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JP3814454B2 - インバーター装置 - Google Patents

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JP3814454B2
JP3814454B2 JP2000012559A JP2000012559A JP3814454B2 JP 3814454 B2 JP3814454 B2 JP 3814454B2 JP 2000012559 A JP2000012559 A JP 2000012559A JP 2000012559 A JP2000012559 A JP 2000012559A JP 3814454 B2 JP3814454 B2 JP 3814454B2
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智則 大内山
孝二 浜岡
智紀 中野
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松下冷機株式会社
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば冷蔵庫などにおける圧縮機用電動機等の負荷を駆動するインバーター装置の電源制御に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、冷蔵庫などに用いるインバーター装置においては、圧縮機の運転状態によって印加する電圧を変化させ、圧縮機の低速回転時における運転効率を改善している。
【0003】
従来のインバーター装置としては特開平11−32498号公報に示されているものがある。
【0004】
以下、図面を参照しながら上記従来のインバーター装置を説明する。
【0005】
図6は、従来のインバーター装置の構成図である。従来のインバーター装置は、以下の7つの構成要素を備えていた。
【0006】
(1)交流電源(商用100V)1をコンバータ10で整流、平滑化した直流電源を、3相ブリッジ接続された半導体スイッチ(トランジスタ)などによりスイッチングして三相のブラシレスモータ4の電機子巻線に印加するインバータ回路3、
(2)位置検出回路5からの位置検出信号をもとに制御回路11から出力される信号により、インバータ回路3の半導体スイッチ(トランジスタ)Ua,Va,Wa,X,Y,Zをオン、オフ駆動させる駆動回路7、
(3)全波整流回路2a、倍電圧回路2bおよび平滑用コンデンサ2c、全波整流回路2aと倍電圧回路2bとの間で倍電圧動作を不動作状態とするモード切替回路10aを有するコンバータ10、
(4)位置検出回路5からの位置検出信号によりブラシレスモータ4の回転数を算出する回転数算出部11a、この回転数をもとにして前記倍電圧回路2bの倍電圧なしモードに切り替えるか否かを判定するモード判定部11bと、
(5)このモード判定にしたがって前記モード切替回路を制御する一方、PWMチョッピングのデューティの可変指示を出すモード切替部11cと、
(6)一定時間の間そのモード切り替え等を禁止するためのタイマ11d、そのデューティの可変指示にしたがってPWMチョッピングのオン時間幅を変更するデューティ設定部11eおよびチョッピングを通電タイミングに重畳した駆動信号を生成する波形生成部11fを有する制御回路(マイクロコンピュータ)11と、
(7)この制御回路11からの制御信号によりモード切替回路10を駆動するドライバ12とを備えている。
【0007】
以上のように構成されたインバーター装置について、以下その動作を説明する。
【0008】
まず、コンバータ10により商用電源からのAC100Vの交流電力を整流平滑し、これらはモード切替回路10aをONすることで倍電圧整流回路を形成し、OFFすることで全波整流回路を形成する。そしてインバータ回路3に印加する直流電圧は無負荷時において、モード切替回路10aがON時は280V程度、モード切替回路10aがOFF時は140V程度となる。
【0009】
この直流電圧はインバータ回路3に通電され、数KHzから数十KHzのPWM信号でチョッピングすることでブラシレスモータ4に所要電力を供給している。インバータ回路3の構成要素である半導体スイッチをオン・オフ制御するPWM信号はマイコン等からなる制御回路11により生成される。
【0010】
