JP3952350B2 - 表皮部材用樹脂組成物、その積層体、該組成物の押出し成形時における目ヤニ発生量の低減方法、および成形体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の技術分野】
本発明は、表皮部材用オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物およびその積層体に関する。さらに詳しくは、摺動摩耗性に優れ、さらに押出成形性に優れる表皮部材用オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物およびその積層体に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
オレフィン系熱可塑性エラストマーは、軽量でリサイクルが容易であり、また、焼却時に有毒なガスを発生しないことから、省エネルギー、省資源、さらに近年は、地球環境保護の観点から、自動車部品、工業機械部品、電気・電子部品、建材等に用途が拡大している。
【0003】
このような自動車部品の一例として、ガラスランチャンネルが挙げられる。ガラスランチャンネルとは、窓ガラスと窓枠との間に設けられた案内部材であり、窓ガラスの昇降開閉操作を容易にしながら、しかも窓ガラスと窓枠との緊密的(液密的)な密閉操作が必要である。
【0004】
従来のガラスランチャンネルは、軟質塩化ビニル樹脂のような軟質合成樹脂や、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム等の基材に、窓ガラスと摺動させるためのナイロンフィルム等がその表面に接着剤により貼合わせられていた。また、さらに窓ガラスとの接触面積を少なくするために、上記ナイロンフィルム等の積層の前または後に、エンボス加工が施されていた。
【0005】
このようなガラスランチャンネルは、接着剤による積層工程があるため、基材層と表皮層の間で剥離を生じやすいという欠点があり、また、工程数が多く煩雑であるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明者らは、ガラスランチャンネルの上記のような問題を解決すべく、前述のオレフィン系熱可塑性エラストマーに着目した。ところが、オレフィン系熱可塑性エラストマーを単層でガラスランチャンネルに用いると、窓ガラスとの摺動性が悪く、激しく摩耗が起こり、さらに、押出成形時ダイに発生する目ヤニの量が一般的な樹脂に比べて多く、このため目ヤニが成形品に付着して外観不良になるなどの問題点があった。
【0007】
これに対し、例えば特開平9−176408号公報には、オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物に脂肪酸アミドを添加すると摺動性および摩耗性が向上することが記載されている。しかしながら、この方法によってもオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物の押出成形時に目ヤニが発生するという問題があった。
【0008】
【発明の目的】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題点を解決しようとするものであって、オレフィン系熱可塑性エラストマーと特定のオルガノポリシロキサンからなる組成物を表皮部材として用いることにより、窓ガラスとの摺動性が良好で耐摩耗性に優れ、かつ押出成形時に発生する目ヤニが少ない積層体を提供することができるような樹脂組成物およびそれを用いた積層体を目的としている。
【0009】
【発明の概要】
本発明に係る表皮部材用樹脂組成物は、完全または部分架橋されたオレフィン系熱可塑性エラストマー(A)100重量部と、粘度[JIS K2283、25℃]が1×106cSt以上、好ましくは1×106〜1×108cStのオルガノポリシロキサン(B)2〜20重量部と、粘度[JIS K2283、25℃]が10〜1×106cSt未満のオルガノポリシロキサン(C)0.5〜5重量部からなる樹脂組成物である。また、この組成物にはポリオレフィン樹脂(D)5〜150重量部および/またはフッ素系ポリマー(E)0.5〜10重量部が含有されていても良い。
【0010】
また、本発明に係る積層体は、熱可塑性エラストマーを芯体として、上述の樹脂組成物を表皮部材として積層した積層体である。
このような組成物は、ガラスとの摺動性が良好で耐摩耗性に優れ、かつ押出成形時に発生する目ヤニが少ない。本明細書において目ヤニとは、熱可塑性エラストマーの押出成形時にダイに付着する原料とは色または物性が異なる付着物を意味する。この目ヤニは黄色の粘着質のものや、黒色の細かい粒などが知られており、原料ポリマーの劣化物と考えられているが、その発生メカニズムは明らかにされていない。
