JP3949959B2 - 回転電機の固定子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、タービン発電機など大型の回転電機における固定子巻線端部を電磁力による振動を低減可能に固定するようにした回転電機の固定子に関する。
【0002】
【従来の技術】
タービン発電機に代表される回転界磁型回転電機において、固定子巻線の導体は固定子鉄心のスロット内部に挿入されて直線部を形成しているが、鉄心両端の巻き返し部分では鉄心スロットより空間に突き出る構造となっている。
【0003】
この巻線導体は、鉄心スロットの内部で全面が強固に固定されているのに対して、巻線端部では空中に露出していることから支持が少なく、剛性が低くなっている。
【0004】
ところで、巻線導体には導体への通電により電磁力が導体自体に発生するという特徴的な現象があり、この電磁力の作用によって導体に振動が発生する。したがって、巻線端部では導体に強固な剛性を与えるために種々の補強構造を設けて導体に発生する電磁振動の低減を図る必要がある。
【0005】
図13は回転電機の固定子巻線端部の構造を示す断面図である。
【0006】
図13において、固定子巻線導体の上コイル導体1は鉄心端部2からサイクロイド曲線に沿って伸び、先端部3で下コイル導体4に反転接続される。下コイル導体4は先端部3から上コイル導体1の外周側をサイクロイド曲線に沿って鉄心端部2に戻される。
【0007】
また、固定子巻線には電流の取り出し口である接続導体6が配設されている。この接続導体6は上コイル導体1、あるいは下コイル導体4に先端部3で接続して、下コイル導体4の外周部に沿って配設された円弧状の位相リング7に連結されている。位相リング7は口出し導体8に接続されており、発電機の場合では固定子巻線に発生した電流は口出し導体8より外部に出力される。
【0008】
さらに、上コイル導体1および下コイル導体4は電磁力に対抗するためにガラス・ロービング9で導体同士を糸縛りするとともに、環状補強部材であるバインド・リング10に結び付けられている。また、下コイル導体4の外周には鉄心端部の押え板5に固定されたバインド・リング支え11が設けられている。
【0009】
このバインド・リング支え11はバインド・リング10を支承して巻線端部全体を支持するものであるが、外周部で位相リング7と糸縛りで結合されており、位相リング7の保持機能をも併せ持っている。
【0010】
上述のように巻線端部の導体には、導体に流れる電流が作る磁界の相互作用により導体そのものに電磁力が作用する。このため、導体に流れる電流によって直接導体に力が作用するので、通常の振動問題のように加振力を低減することによって振動を抑制することは困難であり、低振動化を図るには構造上の問題がある。
【0011】
最近では、例えば公開特許公報「特開平11−299158号」に示されるようにコイル導体同士の結合を強化して導体の支持剛性を増強させるのが導体の振動を抑制するのに有効と考えられていた。
【0012】
この技術では、図14に示すように鉄心端2から伸び出した多数の巻線導体12(上コイル導体または下コイル導体)の中間に、電気的絶縁性と耐熱性を有した素材から形成される振動吸収材13を圧縮状態で挿入するようにしたものである。この振動吸収材は圧入されていることから、高い剛性を有しており、巻線導体12相互間を強固に固定することができる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
このような巻線導体の固定構造では、巻線導体相互の相対変位を拘束できるが、接続導体やこれに接続する上コイル導体や下コイル導体については大きな効果が期待できない。
【0014】
一般に、巻線導体の電磁振動は導体の中間部における振幅よりも固定点である鉄心端から離れた先端部での振幅が大きくなる。特に、接続導体に接続された巻線導体の先端部での振幅は、上コイル導体と下コイル導体がシリーズに接続されたシリーズ導体の先端部よりも大きくなる傾向が見られる。
【0015】
この現象は位相リングの端部が拘束されていないために位相リングの振動が接続導体に伝えられて発生するものであるが、接続導体は位相リングの端部を支点とする片持ちはりを形成しているために端部の振動が増幅されて、接続導体の端部における振動変位は著しく大きくなる。
【0016】