また、高速回転時にはモード切替回路10aをONすることでインバータ回路3に印加する電圧を高くし、低速回転時にはモード切替回路10aをOFFすることでインバータ回路3に印加する電圧を低くする。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の構成では、全波整流回路から倍電圧整流回路に、モード切替回路10aが一瞬間で切り替えるために、インバータ回路3に印加する電圧が急峻に変化するために、非常に大きな電流がモード切替回路10aに流れ、モード切替回路10aの大型化、コストアップを引き起こすという欠点があった。
【0012】
本発明は、従来の課題を解決するもので、印加する電圧を変化させる際に、滑らかに変圧させることができるインバーター装置を提供することを目的とする。
【0013】
また、上記のように、インバータ回路3に印加する電圧が急峻に変化するために、降圧した場合、電動機にかかる電圧よりも前記印加電圧の方が速く降圧してしまうために逆電流が生じるという欠点があった。
【0014】
本発明の他の目的は、電動機運転中に逆電流が生じないように、印加電圧を滑らかに降圧できることである。
【0015】
また、上記のように、インバータ回路3に印加する電圧が急峻に変化するために、電動機運転中に昇圧した場合、電動機の回転数が乱れるために騒音を発生するという欠点があった。
【0016】
本発明の他の目的は、電動機運転中に回転数が乱れないように、印加電圧を滑らかに昇圧できることである。
【0017】
また、前記のように滑らかに変圧する際に、電動機の回転速度に関わらず、一定な変圧速度で制御すると、迅速に回転速度を変更する必要があるときでも過剰に時間を要してしまうという欠点が考えられる。
【0018】
本発明の他の目的は、電動機の回転速度に応じて変圧時間を調整して、必要最小限の時間で印加電圧の変圧速度を制御できることである。
【0019】
また、前記のように滑らかな変圧を行うにあたって、ON時に発熱が増加するようなスイッチを用いた場合、耐力の大きなスイッチが必要となり、大型化、コストアップを引き起こすという欠点が考えられる。
【0020】
本発明の他の目的は、スイッチがONしているときの発熱を抑制できることである。
【0021】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するため本発明は、一定電圧の入力交流電力を直流電力に変換する整流・平滑回路と、前記整流・平滑回路で変換された直流電力を所要の電力に変換して負荷に供給する負荷用電力供給モジュールと、前記負荷用電力供給モジュールを駆動する駆動手段とを有するインバーター装置において、前記電力(負荷)の大小によって前記負荷用電力供給モジュールに印加する電圧を全波整流から倍電圧整流(無負荷時において約140〜約280V)の範囲で変化させる際に、入力交流電圧のゼロクロス検出回路と、その検出信号をもとに位相制御によって駆動するスイッチ手段とを用いて、前記印加電圧を滑らかに変化させ、かつ、前記電動機の回転数によって、変圧時間を調整する変圧速度制御をすることを特徴としている。
【0022】
これにより、負荷用電力供給モジュールに印加する電圧を滑らかに変圧することができる。また、騒音などがあまり問題とならない低速運転時(停止時も含む。)には、比較的変圧時間を短くすることにより、例えば、急速な冷凍を要求された場合にも迅速に応答できる。
【0023】
また、本発明は、運転中の電動機の回転速度をより低速になるよう、前記負荷用電力供給モジュールに印加する電圧を降圧するために、スイッチ手段をオンする位相制御駆動信号の入力交流電圧に対する位相のすすみ具合を、入力交流電圧の四半周期から半周期の方向に徐々に大きくなるように位相制御を行うことで、前記印加電圧を滑らかに降圧制御することを特徴としている。
【0024】
これにより、電動機にかかる電圧より負荷用電力供給モジュールに印加される電圧の方が速く降圧することがなくなり、逆電流の発生を防止することができる。
【0025】
また、本発明は、運転中の電動機の回転速度をより高速になるよう、前記負荷用電力供給モジュールに印加する電圧を昇圧するために、スイッチ手段をオンする位相制御駆動信号の入力交流電圧に対する位相のすすみ具合を、入力交流電圧の半周期から四半周期の方向に徐々に小さくなるように位相制御を行うことで、前記印加電圧を滑らかに昇圧制御することを特徴としている。
【0026】
これにより、運転中の電動機の回転数が乱れないようになり、電動機が発生する騒音を抑制することができる。
【0029】
また、本発明は、発熱量の違う2種類のスイッチ手段を用いて、前記負荷用電力供給モジュールに印加する電圧を変化することを特徴としている。
【0030】
これにより、ON時に発熱が大きくなるスイッチの温度上昇を抑制することができる。
