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JP3952554B2 - 耐熱性に優れた弾性糸及びその製造法 - Google Patents

耐熱性に優れた弾性糸及びその製造法 Download PDF

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JP3952554B2 JP28018097A JP28018097A JP3952554B2 JP 3952554 B2 JP3952554 B2 JP 3952554B2 JP 28018097 A JP28018097 A JP 28018097A JP 28018097 A JP28018097 A JP 28018097A JP 3952554 B2 JP3952554 B2 JP 3952554B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、芳香族アミド結合を有する芳香族ジカルボン酸成分とポリアルキレングリコール成分とから構成された弾性重合体からなる耐熱性に優れた弾性糸及びその製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、衣料用及び産業資材用の布帛にストレッチ性を付与するために、ポリウレタン弾性糸(例えば、特公昭47− 13789号)、ポリエーテルエステル弾性糸(例えば、特開昭47− 77317号) 等の弾性糸が用いられている。しかし、これらの弾性糸は、優れた弾性回復性を有するが、融点が低いため、後工程での染色や熱セット等の熱処理によって、溶融したり、急激に収縮したりして品位が劣ったものとなるという欠点があった。
【0003】
ポリエーテルエステル系弾性糸の場合、ハードセグメントの割合を大きくすることによって融点を高くすることは可能であるが、そのようにすると弾性回復性が劣るようになり、弾性糸としての実用性が乏しくなる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、耐熱性に優れ、熱処理によって品位が低下することがなく、かつ優れた弾性回復性を有する弾性糸及びその製造法を提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の課題を解決するもので、その要旨は、次の通りである。
1.芳香族アミド結合を有する一般式(1)又は(2)で表される芳香族ジカルボン酸成分とポリアルキレングリコール成分とから構成された融点が195〜235℃である弾性重合体からなり、100%伸長時の弾性回復率が80%以上、200%伸長時の弾性回復率が70%以上であり、190℃で10分間熱処理後の強伸度積保持率が85%以上であることを特徴とする耐熱性に優れた弾性糸。
(1)ROOC−Ph−NHCO−Z−CONH−Ph−COOR′
(2)ROOC−Ph−CONH−Z−NHCO−Ph−COOR′
式(1)及び(2)において、Phはフェニレン基、Zは2価の芳香族基、R及びR′は、水素原子又はアルキル基を表す。
2.芳香族アミド結合を有する一般式(1)又は(2)で表される芳香族ジカルボン酸成分とポリアルキレングリコール成分とから構成された融点が195〜235℃である弾性重合体を溶融紡糸し、チーズ状に巻き取り、その状態で、100℃以上の温度で0.5時間以上熱処理することを特徴とする耐熱性に優れた弾性糸の製造法。
(1)ROOC−Ph−NHCO−Z−CONH−Ph−COOR′
(2)ROOC−Ph−CONH−Z−NHCO−Ph−COOR′
式(1)及び(2)において、Phはフェニレン基、Zは2価の芳香族基、R及びR′は、水素原子又はアルキル基を表す。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0007】
本発明において、芳香族ジカルボン酸成分としては、一般式(1)又は(2)で表される化合物が好ましく用いられる。
(1)ROOC−Ph−NHCO−Z−CONH−Ph−COOR′
(2)ROOC−Ph−CONH−Z−NHCO−Ph−COOR′
(1)及び(2)において、Phはフェニレン基、Zは2価の芳香族基、R及びR′は、水素原子又はアルキル基を表す。
【0008】
