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JP3826052B2 - 極細繊維束およびその製造方法 - Google Patents

極細繊維束およびその製造方法 Download PDF

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JP3826052B2 JP2002057602A JP2002057602A JP3826052B2 JP 3826052 B2 JP3826052 B2 JP 3826052B2 JP 2002057602 A JP2002057602 A JP 2002057602A JP 2002057602 A JP2002057602 A JP 2002057602A JP 3826052 B2 JP3826052 B2 JP 3826052B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、極細繊維束およびその製造方法に関する。より詳細には、本発明は、極細繊維の含有率の極めて高い極細繊維束およびその製造方法に関するものである。極細繊維の含有率の極めて高い本発明の極細繊維束をカットして得られる極細短繊維を用いることにより、空隙サイズ(ポアサイズ)が小さく、厚みが小さく、しかも吸液量および保液量の高い湿式不織布を製造することができ、該湿式不織布は、電池やキャパシターのセパレーターなどとして極めて有用である。
【0002】
【従来の技術】
極細繊維よりなる不織布は、空隙のサイズ(ポアサイズ)が小さく、また柔軟で、厚さを薄くできることから、人工皮革、フィルター、クリーニング用布帛、その他の種々の用途に用いられており、その一つとして、電池やキャパシターのセパレーターとしての用途が挙げられる。電池やキャパシターなどのセパレーター用の不織布に対しては、電池やキャパシターの性能の向上の点から、空隙サイズ(ポアサイズ)が極めて小さく且つ厚さの薄い不織布が強く求められている。特に、電池用セパレーターでは、ポアサイズが小さくて活物質や導電性物質の通過を阻止し得る性能に優れること、薄くて電池内で占める容積が小さくて済むこと、アルカリ液などの電解液の吸収・保持能に優れることが、電池性能の向上の点から強く求められている。しかしながら、従来の極細繊維製の不織布は、その空隙サイズが十分に小さいとは言えず、かかる点から空隙サイズが極めて小さく、且つ厚さの薄い不織布の開発が急務となっている。
【0003】
極細繊維製の不織布の製法としては、従来、溶剤溶解性の異なる複数のポリマーまたは薬液分解性の異なる複数のポリマーからなる極細繊維形成性の海島型、多層積層型、または放射状配列型の複合紡糸繊維または混合紡糸繊維を短繊維状にし、その短繊維からカードウエブを形成し、そのカードウエブに熱エンボスや水流交絡を施して不織布を作製した後、その不織布を溶剤や薬液で処理して、不織布を構成している複合紡糸繊維または混合紡糸繊維中の溶剤溶解性の大きなポリマーまたは薬液分解性の大きなポリマーを溶解除去または分解除去して極細繊維化したり、或いは複合紡糸繊維または混合紡糸繊維中の複数のポリマー間に分割剥離を生じさせて極細繊維化する方法が広く採用されている。
【0004】
しかしながら、上記した従来の方法による場合は、複合紡糸繊維または混合紡糸繊維中の易溶解性ポリマーまたは易分解性ポリマーの溶解除去または分解除去が不完全であったり、複合紡糸繊維または混合紡糸繊維における複数のポリマー間の分割剥離が不完全になり、極細繊維化が十分に行われないことが多い。その結果、溶剤や薬剤による極細繊維化処理後の不織布では、空隙の大きさが不揃いであったり、空隙のサイズが十分に小さくならないという欠点がある。しかも、不織布を構成する複合紡糸繊維または混合紡糸繊維中の易溶解性ポリマーまたは易分解性ポリマーを溶解除去または分解除去して極細繊維化するそのような不織布では、溶剤または薬液による処理を施す不織布の密度を予め高くして空隙のサイズを小さくしておいても、溶剤または薬液による処理によって易溶解性ポリマーまたは易分解性ポリマーが除去されることにより、空隙のサイズが大きくなり、空隙サイズの小さい極細繊維製の不織布を得ることが一層困難である。
【0005】
極細繊維形成性の複合紡糸繊維や混合紡糸繊維を用いて不織布を製造した後に溶剤や薬液で処理して極細繊維化する上記した方法に代えて、極細繊維を予め製造しておき、その極細繊維を用いて極細繊維製の不織布を直接製造する方法がある。そして、そのような方法としては、紡糸によって極細繊維を直接製造した後、紡糸して得られた極細繊維を用いて不織布を製造する方法、極細繊維形成性の複合紡糸繊維や混合紡糸繊維を不織布にする前に予め溶剤や薬液で処理して極細繊維化し、それにより得られた極細繊維を用いて不織布を製造する方法が挙げられる。しかしながら、極細繊維を直接紡糸する前者の方法による場合は、例えば繊維径5μm以下というような繊度の極めて小さい極細繊維を紡糸工程によって長時間安定して製造することは技術的に容易ではなく、実用性に乏しい。また、極細繊維形成性の複合紡糸繊維や混合紡糸繊維を不織布にする前に予め溶剤や薬液で処理して極細繊維化する後者の方法では、極細繊維形成性の複合紡糸繊維や混合紡糸繊維を完全に且つ効率よく極細繊維化するのは従来困難であった。
かかる点から、実用上は、極細繊維形成性の複合紡糸繊維や混合紡糸繊維を用いて不織
布を製造した後に、溶剤や薬液で処理して不織布を構成する複合紡糸繊維や混合紡糸繊維を極細繊維化する方法を採用せざるを得ないのが現状であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、空隙サイズ(ポアサイズ)が極めて小さく、厚さが薄く、しかも吸液量や保液量が大きくて、電池やキャパシターのセパレーターなどとして有効に用い得る不織布、該不織布の製造に有用な極細短繊維を提供することである。
そして、本発明の目的は、前記した極細短繊維を得るための、極細繊維の含有率の高い極細繊維束およびその製造方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成すべく本発明者らは検討を重ねてきた。その結果、薬液分解性の異なる複数のポリマーからなる極細繊維形成性複合紡糸繊維よりなる繊維束を、所定の繊維密度にした状態で、薬液で処理して、極細繊維形成性複合紡糸繊維中の薬液分解性の大きなポリマーを分解除去するか、或いは極細繊維形成性複合紡糸繊維を構成している複数のポリマー間に分割剥離を生じさせると、極細繊維化がほぼ完全に行われて、極細繊維の含有率が95〜100%と極めて高い、従来にない極細繊維束が得られることを見出した。
そして、本発明者らは、上記した極細繊維束の製造に当たっては、極細繊維形成性複合紡糸繊維よりなる繊維束を、前記した繊維密度になるようにして枠体内外間での通液が可能な枠体に巻き付けて薬液で処理するか、或いは前記した繊維密度になるように維持しながら薬液中を連続的に移動させて処理することにより、極細繊維の含有率の高い前記極細繊維束を円滑に製造できることを見出した。
【0008】
また、本発明者らは、極細繊維束の製造に用いる、繊維の長さ方向に各ポリマー成分が連続した状態で複合されている複合紡糸繊維のうちで、特に海島型、多層積層型または放射状貼合わせ型の複合紡糸繊維が好ましく用いられることを見出した。