【0031】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項1に記載の発明は、一定電圧の入力交流電力を直流電力に変換する整流・平滑回路と、前記整流・平滑回路で変換された直流電力を所要の電力に変換して圧縮機用電動機などの負荷に供給する負荷用電力供給モジュールと、前記負荷用電力供給モジュールを駆動する駆動手段とを有するインバーター装置において、前記電力(負荷)によって前記負荷用電力供給モジュールに印加する電圧を全波整流から倍電圧整流(無負荷時において約140〜約280V)の範囲で変化させる際に、入力交流電圧のゼロクロス検出回路と、その検出信号をもとに位相制御によって駆動するスイッチ手段とを用いて、前記印加電圧を滑らかに変化させ、かつ、前記電動機の回転数によって、変圧時間を調整する変圧速度制御をするものであり、スイッチ手段にかかる電圧を緩やかに変化させるために、スイッチ手段に流れる電流を抑えることができ、スイッチ手段の小型化、コストダウンを実現できるという作用を有する。また、運転中の電動機の回転速度に対して最適な時間で変圧を行うことにより、例えば、電動機が発生する騒音などがあまり問題とならない低速運転時(停止時も含む。)に、急速な冷凍要求を受けた場合には、比較的短い時間で変圧を行うことにより迅速に応答できるという作用を有する。
【0032】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の発明において、負荷の大小によって負荷用電力供給モジュールに印加する電圧を全波整流から倍電圧整流の範囲で変化させる際に、運転中の電動機の回転速度をより低速になるよう印加電圧を降圧するために、スイッチ手段をオンする位相制御駆動信号の入力交流電圧に対する位相のすすみ具合を、入力交流電圧の四半周期から半周期の方向に徐々に大きくなるように位相制御を行うことで、前記印加電圧を滑らかに降圧制御するものであり、前記負荷用電力供給モジュールに印加する電圧を緩やかに降圧させ、その降圧速度が電動機にかかる電圧の降圧速度より遅くなるために、逆電流の発生を防止する作用を有する。
【0033】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、負荷の大小によって負荷用電力供給モジュールに印加する電圧を全波整流から倍電圧整流の範囲で変化させる際に、運転中の電動機の回転速度をより高速になるよう印加電圧を昇圧するために、スイッチ手段をオンする位相制御駆動信号の入力交流電圧に対する位相のすすみ具合を、入力交流電圧の半周期から四半周期の方向に徐々に小さくなるように位相制御を行うことで、前記印加電圧を滑らかに昇圧制御するものであり、運転中の電動機にかかる電圧を緩やかに昇圧するために、電動機の回転数が乱れなくなり、電動機から発生する騒音を抑制できるという作用を有する。
【0035】
請求項に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、倍電圧を継続的に負荷用電力供給モジュールに印加する際に、発熱量の違う2種類のスイッチ手段を用いて、前記印加電圧を変化させるものであり、倍電圧整流後の電圧を負荷用電力供給モジュールに継続して印加する場合、発熱量の大きなスイッチ手段から、発熱量の小さいスイッチ手段に切り替え、温度上昇を抑制できるという作用を有する。
【0036】
以下、本発明によるインバーター装置の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0037】
図1は、本発明の実施例によるインバーター装置の構成図である。
【0038】
図1において、21は整流回路であり、4つの整流ダイオードから構成され、入力された一定電圧の入力交流電力を整流して、平滑回路23に出力する。
【0039】
22はスイッチ手段であり、並列接続されたトライアックとリレーにより構成されており、コントローラー29から出力される信号によってON/OFFが切り替えられ、平滑回路23に出力する電圧を、無負荷時では波高値にして140Vから280Vの範囲(本実施例の場合、入力交流電力の電圧値はAC100V)で変化させる。
【0040】
23は平滑回路であり、直列接続された2つの平滑コンデンサにより構成されており、前記整流回路21によって整流された電圧を平滑し、直流電力として負荷用電力供給モジュール24に出力する。
【0041】
24は負荷用電力供給モジュールであり、半導体スイッチ(トランジスタ)が3相ブリッジ接続されており、かつ各々のトランジスタに並列・逆方向でダイオードが接続されており、コントローラー29から出力される信号によって、平滑回路23から出力された直流電力を所要の電力に変換して負荷(電動機25)に供給する。