芳香族ジカルボン酸成分の具体例としては、式(1)及び(2)において、Phがp−フェニレン基、Zがp−フェニレン基、m−フェニレン基、p−ジフェニレン基又はp−ジフェニレンエーテル基、R及びR′がメチル基、エチル基、ブチル基等の低級アルキル基の化合物が挙げられる。
これらのうち、弾性重合体の熱的性質及びコスト等の点で、N,N′−ビス(p−エトキシカルボニルフェニル)テレフタラミドが最も好ましい。
【0009】
一方、ポリアルキレングリコール成分としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が用いられる。
これらのうち、低温特性と強度に優れ、優れた耐酸化劣化性及び耐加水分解性を有する弾性重合体を与える点で、ポリテトラメチレングリコールが最も好ましい。
【0010】
本発明における弾性重合体は、融点が 190℃より高いものであることが必要であり、 195〜235 ℃の範囲のものが好ましい。融点がこれよりも低いものでは耐熱性弾性糸としての特徴が発揮されない。すなわち、弾性糸を他の繊維と交編、交織し、染色処理を行った後、熱セットする際に、熱セット温度(概ね 180〜190 ℃)で弾性糸が著しく収縮したり、熱溶融して、風合いが硬くなったりして、品位が劣ったものとなる。一方、融点を上記範囲よりも高くしようとすると弾性回復性等の弾性糸としての性能が劣ったものとなる。
【0011】
弾性重合体の融点は、主としてポリアルキレングリコールの分子量によって調節することができ、例えば、上記のテレフタラミド系芳香族ジカルボン酸成分とポリテトラメチレングリコール成分とからの弾性重合体の場合、分子量が 500〜2000程度のポリテトラメチレングリコールを用いることにより上記の範囲の融点とすることができる。
【0012】
本発明における弾性重合体は、次のような2段階重合法によって製造することができる。
1段階目の重合は、芳香族ジカルボン酸成分とポリアルキレングリコール成分とを縮合させ、低分子量オリゴマーを得る目的で行われる。第1段目の重合においては、N−メチル−2−ピロリドンのような溶媒の存在下に、常圧で、温度 140〜210 ℃、好ましくは 170〜210 ℃、さらに好ましくは 190〜210 ℃で1〜3時間反応させた後、減圧、昇温して溶媒を除去するのが適当である。
【0013】
2段階目の重合は、オリゴマー間での縮合を行うことによって高分子量の重合体を得る目的で行われる。この際の条件としては、重合温度を 210〜270 ℃、好ましくは 220〜260 ℃、圧力を 0.1〜2mmHg、好ましくは 0.1〜1mmHgとし、重合時間を1〜4時間とするのが適当である。
【0014】
重合温度は、重合体の構造によって適宜変えることが望ましいが、一般的には重合温度が 210℃以下では重合体の溶融状態が不完全となる場合が多く、高分子量の重合体が得られにくい。また、重合温度が 270℃以上では重合体の着色及び分解が起こりやすく、重合体の分子量も低下する場合があり好ましくない。
【0015】
重合反応には、通常、触媒が使用され、重合触媒としては、金属アルコキシド類、特にチタンアルコキシド類が好ましく用いられる。
【0016】
また、重合体には、一般的に用いられるヒンダードフェノール系酸化防止剤を含有させることが望ましく、リン系、イオウ系、アミン系酸化防止剤等を併用してもよい。酸化防止剤の添加は、重合開始時又は重合終了後に重合缶に酸化防止剤を投入して攪拌することによって行ってもよいし、重合体ペレットと酸化防止剤とを混合し、溶融混練することによって行ってもよい。
【0017】
また、酸化防止剤のほか、必要に応じて、ワックス、帯電防止剤、導電剤、結晶核剤、可塑剤、離型剤、UV安定剤、加水分解防止剤、難燃剤、無機充填剤、無機顔料、有機顔料等の各種添加剤を含有させることができる。
【0018】
本発明の弾性糸は、通常の溶融紡糸法によって製造することができる。すなわち、弾性重合体のペレットを乾燥した後、エクストルーダで溶融押し出しし、計量ポンプで計量して紡糸口金パックに導き、紡糸口金のノズルから吐出し、冷却後、油剤を付与し、一定速度のワインダーで巻き取る。
【0019】
この際、紡糸温度(紡糸口金の温度)は、弾性重合体の融点+30℃以上とすることが望ましい。また、巻取速度は、 300〜2000m/分とするのが適当である。巻取速度が遅いと、吐出量が少なくて生産性が劣り、速すぎると、操業性が低下する。
