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JP3838730B2 - 軟磁性複合材料 - Google Patents

軟磁性複合材料 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、軟質フェライトからなる磁性体粉末をポリマー中に分散させた軟磁性複合材料に関し、さらに詳しくは、適度の透磁率を有すると共に、高い電気絶縁性を示し、耐電圧に優れた軟磁性複合材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、酸化第2鉄と二価の金属酸化物の化合物(MO・Fe23)は、透磁率μの大きな軟磁性材料であり、軟質(ソフト)フェライトと呼ばれている。軟質フェライトは、粉末冶金の手法で製造され、硬くて軽量である。軟質フェライトの中でもNi−Zn系フェライト、Mg−Zn系フェライト、及びCu系フェライトは、電気抵抗率が高いので、高周波帯で高透磁率であるという特徴を有している。軟質フェライトは、フェリ磁性酸化物で、主としてスピネル型結晶構造を持つものであるが、この他に、フェロクスプレーナ型やガーネット型結晶構造のものもある。従来より、軟質フェライトは、偏向ヨーク材料、高周波トランス、磁気ヘッド材料などとして用いられている。
【0003】
軟質フェライトは、脆いという欠点を持っているが、電気抵抗が高いという特徴を活かして、その粉末をポリマー中に分散した軟磁性複合材料が、チョークコイル、ロータリートランス、ラインフィルター、電磁波遮蔽材料(EMIシールド材料)などとして、新たな用途展開が図られている。軟磁性複合材料は、バインダーとしてポリマーを用いているため、射出成形、押出成形、圧縮成形などの各種成形法により、所望の形状の成形体に成形することができる。ところが、電気抵抗の高い軟質フェライト粉末を電気絶縁性の高いポリマー中に分散した複合材料は、両者の電気的特性から期待される程の高い電気抵抗を示さず、耐電圧に劣るという問題があった。
【0004】
軟質フェライトは、一般に、(1)Fe、CuO、NiO、MgO、ZnOなどの原料の混合、(2)仮燒、(3)粉砕、(4)造粒、(5)成形、及び(6)燒結の各工程を経て、燒結磁性体として製造されている(乾式法)。共沈法や噴霧熱分解法により微粒子状の酸化物粉末を調製する方法もあるが、いずれの方法でも、酸化物粉末を造粒、成形、及び燒結の各工程により燒結磁性体としている。軟質フェライトは、燒結磁性体の状態では、高い電気抵抗(電気絶縁性)を示すものの、燒結磁性体を粉砕して得られた磁性体粉末をポリマーとブレンドして複合材料(樹脂組成物)とした場合、電気絶縁性が著しく低下する傾向を示す。
【0005】
このため、軟質フェライトからなる磁性体粉末をポリマー中に分散した複合材料を成形して得られた成形体は、高度の電気絶縁性が求められる用途に使用することができず、特に1500V以上の耐電圧が求められるラインフィルターなどの電源機器の部品として適用した場合、使用中または試験中に発熱し、使用不能となる問題があった。軟質フェライトの中でもMg−Zn系フェライト、Ni−Zn系フェライト、及びCu系フェライトは、燒結磁性体の状態では高い電気抵抗を示すが、燒結磁性体を粉砕して、磁性体粉末としてポリマー中に分散させた場合、電気抵抗が著しく低下する傾向を示す。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、適度の透磁率を有すると共に、高い電気絶縁性を示し、耐電圧に優れた軟磁性複合材料を提供することにある。
本発明者らは、前記従来技術の問題点を克服するために鋭意研究した結果、燒結した状態の軟質フェライトを粉砕して磁性体粉末を調製するに際し、該磁性体粉末の平均粒径が燒結磁性体の平均結晶粒径の倍以上となるように粉砕することにより、該磁性体粉末をポリマー中に分散して複合材料とした場合に、高い電気抵抗を示し、耐電圧が顕著に優れる軟磁性複合材料の得られることを見いだした。燒結磁性体の平均結晶粒径が小さくなるように造粒・燒結等の条件制御を行えば、磁性体粉末の平均粒径を比較的小さくしても、高い耐電圧を達成することができる。したがって、ポリマー中に粒度分布の揃った比較的小粒径の磁性体粉末を均一に分散することができ、それによって、高品質の軟磁性複合材料を得ることができる。本発明は、軟質フェライトとして、Ni−Zn系フェライト、Mg−Zn系フェライト、及びCu系フェライトを用いた場合に、特に効果的である。
本発明は、これらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
