JP3947982B2 - 炭素材料の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主鎖骨格の一部または全部にポリイン構造またはキュムレン構造を有する炭素材料(いわゆるカルビン系炭素材料)の製造方法に関する。
【0002】
【従来技術とその問題点】
主鎖骨格の一部または全部にカルビン構造を有する炭素材料は、大出力高温エレクトロニクス用半導体などの電子材料、航空宇宙用・核融合用超高温複合材料向けの耐熱性超高強度繊維などの耐熱材料などへの適用が期待されている。
【0003】
カルビン系炭素材料の製造方法は、物理的な方法と化学的な方法に大別される。
【0004】
物理的な方法としては、(a)グラファイトのイオンスパッタリング或いはアーク放電によってカルビンを含む炭素材料を製造する方法(Y. P. Kudryavtsey, et al., Carbon, 30 (1992) 213、Y. P. Kudryavtsev, et al., Carbon, 30 (1992) 213);(b)ポリ塩化ビニル膜に真空中でレーザーを照射し、カルビン状炭素材料を得る方法(M. Shimoyama, et al., Makromol. Chem., 193 (1992) 569)などが知られている。
【0005】
また、化学的な方法としては、以下の様な方法が知られている。
【0006】
(c)アセチレンの脱水素反応をCuCl2溶液中で行う方法(V. I. Kasatochikin, et al.,Carbon, 11 (1973) 70);
(d)ポリアセチレンを塩素化(CHCl)xし、立体規則性に優れたハロゲン化ポリアセチレンを作り、その脱ハロゲン化水素を行う方法。(K. Akagi, et al., Synth. Metal, 17 (1987) 557);
(e)アセチレンを酸素存在下で、第一銅塩と配位子としての第三級アミンからなる触媒を用いて合成する方法(特公平3-44582号);
(f)ポリテトラフルオロエチレン膜をLiの水銀アマルガム中で脱フッ素化を行う方法(L. Kavan, Synth. Metal, 58 (1993) 63);
(g)ポリフッ化ビニリデン(PVDF)のN,N-dimethylfolmamide溶液から作ったPVDF単結晶膜をアセトンを混ぜたエタノールの10%カリウムエチレート溶液で室温で40分間処理し、脱フッ化水素化する方法(Y. P. Kudryavtsev, et al., Carbon, 30 (1992) 213);
(h)ジヨードアセチレンのNi触媒存在下での電極還元による方法(H.Shirakawa,et al.,Chem.Lett.,2011(1994)。
【0007】
しかしながら、物理的な方法は、例えば2700K以上の高温で反応させるため、多様な反応活性種が生成し、高度な構造制御が難しいという問題点がある。また、物理的な方法は、収率や反応規模の面から、カルビン系炭素材料を工業的に大量生産するには不適切な方法である。
【0008】
一方、化学的な方法は、(c)、(e)および(f)は、安全性や環境汚染の面で工業的製法としては採用が困難である。また、(d)および(g)では、ハロゲンが残留するなど、品質や収率の面で問題があり、工業的にカルビンを製造するには新しい反応系の開拓が必要である。(h)は、(d)、(g)と比較すると、ポリイン構造またはキュムレン構造が増加し収率が改善しているが、なお、ハロゲンが多く残存している上に、高価なNi触媒を使用する必要があるなど、これも工業的製法とは言えないものである。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は、高度に構造が制御された高品質なカルビン系炭素材料を、高収率で、安全かつ環境汚染を生じることなく、また高価な触媒などを必要とすることなく、工業的に製造しうる新しい方法を提供することを主な目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の如き従来技術の現状に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、アニオンとして脱離する官能基を有するアセチレン誘導体を、特定の金属を陽極として用い、特定の支持電解質或いは支持電解質と通電助剤の両者と特定の溶媒を用いる電極反応に供することによって、従来技術の問題点が実質的に解消されるか乃至は大幅に軽減されることを見いだした。
