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JP3826281B2 - コバルト化合物内包炭素複合体およびその製造方法 - Google Patents

コバルト化合物内包炭素複合体およびその製造方法 Download PDF

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JP3826281B2
JP3826281B2 JP2002089215A JP2002089215A JP3826281B2 JP 3826281 B2 JP3826281 B2 JP 3826281B2 JP 2002089215 A JP2002089215 A JP 2002089215A JP 2002089215 A JP2002089215 A JP 2002089215A JP 3826281 B2 JP3826281 B2 JP 3826281B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コバルト又はコバルト合金等のコバルト系化合物を内包するコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体、該コバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を含む炭素質材料およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
カーボンナノチューブは、黒鉛シート(即ち、黒鉛構造の炭素原子面ないしグラフェンシート)がチューブ状に閉じた中空炭素物質であり、その直径はナノメートルスケールであり、壁構造は黒鉛構造を有している。かかるカーボンナノチューブは、1991年に飯島澄男氏により発見された。カーボンナノチューブのうち、壁構造が一枚の黒鉛シートでチューブ状に閉じたものは単層カーボンナノチューブと呼ばれ、複数枚の黒鉛シートがそれぞれチューブ状に閉じて、入れ子状になっているものは入れ子構造の多層カーボンナノチューブと呼ばれている。
【0003】
また、通常の入れ子構造の多層カーボンナノチューブと類似しているが、炭素からなる壁面の構造が異なるものとして、黒鉛壁構造がスクロール状になったものも報告されている。
【0004】
近年、導電体、電子放出体等の電気的特性や磁気特性の向上を目指して、これらカーボンナノチューブ(以下「CNTs」ということがある)等のチューブ壁で囲まれた中空部に金属を内包させる試みがなされている。
【0005】
例えば、特許第2546114号においては、入れ子構造の多層カーボンナノチューブの中心にある中空の穴に金属等の炭素以外の物質を内包させた異物質内包カーボンナノチューブが記載されている。該異物質内包カーボンナノチューブは、入れ子構造の多層カーボンナノチューブのキャップ状に閉じた先端を一旦キャップ除去すると同時に又は除去した後に、炭素以外の物質をカーボンナノチューブの先端に蒸着し、熱拡散によりカーボンナノチューブの先端からチューブの中心にある中空の穴に導入することにより製造される。
【0006】
また、特開平9−142819号には、直径10nm〜1μm、長さ1〜100μmのカーボンチューブ内に異物質を内包したカーボンチューブが記載されている。この異物質内包カーボンチューブは、略直線状の細孔を有する無機物質を型枠として用い、その細孔内壁に被覆させた有機物質を加熱により炭化することにより、又は、該細孔中に気体状の炭化水素を気相炭化させて炭素薄膜を滞積させることにより、カーボンチューブを一旦製造した後、該チューブに、異物質を溶液状態又は溶融状態で接触させて、カーボンチューブの中空部分へ異物質を挿入する(無機物質は、挿入前又は後に溶解除去する)ことにより製造される。
【0007】
更に、特開2000−204471には、直径が1〜100nmであり、直径と長軸長との比が50以上である細線素材からなる金属細線、特にカーボン製のチューブにより覆われている金属細線が記載されている。このカーボン製チューブで被覆された金属細線の製造法は、上記特開平9−142819号に記載の製造法と同様であり、略直線状の細孔を有する無機物質の細孔内壁に筒状のカーボンを形成する第1工程、該筒状カーボンの内部に金属を析出させる第2工程からなる製造法により製造される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の方法は、一旦カーボンチューブを形成し、次いで異物質を挿入するという2工程が少なくとも必要であり、各工程の管理、制御等の点で煩雑であり生産性も低い。更に、上記特開平9−142819号及び特開2000−204471に記載の製造方法では、型枠として使用した無機物質を溶解除去する工程が必要である。
【0009】
また、従来カーボンチューブ内にカーボンナノチューブ等のチューブ状炭素材料の炭素からなる壁部で囲まれた空間部にコバルト等の金属等が封入された複合体を、mgスケール以上で得る方法は開発されていない。そのために、チューブ状炭素材料の中空部にコバルト等の金属等を内包した炭素−金属複合体についての具体的な実用化研究はなされていないのが現状である。
【0010】
本発明は、カーボンのチューブで囲まれた空間部のかなりの部分にコバルト等の金属等が封入された複合体、かかる複合体を含む炭素質材料、及びその製造法を提供することを主な目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の様な従来技術の現状に鑑みて研究を進めた結果、次の事項を発見した。
【0012】
▲1▼(1)不活性ガス雰囲気中、圧力を10-5Pa〜200kPaに調整し、反応炉内の酸素濃度を、反応炉容積をA(リットル)とし酸素量をB(Ncc)とした場合の比B/Aが1×10-10〜1×10-1となる濃度に調整して、反応炉内で、ハロゲン化コバルトを、又は、(a)ハロゲン化コバルトと(b)他の金属等のハロゲン化物とを、600〜1100℃まで加熱し、(2)上記反応炉内を不活性ガス雰囲気とし、圧力を10-5Pa〜200kPaに調整し、熱分解性炭素源を導入して600〜1100℃で加熱処理を行うことにより、炭素からなるチューブとそのチューブ内空間部に内包されたコバルト又はコバルト合金からなるコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を含む炭素材料が、一挙に製造できる。
【0013】
▲2▼上記工程(2)の後の冷却工程において、冷却速度を特定の範囲に制御することにより、得られる炭素からなるチューブは、フレーク状の黒鉛シートが複数枚(通常は多数)パッチワーク状ないし張り子状に集合して構成されていると思われる、黒鉛シートの集合体からなる炭素製チューブとなる。本明細書において、この炭素製チューブを「ナノフレークカーボンチューブ」という。このナノフレークカーボンチューブは、一枚の黒鉛シートが円筒状に閉じた単層カーボンナノチューブや複数枚の黒鉛シートがそれぞれ円筒状に閉じて同心円筒状ないし入れ子状となっている多層カーボンナノチューブとは全く構造の異なるチューブ状炭素材である。
【0014】
▲3▼該ナノフレークカーボンチューブのチューブ内空間部(即ち、ナノフレークカーボンチューブのチューブ壁で囲まれた空間)は、該空間部のかなりの部分、特に該空間部の10〜90%がコバルト又はコバルト合金で充填されており、コバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を形成している。
【0015】
▲4▼更に、上記工程(2)の後工程として、不活性気体中で加熱処理を行い、特定の冷却速度で冷却することにより、得られる炭素からなるチューブは、入れ子構造の多層カーボンナノチューブとなる。該多層カーボンナノチューブのチューブ内空間部は、該空間部のかなりの部分、特に該空間部の10〜90%がコバルト又はコバルト合金で充填されており、コバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を形成している。
【0016】
本発明は、これらの知見に基づき更に検討を重ねて完成されたものであり、次のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体及びその製造方法を提供するものである。
【0017】
項1 (a) ナノフレークカーボンチューブ及び入れ子構造の多層カーボンナノチューブからなる群から選ばれるカーボンチューブと(b)コバルト又はコバルト合金とからなるコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体であって、カーボンチューブ内空間部の10〜90%にコバルト又はコバルト合金が充填されていることを特徴とするコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体。
【0018】
項2 直線状であり、外径が1〜100nmであり、炭素からなる壁部の厚さが49nm以下であって全長に亘って実質的に均一であり、長さをLとし外径をDとした場合のアスペクト比L/Dが5〜10000である上記項1に記載のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体。
【0019】
項3 コバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を構成するカーボンチューブの壁部をX線回折法により測定した場合に、炭素網面間の平均距離(d002)が、0.34nm以下である上記項1又は2に記載のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体。
【0020】
項4 コバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を構成するカーボンチューブが、ナノフレークカーボンチューブである上記項1〜3のいずれかに記載のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体。
【0021】
項5 コバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を構成するカーボンチューブが、入れ子構造の多層カーボンナノチューブである上記項1〜3のいずれかに記載のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体。
【0022】
項6 コバルト合金が、コバルトを55重量%以上含有し、炭素、Co、Fe、Cu、Mn、Cr、Pb、Zn、Mo、Al、Ti、Nb、Ta、S及びSiからなる群から選ばれる少なくとも1種を更に含有する合金である上記項1〜5のいずれかに記載のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体。