かくして、本発明によれば、軟質フェライトからなる磁性体粉末(A)をポリマー(B)中に分散させた軟磁性複合材料において、磁性体粉末(A)が、平均結晶粒径(d1)3〜15μmの燒結磁性体を粉砕して得られた平均粒径(d2)20〜50μmの磁性体粉末であって、かつ、該磁性体粉末の平均粒径(d2)が燒結磁性体の平均結晶粒径(dl)の倍以上大きいことを特徴とする軟磁性複合材料が提供される。
軟質フェライトからなる磁性体粉末(A)は、Ni−Zn系フェライト、Mg−Zn系フェライト、及びCu系フェライトからなる群より選ばれる少なくとも一種の軟質フェライトからなる磁性体粉末であることが好ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明で使用する軟質フェライトは、酸化第2鉄(Fe23)と二価の金属酸化物(MO)の化合物(MO・Fe23)であり、一般に、乾式法により、原料の混合、仮燒、粉砕、造粒、成形、燒結の工程で燒結体として製造されているものである。高品質フェライトを製造する場合には、共沈法と噴霧熱分解法が用いられている。原料の代表的なものは、Fe23 、MnO2、MnCO3 、CuO、NiO、MgO、ZnOなどである。
【0009】
乾式法では、各原料を所定の配合比となるように計算して混合する。仮燒工程では、通常、炉中で850〜1100℃の温度に混合物を加熱する。仮燒したフェライトは、粉砕して1〜1.5μm程度の粉末にする。金型で成形する前に、高い嵩密度と良好な流動性を得るため、フェライト粉末を顆粒状に造粒する。顆粒状のフェライト粉末は、金型に入れられて成形機により所定の形状に圧縮成形される。成形されたフェライトは、大形トンネル式電気炉などで燒結される。
共沈法では、金属塩の水溶液に強アルカリを加えて、水酸化物を沈殿させ、これを酸化して微粒子のフェライト粉末を得る。フェライト粉末は、造粒、成形、燒結の工程により燒結磁性体とされる。噴霧熱分解法では、金属塩の水溶液を熱分解して微粒子状の酸化物を得る。酸化物粉末は、粉砕、造粒、成形、燒結の工程により燒結磁性体とされる。
【0010】
本発明では、高い耐電圧を得るために、造粒工程において、フェライト粉末をスプレードライ法により造粒することが好ましい。例えば、乾式法では、仮燒工程の後、湿式粉砕されたフェライトスラリーにバインダーや潤滑剤を加え、スプレードライヤを用いて噴霧乾燥して、約100〜150μm程度の顆粒とする。共沈法や噴霧熱分解法で得られたフェライト粉末をスプレードライ法により造粒してもよい。軟質フェライトの結晶粒子は、主としてスピネル型結晶構造を持つものである。
【0011】
軟質フェライトには、二価の金属酸化物(MO)の種類により、例えば、Mn−Zn系、Mg−Zn系、Ni−Zn系、Cu系、Cu−Zn系、Cu−Zn−Mg系、Cu−Ni−Zn系などの各種フェライトに分類される。本発明は、これらの中でも、燒結磁性体を粉砕して粉末磁性体としポリマー中に分散させた場合に、電気抵抗が大幅に低下するNi−Zn系フェライト、Mg−Zn系フェライト、及びCu系フェライトに適用した場合に、特に顕著な効果が得られる。
Ni−Zn系フェライトとは、一般式(NiO)x(ZnO)y・Fe23で表される組成を持つものをいうが、Niの一部をCu、Mg、Co、Mn等の他の二価の金属で置換したものであってもよい。また、本来の特性を損なわない範囲で、その他の添加剤を加えたものでもよい。ヘマタイトの析出を抑えるために、酸化鉄の含有量を調整したものであることが、特に好ましい。
【0012】
Mg−Zn系フェライトとは、一般式(MgO)x(ZnO)y・Fe23で表される組成を持つものをいうが、Mgの一部をNi、Cu、Co、Mn等の他の二価の金属で置換したものであってもよい。また、本来の特性を損なわない範囲で、その他の添加剤を加えたものでもよい。ヘマタイトの析出を抑えるために、酸化鉄の含有量を調整したものであることが、特に好ましい。
Cu系フェライトとは、一般式(CuO)・Fe23で表される組成を持つものをいうが、Cuの一部をNi、Zn、Mg、Co、Mn等の他の二価の金属で置換したものであってもよい。また、本来の特性を損なわない範囲で、その他の添加剤を加えたものでもよい。ヘマタイトの析出を抑えるために、酸化鉄の含有量を調整したものであることが、特に好ましい。
【0013】
本発明では、燒結磁性体を粉砕して得られた磁性体粉末を使用する。燒結磁性体の粉砕には、例えば、ハンマーミル、ロッドミル、ボールミル等の粉砕手段を利用する。粉砕に際し、磁性体粉末の平均粒径(d2)が燒結磁性体の平均結晶粒径(dl)の倍以上となるように粉砕する。
【0014】