さらに、本発明者らは、極細繊維の含有率の極めて高い前記した極細繊維束を所定の長さにカットして極細短繊維をつくり、その極細短繊維を用いて湿式抄造すると、空隙サイズが極めて小さく、厚さが薄く、しかも吸液量および保液量が大きく、電池やキャパシターのセパレーターなどとして極めて有用な高機能の湿式不織布が得られることを見出し、それらの種々の知見に基づいて本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1) 薬液分解性の異なる複数のポリマーからなる極細繊維形成性複合紡糸繊維よりなる太さが20万〜200万dtexの繊維束を、薬液で処理して、極細繊維形成性複合紡糸繊維中の薬液分解性の大きなポリマーを分解除去するか、或いは極細繊維形成性複合紡糸繊維を構成している複数のポリマー間に分割剥離を生じさせることにより得られた極細繊維束であって、極細繊維束を構成する全繊維の本数に対する極細繊維の本数が95〜100%であることを特徴とする極細繊維束である。
【0010】
そして、本発明は、
(2) 極細繊維束を構成している極細繊維の単繊維繊度が0.4dtex以下である前記(1)の極細繊維束;および、
(3) 極細繊維形成性複合紡糸繊維が;
薬液分解性の大きいポリマーを海成分とし薬液分解性の小さなポリマーを島成分とする、島数が10以上の海島型の横断面形状を有する複合紡糸繊維;
薬液分解性の異なる2種類以上のポリマーが、交互に10層以上に積層状態で積層した多層積層型の横断面形状を有する複合紡糸繊維;或いは、
薬液分解性の異なる2種類以上のポリマーが、交互に10分割以上で放射状に配置した横断面形状を有する複合紡糸繊維;
である前記(1)または(2)の極細繊維束;
である。
【0011】
さらに、本発明は、
(4) 薬液分解性の異なる複数のポリマーからなる極細繊維形成性複合紡糸繊維よりなる太さが20万〜200万dtexの繊維束を、繊維束の繊維密度を0.01〜0.1g/cm3にした状態で、薬液で処理して、極細繊維形成性複合紡糸繊維中の薬液分解性の大きなポリマーを分解除去するか、或いは極細繊維形成性複合紡糸繊維を構成している複数のポリマー間に分割剥離を生じさせることを特徴とする極細繊維束の製造方法である。
【0012】
そして、本発明は、
(5) 極細繊維形成性複合紡糸繊維が;
薬液分解性の大きいポリマーを海成分とし薬液分解性の小さなポリマーを島成分とする、島数が10以上の海島型の横断面形状を有する複合紡糸繊維;
薬液分解性の異なる2種類以上のポリマーが、交互に10層以上に積層状態で積層した多層積層型の横断面形状を有する複合紡糸繊維;或いは、
薬液分解性の異なる2種類以上のポリマーが、交互に10分割以上で放射状に配置した横断面形状を有する複合紡糸繊維;
である前記(4)の極細繊維束の製造方法;
(6) 極細繊維形成性複合紡糸繊維よりなる前記繊維束を、繊維密度が0.01〜0.1g/cm3となるように、枠体内外間の通液が可能な枠体に巻き付けた状態で、薬液で処理する前記(4)または(5)の極細繊維束の製造方法;および、
(7) 極細繊維形成性複合紡糸繊維よりなる前記繊維束を、繊維密度が0.01〜0.1g/cm3となる状態にして、薬液中を連続的に移動させながら薬液で処理する前記(4)または(5)の極細繊維束の製造方法;
である。
【0013】
前記(1)〜(3)のいずれかの極細繊維束を所定の繊維長にカットすることによって極細短繊維を得ることができる。当該極細短繊維を用いて形成した湿式不織布は、電池またはキャパシターのセパレーター用などとして有用である。
【0014】
前記(1)〜(3)のいずれかの極細繊維束を所定の繊維長にカットすることによって得られる極細短繊維を用いて湿式不織布を形成する場合には、当該極細短繊維と非極細短繊維の比率を95/5〜100/0にし、湿式不織布の厚さ方向断面における1mm 2 当たりの繊維総数を5,000本以上にするとよい。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明において、薬液による極細繊維化処理を施す繊維束は、薬液による分解性の異なる複数(2種類以上)のポリマーから構成されている極細繊維形成性複合紡糸繊維が多数本集合した繊維束である。
極細繊維形成性複合紡糸繊維は、薬液分解性の異なる複数のポリマーから構成されている。複合紡糸繊維では、繊維を構成している2種類以上のポリマーが繊維の長さ方向に途中で途切れずに連続した状態で複合されており、そのため繊維の長さ方向に連続した状態で極細繊維化が行われるため、極細繊維化の途中または極細繊維化後に、極細繊維化された繊維が極細繊維束から脱落するなどのトラブルが生じず、目的とする極細繊維束を円滑に得ることができる。
極細繊維形成性複合紡糸繊維を構成する複数のポリマーは、薬液分解性が異なるだけではなく、互いに非相溶性であることが好ましく、それによって極細繊維化が一層円滑に行われる。
【0016】
薬液分解性の異なる複数のポリマーからなる極細繊維形成性複合紡糸繊維よりなる繊維束では、繊維束を薬液で処理することにより、薬液による分解性の大きな1種または2種以上のポリマーが分解除去され一方薬液による分解性の小さな1種または2種以上のポリマーが極細繊維として繊維束中に残留することによって極細繊維化するか、或いは薬液分解性の大きなポリマーの一部が分解することによって薬液分解性の大きなポリマーと薬液分解性の小さなポリマーとの間(界面)に分割剥離が生じて極細繊維化して極細繊維束が形成される。
【0017】
極細繊維形成性複合紡糸繊維における薬液分解性の異なる複数のポリマーの組み合わせは、最終的な用途、各用途で要求される性能、極細繊維化のために用いる薬液の種類、極細繊維形成性複合紡糸繊維の製造(紡糸)の容易性などを考慮して決めることができ特に限定されるものではなく、ポリエステル系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、ポリオレフィン系ポリマー、ポリビニルアルコール系ポリマー、ポリスチレン系ポリマーなどの従来から繊維の製造に用いられているポリマーのうちの適当なものを選択して組み合わせることができる。
薬液により易分解性であるポリマーの具体例としては、アルカリ水溶液により易分解性であるポリエチレンテレフタレート、ポリアルキレングリコール、イソフタル酸や5−ナトリウムスルホイソフタル酸などの第3成分を共重合した変性エチレンテレフタレート系ポリエステルポリマーなどを挙げることができる。
一方、薬液易分解性のポリマーと組み合わせて用いられる薬液難分解性のポリマーの具体例としては、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン;エチレン−ビニルアルコール系共重合体;オレフィン系単量体よりなる重合体ブロックと(メタ)アクリル酸系単量体よりなる重合体ブロックを有するブロック共重合体(BLP);ナイロン6、ナイロン66、芳香族ジカルボン酸と脂肪族アルキレンジアミンとから合成される半芳香族ポリアミドなどのポリアミド;ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどのポリエステルなどを挙げることができる。
【0018】