さらに、接続導体は巻線導体と比較して電流密度が高くなることから、導体断面の形状が太くなっている上に一体構造で形成されているため、接続導体の剛性は巻線導体の剛性よりも著しく高くなっている。このため、接続導体の振動によって剛性の低い巻線導体との接続部に大きな荷重を作用させるので、巻線導体に損傷を起こす可能性はシリーズ導体よりも著しく高いものと考えられる。
【0017】
図15は、回転電機の固定子巻線端部について有限要素法による構造解析と電磁解析で求めた電磁力とを連結して電磁振動計算を行った結果である。
【0018】
図15によれば、次のようなことが指摘される。
【0019】
(1)巻線導体の先端部3における振幅が大きいこと
(2)接続導体6(6a,6b)の先端の変位が大きいこと
(3)接続導体6の変位により引張られて接続導体に接続される巻線導体が大きく変形していること
(4)接続導体6の振動は位相リング7(7a,7b)の変形に伴なうものであること
(5)位相リング7の振動は接続導体6との接続点で大きいこと
なお、図中1は上コイル導体、4は下コイル導体である。
【0020】
特に、上部に位置する2本の位相リング7a、7bは支持点である口出し導体8から最も距離が長いことから、接続導体6につながる端部での変位が大きくなっている。
【0021】
このように巻線導体相互の結合剛性を高めることを目的とした従来技術では、位相リングに起因し、接続導体を介して巻線導体に伝えられる電磁振動には十分な振動低減の効果は期待できない。
【0022】
本発明の目的は、位相リングの支持剛性を強化してその振動を低減させることにより、巻線導体の弱点である接続導体との接続部の振動を抑制して固定子巻線端部の信頼性を向上させることができる回転電機の固定子を提供することにある。
【0023】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記の目的を達成するため、次のような手段により回転電機の固定子を構成する。
【0024】
請求項1に対応する発明は、回転電機の固定子巻線端部において、巻線導体につながる接続導体と口出し導体とを接続する2本の円弧状の位相リングが円周方向に沿って配設され、且つ各位相リングの前記接続導体との接続端部を互いに円周方向で対向配置すると共に、この接続端部の対向間に間隔ブロックを介挿して対向部分を固定する構成とし、前記一方の位相リングの接続導体は他方の位相リングを交差させて前記一方の位相リングの接続端部に接続される。
【0025】
上記請求項1に対応する発明によれば、それぞれの位相リングの接続端部の剛性が高められるので、電磁力による位相リングの振動が低減され、巻線導体全体の振動を抑制して信頼性を向上することができる。
【0026】
請求項2に対応する発明は、請求項1に対応する発明の回転電機の固定子において、両位相リングの接続端部をそれぞれ外部より支持する。
【0027】
上記請求項2に対応する発明によれば、位相リングの剛性を一層高めることができる。
【0028】
請求項3に対応する発明は、請求項1又は請求項2に対応する発明の回転電機の固定子において、円周方向に沿って配設される2本の位相リングが同一平面上にあるとき、各々の位相リングの前記接続導体との接続端部の一方あるいは両方を半径方向にずらして対向させる。
【0029】
請求項4に対応する発明は、請求項1又は請求項2に対応する発明の回転電機の固定子において、円周方向に沿って配設される2本の位相リングが同一平面上にあるとき、各々の位相リングの前記接続導体との接続端部の一方あるいは両方を軸方向にずらして対向させる。
【0030】
上記請求項3及び請求項4に対応する発明によれば、位相リングの干渉を回避しつつ位相リングの連結を図ることができる。
【0031】
請求項5に対応する発明は、請求項1又は請求項2に対応する発明の回転電機の固定子において、円周方向に沿って配設される2本の位相リングが軸方向に離れているとき、位相リングの前記接続導体との接続端部の一方あるいは両方を対向部分の間隔が狭まるように軸方向に折曲したものである。
【0032】
上記請求項5に対応する発明によれば、位相リングの間の固定を強固にすることができる。
【0033】
請求項6に対応する発明は、回転電機の固定子巻線端部において、巻線導体につながる接続導体と口出し導体とを接続する2本の円弧状の位相リングが円周方向に沿い、且つ接続端部が適宜離間して配設され、これら両位相リングの接続端部間に補強部材を配置すると共に、両方の位相リングを連結する構成とし、前記一方の位相リングの接続導体は前記補強部材を交差させて前記一方の位相リングの接続端部に接続される。
