JP3946530B2 - オキシアルキレン基含有ビニルエステル系重合体およびそのケン化物の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、オキシアルキレン基含有ビニルエステル系重合体、特にそのケン化物の製造方法に関し、さらに詳しくはフィルム等の成形用途に供したときの耐着色性に優れ、塩化ビニル等の懸濁重合用分散剤として使用したときには、重合初期の反応時及び重合終了後の未反応モノマー回収時のいずれの場合にも発泡が抑制でき、かつ製品の収率が向上されたオキシアルキレン基含有ビニルエステル系重合体およびそのケン化物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、オキシアルキレン基含有ビニルエステル系重合体やそのケン化物(オキシアルキレン基含有ポリビニルアルコール系樹脂)、特に該ケン化物については、フィルム等の成形用途や塩化ビニル等のビニル系重合体の懸濁重合用分散剤(主分散剤や分散助剤)として利用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このような用途においては、種々の性能が要求されているが、前者のフィルム成形用途においては、熱履歴により着色しないことも重要な要求性能であり、また後者の懸濁重合用分散剤用途においては、重合初期の反応時及び重合終了後の未反応モノマー回収時のいずれの場合にも発泡の抑制が求められるところである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者は、これらの要求性能に答えられるオキシアルキレン基含有ポリビニルアルコール系樹脂を得るべく、製造面からの検討を行った結果、下記の一般式で示されるオキシアルキレン基含有モノマーとビニルエステルモノマーとを有機溶剤中で共重合するにあたり、全仕込量のオキシアルキレン基含有モノマーと全仕込量の50〜99重量%のビニルエステルモノマーを重合系に仕込んで重合を開始し、仕込んだビニルエステルモノマーの重合率が50%以上の時点において残りのビニルエステルモノマーを仕込むことにより、上記の目的に合致するオキシアルキレン基含有ビニルエステル系重合体およびそのケン化物が得られることを見いだし本発明の完成に至った。また、かかる本発明の方法により得られたオキシアルキレン基含有ビニルエステル系重合体およびそのケン化物は、製品の収率にも優れるという特徴も有するものである。
【化1】
(但し、Rは水素又はメチル基、R 1 ,R 2 は水素又はアルキル基、R 3 は水素、アルキル基、アルキルエステル基、アルキルアミド基、スルホン酸基、フェニル基または置換フェニル基のいずれか、nは正の整数を示す。)
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0006】
本発明に用いるオキシアルキレン基含有モノマーとは、下記の一般式(1)で表されるオキシアルキレン基を含有するものである。
【化1】
(但し、R1,R2は水素又はアルキル基、R3は水素、アルキル基、アルキルエステル基、アルキルアミド基、スルホン酸基、フェニル基または置換フェニル基のいずれか、nは正の整数を示す。)
【0007】
上記の一般式(1)において、nの数、即ちオキシアルキレン基の平均鎖長は2〜300程度で、重合時の作業性等を考慮すれば、5〜60程度が好ましい。かかるオキシアルキレン基として具体的には、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシブチレン基等が挙げられる。
【0008】
オキシアルキレン基を有するモノマーとしては、下記の一般式で示される(メタ)アリルエーテル型のものが挙げられ、具体的にはポリオキシエチレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシプロピレン(メタ)アリルエーテル等が挙げられる。
【化2】
(但し、Rは水素又はメチル基、R 1 ,R 2 ,R 3 ,nは前記と同様。)
【0012】
オキシアルキレン基含有モノマーと(共)重合するビニルエステルモノマーとしては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリル酸ビニル、バーサティック酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ピバリン酸ビニル等を挙げることができるが、工業的には酢酸ビニルが好適に用いられる。
【0013】
本発明においては、本発明の目的を阻害しない範囲で、前述した如きオキシアルキレン基含有モノマーやビニルエステルモノマー以外に、他の一般のモノマーを50モル%以下共存させても良い。これらのモノマーを以下に例示する。
[エチレン性不飽和カルボン酸及びそのアルキルエステル等]
クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、イタコン酸メチル、イタコン酸エチル、ソルビン酸メチル、ソルビン酸エチル、マレイン酸モノアルキルエステル、マレイン酸ジアルキルエステル、オレイン酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル等が挙げられる。
【0014】
[飽和カルボン酸のアリルエステル]
ステアリン酸アリル、ラウリン酸アリル、ヤシ油脂肪酸アリル、オクチル酸アリル、酪酸アリル等。
[α−オレフィン]
エチレン、プロピレン、α−ヘキセン、α−オクテン、α−デセン、α−ドデセン、α−ヘキサデセン、α−オクタデセン等。
[エチレン性不飽和カルボン酸]
(メタ)アクリル酸、クロトン酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸ならびにこれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩等。
【0015】
[アルキルビニルエーテル]
プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、デシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、テトラデシルビニルエーテル、ヘキサデシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等。
【0016】
[アルキルアリルエーテル]
プロピルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、ヘキシルアリルエーテル、オクチルアリルエーテル、デシルアリルエーテル、ドデシルアリルエーテル、テトラデシルアリルエーテル、ヘキサデシルアリルエーテル、オクタデシルアリルエーテル等。
その他、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アリルスルホン酸塩、エチレン性不飽和スルホン酸塩、スチレン、塩化ビニルやアミノ基、アンモニウム基、カルボキシル基、スルホン酸基等を含有するチオール系の連鎖移動剤などの使用も可能である。
【0017】
本発明の最大の特徴は、上記の如きオキシアルキレン基含有モノマーとビニルエステルモノマーを重合するにあたり、全仕込量のオキシアルキレン基含有モノマーと全仕込量の50〜99重量%のビニルエステルモノマーを重合系に仕込んで重合を開始し、仕込量に対するビニルエステルモノマーの重合率が50〜99%の時点において残りのビニルエステルモノマーを仕込むもので、かかる方法について具体的に説明する。
【0018】
まず、重合系(通常は重合缶)に、全仕込量のオキシアルキレン基含有モノマーと全仕込量の50〜99重量%のビニルエステルモノマーを重合系に仕込んで重合を開始する。本発明においては、最初のビニルエステル系モノマーの仕込量を全仕込量の50〜99重量%(さらには60〜99重量%、特には70〜99重量%、殊に80〜96重量%)にすることが重要で、かかる仕込量が上記の範囲を外れるときは、成形されたフィルムに着色したり、懸濁重合用分散剤用途においては発泡を抑制することができなかったり、また、製品の収率も低下して本発明の目的を達成することが困難となる。
【0019】
オキシアルキレン基含有モノマーとビニルエステルモノマーのそれぞれの全仕込量は、目的とするオキシアルキレン基含有ビニルエステル系重合体あるいはそのケン化物中のオキシアルキレン基含有量により、任意に決定すればよく、かかる含有量としては、0.1〜15モル%程度の範囲から選択することが好ましく、かかる含有量が0.1モル%未満ではオキシアルキレン基含有の効果(例えば、ケン化物の水溶性、成形性、結晶性低下効果等)を充分に得られないことがあり、逆に15モル%を越えるとケン化物を水溶液として使用する際に水溶液の粘度が上がりすぎて作業性が低下したり、熱安定性が低下して製造工程中に多量の不溶解物が生成することがあり好ましくない。
【0020】
上記のモノマーを共重合するにあたっては、重合触媒および重合溶媒の存在下に行われ、かかる重合触媒としては限定されないが、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化アセチル、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイルなどの公知のラジカル重合触媒を用いて行われ、かかる触媒は通常後述の有機溶剤に溶解して仕込まれる。
【0021】
また、重合溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類などの有機溶剤が用いられ、通常はメタノールが好適に用いられる。
【0022】