さらに、本発明に係る、表皮部材用樹脂組成物の押出し成形時における目ヤニ発生量の低減方法は、表皮部材用樹脂組成物として上記表皮部材用樹脂組成物を用い、該表皮部材用樹脂組成物を押出し成形することを特徴としている。
また、本発明に係る成形体の製造方法は、完全または部分架橋されたオレフィン系熱可塑性エラストマー(A)100重量部、粘度 [JIS K2283 、 25 ℃ ] が1×10 6 cSt以上、好ましくは1×10 6 〜1×10 8 cStのオルガノポリシロキサン(B)2〜20重量部、および粘度 [JIS K2283 、 25 ℃ ] が10〜1×10 6 未満cStのオルガノポリシロキサン(C)0.5〜5重量部を含有する混合物を動的に熱処理して表皮部材用樹脂組成物を得て、該表皮部材用樹脂組成物を押出し成形することを特徴としている。
前記混合物には、ポリオレフィン樹脂(D)5〜150重量部、および/またはフッ素系ポリマー(E)0.5〜10重量部が含有されていても良い。
【0011】
【発明の具体的説明】
以下本発明に係る表皮部材用樹脂組成物およびそれを用いた積層体について、より具体的に説明する。
【0012】
本発明に係る表皮部材用樹脂組成物は、オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)、オルガノポリシロキサン(B)およびオルガノポリシロキサン(C)を含有してなり、さらに、ポリオレフィン樹脂(D)、フッ素系ポリマー(E)を含有していてもよい。
【0013】
オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)
本発明で用いられるオレフィン系熱可塑性エラストマー(A)は、結晶性ポリオレフィンとゴムとから構成されている。
【0014】
本発明で用いられる結晶性ポリオレフィンとしては、炭素原子数2〜20のα−オレフィンの単独重合体または共重合体が挙げられる。
【0015】
上記結晶性ポリオレフィンの具体的な例としては、以下のような(共)重合体が挙げられる。
(1)エチレン単独重合体
(製法は、低圧法、高圧法のいずれでも良い)
(2)エチレンと、10モル%以下の他のα−オレフィンまたは酢酸ビニル、エチルアクリレートなどのビニルモノマーとの共重合体
(3)プロピレン単独重合体
(4)プロピレンと10モル%以下の他のα−オレフィンとのランダム共重合体
(5)プロピレンと30モル%以下の他のα−オレフィンとのブロック共重合体
(6)1-ブテン単独重合体
(7)1-ブテンと10モル%以下の他のα−オレフィンとのランダム共重合体
(8)4-メチル-1−ペンテン単独重合体
(9)4-メチル-1−ペンテンと20モル%以下の他のα−オレフィンとのランダム共重合体
上記のα−オレフィンとしては、具体的には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1−ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンなどが挙げられる。
【0016】
本発明で用いられるゴムとしては、特に制限はないが、オレフィン系共重合体ゴムが好ましい。
上記のオレフィン系共重合体ゴムは、炭素原子数2〜20のα−オレフィンを主成分とする無定形ランダムな弾性共重合体であって、2種以上のα−オレフィンからなる非晶性α−オレフィン共重合体、2種以上のα−オレフィンと非共役ジエンとからなるα−オレフィン・非共役ジエン共重合体などがある。
【0017】
このようなオレフィン系共重合体ゴムの具体的な例としては、以下のようなゴムが挙げられる。
(1)エチレン・α−オレフィン共重合体ゴム
[エチレン/α−オレフィン(モル比)=約90/10〜50/50]
(2)エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム
[エチレン/α−オレフィン(モル比)=約90/10〜50/50]
(3)プロピレン・α−オレフィン共重合体ゴム
[プロピレン/α−オレフィン(モル比)=約90/10〜50/50]
(4)ブテン・α−オレフィン共重合体ゴム
[ブテン/α−オレフィン(モル比)=約90/10〜50/50]
上記α−オレフィンとしては、具体的には、上記した結晶性ポリオレフィンを構成するα−オレフィンの具体的な例と同様のα−オレフィンが挙げられる。
【0018】
上記非共役ジエンとしては、具体的には、ジシクロペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネンなどが挙げられる。
【0019】
これらの共重合体ゴムのムーニー粘度ML1+4 (100℃)は、10〜250、特に40〜150が好ましい。また、上記非共役ジエンが共重合している場合のヨウ素価は、25以下が好ましい。
【0020】