【0011】
すなわち、本発明は、下記のカルビン系炭素材料の製造方法を提供するものである。
【0012】
1.炭素材料の製造方法であって、
一般式
XC≡CX (1)
(式中、Xは F、 Cl、 Br、 Iまたは Hを表す;Xは、それぞれ同一でもあるいは2つ以上が相異なっていてもよい。)
で表されるアセチレン誘導体を、Mg、Zn、Alまたはこれらの金属を主成分とする合金を陽極とし、支持電解質単独或いは支持電解質と通電助剤の両者を溶解した非水系有機溶媒中において不活性ガス雰囲気下で行う電極還元反応に供することにより、
一般式
(-C≡C-)n (2)
(式中、nは2〜1000000である)
で示されるポリイン構造または、一般式
(=C=C=)n (3)
(式中、nは2〜1000000である)
で示されるキュムレン構造を主鎖骨格の一部または全部に有する炭素材料を形成させることを特徴とする方法。
【0013】
2.支持電解質としてLiCl、Li2SO4、LiBF4、LiClO4、LiPF6、(C4H9)4NF、(C4H9)4NCl、(C4H9)4NBr、(C4H9)4NI、(C4H9)4NSO4、(C4H9)4NBF4、(C4H9)4NClO4および(C4H9)4NPF6からなる群から選ばれた少なくとも1種を用いる上記項1に記載の方法。
【0014】
3.通電助剤として、AlCl3、Al(OEt)3、FeCl2、FeCl3、MgCl2、ZnCl2、SnCl2、CoCl2、PdCl2、VCl3、CuCl2およびCaCl2からなる群から選ばれた少なくとも1種を用いる上記項1または2に記載の方法。
【0015】
4.非水系有機溶媒として、プロピレンカーボネート、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルホルムアミド、ホルムアミド、エチレンジアミン、ジメチレンスルホキシド、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサン、テトラヒドロフランおよび塩化メチレンからなる群から選ばれた少なくとも1種を10%以上含む混合溶媒を用いる上記項1、2または3に記載の方法。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明において、出発原料として用いるアニオンとして脱離する官能基を有するアセチレン誘導体は、一般式、
XC≡CX (1)
(式中、Xは F、 Cl、 Br、 Iまたは Hを表す;Xは、それぞれ同一でもあるいは2つ以上が相異なっていてもよい。)
で示されるものである。
【0017】
一般式(1)で示されるアセチレン誘導体中の置換基としてのXは、同一でもあるいは2つ以上が相異なっていてもよい。Xとしては、Iがより好ましい。
【0018】
また、本発明における反応生成物は、一般式
(-C≡C-)n (2)
(式中、nは、2〜1000000の整数である)
で示されるポリイン構造または、一般式
(=C=C=)n
(式中、nは2〜1000000の整数) (3)
で示されるキュムレン構造を主鎖骨格の一部または全部に有する炭素材料である。この様な炭素材料は、原料として用いるアセチレン構造を残しつつ、高度に多重結合が発達したポリマーとそのクロスリンクした3次元の高度に多重結合が発達している。
【0019】
一般式(1)で示される原料は、1種を単独で使用しても良く、あるいは2種を併用使用しても良い。
【0020】