より具体的には、極細繊維形成性複合紡糸繊維における複数のポリマーの組み合わせとしては、例えば、アルカリ水溶液により易分解性のポリエステルとアルカリ水溶液により難分解性のポリオレフィンとの組み合わせ;アルカリ水溶液により易分解性のポリエステルとアルカリ水溶液により難分解性のエチレン−ビニルアルコール共重合体の組み合わせ;アルカリ水溶液により易分解性のポリエステルとアルカリ水溶液により難分解性のオレフィン系重合体ブロックと(メタ)アクリル酸系重合体ブロックを有するブロック共重合体(BLP)の組み合わせ;アルカリ水溶液により易分解性のポリエステルとアルカリ水溶液により難分解性のポリアミドの組み合わせ;酸水溶液により易分解性のポリアミドと酸水溶液により難分解性のポリエステルの組み合わせなどを挙げることができる。
【0019】
極細繊維形成性複合紡糸繊維では、薬液分解性の異なる複数のポリマーは、極細繊維化され易い複合形態を有している必要がある。
そのため、極細繊維形成性複合紡糸繊維としては、
(a) 薬液分解性の大きなポリマーを海成分とし薬液分解性の小さなポリマーを島成分とする海島型の横断面形状を有する複合紡糸繊維;
(b)薬液分解性の異なる複数(2種類以上)のポリマーが交互に積層状態で貼合わさった多層積層型の横断面形状を有する複合紡糸繊維;或いは、
(c)薬液分解性の異なる複数(2種類以上)のポリマーが交互に放射状に配置された横断面形状を有する複合紡糸繊維;
が好ましく用いられる。
前記(a)のタイプの複合紡糸繊維では、島の数は10個以上であることが、また前記(b)および(c)のタイプの複合紡糸繊維では、積層数または放射状の貼合せ数が10以上(分割数が10以上)であることが、薬液によって処理した時に形成される極細繊維の繊度を0.4dtex以下にすることができ、それによって最終的に製造される湿式不織布における空隙サイズをより小さくできることから好ましい。
【0020】
極細繊維形成性複合紡糸繊維の単繊維繊度は特に制限されないが、一般的には、1〜10dtex程度、特に2〜6dtex程度であることが、薬液による極細繊維化が円滑に行われ、単繊維繊度が0.4dtex以下、より好ましくは0.2dtex以下の極細繊維よりなる極細繊維束が形成され易くなり、しかも薬液処理前の整トウ性も良好であることから好ましい。
特に、薬液で処理したときに、単繊維繊度が0.4dtex以下、特に0.2dtex以下の極細繊維になるように、極細繊維形成性複合紡糸繊維の単繊維繊度および複合形態(例えば海島型の複合紡糸繊維における島の数、多層積層型や放射状貼合せ型の複合紡糸繊維における積層数又は貼合せ数など)を選択することが好ましい。
【0021】
上記した極細繊維形成性複合紡糸繊維よりなる繊維束を薬液で処理して極細繊維束を製造する。
薬液による処理を施す前の繊維束では、繊維束を形成する極細繊維形成性複合紡糸繊維の本数および繊維束全体の太さは、極細繊維形成性複合紡糸繊維を構成するポリマーの種類、極細繊維形成性複合紡糸繊維の単繊維繊度などに応じて調整できるが、一般的には、繊維束は5万〜40万本、特に10万〜25万本程度の極細繊維形成性複合紡糸繊維から形成されていることが整トウ性の点から好ましく、または繊維束の太さは20万〜200万dtex、特に40万〜100万dtexであることが、極細繊維化が円滑に行われる点、極細繊維化時の取り扱い性に優れる点から好ましい。
【0022】
本発明では、極細繊維形成性複合紡糸繊維よりなる繊維束を薬液で処理して極細繊維束を製造するに当たって、極細繊維形成性複合紡糸繊維よりなる繊維束を、繊維密度が0.01〜0.1g/cm3の範囲内にある状態にし、その状態で薬液で処理して、極細繊維形成性複合紡糸繊維中の薬液分解性の大きなポリマーを分解除去するか、或いは極細繊維形成性複合紡糸繊維を構成している複数のポリマー間に分割剥離を生じさせることが必要である。
薬液で処理する際に、繊維束の繊維密度が0.01g/cm3よりも小さいと、処理される繊維束の形状が不安定になり、極細繊維化が均一に行われなくなる。一方、繊維束の繊維密度が0.1g/cm3よりも大きいと、繊維束内への薬液の浸透が悪くなり、極細繊維化が不完全になり、極細繊維束における極細繊維の含有率が低下する。薬液による極細繊維化処理は、繊維束の繊維密度を0.02〜0.09g/cm3の状態にして行うことが好ましい。
【0023】
ここで、本明細書でいう、薬液による極細繊維化処理を行う際の繊維束の繊維密度とは、繊維束を薬液で処理するために所定の形態にしたときに、該所定の形態にされた繊維束の体積をV(cm3)とし、その体積部分が有する質量W(g)を前記体積Vで除した値[すなわち式:W/V(g/cm3)により求められる値]をいう。
また、本発明における「繊維束の繊維密度を0.01〜0.1g/cm3にした状態」とは、薬液による処理を施す直前での繊維束の繊維密度が0.01〜0.1g/cm3の状態にあることを意味する。
薬液による極細繊維化処理の途中および処理後には、極細繊維形成性複合紡糸繊維中の易分解性ポリマーの一部または全部が分解除去されるため、繊維束の繊維密度は処理を施す直前よりも当然低くなっており、したがって前記0.01〜0.1g/cm3よりも低くなっていても構わない。
【0024】
繊維束の極細繊維化処理は、繊維束の繊維密度を0.01〜0.1g/cm3にした状態で薬液を用いて行うのであればいずれの方法で行ってもよいが、繊維束の繊維密度を0.01〜0.1g/cm3の状態にして、薬液中に繊維束を浸漬して処理を行うことが好ましい。
繊維束の薬液による極細繊維化処理は、バッチ式で行ってもよいし、連続式で行ってもよいし、またはバッチ式と連続式を併用して行ってもよい。いずれの場合も、極細繊維化処理時に繊維束が薬液と十分に接触するようにして処理を行うことが、極細繊維化を均一に且つ効率よく行うことができる点から好ましい。
【0025】
極細繊維形成性複合紡糸繊維よりなる繊維束をバッチ式で極細繊維化処理する方法としては、例えば、枠体の内外間の通液が可能な枠体に、繊維束を、繊維密度が0.01〜0.1g/cm3になるようにして巻き付け、それを枠体ごと薬液中に浸漬して、極細繊維形成性複合紡糸繊維を構成している易分解性ポリマーを分解させる方法を挙げることができる。
何ら限定されるものではないが、そのような方法の具体例としては、例えば、図1および図2に示すような方法を挙げることができる。
【0026】
図1に示す方法では、枠体1は壁面がなく、四隅と上下に配置した棒状の枠材のみから形成されているために、枠体1の内外間の通液が自在に行われ、枠体1に巻き付けた繊維束2は、処理浴3内の薬液4と十分に接触することができ、それによって極細繊維化が均一に且つ効率良く行われる。
この図1の方法では、極細繊維化処理を施す際の繊維束2の繊維密度は、次のようにして求められる。
すなわち、図1において、枠体1の外側の隣り合う2つの辺の寸法をそれぞれA1(cm)およびB1(cm)とし、枠体1に繊維束2を巻き付けた後の外側の隣り合う2つ辺の寸法をそれぞれA2(cm)およびB2(cm)として、枠体1への繊維束2の巻き付け幅(巻き付け高さ)をC(cm)とし、枠体1に巻き付けられた繊維束2の質量をW(g)とすると、薬液を用いて極細繊維化処理される直前の繊維束2の繊維密度(d)は、下記の数式(i)から求められる。
【0027】
【数1】
繊維密度(d)(g/cm3)=W/V (i)
但し、V(cm3)=(A2×B2−A1×B1)×C
【0028】