【0034】
請求項7に対応する発明は、請求項6に対応する発明の回転電機の固定子において、補強部材に電気絶縁性の材料を用いる。
【0035】
請求項8に対応する発明は、請求項6又は請求項7に対応する発明の回転電機の固定子において、位相リングを連結する補強部材を外部より支持する。
【0036】
上記請求項6乃至請求項8に対応する発明によれば、位相リング端部の剛性を高め、電磁振動の低減をはかる。特に、請求項7に対応する発明では、補強部材に電気絶縁性の材料を用いることにより信頼性が向上する。また、請求項8に対応する発明は、補強部材を外部から支持することにより固定を強固とするものである。
【0046】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0047】
図1は本発明の第1の実施の形態である回転電機の固定子巻線端部の構成を示す斜視図である。
【0048】
図1に示すように、2本の円弧状の位相リング7a、7bを円周方向に沿い、且つ軸方向に適宜の間隔を存して配設すると共に、これら2本の位相リング7a、7bの接続端部を互いに軸方向間で対向させ、この対向面間に間隔ブロック14を挿入し、この部分をガラス・ロービング15による糸縛りを施して位相リング7aと7bの接続端部を結合する。
【0049】
これらの位相リング7a、7bの接続端部は、それぞれの先端が半径方向に折り曲げられて接続導体6a、6bに接続され、さらに接続導体6aは上コイル導体1の先端部3に、接続導体6bは下コイル4の先端部3にそれぞれ接続される。
【0050】
この場合、接続導体6a,6bは半径方向に伸びる導体部と軸方向に伸びる導体部からなり、接続導体6bの軸方向に伸びる導体部は位相リング7aの接続端部の下方を交差させて位相リング7bの接続端部の先端に接続される。
【0051】
なお、位相リング7a,7bはそのリング上の適宜の個所がバインド・リング支え11により支持されている。
【0052】
このように位相リング7a、7bの接続端部を接続して一体化することにより、全体が環状体に形成される。
【0053】
このような回転電機の固定子巻線端部の構成とすれば、円周方向に沿い、且つ軸方向に適宜の間隔を存して配設された2本の円弧状の位相リング7a、7bの接続端部を軸方向間で対向させることにより、両者を互いに結合部材を介して結合させることができる。
【0054】
また、2本の位相リング7a、7bは一体化されて環状構造物を形成しているので、従来のようにそれぞれが単独で形成される場合と比べて高い剛性を持たせることができる。特に、接続導体6a、6bに接続される巻線端部の近傍で位相リング7a、7bの接続端部を結合しているので、接続導体とつながる接続端部先端の振動が小さく抑えられる。
【0055】
したがって、位相リング7a、7bの接続端部の振動を低減できるので、接続導体6a、6bを介して上コイル導体1および下コイル導体4に伝播する振動が抑制されるので、回転電機の巻線端部における信頼性を大きく向上することができる。
【0056】
図2は、本発明の第2の実施の形態である回転電機の固定子巻線端部の構成を示す斜視図である。
【0057】
図2に示すように、2本の円弧状の位相リング7a、7bを円周方向に沿い、且つ軸方向に適宜の間隔を存して配設すると共に、これら2本の位相リング7a、7bの接続端部を互いに軸方向間で対向させ、この位相リング7aと7bの接続端部の対向面間に間隔ブロック14を挿入し、この部分をガラス・ロービング15による糸縛りを施して位相リング7aと7bの接続端部を結合する。
【0058】
これらの位相リング7a、7bの接続端部は、それぞれの先端が半径方向に折り曲げられて接続導体6a、6bに接続され、さらに接続導体6aは上コイル導体1の先端部3に、接続導体6bは下コイル4の先端部3にそれぞれ接続される。
【0059】
この場合、接続導体6a,6bは半径方向に伸びる導体部と軸方向に伸びる導体部からなり、接続導体6bの軸方向に伸びる導体部は位相リング7aの接続端部の下方を交差させて位相リング7bの接続端部の先端に接続される。
【0060】