【0042】
25は電動機であり、前記負荷用電力供給モジュール24の出力により、所要の回転速度で運転する。
【0043】
26はゼロクロス検出回路であり、集積回路(オペアンプ)などから構成されており、入力交流電力の電圧値が0Vになる時を検出し、適切な位相制御駆動信号をトライアック駆動回路27に出力するために、入力ACゼロクロス信号をコントローラー29に出力する。
【0044】
27はトライアック駆動回路であり、コントローラー29から出力された位相制御駆動信号により適切にトライアックをON/OFFさせる。
【0045】
28は印加電圧検出回路であり、負荷用電力供給モジュール24に印加している電圧を検出して、印加電圧検出信号をコントローラー29に出力する。
【0046】
29はコントローラーであり、マイクロコンピュータ、前記負荷用電力供給モジュール24
の駆動手段である波形生成回路などから構成されており、前述の各種信号の入出力、リレー駆動回路30へのリレー駆動信号出力、位置検出回路31から出力される信号をもとに前記電動機25の回転数監視などを行う。
【0047】
30はリレー駆動回路であり、半導体スイッチなどから構成されており、前記コントローラー29から出力されたリレー駆動信号により、リレーのON/OFFを適切に制御する。
【0048】
31は位置検出回路であり、前記電動機25の回転子の位置を検出し、前記コントローラー29に出力する。
【0049】
以上のように構成されたインバーター装置について、以下その動作を説明する。
【0050】
インバーター装置を有する冷蔵庫などの機器において、電動機などの負荷をより効率よく運転させるために、負荷用電力供給モジュール24に印加する電圧を、電動機25の速度などの負荷状態によって変化させる。例えば、電動機25が高速運転時には倍電圧に、停止時を含む低速運転時にはその半分程度の電圧に切り替えて、その電圧をもとにして、所要電力に変換した後電動機25に供給する。
【0051】
この場合、一般には、電動機25の運転状況、電圧の切り替え方向(降圧方向、または昇圧方向。)に関わらず、前記直流電圧の切替をリレーなどのスイッチにより一瞬間で行う。本実施例における前記直流電圧切り替え方式は以下のように行われる。まず、ゼロクロス検出回路26から出力される入力ACゼロクロス信号と印加電圧検出回路28から出力される印加電圧検出信号とをもとに、負荷用電力供給モジュール24に印加している電圧の値よりも、入力交流電力の電圧の波高値が少し大きくなる位相の位置でトライアックが点弧するように、コントローラー29がトライアック駆動回路27に対して位相制御駆動信号を出力する。
【0052】
これを繰り返すことにより、負荷用電力供給モジュール24に印加する電圧を変圧する。前記印加電圧を降圧させる場合は、入力交流電力の電圧の波高値が少し小さくなる位相の位置でトライアックが点弧するようにして、前記印加電圧を変圧する。
【0053】
したがって、負荷用電力供給モジュール24に印加される電圧の変圧が滑らかになり、スイッチ手段22に流れる突入電流が非常に小さくなるため、スイッチの小型化、コストダウンを実現できる。
【0054】
図2は、電動機25が運転中に負荷用電力供給モジュール24に印加する電圧を滑らかに降圧する際の電圧、信号の関係を概略的に示した図であり、本実施例では倍電圧(入力電圧商用100Vとして無負荷時には280V相当)からその半分程度の電圧(入力電圧商用100Vとして無負荷時には140V相当)まで降圧させている。
【0055】
図2において、ゼロクロスポイントとは、入力交流電圧が0Vになる点であり、入力交流電圧波形の半周期毎に存在する。また、整流後の電圧とは、入力交流電力を整流回路21によって整流した後の電圧であり、その電圧波形は入力交流電圧の半周期毎に発生する。
【0056】
この整流後の電圧波形について各ゼロクロスポイントを基準として考えると、入力交流電圧波形の四半周期にあたる時間後に整流後の電圧は最大となり、次のゼロクロスポイントまでの時間は入力交流電圧の半周期にあたると解釈できる。つまり、整流後の電圧が最大となる時刻tD1は直前のゼロクロスポイントから四半周期後にあたり、時刻tD2、tD3、tD4、tD5は四半周期後と次のゼロクロスポイント即ち半周期後との間であり、かつ、tD2、tD3、tD4、tD5の順に四半周期から半周期の方向に近づいていると解釈できる。
【0057】