図1の方法では、上記の数式(i)によって求められる繊維密度(d)が0.01〜0.1g/cm3の範囲になるように調整しながら繊維束2を枠体1に巻き付け、そのようにして巻き付けた繊維束2を枠体1ごと薬液中に浸漬して極細繊維化処理を行う。繊維束2を枠体1に巻き付ける際の締め付け度合い、巻き付けられた繊維束2の隣り合う繊維束2の間隔(接触状態)、繊維束2の太さ、巻き付ける前の繊維束2自体の密度などを調整することによって、極細繊維化処理を行う際の繊維密度を0.01〜0.1g/cm3の範囲にすることができる。
【0029】
また、図2に示す方法では、枠体1は内外間の通液が可能な柵状の円筒体から形成されているために、図1に示す方法と同様に、筒状の枠体1の内外間の通液が自在に行われ、筒状の枠体1に巻き付けた繊維束2は、処理浴3内の薬液4と十分に接触しながら、極細繊維化が均一に且つ効率良く行われる。
この図2の方法では、極細繊維化処理を施す際の繊維束2の繊維密度は、次のようにして求められる。
すなわち、図2において、枠体1の外径をE1(cm)とし、枠体1に繊維束2を巻き付けた後の外径をE2(cm)として、枠体1への繊維束2の巻き付け幅(巻き付け高さ)をF(cm)とし、枠体1に巻き付けられた繊維束2の質量をW(g)とすると、薬液を用いて極細繊維化処理される直前の繊維束2の繊維密度(d)は、下記の数式(ii)から求められる。
【0030】
【数2】
繊維密度(d)(g/cm3)=W/V (ii)
但し、V(cm3)={π(E2/2)2−π(E1/2)2}×F
【0031】
図2の方法による場合も、上記の数式(ii)によって求められる繊維密度(d)が0.01〜01g/cm3の範囲になるように調整しながら繊維束2を枠体1に巻き付け、それを枠体1ごと薬液中に浸漬して極細繊維化を行う。繊維束2を枠体1に巻き付ける際の締め付け度合い、巻き付けられた繊維束2の隣り合う繊維束2の間隔(接触度合い)、繊維束2の太さ、巻き付ける前の繊維束2自体の密度などを調整することによって、極細繊維化処理を行う際の繊維密度を0.01〜0.1g/cm3の範囲にすることができる。
【0032】
繊維束を巻き付ける枠体は、図1および図2に示すものに何ら限定されず、極細繊維化処理時に繊維束を構成している極細繊維形成性複合紡糸繊維が薬液に十分に且つ均一に接触し得る構造の枠体であればいずれでもよい。
枠体に繊維束を巻き付けて極細繊維化処理を行う際に、必要に応じて、繊維束を巻き付けた枠体を薬液中で上下や左右などに動かしながら処理を行うと、薬液と極細繊維形成性複合紡糸繊維の接触がより良好になり、極細繊維化を促進することができる。
また、繊維束を枠体に巻き付ける上記した方法に代えて、例えば、繊維束を横に複数並列させ、それを網状の通液性シートで上下からサンドイッチ状に挟んで、薬液中に浸漬して極細繊維化処理する方法などを採用して行ってもよい。
【0033】
また、極細繊維形成性複合紡糸繊維よりなる繊維束を連続式で極細繊維化する方法としては、例えば、図3に示す方法を挙げることができる。図3において(a)は、処理浴3を縦方向からみた断面図であり、(b)は処理浴3を上方からみた平面図であり、(c)は処理浴3に入る直前の繊維が横方向に並んだ繊維束2の一部[図3の(b)において点線で包囲した部分]を示す図である。図3において5a,5b,5cは移送用ローラーを示す。
図3に示す方法では、繊維束2を構成する極細繊維形成性複合紡糸繊維が横に並列した状態で、処理浴3に入れた薬液4中を連続的に移動しながら極細繊維化される。この図3に示すような連続式の方法による場合は、繊維束2は、処理浴3内の薬液4と十分に接触しながら次々と連続的に極細繊維化されて極細繊維束が形成されるため、極細繊維の含有率の極めて高い極細繊維を生産性良く製造することができる。図3に示す方法では、繊維束2を構成する極細繊維形成性複合紡糸繊維を並列状態でローラー5aに供給するために、繊維束2を開繊しながら処理浴3に供給するようにしてもよい。また、処理浴3で極細繊維化された極細繊維束は、洗浄や薬液の中和処理などを施した後に、また丸い束状に収束してもよいし、或いは繊維を並列させた状態のまま短繊維化するためのカット工程に導いてもよい。また、図3に示す方法では、必要に応じて薬液4を流動させながら処理を行うこともできる。
この図3の方法では、極細繊維化処理を施す際(施す直前)の繊維束2の繊維密度は、次のようにして求められる。
すなわち、図3の(c)に示すように、所定の質量W(g)に相当する部分の繊維が並列した状態にある繊維束2の幅をJ1(cm)、長さをJ2(cm)および厚さをJ3(cm)とすると、薬液を用いて極細繊維化処理される直前の繊維束2の繊維密度(d)は、下記の数式(iii)から求められる。
【0034】
【数3】
繊維密度(d)(g/cm3)=W/V (iii)
但し、V(cm3)=J1×J2×J3
【0035】
図3の方法による場合も、上記の数式(iii)によって求められる繊維密度(d)が0.01〜0.1g/cm3の範囲になるように調整した状態で、処理浴3中に導いて極細繊維化処理を行う。繊維の並列密度などを調整することによって、極細繊維化処理を行う際の繊維密度を0.01〜0.1g/cm3の範囲にすることができる。
【0036】
極細繊維形成性複合紡糸繊維よりなる繊維束の極細繊維化処理に用いる薬液の種類は、極細繊維形成性複合紡糸繊維を構成する複数のポリマーの組み合わせに応じて選択すればよく、例えば、アルカリ水溶液に易分解性のポリマーと難分解性のポリマーとの組み合わせでは水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液などのアルカリ水溶液を薬液として用いて極細繊維化処理を行えばよい。
極細繊維化処理の際の薬液の温度、処理時間などの処理条件は、薬液の種類、処理方式、極細繊維形成性複合紡糸繊維を構成するポリマーの種類、極細繊維形成性複合紡糸繊維の複合形態や単繊維繊度、極細繊維束の太さなどに応じて適当な条件を採用するのがよい。一般的には、極細繊維化処理時の薬液の温度としては、常温〜100℃の温度が均一な極細繊維化および処理の迅速性などの点から好ましく採用される。
極細繊維形成性複合紡糸繊維よりなる繊維束を極細繊維化するための薬液を入れた処理浴中には、必要に応じて、薬液の繊維束への浸透を促進するための浸透剤などを添加してもよい。
また、極細繊維化処理後に、極細繊維化に用いた薬液の種類などに応じて、得られた極細繊維束に対して水洗、中和処理、乾燥処理などを施すようにする。
【0037】
例えば、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などのスルホイソフタル酸塩を共重合してなるポリエチレンテレフタレートと、ポリプロピレンまたはエチレン−ビニルアルコール系共重合体を組み合わせた海島型複合紡糸繊維または多層積層型複合紡糸繊維よりなる繊維束を水酸化ナトリウム水溶液を用いて極細繊維化する場合は、水1dm3に水酸化ナトリウム100〜400gを溶解したアルカリ水溶液中に、50〜95℃の温度で30〜60分間程度浸漬することによって、複合紡糸繊維中のスルホイソフタル酸塩共重合ポリエチレンテレフタレートを完全に分解除去して、実質的にポリプロピレン極細繊維またはエチレン−酢酸ビニル共重合体極細繊維のみからなる極細繊維束にすることができる。これにより得られる極細繊維束は、水(湯)洗、酢酸や塩酸などの酸水溶液による中和処理、水洗などを順に行うことによって、目的とする極細繊維束を得ることができる。
【0038】