電極反応に際しては、一般式(1)で示されるアセチレン誘導体を溶媒に溶解して反応容器に収容して反応に供する。溶媒としては、非水系溶媒が広く使用でき、具体的にはプロピレンカーボネート、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルホルムアミド、ホルムアミド、エチレンジアミン、ジメチレンスルホキシド、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサン、テトラヒドロフラン、塩化メチレンなどが例示される。これらの溶媒は、単独でもあるいは2種以上の混合物としても使用できる。さらに、これらの非水系溶媒の少なくとも1種を10%以上含む混合溶媒を用いてもよい。これらの中では、1,2−ジメトキシエタンおよびテトラヒドロフランがより好ましい。溶媒中のアセチレン誘導体の濃度は、通常0.01〜20mol/l程度、より好ましくは0.05〜10mol/l程度、最も好ましくは0.1〜5mol/l程度である。
【0021】
電極反応に使用する支持電解質としては、LiCl、 Li2SO4、LiBF4、LiClO4、LiPF6などのリチウム塩;(C4H9)4NF、(C4H9)4NCl、(C4H9)4NBr、(C4H9)4NI、(C4H9)4NSO4、(C4H9)4NBF4、(C4H9)4NClO4、(C4H9)4NPF6などの4級アンモニウム塩などが例示される。これらの支持電解質は、単独で使用してもよく、あるいは2種以上を併用しても良い。これらの支持電解質の中では、塩化リチウムおよび過塩素酸リチウムが最も好ましい。支持電解質の濃度は、低すぎる場合には、通電が困難乃至は不可能となって反応が進行しないのに対し、高すぎる場合には、電流が流れすぎて反応に必要な電位が確保できなかったり、支持電解質の金属イオンが陰極で還元されて多量に生成して反応を阻害するなどの問題が生じる。したがって、溶媒中の支持電解質の濃度は、通常0.05〜5mol/l程度であり、より好ましくは、0.1〜3mol/l程度であり、特に好ましくは、0.15〜2.0mol/l程度である。
【0022】
本願発明の電極反応においては、電極反応をより効率的に行うために、支持電解質に加えて通電助剤を併用することにより、通電性の向上を図っても良い。通電助剤としては、AlCl3、Al(OEt)3などのAl塩;FeCl2、FeCl3などのFe塩;MgCl2などのMg塩;ZnCl2などのZn塩;SnCl2などのSn塩;CoCl2などのCo塩;PdCl2などのPd塩;VCl3などのV塩;CuCl2などのCu塩;CaCl2などのCa塩などが好ましいものとして例示される。これらの通電助剤は、単独で使用しても良く、あるいは2種以上を併用しても良い。これら通電助剤の中でも、AlCl3、FeCl2、FeCl3、CoCl2、CuCl2などがより好ましい。
【0023】
溶媒中の通電助剤の濃度は、低すぎる場合には、通電性の向上が充分に達成されず、一方、高すぎる場合には、通電助剤が還元されて、反応に関与しなくなる。従って、溶媒中の通電助剤の濃度は、通常、0.01〜6mol/l程度であり、より好ましくは0.03〜4mol/l程度であり、特に好ましくは0.05〜3mol/l程度である。
【0024】
本願発明の電極反応においては、陽極として、Mg、Zn、Alまたはそれらを主成分とする合金を使用する。Mgを主成分とする合金としては、例えば、Alを3〜10%程度含有するものが挙げられる。また、JIS H 6125-1961に規定されている1種(MGA1)、2種(MGA2、通称AZ63)、3種(MGA3)などが挙げられる。陰極としては、電流を通じうる物質であれば特に限定されないが、SUS304、316などのステンレス鋼;Mg、Cu、Zn、Sn、Al、Ni、Co、白金などの各種金属;炭素材料などが例示される。
【0025】
陰陽極ともに同種の金属を用いる場合には、陰陽極の極性を一定時間間隔毎に切り換えても良い。これによって、陰極上に付着した金属塩などを除去できる。切替の間隔は、1秒乃至10分程度の範囲で行うことが好ましい。
【0026】
電極の形状は、通電を安定して行いうる限り特に限定されないが、棒状、板状、筒状、円錐状、円盤状、球状、あるいはそれらをバスケットに収容したもの、板状体をコイル状に巻いたものなどが好ましい。電極表面の酸化皮膜は、必要ならば、予め除去しておく。電極からの酸化皮膜の除去は任意の方法で行えば良く、例えば、電極を酸により洗浄した後、エタノールおよびエーテルなどにより洗浄し、減圧下に乾燥する方法、窒素雰囲気下に電極を研磨する方法、或いはこれらの方法を組み合わせた方法などにより行うことができる。
