JP3836608B2 - 車両用交流発電機の回転子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、車両のエンジンに取り付けられるランドル型の回転子を有する車両用交流発電機の回転子に関し、特にランドル型界磁鉄心に巻装される巻線の巻き付け構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図2は従来の車両用交流発電機の回転子を示す断面図、図3は図2に示される回転子の要部を示す断面図である。
図2および図3において、回転子1は、図示しないブラケットに軸支される回転軸11、この回転軸11に固定された一対のランドル型界磁鉄心12a、12b、界磁鉄心12a、12bの軸方向の両端に固定された一対のファン13a、13b、回転軸11の一端に固定されたスリップリング14、界磁鉄心12a、12bに巻装された界磁巻線15を備えている。
界磁鉄心12a、12bは、鉄製で、回転軸11に挿入されて固定される円柱状の基部121a、121bと、基部121a、121bの外周縁部に爪状に複数突設された爪状磁極122a、122bとからなり、基部121a、121bの端面同士が密着し、かつ、爪状磁極122a、122bが交互に噛み合うように対向して回転軸11に固定される。界磁巻線15は、矩形断面を有する平角形状の銅線であり、基部121a、121bの外周に挿入されたボビン16に所定回巻回されている。この界磁巻線15は、スリップリング14を介して電流が供給されて磁束を発生し、この磁束によって界磁鉄心12a、12bに磁極が形成される。
そして、巻線保護用の内周テープ17aがボビン16の円筒部16aに巻装されている。また、巻線保護用の外周テープ17cがボビン16に巻回された界磁巻線15の外周に巻装されている。さらに、側面テープ17bが界磁巻線15の引出部と多段層部との間に配設されている。
【0003】
ここで、界磁巻線15の巻回構造について図4を参照しつつ説明する。
ボビン16は、樹脂製であり、円筒部16aと、この円筒部16aの両端に相対して突設された一対の環状のフランジ部16bとを備えている。そして、一方のフランジ部16bの内面には、巻き始めの口出し線15aを収納する凹溝161が外周側から円筒部16aに至るように径方向に対して傾斜して設けられている。また、係止部16cが一方のフランジ部16bの外周部で凹溝161の上端近傍に設けられている。
まず、内周テープ17aがボビン16の円筒部16aに巻き付けられる。そして、界磁巻線15の巻き始め側が係止部16cに巻き付けられ、凹溝161内に収められ、凹溝161の下端(内周端)から円筒部16aに引き出される。ここで、側面テープ17bが凹溝161内に収められた界磁巻線15の巻き始めの口出し線15aを覆うようにフランジ部16bの内面に貼り付けられる。そして、円筒部16aに引き出された界磁巻線15は、ボビン16の軸心と直交する面に対して角度をもって、整列されながら円筒部16aに巻き付けられる。そして、1段目の巻線が終了すると、2段目が軸心と直交する面に対して角度をもって、整列されながら円筒部16aに巻き付けられる。このようにして、界磁巻線15が円筒部16aの底部から順に1段、2段と巻き重ねられ、所定の段数が巻き重ねられた後、外周テープ17cがその最外周部に巻き付けられる。さらに、ワニスが界磁巻線15の多段層部に浸透される。
【0004】
ここで、界磁巻線15の巻き始め部について説明する。
平角形状の口出し線15aの幅広面は凹溝161の底部に密接するように凹溝161内に収められている。つまり、口出し線15aの幅広面がボビン16の軸心と直交している。一方、ボビン16の円筒部16aの外周面はボビン16の軸心と平行となっている。