また、間隔ブロック14による位相リング7aと7bの連結部の近傍に支え板16を設け、ガラス・ロービング15を用いて位相リング7a、7bを支え板16に固定する。この支え板16はバインド・リング支え11の持つバインド・リング支持の機能を併せ持つこともできる。
【0061】
なお、位相リング7a,7bはそのリング上の適宜の個所がバインド・リング支え11により支持されている。
【0062】
このように位相リング7a、7bの接続端部を接続して一体化することにより、全体が環状体に形成される。
【0063】
このような回転電機の固定子巻線端部の構成とすれば、第1の実施の形態と同様の作用効果が得られることに加え、位相リング7a,7bの接続端部の対向部を糸縛り15で連結するとともに、支え板16によって位相リング7a,7bを接続導体6a、6bに接続するそれぞれの端部に近い位置で支持するようにしているので、位相リング7a、7bは一体化されて剛性が上がり、特に接続導体6a、6bとの接続部の振動が抑制されるので、巻線導体への荷重を低減することができる。
【0064】
図3は本発明の第3の実施の形態である回転電機の固定子巻線端部の構成を示す斜視図である。
【0065】
図3に示すように、2本の円弧状の位相リング7a、7bを円周方向に沿い、且つ同一平面上に配設すると共に、これら2本の円弧状の位相リング7a、7bの接続端部を互いに半径方向で対向させ、この位相リング7aと7bの接続端部の対向面間に間隔ブロック14を挿入すると共に、この部分をガラス・ロービング15による糸縛りを施して位相リング7aと7bの接続端部を結合する。
【0066】
本実施の形態では、片方の位相リング7bの接続端部を位相リング7aの接続端部の下面側に位置する方向に曲げ、位相リング7aの接続端部の下面側を通して両者を対向させている。
【0067】
これらの位相リング7a、7bの接続端部は、それぞれの先端が軸方向に折り曲げられて接続導体6a、6bに接続され、さらに接続導体6aは上コイル導体1の先端部に、接続導体6bは下コイルの先端部にそれぞれ接続される。
【0068】
この場合、接続導体6a,6bは半径方向に伸びる導体部と軸方向に伸びる導体部からなり、接続導体6aの軸方向に伸びる導体部は位相リング7bの接続端部の上方を交差させて位相リング7aの接続端部の先端に接続される。
【0069】
このような回転電機の固定子巻線端部の構成とすれば、第1の実施の形態と同様の作用効果が得られることに加え、2本の位相リング7a、7bを同一平面上に配置することで接続端部に干渉が生じる場合でも、両者の接続端部を対向させて連結することができる。
【0070】
図4は本発明の第4の実施の形態である回転電機の固定子巻線端部の構成を示す斜視図である。
【0071】
図4に示すように、2本の円弧状の位相リング7a、7bを円周方向に沿い、且つ同一平面上に配設すると共に、これら2本の円弧状の位相リング7a、7bの接続端部を互いに軸方向で対向させ、この位相リング7aと7bの接続端部の対向面間に間隔ブロック14を挿入すると共に、この部分をガラス・ロービング15による糸縛りを施して位相リング7aと7bの接続端部を結合する。
【0072】
本実施の形態では、片方の位相リング7bの接続端部を位相リング7aの先端の外側方向に曲げ、位相リング7aの接続端部の外側面を通して両者を対向させている。
【0073】
これらの位相リング7a、7bの接続端部は、それぞれの先端が半径方向に折り曲げられて接続導体6a、6bに接続され、さらに接続導体6aは上コイル導体1の先端部に、接続導体6bは下コイルの先端部にそれぞれ接続される。
【0074】
この場合、接続導体6a,6bは半径方向に伸びる導体部と軸方向に伸びる導体部からなり、接続導体6aの軸方向に伸びる導体部は位相リング7bの接続端部の下方を交差させて位相リング7aの接続端部の先端に接続される。
【0075】
このような回転電機の固定子巻線端部の構成とすれば、第1の実施の形態と同様の作用効果が得られることに加え、2本の位相リング7a、7bを同一平面上に配置することで接続端部に干渉が生じる場合でも、両者の接続端部を対向させて連結することができる。
【0076】
図5は本発明の第5の実施の形態である回転電機の固定子巻線端部の構成を示す斜視図である。
【0077】
図5に示すように、2本の円弧状の位相リング7a、7bを円周方向に沿い、且つ互いに軸方向に適宜離間させて配設し、これら両者の接続端部間に間隔ブロックを挿入して糸縛りによって連結すると、糸縛りのガラス・ロービングの長さが長くなって張力が弱まり連結剛性が低下する恐れが生じる。