【0027】
本発明の電極反応は、例えば、(a)陽極および陰極を設置した密閉可能な反応容器に一般式(1)で表されるアセチレン誘導体および支持電解質と、必要に応じて通電助剤とを、溶媒とともに収容し、好ましくは機械的もしくは磁気的に攪拌しつつ、所定量の電流を通電することにより電極反応を行わせる方法、(b)陽極および陰極を設置した電解槽、反応液貯槽、ポンプ、配管などから構成される流動式電極反応装置を用いて、反応液貯槽にアセチレン誘導体、支持電解質、溶媒、必要に応じて通電助剤を投入し、それらから構成される反応溶液をポンプにより電極反応装置内を循環させつつ、所定量の電流を通電することにより、電解槽内で電極反応を行わせる方法などにより行うことができる。
【0028】
電極反応時の反応容器或いは反応装置内は、乾燥雰囲気であればよいが、乾燥した窒素または不活性ガス雰囲気であることがより好ましく、さらに脱酸素し、乾燥した窒素雰囲気あるいは不活性ガス雰囲気であることが特に好ましい。通電量は、アセチレン誘導体(1)中の脱離基を基準として、1F/mol程度以上あれば良く、通電量を調整することにより、構造の制御が可能となる。また、0.1F/mol程度以上の通電量で生成した炭素材料を系外に取り出し、残存する原料アセチレン誘導体を回収して、再使用することも可能である。反応時間は、原料アセチレン誘導体の量、支持電解質や通電助剤の量などに関係する反応溶液の抵抗などに異なりうるので、適宜定めればよい。反応時の温度は、通常-20℃から使用する溶媒の沸点までの温度範囲にあり、より好ましくは-5〜30℃程度の範囲内にあり、最も好ましくは、0〜25℃程度の範囲内にある。
【0029】
本発明の電極反応においては、通常の電極還元反応においては必須とされている隔膜は、使用しても良いが、必須ではないので、操作が簡便となり、実用上有利である。
【0030】
【発明の効果】
本発明によれば、下記のような顕著な効果が達成される。
【0031】
(a)高度に構造が制御された高品質なカルビン系炭素材料を高収率で製造できる。
【0032】
(b)工業生産に実績のある電極反応を用いた化学的手法なので、カルビン系炭素材料の大量生産に適した方法である。
【0033】
(c)危険な材料や金属を用いず、また室温以下の温和な条件下で反応が行えるので、安全かつ環境汚染の心配なしにカルビン系炭素材料を製造することができる。
【0034】
(d)高価な触媒等を用いないので、安価にカルビン系炭素材料を製造できる。
【0035】
【実施例】
以下に実施例および比較例を示し、本発明の特徴とするところをより一層明確にする。
【0036】
実施例1
三方コックおよびMg製陽極(直径1cm×5cm)およびステンレス鋼(SUS304)製陰極(1cm×1mm×5cm)を装着した内容積30mlの3つ口フラスコ(以下反応器という)にLiCl 0.4gおよびFeCl2 0.24gを収容し、50℃で1mmHgに加熱減圧して、塩化リチウムおよび塩化第一鉄を乾燥した後、ここにジヨードアセチレン0.83g(3mmol)を、スターラーチップとともに仕込んだ。脱酸素した乾燥窒素を反応器内に導入し、さらに予めナトリウム−ベンゾフェノンケチルで乾燥したテトラヒドロフラン15mlを加えた。マグネティックスターラーにより反応溶液を攪拌しながら、ウォーターバスにより反応器を室温に保持しつつ、定電流電源により通電した(初期電圧約50V)。8時間後には黒色の沈殿物が得られた。これを、窒素気流下でテトラヒドロフランを用いて洗浄した。減圧乾燥後、KBrで錠剤を作製し、FT-IR で分析すると、C≡C の吸収バンド (2100 cm-1) が、観測された。また、C-Iの吸収バンド(1200 cm-1) の吸収が観察されなくなった。このことにより、高収率でカルビン系炭素材料が得られたことがわかる。
【0037】
実施例2