【0020】
油剤の付与は、巻き取る際の静電気の発生防止や後加工をスムーズに進行させるために行うものであり、油剤としては、シリコーン系のものが好ましく用いられる。
【0021】
溶融紡糸し、巻き取った弾性糸は、弾性回復特性や熱収縮特性を向上させるため、チーズ状に巻き取った状態で、 100℃以上、好ましくは 110〜130 ℃の温度で 0.5時間以上、好ましくは1〜3時間熱処理するのがよい。
【0022】
本発明においては、弾性糸が 100%伸長時の弾性回復率が80%以上、 200%伸長時の弾性回復率が70%以上であり、 190℃で10分間熱処理後の強伸度積保持率が85%以上となるように、弾性重合体の種類及び製糸条件(熱処理条件を含む)を適宜選定することが必要である。
【0023】
弾性回復率が上記の値を下回るものでは、布帛のストレッチバック性が劣り、強伸度積保持率が上記の値を下回るものでは、耐熱性が不十分で、熱セットに耐えられない。
【0024】
【作用】
本発明における弾性重合体は、芳香族アミド結合を有する芳香族ジカルボン酸成分(ハードセグメント)とポリアルキレングリコール成分(ソフトセグメント)とから構成されているので、ハードセグメントの重量割合が小さく、硬度が低くても高融点を有する。
したがって、この弾性重合体からなる弾性糸は、柔軟で、かつ、耐熱性に優れており、従来のポリエーテルエステル弾性糸に比べて高温で熱セットしても布帛の品位が低下することがなく、ストレッチバック性の良好な弾性布帛とすることができる。
【0025】
【実施例】
次に実施例により本発明を具体的に説明する。
なお、例中の特性値等の測定、評価法は次の通りである。
1.融点
パーキンエルマー社製、示差走査熱量計DSC-7型を用い、昇温速度10℃/分で測定した。
2.弾性重合体の分子量
東ソー社製GPC装置 CP-8000を使用し、溶離液としてN−メチル−2−ピロリドン1Lに塩化リチウムを20ミリモル添加したものを用いて測定し、ポリスチレン換算の重量平均分子量を求めた。
3.メルトインデックス(MI)
宝工業社製メルトインデクサーL224、X416を用い、荷重2.01kg、温度 230℃で測定した。
4.繊度
周長 1.125mの検尺機で80回巻き、30分間放置した後、1/300 (g/d)の荷重をかけて長さを測定した後、重量を測定して、デニール(d)に換算した。
5.弾性回復率
オリエンティック社製テンシロンRTC-1210型を用い、試料長10cm,引張速度10cm/分で、 100%と 200%まで伸長した後、同速度で元の長さまで戻し、再び伸長した時、応力が現れた時の長さを求め、次式によって弾性回復率を求めた。
弾性回復率(%)=〔(L0 −L1) /L0 〕×100
L0 :伸ばした長さ
L1 :再度伸ばした時、応力が現れた時の長さ
6.強伸度及び強伸度積保持率
強伸度は、オリエンティック社製テンシロンRTC-1210型を用い、試料長10cm、引張速度10cm/分で測定した。
熱処理後の強伸度は、弾性糸を丸編みし、 190℃のオーブン中で10分間熱処理し、室温に冷却した後、解舒して得た糸条について測定した。
強伸度積保持率は、熱処理前の強伸度積(強度×伸度)に対する熱処理後の強伸度積の割合を算出して求めた。
7.風合い及びストレッチバック性
弾性糸を2倍に伸長しながら、75d/36fのポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸と同時に丸編み後、下記の条件で染色し、表面温度 190℃のアイロンで1分間熱セットを行い、得られた編み地について、下記4段階で評価した。(◎と○は合格、△と×は不合格)
染色条件
染料:ダイスタージャパン社製分散染料;Resoline Blue SGL 1%owf
助剤:明成化学社製分散剤;Disper VG 2g/L
浴比:1/50
染色温度×時間: 130℃×60分間
風合いの評価
◎:生地が厚く、反発性に優れている
○:生地はやや薄いが、反発性は優れている
△:生地がやや薄く、反発性が劣る
×:生地が薄く、反発性が劣る
ストレッチバック性の評価
◎:手で引き伸ばしても完全に元に戻る
○:手で引き伸ばすと跡がやや残る
△:手で引き伸ばすと明らかに跡が残る