上記のオレフィン系共重合体ゴムは、熱可塑性エラストマー中において、未架橋、部分架橋、完全架橋など、すべての架橋状態で存在することができるが、本発明においては、架橋状態で存在していることが好ましく、特に部分架橋状態で存在することが好ましい。
【0021】
オレフィン系共重合体ゴムを架橋するための架橋剤としては、有機ペルオキシド、フェノール系加硫剤またはシランカップリング剤等が用いられる。
【0022】
本発明において用いられるゴムとしては、上記のオレフィン系共重合体ゴムのほかに、他のゴム、たとえばスチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、天然ゴム(NR)、ブチルゴム(IIR)等のジエン系ゴム、SEBS、ポリイソブチレンなどが挙げられる。
【0023】
本発明で用いられる熱可塑性エラストマーにおいて、結晶性ポリオレフィンとゴムとの重量配合比(結晶性ポリオレフィン/ゴム)は、通常90/10〜5/95、好ましくは、70/30〜10/90の範囲である。
【0024】
また、ゴムとして、オレフィン系共重合体ゴムとその他のゴムを組合わせて用いる場合には、その他のゴムは、結晶性ポリオレフィンとゴムとの合計量100重量部に対して、40重量部以下、好ましくは5〜20重量部の割合で配合する。
【0025】
本発明で好ましく用いられる熱可塑性エラストマーは、結晶性ポリプロピレンと、エチレン・α−オレフィン共重合体ゴムもしくはエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムとからなり、熱可塑性エラストマー中においてこれらが部分架橋された状態で存在し、かつ、結晶性ポリプロピレンとゴムとの重量配合比(結晶性ポリプロピレン/ゴム)が70/30〜10/90の範囲内にある。
【0026】
上記の熱可塑性エラストマーには、必要に応じて、鉱物油系軟化剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、耐候安定剤、老化防止剤、充填剤、着色剤、滑剤などの添加物を、本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。
【0027】
本発明で好ましく用いられる熱可塑性エラストマーのより具体的な例としては、結晶性ポリプロピレン(A−1)70〜10重量部と、
エチレン・プロピレン共重合体ゴムまたはエチレン・プロピレン・ジエン共重合体ゴムからなるゴム(A−2)30〜90重量部[成分(A−1)および(A−2)の合計量は、100重量部とする]と、
このゴム(A−2)以外のゴム(A−3)および/または鉱物油系軟化剤(A−4)5〜100重量部と
からなる混合物を、有機ペルオキシド、フェノール系加硫剤またはシランカップリング剤の存在下で動的に熱処理して得られる、上記ゴム(A−2)が架橋された熱可塑性エラストマーが挙げられる。
【0028】
本発明においては、有機ペルオキシドは、結晶性ポリオレフィンとゴムとの合計量100重量%に対して、0.05〜3重量%、好ましくは0.1〜1重量%の割合で用いられる。
【0029】
上記有機ペルオキシドによる部分架橋処理に際し、ペルオキシ架橋用助剤、あるいは多官能性ビニルモノマーを配合することができる。このような化合物を用いることにより、均一かつ緩和な架橋反応が期待できる。特に、本発明においては、ジビニルベンゼンが最も好ましい。ジビニルベンゼンは、取扱い易く、上記の被架橋処理物の主成分である結晶性ポリオレフィンおよびゴムとの相溶性が良好であり、かつ、有機ペルオキシドを可溶化する作用を有し、有機ペルオキシドの分散剤として働くため、熱処理による架橋効果が均質で、流動性と物性とのバランスのとれた熱可塑性エラストマーが得られる。
【0030】
上記のような架橋助剤もしくは多官能性ビニルモノマーは、上記の被架橋処理物全体に対して、0.1〜2重量%、特に0.3〜1重量%の割合で用いるのが好ましい。
【0031】
上記の「動的に熱処理する」とは、上記のような熱可塑性エラストマーを構成する各成分を融解状態で混練することをいう。
混練装置としては、従来公知の混練装置、たとえば開放型のミキシングロール、非開放型のバンバリーミキサー、押出機、ニーダー、連続ミキサーなどが用いられる。これらの内では、非開放型の混練装置が好ましく、混練は、窒素ガス、炭酸ガスなどの不活性ガスの雰囲気下で行なうことが好ましい。
【0032】
本発明で特に好ましく用いられる熱可塑性エラストマーは、部分的に架橋されているが、この「部分的に架橋された」とは、下記の方法で測定したゲル含量が20〜98%の範囲内にある場合をいい、本発明においては、ゲル含量が40〜98%の範囲内にあることが好ましい。
【0033】
[ゲル含量の測定法]
熱可塑性エラストマーの試料を約100mg秤量して0.5mm×0.5mm×0.5mmの細片に裁断し、次いで、得られた細片を、密閉容器中にて30mlのシクロヘキサンに、23℃で48時間浸漬する。
