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JP3833702B2 - ポリカルバメート,ポリカルバメートの製造方法,及びポリイソシアネートの製造方法 - Google Patents

ポリカルバメート,ポリカルバメートの製造方法,及びポリイソシアネートの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、例えば、ポリウレタンポリマーの製造において有効なポリイソシアネートの製造方法に関する。
ポリイソシネートは多くの用途に広く用いられており、その最も一般的なものはポリウレタンポリマーの製造である。工業上最も重要なものは、芳香族ポリイソシアネート、例えばトルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)及び通常MDI製造における副生成物として形成されるいわゆる高分子MDI生成物である。しかしながら、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート及び水素化MDI(H12MDI)のようなある種の脂肪族ポリイソシアネートも工業上使用されている。
工業スケールにおいて、ポリイソシアネートは対応するポリアミンをホスゲンと反応させることによりほぼ全世界的に製造されている。例えば、TDIはホスゲンとトルエンジアミンとを反応させることにより製造されている。この方法には多くの問題があり、そのうち最大の問題は、多量のホスゲンを取り扱わねばならないことである。ホスゲンは毒性が高く、従業者への暴露を防ぐためにその取扱いには特別な注意が必要である。ホスゲンとポリアミンの反応においてHClが形成し、中和するか、あるいは除去しなければならない。ホスゲン及びHClはまた、種々の副反応をおこし、望ましくない塩素化された副生成物を形成する。この副生成物は製造されたポリイソシアネートの品質及び純度に影響を及ぼす。従って、ホスゲンを用いることなくポリイソシアネートを製造することのできる方法が望まれている。
多くのホスゲンを用いないポリイソシアネート製造法が開発された。そのような方法の1つは、n−アルキルビスカルバメートの製造を含む。このn−アルキルビスカルバメートはその後熱分解され、対応するポリイソシアネート及びアルコールを形成する。このビスカルバメートは通常2つの方法のうちの1つにより製造される。第1の方法は、一酸化炭素、酸素及びアルコール、例えばエタノールもしくはメタノールによりアミンを酸化カルボニル化し、対応するエチルもしくはメチルカルバメートを形成することを含む。他の方法は、一酸化炭素及びアルコール、例えばエタノールもしくはメタノールによりニトロ化合物を還元カルボニル化し、対応するエチルもしくはメチルカルバメートを形成することを含む。例えばWO86−05179を参照されたい。
これらの方法において、エチルもしくはメチルポリカルバメートは高温においてかつ減圧下において熱分解される。このような温度においては、ポリイソシアネートは重合し、タール及び他の副生成物を形成することが多い。このため、及びこのカルバメートはしばしば結晶質であるため、希釈剤として溶媒が必要である。熱分解における溶媒の使用は、溶媒から生成物のポリイソシアネートを回収する点においてコストを高める。また、必要とされる高温もこの方法のコストを高める。
従って、溶媒を用いないで、かつ好ましくは中程度の温度においてポリカルバメートの熱分解を行う、ポリカルバメート中間体を介したポリイソシアネートの製造方法を提供することが望ましい。
一態様において、本発明は下式(I)
Figure 0003833702
(上式中、bは2以上の数であり、Rはbの原子価を有する有機基であり、Yは少なくとも2個の炭素を有する基であり、そしてZは少なくとも1個の炭素原子を含む脂肪族もしくは芳香族基である)
で表されるポリカルバメートである。
他の態様において、本発明は、減圧下かつ150〜270℃の温度において第一の態様のポリカルバメートを熱分解し、対応するポリイソシアネート及びアルコールを形成することを含む、ポリイソシアネートの製造方法である。
第三の態様において、本発明は、第一の態様のポリカルバメートを形成し、次いで減圧下かつ150〜270℃の温度においてこのポリカルバメートを熱分解して対応するポリイソシアネート及びアルコールを形成することを含む、ポリイソシアネートの製造方法である.
