メタ)アクリルシラップは、固形分濃度が50%、粘度が30 poiseであり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した重量平均分子量(Mw)が14,000であった。また、上記(メタ)アクリルシラップは、無色透明であった。
【0119】
続いて、実施例1と同様の操作を行い、注型材料を得た。得られた注型材料は、貯蔵安定性に劣っていた。次いで、実施例1と同様の操作を行い、成形板を得た。得られた成形板の荷重たわみ温度(HDT)は、90℃であった。上記の主な反応条件を表3に示す。また、得られた結果を表4に示す。
【0120】
〔比較例6〕
実施例1におけるオクチル酸亜鉛の添加を行わない以外は、実施例1と同様の反応を行い、(メタ)アクリルシラップを得た。該(メタ)アクリルシラップは、固形分濃度が46%、粘度が27 poiseであり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した重量平均分子量(Mw)が14,000であった。また、上記(メタ)アクリルシラップは、無色透明であった。
【0121】
続いて、実施例1と同様の操作を行い、注型材料を得た。得られた注型材料は、貯蔵安定性に劣っていた。次いで、実施例1と同様の操作を行い、成形板を得た。得られた成形板の荷重たわみ温度(HDT)は、90℃であった。上記の主な反応条件を表3に示す。また、得られた結果を表4に示す。
【0122】
〔比較例7〕
実施例1におけるメチルメタクリレート93部およびメタクリル酸7部の代わりにメチルメタクリレート 100部を用い、n-ドデシルメルカプタンの添加量を4部から3部に変更する以外は、実施例1と同様の反応を行い、(メタ)アクリルシラップを得た。該(メタ)アクリルシラップは、固形分濃度が46%、粘度が27 poiseであり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した重量平均分子量(Mw)が14,000であった。また、上記(メタ)アクリルシラップは、無色透明であった。
【0123】
続いて、実施例1と同様の操作を行い、注型材料を得た。得られた注型材料は、貯蔵安定性に優れていた。次いで、実施例1と同様の操作を行い、成形板を得た。得られた成形板の荷重たわみ温度(HDT)は、90℃であった。上記の主な反応条件を表3に示す。また、得られた結果を表4に示す。
【0124】
【表3】
【0125】
【表4】
【0126】
表1〜4から明らかなように、実施例1〜9にかかる(メタ)アクリル系樹脂組成物は、着色が少なく、貯蔵安定性にも優れていることがわかる。また、上記の(メタ)アクリル系樹脂組成物を成形して得られる成形品(硬化物)が、熱時強度に優れていることがわかる。
【0127】
【発明の効果】
本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物によれば、得られる硬化物の熱時強度に優れ、かつ、着色が少なく、貯蔵安定性に優れた(メタ)アクリル系樹脂組成物を提供することができるという効果を奏する。従って、本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物を成形することにより、熱時強度および外観に優れた成形品が得られる。
【0128】
また、本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物の製造方法によれば、得られる硬化物の熱時強度に優れ、かつ、着色が少なく、貯蔵安定性に優れた(メタ)アクリル系樹脂組成物を製造することができるという効果を奏する。
Claims (4)
- (メタ)アクリル酸エステルの重合体とビニル単量体とからなり、上記(メタ)アクリル酸エステルの重合体および上記ビニル単量体の少なくとも一方がカルボキシル基を含有する(メタ)アクリルシラップに対して不飽和エポキシ化合物を用いて重合性二重結合を導入してなる(メタ)アクリルシラップと、
上記重合性二重結合の導入を促進するためのZn、SnおよびZrからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素を含有する触媒とを含むことを特徴とする(メタ)アクリル系樹脂組成物。 - (メタ)アクリル酸エステルの重合体とビニル単量体とからなり、上記(メタ)アクリル酸エステルの重合体および上記ビニル単量体の少なくとも一方がエステル結合を介して重合性二重結合を有する(メタ)アクリルシラップと、
ZnおよびSnの少なくとも1つの元素を含有するエステル化触媒とを含むことを特徴とする(メタ)アクリル系樹脂組成物。 - (メタ)アクリル酸エステルの重合体とビニル単量体とからなり、上記(メタ)アクリル酸エステルの重合体および上記ビニル単量体の少なくとも一方がカルボキシル基を含有する(メタ)アクリルシラップと、不飽和エポキシ化合物とを、Zn、SnおよびZrからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素を含有する触媒の存在下で反応させることを特徴とする(メタ)アクリル系樹脂組成物の製造方法。
- 上記(メタ)アクリルシラップが、カルボキシル基を含有するビニル単量体と(メタ)アクリル酸エステルとを含む単量体成分を部分重合して得られるものであることを特徴とする請求項3記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物の製造方法。
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