本発明者らの検討結果によると、平均結晶粒径(d1)を持つ焼結磁性体を粉砕した際、得られる磁性体粉末の平均粒子径(d2)が小さくなるに従って、磁性体粉末とポリマーとの樹脂組成物(複合材料)の電気抵抗が低下することが明らかとなった。現時点では、その機構は不明であるが、結晶粒の破壊による高電気抵抗層の損失や、粉砕により新しく形成された結晶断面が何らかの欠陥となっている可能性等が考えられる。ただし、関与している機構によって、本発明は限定されるものではない。
磁性体粉末の平均粒径(d2)と燒結磁性体の平均結晶粒径(dl)との関係は、下記式を満足する。
d1≦(1/3)×d2
【0015】
磁性体粉末の平均粒径(d2)は、20〜50μmの範囲内とすることが、特に好ましい。磁性粉末の平均粒径が小さすぎると、透磁率を上げることが困難となり、一方、平均粒径が大きすぎると、射出成形などにより成形を行う際に、金型内での流動性が低下するため、いずれも好ましくない。
燒結磁性体の平均結晶粒径(d1)は、3〜15μmの範囲内である。結晶粒径が小さすぎると透磁率が不十分となり、一方、大きすぎると透磁率が低下する傾向を示す。したがって、本発明では、燒結磁性体の平均結晶粒径(dl)が3〜15μmの範囲内であって、かつ、磁性体粉末(A)の平均粒径(d2)が20〜50μmの範囲内である磁性体粉末を用いるのが、透磁率や成形加工性、耐電圧、成形体の物性上の観点から特に好ましい。
【0016】
本発明の軟磁性複合材料は、磁性体粉末(A)50〜95体積%及びポリマー(B)5〜50体積%を含有する樹脂組成物であることが好ましい。磁性体粉末50体積%未満では、十分な透磁性を得ることが困難である。逆に、磁性体粉末が95体積%を超えると、射出成形の際の流動性が極端に低下する。耐電圧と透磁率と成形性の観点から、より好ましい配合割合は、磁性体粉末(A)が55〜75体積%で、ポリマー(B)が25〜45体積%である。
【0017】
本発明で使用するポリマー(B)としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマーなどのポリオレフィン;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6/66などのポリアミド;ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドケトンなどのポリアリーレンスルフィド;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、全芳香族ポリエステルなどのポリエステル;ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミドなどのポリイミド系樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体などのスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩素化ポリエチレンなどの塩素含有ビニル系樹脂;ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル;ポリアクリロニトリル、ポリメタクリロニトリルなどのアクリロニトリル系樹脂;テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデンなどの熱可塑性フッ素樹脂;ポリジメチルシロキサンなどのシリコーン系樹脂;ポリフェニレンオキシド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなどの各種エンジニアリングプラスチックス;ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリブチレン、ポリイソブチレン、ポリメチルペンテン、ブタジエン樹脂、ポリエチレンオキシド、オキシベンゾイルポリエステル、ポリパラキシレン樹脂等の各種熱可塑性樹脂;エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂;エチレンプロピレンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム等のエラストマー;スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体などの熱可塑性エラストマー;及びこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。
これらのポリマーの中でも、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリアミド、及びポリフェニレンスルフィド等のポリアリーレンスルフィドが成形性の点からみて特に好ましい。
【0018】
本発明の軟磁性複合材料には、機械的特性、耐熱性などを改善するために、繊維状充填材、板状充填材、球状充填材などの各種充填材を含有させることができる。また、軟磁性複合材料には、必要に応じて、難燃剤、酸化防止剤、着色剤などの各種添加剤を配合することができる。