【0078】
そこで、第5の実施の形態では、位相リング7aをその接続端部の近傍を外側方向に折り曲げて接続導体6aに接続し、位相リング7bをその接続端部の近傍を内側方向に折り曲げて接続導体6bに接続する。すなわち、位相リング7a、7bの接続端部をそれぞれ間隔が狭まるように折り曲げ、両者を軸方向に対向させ、この位相リング7aと7bの接続端部の対向面間に間隔ブロック14を挿入すると共に、この部分をガラス・ロービング15による糸縛りを施して位相リング7aと7bの接続端部を結合する。
【0079】
この場合、接続導体6a,6bは半径方向に伸びる導体部と軸方向に伸びる導体部からなり、接続導体6aの軸方向に伸びる導体部は位相リング7bの接続端部の下方を交差させて位相リング7aの接続端部の先端に接続される。
【0080】
このような回転電機の固定子巻線端部の構成とすれば、第1の実施の形態と同様の作用効果が得られることに加え、位相リング7a、7bが軸方向に離れた円周方向に配設された場合でも、連結の剛性を低下させることなく連結することができる。
【0081】
図6は本発明の第6の実施の形態である回転電機の固定子巻線端部の構成を示す斜視図である。
【0082】
図6に示すように、円周方向に沿い、且つ互いに軸方向に離れた2本の円弧状の位相リング7a、7bが配設しても全体が環状とならない場合、各位相リング7a、7bの接続端部間に円弧形状の補強部材17を配置すると共に、この補強部材17の両端に対応する部分を位相リング7a、7bの接続端部に糸縛り18でそれぞれ連結する。
【0083】
この場合、接続導体6a,6bは半径方向に伸びる導体部と軸方向に伸びる導体部からなり、接続導体6bの軸方向に伸びる導体部は補強部材17の下方を交差させて位相リング7bの接続端部の先端に接続される。
【0084】
このような回転電機の固定子巻線端部の構成とすれば、位相リング7a、7bは環状の構造を形成するので、接続導体6a、6bの接続部における支持剛性が高まり、電磁振動を低減することができる。
【0085】
また、位相リング7a、7bの表面は一般に絶縁処理が施されているが、より高い電気的絶縁性を持たせるためには、補強部材17の材質としてガラス・エポキシのような絶縁材を用いることが有効である。
【0086】
図7は本発明の第7の実施の形態である回転電機の固定子巻線端部の構成を示す斜視図である。
【0087】
図7に示すように、円周方向に沿い、且つ互いに軸方向に離れた2本の円弧状の位相リング7a、7bが配設しても全体が環状とならない場合、各位相リング7a、7bの接続端部間に円弧形状の補強部材17を配置して、この補強部材17の両端に対応する部分を位相リング7a、7bの接続端部に糸縛り18でそれぞれ連結する。この場合、補強部材17には支え板19が取付けられ、この支え板19により補強部材17が支持される。
【0088】
この場合、接続導体6a,6bは半径方向に伸びる導体部と軸方向に伸びる導体部からなり、接続導体6bの軸方向に伸びる導体部は補強部材17の下方を交差させて位相リング7bの接続端部の先端に接続される。
【0089】
このような回転電機の固定子巻線端部の構成とすれば、補強部材17を支え板19により支持するので、補強部材17は高い剛性を持ち、補強部材17に連結された位相リング7a、7bの振動を抑制することができる。また、支え板19にバインド・リングを支持する機能を持たせることもできる。
【0090】
図8は本発明の第8の実施の形態である回転電機の固定子巻線端部の構成を示す斜視図である。
【0091】
本実施の形態では、図8に示すように1本の位相リング7と、この位相リング7に軸方向に適宜の距離を存して補強リング20を配置し、位相リング7に接続導体6の軸方向に伸びる導体部を接続すると共に、この接続導体の並び方向にガラス・ロービングによる糸縛り18により位相リングに結合されたバインド・リング支え11によって補強リング20を支持させ、この補強リング20に接続導体6を固定する。
【0092】
このような回転電機の固定子巻線端部の構成とすれば、接続導体6の変位は補強リング20によって拘束されるので、接続導体6の電磁振動を抑制できる。
【0093】
図9は本発明の第9の実施の形態である回転電機の固定子巻線端部の構成を示す斜視図である。
【0094】