そこで、幅広面がボビン16の軸心と直交している界磁巻線15は、凹溝161の内周端で円筒部16a側に直角に折り曲げられ、円筒部16aの外周面上に延出される。さらに、円筒部16aの外周面上に延出された界磁巻線15は、その長手方向がボビン16の軸心と直交する面に対して角度をもつように、円筒部16aの外周面上でほぼ90度ねじられ、1段目の巻き付けが行われる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このように構成された従来の車両用交流発電機の回転子では、界磁巻線15の巻き始め部において、界磁巻線15が凹溝161の内周端で円筒部16a側に直角に折り曲げられて円筒部16aの外周面上に延出され、さらにその長手方向がボビン16の軸心と直交する面に対して角度をもつように、円筒部16aの外周面上でほぼ90度ねじられている。そして、界磁巻線15が平角形状を有しているので、曲げおよびねじれによる盛り上がりを吸収しきれず、界磁巻線15の巻き始め部に盛り上がりが生じてしまう。
そこで、2段目以降の界磁巻線15がその盛り上がり部上に巻き重ねられ、界磁巻線15の巻き始め部に損傷を発生させてしまうという課題があった。また、界磁巻線15の巻き始め部は多段層部の最下層に位置しており、巻線の損傷を検知しにくく、品質問題にもつがなっていた。
また、凹溝161の内周端での界磁巻線15の曲げおよびねじりの角度が大きいので、加工性が低下するとともに、巻線の断線を発生させてしまうという課題もあった。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、平角形状の界磁巻線の巻き始め部における曲げおよびねじりの角度を小さくし、盛り上がりを低減し、界磁巻線の巻き重ねによる巻線の損傷の発生を抑え、かつ、断線の発生を抑えて品質の安定性を向上できるとともに、加工性を向上できる車両用交流発電機の回転子を得ることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る車両用交流発電機の回転子は、それぞれ円柱状の基部およびこの基部の外周縁部に突設された複数の爪状磁極を有し、該基部の端面同士を密接させ、かつ、該爪状磁極を互いに噛み合うように対向して回転軸に固着された一対の界磁鉄心と、円筒部、この円筒部の両端に相対して突設された一対の環状のフランジ部、一方のフランジ部の内壁面に径方向に対して傾斜して凹設された凹溝および一方のフランジ部の外周部の該凹溝の外周端近傍に設けられた係止部を有し、上記一対の界磁鉄心の基部に挿着された円筒状のボビンと、上記ボビンの円筒部に多段に所定回数巻き重ねられた界磁巻線とを備えた車両用交流発電機の回転子において、上記界磁巻線は、平角形状を有し、その巻き始め側が上記係止部に巻き付けられて上記凹溝内に収容され、そして上記凹溝の内周端から上記ボビンの円筒部の外周面上に引き出され、さらに上記ボビンの円筒部の外周面上を上記一方のフランジ部側から他方のフランジ部まで渡され、その後上記ボビンの円筒部の外周面上に軸心と直交する面に対して角度をもって巻き付けられているものである。
【0008】
また、上記界磁巻線は、上記凹溝の内周端から上記ボビンの円筒部の外周面上に引き出された後、1周以内に上記ボビンの円筒部の外周面上を上記一方のフランジ部側から他方のフランジ部まで渡されているものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を図について説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機の回転子における界磁巻線の巻回構造を説明する斜視図である。
図1において、界磁巻線15は、矩形断面を有する平角形状の銅線である。また、ボビン16は、樹脂製であり、円筒部16aと、この円筒部16aの両端に相対して突設された一対の環状のフランジ部16bとを備えている。そして、一方のフランジ部16bの内面には、巻き始めの口出し線15aを収納する凹溝161が外周側から円筒部16aに至るように径方向に対して傾斜して設けられている。また、係止部16cが一方のフランジ部16bの外周部で凹溝161の外周端近傍に設けられている。
【0010】
この実施の形態1による界磁巻線15の巻回構造について説明する。