他の態様において、本発明は、高温において下式(II)
Figure 0003833702
(上式中、AはC1-6直鎖アルキルである)
で表されるポリカルバメートを式Z−CH(OH)−Yで表される2級アルコールと反応させて式(I)で表されるポリカルバメートと式A−OHのアルコールを形成し、アルコールA−OHを連続的にもしくは断続的に生成物のポリカルバメートから除去することを含むポリカルバメートの製造方法である。
予想外のことに、本発明のポリカルバメートは、エチルもしくはメチルポリカルバメートを熱分解させるに必要な条件と比較して驚くべきほど温和な条件において熱分解され、対応するポリイソシアネートを形成することができる。従って、熱分解はエチルもしくはメチルポリカルバメートを熱分解させるに必要な温度よりも低い温度において行うことができ、そのままかつ溶媒を用いることなく行うことができる。さらに、このポリカルバメートは、実質的に溶媒を用いることなく、エチルもしくはメチルポリカルバメートの熱分解において形成されるものと比較してタール及び他の副生成物をほとんど形成することなく熱分解することができる。溶媒を用いないため、イソシアネート及びアルコールの分離を簡潔に行うことができる。
本発明のポリカルバメートは下式
Figure 0003833702
(上式中、bは2以上の数であり、Rはbに等しい原子価を有する有機基であり、Yは少なくとも2個の炭素原子を有する基であり、そしてZは少なくとも1個の炭素原子を含む脂肪族もしくは芳香族基である)
で表される化合物である。
式(I)において、bは好ましくは2〜4の数であり、より好ましくは2〜3であり、最も好ましくは2である。
Rは好ましくは炭化水素基であり、これは脂肪族、脂環式、もしくは芳香族であってよい。好適な脂肪族炭化水素基は2以上、好ましくは4以上、20以下、好ましくは12以下、より好ましくは8以下の炭素原子数を有する直鎖もしくは分枝鎖炭化水素を含む。最も好ましいものは4〜8個の炭素原子を有する直鎖炭化水素ジラジカルである。その例は、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、及びオクタメチレンジラジカルを含む。好適な脂環式炭化水素基は、単環及び多環炭化水素を含み、好ましくは6〜16個の炭素原子を有する単環炭化水素である。これらのうち好ましい脂環式炭化水素はシクロヘキサン、アルキル置換シクロヘキサン、イソホロンジアルキル置換シクロヘキサン、モノもしくはジハロ置換シクロヘキサン、シクロオクタン、アルキル置換シクロオクタン、ジアルキル置換シクロオクタン、モノもしくはジハロ置換シクロオクタン,ビス(シクロヘキシル)アルカン、例えばメチレンビス(シクロヘキサン)及びプロピリデンビス(シクロヘキサン)等の基である。好適な芳香族ポリラジカルは、ベンゼン、トルエン及び他のモノアルキルベンゼン、o-、p-、及びm-キシレン及び他のジアルキルベンゼン、ジフェニルアルカン、例えばジフェニルメタン及び2,2-ジフェニルプロパン、及びハロゲン化芳香族のポリラジカルを含む。
最も好ましいR基はヘキサメチレン、フェニレン、ジフェニルメタン、トルエン、シクロヘキサン、キシレニル、メチルシクロヘキサン、イソホロン及びジシクロヘキシルメタン基である。
式(I)において、Z基は直鎖もしくは分枝鎖アルキル、シクロアルキル、アルコキシ置換アルキル、ベンジル、フェニルもしくは他の芳香族基を含み、これらは置換していてもよい。好ましいZ基は、C1-4直鎖アルキル、C3-6分枝鎖アルキル、アルキルエーテル、フェニル及びベンジルを含む。より好ましくは、Z基はメチル,エチル、C3-62級アルキル、C4-63級アルキル、フェニルもしくはベンジルである。
Y基の例は、2〜20、好ましくは3〜6個の炭素原子を有するものを含み、下式
−CR123