陽極としてAlを用いる以外は実施例1と同様にして電極反応を行った。その結果、黒色沈殿物が得られ、そのIR分析において、C≡C の吸収バンド が観測され、 C-Iの吸収バンドの吸収が著しく減少した。これにより、カルビン系炭素材料が合成されたことが明らかとなった。
【0038】
実施例3
陽極としてZnを用いる以外は実施例1と同様にして電極反応を行った。その結果、黒色沈殿物が得られ、そのIR分析においてC≡C の吸収バンド が観測され、C-Iの吸収バンドの吸収が著しく減少した。これにより、カルビン系炭素材料が合成されたことが明らかとなった。
【0039】
比較例1
陽極としてステンレス(SUS304)を用いる以外は実施例1と同様にして電極反応を行った。しかしながら、カルビン系炭素材料の生成を示す黒色の沈殿物は得られなかった。
【0040】
実施例4
陽極としてMg合金(Mg中にAl5%を含有)を用いる以外は実施例1と同様にして電極反応を行った。その結果、黒色沈殿物が得られ、そのIR分析においてC≡C の吸収バンドが観測され、C-Iの吸収バンドの吸収が全く観察されなかった。これにより、カルビン系炭素材料が高収率で合成されたことが明らかとなった。
【0041】
実施例5
陽極としてジュラルミン板(Al合金板)を用いる以外は実施例1と同様にして電極反応を行った。その結果、黒色沈殿物が得られ、そのIR分析においてC≡C の吸収バンドが観測され、C-Iの吸収バンドの吸収が著しく減少した。これにより、カルビン系炭素材料が合成されたことが明らかとなった。
【0042】
実施例6
陽極としてZn合金板(Zn中にAl3%を含有)を用いる以外は実施例1と同様にして電極反応を行った。その結果、黒色沈殿物が得られ、そのIR分析においてC≡C の吸収バンド が観測され、C-Iの吸収バンドの吸収が著しく減少した。これにより、カルビン系炭素材料が合成されたことが確認された。
【0043】
実施例7
陰極として白金板を用いる以外は実施例1と同様にして電極反応を行った。その結果、黒色沈殿物が得られ、そのIR分析においてC≡Cの吸収バンドが観測され、C-Iの吸収バンドの吸収が全く観察されなくなった。これにより、カルビン系炭素材料が高収率で得られたことがわかる。
【0044】
実施例8
陰極としてNiを用いる以外は実施例1と同様にして電極反応を行った。その結果、黒色沈殿物が得られ、そのIR分析においてC≡Cの吸収バンドが観測され、C-Iの吸収バンドの吸収が全く観察されなくなった。これにより、カルビン系炭素材料が高収率で得られたことがわかる。
【0045】
実施例9
溶媒としてN,N-ジメチルホルムアミドを用いる以外は実施例1と同様にして電極反応を行った。その結果、カルビン系炭素材料が高収率で得られた。
【0046】
実施例10
溶媒としてN-メチルホルムアミドを用いる以外は実施例1と同様にして電極反応を行った。その結果、カルビン系炭素材料が得られた。
【0047】
実施例11
溶媒としてホルムアミドを用いる以外は実施例1と同様にして電極反応を行った。その結果、カルビン系炭素材料が得られた。
【0048】
実施例12
溶媒としてエチレンジアミンを用いる以外は実施例1と同様にして電極反応を行った。その結果、カルビン系炭素材料が得られた。
【0049】
実施例13
溶媒として1,2-ジメトキシエタンを用いる以外は実施例1と同様にして電極反応を行った。その結果、カルビン系炭素材料が高収率で得られた。
【0050】
実施例14
溶媒としてジオキサンを用いる以外は実施例1と同様にして電極反応を行った。その結果、カルビン系炭素材料が得られた。
【0051】
実施例15
溶媒としてテトラヒドロフラン(50 vol%)とエチレングリコールジエチルエーテル(50vol%)との混合溶媒を用いる以外は実施例1と同様にして電極反応を行った。その結果、カルビン系炭素材料が得られた。
【0052】
実施例16
溶媒としてテトラヒドロフラン(10 vol%)とエチレングリコールジエチルエーエル(90vol%)との混合溶媒を用いる以外は実施例1と同様にして電極反応を行った。その結果、カルビン系炭素材料が得られた。
【0053】
比較例2