上記した本発明の方法で極細繊維形成性複合紡糸繊維よりなる繊維束の極細繊維化を行うことによって、極細繊維束を構成する全繊維の本数に対する極細繊維の本数が95〜100%であって、極細繊維の含有率の極めて高い、本発明の極細繊維束が得られる。
ここで、本明細書でいう極細繊維束における極細繊維の含有率は、極細繊維束をその長さ方向と直角に切断した横断面について、該横断面における繊維の総本数[極細繊維と非極細繊維(極細繊維化されていない繊維)の合計本数]を数え、該総本数に対する極細繊維の本数の割合をいう。
なお、ここでいう「非極細繊維」とは、極細繊維化が全く生じていない極細繊維形成性複合紡糸繊維のままの繊維、極細繊維形成性複合紡糸繊維を薬液で処理した際に、薬液分解性の大きなポリマーが十分に分解しなかったことにより極細繊維が複数本まとまった状態の繊維、或いは極細繊維形成性複合紡糸繊維を形成している複数のポリマー間に分割剥離を生じる際に分割剥離が不十分であったことにより極細繊維が複数本まとまった状態の繊維をいう。
極細繊維束における極細繊維の含有率の詳細な測定法については、以下の実施例の項に説明するとおりである。
【0039】
上記で得られる極細繊維束を所定の長さにカットすることにより極細短繊維が得られる。この極細短繊維は、極細繊維を上記した95〜100%という極めて高い率で含有している。極細短繊維の繊維長は、極細短繊維の用途などに応じて決めることができるが、一般的には1〜15mm程度であることが、不織布などを製造する際の取り扱い性、得られる不織布の物性などの点から好ましく、2〜10mm程度であることがより好ましい。
また、極細短繊維は、繊維長L(mm)と極細繊維の繊維直径D(mm)の比(L/D)(アスペクト比)が100〜5,000の範囲にあることが好ましく、300〜2,000の範囲にあることがより好ましい。
極細短繊維のアスペクト比が100未満であると、極細短繊維を用いて不織布シートを形成した際に引張強力が低くなり、工程通過中にシートの破断が生じ易くなる。一方、極細短繊維のアスペクト比が5,000を超えると、湿式不織布などを製造する際の工程性が不良になり易く、しかも得られる湿式不織布の加工性が低下し易い。
なお、極細短繊維が円形断面を有しておらず、異形断面である場合は、該異形断面繊維の繊維横断面積と同じ面積を有する円の直径をもって前記した繊維直径Dとし、アスペクト比(L/D)を求める。
【0040】
本発明の極細繊維束をカットして得られる極細短繊維は、極細繊維の含有率が極めて高いことにより、空隙サイズの極めて小さく、厚さが薄く、しかも吸液量の大きな不織布を製造することができる。当該極細短繊維から製造される不織布は、例えば電池やキャパシターのセパレーター用不織布、人工皮革用不織布、クリーニング用不織布、衣料用不織布、フィルター、孔版印刷用原紙などの種々の用途に有効に使用することができる。
特に、本発明の極細繊維束をカットして得られる極細短繊維を用いて湿式不織布を製造すると、空隙サイズ(ポアサイズ)が極めて小さく、厚さが薄く、高い密度を有し、しかも適度な通気性を有する湿式不織布を得ることができる。その湿式不織布は、ポアサイズが小さいこと、厚さが薄くて高い吸液量(保液量)を有することが要求される電池またはキャパシターのセパレーターとして有効に使用できる。
【0041】
本発明の極細繊維束をカットして得られる極細短繊維を用いて得られる湿式不織布では、単位面積当たりの繊維数など用途や使用目的等に応じて調整できるが、例えば、電池またはキャパシターのセパレーターとして用いる場合は、湿式不織布の厚さ方向の断面における1mm2当たりの繊維総数(極細繊維と極細繊維化されていない繊維の合計本数)が5,000本以上、特に7,000本以上であることが、空隙サイズ(ポアサイズ)が極めて小さくなり、しかも高い保液性を確保できることから好ましい。
湿式不織布における厚さ方向の断面における繊維総数は、以下の実施例の項に記載した方法で求めたものである。
また、湿式不織布は、その厚さ方向の断面において、極細繊維:非極細繊維の比率が95:5〜100:0であることが好ましい。
なお、ここでいう「非極細繊維」とは、極細繊維束の場合と同様に、極細繊維化が全く生じていない極細繊維形成性複合紡糸繊維のままの繊維、極細繊維形成性複合紡糸繊維を薬液で分解処理した際に、薬液分解性の大きなポリマーが十分に分解しなかったことにより極細繊維が複数本まとまった状態の繊維、或いは極細繊維形成性複合紡糸繊維を形成している複数のポリマー間に分割剥離を生じる際に分割剥離が不十分であったことにより極細繊維が複数本まとまった状態の繊維をいう。
【0042】
湿式不織布は、本発明の極細繊維束をカットして得られる極細短繊維を用いて水性スラリーを調製し、その水性スラリーを網抄紙機、通液性金型などを使用して抄造し、脱液、乾燥することによって製造することができる。湿式不織布の製造に当たっては、本発明の極細短繊維と共にバインダーを用いることが好ましい。バインダーは、繊維状、粉末状、液状などのいずれでもよく、そのうちでも本発明の極細繊維束をカットして得られる極細短繊維よりも低温で溶融または軟化する熱接着性繊維状バインダー(熱接着性バインダー繊維)が好ましく用いられる。熱接着性バインダー繊維の種類は、極細短繊維を構成するポリマーの種類などに応じて適宜選択することができるが、極細短繊維を構成するポリマーと近縁のポリマーからなる熱接着性短繊維が好ましく用いられ、その場合は湿式不織布の主体をなす極細短繊維と熱接着性バインダー繊維との親和性が高く、力学的特性に優れる湿式不織布を得ることができる。具体的には、例えば、ポリプロピレン極細短繊維に対してはバインダー繊維としてポリプロピレンを芯成分としポリエチレンを鞘成分とする芯鞘型複合短繊維などを、ポリエチレンテレフタレート極細短繊維に対してはバインダー繊維としてポリエチレンテレフタレートよりも融点の低いポリエステル系短繊維や融点を持たない非晶性ポリエステル系短繊維などを、エチレン−ビニルアルコール共重合体極細短繊維に対してはバインダー繊維としてポリプロピレンを芯成分としポリエチレンを鞘成分とする芯鞘型複合短繊維やポリビニルアルコール系短繊維などを用いることができる。
バインダー繊維も単繊維繊度が1dtex未満の極細の短繊維であることが好ましい。
【0043】
バインダーの使用量は、湿式不織布の主体をなす極細短繊維を構成するポリマーの種類、バインダーの種類、湿式不織布の用途などに応じて調整できるが、一般的には、極細短繊維100質量部に対して10〜40質量部程度であることが好ましい。
また、湿式不織布を製造する際の極細短繊維を含有する水性スラリーにおける固形分濃度、抄造後の乾燥温度などは、極細短繊維の種類、バインダーの種類、抄造物の厚さなどに応じて調整することができ、一般的には水性スラリーでの固形分濃度は0.01〜0.3質量%程度であることが好ましい。
さらに、湿式不織布の製造に当たっては、極細短繊維およびバインダーの他に、必要に応じて、天然または合成の他の短繊維や、分散安定剤、紙力増強剤などの添加剤を用いてもよい。
【0044】
【実施例】
以下に実施例により本発明について具体的に説明するが、本発明は以下の例により何ら限定されるものではない。
以下の例において、極細繊維束における極細繊維の含有率、湿式不織布の厚さ方向断面における1mm2当たりの繊維総数、湿式不織布における空隙サイズ(ポアサイズ)および湿式不織布の吸液量は、以下のようにして測定した。
【0045】
(1)極細繊維束における極細繊維の含有率;