本実施例の前記印加電圧の降圧方式は以下のように行われる。まず、コントローラー29が、図中左のような位相制御駆動信号を出力し、トライアックを点弧する時刻を、ゼロクロスポイント毎に、入力交流電圧波形の四半周期から半周期の方向に少しずつずらすようにトライアックを位相制御する。
【0058】
したがって、トライアックの導通時間が徐々に短くなり、それによって負荷用電力供給モジュール24に印加される電圧は、電動機25にかかる電圧の降下速度よりも遅く降圧されるようになり、逆電流を防止でき、回路の信頼性向上を実現できる。
【0059】
図3は、電動機25が運転中に負荷用電力供給モジュール24に印加する電圧を滑らかに昇圧する際の電圧、信号の関係を概略的に示した図であり、本実施例では倍電圧の半分程度の電圧(入力電圧商用100Vとして無負荷時には140V相当)から倍電圧(入力電圧商用100Vとして無負荷時には280V相当)まで昇圧させている。
【0060】
図3において、図2と同様な解釈ができる。つまり、整流後の電圧が最大となる時刻tU5は直前のゼロクロスポイントから四半周期後にあたり、時刻tU1、tU2、tU3、tU4は四半周期後と次のゼロクロスポイント即ち半周期後との間であり、かつ、tU1、tU2、tU3、tU4の順に半周期から四半周期の方向に近づいていると解釈できる。
【0061】
本実施例の前記印加電圧の昇圧方式は以下のように行われる。まず、コントローラー29が、図中左のような位相制御駆動信号を出力し、トライアックを点弧する時刻を、ゼロクロスポイント毎に、入力交流電圧波形の半周期から四半周期の方向に少しずつずらすようにトライアックを位相制御する。
【0062】
したがって、トライアックの導通時間が徐々に長くなり、それによって負荷用電力供給モジュール24に印加される電圧は滑らかに昇圧され、コントローラー29が追従できないほどの電動機25における回転速度の乱れを防止でき、電動機25が発生する騒音の抑制を実現できる。
【0063】
図4は、負荷用供給モジュール24に印加する電圧の変圧速度制御に関するフローチャートである。ここで、変圧速度制御の前段階の制御について少し説明する。前述の従来の技術においても説明したとおり、前記印加電圧は電動機25の運転速度条件によって決定する。そのため、前記変圧速度制御を開始する前に、その時点の電動機25の運転速度は既知であることを補足しておく。
【0064】
以下、図4を参照しながら本実施例による負荷用電力供給モジュール24にかかる印加電圧の変圧速度制御について詳細に説明する。まず、位置検出回路31から出力された信号をもとに、コントローラー29によって算出された電動機25の回転速度が、任意の回転数、例えば30s-1(30rps)よりも遅いかどうかを判定する(ステップST1)。
【0065】
もし、遅ければ変圧速度のモードを短時間モードと決定する(ステップST2)。ここでは、このモードの変圧時間を仮に2秒間とする。そして、コントローラー29が、2秒間で目標の電圧までの変圧を完了させるように、位相制御駆動信号をトライアック駆動回路27に出力し(ステップST3)、負荷用電力供給モジュール24の印加電圧を目標電圧まで変圧する(ステップST6)。
【0066】
一方、ステップST1の判定の結果30s-1(30rps)よりも速ければ変圧速度のモードを長時間モードと決定する(ステップST4)。ここでは、このモードの変圧時間を仮に5秒間とする。そして、コントローラー29が、5秒間で目標の電圧までの変圧を完了させるように、位相制御駆動信号をトライアック駆動回路27に出力し(ステップST5)、前記短時間モードの場合と同様に目標電圧まで変圧する(ステップST6)。
【0067】
ここで、具体的な数値を使ってもう少し細かく説明する。今、仮に入力交流電圧は商用100V、周波数50Hzとし、電動機25が29s-1(29rps)で運転中に、負荷用電力供給モジュール24に印加する電圧を変圧することを考える。回転数が29s-1であるから、変圧速度のモードは短時間モードであり、2秒間で変圧を完了するようにトライアックを位相制御する。
【0068】
前述のように、入力交流電圧波形の半周期毎にトライアックを点弧して位相制御を行うから、入力交流電圧の周波数が50Hzの場合、2秒間で変圧を完了するにはトライアックの点弧を200回行うことになる。
【0069】
一方、回転数が31s-1(31rps)の場合、変圧速度のモードは長時間モードであり、5秒間で変圧を完了するようにトライアックを位相制御する。短時間モードの場合と同様なことから、5秒間で変圧を完了するにはトライアックの点弧を500回行うことになる。
【0070】