まず、内周テープ17aがボビン16の円筒部16aに巻き付けられる。そして、界磁巻線15の巻き始め側が係止部16cに巻き付けられ、凹溝161内に収められ、凹溝161の内周端から円筒部16aに引き出される。ここで、側面テープ17bが凹溝161内に収められた界磁巻線15の巻き始めの口出し線15aを覆うようにフランジ部16bの内面に貼り付けられる。円筒部16aに引き出された界磁巻線15は、円筒部16aの軸心と直交する面に対して所定の角度で、一方のフランジ部16bから他方のフランジ部16bまで円筒部16aの外周面上を渡される。そして、他方のフランジ部16bの根元部まで渡された界磁巻線15は、ボビン16の軸心と直交する面に対して角度をもって、整列されながら円筒部16aに巻き付けられる。1段目の巻線が終了すると、2段目が軸心と直交する面に対して角度をもって、整列されながら円筒部16aに巻き付けられる。このようにして、界磁巻線15が円筒部16aの底部から順に1段、2段と巻き重ねられ、所定の段数が巻き重ねられた後、外周テープ17cがその最外周部に巻き付けられる。さらに、ワニスが界磁巻線15の多段層部に浸透される。
【0011】
ここで、この実施の形態1による界磁巻線15の巻き始め部について説明する。
平角形状の口出し線15aの幅広面は凹溝161の底部に密接するように凹溝161内に収められている。つまり、口出し線15aの幅広面がボビン16の軸心と直交している。一方、ボビン16の円筒部16aの外周面はボビン16の軸心と平行となっている。
そこで、幅広面がボビン16の軸心と直交している界磁巻線15は、凹溝161の内周端で円筒部16a側に直角に折り曲げられ、円筒部16aの外周面上に延出される。さらに、円筒部16aの外周面上に延出された界磁巻線15は、円筒部16aの外周面上でねじられ、一方のフランジ部16bから他方のフランジ部16bまで円筒部16aの外周面上を渡される。そして、他方のフランジ部16bの根元部まで渡された界磁巻線15は、その長手方向がボビン16の軸心と直交する面に対して角度をもつように、円筒部16aの外周面上でねじられ、1段目の巻き付けが行われる。
なお、他の構成は、図2および図3に示される従来の回転子と同様に構成されている。
【0012】
このように構成された回転子では、界磁巻線15の渡り終了部が凹溝161の内周端に対して巻き付け方向の前方に位置している。また、凹溝161の内周端から円筒部16aへの延出部および渡り終了部における界磁巻線15のねじり方向が同じ方向となっている。
そこで、界磁巻線15の巻き始め部における巻線の曲げおよびねじりが、凹溝161の内周端から円筒部16aへの延出部および界磁巻線15の渡り終了部の2個所に分散され、各所での巻線の曲げおよびねじれの角度を小さくできる。
その結果、曲げおよびねじれに起因する巻線の盛り上がりが従来技術に比べて著しく低減されるので、2段目以降の界磁巻線15がその盛り上がり部上に巻き重ねられても、界磁巻線15の巻き始め部に損傷を発生させてしまうことがなく、安定した品質の回転子が得られる。
また、曲げおよびねじれに起因して巻線の曲げおよびねじれ部に発生する応力が小さくなり、巻線の断線の発生が低減される。
さらに、曲げおよびねじれ加工が簡易にでき、コイルの巻回作業性を向上させることができる。
【0013】
また、平角形状の界磁巻線15を用いているので、径方向の界磁巻線15相互間距離がほぼゼロとなり、多段層部の剛性が大きくなり、耐振動性が向上し、巻線くずれの発生を抑えることができる。同様に、界磁巻線15間の熱伝達率が向上し、放熱性があがり、結果的に高出力が得られる。さらに、界磁巻線15の厚さが薄くなり、界磁巻線15を高密度に巻くことができ、小型化および高出力が達成される。
【0014】
ここで、界磁巻線15は、凹溝161の内周端から円筒部16aの外周面上に延出され、一方のフランジ部16bから他方のフランジ部16bまで円筒部16aの外周面上を渡された後、1段目の巻き付けが行われる。この時、界磁巻線15は界磁巻線15の渡り部上を巻き重ねられるので、多段層部の外径に凹凸を生じてしまう。そして、凹溝161の内周端から円筒部16aの外周面上に延出された後、一方のフランジ部16bから他方のフランジ部16bまで円筒部16aの外周面上を渡されるまでに一周以上要した場合には、界磁巻線15が周方向で2個所以上で界磁巻線15の渡り部上を巻き重ねられることになり、多段層部の外径に生じる凹凸が多くなってしまう。つまり、界磁巻線15の多段層部の外径が軸方向でより不均一となり、多段層部を偏心させることにつながる。そして、多段層部の偏心が大きくなると、高速回転時に回転子の振動を誘発する恐れがある。このこのことから、一周以内に一方のフランジ部16bから他方のフランジ部16bまで円筒部16aの外周面上を渡されることが望ましい。