【0023】
項7 (a) ナノフレークカーボンチューブ及び入れ子構造の多層カーボンナノチューブからなる群から選ばれるカーボンチューブと(b)コバルト又はコバルト合金とからなり、カーボンチューブ内空間部の10〜90%にコバルト又はコバルト合金が充填されているコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を含む炭素質材料。
【0024】
項8 炭素質材料1mgに対して25mm2以上の照射面積でCuKαのX線を照射する粉末X線回折測定において、カーボンチューブに内包されているコバルトまたはコバルト合金に帰属される40°<2θ<50°のピークの中で最も強い積分強度を示すピークの積分強度をIaとし、カーボンチューブの炭素網面間の平均距離(d002)に帰属される26°<2θ<27°のピークの積分強度をIbとした場合に、Ia/Ibの比Rが、0.3〜4.4である上記項7に記載の炭素質材料。
【0025】
項9 コバルト又はコバルト合金内包炭素複合体が、直線状であり、外径が1〜100nmであり、炭素からなる壁部の厚さが49nm以下であって全長に亘って実質的に均一であり、長さをLとし外径をDとした場合のアスペクト比L/Dが5〜10000である上記項7又は8に記載の炭素質材料。
【0026】
項10 コバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を構成するカーボンチューブの壁部をX線回折法により測定した場合に、炭素網面間の平均距離(d002)が、0.34nm以下である上記項7〜9のいずれかに記載の炭素質材料。
【0027】
項11 コバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を構成するカーボンチューブが、ナノフレークカーボンチューブである上記項7〜10のいずれかに記載の炭素質材料。
【0028】
項12 コバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を構成するカーボンチューブが、入れ子構造の多層カーボンナノチューブである上記項7〜10のいずれかに記載の炭素質材料。
【0029】
項13 コバルト合金が、コバルトを55重量%以上含有し、炭素、Co、Fe、Cu、Mn、Cr、Pb、Zn、Mo、Al、Ti、Nb、Ta、S及びSiからなる群から選ばれる少なくとも1種を更に含有する合金である上記項7〜13のいずれかに記載のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体。
【0030】
項14 (a) ナノフレークカーボンチューブ及び入れ子構造の多層カーボンナノチューブからなる群から選ばれるカーボンチューブと(b)コバルト又はコバルト合金とからなり、カーボンチューブ内空間部の10〜90%にコバルト又はコバルト合金が充填されているコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を含む炭素質材料の製造方法であって、
(1)不活性ガス雰囲気中、圧力を10-5Pa〜200kPaに調整し、反応炉内の酸素濃度を、反応炉容積をA(リットル)とし酸素量をB(Ncc)とした場合の比B/Aが1×10-10〜1×10-1となる濃度に調整して、反応炉内でハロゲン化コバルトを600〜1100℃まで加熱するか、又は、(a)ハロゲン化コバルトと(b)ハロゲン化鉄、ハロゲン化ニッケル、ハロゲン化銅、ハロゲン化マンガン、ハロゲン化クロム、ハロゲン化鉛、ハロゲン化亜鉛、ハロゲン化モリブデン、ハロゲン化アルミニウム、ハロゲン化チタン、ハロゲン化ニオブ、ハロゲン化タンタル、ハロゲン化硫黄及びハロゲン化珪素からなる群から選ばれる少なくとも1種とを600〜1100℃まで加熱する工程、及び
(2)上記反応炉内を不活性ガス雰囲気として圧力を10-5Pa〜200kPaに調整し、熱分解性炭素源を導入して600〜1100℃で加熱処理を行う工程を包含することを特徴とする製造方法。
【0031】
項15 工程(2)の加熱処理工程後、50〜2000℃/hで500℃まで冷却することによりナノフレークカーボンチューブとそのチューブ内空間部の10〜90%に充填されているコバルト又はコバルト合金からなるコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を含む炭素質材料を生成させる上記項14に記載の製造方法。
【0032】
項16 工程(2)の加熱処理工程後、
(3)反応炉内を工程(2)の温度を維持したまま不活性気体で置換する工程、
(4)不活性気体で置換された反応炉内を1100〜1450℃に昇温する工程、
(5)昇温終点で終点温度を入れ子構造の多層カーボンナノチューブが生成するまで維持する工程、及び
(6)反応炉内を50℃/h以下の速度で冷却する工程
を行うことにより入れ子構造の多層カーボンナノチューブとそのチューブ内空間部の10〜90%に充填されているコバルト又はコバルト合金からなるコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を含む炭素質材料を生成させる上記項14に記載の製造方法。
【0033】
項17 工程(2)の加熱処理を有機コバルト錯体の存在下に行う上記項14に記載の製造方法。
【0034】
項18 有機コバルト錯体が、ジシクロペンタジエニルコバルト又はコバルトカルボニル錯体である上記項17に記載の製造方法。
【0035】
項19 ハロゲン化コバルトが、コバルトの塩化物である上記項14〜18のいずれかに記載の製造方法。
【0036】
項20 コバルトの塩化物が、CoCl2、CoCl2・H2O、CoCl2・1.5H2O、CoCl2・2H2O、CoCl2・4H2O、CoCl2・6H2O及びCoCl3からなる群から選ばれる少なくとも1種である上記項19に記載の製造方法。
【0037】
項21 熱分解性炭素源が、炭素数6〜12の芳香族炭化水素、炭素数1〜10の飽和脂肪族炭化水素及び炭素数2〜5の不飽和脂肪族炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種である上記項14〜20のいずれかに記載の製造方法。
【0038】
【発明の実施の形態】
本発明のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体
本発明によるコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体は、(a) ナノフレークカーボンチューブ及び入れ子構造の多層カーボンナノチューブからなる群から選ばれるカーボンチューブと(b)コバルト又はコバルト合金とからなるものであって、該カーボンチューブ内空間部(即ち、チューブ壁で囲まれた空間)の実質上全てが充填されているのではなく、該空間部の一部、より具体的には10〜90%程度、特に30〜80%程度、好ましくは40〜70%程度がコバルト又はコバルト合金により充填されている。
【0039】
本発明のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体においては、炭素部分は、製造工程(1)及び(2)を行った後、特定の速度で冷却するとナノフレークカーボンチューブとなり、製造工程(1)及び(2)を行った後、不活性気体中で加熱処理を行い、特定の冷却速度で冷却することにより、入れ子構造の多層カーボンナノチューブとなる。
【0040】
<(a-1) ナノフレークカーボンチューブ>
本発明のナノフレークカーボンチューブとコバルト又はコバルト合金からなるコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体は、典型的には円柱状である。図3の(a-1)にそのような円柱状のナノフレークカーボンチューブのTEM像の模式図を示す。図3の(a-1)において、100は、ナノフレークカーボンチューブの長手方向のTEM像を模式的に示しており、200は、ナノフレークカーボンチューブの長手方向にほぼ垂直な断面のTEM像を模式的に示している。
【0041】
本発明のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を構成しているナノフレークカーボンチューブは、図3の(a-1)の200から明らかなように、その長手方向を横切る断面をTEM観察した場合、多数の弧状グラフェンシート像が多層構造のチューブ状に集合しているが、個々のグラフェンシート像は、例えば210、214に示すように、完全に閉じた連続的な環を形成しておらず、途中で途切れた不連続な環を形成している。一部のグラフェンシート像は、211に示すように、分岐している場合もある。不連続点においては、一つの不連続環を構成する複数の弧状TEM像は、図3の(a-1)の222に示すように、層構造が部分的に乱れている場合もあれば、223に示すように隣接するグラフェンシート像との間に間隔が存在している場合もあるが、TEMで観察される多数の弧状グラフェンシート像は、全体として、多層状のチューブ構造を形成している。
【0042】
また、図3の(a-1)の100から明らかなように、ナノフレークカーボンチューブの長手方向をTEMで観察した場合、多数の略直線状のグラフェンシート像が本発明のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体の長手方向にほぼ並行に多層状に配列しているが、個々のグラフェンシート像110は、コバルト又はコバルト合金内包炭素複合体の長手方向全長にわたって連続しておらず、途中で不連続となっている。一部のグラフェンシート像は、図3の(a-1)の111に示すように、分岐している場合もある。また、不連続点においては、層状に配列したTEM像のうち、一つの不連続層のTEM像は、図3の(a-1)の112に示すように、隣接するグラフェンシート像と少なくとも部分的に重なり合っている場合もあれば、113に示すように隣接するグラフェンシート像と少し離れている場合もあるが、多数の略直線状のTEM像が、全体として多層構造を形成している。
【0043】
かかる本発明のナノフレークカーボンチューブの構造は、従来の多層カーボンナノチューブと大きく異なっている。即ち、図3の(a-2)の400に示すように、入れ子構造の多層カーボンナノチューブは、その長手方向に垂直な断面のTEM像が、410に示すように、完全な円形のTEM像となっている同心円状のチューブであり、且つ、図3の(a-2)の300に示すように、その長手方向の全長にわたって連続する直線状グラフェンシート像310等が平行に配列している構造(同心円筒状ないし入れ子状の構造)である。
【0044】