極細繊維束を長さ方向に直角に切断した横断面を電子顕微鏡(500倍)にて観察して、極細繊維の本数(N1)および極細繊維化されていない繊維の本数(N2)をそれぞれ数えて、下記の数式(iv)により極細繊維の含有率(%)を求めた。極細繊維束の任意の横断面5カ所について前記した方法で極細繊維の含有率を求め、5カ所の平均値を採って、極細繊維束における極細繊維の含有率とした。
【0046】
【数4】
極細繊維束における極細繊維の含有率(%)={N1/(N1+N2)}×100 (iv)
【0047】
(2)湿式不織布の厚さ方向断面における1mm2当たりの繊維総数:
湿式不織布を厚さ方向に切断し、その断面を電子顕微鏡(500倍)にて観察し、その断面の全面積(S)(mm2)を測定すると共に、該面積中に存在する極細繊維の本数(x)および非極細繊維の本数(y)を数えて、式:(x+y)/Sから1mm2あたりの繊維本数を求めた。
【0048】
(3)湿式不織布における空隙サイズ(ポアサイズ):
コールター・エレクトロニクス社製「Colter POROMETER II」により測定した。
【0049】
(4)湿式不織布の吸液量:
湿式不織布から試験片(縦×横=50mm×50mm)[質量W0(g)]を切り取り、それを35質量%水酸化カリウム水溶液中に、浴比1/100で、温度20℃にて30分間浸漬した後、ピンセットにて取り出して30秒間自然液切りし、その時の質量(W1)(g)を測定して、下記の数式(v)から吸液量を求めた。
【0050】
【数5】
湿式不織布の吸液量(g/g)=(W1−W0)/W0 (v)
【0051】
また、以下の例で用いたポリオレフィン系バインダー繊維の内容は、次のとおりである。
○ポリオレフィン系バインダー繊維:
芯成分がポリプロピレンおよび鞘成分がポリエチレンからなる芯鞘型複合紡糸繊維(芯:鞘の質量比=50:50、単繊維繊度=0.8dtex)を繊維長5mmにカットした短繊維。
【0052】
《製造例1》[アルカリ易分解性ポリエステルの製造]
テレフタル酸182質量部、エチレングリコール97質量部および三酸化アンチモン350ppmをエステル化反応器に仕込み、温度260℃、圧力2.4kg/cm2の条件下に2時間エステル化反応させた後、その全量を重縮合器に移した。重縮合器に5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル17質量部とエチレングリコール28質量部で調製したスラリー全量を添加し、引き続き分子量2000のポリエチレングリコール10質量部、および下記の化学式で表されるポリオキシエチレングリシジルエーテル10質量部を添加した。
【0053】
【化1】
Figure 0003826052
【0054】
さらに、ポリエチレングリコールとポリオキシエチレングリシジルエーテルの合計100質量部に対して、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオキサンを5質量部の割合で添加して、温度を240℃から280℃まで45分間かけて昇温しながら徐々に13.3Pa(0.1mmHg)まで減圧し、以後280℃で系の溶融粘度が極限粘度0.7dl/gとなる時点まで重縮合反応を行って、易アルカリ分解性ポリエステルを製造した。これにより得られたアルカリ易分解性ポリエステルは、温度98℃の水酸化ナトリウム水溶液(水1dm3中に水酸化ナトリウム20g)中に浴比1:500で撹拌下に浸漬したときに30分以内で完全に溶解した。
【0055】
《実施例1》
(1) 上記の製造例1で得られたアルカリ易分解性ポリエステルおよびポリプロピレンを別々の押出機で溶融した後、アルカリ易分解性ポリエステルを海成分とし、ポリプロピレンを島成分として、前者:後者=45:55の質量比で海島型複合紡糸装置に供給して、常法によって円形ノズルから溶融紡糸し、次いで延伸を施して、海島型複合紡糸繊維(島数16、単繊維繊度2.8dtex)を製造した。
(2) 上記(1)で得られた海島型複合紡糸繊維を約20万本集めて56万dtexの繊維束(トウ)にした。これを図1に示す枠体1(ポリプロピレン製、枠体1におけるA1=100cmおよびB1=100cm)に、繊維密度が0.08g/cm3となるように巻き付けた。なお、繊維束を枠体1に巻き付けたときの外側の隣り合う2つ辺の寸法A2=124.5cm、B2=124.5cm、巻き付け幅C=70cmであり、また枠体1に巻き付けた繊維束の質量W=30,800g(30.8kg)であり、前記の繊維密度0.08g/cm3は、それらの数値を上記した数式(i)に代入して求めた。
(3) 次いで、繊維束を巻き付けた枠体の全体を、温度85℃の10%水酸化ナトリウム水溶液中に60分間浸漬した後、水酸化ナトリウム水溶液から取り出し、水洗浄−酢酸水溶液による中和処理−水洗浄の順で洗浄した後、枠体から外して、30.8万dtexの極細繊維束を得た。極細繊維束中の極細繊維の含有率を上記した方法で測定したところ100%であり、アルカリ易分解性ポリエステルはほぼ完全に溶解除去され、ポリプロピレン極細繊維のみからなっていた。極細繊維束を構成するポリプロピレン極細繊維の単繊維繊度は約0.08dtexであった。
【0056】
(4) 上記(3)で得られたポリプロピレン極細繊維束(トウ)をギロチンカッターで3mmにカットして、ポリプロピレン極細短繊維を製造した(L/D=約900)。
(5) 上記(4)で得られたポリプロピレン極細短繊維70質量部および上記したポリオレフィン系バインダー繊維30質量部を水に分散させて水性スラリーを調製した後、丸網抄造機を用いて湿式抄造し、ドライヤー温度140℃で乾燥を行い、その後135℃にてカレンダー処理を施して、目付35g/m2および厚さ0.1mmの湿式不織布を製造した。
(6) 上記(5)で得られた湿式不織布における厚さ方向の断面積での繊維総数、空隙サイズ(ポアサイズ)および吸液量を上記した方法で測定したところ、極細繊維:非極細繊維の比率は97/3であり、また繊維総数は9,000本/mm2、平均空隙サイズ(ポアサイズ)は17μm、吸液量は4.8g/gであり、二次電池のセパレーターとして十分に使用可能な性能を有するものであった。
【0057】
《実施例2》
(1) 上記の製造例1で得られたアルカリ易分解性ポリエステルとエチレン−ビニルアルコール共重合体を別々に押出機で溶融した後、アルカリ易分解性ポリエステルを海成分とし、エチレン−ビニルアルコール共重合体(エチレンの含有量44モル%)を島成分として、前者:後者=50:50の質量比で海島型複合紡糸装置に供給して、常法によって円形ノズルから溶融紡糸し、次いで延伸を施して、海島型複合紡糸繊維(島数16、単繊維繊度4.8dtex)を製造した。
(2) 上記(1)で得られた海島型複合紡糸繊維を約10万本集めて48万dtexの繊維束(トウ)にした。これを実施例1で使用したのと同じ図1に示す枠体1に、繊維密度が0.08g/cm3となるように巻き付けた。なお、繊維束を枠体1に巻き付けたときの外側の隣り合う2つ辺の寸法A2=124.5cm、B2=124.5cm、巻き付け幅C=70cmであり、また枠体1に巻き付けた繊維束の質量W=30,800g(30.8kg)であり、前記の繊維密度0.08g/cm3は、それらの数値を上記した数式(i)に代入して求めた。