×:手で引き伸ばすとほとんど元に戻らない
【0026】
合成例1
窒素導入管、温度センサー、攪拌装置及び蒸留装置を取り付けた15Lオートクレーブに、分子量1000のポリテトラメチレングリコール(PTMG)2.06モル (2061g、N,N′−ビス(p−エトキシカルボニルフェニル)テレフタラミド2.06モル(949g) 及びIrganox 1330 (チバガイギー社製ヒンダードフェノール系酸化防止剤)0.1重量% (3.01g) を仕込んだ後、 100℃で減圧乾燥した。
次に、このオートクレーブにN−メチル−2−ピロリドン (溶媒) 31.5重量% (1384g) 及びテトラブトキシチタネート 0.1重量% (4.39g) を添加し、内容物を 210℃まで昇温し、1時間反応させた後、減圧度を徐々に上げ、1時間かけて 240℃まで昇温し、溶媒をほぼ完全に除去した。また、溶媒除去と同時に反応で生成したエタノールも留去した。
その後、さらに 240℃、1mmHgの減圧下で1時間反応させた後、得られた高粘度の弾性重合体を窒素下で取り出した。 (弾性重合体の収量は2463g:収率87.0%であった。)
得られた弾性重合体の特性値を表1に示す。
【0027】
合成例2〜6
PTMGの分子量を表1のように変えた以外は、合成例1と同様(各化合物のモル数及び重量%を同じにした)にして弾性重合体を得た。
得られた弾性重合体の特性値を表1に示す。
【0028】
【表1】
Figure 0003952554
【0029】
実施例1〜6、比較例及び参考例
合成例1〜6で得られた弾性重合体のペレットを減圧乾燥した後、表2に示した紡糸条件で溶融紡糸し、シリコーン系油剤を付着させた後、チーズ状に巻き取った。この際、紡糸口金として孔径 0.5mmφのノズルを有するものを用い、巻き取った糸条の繊度が50dとなるように吐出量を調整した。
次いで、弾性糸をチーズ状に巻き取った状態で、 120℃のオーブンで2時間熱処理した。
また、参考例として、ポリブチレンテレフタレートをハードセグメントとし、分子量2000のPTMGをソフトセグメントとする融点 182℃のポリエーテルエステルを用い、同様にして弾性糸を得た。
得られた弾性糸の糸質性能を評価した結果を表2に示す。
【0030】
【表2】
Figure 0003952554
【0031】
表2から明らかなように、実施例1〜6では、弾性回復性に優れ、高温熱セットにも十分耐え得る弾性糸が得られた。これに対し、比較例及び参考例では、融点が低くて耐熱性が悪く、編み地を熱セットする際に弾性糸が一部溶融し、風合いが硬く、ストレッチバック性に劣るものとなった。
【0032】
【発明の効果】
本発明によれば、耐熱性に優れ、熱処理によって品位が低下することがなく、かつ優れた弾性回復性を有する弾性糸及びその製造法が提供される。

Claims (2)

  1. 芳香族アミド結合を有する一般式(1)又は(2)で表される芳香族ジカルボン酸成分とポリアルキレングリコール成分とから構成された融点が195〜235℃である弾性重合体からなり、100%伸長時の弾性回復率が80%以上、200%伸長時の弾性回復率が70%以上であり、190℃で10分間熱処理後の強伸度積保持率が85%以上であることを特徴とする耐熱性に優れた弾性糸。
    (1)ROOC−Ph−NHCO−Z−CONH−Ph−COOR′
    (2)ROOC−Ph−CONH−Z−NHCO−Ph−COOR′
    式(1)及び(2)において、Phはフェニレン基、Zは2価の芳香族基、R及びR′は、水素原子又はアルキル基を表す。
  2. 芳香族アミド結合を有する一般式(1)又は(2)で表される芳香族ジカルボン酸成分とポリアルキレングリコール成分とから構成された融点が195〜235℃である弾性重合体を溶融紡糸し、チーズ状に巻き取り、その状態で、100℃以上の温度で0.5時間以上熱処理することを特徴とする耐熱性に優れた弾性糸の製造法。
    (1)ROOC−Ph−NHCO−Z−CONH−Ph−COOR′
    (2)ROOC−Ph−CONH−Z−NHCO−Ph−COOR′
    式(1)及び(2)において、Phはフェニレン基、Zは2価の芳香族基、R及びR′は、水素原子又はアルキル基を表す。
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