【0034】
次に、この試料を濾紙上に取り出し、室温にて72時間以上恒量になるまで乾燥する。
この乾燥残渣の重量からポリマー成分以外のシクロヘキサン不溶性成分(繊維状フィラー、充填剤、顔料等)の重量を減じた値を、「補正された最終重量(Y)」とする。
【0035】
一方、試料の重量からポリマー成分以外のシクロヘキサン可溶性成分(たとえば軟化剤)の重量およびポリマー成分以外のシクロヘキサン不溶性成分(繊維状フィラー、充填剤、顔料等)の重量を減じた値を、「補正された初期重量(X)」とする。
【0036】
ここに、ゲル含量(シクロヘキサン不溶解分)は、次式により求められる。
ゲル含量[重量%]=[補正された最終重量(Y)]÷[補正された初期重量(X)]×100
【0037】
本発明に係る熱可塑性エラストマー積層体の一層を構成する熱可塑性エラストマー(A)は、結晶性ポリオレフィンとゴムとからなるため、流動性に優れている。
【0038】
上記のようなポリオレフィン系熱可塑性エラストマーは、圧縮成形、トランスファー成形、射出成形、押出成形等の従来使用されている成形装置を用いて成形することができる。
【0039】
オルガノポリシロキサン(B)および(C)
本発明において用いられるオルガノポリシロキサン(B)および(C)としては、具体的にはジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、フルオロポリシロキサン、テトラメチルテトラフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサンなど、あるいはエポキシ変性、アルキル変性、アミノ変性、カルボキシル変性、アルコール変性、フッ素変性、アルキルアラルキルポリエーテル変性、エポキシポリエーテル変性などの変性ポリシロキサンなどがあげられる。これらの中ではジメチルポリシロキサンが好ましく用いられる。
【0040】
オルガノポリシロキサン(B)は、粘度〔JIS K 2283、25℃〕が100万cSt以上、好ましくは、1×106cSt〜1×108cSt以下の範囲であり、さらに好ましくは1×106cSt〜1×107cStの範囲のものである。
【0041】
また、ここで用いられるオルガノポリシロキサン(B)は非常に粘度が高いため、そのオレフィン系熱可塑性エラストマーへの分散性を高めるために、オレフィン系樹脂とマスターバッチとなっていても良い。
【0042】
このようなオルガノポリシロキサン(B)は、オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)100重量部に対して、2〜20重量部、好ましくは2〜15重量部で用いられる。
【0043】
オルガノポリシロキサン(C)は、粘度〔JIS K 2283、25℃〕が10cSt〜100万cSt未満、好ましくは、100cSt〜10万cStの範囲である。
【0044】
このオルガノポリシロキサン(C)の粘度が10cSt未満であると、得られる成形品表面に析出しやすく、成形品表面がベタつくなどの不具合が生じることがある。
【0045】
このようなオルガノポリシロキサン(C)は、オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)100重量部に対して、0.5〜5重量部で用いられる。
なおオルガノポリシロキサンとして粘度が100万cSt以上であるオルガノポリシロキサン(B)を単独で用いると、成形時に目ヤニが発生する原因となることがある。
【0046】
ポリオレフィン樹脂(D)
本発明で用いられるポリオレフィン樹脂(D)としては、上述したポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(A)で用いた結晶性ポリオレフィンが好ましい。
【0047】
また、本発明で用いられるポリオレフィン(D)の他の好ましい例としては、135℃デカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]が3.5〜8.3dl/gの範囲にあるポリオレフィンである。このようなポリオレフィンは一種のポリオレフィンでも、あるいは極限粘度の異なる二種以上のポリオレフィンからなる組合物あるいは混合物であってもよいが、超高分子量ポリオレフィンと、低分子量ないし高分子量ポリオレフィンとからなるポリオレフィン組合物が好ましい。より好ましくは、135℃デカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]が7〜40dl/g、好ましくは10〜35dl/gの範囲内にある超高分子量ポリオレフィンと、135℃デカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]が0.1〜5dl/g、好ましくは0.1〜2dl/gの範囲にある低分子量ないし高分子量ポリオレフィンとから実質的になるポリオレフィン組成物であって、超高分子量ポリオレフィンが、超高分子量ポリオレフィンと低分子量ないし高分子量ポリオレフィンとの総重量100重量%に対して15〜40重量%、好ましくは18〜35重量%の割合で存在し、かつ、135℃デカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]が3.5〜8.3dl/gの範囲にあるポリオレフィン組成物である。