本発明の軟磁性複合材料は、各成分を均一に混合することにより製造することができる。例えば、磁性体粉末とポリマーの各所定量をヘンシェルミキサーなどの混合機により混合し、溶融混練することにより、軟磁性複合材料を製造することができる。軟磁性複合材料は、射出成形、押出成形、圧縮成形など各種成形法により、所望の形状の成形体に成形することができる。このようにして得られた成形体は、優れた透磁性と耐電圧を有するものであって、例えば、コイル、トランス、ラインフィルター、電磁波遮蔽材などの広範な用途に適用することができる。
【0019】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を示して、本発明をより具体的に説明する。物性の測定方法は、次のとおりである。
(1)燒結磁性体の平均結晶粒径
燒結磁性体の断面を走査型電子顕微鏡により観察し、結晶粒径を測定して平均値を算出した。(n=100個)
(2)磁性体粉末の平均粒径
粉末試料をミクロスパーテルで2杯取り、ビーカーに入れ、アニオン系界面活性剤(SNデイスパーサット5468)を1〜2滴加えた後、粉末試料が潰れないように先端が丸い棒で練った。この試料を用いて、日機装社製マイクロトラックFRA粒度分析計9220型で平均粒径を測定した。
(3)耐電圧
厚さ0.5mmの板状成型品の両側に円盤型電極を接触させ、菊水電子工業製耐圧試験器TOS5050を使用して、測定温度23℃、カットオフ(cutoff)電流1mAで、60秒間印加可能な最大の交流電圧を求めた。
(4)透磁率
JIS C2561に準拠して測定した。
【0020】
[実施例1]
Fe23(69.8重量%)、ZnO(15.1重量%)、MgO(10.5重量%)、MnO(3.1重量%)、CuO(1.1重量%)、CaO(0.2重量%)、及びBiO3(0.2重量%)を混合し、乾燥した後、1000℃で仮燒した。仮燒により得られたフェライト粉末をスプレードライ法によって造粒し、次いで、電気炉中で1300℃までの温度で燒結し、Mg−Zn系フェライト(測定周波数100kHzでの交流初透磁率μiac=400)の焼結体を得た。得られた焼結磁性体の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、結晶粒の平均結晶粒径は12μmであった(n=100個)。この焼結磁性体をハンマーミルで粉砕し、平均粒子径44μmの磁性体粉末を得た。得られた磁性体粉末の比重は、4.6であった。
このようにして得られたMg−Zn系フェライト粉末17kgと、ポリフェニレンスルフィド(呉羽化学工業製;310℃、剪断速度1000/秒における溶融粘度=約20Pa・s)3kgを20Lヘンシルミキサーで混合した。得られた混合物を280〜330℃に設定した2軸押出機へ供給し、溶融混練を行ってペレット化した。このペレットを射出成型機(日本製鋼所製JW−75E)へ供給し、シリンダー温度280〜310℃、射出圧力約1000kgf/cm2、金型温度約160℃にて射出成形して、10mm×130mm×0.8mmの板状成型品を得た。得られた成型品の耐電圧を測定したところ、5000Vであった。また、前記ペレットを射出成型機(日精樹脂製PS−10E)へ供給し、シリンダー温度280〜310℃、射出圧力約1000kgf/cm2、金型温度約160℃にて射出成形してトロイダル型コア(外径12.8mm、内径7.5mm)を成形した。得られたトロイダル型コアに、ポリエステルで被覆された直径0.3mmφの銅線を60ターン巻し、1V、100kHzにおける透磁率を測定したところ、16.7であった。結果を表1に示す。
【0021】
[実施例2]
実施例1と同様にして得られたMg−Zn系フェライトの焼成体を、ハンマーミルで粉砕し、平均粒径38μmの磁性体粉末を得た。この磁性体粉末を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。結果を表1に示す。
【0022】
[比較例1]
実施例1と同様にして得られたMg−Zn系フェライトの焼成体を、ハンマーミルで粉砕し、平均粒径20μmの磁性体粉末を得た。この磁性体粉末を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。結果を表1に示す。
【0023】
[比較例2]
加圧顆粒法により造粒したMg−Zn系フェライト(実施例1と同じ組成)を1300℃までの温度で焼成し、Mg−Zn系フェライト(μiac=500、測定周波数100kHz)の焼結体を得た。得られた焼結磁性体の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、平均結晶粒径は26μmであった。この焼結磁性体をハンマーミルで粉砕し、平均粒子径21μmの磁性体粉末を得た。この磁性体粉末の比重は、4.6であった。この磁性体粉末を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。結果を表1に示す。