以上より、詳細は未だ完全には解明されていないが、本発明のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を構成するナノフレークカーボンチューブは、フレーク状のグラフェンシートが多数パッチワーク状ないし張り子状に重なり合って全体としてチューブを形成しているようにみえる。
【0045】
このような本発明のナノフレークカーボンチューブとそのチューブ内空間部に内包されたコバルト又はコバルト合金からなるコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体は、特許第2546114号に記載されているような入れ子構造の多層カーボンナノチューブのチューブ内空間部に金属が内包された複合体に比し、カーボンチューブの構造において大きく異なっており、従来知られていなかった新規な炭素材料である。
【0046】
本発明のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を構成しているナノフレークカーボンチューブをTEM観察した場合において、その長手方向に配向している多数の略直線状のグラフェンシート像に関し、個々のグラフェンシート像の長さは、通常、2〜500nm程度、特に10〜100nm程度である。即ち、図3の(a-1)の100に示されるように、110で示される略直線状のグラフェンシートのTEM像が多数集まってナノフレークカーボンチューブの壁部のTEM像を構成しており、個々の略直線状のグラフェンシート像の長さは、通常、2〜500nm程度、特に10〜100nm程度である。
【0047】
本発明のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を構成するナノフレークカーボンチューブの壁部の炭素部分は、上記のようにフレーク状のグラフェンシートが多数長手方向に配向して全体としてチューブ状となっているが、X線回折法により測定した場合に、炭素網面間の平均距離(d002)が0.34nm以下の黒鉛質構造を有するものである。
【0048】
また、本発明のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体のナノフレークカーボンチューブからなる壁部の厚さは、49nm以下、特に0.1〜20nm程度、好ましくは1〜10nm程度であって、全長に亘って実質的に均一である。
【0049】
<(a-2) 入れ子構造の多層カーボンナノチューブ>
前記のように、工程(1)及び(2)を行った後、特定の加熱工程を行うことにより、得られるコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を構成するカーボンチューブは、入れ子構造の多層カーボンナノチューブとなる。
【0050】
こうして得られる入れ子構造の多層カーボンナノチューブは、図3の(a-2)の400に示すように、その長手方向に垂直な断面のTEM像が完全な円を構成する同心円状のチューブであり、且つ、その長手方向の全長にわたって連続したグラフェンシート像が平行に配列している構造(同心円筒状ないし入れ子状の構造)である。
【0051】
本発明のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を構成する入れ子構造の多層カーボンナノチューブの壁部の炭素部分は、X線回折法により測定した場合に、炭素網面間の平均距離(d002)が0.34nm以下の黒鉛質構造を有するものである。
【0052】
また、本発明のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体の入れ子構造の多層カーボンナノチューブからなる壁部の厚さは、49nm以下、特に0.1〜20nm程度、好ましくは1〜10nm程度であって、全長に亘って実質的に均一である。
【0053】
<(b)内包されているコバルト又はコバルト合金>
本明細書において、上記カーボンチューブ内空間部のコバルト又はコバルト合金による充填率(10〜90%)は、本発明により得られたコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を透過型電子顕微鏡で観察し、各カーボンチューブの空間部(即ち、カーボンチューブのチューブ壁で囲まれた空間)の像の面積に対する、コバルト又はコバルト合金が充填されている部分の像の面積の割合である。
【0054】
コバルト又はコバルト合金の充填形態は、カーボンチューブ内空間部に連続的に充填されている形態、カーボンチューブ内空間部に断続的に充填されている形態等があるが、基本的には断続的に充填されている。従って、本発明のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体は、金属内包炭素複合体ないしコバルト化合物内包炭素複合体、コバルト又はコバルト合金内包炭素複合体とも言うべきものである。
【0055】
本発明のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体において、カーボンチューブに内包されているコバルト合金としては、各種のコバルト基合金が例示できるが、例えば、コバルトを55重量%以上(好ましくは55〜95重量%)、特に65重量%以上(好ましくは65〜95重量%)含有し、残部が炭素、Ni、Fe、Cu、Mn、Cr、Pb、Zn、Mo、Al、Ti、Nb、Ta、S及びSiからなる群から選ばれる少なくとも1種である合金が好ましい。
【0056】
これらコバルト合金の中でも、特に、コバルトを55重量%以上(好ましくは55〜95重量%)、特に65重量%以上(好ましくは65〜95重量%)含有する鉄−コバルト、鉄−コバルト−ニッケル、コバルト−ニッケル、銅−コバルト、コバルト−クロム等、並びにこれらの炭素含有合金が好ましい。
【0057】
尚、炭素、硫黄及び珪素は金属ではないが、本明細書では、「合金」なる用語は、炭素、硫黄及び珪素からなる群から選ばれる少なくとも1種が、コバルトに、又は、コバルトとコバルト以外の金属(Ni、Fe、Cu、Mn、Cr、Pb、Zn、Mo、Al、Ti、Nb、Ta)との合金に含有されている材料も包含するものとする。
【0058】
また、本発明のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体に内包されているコバルト又はコバルト合金は、カーボンチューブの長手方向に配向しており、結晶性が高く、コバルト又はコバルト合金が充填されている範囲のTEM像の面積に対する、結晶性コバルト又はコバルト合金のTEM像の面積の割合(以下「結晶化率」という)は、一般に、90〜100%程度、特に95〜100%程度である。
【0059】
内包されているコバルト又はコバルト合金の結晶性が高いことは、本発明コバルト又はコバルト合金内包炭素複合体の側面からのTEM観察した場合、内包物のTEM像が格子状に配列していることから明らかであり、電子線回折からも明確な回折パターンが得られることからも明らかである。
【0060】
また、本発明のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体にコバルト又はコバルト合金が内包されていることは、電子顕微鏡、EDX(エネルギー分散型X線検出器)により容易に確認することができる。
【0061】
<コバルト又はコバルト合金内包炭素複合体の全体形状>
本発明のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体は、湾曲が少なく、直線状であり、壁部の厚さが全長に亘ってほぼ一定の均一厚さを有しているので、全長に亘って均質な形状を有している。その形状は、柱状で、主に円柱状である。
【0062】
本発明によるコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体の外径は、通常、1〜100nm程度、特に1〜50nm程度の範囲にあり、好ましくは1〜30nm程度の範囲にあり、より好ましくは10〜30nm程度の範囲にある。チューブの長さ(L)の外径(D)に対するアスペクト比(L/D)は、5〜10000程度であり、特に10〜1000程度である。
【0063】
本発明のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体の形状を表す一つの用語である「直線状」なる語句は、次のように定義される。即ち、透過型電子顕微鏡により本発明のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を含む炭素質材料を200〜2000nm四方の範囲で観察し、像の長さをWとし、該像を直線状に伸ばした時の長さをWoとした場合に、比W/Woが、0.8以上、特に、0.9以上となる形状特性を意味するものとする。
【0064】
コバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を含む炭素質材料
本発明のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体は、バルク材料としてみた場合、次の性質を有する。即ち、本発明では、上記のようなナノフレークカーボンチューブ及び入れ子構造の多層カーボンナノチューブから選ばれるカーボンチューブのチューブ内空間部の10〜90%の範囲にコバルトまたはコバルト合金が充填されているコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体は、顕微鏡観察によりかろうじて観察できる程度の微量ではなく、多数の該コバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を含むバルク材料であって、コバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を含む炭素質材料、或いは、コバルト又はコバルト合金内包炭素質材料ともいうべき材料の形態で大量に得られる。
【0065】
本発明のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を含む炭素質材料においては、基本的にはほとんど全ての(特に99%又はそれ以上の)カーボンチューブにおいて、その空間部(即ち、カーボンチューブのチューブ壁で囲まれた空間)の10〜90%の範囲にコバルト又はコバルト合金が充填されており、空間部が充填されていないカーボンチューブは実質上存在しないのが通常である。但し、場合によっては、コバルト又はコバルト合金が充填されていないカーボンチューブも微量混在することがある。
【0066】