【0048】
上記のような超高分子量ポリオレフィン、および、低分子量ないし高分子量ポリオレフィンは、たとえばエチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、4-メチル-1−ペンテン、3-メチル-1−ペンテンなどのα-オレフィンの単独重合体または共重合体からなる。本発明においては、エチレン単独重合体、およびエチレンと他のα−オレフィンとからなる、エチレンを主成分とする共重合体が望ましい。
【0049】
さらに、本発明で用いられるポリオレフィン樹脂(D)としては、先に好ましい例として挙げたポリオレフィンを二種以上併用することも可能である。好ましくは、上述したポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(A)で用いた結晶性ポリオレフィンと、135℃デカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]が3.5〜8.3dl/gの範囲にあるポリオレフィンを併用することが望ましい。
【0050】
このようなポリオレフィン樹脂(D)は、オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)100重量部に対して、5〜150重量部、好ましくは10〜100重量部の割合で用いられる。
【0051】
フッ素系ポリマー(E)
本発明では、さらにフッ素系ポリマー(E)を表皮部材用樹脂組成物に配合することができる。このフッ素系ポリマーは、通常、分子量が1×104〜1×108、好ましくは1×105〜1×107のものが用いられる。
【0052】
フッ素系ポリマー(E)の具体的な例としては、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン-ペルフルオロビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体、フッ化ビニリデンポリマー、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン-フッ化ビニリデン共重合体、フッ化ビニルポリマーなどが挙げられる。これらのうちフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体およびテトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン-フッ化ビニリデン共重合体が好ましい。
【0053】
このようなフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体およびテトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン-フッ化ビニリデン共重合体を用いると、特に目ヤニの発生が少ない表皮部材が得られる。
【0054】
また、ここで用いられるフッ素系ポリマー(E)は、オレフィン系熱可塑性エラストマーとの分散性を高めるために、あるいは摺動摩耗性改良の効果をさらに高めるために、あらかじめオレフィン系樹脂および/または公知の無機系充填剤とのマスターバッチとなっていても良い。
【0055】
このようなフッ素系ポリマー(E)は、オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)100重量部に対して、0.5〜10重量部、好ましくは0.5〜7重量部の割合で用いられる。
【0056】
本発明に係る樹脂組成物は、オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)、粘度が100万cSt以上のオルガノポリシロキサン(B)、および粘度が10〜100万cSt未満のオルガノポリシロキサン(C)からなる混合物、または、これらの混合物に更にポリオレフィン樹脂(D)、そしてさらにフッ素系ポリマー(E)を含有させた混合物を、上述のオレフィン系熱可塑性エラストマー(A)を得たのと同様に、動的に熱処理することにより得られる。
【0057】