(上式中、R1及びR2は水素、C1-6アルキル、芳香族、ベンジル、アルコキシもしくはフェノキシであり、R3はC1-6アルキル,芳香族、ベンジル、アルコキシ、フェノキシもしくはジアルキルアミンである。R1は好ましくは水素、C1-6アルキルもしくはフェニルである。R2は好ましくはC1-6アルキル、フェニルもしくはC1-4アルコキシである。R1及びR2が共に水素である場合、R3はC1-6アルキル、フェニル、アルコキシ、フェノキシもしくはジアルキルアミンであってもよいが、この場合、R3はC1-4アルコキシもしくはフェノキシであることが好ましく、より好ましくはメトキシもしくはエトキシである。さもなければ、R3は好ましくはC1-4アルキル、フェニルもしくはC1-2アルコキシであり、より好ましくはメチル、エチル、メトキシもしくはエトキシである。
特に重要なY基は、R1及びR2が水素でありR3がエトキシもしくはメトキシであるもの、R1及びR2が水素であり、R3がメチル、エチルもしくはフェニルであるもの、R1が水素であり、R2及びR3が各々メチル、エチルもしくはフェニルであるもの、R1が水素であり、R2がメチル、エチルもしくはフェニルであり、R3がメトキシもしくはエトキシであるもの、R1及びR2が共にメチル、エチルもしくはフェニルであり、R3がメトキシもしくはエトキシであるもの、そしてR1、R2及びR3がすべてメチルもしくはエチルであるものである。
本発明のポリカルバメートは、下式
Figure 0003833702
で表されるポリカルバメート及び式Z−CH(OH)−Yを有するアルコール(上式中、R、b、Y及びZは前記規定と同じであり、AはC1-4直鎖アルキル、好ましくはエチルもしくはメチルである)を含むエステル交換反応において製造される。
このエステル交換反応は高温において行われる。通常、50〜250℃の温度が用いられ、温度が高いほど反応は速い。反応の進行につれて式A−OHで表されるアルコールが形成する。エステル交換反応を終了させるために、アルコールA−OHが形成した際に生成物からこのアルコールを除去することが好ましい。これを行う簡単な方法は、アルコール蒸気を排気することである。このため、アルコールA−OHの沸点以上の温度においてこの反応を行うことが好ましい。
好ましい温度はエステル交換反応の速度を高めるために触媒を用いるかどうかによって異なる。触媒を用いる場合、中程度の温度、すなわち50〜150℃を用いることが好ましい。触媒を用いない場合,100〜250℃の温度が好ましい。
このエステル交換反応は希釈剤の存在下において行ってもよい。この希釈剤は有利には、エステル交換反応が行われる温度範囲の沸点を有し、この反応は還流条件において行われる。この希釈剤は出発及び生成物ポリカルバメートが望ましくない反応をしないいずれの液体であってよい。好適な希釈剤は、芳香族溶媒、例えばトルエン及びベンゼン、エチルアセテート、メチルクロリド、アセトン、及び好ましくはアルコールA−OH、例えばエステル交換反応の間に形成されるものを含む。好ましい溶媒は、反応混合物からアルコールA−OHの除去を促進するもの、例えばトルエン、ベンゼン、及びエチルアセテートである。
上記のように、エステル交換反応において触媒を用いてもよい。好適な触媒は、有機金属触媒、例えば有機錫化合物、有機チタン化合物、有機水銀化合物、有機ビスマス化合物及び同様の化合物を含み、有機錫化合物及び有機チタン(IV)化合物が好ましい。好適な有機錫化合物は、ポリウレタン触媒として通常用いられているものを含み、例えばオクトエート及びジアルキル錫ジアルカノエート、例えばジメチル錫ジラウレート及びジブチル錫ジラウレートを含む.好適なチタン(IV)化合物は、チタン(IV)イソプロポキシドである。酸及び塩基のような従来のエステル交換触媒も用いてよい。酸の例は、トルエンスルホン酸、硫酸、及びメタンスルホン酸を含む.塩基の例は、トリアルキルアミン及びアルカリ金属アルコキシド、例えばナトリウムもしくはカリウムメトキシドを含む。
エステル交換反応は、ポリカルバメート出発材料をアルコールZ−CH(OH)−Yと接触させ、これを上記の温度まで加熱することにより行われる。反応を終了させるために、好ましくは過剰のアルコールが用いられる。触媒を用いる場合、この触媒は有利には出発ポリカルバメートの重量を基準として0.01〜5重量パーセント、好ましくは0.1〜1重量パーセントの量で存在する。生成物のアルコールA−OHは、生成物ポリカルバメートに向かう平衡をすすめるために、好ましくはそれが形成した際に反応混合物から除去される。アルコールZ−CH(OH)−Yは、同じ理由により、消費されるたびに補給してもよい。用いる温度によって、1〜30時間において90パーセント以上の収率で反応が進行する。