本発明においては、かかる重合触媒の仕込み方法については特に制限はないが重合開始時に一括仕込みする方法、反応途中に重合触媒の一部を分割仕込みする方法、反応途中に重合触媒の一部を連続滴下する方法などがある。なお、本発明においては、上記のようにビニルエステルモノマーを追加仕込みするので、追加仕込み後も重合反応が進行することが必要条件であり、そのために該追加仕込前後に重合触媒の一部を追加仕込みすることが好ましい。
なお、重合温度は、特に制限はなく、30℃程度から加圧下においては沸点を超える温度で実施してもよいが、通常30℃〜沸点程度の範囲が好適である。
【0023】
かくして、重合が開始されるのであるが、本発明においては、重合を開始して、仕込んだビニルエステルモノマーの重合率が50%以上(さらには60%以上、特には70%以上、殊に80%以上)の時点において残りのビニルエステルモノマーを仕込むことも重要で、かかる重合率が50%未満の時点で残りのビニルエステルモノマーを仕込んでも、成形されたフィルムに着色したり、懸濁重合用分散剤用途においては発泡を抑制することができなかったり、また、製品の収率も低下して本発明の目的を達成することが困難となる。
かかるビニルエステルモノマーの(追加)仕込にあたっては、特に仕込み方法に制限はないが追加仕込の全量を一度に仕込む方法、分割仕込みする方法、連続滴下仕込する方法等を挙げることができる。
【0024】
また、ビニルエステルモノマーの追加仕込み時間は特に限定されないが、一括仕込みの場合で30秒〜5分程度、分割仕込みや連続滴下仕込みの場合で5分〜5時間程度である。さらに追加仕込み終了後に必要に応じて1分〜120分程度の追い込み工程を設けても良いが追い込み工程が長くなりすぎると製品の収率が低下する傾向にあり好ましくない。
【0025】
ビニルエステルモノマーを分割仕込みする場合、通常は等量分割する方法を採るが、分割量を変化させることも可能である。また、ビニルエステルモノマーを連続滴下仕込みする場合については通常、一定速度で仕込む方法を採るが、連続滴下速度を変化させることも可能である。
【0026】
また、追加仕込するビニルエステルモノマーを系内に仕込む方法としては特に限定されないが、シャワー方式で仕込む方法、コンデンサー還流液に混合して仕込む方法、直接流し込んで仕込む方法等を挙げることができる。また、追加仕込するビニルエステルモノマーは、そのまま系内に仕込んでもよいが、メタノール等の重合溶媒に混合して仕込むことも可能である。また、追加仕込する重合触媒についても重合溶媒に溶解させて仕込むことも可能である。
【0027】
かくしてオキシアルキレン基含有ビニルエステル系重合体が得られ、かかる重合体は増粘剤、有機系顔料のフィラー等の用途に有用であるが、かかる重合体のケン化物(オキシアルキレン基含有ポリビニルアルコール系樹脂)も、後述する各種用途に大変有用で、かかるケン化物の製造方法についてさらに説明する。
【0028】
上記で得られたオキシアルキレン基含有ビニルエステル系重合体は、必要に応じて脱モノマー処理が行われてケン化される。
ケン化方式は特に限定されず、バッチ式および連続式のいずれの方法も実施することができる。
【0029】
ケン化に当たっては、該重合体をアルコール等に溶解してケン化触媒の存在下にケン化が行なわれる。該アルコールとしては、メタノール、エタノール、ブタノール等が挙げられる。アルコール中の該重合体の濃度は20〜70重量%(さらには20〜60重量%)の範囲から選ばれる。
【0030】
ケン化触媒としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート等のアルカリ金属の水酸化物やアルコラートの如きアルカリ触媒を用いることが好ましい。かかる触媒の使用量はビニルエステルモノマー1モルに対して1〜100ミリモルにすることが必要である。また、必要に応じて水をケン化反応系に加えることもできる。さらに硫酸、塩酸等の酸触媒を用いてケン化反応を行うことも可能である。
【0031】
かくして、ケン化反応を終了するのであるが、得られるケン化物のケン化度については特に制限はないが、フィルム等の成形用途に用いるときには70モル%以上(さらには80モル%以上、特には85モル%以上)とすることが好ましく、また、懸濁重合用分散剤用途に用いるときには80モル%以下(さらには15〜80モル%、特には20〜80モル%)とすることが好ましい。なお、オキシアルキレン基の鎖長や変性度により一概に言えないが、例えばオキシエチレン基の場合は、ケン化度が65モル%未満のとき、得られたペースト状のケン化物を水に溶媒置換して水溶液として製品化することが可能であり、そのまま該分散(助)剤用途に供することが可能である。また、ケン化度が65モル%以上のときは、通常ケン化物がケン化溶媒に不溶で固液分離する必要があり、このときにポリビニルアルコール系樹脂のロスが発生することがあり、製品の収率の向上面では、後者の場合に本発明の作用効果の寄与がより期待できる。