溶媒としてエチルアルコールを用いる以外は実施例1と同様にして電極反応を行った。その結果、黒色沈殿物は得られなかった。このことから、エチルアルコールを溶媒として用いる場合には、カルビン系炭素材料の合成はできないことが明らかである。
【0054】
比較例3
溶媒として酢酸エチルを用いる以外は実施例1と同様にして電極反応を行った。その結果、黒色沈殿物は得られなかった。このことから、酢酸エチルを溶媒として用いる場合には、カルビン系炭素材料の合成はできないことが明らかである。
【0055】
比較例4
溶媒としてクロロホルムを用いる以外は実施例1と同様にして電極反応を行った。その結果、黒色沈殿物は得られなかった。このことから、クロロホルムを溶媒として用いる場合には、カルビン系炭素材料の合成はできないことが明らかである。
【0056】
実施例17
支持電解質としてLi2SO4を用いる以外は実施例1と同様にして電極反応を行った。その結果、カルビン系炭素材料が得られた。
【0057】
実施例18
支持電解質としてLiBF4を用いる以外は実施例1と同様にして電極反応を行った。8時間後に黒色沈殿物が得られた。IR分析において、C≡Cの吸収バンド が観測され、C-Iの吸収バンドの吸収が著しく減少した。これにより、カルビン系炭素材料が合成されたことが確認された。
【0058】
実施例19
支持電解質としてLiClO4を用いる以外は実施例1と同様にして電極反応を行った。8時間後に黒色沈殿物が得られた。IR分析においてC≡Cの吸収バンドが観測され、C-Iの吸収バンドの吸収が全く観察されなかった。これにより、カルビン系炭素材料が高収率で得られることがわかった。
【0059】
実施例20
支持電解質としてLiPF6を用いる以外は実施例1と同様にして電極反応を行った。
【0060】
その結果、カルビン系炭素材料が得られた。
【0061】
実施例21
支持電解質として(C4H9)4NFを用いる以外は実施例1と同様にして電極反応を行った。その結果、カルビン系炭素材料が得られた。
【0062】
実施例22
支持電解質として(C4H9)4NClを用いる以外は実施例1と同様にして電極反応を行った。その結果、カルビン系炭素材料が得られた。
【0063】
実施例23
支持電解質として(C4H9)4NBrを用いる以外は実施例1と同様にして電極反応を行った。その結果、カルビン系炭素材料が得られた。
【0064】
実施例24
支持電解質として(C4H9)4NIを用いる以外は、実施例1と同様にして電極反応を行った。その結果、カルビン系炭素材料が得られた。
【0065】
実施例25
支持電解質として(C4H9)4NSO4を用いる以外は実施例1と同様にして電極反応を行った。その結果、カルビン系炭素材料が得られた。
【0066】
実施例26
支持電解質として(C4H9)4NBF4を用いる以外は実施例1と同様にして電極反応を行った。その結果、カルビン系炭素材料が得られた。
【0067】
実施例27
支持電解質として(C4H9)4NClO4を用いる以外は実施例1と同様にして電極反応を行った。その結果、カルビン系炭素材料が得られた。
【0068】
実施例28
支持電解質として(C4H9)4NPF6を用いる以外は実施例1と同様にして電極反応を行った。その結果、カルビン系炭素材料が得られた。
【0069】
実施例29
支持電解質としてLiClと(C4H9)4NClとの混合物(混合比=1:1)を用いる以外は実施例1と同様にして電極反応を行った。その結果、実施例1と同様のカルビン系炭素材料が得られた。
【0070】
実施例30
支持電解質としてLiBF4と(C4H9)4NBF4との混合物(混合比=2:1)を用いる以外は、実施例1と同様にして電極反応を行った。その結果、カルビン系炭素材料が得られた。
【0071】
比較例5
実施例1と同様であるが、支持電解質を用いない以外は実施例1と同様にしてで電極反応を行った。8時間後においても黒色沈殿物は得られなかった。支持電解質を用いない合成条件では、カルビン系炭素材料は合成されないことが明らかである。
【0072】
実施例31
通電助剤としてAlCl3を用いる以外は実施例1と同様にして電極反応を行った。その結果、8時間後には黒色沈殿物がが得られた。生成沈殿物のIR分析において、C≡Cの吸収バンドが、観測され、C-Iの吸収バンドの吸収が全く観察されなかった。これにより、カルビン系炭素材料が高収率で得られることがわかった。