(3) 次いで、繊維束を巻き付けた枠体の全体を、温度85℃の10%水酸化ナトリウム水溶液中に60分間浸漬した後、水酸化ナトリウム水溶液から取り出し、水洗浄−酢酸水溶液による中和処理−水洗浄の順で洗浄した後、枠体から外して、24万dtexの極細繊維束を得た。極細繊維束中の極細繊維の含有率を上記した方法で測定したところ100%であり、アルカリ易分解性ポリエステルはほぼ完全に溶解除去され、エチレン−ビニルアルコール共重合体極細繊維のみからなっていた。極細繊維束を構成するエチレン−ビニルアルコール共重合体極細繊維の単繊維繊度は約0.15dtexであった。
【0058】
(4) 上記(3)で得られたエチレン−ビニルアルコール共重合体極細繊維束(トウ)をギロチンカッターで3mmにカットして、ポリプロピレン極細短繊維を製造した(L/D=約750)。
(5) 上記(4)で得られたエチレン−ビニルアルコール共重合体極細短繊維60質量部および上記したポリオレフィン系バインダー繊維40質量部を水に分散させて水性スラリーを調製した後、丸網抄造機を用いて湿式抄造し、ドライヤー温度135℃で乾燥を行い、その後135℃にてカレンダー処理を施して、目付40g/m2および厚さ0.12mmの湿式不織布を製造した。
(6) 上記(5)で得られた湿式不織布における厚さ方向の断面積での繊維総数、空隙サイズ(ポアサイズ)および吸液量を上記した方法で測定したところ、極細繊維:非極細繊維の比率は99/1であり、繊維総数は7,000本/mm2、平均空隙サイズ(ポアサイズ)は20μm、吸液量は4.1g/gであり、二次電池のセパレーターとして十分に使用可能な性能を有するものであった。
【0059】
《実施例3》
(1) 上記の製造例1で得られたアルカリ易分解性ポリエステルと、ポリプロピレンを別々に押出機で溶融した後、各々の成分が多層状になるように、前者:後者=33:67の質量比で、11層積層型複合紡糸装置に供給して、常法によって円形ノズルから溶融紡糸し、次いで延伸を施して、積層数11の多層積層型複合紡糸繊維(単繊維繊度3.3dtex)を製造した。
(2) 上記(1)で得られた海島型複合紡糸繊維を約15万本集めて50万dtexの繊維束(トウ)にした。これを実施例1で使用したのと同じ図1に示す枠体1に、繊維密度が0.08g/cm3となるように巻き付けた。なお、繊維束を枠体1に巻き付けたときの外側の隣り合う2つ辺の寸法A2=124.5cm、B2=124.5cm、巻き付け幅C=70cmであり、また枠体1に巻き付けた繊維束の質量W=30,800g(30.8kg)であり、前記の繊維密度0.08g/cm3は、それらの数値を上記した数式(i)に代入して求めた。
(3) 次いで、繊維束を巻き付けた枠体の全体を、温度85℃の10%水酸化ナトリウム水溶液中に60分間浸漬した後、水酸化ナトリウム水溶液から取り出し、水洗浄−酢酸水溶液による中和処理−水洗浄の順で洗浄した後、枠体から外して、33.2万dtexの極細繊維束を得た。極細繊維束中の極細繊維の含有率を上記した方法で測定したところ100%であり、アルカリ易分解性ポリエステルはほぼ完全に溶解除去され、ポリプロピレン極細繊維のみからなっていた。極細繊維束を構成するポリプロピレン極細繊維の単繊維繊度は約0.37dtexであった。
【0060】
(4) 上記(3)で得られたポリプロピレン極細繊維束(トウ)をギロチンカッターで3mmにカットして、ポリプロピレン極細短繊維を製造した(L/D=約200)。
(5) 上記(4)で得られたポリプロピレン極細短繊維50質量部、単繊維繊度が0.5dtexのポリプロピレン短繊維20質量部および上記したポリオレフィン系バインダー繊維30質量部を水に分散させて水性スラリーを調製した後、丸網抄造機を用いて湿式抄造し、ドライヤー温度140℃で乾燥を行い、その後135℃にてカレンダー処理を施し、目付35g/m2および厚さ0.1mmの湿式不織布を製造した。
(6) 上記(5)で得られた湿式不織布における厚さ方向の断面積での繊維総数、空隙サイズ(ポアサイズ)および吸液量を上記した方法で測定したところ、極細繊維:非極細繊維の比率は99/1であり、繊維総数は6,500本/mm2、平均空隙サイズ(ポアサイズ)は13μm、吸液量は3.6g/gであり、二次電池のセパレーターとして十分に使用可能な性能を有するものであった。
【0061】
《実施例4》
(1) 上記の製造例1で得られたアルカリ易分解性ポリエステルおよびポリプロピレンを別々の押出機で溶融した後、アルカリ易分解性ポリエステルを海成分とし、ポリプロピレンを島成分として、前者:後者=50:50の質量比で海島型複合紡糸装置に供給して、常法によって円形ノズルから溶融紡糸し、次いで延伸を施して、海島型複合紡糸繊維(島数50、単繊維繊度4.0dtex)を製造した。
(2) 上記(1)で得られた海島型複合紡糸繊維を約15万本集めて60万dtexの繊維束(トウ)にした。これを図2に示す枠体1(ポリプロピレン製、E1=130cm)に、繊維密度が0.08g/cm3となるように巻き付けた。なお、繊維束を枠体1に巻き付けた後の外径E2=154.5cm、巻き付け幅F=70cmであり、また枠体1に巻き付けた繊維束の質量W=30,640g(30.64kg)であり、前記の繊維密度0.08g/cm3は、それらの数値を上記した数式(ii)に代入して求めた。
(3) 次いで、繊維束を巻き付けた枠体の全体を、温度85℃の10%水酸化ナトリウム水溶液中に60分間浸漬した後、水酸化ナトリウム水溶液から取り出し、水洗浄−酢酸水溶液による中和処理−水洗浄の順で洗浄した後、枠体から外して、30万dtexの極細繊維束を得た。極細繊維束中の極細繊維の含有率を上記した方法で測定したところ99%であり、アルカリ易分解性ポリエステルはほぼ完全に溶解除去され、ポリプロピレン極細繊維のみからなっていた。極細繊維束を構成するポリプロピレン極細繊維の単繊維繊度は約0.04dtexであった。
【0062】
(4) 上記(3)で得られたポリプロピレン極細繊維束(トウ)をギロチンカッターで3mmにカットして、ポリプロピレン極細短繊維を製造した(L/D=約850)。
(5) 上記(4)で得られたポリプロピレン極細短繊維70質量部および上記したポリオレフィン系バインダー繊維30質量部を水に分散させて水性スラリーを調製した後、丸網抄造機を用いて湿式抄造し、ドライヤー温度140℃で乾燥を行い、その後135℃にてカレンダー処理を施し、目付25g/m2および厚さ0.08mmの湿式不織布を製造した。
(6) 上記(5)で得られた湿式不織布における厚さ方向の断面積での繊維総数、空隙サイズ(ポアサイズ)および吸液量を上記した方法で測定したところ、極細繊維:非極細繊維の比率は97/3であり、繊維総数は9,000本/mm2、平均空隙サイズ(ポアサイズ)は17μm、吸液量は4.8g/gであり、二次電池のセパレーターとして十分に使用可能な性能を有するものであった。
【0063】
《実施例5》
(1) 実施例1の(1)と同じ操作を行って、海島型複合紡糸繊維(島数16、単繊維繊度2.8dtex)を製造した。
(2) 上記(1)で得られた海島型複合紡糸繊維を約20万本集めた56万dtexの繊維束(トウ)を、図3に示すように、繊維束を構成する繊維を横方向に並列させた状態で、非イオン系浸透剤(北広ケミカル社製「ペレックスTS−410」)を液1dm3当たり1gの割合で含有する、温度80℃の10%水酸化ナトリウム水溶液を入れたアルカリ浴中に連続的に導入して、アルカリ浴中を5m/分の速度で連続的に移動させながら極細繊維化処理を行った(アルカリ浴中での浸漬時間5分)。