反応後、揮発性不純物を除去し、残留触媒及び出発ポリカルバメートを適当な方法、例えば溶剤抽出もしくは再結晶により除去することにより生成物ポリカルバメートを仕上げることが好ましい。
出発ポリカルバメートは式R−NH2b(式中、R及びbは前記規定と同じである)のポリアミンの酸化もしくは還元カルボニル化により製造される。そのような方法は、例えば特開昭57−158746〜48号公報、57−70855号公報、57−185253号公報、及び57−188557号公報に記載されている。酸化カルボニル化は有利には一酸化炭素、酸素及びエタノール(ポリエチルカルバメートを形成するため)もしくはメタノール(ポリメチルカルバメートを形成するため)を用いて行われる。還元カルボニル化は有利には一酸化炭素及びメタノールもしくはエタノールを用い、好ましくはルテニウム触媒の存在下において行われる。いずれの場合においても、カルボニル化は過剰のメタノールもしくはエタノールの存在下において高温かつ高圧で行われる。
出発ポリカルバメートを製造する第三の方法は、エタノールもしくはメタノールを用いてモノアミンを酸化カルボニル化しもしくはモノニトロ化合物を還元カルボニル化してモノカルバメートを形成し、次いでこのモノカルバメートをカップリングさせてポリカルバメートを形成することである。この方法は多芳香族カルバメートの製造に特に適している。例えば、アニリンもしくはニトロベンゼンから製造されたモノカルバメートはアルデヒドもしくはケトンによる縮合によってカップリングされ、アルキレンビスもしくはポリ(フェニルカルバメート)を形成する。この場合、モノカルバメートは好ましくはアニリンのメチルもしくはエチルカルバメートであり,ケトンは好ましくはホルムアルデヒドである。
本発明のポリカルバメートは、熱分解され対応するポリイソシアネートを形成することができる。本発明の大きな利点は、このポリカルバメートの熱分解が溶媒もしくは触媒を必要とせずに容易に行うことができることである。さらに、本発明のポリカルバメートは,対応するn−アルキルポリカルバメートよりも、熱分解の際に高分子及びタール状副生成物を形成することが少ない。
本発明のポリカルバメートは有利には、130℃以上、好ましくは150℃以上、より好ましくは175℃以上、300℃以下、好ましくは270℃以下、より好ましくは250℃以下、最も好ましくは230℃以下の温度に加熱することにより対応するポリイソシアネート及びアルコールに分解される。熱分解において形成されるアルコール及びポリイソシアネートが形成した際に蒸発し、カルバメートとポリイソシアネートの間の平衡が生じないような温度を選択することが好ましい。この温度は、アルコール及びポリイソシアネートが、反応において形成した際に反応混合物から蒸発するような温度が特に好ましい。
熱分解反応においては減圧が好ましく、0.01〜50トール、とりわけ0.1〜5.0トールが好ましい。それは反応混合物からのアルコール及びポリイソシアネートの蒸発を促進するからである。
熱分解工程の間は溶媒は必要ないが、必要により用いてもよい。ポリカルバメートを溶解し、熱分解の間不活性であり、かつ熱分解反応に用いる温度において安定であるならばいずれの溶媒を用いてもよい。そのような溶媒の例は、ジフェニルオキシド、アルキルベンゼン、ジアルキルベンゼン、及び2級アルコールを含む。
好ましい方法において、まずポリカルバメートは比較的温和な温度、好ましくは50〜100℃に加熱され、そしてアルコールが蒸発しなくなるまでこの温度に維持する。この最初の加熱工程は好ましくは真空下において行われる。この工程の間、アロファネート及び/又はポリウレタンを含むと考えられる高分子残留物がしばしば形成する。次いで、この高分子残留物は上記のような高温において熱分解され、ポリイソシアネート及びアルコールを回収する。得られるポリイソシアネートは蒸発され、又は必要により精製される。