第9の実施の形態では、図9に示すように2本の位相リング7a、7bを環状の導体で形成し、これら位相リング7a、7bを下コイル導体4の外周に沿って配置すると共に、バインド・リング支え11によって支持する。
【0095】
図10は上記位相リング7aの構成を示す正面図である。
【0096】
図10に示すように位相リング7aには、2本の接続導体6a、6a’と口出し導体8aが接続されている。なお、図中23,24,25は位相リング分割点であり、また26は口出し導体分割点である。
【0097】
この位相リング7aは、円環形状をなしているので全体の剛性が高く、接続導体6a、6a’との接続部での電磁振動を位相リング7a自体の構造で抑制することができる。
【0098】
一方、図12は従来の位相リング7aの構成を示す正面図であるが、従来の位相リング7aは口出し導体8aから両側に導体が円弧状に伸びており、両方の円弧の終端に接続導体6a、6bが接続される構造になっている。
【0099】
この構造では、両側の位相リング導体は口出し導体8aとの接続部を支点とする片持ちはり構造をなしているので、終端である接続導体6a、6bにおける剛性は図10の本発明と比較して著しく低いものである。
【0100】
このような回転電機の固定子巻線端部の構成とすれば、位相リングを円環形状に構成することにより、高い剛性を有し、接続導体に発生する電磁振動を抑制することができる。
【0101】
図11は本発明の第10の実施の形態である回転電機の固定子巻線端部における位相リングの正面図である。
【0102】
図11に示すように、前述した第9の実施の形態において、接続導体の接続位置を口出し導体の接続位置に対して対称に配置したものである。即ち、位相リング7aは円環形状で、下部で口出し導体8aが接続されている。また、位相リング7aには接続導体6aが位相リング7aの中心に対して口出し導体8aの接続位置から180°の位置から分岐している。この接続導体6aは分岐点から位相リング7aの内周に沿って下コイル導体4との接続位置まで伸びている。
【0103】
さらに、接続導体6aと位相リング7aとの間には間隔ブロック21が挿入され、ガラス・ロービング22による糸縛りによって固定されている。もう一つの接続導体6a’は口出し導体8aの接続点と同一位置から位相リングの7aの内周に沿って上コイル導体との接続位置まで伸びている。接続導体6a’も同様に位相リング7aの間に挿入された間隔ブロック21を介してガラス・ロービング22による糸縛りによって固定されている。
【0104】
このような回転電機の固定子巻線端部の構成とすれば、接続導体6aの位相リング7aからの分岐点から口出し導体8aの接続点までの位相リング7aに沿った距離は、分岐点の両側で等距離となる。この場合、位相リング7aの両側で導体の電気抵抗は等しくなるので流れる電流も等しくなる。
【0105】
したがって、位相リング7aの円環部分の導体断面積を従来の1/2にすることができる。また、発熱均一となるので位相リングにかかる荷重も均等化されて安定した支持ができる。これにより、分岐した接続導体6a、6a’は円環形状の位相リング7aと密接に固定することができるので、高い剛性が得られ、電磁振動を抑制できる。
【0106】
本発明の第11の実施の形態である回転電機の固定子巻線端部における位相リングの構造を図10を用いて説明する。
【0107】
第11の実施の形態では、図10に示すように位相リング7a、口出し導体8aを分割して製作した上で、組立時に接合する。図10で位相リング7aは分割点23、24、25で接合されている。また、口出し導体8aは分割点26で位相リング7aと接合されている。
【0108】
一般に固定子巻線は固定子フレームの内部に設置されるもので、位相リング7aを円環形状のまま設置することは困難である。
【0109】
位相リングは一般に固定子フレームの内部で組立られる。円環形状の位相リングを狭隘な固定子フレームの内部に搬入し、組立られるにはそのままの形状では困難である。
【0110】
本実施の形態によれば、位相リング7aおよび口出し導体8aを分割して設置場所に搬入できるので、巻線端部の組立製造が容易となる。
【0111】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、回転電機の固定子巻線端部において、通電による巻線導体に発生する電磁振動を低減して信頼性の高い回転電機の固定子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による回転電機の固定子巻線端部の第1の実施の形態を示す斜視図。