この実施例5では、図3に示した繊維束2の幅J1=20cm、長さJ2=30cmおよび厚さJ3=0.5cmであり、上記の数式(iii)に従って算出したアルカリ浴に導入する直前での繊維束の見掛密度は0.06g/cm3であった。
(3) 極細繊維化処理後の繊維束をアルカリ浴から連続的に取り出し、湯洗槽(温度80℃)、中和槽(濃度2.0g/dm3の酢酸水溶液、常温)および水洗槽(常温)の順に連続的に通して、洗浄および中和処理を行って、38.5万dtexの極細繊維束を得た。極細繊維束中の極細繊維の含有率を上記した方法で測定したところ98%であり、アルカリ易分解性ポリエステルはほぼ完全に溶解除去され、ポリプロピレン極細繊維のみからなっていた。極細繊維束を構成するポリプロピレン極細繊維の単繊維繊度は約0.08dtexであった。
【0064】
(4) 上記(3)で得られたポリプロピレン極細繊維束(トウ)をギロチンカッターで3mmにカットして、ポリプロピレン極細短繊維を製造した(L/D=約900)。
(5) 上記(4)で得られたポリプロピレン極細短繊維30質量部、単繊維繊度が0.5dtexのポリプロピレン短繊維40質量部および上記したポリオレフィン系バインダー繊維30質量部を水に分散させて水性スラリーを調製した後、丸網抄造機を用いて湿式抄造し、ドライヤー温度140℃で乾燥を行い、その後135℃にてカレンダー処理を施して、目付40g/m2および厚さ0.12mmの湿式不織布を製造した。
(6) 上記(5)で得られた湿式不織布における厚さ方向の断面積での繊維総数、空隙サイズ(ポアサイズ)および吸液量を上記した方法で測定したところ、極細繊維:非極細繊維の比率は、97/3であり、繊維総数は5,500本/mm2、平均空隙サイズ(ポアサイズ)は22μm、吸液量は4.5g/gであり、二次電池のセパレーターとして十分に使用可能な性能を有するものであった。
【0065】
《比較例1》
(1) ポリエチレンと、ポリプロピレンを別々に押出機で溶融した後、各々の成分が多層状になるように、前者:後者=33:67の質量比で、11層積層型複合紡糸装置に供給して、常法によって円形ノズルから溶融紡糸し、次いで延伸を施して、積層数11の多層積層型複合紡糸繊維(単繊維繊度3.3dtex)を製造した。
(2) 上記(1)で得られた多層積層型複合紡糸繊維を約15万本集めて50万dtexの繊維束(トウ)とし、それをギロチンカッターで5mmにカットして短繊維を製造した(L/D=約287)。
(3) 上記(2)で得られた短繊維50質量部、ポリプロピレン短繊維(単繊維繊度0.8dtex、繊維長5mm)30質量部および上記したポリオレフィン系バインダー繊維20質量部を水に分散させて水性スラリーを調製した後、丸網抄造機を用いて湿式抄造して不織布を製造した後、水流絡合により多層積層型複合紡糸繊維におけるポリマー間の分割剥離を行わせ、乾燥した後、135℃にてカレンダー処理を施して、極細繊維よりなる湿式不織布(目付40g/m2、厚さ0.12mm)を得た。
(4) 上記(3)で得られた湿式不織布における厚さ方向の断面積での繊維総数、空隙サイズ(ポアサイズ)および吸液量を上記した方法で測定したところ、極細繊維:非極細繊維の比率は61/39であり、繊維総数は2,700本/mm2、平均空隙サイズ(ポアサイズ)は46μm、吸液量は2.5g/gであり、二次電池のセパレーターとして必要な性能を備えていなかった。
【0066】
【発明の効果】
本発明の極細繊維束は、極細繊維の含有率が95〜100%と極めて高い。そのため、本発明の極細繊維束を所定長さにカットして得られる極細短繊維を用いて湿式抄造すると、空隙サイズが極めて小さく、厚さが薄く、しかも吸液量および保液量が大きく、電池やキャパシターのセパレーターなどの用途に極めて有用な高機能の湿式不織布が得ることができる。
薬液分解性の異なる複数のポリマーからなる極細繊維形成性複合紡糸繊維よりなる繊維束を、繊維密度0.01〜0.1g/cm3の状態で、薬液を用いて極細繊維化する本発明の方法による場合は、極細繊維の含有率の極めて高い上記した本発明の極細繊維束を、円滑に効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の極細繊維束の製造方法の一例を示す図である。
【図2】 本発明の極細繊維束の製造方法の別の例を示す図である。
【図3】 本発明の極細繊維束の製造方法の更に別の例を示す図である。
【符号の説明】
1 枠体
2 繊維束
3 処理浴
薬液
5a 移送用ローラー
5b 移送用ローラー
5c 移送用ローラー

Claims (7)

  1. 薬液分解性の異なる複数のポリマーからなる極細繊維形成性複合紡糸繊維よりなる太さが20万〜200万dtexの繊維束を、薬液で処理して、極細繊維形成性複合紡糸繊維中の薬液分解性の大きなポリマーを分解除去するか、或いは極細繊維形成性複合紡糸繊維を構成している複数のポリマー間に分割剥離を生じさせることにより得られた極細繊維束であって、極細繊維束を構成する全繊維の本数に対する極細繊維の本数が95〜100%であることを特徴とする極細繊維束。
  2. 極細繊維束を構成している極細繊維の単繊維繊度が0.4dtex以下である請求項1に記載の極細繊維束。
  3. 極細繊維形成性複合紡糸繊維が;
    薬液分解性の大きいポリマーを海成分とし薬液分解性の小さなポリマーを島成分とする、島数が10以上の海島型の横断面形状を有する複合紡糸繊維;
    薬液分解性の異なる2種類以上のポリマーが、交互に10層以上に積層状態で積層した多層積層型の横断面形状を有する複合紡糸繊維;或いは、
    薬液分解性の異なる2種類以上のポリマーが、交互に10分割以上で放射状に配置した横断面形状を有する複合紡糸繊維;
    である請求項1または2に記載の極細繊維束。
  4. 薬液分解性の異なる複数のポリマーからなる極細繊維形成性複合紡糸繊維よりなる太さが20万〜200万dtexの繊維束を、繊維束の繊維密度を0.01〜0.1g/cm3にした状態で、薬液で処理して、極細繊維形成性複合紡糸繊維中の薬液分解性の大きなポリマーを分解除去するか、或いは極細繊維形成性複合紡糸繊維を構成している複数のポリマー間に分割剥離を生じさせることを特徴とする極細繊維束の製造方法。
  5. 極細繊維形成性複合紡糸繊維が;
    薬液分解性の大きいポリマーを海成分とし薬液分解性の小さなポリマーを島成分とする、島数が10以上の海島型の横断面形状を有する複合紡糸繊維;
    薬液分解性の異なる2種類以上のポリマーが、交互に10層以上に積層状態で積層した多層積層型の横断面形状を有する複合紡糸繊維;或いは、
    薬液分解性の異なる2種類以上のポリマーが、交互に10分割以上で放射状に配置した横断面形状を有する複合紡糸繊維;
    である請求項4に記載の極細繊維束の製造方法。
  6. 極細繊維形成性複合紡糸繊維よりなる前記繊維束を、繊維密度が0.01〜0.1g/cm3となるように、枠体内外間の通液が可能な枠体に巻き付けた状態で、薬液で処理する請求項4または5に記載の極細繊維束の製造方法。
  7. 極細繊維形成性複合紡糸繊維よりなる前記繊維束を、繊維密度が0.01〜0.1g/cm3となる状態にして、薬液中を連続的に移動させながら薬液で処理する請求項4または5に記載の極細繊維束の製造方法。
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