本発明により製造されたポリイソシアネートは、ポリウレタン、ポリウレア、ポリイソシアヌレート、ポリアミド、ポリイミド等のポリマーの製造において有効である。ポリイソシアネートからのこれらのタイプのポリマーの製造は公知であり、例えば米国特許第4,876,019号、4,929,646号及び5,010,117号に記載されている。
実施例
以下の実施例は本発明を説明するものであり、その範囲を限定するものではない。特に示さない限り、部及びパーセントはすべて重量基準である。
例1
蒸気相出口及び液体入口を備えたパール(Parr)反応器に、31.47部のジフェニルメタンジメチルビスカルバメート(MDIジメチルビスカルバメート)及び200部の1-メトキシ-2-プロパノールを加えた。この混合物を攪拌しながら約220℃に加熱し、エステル交換反応を開始させた。反応の間に反応器からメタノールがリッチな蒸気相を、1時間あたり13部取り出した。約5時間後、MDIジメチルビスカルバメートがすべて消費された。生成物混合物は93.4パーセントのMDIジ(1-メトキシイソプロピル)ビスカルバメート及び5.6部のMDIメチル(1-メチルオキシイソプロピル)ビスカルバメートを含んでいた。
例2
冷却器を備えたフラスコに、68.4部のジフェニルメタンジエチルビスカルバメート(MDIジエチルビスカルバメート)、180部の1-メトキシ-2-プロパノール及び0.5部のジブチル錫ジラウレートを入れた。得られた混合物を125℃〜145℃の温度に加熱した。反応進行の間に系からメタノールを除去した。72時間後、MDIジエチルビスカルバメートは残っていなかった。フラスコの内容物を濃縮し、81.8部のMDIジ(1-メトキシイソプロパノール)ビスカルバメートが得られた。
例3
出発ビスカルバメートが62.8部のMDIジメチルビスカルバメートであることを除き、例2を繰り返した。生成物は80.3部のMDIジ(1-メトキシイソプロパノール)ビスカルバメートを含んでいた.
例4
ジブチル錫ジラウレートに代えて0.9gのチタン(IV)イソプロポキシドを用いて例2を再び繰り返した。72時間反応後、79.5部のMDIジ(1-メトキシイソプロパノール)ビスカルバメートが得られた.
例5
加熱マントルを備えた蒸発フラスコに、18.8gの1-メトキシ-2-プロパノール及び43.2gの下式
Figure 0003833702
で表されるビスカルバメート(MDIジ(1-メトキシイソプロパノール)ビスカルバメート)の混合物を入れた。
この混合物を真空下で100℃未満まで加熱し、22.6gの2-ヒドロキシ-3-メトキシプロパンを蒸発させた。この蒸発物を冷却トラップ内に回収した。蒸発フラスコ内に残っている材料は樹脂状の外観を有しており、ビスカルバメートから形成されたポリウレタンもしくはアロファネートを含んでいると考えられる。第二段階において,蒸発フラスコを180〜220℃に加熱し、イソシアネートと1-メトキシ-2-プロパノールの混合物の蒸発を開始させた。蒸発物の温度は140〜180℃であった。1-メトキシ-2-プロパノールからイソシアネートを凝縮させ分離し、冷却トラップの上流の凝縮フラスコ内で回収し、1-メトキシ-2-プロパノールを凝縮させた。これより蒸発させたイソシアネートは22.4パーセントのNCO含量を有しており,約48パーセントMDI及び52パーセントモノカルバメートを示している。蒸発フラスコが空になるまで(タール状残留物を除く)蒸発を続けた。この残留物を回収し、1.6gであった。これは当初の混合物の4パーセントのビスカルバメート及び2-ヒドロキシ-3-メトキシプロパンを示す。
22パーセントNCO基を含む結晶質ポリイソシアネートが合計21.3g回収された。合計39.5gの1-メトキシ-2-プロパノールが回収された。この量は理論上の100パーセント以上であるが、分析によりMDIのいくらかはアルコール中に存在していた。