【0032】
なお、ここで言うケン化度とは、オキシアルキレン基含有ビニルエステル共重合体の酢酸ビニル成分が水酸基に変換される割合をモル%で示したものである。
【0033】
また、得られるオキシアルキレン基含有ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は特に制限されないが、フィルム等の成形用途においては500〜2000(さらには500〜1800、特には500〜1500)が好ましく、また懸濁重合用分散剤用途においては100〜600(さらには150〜550、特には150〜500)が好ましい。
なお、かかる平均重合度は、JIS K 6726に準じて測定されるものである。
【0034】
かくして、本発明のオキシアルキレン基含有ポリビニルアルコール系樹脂が得られるのであるが、かかる樹脂は、特にフィルム等の成形用途においては、耐着色性に優れた成形物を得ることができ、また、塩化ビニルをはじめとする塩化ビニリデン、スチレン、(メタ)アクリレート、酢酸ビニル等の各種ビニル化合物の懸濁重合用分散剤用途に有用で、かかる用途に供したときには、重合初期の反応時及び重合終了後の未反応モノマー回収時のいずれの場合にも系の発泡が少ないという利点を有するものである。
また、増粘剤、コーティング剤、建材用バインダー、造粒用バインダー、接着剤、感圧接着剤、紙サイズ剤、紙コーティング剤、暫定塗料、親水性付与剤、塗料、顔料分散安定剤、記録媒体(感熱記録紙、インクジェット紙、OHP等)加工剤、フィルム、シート、繊維、容器等の成形品、中子、外子などの成形加工材料として用いることもできる。
【0035】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
なお,実施例中「%」、「部」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
【0036】
実施例1
重合缶にオキシエチレン基の平均鎖長(n)が10のポリオキシエチレンモノアリルエーテル18.0部と酢酸ビニル85部、イソプロピルアルコール29.0部を仕込み、還流状態になるまで昇温した後30分間還流させてから、アゾビスイソブチロニトリルを全仕込酢酸ビニル量に対して0.10モル%仕込んで重合を開始した。
反応開始後4時間目にアゾビスイソブチロニトリルを全仕込酢酸ビニル量に対して0.05モル%追加した。
【0037】
次いで、酢酸ビニルの(初期仕込酢酸ビニルに対する)重合率が75%になった時点(重合反応開始後約7時間目)で、残りの酢酸ビニル15部を一括で追加仕込みした(仕込みに要した時間は約1分)。
反応開始9時間目に冷却用メタノールと禁止剤を加え、反応缶ジャケットを冷却して重合反応を停止して、ポリオキシエチレン基含有酢酸ビニル重合体を得た。かかる重合体の重合率は約90%であった。
【0038】
次いで、上記で得られたオキシエチレン基含有酢酸ビニル重合体(樹脂分約52%の溶液)を連続脱モノマー塔で液中の残存モノマー量が0.12%になるまでモノマーを追いだし、バッチ式ケン化機に仕込みメタノールを添加してポリ酢酸ビニル濃度を50%に調整してから、4ミリモル(対酢酸ビニル1モル)の水酸化ナトリウムをメタノール溶液で加えて、ケン化反応(温度35℃)を行った。ケン化後に酢酸を加えて中和した後、溶剤分を追い出して脱イオン水を加えてポリオキシエチレン基含有ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液(濃度35%)を得た。得られた該ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は45モル%で、平均重合度は270であった。また、製品の収率は98%であった(表1にも示す)。なお、該収率は、原料仕込量より理論的に算出される生成樹脂量に対する実際の取得樹脂量より計算した。
【0039】
また、塩化ビニルの懸濁重合用分散助剤としての性能を調べるために、以下の評価を行った。評価結果は表1に示す。
リフラックスコンデンサー(RC)を装備した反応缶に塩化ビニル500部、脱気したイオン交換水500部を供給し、更に塩化ビニル100部に対して上記で得られたポリオキシエチレン基含有ポリビニルアルコール系樹脂を分散助剤として0.057部(固形分換算0.02部)を供給すると共に主分散剤としてケン化度79モル%、平均重合度2200の未変性ポリビニルアルコールを0.08部導入した。重合缶内温度を57℃に昇温した後、重合開始剤としてジ−2−エチルヘキシル−オキシジカーボネート及びt−ブチルパーオキシネオカーボネートを各々塩化ビニル100部に対して0.03部仕込み、これと同時にRCを稼働させて、400rpmで撹拌しながら4時間重合を行ってポリ塩化ビニルを得た。重合中は、RCの冷却水温度及び反応缶ジャケット温度を制御し、重合反応熱をRCと反応缶ジャケットで除熱した。重合反応終了後、反応缶と同じ大きさの未反応モノマー回収容器にポリ塩化ビニルを移送した。かかる移送は反応缶の圧力より回収容器の圧力をより減圧下にして実施した。移送時に反応缶中に発泡はほとんどなく、移送は25分未満で終了した。移送中と移送後に反応缶及び未反応モノマー回収容器に接続したガスホルダーに未反応モノマーを回収し、移送したポリ塩化ビニルスラリーは脱水、乾燥し、ポリ塩化ビニルを得た。