また、本発明の炭素質材料においては、上記のようなカーボンチューブ内空間部の10〜90%にコバルト又はコバルト合金が充填されているコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体が主要構成成分であるが、本発明のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体以外に、スス等が含まれている場合がある。そのような場合は、本発明のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体以外の成分を除去して、本発明の炭素質材料中のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体の純度を向上させ、実質上本発明のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体のみからなる炭素質材料を得ることもできる。
【0067】
また、従来の顕微鏡観察で微量確認し得るに過ぎなかった材料とは異なり、本発明のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を含む炭素質材料は大量に合成できるので、その重量を容易に1mg以上とすることができる。後述する本発明製法をスケールアップするか又は何度も繰り返すことにより本発明の該材料は無限に製造できるので、上限は実質的に存在しない。一般には、本発明のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を含む炭素質材料は、反応炉容積1リットル程度の実験室レベルであっても、1mg〜100g程度、特に10〜1000mg程度の量であれば容易に提供できる。
【0068】
発明炭素質材料は、該炭素質材料1mgに対して25mm2以上の照射面積で、CuKαのX線を照射した粉末X線回折測定において、内包されているコバルトまたはコバルト合金に帰属される40°<2θ<50°のピークの中で最も強い積分強度を示すピークの積分強度をIaとし、カーボンチューブの炭素網面間の平均距離(d002)に帰属される26°<2θ<27°のピークの積分強度Ibとした場合に、IaのIbに対する比R(=Ia/Ib)が、0.3〜4.4程度、特に0.4〜3.5程度であるのが好ましく、より好ましくは1.1〜3.2程度である。
【0069】
本明細書において、上記Ia/Ibの比をR値と呼ぶ。このR値は、本発明のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を含む炭素質材料を、X線回折法において25mm2以上のX線照射面積で観察した場合に、炭素質材料全体の平均値としてピーク強度が観察されるために、TEM分析で測定できる1本のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体における内包率ないし充填率ではなく、コバルト又はコバルト合金内包炭素複合体の集合物である炭素質材料全体としての、コバルト又はコバルト合金充填率ないし内包率の平均値を示すものである。
【0070】
尚、多数の本発明コバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を含む炭素質材料全体としての平均充填率は、TEMで複数の視野を観察し、各視野で観察される複数のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体におけるコバルト又はコバルト合金の平均充填率を測定し、更に複数の視野の平均充填率の平均値を算出することによっても求めることができる。かかる方法で測定した場合、本発明のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体からなる炭素質材料全体としてのコバルト又はコバルト合金の平均充填率は、10〜90%程度、特に40〜70%程度である。
【0071】
本発明のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体及びそれを含む炭素質材料の製造方法(第一製法)
本発明のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を含む炭素質材料は、
(1)不活性ガス雰囲気中、圧力を10-5Pa〜200kPaに調整し、反応炉内の酸素濃度を、反応炉容積をA(リットル)とし酸素量をB(Ncc)とした場合の比B/Aが1×10-10〜1×10-1となる濃度に調整して、反応炉内でハロゲン化コバルトを600〜1100℃まで加熱するか、又は、(a)ハロゲン化コバルトと(b) ハロゲン化鉄、ハロゲン化ニッケル、ハロゲン化銅、ハロゲン化マンガン、ハロゲン化クロム、ハロゲン化鉛、ハロゲン化亜鉛、ハロゲン化モリブデン、ハロゲン化アルミニウム、ハロゲン化チタン、ハロゲン化ニオブ、ハロゲン化タンタル、ハロゲン化硫黄及びハロゲン化珪素からなる群から選ばれる少なくとも1種とを600〜1100℃まで加熱する工程、及び
(2)上記反応炉内を不活性ガス雰囲気とし、圧力を10-5Pa〜200kPaに調整し、熱分解性炭素源を導入して600〜1100℃で加熱処理を行う工程を包含する製造方法により得られる。
【0072】
ここで、酸素量Bの単位である「Ncc」は、気体の25℃での標準状態に換算したときの体積(cc)という意味である。
【0073】
内包されるコバルト又はコバルト合金の供給源であり、かつ触媒としての機能をも発揮するハロゲン化コバルトとしては、弗化コバルト、塩化コバルト、臭化コバルト等が例示できるが、これらのうちでも塩化コバルトが好ましい。塩化コバルトとしては、例えば、CoCl2、CoCl2・H2O、CoCl2・1.5H2O、CoCl2・2H2O、CoCl2・4H2O、CoCl2・6H2O、CoCl3等が例示され、これらの少なくとも1種が使用される。これら触媒の形状は特に限定されないが、通常は、粉末状、例えば平均粒子径が1〜100μm程度、特に1〜20μm程度の粉末状で使用するかあるいは気体状で使用するのが好ましい。
【0074】
また、内包物がコバルト合金である複合体を得る場合は、反応炉内に、上記ハロゲン化コバルトと共に、前記ハロゲン化鉄、ハロゲン化ニッケル、ハロゲン化銅、ハロゲン化マンガン、ハロゲン化クロム、ハロゲン化鉛、ハロゲン化亜鉛、ハロゲン化モリブデン、ハロゲン化アルミニウム、ハロゲン化チタン、ハロゲン化ニオブ、ハロゲン化タンタル、ハロゲン化硫黄及びハロゲン化珪素からなる群から選ばれる少なくとも1種(以下、該少なくとも1種を「共触媒」という)を存在させればよい。
【0075】
この場合も、ハロゲン化コバルト及び共触媒は、平均粒子径が1〜100μm程度、特に1〜20μm程度の粉末状で使用するのが好ましい。両者の使用割合は、広い範囲から適宜選択すればよいが、一般にはコバルトが主成分となるような割合とする。例えば、ハロゲン化コバルトは、ハロゲン化コバルトと前記共触媒との合計量の55〜95重量%程度、特に65〜95重量%程度の量で使用する。
【0076】
ハロゲン化コバルトと共触媒とを反応炉内に存在させる方法としては、a)両者を反応炉の内の別々の箇所に置く方法、b)両者を予め乾式混合し、得られる混合物を反応炉内に存在させる方法、c)両者を有機溶媒(例えば、メタノール等の低級アルコール等)に均一に溶解又は分散させた後、該有機溶媒を留去して得られる残渣を粉砕して得られる粉体を反応炉内に存在させる方法等が例示できる。
【0077】
熱分解性炭素源としては、種々の有機化合物が使用でき、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭素数6〜12の芳香族炭化水素、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ヘキサン等の炭素数1〜10の飽和脂肪族炭化水素、エチレン、プロピレン、アセチレン等の炭素数2〜5の不飽和脂肪族炭化水素などの有機化合物が挙げられる。液状の有機化合物は、通常、気化させて用いる。これらの中でも、ベンゼン、トルエンなどが好ましい。
【0078】
本発明で使用する反応装置としては、例えば、図1に示すような装置を例示できる。図1の装置においては、反応炉1は石英管、アルミナ管、カーボン管等からなる反応炉であり、加熱装置2を備えている。反応炉にはガス導入口(図示せず)と真空に吸引するためのガス吸引口(図示せず)が備えられている。ハロゲン化コバルトは、例えば、磁製ボート、コバルトボート等のハロゲン化コバルト仕込み皿10に薄く広げて敷き詰める等して、反応炉内に配置する。
【0079】
工程 (1)
本発明の製造方法においては、まず、反応炉内において、上記触媒且つ原料であるハロゲン化コバルトを、又は、(a)ハロゲン化コバルトと(b)共触媒(即ち、ハロゲン化鉄、ハロゲン化コバルト、ハロゲン化銅、ハロゲン化マンガン、ハロゲン化クロム、ハロゲン化鉛、ハロゲン化亜鉛、ハロゲン化モリブデン、ハロゲン化アルミニウム、ハロゲン化チタン、ハロゲン化ニオブ、ハロゲン化タンタル、ハロゲン化硫黄及びハロゲン化珪素からなる群から選ばれる少なくとも1種)とを、不活性ガス雰囲気中で、600〜1100℃まで、特に800〜1100℃程度まで加熱する。
【0080】
不活性ガスとしては、He、Ar、Ne、N2等のガスを例示できる。不活性ガス雰囲気中で触媒の加熱処理を行う際の反応炉内の圧力は、例えば、10-5Pa〜200kPa程度、特に0.1kPa〜100kPa程度とするのが好ましい。
【0081】
加熱処理は、反応炉内の温度、特に触媒の温度が、工程(2)で使用する熱分解性炭素源の熱分解温度に達するまで行う。熱分解性炭素源の熱分解温度は、熱分解性炭素源の種類によっても異なるが、一般には、反応炉内の触媒の温度を600〜1100℃程度、特に800〜1100℃程度とするのが好ましい。
【0082】
本発明者の研究によると、工程(1)の加熱時に、少量の酸素が存在するのが好ましい。大量の酸素を存在させると、ハロゲン化コバルト又は共触媒が酸化コバルト等の酸化物になってしまい、所望の複合体を得難い。従って、反応炉内の酸素濃度としては、反応炉容積をA(リットル)とし酸素量をB(Ncc)とした場合の比B/Aが1×10-10〜1×10-1、特に1×10-8〜5×10-3となる濃度とするのが好ましい。
【0083】
この場合、酸素の導入方法としては、種々の方法を採用できるが、例えば、反応炉のガス導入口から、酸素5〜0.01%程度を含有するアルゴン等の不活性ガスからなる混合ガスを徐々に添加するのが好ましい。
【0084】
工程 (2)
次いで、本発明では、工程(2)として、工程(1)の加熱処理により600〜1100℃に加熱されているハロゲン化コバルト、又は(a)ハロゲン化コバルトと(b)共触媒とを含む反応炉内を、不活性ガス雰囲気とし、ガス導入口から熱分解性炭素源を導入して加熱処理を行う。
【0085】