即ち、短時間モードより長時間モードの方が点弧回数が増え、より滑らかな変圧となる。それでは、変圧を140Vから280Vの昇圧として、更に詳しく説明をする。140Vから280Vの昇圧を行うということは、トライアックの導通角を約30度から約90度まで広げるということになる。
【0071】
言い換えれば、入力交流電圧の周波数は50Hzであるから、導通時間を約1.67msから約5msまで延ばすことになる。この約60度(導通時間にすれば約3.33ms)の拡張を、短時間モードでは点弧回数にして200回(昇圧時間にして2秒間)に分けて行い、長時間モードでは点弧回数にして500回(昇圧時間にして5秒間)に分けて行うため、長時間モードの方が細やかに位相制御しているため、より滑らかな昇圧ができ、短時間モードの方が速やかに変圧を完了することができる。
【0072】
従って、運転中の電動機25の回転数に応じて、最適な変圧速度を実現するようにトライアックを位相制御でき、例えば、冷凍能力の低い運転状態(停止状態を含む)にあるときに、急速な冷凍を要求された場合でも迅速な応答が可能となる。
【0073】
図4について補足しておくが、ここでは、ステップST1の判定条件後の分岐が2通りしかない最も単純な制御方式について説明したが、回転数、変圧方向(昇圧、または降圧。)、変圧の大きさ、導通角の変化率などの条件によって判定後の分岐を増やすことで、更に好適な変圧速度制御を実現できる。
【0074】
具体例を挙げると、例えば回転数が停止状態0s-1(0rps)の時は昇圧する場合は変圧時間を1秒間とし、降圧する場合は一瞬間に変圧を行うといった変圧速度制御が考えられる。
【0075】
なお、この様な場合でも、基本的な制御フローは前述の方式のフローとほぼ同様なものであり、ステップST1の判定条件が増えるために分岐数も増加し、それにに応じてステップ数が増えるだけである。
【0076】
図5は、負荷用電力供給モジュール24の印加電圧、トライアック駆動回路27に出力される位相制御駆動信号、リレー駆動回路30に出力されるリレー駆動信号のタイミングチャートである。以下、図5を参照しながら、本実施例におけるスイッチ手段22の温度上昇抑制方法について説明する。
【0077】
図5において、t1は負荷用電力供給モジュール24にかかる印加電圧の昇圧開始時刻、t2は昇圧完了時刻、t3は降圧開始時刻、t4は降圧完了時刻である。まず、コントローラー29からトライアック駆動回路27に位相制御駆動信号が出力されトライアックの位相制御を開始することにより、負荷用電力供給モジュール24の印加電圧が、時刻t1に全波整流電圧(倍電圧の半分程度の電圧)から昇圧され始める。この状態は、例えば「低速運転中に、冷蔵庫の庫内温度が所要の温度より高くなり、電動機25をより高速に運転させる必要がある。」といったような状態である。
【0078】
そして、時刻t2に倍電圧まで昇圧が完了すると位相制御駆動信号によりトライアックを完全導通状態(導通角が180度、即ち100%導通している状態。)にしておき、そのすぐ後の時刻t21にコントローラー29からリレー駆動回路30にリレー駆動信号が出力され、リレーも導通状態にして、さらにそのすぐ後の時刻t22に位相制御駆動信号を停止させてトライアックを非導通状態にしている。つまり、時刻t2からt22の間にスイッチ手段22をトライアックからリレーに切り替えている。
【0079】
また、この期間は、トライアック完全導通状態であるため、期間が長くなるほど整流子が転流を繰り返す回数が増え、温度もより上昇する。一方、前記印加電圧の降圧は、時刻t3から開始している。この状態は、例えば「冷蔵庫の庫内温度が所要の温度まで下がったため、低速運転に切り替える。」といったような状態である。印加電圧の降圧についても、昇圧の場合と同様に、トライアックの位相制御によって行うため、降圧を開始する前に、スイッチ手段22をリレーからトライアックに切り替える必要がある。
【0080】
そこで、時刻t32に位相制御駆動信号によりトライアックを完全導通状態にして、そのすぐ後の時刻t33にリレー駆動信号によりリレーを非導通状態にして、さらにそのすぐ後の時刻t3に位相制御駆動信号によりトライアックを位相制御して前記印加電圧の降圧を開始する。
【0081】
そして時刻t4に、前記印加電圧が全波整流電圧まで降圧され、位相制御駆動信号を停止することにより、トライアックを非導通状態にする。この様な動作をまとめると、変圧するときにはトライアックを駆動し、変圧しないときにはリレーを駆動するといったようにスイッチ手段22を切り替えることになる。
【0082】