上記の樹脂組成物には、必要に応じて、鉱物油系軟化剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、耐候安定剤、老化防止剤、充填剤、着色剤、滑剤などの添加物を、本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。
【0058】
また、本発明に係る積層体は、熱可塑性エラストマーを芯体として、上記のような樹脂組成物を表皮部材として積層することにより得られる。積層方法は、最終製品の形状、大きさ、要求物性により異なり、特に限定しないが、たとえば、多層押出成形機で芯体と表皮部材とを同時に押出成形して熱融着する方法がある。このような熱融着の方法は、接着剤を必要とせず、簡単な一工程で積層体を得ることができ、しかも芯体と表皮部材の層間接着は強固である。
【0059】
このような熱可塑性エラストマーの積層体は、たとえば、自動車部品では、ガラスランチャンネル、ウィンドモール、サイドモールなどに好適である。
【0060】
【発明の効果】
本発明によれば、ガラスとの摺動性や耐摩耗性は高い性能を保持したままで、しかも押出成形時に目ヤニの発生量が少なく外観に優れた積層体を調製できる表皮部材用樹脂組成物およびそれを用いた積層体が得られる。
【0061】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0062】
【実施例】
エチレン含有量70モル%、ヨウ素価12、ムーニー粘度ML1+4 (100℃)120のエチレン・プロピレン・5-エチリデン-2−ノルボルネン共重合体ゴム65重量部と、MFR(ASTM D 1238−65T、230℃)13g/10分、密度0.91g/cm3 のポリプロピレン35重量部とを、バンバリーミキサーを用いて、窒素雰囲気中、180℃で5分間混練した後、この混練物をロールに通してシート状にし、これをシートカッターで裁断して角ペレットを製造した。
【0063】
次いで、この角ペレットと、1,3-ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン0.2重量部と、ジビニルベンゼン0.2重量部とをヘンシェルミキサーで撹拌混合した。
【0064】
次いで、この混合物を、L/D=40、スクリュー径50mmの2軸押出機を用いて、窒素雰囲気中、220℃で押出してオレフィン系熱可塑性エラストマー(a)を得た。
【0065】
得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー(a)のゲル含量は、上記方法により求めたところ、78重量%であった。
【0066】
次にこのオレフィン系熱可塑性エラストマー(a)と以下の原料とを表1に示す割合で2軸押出機で混練して樹脂組成物のペレットを得た。
オルガノポリシロキサン(b)
東レ・ダウコーニング(株)社製 シリコーンオイル-ポリプロピレンマスターバッチ BY27−002[超高分子量シリコーンオイル含量50重量%、シリコーンオイルの種類;ジメチルポリシロキサン]
オルガノポリシロキサン(c)
東レ・ダウコーニング(株)社製 シリコーンオイル SH200[3000cSt、シリコーンオイルの種類;ジメチルポリシロキサン]
ポリオレフィン樹脂(d−1)
MFR(ASTM D 1238−65T、230℃)13g/10分、密度0.91g/cm3 のポリプロピレン樹脂
ポリオレフィン樹脂(d−2)
135℃デカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]が28dl/gの超高分子量ポリエチレン23重量%と、135℃デカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]が0.73dl/gの低分子量ポリエチレン77重量%とからなるポリエチレン組成物(135℃デカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]が7.0dl/g)
フッ素系ポリマー(e)
住友スリーエム(株)社製 ダイナマーFX-9613(フッ素系ポリマー含量;90%、フッ素系ポリマーの種類;フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体)
【0067】
さらに、この樹脂組成物のペレットで射出成形を行ない、150mm×120mm×3mmの試験片を得た。この試験片を用いて摩擦係数の測定と摺動摩耗性の評価を行った。評価方法を下記に、また、その結果を表1に示す。
摩擦係数
ASTM D1894−75に準じる。200gの荷重で、ガラスに対する動摩擦係数と静摩擦係数を測定した。
摺動摩耗性
図1に示すように、樹脂組成物の射出成形試験片の表面に、ガラス摩耗子(幅20mm、高さ30mm、厚み4.5mm)を接触させ、摺動摩耗試験機においてこのガラス摩耗子に、3kgの荷重をかけて、100mmのストロークで10,000回の摺動試験を行い、試料の摩耗深さ(μm)を測定した。