このときのウエットフォーミングを調べるために、重合開始1時間後の泡立ちの状況を重合缶側面の覗き窓より観察し、液面からの泡の高さを測定して、以下の基準で評価した。
A・・・4cm未満
B・・・4〜7cm未満
C・・・7〜10cm未満
D・・・10cm以上
【0040】
また、重合終了後の未反応塩化ビニルモノマーを回収する時の発泡性を評価するため、回収容器にポリ塩化ビニルスラリーを移送する時間を測定して、以下の基準で評価した。即ち、発泡が激しい程該スラリーの移送に時間がかかる。
A・・・25分未満
B・・・25〜40分未満
C・・・40〜60分未満
D・・・60分以上
【0041】
実施例2
実施例1においてイソプロピルアルコール仕込量を28.0部として、酢酸ビニル15部を連続滴下仕込(一定速度)で追加した(追加仕込みに要した時間は40分であった)以外は同様に重合反応を行ってポリオキシエチレン基含有ポリビニルアルコール系樹脂を得た。得られた該ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は45モル%で、平均重合度は270であった。なお、製品の収率は表1に示す。また、実施例1と同様に塩化ビニルの懸濁重合用分散助剤としての性能を調べた。評価結果は表1に示す。
【0042】
実施例3
実施例1において、平均鎖長(n)が10のポリオキシエチレンモノアリルエーテル18.0部と酢酸ビニル90部、メタノール12部を仕込み、重合率が85%になった時点(重合反応開始後約8時間目)で、残りの酢酸ビニル10部を一括で追加仕込みした(仕込みに要した時間は約1分)以外は同様に行って、オキシエチレン基含有酢酸ビニル重合体を得た。かかる重合体の重合率は約96%であった。
【0043】
また、同様にケン化を行って、ポリオキシエチレン基含有ポリビニルアルコール系樹脂を得た。得られた該ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は88モル%で、平均重合度は680であった。なお、製品の収率は表1に示す。
得られたポリオキシエチレン基含有ポリビニルアルコール系樹脂の10%水溶液を調製して、PETフィルム上に流して、厚さ約200μmのフィルムを成形し、180℃で10分間熱処理を行って、フィルムの着色性(YI値)を色差計で測定し、以下のように評価した。評価結果は表1に示す。
○・・・YI値が15未満
×・・・YI値が15以上
【0044】
実施例4
実施例1において、ポリオキシエチレンモノアリルエーテル5.8部と酢酸ビニル95部、メタノール45部を仕込み、重合率が88%になった時点(重合反応開始後約9時間目)で、残りの酢酸ビニル5部を一括で追加仕込みした(仕込みに要した時間は約1分)以外は同様に行って、オキシエチレン基含有酢酸ビニル重合体を得た。かかる重合体の重合率は約96%であった。
また、同様にケン化を行って、ポリオキシエチレン基含有ポリビニルアルコール系樹脂を得た。得られた該ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は94モル%で、平均重合度は680であった。なお、製品の収率は表1に示す。また、実施例3と同様にフィルムの着色性の評価を行った。評価結果は表1に示す。
【0045】
実施例5
実施例1において、ポリオキシエチレンモノアリルエーテル11.6部と酢酸ビニル90部、メタノール12部を仕込み、重合率が92%になった時点(重合反応開始後約9.5時間目)で、残りの酢酸ビニル10部を一括で追加仕込みした(仕込みに要した時間は約1分)以外は同様に行って、オキシエチレン基含有酢酸ビニル重合体を得た。かかる重合体の重合率は約97%であった。
【0046】
また、同様にケン化を行って、ポリオキシエチレン基含有ポリビニルアルコール系樹脂を得た。得られた該ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は88モル%で、平均重合度は680であった。なお、製品の収率は表1に示す。また、実施例3と同様にフィルムの着色性の評価を行った。評価結果は表1に示す。
【0047】
実施例6
実施例1において、ポリオキシエチレンモノアリルエーテルに変えて、ポリオキシプロピレン基の平均鎖長(n)が20のポリオキシプロピレンモノアリルエーテルを用いた以外は同様に行って、オキシプロピレン基含有酢酸ビニル重合体を得た。かかる重合体の重合率は約91%であった。