この工程(2)の加熱処理を行う際の圧力としては、10-5Pa〜200kPa程度、特に1kPa〜100kPa程度とするのが好ましい。また、工程(2)の加熱処理時の温度は、通常600℃以上であり、特に600〜1100℃、好ましくは750〜1100℃程度である。
【0086】
熱分解性炭素源の導入方法としては、例えば、ベンゼン等の熱分解性炭素源にアルゴンガス等の不活性ガスをバブリングさせることにより、ベンゼン等の熱分解性炭素源を担持させた不活性ガスを調整し、該ガスを反応炉のガス導入口から少量ずつ導入すればよいが、この方法に限らず、他の方法を採用してもよい。ベンゼン等の該熱分解性炭素源を担持させた不活性ガスの供給速度は、広い範囲から選択できるが、一般には、反応炉容積1リットル当たり、0.1〜1000ml/min程度、特に1〜100ml/min程度となるような速度とするのが好ましい。その際に、必要であれば、Ar、Ne、He、窒素等の不活性ガスを希釈ガスとして導入してもよい。
【0087】
ハロゲン化コバルト、又は(a)ハロゲン化コバルトと(b)共触媒と、熱分解性炭素源との量的割合は、広い範囲から適宜選択すればよいが、ハロゲン化コバルト100重量部、又は(a)ハロゲン化コバルトと(b)共触媒との合計100重量部に対して、熱分解性炭素源を10〜5000重量部程度、特に50〜300重量部程度とするのが好ましい。熱分解性炭素源である有機化合物の量的割合が増大する場合には、カーボンチューブの成長が十分に行われて、長寸法のカーボンチューブが得られる。
【0088】
工程(2)の反応時間は、原料の種類、量などにより異なるので、特に限定されないが、通常0.1〜10時間程度、特に0.5〜2時間程度である。
【0089】
上記工程(2)の加熱処理工程後、通常50〜2000℃/h程度、好ましくは70〜1500℃/h程度、より好ましくは100〜1000℃/h程度の速度で500℃まで冷却することによりナノフレークカーボンチューブとそのチューブ内空間部の10〜90%に充填されているコバルト又はコバルト合金からなるコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を生成させることができる。
【0090】
また、工程(2)の加熱処理工程後、
(3)反応炉内を工程(2)の温度を維持したまま不活性気体で置換する工程、
(4)不活性気体で置換された反応炉内を1100〜1450℃程度、好ましくは1200〜1450℃程度、より好ましくは1300〜1400℃程度に昇温する工程、
(5)昇温終点で終点温度を入れ子構造の多層カーボンナノチューブが生成するまで維持する工程、及び
(6)反応炉を、50℃/h以下程度、好ましくは5〜40℃/h程度、より好ましくは10〜30℃/h程度の速度で冷却する工程
を行うことによりすることにより入れ子構造の多層カーボンナノチューブとそのチューブ内空間部の10〜90%に充填されているコバルト又はコバルト合金からなるコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を生成させることができる。
【0091】
上記工程(3)で使用する不活性気体としては、Ar、Ne、He、窒素等の不活性ガスが例示できる。また、工程(3)における置換後の炉内の圧力は、特に限定されないが、10-5〜107Pa程度、好ましくは50〜2×105 Pa程度、より好ましくは100〜1.2×105Pa程度である。
【0092】
工程(4)の昇温速度は特に限定されないが、一般には50〜2000℃/h程度、特に70〜1500℃/h程度、より好ましくは100〜1000℃/h程度の昇温速度とすることが好ましい。
【0093】
また、工程(5)の終点温度を維持する時間は、入れ子構造の多層カーボンナノチューブが生成するまでの時間とすればよいが、一般には2〜30時間程度である。
【0094】
工程(6)の冷却時の雰囲気としては、Ar、Ne、He、窒素等の不活性ガス雰囲気であり、圧力条件は特に限定されないが、10-5〜107Pa程度、好ましくは50〜2×105 Pa程度、より好ましくは100〜1.2×105Pa程度である。
【0095】
収量向上方法(第二製法)
また、本発明の他の実施形態によれば、上記第一製法の工程(2)において熱分解性炭素源と共に有機コバルト錯体を供給することにより、更に本発明のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体の収量を増大させることができる。本明細書では、この実施形態の製造方法を「第二製法」と呼ぶ。
【0096】
上記有機コバルト錯体としては、ジシクロペンタジエニルコバルト、Co2(CO)8、Co4(CO)12等のコバルトカルボニル錯体等を例示できるが、これらのうちでも特にジシクロペンタジエニルコバルトが好ましい。
【0097】
ジシクロペンタジエニルコバルト等の有機コバルト錯体を反応系内に存在せしめる方法は、種々の方法で行うことができる。典型的な方法としては、例えば、図2に示す方法を採用できる。
【0098】
即ち、先ず、図2に示すように、ガス導入口(図示せず)及びガス吸引口(図示せず)を備えた反応炉内において、上流側(即ち、ガス導入口に近い位置)に有機コバルト錯体を入れた磁製ボート等の仕込み皿20を配置し、下流側(ガス導入口から遠い位置)にハロゲン化コバルトを入れた磁製ボート等の仕込み皿10を配置する。ハロゲン化コバルトと共触媒とを使用する場合、ハロゲン化コバルトと共触媒とは別個の仕込み皿に入れて、反応系内に配置してもよい。
【0099】
次いで、工程(1)として、ハロゲン化コバルトを、又は、ハロゲン化コバルトと共触媒とを、不活性ガス雰囲気中、圧力を10-5Pa〜200kPaに調整し、反応炉内の酸素濃度を、反応炉容積をA(リットル)とし酸素量をB(Ncc)とした場合の比B/Aが1×10-10〜1×10-1、特に1×10-8〜5×10-3となる濃度に調整して、600〜1100℃まで、特に800〜1100℃まで加熱装置2で加熱する。
【0100】
続いて、工程(2)として、上記反応炉内を不活性ガス雰囲気とし、圧力を10-5Pa〜200kPa、好ましくは1Pa〜100kPaに制御する。一方、有機コバルト錯体を別の加熱装置3で有機コバルト錯体の昇華温度又はそれ以上の温度(ジシクロペンタジエニルコバルトの場合は200℃)に加熱して、ジシクロペンタジエニルコバルト等の有機コバルト錯体を気相状態とすると共に、熱分解性炭素源と不活性ガスとの混合ガスを反応炉に導入する。その際に、必要であれば、Ar、Ne、He、窒素等の不活性ガスを希釈ガスとして導入してもよい。この系を、加熱処理する。この加熱処理の条件は、前記第一製法の「工程(2)」について説明した条件と基本的には同一である。
【0101】
即ち、該加熱処理を行う際の圧力としては、10-5Pa〜200kPa程度、特に1kPa〜100kPa程度とするのが好ましい。また、上記加熱処理時の温度は、通常600℃以上であり、特に600〜1100℃、好ましくは750〜1100℃程度である。ベンゼン等の該熱分解性炭素源を担持させた不活性ガスの供給速度は、広い範囲から選択できるが、一般には、反応炉容積1リットル当たり、0.1〜1000ml/min程度、特に1〜100ml/min程度となるような速度とするのが好ましい。また、上記加熱処理の時間は、原料の種類、量などにより異なるので、特に限定されないが、通常0.1〜10時間程度、特に0.5〜2時間程度である。
【0102】
上記において、有機コバルト錯体、ハロゲン化コバルト(又はハロゲン化コバルトと共触媒)及び熱分解性炭素源の量的割合は、広い範囲から選択できるが、一般には、次のようにするのが好ましい。有機コバルト錯体の使用量は、ハロゲン化コバルト(又はハロゲン化コバルトと共触媒)100重量部に対して、1〜5000重量部程度、好ましくは10〜1000重量部程度とするのが好ましい。 熱分解性炭素源の使用量は、ハロゲン化コバルト(又はハロゲン化コバルトと共触媒)100重量部に対して、10〜5000重量部程度、特に50〜300重量部程度とするのが好ましい。
【0103】
この第二製法によると、得られるコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を含む炭素質材料の収量が向上する。
【0104】
前記第一製法の場合と同様に、上記工程(2)の加熱処理工程後、通常50〜2000℃/h程度、好ましくは70〜1500℃/h程度、より好ましくは100〜1000℃/h程度の速度で500℃まで冷却することによりナノフレークカーボンチューブとそのチューブ内空間部の10〜90%に充填されているコバルト又はコバルト合金からなるコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を生成させることができる。
【0105】
また、工程(2)の加熱処理工程後、
(3)反応炉内を工程(2)の温度を維持したまま不活性気体で置換する工程、
(4)不活性気体で置換された反応炉内を1100〜1450℃程度、好ましくは1200〜1450℃程度、より好ましくは1300〜1400℃程度に昇温する工程、
(5)昇温終点で終点温度を入れ子構造の多層カーボンナノチューブが生成するまで維持する工程、及び
(6)反応炉を、50℃/h以下、好ましくは5〜40℃/h程度、より好ましくは10〜30℃/h程度の速度で冷却する工程
を行うことによりすることにより入れ子構造の多層カーボンナノチューブとそのチューブ内空間部の10〜90%に充填されているコバルト又はコバルト合金からなるコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を生成させることができる。
【0106】
上記工程(3)で使用する不活性気体としては、Ar、Ne、He、窒素等の不活性ガスが例示できる。また、工程(3)における置換後の炉内の圧力は、特に限定されないが、10-5〜107Pa程度、好ましくは50〜2×105 Pa程度、より好ましくは100〜1.2×105Pa程度である。
【0107】
工程(4)の昇温速度は特に限定されないが、一般には50〜2000℃/h程度、特に70〜1500℃/h程度、より好ましくは100〜1000℃/h程度の昇温速度とすることが好ましい。
【0108】
また、工程(5)の終点温度を維持する時間は、入れ子構造の多層カーボンナノチューブが生成するまでの時間とすればよいが、一般には2〜30時間程度である。
【0109】
工程(6)の冷却時の雰囲気としては、Ar、Ne、He、窒素等の不活性ガス雰囲気であり、圧力条件は特に限定されないが、10-5〜107Pa程度、好ましくは50〜2×105 Pa程度、より好ましくは100〜1.2×105Pa程度である。
【0110】
上記第一製法又は第二製法で得られる炭素質材料から、該材料を構成するコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を単離することもできる。
