JP3941101B2 - プロセス制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
プラントの事故解析やスタートアップ時のエラーログ情報として、プロセス制御装置では、プロセスデータが変化した場合、あるいはしきい値を超えた場合に、その値と発生時刻をイベントとして記録する機能(シーケンスイベント収集機能)を持つ。本発明は、その際に使用する時刻の同期方式に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図9は、分散型の階層構造をとるプロセス制御装置の一般的な構成を示す機能ブロック図である。複数の制御ステーション(図中では制御ステーション1と制御ステーション2)は、ステーション間通信バス3によって接続され、上位装置4と通信する。また、同じバス3には、各制御ステーション内で検出されたイベント(変化したプロセスデータ値と発生時刻の記録)を収集するためのイベントサーバ5が接続されている。
【0003】
制御ステーション1において、C1は制御処理を司るコントローラ、N11, N12, N13, N14…は複数のノードである。これらノードは複数のI/Oカードと1個の通信カード(COM)を実装している。I/Oカードは、入力カード、出力カード、入出力カード等からなる。
【0004】
B1は制御ステーション1の内部バスであり、コントローラC1と各ノードとは、この内部バスB1とノードの夫々に実装された通信カードCOMを介して接続されている。
【0005】
制御ステーション2におけるコントローラC2、複数ノードN21, N22, N23, N24…並びに内部バスB2の構成は、制御ステーション1の各要素と同一構成である。同一構成の制御ステーションが任意個数ステーション間通信バス3に接続される。
【0006】
上記システム構成において、任意の制御ステーションにおけるI/Oカードまたはコントローラは、I/Oカード(入力カード/入出力カード)によって読み込まれたプロセスデータの変化を捕らえ、発生時刻を付けたイベントとしてこれを保存する。保存されたイベントは定期的にイベントサーバ5によって収集される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
I/Oカードでイベントを作成する場合には、同一ステーション内における任意のI/Oカード間には内部時刻に誤差がある。この結果、I/Oカード間で同時に発生したイベントであっても違った(精度の悪い)時刻が付加される場合がある。
【0008】
コントローラでイベントを作成する場合には、ステーション間での時刻の誤差によって、異なったステーションの任意のI/Oカード間で同時に発生したイベントであっても、違った時刻が付加される場合がある。
【0009】
本発明は、I/Oカードで発生するイベントに付加される時刻の同期精度を高めることができるプロセス制御装置の実現を目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するために、本発明のうち請求項1記載発明の特徴は、
制御処理を行うコントローラと、内部バスを介して前記コントローラに接続された複数のI/Oカードで構成される、シーケンスイベント収集機能を持った制御ステーションが、ステーション間通信バスで結合されたプロセス制御装置において、
イベント収集を行う全てのI/Oカードは、前記コントローラからの同期信号でリセットされるフリーランニングタイマレジスタと、このフリーランニングタイマレジスタがリセットされる前に次のフリーランニングタイマレジスタリセットの秒時が前記コントローラから書き込まれる秒時レジスタが実装され、前記I/Oカードは、イベントの発生時刻として前記秒時レジスタ値と前記フリーランニングタイマレジスタ値を使用することにより、任意のイベントにおけるI/O間の時刻同期を行う点にある。
【0011】
請求項2項記載発明の特徴は、
前記コントローラからの同期信号でリセットされるフリーランニングタイマレジスタの内容が、前記同期信号の周期より早い周期でコピーされるイベント下位時刻領域と、このフリーランニングタイマレジスタがリセットされる前に次のフリーランニングタイマレジスタリセットの秒時が書き込まれる秒時レジスタの内容が、前記同期信号のタイミングでコピーされるイベント上位時刻領域を有し、前記I/Oカードは、イベントの発生時刻として前記イベント上位時刻領域値と前記イベント下位時刻領域値の和を使用する点にある。
【0012】