したがって、トライアックだけでは時刻t2からt3までの長時間に渡って完全導通状態を継続する必要があったが、前記印加電圧が倍電圧のままで変圧されない期間はリレーに切り替えることによって、完全導通状態は、時刻t2からt22とt32からt3という極めて短い時間に短縮することができ、トライアック(整流子)の転流繰り返し時間を大幅に短縮することで、スイッチ手段22における温度上昇の著しい抑制がが実現できる。また、図5において、時刻t3の直前にリレーを駆動し、その直後にトライアックを非導通状態にすれば、時刻t3からt32の間の完全導通状態もなくすことができるため、さらなる温度上昇の抑制を実現できる。
【0083】
【発明の効果】
以上説明したように発明は、負荷用電力供給モジュールに印加する電圧を滑らかに変圧することで、変圧に用いるスイッチ手段に流れる突入電流を軽減し、スイッチ手段の小型化、コストダウンができる。また、印加電圧の変圧時間を調整する変圧速度制御をして、電動機の回転速度に対して最適な時間となるように変圧速度を制御することにより、例えば、電動機が発生する騒音等があまり問題とならない低速運転時(停止時も含む。)に、急速な冷凍要求を受けた場合には、比較的短い時間で変圧を行うことにより迅速に応答できる。
【0084】
また、上記構成において電動機運転中に前記印加電圧を滑らかに降圧すれば、電動機の降圧速度よりも遅く降圧させ、逆電流発生を防止することができるので、回路の信頼性を向上でき、また、電動機運転中に前記印加電圧を滑らかに昇圧すれば、コントローラーが追従できないほどの回転数の乱れを防止することができるので、電動機が発生する騒音を抑制できる。また、倍電圧整流後の電圧を負荷用電力供給モジュールに継続的に印加する場合、発熱量の大きなスイッチ手段から、発熱量の小さいスイッチ手段に切り替えることによって、温度上昇を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例におけるインバーター装置の構成図
【図2】本発明の実施例におけるインバーター装置の特性図
【図3】本発明の実施例におけるインバーター装置の特性図
【図4】本発明の実施例におけるインバーター装置のフローチャート
【図5】本発明の実施例におけるインバーター装置のタイムチャート
【図6】従来のインバーター装置の構成図
【符号の説明】
21…整流回路
22…スイッチ手段
23…平滑回路
24…負荷用電力供給モジュール
25…電動機
26…ゼロクロス検出回路
27…トライアック駆動回路
28…印加電圧検出回路
29…コントローラー
30…リレー駆動回路
31…位置検出回路

Claims (4)

  1. 一定電圧の入力交流電力を直流電力に変換する整流・平滑回路と、前記整流・平滑回路で変換された直流電力を所要の電力に変換して圧縮機用電動機などの負荷に供給する負荷用電力供給モジュールと、前記負荷用電力供給モジュールを駆動する駆動手段とを有するインバーター装置において、前記電力(負荷)によって前記負荷用電力供給モジュールに印加する電圧を全波整流から倍電圧整流(無負荷時において約140〜約280V)の範囲で変化させる際に、入力交流電圧のゼロクロス検出回路と、その検出信号をもとに位相制御によって駆動するスイッチ手段とを用いて、前記印加電圧を滑らかに変化させ、かつ、前記電動機の回転数によって、変圧時間を調整する変圧速度制御をすることを特徴とするインバーター装置。
  2. 負荷の大小によって負荷用電力供給モジュールに印加する電圧を全波整流から倍電圧整流の範囲で変化させる際に、運転中の電動機の回転速度をより低速になるよう印加電圧を降圧するために、スイッチ手段をオンする位相制御駆動信号の入力交流電圧に対する位相のすすみ具合を、入力交流電圧の四半周期から半周期の方向に徐々に大きくなるように位相制御を行うことで、前記印加電圧を滑らかに降圧制御することを特徴とする請求項1に記載のインバーター装置。
  3. 負荷の大小によって負荷用電力供給モジュールに印加する電圧を全波整流から倍電圧整流の範囲で変化させる際に、運転中の電動機の回転速度をより高速になるよう印加電圧を昇圧するために、スイッチ手段をオンする位相制御駆動信号の入力交流電圧に対する位相のすすみ具合を、入力交流電圧の半周期から四半周期の方向に徐々に小さくなるように位相制御を行うことで、前記印加電圧を滑らかに昇圧制御することを特徴とする請求項1に記載のインバーター装置。
  4. 倍電圧を継続的に負荷用電力供給モジュールに印加する際に、発熱量の違う2種類のスイッチ手段を用いて、前記印加電圧を変化させることを特徴とする請求項1に記載のインバーター装置。
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