【0015】
【発明の効果】
この発明は、以上のように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。
【0016】
この発明によれば、それぞれ円柱状の基部およびこの基部の外周縁部に突設された複数の爪状磁極を有し、該基部の端面同士を密接させ、かつ、該爪状磁極を互いに噛み合うように対向して回転軸に固着された一対の界磁鉄心と、円筒部、この円筒部の両端に相対して突設された一対の環状のフランジ部、一方のフランジ部の内壁面に径方向に対して傾斜して凹設された凹溝および一方のフランジ部の外周部の該凹溝の外周端近傍に設けられた係止部を有し、上記一対の界磁鉄心の基部に挿着された円筒状のボビンと、上記ボビンの円筒部に多段に所定回数巻き重ねられた界磁巻線とを備えた車両用交流発電機の回転子において、上記界磁巻線は、平角形状を有し、その巻き始め側が上記係止部に巻き付けられて上記凹溝内に収容され、そして上記凹溝の内周端から上記ボビンの円筒部の外周面上に引き出され、さらに上記ボビンの円筒部の外周面上を上記一方のフランジ部側から他方のフランジ部まで渡され、その後上記ボビンの円筒部の外周面上に軸心と直交する面に対して角度をもって巻き付けられているので、界磁巻線の巻き始め部における曲げおよびねじりの角度が小さくなり、盛り上がりが低減され、界磁巻線の巻き重ねによる巻線の損傷の発生が抑えられ、かつ、断線の発生が抑えられて品質の安定性を向上できるとともに、加工性を向上できる車両用交流発電機の回転子が得られる。
【0017】
また、上記界磁巻線は、上記凹溝の内周端から上記ボビンの円筒部の外周面上に引き出された後、1周以内に上記ボビンの円筒部の外周面上を上記一方のフランジ部側から他方のフランジ部まで渡されているので、界磁巻線の多段層部を均一な外径に形成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1に係る車両用交流発電機の回転子における界磁巻線の巻回構造を説明する斜視図である。
【図2】 従来の車両用交流発電機の回転子を示す断面図である。
【図3】 従来の車両用交流発電機の回転子を示す要部断面図である。
【図4】 従来の車両用交流発電機の回転子における界磁巻線の巻回構造を説明する断面図である。
【符号の説明】
11 回転軸、12a、12b 界磁鉄心、15界磁巻線、16 ボビン、16a 円筒部、16b フランジ部、16c 係止部、121a、121b 基部、122a、122b 爪状磁極、161 凹溝。
Claims (2)
- それぞれ円柱状の基部およびこの基部の外周縁部に突設された複数の爪状磁極を有し、該基部の端面同士を密接させ、かつ、該爪状磁極を互いに噛み合うように対向して回転軸に固着された一対の界磁鉄心と、円筒部、この円筒部の両端に相対して突設された一対の環状のフランジ部、一方のフランジ部の内壁面に径方向に対して傾斜して凹設された凹溝および一方のフランジ部の外周部の該凹溝の外周端近傍に設けられた係止部を有し、上記一対の界磁鉄心の基部に挿着された円筒状のボビンと、上記ボビンの円筒部に多段に所定回数巻き重ねられた界磁巻線とを備えた車両用交流発電機の回転子において、
上記界磁巻線は、平角形状を有し、その巻き始め側が上記係止部に巻き付けられて上記凹溝内に収容され、そして上記凹溝の内周端から上記ボビンの円筒部の外周面上に引き出され、さらに上記ボビンの円筒部の外周面上を上記一方のフランジ部側から他方のフランジ部まで渡され、その後上記ボビンの円筒部の外周面上に軸心と直交する面に対して角度をもって巻き付けられていることを特徴とする車両用交流発電機の回転子。 - 上記界磁巻線は、上記凹溝の内周端から上記ボビンの円筒部の外周面上に引き出された後、1周以内に上記ボビンの円筒部の外周面上を上記一方のフランジ部側から他方のフランジ部まで渡されていることを特徴とする請求項1記載の車両用交流発電機の回転子。
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