【0111】
本発明の上記第一製法又は第二製法により得られるコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体は、以下の様な特異な性状を有している。
【0112】
壁部を構成するナノフレークカーボンチューブ及び入れ子構造の多層カーボンナノチューブからなる群から選ばれるカーボンチューブは、公知のCNTsに比して、直線性が高い。直線性が高いので、嵩密度が高くでき、一定容積の中に多くのカーボンチューブを詰め込むことが出来るために、高密度にパッキングが可能となる。また、電子放出用途のためには、直線性の高いことが利点となる。
【0113】
チューブ壁で囲まれた空間部の10〜90%がコバルト又はコバルト合金により充たされている。空間部内に存在するコバルト又はコバルト合金は、実施例から明らかな様に、高度に発達した結晶状態で存在する。従って、内包体が磁性を示し、表層がカーボンで覆われているため、耐久性に優れた新規な分子磁石が得られる。
【0114】
金属を内包しないカーボンナノチューブの電気的又は磁気的特性は壁の構造に大きく依存することが知られているが、特定の電気的又は磁気的特性を均一に引き出すには、その壁構造を精緻に制御する必要がある。例えば、内包物が存在していない中空の単層カーボンナノチューブでは、グラフェンシートの巻き方がアームチェア型、ジグザク型、キラル型で導電特性が異なり、導電体や半導体になることが理論的に知られている。しかし、その壁構造を精緻に制御することは、現在の合成技術では極めて困難である。
【0115】
これに対して、本発明のナノフレークカーボンチューブ及び入れ子構造の多層カーボンナノチューブからなる群から選ばれるカーボンチューブの中空部にコバルト又はコバルト合金を10〜90%内包する本発明の炭素材料は、その電気的又は磁気的特性が、炭素からなる壁構造よりも内包金属に主として起因するため、壁構造の精緻な制御を必要としない点で優れており、製造も容易である。特にナノフレークカーボンチューブの場合、黒鉛性を保持したまま、壁構造が等方性を有することになるので、電気的特性が内包金属に依存する割合が高くなり、特性の制御が容易となる。
【0116】
コバルト又はコバルト合金を内包する直線性の高い本発明のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体は、電子放出能に優れており、磁性の配向性が高く、FED(field emission display)用途に適した材料となり得る。
【0117】
また、本発明のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を導電助剤として樹脂等に配合して使用した場合でも、少量の配合量で導電性の向上が認められるため、樹脂成形体において、樹脂本来の透明性、色相等が損なわれない。
【0118】
また、本発明のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を樹脂に配合することにより、樹脂成形体の強度が増すという利点もある。
【0119】
更に、本発明のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体は、化学処理により壁部の一部を開口する場合には、内包する金属等を徐放することができる。
【0120】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明の特徴とするところをより一層詳しく説明する。
【0121】
実施例1
図1に示すような反応装置を使用し、次のようにして本発明のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を得た。
【0122】
工程 (1)
無水CoCl2(関東化学株式会社製)0.2gをニッケルボート内に薄く広げて敷き詰める。これを石英管からなる炉内中央に設置し、炉内を圧力50Paまで減圧する。このとき、真空吸引するラインを取り付けた反応炉端部とは反対側(図1の反応管の左側)から酸素5000ppm含有アルゴンガスを50ml/minの速度で供給する。これにより、反応炉容積をA(リットル)とし、酸素量をB(Ncc)とした場合の比B/Aを、6×10-3とした。次いで、反応温度1000℃まで減圧のまま昇温する。
【0123】
工程 (2)
1000℃に到達した時点で、アルゴンを導入し、圧力を6.7×104Paに制御する。一方、熱分解性炭素源として、ベンゼン槽にアルゴンガスをバブリングさせて、揮発したベンゼンとアルゴンの混合ガスを、反応炉容積1リットル当たり、60ml/minの流速で炉内に導入し、希釈ガスとして、アルゴンガスを40ml/minの流速で導入する。
【0124】
1000℃の反応温度で90分間反応させ、500℃まで20分で降温後、ヒーターを取り外して20分で室温まで空冷することにより、本発明のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を含む炭素質材料を300mg得た。
【0125】
SEM観察の結果から、得られたコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体は、外径20〜50nm、長さ3〜5ミクロンで直線性の高いものであった。また、炭素からなる壁部の厚さは、2〜10nmであり、全長に亘って実質的に均一であった。また、該壁部は、TEM観察及びX線回折法から炭素網面間の平均距離(d002)が0.34nm以下の黒鉛質構造を有するナノフレークカーボンチューブであることを確認した。また、X線回折、EDXにより、上記本発明のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体には炭化コバルトが内包されていることを確認した。
【0126】
得られた本発明の炭素質材料を構成する多数のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体(炭化コバルト内包炭素複合体)を電子顕微鏡(TEM)で観察したところ、ナノフレークカーボンチューブの空間部(即ち、ナノフレークカーボンチューブのチューブ壁で囲まれた空間)への炭化コバルトの充填率が10〜80%の範囲の種々の充填率を有するコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体が混在していた。
【0127】
ちなみに、該多数のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体のナノフレークカーボンチューブ内空間部への炭化コバルトの平均充填率は45%であった。下記表1に、得られたコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体のTEM観察像の複数の視野を観察して算出した炭化コバルトの平均充填率を示す。また、X線回折から算出されたR値は、0.58であった。
【0128】
【表1】
Figure 0003826281
【0129】
内包物について、鮮明な電子回折パターンが観測されており、内包物は高い結晶性を有していた。TEM観察の結果、内包物の結晶化率(炭化コバルトが充填されている範囲のTEM像の面積に対する、結晶性炭化コバルトのTEM像の面積の割合)は、約100%であった。
【0130】
本実施例1で得られた炭素質材料においてはその炭素壁面が、入れ子状でもスクロール状でもなく、パッチワーク状(いわゆる paper mache 状ないし張り子状)になっているように見え、ナノフレークカーボンチューブであった。
【0131】
本実施例で得られたコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を構成しているナノフレークカーボンチューブの形状は、円筒状であり、その長手方向を横切る断面のTEM写真において観察されるグラフェンシート像は、閉じた環状ではなく、不連続点を多数有する不連続な環状であった。
【0132】
また、本発明のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を構成しているナノフレークカーボンチューブをTEM観察した場合において、その長手方向に配向している多数の略直線状のグラフェンシート像に関し、個々のグラフェンシート像の長さは、概ね2〜30nmの範囲であった。
【0133】
実施例2
図1に示すような反応装置を使用し、次のようにして本発明のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を得た。
【0134】
工程 (1)
CoCl2・4H2O(関東化学株式会社製)0.2gをニッケルボート内に薄く広げて敷き詰める。これを石英管からなる炉内中央に設置し、炉内を圧力50Paまで減圧する。このとき、真空吸引するラインを取り付けた反応炉端部とは反対側(図1の反応管の左側)から酸素5000ppm含有アルゴンガスを10ml/minの速度で供給する。これにより、反応炉の内容積をA(リッル)とし、酸素量をB(Ncc)とした場合の比B/Aを、6×10-3とした。次いで、反応温度1000℃まで減圧のまま昇温する。
【0135】
工程 (2)
1000℃に到達した時点で、アルゴンを導入し、圧力を6.7×104Paに制御する。一方、熱分解性炭素源として、ベンゼン槽にアルゴンガスをバブリングさせて、揮発したベンゼンとアルゴンの混合ガスを、反応炉容積1リットル当たり、60ml/minの流速で炉内に導入し、希釈ガスとして、アルゴンガスを40ml/minの流速で導入する。
【0136】
1000℃の反応温度で90分間反応させることにより、500℃まで20分で降温後、ヒーターを取り外して20分で室温まで空冷することで本発明のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を含む炭素質材料を200mg得た。
【0137】
SEM観察の結果から、得られた炭素質材料を構成するコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体は、直径20〜40nm、長さ3〜5ミクロンで直線性の高いものであった。また、炭素からなる壁部の厚さは、2〜10nmであり、全長に亘って実質的に均一であった。また、該壁部は、TEM観察及びX線回折法から、炭素網面間の平均距離(d002)が0.34nm以下の黒鉛質構造を有するナノフレークカーボンチューブであることを確認した。
【0138】