請求項3項記載発明の特徴は、
全ての制御ステーションは、専用線を介して標準時刻源からの同期信号の配信を受け制御ステーション間の同期を行う点にある。
【0013】
請求項4項記載発明の特徴は、
全ての制御ステーションは、前記ステーション間通信バスを介して時刻サーバーからの時刻配信を受け制御ステーション間の同期を行う点にある。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下本発明実施態様を、図面を用いて説明する。図1は本発明を適用したプロセス制御装置の一例を示す機能ブロック図であり、図9の従来装置で説明した要素と同一要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0019】
複数の制御ステーションはステーション間通信バス3によって接続されており、同じバスには各ステーション内で検出されたイベント(変化したプロセスデータ値と発生時刻の記録)を収集するイベントサーバ5が接続されている基本構成は従来装置と同一である。
【0020】
ステーション間通信バス3とは別に、全てのステーションに対して標準時刻源となる機器6が同期用信号専用線7を介して接続され、高精度な定周期パルスCLが各制御ステーションのコントローラに配信される。
【0021】
全てのI/Oカードは、自己の属する制御ステーションのコントローラからリセットができるフリーランニングタイマ(FTR)が実装されている。
制御ステーション1のコントローラC1に内部バスB1を介して接続されるノードN11及びN12を代表として例示すれば、各I/Oカードはコントローラとの共有領域M1, M2, M3…に、FRTレジスタR1, R2, R3…を有している。
【0022】
FRTレジスタは、高分解能カウンタ(I/O間の同期精度に対して十分に分解能が高い)であり、I/Oカードはプロセスデータがしきい値を超えて変化した場合、FRTレジスタの値を付加したイベントを保存する。
【0023】
各制御ステーションのコントローラは、定周期パルスCLから同期タイミング(図示では0→1への立ち上がり)を受け取ると、速やかに全てのI/Oカードに対してFRTレジスタをリセットするためのブロードキャスト送信BCを内部バスに対して行う。
【0024】
このように、全ての制御ステーション内のコントローラは、共通に入力されている定周期パルスを受け取ったタイミングでI/Oカードへの同期動作(全I/OのFRTのリセット)を行う。これによって、ステーション内の同期を実現できると共に、全てのI/Oカードカードの時刻を高精度に同期することができる。
【0025】
この際、制御ステーション間の同期精度は、定周期パルスの精度に関係する。また、ステーション内のI/Oカード間の時刻精度は、I/Oカードのクロック精度(FRTのカウント精度)とプロセスデータのスキャン周期に関係する。
例えば、定周期パルス精度0.1ms、カードのクロック精度0.1ms、プロセスデータのスキャン周期0.5msの場合では、同期精度はこれらの和で0.7msとなる。
【0026】
図1の実施例では、標準時刻源6からの定周期パルスをステーション間通信バス線3とは別の専用線7で受け取る構成を示したが、この同期用の定周期パルス相当のデータをステーション間通信バス3に接続された時刻サーバー(図示せず)からの配信によって受け取ることもできる。この場合、同期用信号専用線7は不要となる。
【0027】
以上のように、コントローラによる時刻同期処理(FRTのリセット)は、I/Oカードのクロック精度によるFRT値の狂いを補正するために、定期的に行われる。
この動作は、同時にコントローラのイベント収集にも影響を与える。もし、カウンタのリセットが2回行われる内に1回のイベント収集しか行われなかった場合、2回のリセット後、同じ位のFRT値で発生した2つのイベントは、時間的には全く違った時刻に発生したにも関わらず、同じ位の時刻に発生した2つのイベントの場合との区別がつかない。
【0028】
つまり、コントローラはFRTのリセット周期と同じか、それ以下の周期でイベントの収集を行わなければならない。
しかし、シーケンスイベント収集機能は、通常の制御動作に影響を与えることなく実行されるべき機能であるため、内部バスの通信エラーが発生した場合にはイベント収集抜けが発生することもありうる。この場合、複数イベントの時間関係が不明確になる可能性がある。
図2の実施例はこのような問題点を解決し、時刻同期抜けやイベント収集抜けが発生した場合でも、複数のイベントの時刻関係を明確に出来る構成を提供する。