【0024】
[実施例3]
Fe(66.2重量%)、NiO(6.7重量%)、ZnO(20.2重量%)、CuO(6.6重量%)、MnO(0.2重量%)、及びCrO(0.1重量%)を混合し、乾燥した後、1000℃で仮燒した。仮焼して得られたNi−Zn系フェライトを粉砕し、次いで、スプレードライ法によって造粒した後、1200℃までの温度で焼成し、Ni−Zn系フェライト(μ iac =1000、測定周波数100kHz)の焼結体を得た。得られた焼結体の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、平均結晶粒径は5μmであった。この焼結体をハンマーミルで粉砕し、平均粒子径25μmの粉末を得た。磁性体粉末の比重は、5.1であった。この磁性体粉末を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。結果を表1に示す。
【0025】
[実施例4]
実施例3で得られたNi−Zn系フェライト粉末18kgと、ポリフェニレンスルフィド(呉羽化学工業製;310℃、剪断速度1000/秒における溶融粘度=約20Pa・s)2kgを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。結果を表1に示す。
【0026】
[比較例3]
実施例3と同じ組成の仮焼したNi−Zn系フェライトを粉砕し、次いで、スプレードライ法によって造粒した後、1250℃までの温度で焼結し、Ni−Zn系フェライト(μiac=1200、測定周波数100kHz)の焼結体を得た。得られた焼結磁性体の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、平均結晶粒径は31μmであった。この焼結磁性体をハンマーミルで粉砕し、平均粒子径15μmの粉末を得た。この磁性体粉末の比重は、5.1であった。この磁性体粉末を用いたこと以外は、実施例4と同様の操作を行った。結果を表1に示す。
【0027】
【表1】
Figure 0003838730
【0028】
表1の結果から明らかなように、磁性体粉末の平均粒径(d2)が燒結磁性体の平均結晶粒径(dl)の3倍以上大きい磁性体粉末をポリマー中に分散した軟磁性複合材料(実施例1〜4)は、適度の透磁率と優れた耐電圧を示すものであった。これに対して、磁性体粉末の平均粒径(d2)が小さい場合(比較例1〜3)には、電気抵抗が急激に低下して、帯電圧の劣悪な複合材料しか得ることができない。
【0029】
【発明の効果】
本発明によれば、適度の透磁率を有すると共に、高い電気絶縁性を示し、耐電圧に優れた軟磁性複合材料が提供される。本発明の軟磁性複合材料を用いて、射出成形法、押出成形法、圧縮成形法などにより、耐電圧に優れたコイル、トランス、ラインフィルター、電磁波遮蔽材などの各種成形体(成形品や部品)を得ることができる。

Claims (5)

  1. 軟質フェライトからなる磁性体粉末(A)をポリマー(B)中に分散させた軟磁性複合材料において、磁性体粉末(A)が、平均結晶粒径(d1)3〜15μmの燒結磁性体を粉砕して得られた平均粒径(d2)20〜50μmの磁性体粉末であって、かつ、該磁性体粉末の平均粒径(d2)が燒結磁性体の平均結晶粒径(dl)の倍以上大きいことを特徴とする軟磁性複合材料。
  2. 磁性体粉末(A)が、Ni−Zn系フェライト、Mg−Zn系フェライト、及びCu系フェライトからなる群より選ばれる少なくとも一種の軟質フェライトからなる磁性体粉末である請求項1記載の軟磁性複合材料。
  3. 磁性体粉末(A)が、未燒結フェライト粉末をスプレードライ法により顆粒状に造粒した後、燒結してなる燒結磁性体を粉砕して得られた磁性体粉末である請求項1または2記載の軟磁性複合材料。
  4. 磁性体粉末(A)50〜95体積%を該ポリマー(B)5〜50体積%中に分散させた請求項1乃至3のいずれか1項に記載の軟磁性複合材料。
  5. ポリマー(B)が、ポリオレフィン、ポリアミド、及びポリアリーレンスルフィドからなる群より選ばれる少なくとも一種のポリマーである請求項1乃至4のいずれか1項に記載の軟磁性複合材料。
JP04736397A 1997-02-13 1997-02-13 軟磁性複合材料 Expired - Fee Related JP3838730B2 (ja)

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