【図2】本発明による回転電機の固定子巻線端部の第2の実施の形態を示す斜視図。
【図3】本発明による回転電機の固定子巻線端部の第3の実施の形態を示す斜視図。
【図4】本発明による回転電機の固定子巻線端部の第4の実施の形態を示す斜視図。
【図5】本発明による回転電機の固定子巻線端部の第5の実施の形態を示す斜視図。
【図6】本発明による回転電機の固定子巻線端部の第6の実施の形態を示す斜視図。
【図7】本発明による回転電機の固定子巻線端部の第7の実施の形態を示す斜視図。
【図8】本発明による回転電機の固定子巻線端部の第8の実施の形態を示す斜視図。
【図9】本発明による回転電機の固定子巻線端部の第9の実施の形態を示す斜視図。
【図10】同実施の形態における位相リングの正面図。
【図11】本発明による回転電機の固定子巻線端部の第10の実施の形態を示す構成図。
【図12】従来の回転電機の固定子巻線端部における位相リングを示す正面図。
【図13】従来の回転電機の固定子巻線端部を示す断面図。
【図14】従来の回転電機の固定子巻線端部の固定手段を説明するための図。
【図15】従来の回転電機の固定子巻線端部における電磁振動解析結果を示す図。
【符号の説明】
1…上コイル導体
2…鉄心端部
3…導体先端部
4…下コイル導体
5…鉄心端部
6…接続導体
7…位相リング
8…口出し導体
9…ガラス・ロービング
10…バインド・リング
11…バインド・リング支え
12…巻線導体
13…振動吸収材
14…間隔ブロック
15…ガラス・ロービング
16…支え板
17…補強部材
18…ガラス・ロービング
19…支え板
20…補強部材
21…間隔ブロック
22…ガラス・ロービング
23…位相リング分割点
24…位相リング分割点
25…位相リング分割点
26…口出し導体分割点
Claims (8)
- 回転電機の固定子巻線端部において、巻線導体につながる接続導体と口出し導体とを接続する2本の円弧状の位相リングが円周方向に沿って配設され、且つ各位相リングの前記接続導体との接続端部を互いに円周方向で対向配置すると共に、この接続端部の対向間に間隔ブロックを介挿して対向部分を固定する構成とし、前記一方の位相リングの接続導体は他方の位相リングを交差させて前記一方の位相リングの接続端部に接続されることを特徴とする回転電機の固定子。
- 請求項1に記載の回転電機の固定子において、両位相リングの接続端部をそれぞれ外部より支持することを特徴とする回転電機の固定子。
- 請求項1又は請求項2に記載の回転電機の固定子において、円周方向に沿って配設される2本の位相リングが同一平面上にあるとき、各々の位相リングの前記接続導体との接続端部の一方あるいは両方を半径方向にずらして対向させたことを特徴とする回転電機の固定子。
- 請求項1又は請求項2に記載の回転電機の固定子において、円周方向に沿って配設される2本の位相リングが同一平面上にあるとき、各々の位相リングの前記接続導体との接続端部の一方あるいは両方を軸方向にずらして対向させたことを特徴とする回転電機の固定子。
- 請求項1又は請求項2に記載の回転電機の固定子において、円周方向に沿って配設される2本の位相リングが軸方向に離れているとき、位相リングの前記接続導体との接続端部の一方あるいは両方を対向部分の間隔が狭まるように軸方向に折曲したことを特徴とする回転電機の固定子。
- 回転電機の固定子巻線端部において、巻線導体につながる接続導体と口出し導体とを接続する2本の円弧状の位相リングが円周方向に沿い、且つ接続端部が適宜離間して配設され、これら両位相リングの接続端部間に補強部材を配置すると共に、両方の位相リングを連結する構成とし、前記一方の位相リングの接続導体は前記補強部材を交差させて前記一方の位相リングの接続端部に接続されることを特徴とする回転電機の固定子。
- 請求項6に記載の回転電機の固定子において、補強部材に電気絶縁性の材料を用いることを特徴とする回転電機の固定子。
- 請求項6又は請求項7に記載の回転電機の固定子において、位相リングを連結する補強部材を外部より支持することを特徴とする回転電機の固定子。
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