【0029】
図2(A)は、本発明の他の実施例の概念を示す機能ブロック図、(B)はその動作説明図である。この実施例の特徴は、(A)に示すように、イベント収集を行う全てのI/Oカードは、コントローラ(代表としてC1)からの同期信号(ブロードキャストBC)でリセットされるフリーランニングタイマレジスタ(FRTR)と、このFRTRがリセットされる前に次のFRTRリセットの秒時が書き込まれる秒時レジスタ(SECR)が実装され、I/Oカードは、イベントの発生時刻としてSECR値とFRTR値の和を使用する。
【0030】
図2(B)において定周期パルスの周期を1sとするとき、t1の同期タイミングのブロードキャストでFRTRがリセットされると次のブロードキャスト時刻の秒時は、(t1+1s)であることが予め判明している。この秒時情報を時刻(t1+1s)よりは前でかつ前のブロードキャストの時刻t1より後の時刻t2ですべてのI/Oカードの秒時レジスタSECRに書き込んでこれを更新する。
【0031】
この場合、t1よりt2までの時間τは、イベント収集周期以上に選定する。これはI/OカードがブロードキャストによるFRTRのリセット検出時に更新されたSECR値を誤って読み込まないようにする為である。
【0032】
図3は、図2で説明した実施例を更に具体化する場合の説明図であり、(A)は定周期パルスCLの波形図、(B)はブロードキャスト並びにSECR更新のタイミングチャート図、(C)はブロードキャストでリセットされるFRTR及びブロードキャストより前に更新されるSECRのイメージ図であり、これまでは図2(B)の説明と同一である。
【0033】
図3(D)は、全てのI/Oカードにおけるコントローラとの共有領域に形成されるメモリ領域を示すもものである。EVT_Lはイベント下位時刻領域であり、コントローラからのブロードキャストによる同期信号でリセットされるフリーランニングタイマレジスタ(FRTR)の内容が、同期信号の周期(例えば1s)より早い周期(例えばイベント収集タイミング500μs)でコピーされる。
【0034】
EVT_Hはイベント上位時刻領域であり、FRTRがリセットされる前に次のFRTRリセットの秒時が書き込まれる秒時レジスタ(SECR)の内容が、ブロードキャストのタイミングでコピーされる。
I/Oカードは、イベントの発生時刻として上位時刻領域EVT_H値と下位時刻領域EVT_L値の和を使用する。
【0035】
図4は、FRTRの値と、SECR、EVT_Hの関係を示した図であり、コントローラからFRTRのリセットに関する4つのパターンを示している。
パターン1:FRTRが1sを超えてからリセットが入った。
パターン2:FRTRが1sを超える前のリセットが入った。
パターン3:リセットが1回抜けて、2sを超える前にリセットが入った。
パターン4:リセットが1回抜けて、2sを超えてからリセットが入った。
【0036】
これらいずれのパターンでも、SECRの値は次のリセット秒時となるので、EVT_Hには正しい秒時がコピーされる。
【0037】
図5(A)は、上述したFRTR、SECR、EVT_H、EVT_Lレジスタ並びに同期状態の遷移を制御するSYNCレジスタの領域、サイズ、初期値、内容の一例を示す表である。このうち、SECRレジスタは(B)に示すように、秒時カウンタ部SPSとインクリメンタルカウンタ部INCよりなる。INCは、コントローラが前回と同じ秒時を設定した場合の識別機能を有する。
【0038】
図6は、SYNCレジスタの状態遷移図である。I/Oカードの対上げで各レジスタが初期化された後イベント収集タイミング(例えば500μs)で条件によってA状態かB状態に遷移する。A状態は非同期状態、B状態は同期状態を意味する。
図7はA状態並びにB状態におけるはSYNCレジスタの値及び意味を示す表である。
【0039】
図8は、A状態でのアクション▲1▼、A状態からB状態へのアクション▲2▼、B状態でのアクション▲3▼、B状態からA状態へのアクション▲4▼の各アクション番号での遷移条件、実行アクション(アクションα:FRTR→EVT_Lへのコピー、アクションβ:SECREVT_Hへのコピー、レジスタ初期化)、及びアクション内容を示す表である。
【0040】
以上説明した実施例では、コントローラからI/Oカードへの秒時の通知(SECRの更新)は、I/Oカード毎に行われていたが、ブロードキャスト通信にて一括更新にしても可能である。
【0041】