上記の熱分解より回収されたイソシアネート(20g)を同じ条件において再び熱分解した。この第二の熱分解より得られた蒸発物は32パーセントのNCO含量を有しており、これは約92パーセントのMDI及び8パーセントのモノカルバメートを表す。わずか0.3gのタール状残留物が熱分解フラスコ内に残っていた。
例6空7及び比較サンプルA
例5に記載の装置を用いて各種ビスカルバメートを熱分解した。すべてにおいて、熱分解は例5に記載と同じ条件で行った。
出発ビスカルバメート、回収されたイソシアネート、回収されたアルコール、及びタール状残留物の重量を表1に示す。
Figure 0003833702
表1のデータより明らかなように、本発明のビスカルバメート(サンプル6及び7)は溶媒を用いずに熱分解した場合に形成するタールは最少であった。一方、この条件においてほぼ半分のMDIジエチルビスカルバメートはタール状残留物を形成した。
例8
下式
Figure 0003833702
の構造を有するTDIジ-1-メトキシ-2-プロピルビスカルバメート(49.4g)を、180空250℃、1mmHgの真空において、例5に記載と同様の装置において熱分解を行った。150〜160℃において蒸発物を集めた。これは34.5gであり、17.2パーセントのNCO含量を有していた。分離ドライアイストラップにおいて、12.9gの1-メトキシ-2-プロパノールが集められた。蒸発物のNCO含量は、これが主にTDIのモノカルバメートであることを示した。熱分解フラスコは0.85gのタールを含んでおり、出発材料の重量の1.8パーセントであることを示している。
次いで蒸発物を同じ条件において再び熱分解させた。今回は2種の蒸発物を集めた。1つは75〜85℃において(主にTDI)、そして1つは165〜175℃において(主にモノカルバメート)である。フラスコ内の高分子タールは出発材料の重量の1パーセント未満である。
例9
12MDIジ-1-メトキシ-2-プロピルビスカルバメート(107.0g)を例5と同じ条件で熱分解させた。この熱分解の生成物は、26.6パーセントのNCO含量を有する41.9gのポリイソシアネート、55.1gの1-メトキシ-2-プロパノール、及び9.7gのタール状残留物であった。

Claims (6)

  1. 下式
    Figure 0003833702
    (上式中、bは2以上の整数であり、Rはbに等しい原子価を有する有機基であり、Zはメチル、エチル、C 3-6 2級アルキル、C 4-6 3級アルキル、フェニル又はベンジルであり、Yは式−CR 1 2 3 で表されるものであり、ここでa)R 1 及びR 2 は水素であり、R 3 はC 1-4 アルコキシもしくはフェノキシであり、又はb)R 1 は水素であり、R 2 はメチル、エチルもしくはフェニルであり、R 3 はメトキシもしくはエトキシである)で表されるポリカルバメート。
  2. bが2である、請求項1記載のポリカルバメート。
  3. Rがトリレン、ジシクロヘキシルメタンもしくはジフェニルメタンラジカルである、請求項2記載のポリカルバメート。
  4. 1が水素であり、R2がメチル、エチルもしくはフェニルであり、R3がメトキシもしくはエトキシであり、そしてZがメチルもしくはエチルである、請求項記載のポリカルバメート。
  5. 減圧下、150〜270℃の温度において、下式
    Figure 0003833702
    (上式中、bは2以上の整数であり、Rはbに等しい原子価を有する有機基であり、Zはメチル、エチル、C 3-6 2級アルキル、C 4-6 3級アルキル、フェニル又はベンジルであり、Yは式−CR 1 2 3 で表されるものであり、ここでa)R 1 及びR 2 は水素であり、R 3 はC 1-4 アルコキシもしくはフェノキシであり、又はb)R 1 は水素であり、R 2 はメチル、エチルもしくはフェニルであり、R 3 はメトキシもしくはエトキシである
    で表されるポリカルバメートを熱分解し、対応するポリイソシアネート及びアルコールを形成することを含む、ポリイソシアネートの製造方法。
  6. 実質的に溶媒を用いずに行う、請求項記載の方法。
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