上記本発明の炭素質材料を構成する多数のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を電子顕微鏡(TEM)で観察したところ、ナノフレークカーボンチューブの空間部(ナノフレークカーボンチューブのチューブ壁で囲まれた空間)への充填率が10〜80%の範囲の種々の充填率を有するコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体が混在していた。
【0139】
TEM観察の結果から、本発明のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を含む炭素質材料において、ナノフレークカーボンチューブ内空間部への平均充填率は45%(炭素質材料としての平均値)であった。また、実施例1と同様にしてX線回折から算出されたR値は、0.48であった。
【0140】
内包物について、鮮明な電子回折パターンが観測されており、内包物が高い結晶性を有することが分かった。TEM観察の結果、内包物の結晶化率は、約100%であった。
【0141】
本実施例で得られたコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を構成しているナノフレークカーボンチューブの形状は、円筒状であり、その長手方向を横切る断面のTEM写真において観察されるグラフェンシート像は、閉じた環状ではなく、不連続点を多数有する不連続な環状であった。
【0142】
また、本発明のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を構成しているナノフレークカーボンチューブをTEM観察した場合において、その長手方向に配向している多数の略直線状のグラフェンシート像に関し、個々のグラフェンシート像の長さは、概ね2〜30nmの範囲であった。
【0143】
実施例3
図2に示すような装置を用い、次の工程(1)及び(2)を行って本発明のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を得た。
【0144】
工程 (1)
無水CoCl2(関東化学株式会社製)0.2gを磁製ボート内に薄く広げて敷き詰める。これを炉内下流側に設置する。また、磁製ボートに入れたジシクロペンタジエニルコバルトを炉内上流側に設置する。
【0145】
炉内を圧力50Paまで減圧する。このとき、真空吸引するラインの反対側から酸素5000ppm含有アルゴンガスを50ml/minの速度で供給する。これにより、反応炉容積をA(リットル)とし、酸素量をB(Ncc)とした場合の比B/Aを、6×10-3とした。次いで、反応温度1000℃まで減圧のまま昇温する。
【0146】
工程 (2)
反応温度1000℃に到達した時点で、アルゴンを導入し、圧力を6.7×104Paに制御する。一方、炉内上流側に設置した磁製ボート中のジシクロペンタジエニルコバルトを、200℃まで圧力を6.7×104Paに維持して昇温する。
【0147】
また、熱分解性炭素源として、ベンゼン槽にアルゴンガスをバブリングさせて、揮発したベンゼンとアルゴンの混合ガスを、反応炉容積1リットル当たり、60ml/minの流速で炉内に導入し、希釈ガスとして、アルゴンガスを40ml/minの流速で導入する。1000℃の反応温度で90分間反応させた。
【0148】
次いで、500℃まで20分で降温後、ヒーターを取り外して20分で室温まで空冷することにより、コバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を含む炭素質材料を、反応管内に400mg得た。
【0149】
SEM観察の結果から、得られたコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体は、直径20〜40nm、長さ3〜5ミクロンで直線性の高いものであった。
【0150】
また、炭素からなる壁部の厚さは、5〜15nmであり、全長に亘って実質的に均一であった。また、該壁部は、TEM観察及びX線回折法から炭素網面間の平均距離(d002)が0.34nm以下の黒鉛質構造を有するナノフレークカーボンチューブであることを確認した。
【0151】
上記本発明の炭素質材料を構成する多数のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を電子顕微鏡(TEM)で観察したところ、ナノフレークカーボンチューブの空間部(ナノフレークカーボンチューブの炭素壁で囲まれた空間)への充填率が25〜90%の範囲の種々の充填率を有するコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体が混在していた。
【0152】
内包物について鮮明な電子回折パターンが観測され、内包物は高い結晶性を有していた。TEM観察の結果、内包物の結晶化率は、約100%であった。
【0153】
TEM観察の結果から、本発明のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を含む炭素質材料において、ナノフレークカーボンチューブ内空間部への平均充填率(炭素質材料としての平均値)は70%であった。また、実施例1と同様にしてX線回折から算出されたR値は、3.5であった。
【0154】
本実施例で得られたコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を構成しているナノフレークカーボンチューブの形状は、円筒状であり、その長手方向を横切る断面のTEM写真において観察されるグラフェンシート像は、閉じた環状ではなく、不連続点を多数有する不連続な環状であった。
【0155】
また、本発明のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を構成しているナノフレークカーボンチューブをTEM観察した場合において、その長手方向に配向している多数の略直線状のグラフェンシート像に関し、個々のグラフェンシート像の長さは、概ね2〜30nmの範囲であった。
【0156】
実施例4
図1に示すような反応装置において、反応管をカーボン製として耐熱性を高めて使用し、次のようにして本発明のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を得た。
【0157】
工程 (1)
無水CoCl2(関東化学株式会社製)0.2gを磁製ボート内に薄く広げて敷き詰める。これを石英管からなる炉内中央に設置し、炉内を圧力50Paまで減圧する。このとき、真空吸引するラインの反対側から酸素5000ppm含有アルゴンガスを5ml/minの速度で供給する。これにより、反応炉の内容積をA(リットル)とし、酸素量をB(Ncc)とした場合の比B/Aを、2.5×10-3とした。次いで、反応温度1000℃まで減圧のまま昇温する。
【0158】
工程 (2)
1000℃に到達した時点で、アルゴンを導入し、圧力を6.7×104Paに制御する。一方、熱分解性炭素源として、ベンゼン槽にアルゴンガスをバブリングさせて、揮発したベンゼンとアルゴンの混合ガスを、反応炉容積1リットル当たり、30ml/minの流速で炉内に導入し、希釈ガスとして、アルゴンガスを20ml/minの流速で導入する。
【0159】
1000℃の反応温度で120分間反応させた後、1000℃のまま圧力50Paまで減圧する。その後、アルゴン雰囲気で9.0×104Paにし、炉内を、1400℃まで120分で昇温後、1400℃で6時間維持し、500℃まで24時間で冷却し、ヒーターを取り外して室温まで放冷することで本発明のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を含む炭素質材料を180mg得た。
【0160】
SEM観察の結果から、得られた炭素質材料を構成するコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体は、直径20〜50nm、長さ、2〜5ミクロンで直線性の高いものであった。また、炭素からなる壁部の厚さは、2〜10nmであり、全長に亘って実質的に均一であった。また、該壁部は、TEM観察及びX線回折法から、炭素網面間の平均距離(d002)が0.34nm以下の黒鉛質構造を有する入れ子構造の多層カーボンナノチューブであることを確認した。
【0161】
上記本発明の炭素質材料を構成する多数のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を電子顕微鏡(TEM)で観察したところ、入れ子構造の多層カーボンナノチューブの空間部(入れ子構造の多層カーボンナノチューブのチューブ壁で囲まれた空間)への充填率が10〜50%の範囲の種々の充填率を有するコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体が混在していた。
【0162】
内包物について鮮明な電子回折パターンが観測され、内包物が高い結晶性を有していた。TEM観察の結果、内包物の結晶化率は、約100%であった。
【0163】
TEM観察の結果から、本発明のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を含む炭素質材料において、入れ子構造の多層カーボンナノチューブ内空間部への平均充填率は20%(炭素質材料としての平均値)であった。また、実施例1と同様にしてX線回折から算出されたR値は、0.38であった。
【0164】
【発明の効果】
本発明によれば、以下のような顕著な効果が達成される。
【0165】
本発明の製造方法によると、炭素材の壁部で囲まれた空間部の10〜90%がコバルト又はコバルト合金により充たされた新規な構成を有するコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を、簡便な手法により高収率でかつ大量に得ることができる。
【0166】
得られたコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体は、空間部の10〜90%にコバルト又はコバルト合金を内包する点において、カーボンナノチューブの先端にコバルトが存在する公知材料とは、構造上明確に相違するものであり、特異な構造に基づく新規な特異な性質を有する新規材料である。
【0167】
また、本発明のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体は、耐久性に優れたグラファイト壁で囲まれた空間に金属が内包されているので、特性の劣化を殆ど生じない半永久的な導電体乃至分子導電線、及び、磁性体乃至分子磁石としての機能を備えている。
【0168】
従って、本発明によるコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体は、電子放出材料、コバルト徐放性材料、磁気記録材料、摺動材料、導電性フィブリル、磁性材料、磁性流動体、超伝導材料、耐摩耗性材料、半導体材料などとして、極めて有用である。