更に実施例では、FRTRのリセットと、SCERの更新は独立に行われているが、I/Oカード内部で同時性が保証できれば、FRTRのリセットと、SCERの更新は1回の通信で可能である。つまり、FRTRのリセットとSCERの更新は同時に行われ、二つの領域への書き込み中はI/Oカード内部でのFRTRとSCERの読み出しは出来ない仕組みにする。
【0042】
【発明の効果】
以上説明したことから明らかなように、本発明によれば、全てのステーション内のコントローラは、共通に入力されている同期パルスを受け取ったタイミングでI/Oカードへの同期動作(全I/OカードのFRTのリセット)を行う。これによって、ステーション内の同期を実現できるとともに全てのI/Oカードの時刻を高精度に同期せしめることができる。
【0043】
さらに本発明では、I/Oカードに実装されたカウンタの他に、コントローラから秒時の値を通知することによって、時刻同期の周期よりも長い間隔でコントローラがI/Oカード内に蓄えられたイベントを読み出した場合でも、イベント発生時刻を明確にすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用したプロセス制御装置の一例を示す機能ブロック図である。
【図2】本発明を適用したプロセス制御装置の他の実施例の概要を示す機能ブロック図である。
【図3】I/Oカードにおけるコントローラとの共有領域に形成されるイベント下位時刻領域及びイベント上位時刻領域に関する説明図ある。
【図4】FRTRの値と、SECR、EVT_Hの関係を示した説明図である。
【図5】FRTR、SECR、EVT_H、EVT_Lレジスタ並びに同期状態の遷移を制御するSYNCレジスタの領域、サイズ、初期値、内容の一例を示す表である。
【図6】SYNCレジスタの状態遷移図である。
【図7】A状態並びにB状態におけるはSYNCレジスタの値及び意味を示す表である。
【図8】A状態並びにB状態におけるはSYNCレジスタにおけ各アクション番号での遷移条件、実行アクション及びアクション内容を示す表である。
【図9】分散型の階層構造をとるプロセス制御装置の一般的な構成を示す機能ブロック図である。
【符号の説明】
1 制御ステーション
2 制御ステーション
C1, C2 コントローラ
N11,N12 ノード
M1, M2, M3 コントローラとの共有領域
R1, R2, R3 FRTレジスタ
B1 内部バス
BC ブロードキャスト
3 ステーション間通信バス
4 上位装置
5 イベントサーバ
6 標準時刻源
7 同期信号用専用線
CL 同期用信号(定周期パルス)
Claims (4)
- 制御処理を行うコントローラと、内部バスを介して前記コントローラに接続された複数のI/Oカードで構成される、シーケンスイベント収集機能を持った制御ステーションが、ステーション間通信バスで結合されたプロセス制御装置において、
イベント収集を行う全てのI/Oカードは、前記コントローラからの同期信号でリセットされるフリーランニングタイマレジスタと、このフリーランニングタイマレジスタがリセットされる前に次のフリーランニングタイマレジスタリセットの秒時が前記コントローラから書き込まれる秒時レジスタが実装され、前記I/Oカードは、イベントの発生時刻として前記秒時レジスタ値と前記フリーランニングタイマレジスタ値を使用することにより、任意のイベントにおけるI/O間の時刻同期を行うことを特徴とするプロセス制御装置。 - 前記コントローラからの同期信号でリセットされるフリーランニングタイマレジスタの内容が、前記同期信号の周期より早い周期でコピーされるイベント下位時刻領域と、このフリーランニングタイマレジスタがリセットされる前に次のフリーランニングタイマレジスタリセットの秒時が書き込まれる秒時レジスタの内容が、前記同期信号のタイミングでコピーされるイベント上位時刻領域を有し、前記I/Oカードは、イベントの発生時刻として前記イベント上位時刻領域値と前記イベント下位時刻領域値の和を使用することを特徴とする請求項1記載のプロセス制御装置。
- 全ての制御ステーションは、専用線を介して標準時刻源からの同期信号の配信を受け制御ステーション間の同期を行うことを特徴とする請求項1または2記載のプロセス制御装置。
- 全ての制御ステーションは、前記ステーション間通信バスを介して時刻サーバーからの時刻配信を受け制御ステーション間の同期を行うことを特徴とする請求項1または2記載のプロセス制御装置。
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