【0073】
実施例32
通電助剤としてFeCl3を用いる以外は実施例1と同様にして電極反応を行った。その結果、8時間後には黒色沈殿物が得られた。生成沈殿物のIR分析において、C≡Cの吸収バンドが観測され、C-Iの吸収バンドの吸収が全く観察されなかった。これにより、カルビン系炭素材料が高収率で得られることがわかった。
【0074】
実施例33
通電助剤としてCoCl2を用いる以外は実施例1と同様にして電極反応を行った。その結果、8時間後には黒色沈殿物が得られた。生成物のIR分析において、C≡Cの吸収バンドが観測され、C-Iの吸収バンドの吸収が全く観察されなかった。これにより、カルビン系炭素材料が高収率で得られることがわかった。
【0075】
実施例34
通電助剤としてCuCl2を用いる以外は実施例1と同様にして電極反応を行った。その結果、8時間後には黒色沈殿物が得られた。生成物のIR分析において、C≡Cの吸収バンドが観測され、C-Iの吸収バンドの吸収が全く観察されなかった。これにより、カルビン系炭素材料が高収率で得られることがわかった。
【0076】
実施例35
通電助剤としてSnCl2を用いる以外は実施例1と同様にして電極反応を行った。その結果、8時間後には黒色沈殿物が得られた。生成物のIR分析においてC≡Cの吸収バンドが観測され、C-Iの吸収バンドの吸収が全く観察されなかった。これにより、カルビン系炭素材料が高収率で得られることがわかった。
【0077】
実施例36
通電助剤としてPdCl2を用いる以外は実施例1と同様にして電極反応を行った。その結果、8時間後には黒色沈殿物が得られた。生成物のIR分析においてC≡Cの吸収バンドが観測され、C-Iの吸収バンドの吸収が全く観察されなかった。これにより、カルビン系炭素材料が高収率で得られることがわかった。
【0078】
実施例37
通電助剤としてVCl3を用いる以外は実施例1と同様にして電極反応を行った。その結果、8時間後には黒色沈殿物が得られた。生成物のIR分析においてC≡Cの吸収バンドが観測され、C-Iの吸収バンドの吸収が全く観察されなかった。これにより、カルビン系炭素材料が高収率で得られることがわかった。
【0079】
実施例38
通電助剤としてZnCl2を用いる以外は実施例1と同様にして電極反応を行った。その結果、8時間後には黒色沈殿物が得られた。生成物のIR分析においてC≡Cの吸収バンドが観測され、C-Iの吸収バンドの吸収が全く観察されなかった。これにより、カルビン系炭素材料が高収率で得られることがわかった。
【0080】
実施例39
通電助剤としてAlCl3とFeCl2との混合物(混合比1:1)を用いる以外は、実施例1と同様にして電極反応を行った。その結果、8時間後には黒色沈殿物が得られた。生成物のIR分析においてC≡Cの吸収バンドが観測され、C-Iの吸収バンドの吸収が全く観察されなかった。これにより、カルビン系炭素材料が高収率で得られることがわかった。
【0081】
実施例40
通電助剤としてCuCl2とFeCl3との混合物(混合比1:1)を用いる以外は、実施例1と同様にして電極反応を行った。その結果、8時間後には黒色沈殿物が得られた。生成物のIR分析においてC≡Cの吸収バンドが観測され、C-Iの吸収バンドの吸収が全く観察されなかった。これにより、カルビン系炭素材料が高収率で得られることがわかった。
【0082】
実施例41
実施例1と同様であるが、通電助剤を用いない点以外は実施例1と同様にして電極反応を行った。8時間後には黒色沈殿物が得られた。IR分析においてC≡Cの吸収バンドが観測され、C-Iの吸収バンドの吸収が著しく減少した。これにより、カルビン系炭素材料が合成されたことが示された。
【0083】
ただし、C-Iの吸収バンドが明らかに見られ、C≡Cの吸収バンドは観測されるが、吸収は大きくない。これらのことから、電極反応によりカルビン系炭素材料は得られているが、未反応分が残っていることが明らかである。
【0084】
比較例6