【0068】
また、得られた樹脂組成物のペレットを使用し、スクリュー径50mm、L/Dが28、圧縮比4.0のフルフライト型スクリューを有する一軸押出機と、それに取り付けた開口部25mm×1mmのダイを用いて、前記一軸押出機の導入部からダイ出口を160℃〜210℃のグラジエント昇温により、テープ状の成形品を12kg/hrで30〜90分間押出し、目ヤニを秤量した。尚、目ヤニ量は1ton押出し時の量に換算して表した。結果を表1に示す。
【0069】
グラジエント昇温
各ゾーン(C1〜C4)、ヘッド(H)およびダイ(D)の設定温度
C1/C2/C3/C4/H/D=160/170/180/190/200/210(℃)
【0070】
【比較例1〜4】
オレフィン系熱可塑性エラストマー(a)、オルガノポリシロキサン(b)、オルガノポリシロキサン(c)を表1に示す割合で用いた以外は、実施例と同様にして樹脂組成物の製造、成形を行ない、摩擦係数の測定と摺動摩耗性および目ヤニの評価を行った。結果を表1に示す。なお比較例4では、オルガノポリシロキサン(b)を用いなかった。
【0071】
【表1】
【0072】
上記実施例および比較例に示された各組成物は、耐熱安定剤0.1重量部、耐候安定剤(紫外線吸収剤)0.2重量部および耐候安定剤(耐光安定剤)0.1重量部が添加されたものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明に係る表皮部材用樹脂組成物の射出成形試験片における摺動摩耗性の測定方法を説明するための概略斜視図である。
【符号の説明】
1・・・試験片
2・・・ガラス摩耗子
Claims (10)
- 完全または部分架橋されたオレフィン系熱可塑性エラストマー(A)100重量部と、粘度[JIS K2283、25℃]が1×106cSt以上のオルガノポリシロキサン(B)2〜20重量部と、粘度[JIS K2283、25℃]が10〜1×106未満cStのオルガノポリシロキサン(C)0.5〜5重量部とからなる表皮部材用樹脂組成物。
- 完全または部分架橋されたオレフィン系熱可塑性エラストマー(A)100重量部と、粘度[JIS K2283、25℃]が1×106cSt以上のオルガノポリシロキサン(B)2〜20重量部と、粘度[JIS K2283、25℃]が10〜1×106未満cStのオルガノポリシロキサン(C)0.5〜5重量部と、ポリオレフィン樹脂(D)5〜150重量部とからなる表皮部材用樹脂組成物。
- 前記オルガノポリシロキサン(B)の粘度が1×106〜1×108cStである請求項1または2に記載の表皮部材用樹脂組成物。
- さらにフッ素系ポリマー(E)0.5〜10重量部を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の表皮部材用樹脂組成物。
- 熱可塑性エラストマーからなる芯体に、請求項1ないし4のいずれかに記載の組成物からなる表皮部材を積層することによって構成される積層体。
- 表皮部材用樹脂組成物として請求項1〜4のいずれかに記載の表皮部材用樹脂組成物を用い、該表皮部材用樹脂組成物を押出し成形することを特徴とする、表皮部材用樹脂組成
物の押出し成形時における目ヤニ発生量の低減方法。 - 完全または部分架橋されたオレフィン系熱可塑性エラストマー(A)100重量部、粘度 [JIS K2283 、 25 ℃ ] が1×10 6 cSt以上のオルガノポリシロキサン(B)2〜20重量部、および粘度 [JIS K2283 、 25 ℃ ] が10〜1×10 6 未満cStのオルガノポリシロキサン(C)0.5〜5重量部を含有する混合物を動的に熱処理して表皮部材用樹脂組成物を得て、
該表皮部材用樹脂組成物を押出し成形する
ことを特徴とする成形体の製造方法。 - 完全または部分架橋されたオレフィン系熱可塑性エラストマー(A)100重量部、粘度 [JIS K2283 、 25 ℃ ] が1×10 6 cSt以上のオルガノポリシロキサン(B)2〜20重量部、粘度 [JIS K2283 、 25 ℃ ] が10〜1×10 6 未満cStのオルガノポリシロキサン(C)0.5〜5重量部、およびポリオレフィン樹脂(D)5〜150重量部を含有する混合物を動的に熱処理して表皮部材用樹脂組成物を得て、
該表皮部材用樹脂組成物を押出し成形する
ことを特徴とする成形体の製造方法。 - 前記オルガノポリシロキサン(B)の粘度が1×10 6 〜1×10 8 cStであることを特徴とする請求項7または8に記載の成形体の製造方法。
- 前記混合物がさらにフッ素系ポリマー(E)0.5〜10重量部を含有することを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の成形体の製造方法。
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