【0048】
また、同様にケン化を行って、ポリオキシプロピレン基含有ポリビニルアルコール系樹脂を得た。得られた該ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は98モル%で、平均重合度は580であった。なお、製品の収率は表1に示す。また、実施例3と同様にフィルムの着色性の評価を行った。評価結果は表1に示す。
【0049】
実施例7
実施例4において、メタノールの仕込量を29.0部、初期の酢酸ビニルの仕込量を90部として、ポリオキシエチレンモノアリルエーテルに変えて、ポリオキシプロピレン基の平均鎖長(n)が20のポリオキシプロピレンモノアリルエーテルを用いた以外は同様に行って、オキシプロピレン基含有酢酸ビニル重合体を得た。かかる重合体の重合率は約96%であった。
【0050】
また、同様にケン化を行って、ポリオキシプロピレン基含有ポリビニルアルコール系樹脂を得た。得られた該ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は72モル%で、平均重合度は850であった。なお、製品の収率は表1に示す。また、実施例1に準じて塩化ビニルの懸濁重合用主分散剤としての性能を調べた。すなわち、未変性ポリビニルアルコールに変えて上記で得られたポリオキシプロピレン基含有ポリビニルアルコール系樹脂を主分散剤として0.08部用い、かつ分散助剤としてケン化度46モル%、平均重合度250の未変性ポリビニルアルコールを0.02部用いた。評価結果は表1に示す。
【0051】
比較例1
実施例1において酢酸ビニルの全量を初期一括仕込みして、イソプロピルアルコールの仕込量を31部とした以外は同様に重合反応を行って、オキシエチレン基含有酢酸ビニル重合体を得た。かかる重合体の重合率は約90%であった。
【0052】
また、同様にケン化、溶剤置換を行って、ポリオキシエチレン基含有ポリビニルアルコール系樹脂を得た。得られた該ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は45モル%で、平均重合度は270であった。なお、製品の収率は97%であった。また、実施例1と同様に塩化ビニルの懸濁重合用分散助剤としての性能を調べた。評価結果は表1に示す。
【0053】
比較例2
実施例3において、酢酸ビニルの全量を初期一括仕込して、メタノールの仕込量を11.5部とした以外は同様に重合反応を行って、オキシエチレン基含有酢酸ビニル重合体を得た。かかる重合体の重合率は約96%であった。
【0054】
また、同様にケン化、溶剤置換を行って、ポリオキシエチレン基含有ポリビニルアルコール系樹脂を得た。得られた該ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は88モル%で、平均重合度は680であった。なお、製品の収率は88%であった。また、実施例3と同様にフィルムの着色性の評価を行った。評価結果は表1に示す。
【0055】
【0056】
【発明の効果】
本発明の製造方法で得られたオキシアルキレン基含有ビニルエステル重合体およびそのケン化物、特に該ケン化物は、フィルム等の成形用途に供したときの透明性に優れ、塩化ビニル等の懸濁重合用分散助剤として使用したときには、重合初期の反応時及び重合終了後の未反応モノマー回収時のいずれの場合にも発泡が抑制できるという利点を有するものである。
また、増粘剤、コーティング剤、建材用バインダー、造粒用バインダー、接着剤、感圧接着剤、紙サイズ剤、紙コーティング剤、暫定塗料、親水性付与剤、塗料、顔料分散安定剤、記録媒体(感熱記録紙、インクジェット紙、OHP等)加工剤、フィルム、シート、繊維、容器等の成形品、中子、外子などの成形加工材料として用いることができ、かつ製品の収率もよい。
Claims (3)
- 下記の一般式で示されるオキシアルキレン基含有モノマーとビニルエステルモノマーとを有機溶剤中で共重合するにあたり、全仕込量のオキシアルキレン基含有モノマーと全仕込量の50〜99重量%のビニルエステルモノマーを重合系に仕込んで重合を開始し、仕込んだビニルエステルモノマーの重合率が50%以上の時点において残りのビニルエステルモノマーを仕込むことを特徴とするオキシアルキレン基含有ビニルエステル系重合体の製造方法。
- 請求項1で得られたオキシアルキレン基含有ビニルエステル系重合体をさらにケン化してなることを特徴とするオキシアルキレン基含有ビニルエステル系重合体ケン化物の製造方法。
- オキシアルキレン基含有ビニルエステル系重合体ケン化物の平均重合度が100〜2000であることを特徴とする請求項2記載のオキシアルキレン基含有ビニルエステル系重合体ケン化物の製造方法。
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