実施例1と同様であるが、支持電解質と通電助剤とを用いない以外は実施例1と同様にして電極反応を行ったが、8時間後においても、黒色沈殿物は得られなかった。これにより、本方法では、カルビン系炭素材料が得られないことが示された。
【0085】
実施例42
三方コックおよびMg製陽極(直径1cm×5cm)およびステンレス鋼(SUS304)製陰極(1cm×1mm×5cm)を装着した内容積30mlの3つ口フラスコ(以下反応器という)にLiCl 0.4gおよびFeCl2 0.24gを収容し、50℃で1mmHgに加熱減圧して、塩化リチウムおよび塩化第一鉄を乾燥した後、ここにスターラーチップを装着し、脱酸素した乾燥窒素を反応器内に導入し、さらに予めナトリウム−ベンゾフェノンケチルで乾燥したテトラヒドロフラン15mlを加えた。マグネティックスターラーにより反応溶液を攪拌しながら、ウォーターバスにより反応器を室温に保持しつつ、ジフッ化アセチレンガスを導入管を通じて反応液中にバブリングしながら、定電流電源により通電した(初期電圧約50V)。8時間後には黒色の沈殿物が得られた。
【0086】
生成沈殿物を窒素気流下でテトラヒドロフランを用いて洗浄し、減圧乾燥した後、KBrで錠剤を作製し、FT-IRで分析すると、C≡Cの吸収バンド (2100 cm-1)が、観測された。また、C-Fの吸収バンド(1400 cm-1) の吸収が著しく低減した。このことにより、カルビン系炭素材料が得られたことがわかる。
【0087】
実施例43
出発原料として二塩化アセチレンを用いる以外は実施例1と同様にして電極反応を行った。その結果、8時間後には原料粉末は、黒色に変色して、カーボン状となった。
【0088】
反応生成物のIR分析において、C=C 吸収バンドと、C≡Cの吸収バンドが観測され、 C-Iの吸収バンドの吸収が全く観察されなかった。これにより、カルビン系炭素材料が高収率で得られたことがわかった。
【0089】
実施例44
出発原料として2臭化アセチレン用いる以外は実施例1と同様にして電極反応を行った。
【0090】
その結果、黒色沈殿物が得られ、そのIR分析においてC≡C の吸収バンド が観測され、C-Brの吸収バンドの吸収が著しく低減した。これにより、カルビン系炭素材料が得られることがわかった。
Claims (2)
- 炭素材料の製造方法であって、
ジフッ化アセチレン、ジクロロアセチレン、ジブロモアセチレンおよびジヨードアセチレンからなる群から選ばれた少なくとも1種であるアセチレン誘導体を、Mg、Zn、Alまたはこれらの金属を主成分とする合金を陽極とし、支持電解質単独或いは支持電解質と通電助剤の両者を溶解した非水系有機溶媒中において不活性ガス雰囲気下で行う電極還元反応に供することにより、一般式
(−C≡C−)n (2)
(式中、nは2〜1000000である)で示されるポリイン構造または、一般式
(=C=C=)n (3)
(式中、nは2〜1000000である)で示されるキュムレン構造を主鎖骨格の一部または全部に有する炭素材料を形成させることを特徴とする方法であって、
当該支持電解質が、LiCl、Li2SO4、LiBF4、LiClO4、LiPF6、(C4H9)4NF、(C4H9)4NCl、(C4H9)4NBr、(C4H9)4NI、(C4H9)4NSO4、(C4H9)4NBF4、(C4H9)4NClO4および(C4H9)4NPF6からなる群から選ばれた少なくとも1種であり、かつ
当該非水系有機溶媒が、 N,N- ジメチルホルムアミド、 N- メチルホルムアミド、ホルムアミド、エチレンジアミン、1,2−ジメトキシエタン、p−ジオキサン、及びテトラヒドロフランから選ばれた少なくとも1種或いは、テトラヒドロフランを 10vol% 以上含み残余をエチレングリコールジエチルエーテルとする混合溶媒である、
ことを特徴とする方法。 - 通電助剤として、AlCl3、Al(OEt)3、FeCl2、FeCl3、MgCl2、ZnCl2、SnCl2、CoCl2、PdCl2、VCl3、CuCl2およびCaCl2からなる群から選ばれた少なくとも1種を用いる請求項1に記載の方法。
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