【0169】
また、本発明では、内包物であるコバルト又はコバルト合金によりカーボンチューブ内空間部の全体が充填されているのではなく、該空間部の10〜90%が充填されているので製造が容易であり、カーボンナノチューブ単独からなる材料に比べて電気伝導度が高く、磁性も付与でき、その他ナノサイズの量子効果が期待できる点で優れている。
【0170】
また、内包物であるコバルト又はコバルト合金の内包率がカーボンチューブ内空間部の10〜90%の範囲のものを製造できるので、特定の内包率を有する本発明コバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を含む炭素質材料を選択することにより、電気的特性、磁気特性、比重等の諸物性を制御できる。
【0171】
比重に関しては、他物質との複合化の際、内包率100%、即ちカーボンチューブの全長に亘ってコバルトなどの金属が内包されている複合体は、内包金属のために比重が高すぎて、他物質中への均一分散が困難となる場合もある。しかし、本発明のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体は内包率10〜90%の範囲で内包金属量を減少させることができるので、均一混合が容易となる。
【0172】
特に、本発明のナノフレークカーボンチューブとコバルト又はコバルト合金からなるコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体は、次のような利点を有している。
(a) 電子放出の起点が多い。グラフェンシートのエッジからも電子放出が起こる可能性が大きいので、大きな電流密度を得る観点から有利である。
(b)黒鉛性が高いので寿命特性に優れる。
(c)ペーストとの馴染みが良くなる。黒鉛性が高いと、ペースト化の際、溶媒、ペースト剤との馴染みが悪くなるが、ナノフレークカーボンチューブとコバルト又はコバルト合金からなるコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体はグラフェンシートのエッジの効果のためか、ペースト化が容易である。
(d)放熱性が良い。
(e)構造制御が容易である。側壁がフレーク状ないし張り子状であるため、切断加工、表面修飾などの構造制御が容易となる。
(f)フレキシブルである。側壁がフレーク状ないし張り子状であるために柔軟性が付与され、複合材料等に用いた場合には剛性と耐衝撃性を両立させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法を行うための製造装置の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の製造方法を行うための製造装置の他の例を示す概略図である。
【図3】カーボンチューブのTEM像の模式図を示し、(a-1)は、円柱状のナノフレークカーボンチューブのTEM像の模式図であり、(a-2)は入れ子構造の多層カーボンナノチューブのTEM像の模式図である。
【符号の説明】
1 反応炉
2 加熱装置
3 加熱装置
100 ナノフレークカーボンチューブの長手方向のTEM像
110 略直線状のグラフェンシート像
200 ナノフレークカーボンチューブの長手方向にほぼ垂直な断面のTEM像
210 弧状グラフェンシート像
300 入れ子構造の多層カーボンナノチューブの長手方向の全長にわたって連続する直線状グラフェンシート像
400 入れ子構造の多層カーボンナノチューブの長手方向に垂直な断面のTEM像

Claims (17)

  1. (a) ナノフレークカーボンチューブと
    (b)コバルト又はコバルト合金とからなり、
    上記 (a) のナノフレークカーボンチューブのチューブ壁で囲まれた空間の10〜90%に上記 (b) コバルト又はコバルト合金が充填されていることを特徴とするコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体。
  2. 直線状であり、外径が1〜100nmであり、炭素からなる壁部の厚さが49nm以下であって全長に亘って実質的に均一であり、長さをLとし外径をDとした場合のアスペクト比L/Dが5〜10000である請求項1に記載のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体。
  3. コバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を構成するナノフレークカーボンチューブの壁部をX線回折法により測定した場合に、炭素網面間の平均距離(d002)が、0.34nm以下である請求項1又は2に記載のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体。
  4. コバルト合金が、コバルトを55重量%以上含有し、炭素、Ni、Fe、Cu、Mn、Cr、Pb、Zn、Mo、Al、Ti、Nb、Ta、S及びSiからなる群から選ばれる少なくとも1種を更に含有する合金である請求項1〜のいずれかに記載のコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体。
  5. (a)ナノフレークカーボンチューブと
    (b)コバルト又はコバルト合金とからなり、
    上記 (a) のナノフレークカーボンチューブのチューブ壁で囲まれた空間の10〜90%に上記 (b) コバルト又はコバルト合金が充填されているコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を含む炭素質材料。
  6. 炭素質材料1mgに対して25mm2以上の照射面積でCuKαのX線を照射する粉末X線回折測定において、ナノフレークカーボンチューブに内包されているコバルトまたはコバルト合金に帰属される40°<2θ<50°のピークの中で最も強い積分強度を示すピークの積分強度をIaとし、カーボンチューブの炭素網面間の平均距離(d002)に帰属される26°<2θ<27°のピークの積分強度をIbとした場合に、Ia/Ibの比Rが、0.3〜4.4である請求項に記載の炭素質材料。
  7. コバルト又はコバルト合金内包炭素複合体が、直線状であり、外径が1〜100nmであり、炭素からなる壁部の厚さが49nm以下であって全長に亘って実質的に均一であり、長さをLとし外径をDとした場合のアスペクト比L/Dが5〜10000である請求項又はに記載の炭素質材料。
  8. コバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を構成するナノフレークカーボンチューブの壁部をX線回折法により測定した場合に、炭素網面間の平均距離(d002)が、0.34nm以下である請求項のいずれかに記載の炭素質材料。
  9. コバルト合金が、コバルトを55重量%以上含有し、炭素、Ni、Fe、Cu、Mn、Cr、Pb、Zn、Mo、Al、Ti、Nb、Ta、S及びSiからなる群から選ばれる少なくとも1種を更に含有する合金である請求項のいずれかに記載の炭素質材料
  10. (a) ナノフレークカーボンチューブ及び入れ子構造の多層カーボンナノチューブからなる群から選ばれるカーボンチューブと
    (b)コバルト又はコバルト合金とからなり、
    上記 (a) カーボンチューブのチューブ壁で囲まれた空間の10〜90%に上記 (b) コバルト又はコバルト合金が充填されているコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を含む炭素質材料の製造方法であって、
    (1)不活性ガス雰囲気中、圧力を10-5Pa〜200kPaに調整し、反応炉内の酸素濃度を、反応炉容積をA(リットル)とし酸素量をB(Ncc)とした場合の比B/Aが1×10-10〜1×10-1となる濃度に調整して、反応炉内でハロゲン化コバルトを600〜1100℃まで加熱するか、又は、(a)ハロゲン化コバルトと(b)ハロゲン化鉄、ハロゲン化ニッケル、ハロゲン化銅、ハロゲン化マンガン、ハロゲン化クロム、ハロゲン化鉛、ハロゲン化亜鉛、ハロゲン化モリブデン、ハロゲン化アルミニウム、ハロゲン化チタン、ハロゲン化ニオブ、ハロゲン化タンタル、ハロゲン化硫黄及びハロゲン化珪素からなる群から選ばれる少なくとも1種とを600〜1100℃まで加熱する工程、及び
    (2)上記反応炉内を不活性ガス雰囲気として圧力を10-5Pa〜200kPaに調整し、熱分解性炭素源を導入して600〜1100℃で加熱処理を行う工程を包含することを特徴とする製造方法。
  11. 工程(2)の加熱処理工程後、50〜2000℃/hで500℃まで冷却することによりナノフレークカーボンチューブとそのチューブ内空間部の10〜90%に充填されているコバルト又はコバルト合金からなるコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を含む炭素質材料を生成させる請求項10に記載の製造方法。
  12. 工程(2)の加熱処理工程後、
    (3)反応炉内を工程(2)の温度を維持したまま不活性気体で置換する工程、
    (4)不活性気体で置換された反応炉内を1100〜1450℃に昇温する工程、(5)昇温終点で終点温度を入れ子構造の多層カーボンナノチューブが生成するまで維持する工程、及び
    (6)反応炉内を50℃/h以下の速度で冷却する工程
    を行うことにより入れ子構造の多層カーボンナノチューブとそのチューブ内空間部の10〜90%に充填されているコバルト又はコバルト合金からなるコバルト又はコバルト合金内包炭素複合体を含む炭素質材料を生成させる請求項10に記載の製造方法。
  13. 工程(2)の加熱処理を有機コバルト錯体の存在下に行う請求項10に記載の製造方法。
  14. 有機コバルト錯体が、ジシクロペンタジエニルコバルト又はコバルトカルボニル錯体である請求項13に記載の製造方法。
  15. ハロゲン化コバルトが、コバルトの塩化物である請求項1014のいずれかに記載の製造方法。
  16. コバルトの塩化物が、CoCl2、CoCl2・H2O、CoCl2・1.5H2O、CoCl2・2H2O、CoCl2・4H2O、CoCl2・6H2O及びCoCl3からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項15に記載の製造方法。
  17. 熱分解性炭素源が、炭素数6〜12の芳香族炭化水素、炭素数1〜10の飽和脂肪族炭化水素及び炭素数2〜5の不飽和脂肪族炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1016のいずれかに記載の製造方法。
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