JP3807233B2 - 光ディスク再生装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、音楽用、計算機のデータ用等に広く実用化されている光ディスクの内、いわゆるコンパクトディスク(以下CDと略す)の記録密度より高密度に信号が記録された高密度光ディスクに関わり、特に一枚の光ディスク基板中に2つの記録面を有する二層型光ディスクに関する
【0002】
【従来の技術】
CDに代表される光ディスクやCD再生装置等の光ディスク装置は、レーザダイオードから出射されたレーザ光をその回折限界まで絞り、絞られた光スポットを光ディスク上の位相ピット列に照射し、反射光量変化を検出することにより、光ディスクに記録された信号を再生するものである。このCDは直径が120mmで透明基板材質は一般にポリカーボネイト樹脂であり、その厚さは1.2mmである。CDを再生する光学式再生装置は光源として770〜780nmの近赤外光のレーザダイオードを用い、レーザ光を光ディスク上に集光する対物レンズの開口数(NA)は一般に0.45程度である。
【0003】
一方、近年のレーザダイオードの進歩はめざましく、波長630〜690nmの赤色光のレーザダイオードが実用化され、開口数0.55〜0.6の対物レンズとの組み合わせにより、現在のCDに対して3〜4倍の記録密度を有する高密度光ディスクが提案されている(例えば、1993年電子情報通信学会秋季大会、講演番号C−364「赤色レーザピックアップを用いた高密度CD−ROMの検討」)。
【0004】
さらに、記録容量を2倍にするために、CDの半分の厚さの光ディスクの記録面同士を貼り合わせた貼り合わせ型光ディスクや、一枚の光ディスク中に記録面を2つ設けた2層型光ディスクなども提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
2層型光ディスクの場合、異なる2つの記録面に記録している信号を再生するために、各々の記録面にリードイン及びリードアウトを設けなければならない。CDと同様に最内周にリードイン、最外周にリードアウトを設けると、光ディスク装置にとっては異なる2枚の光ディスクを再生することと等価となる。従って、一方の記録面の再生が終了した後、一度トラッキング及びフォーカス制御を外して最内周に光ピックアップを移動し、再度フォーカス及びトラッキング制御を行い、スピンドルモータの回転数をPLL制御しなければならない。従って、再生面の変更に時間がかかるという問題が生じる。
【0006】
さらに、光ディスク装置から出射された集束光が、光ディスク基板を透過すると、球面収差が発生する。これを防ぐために通常、光ディスク基板で生じる球面収差を打ち消すだけの球面収差を光ピックアップであらかじめ発生させておく。この球面収差の大きさは、光ディスク基板厚さに関係する。よって、光ディスク装置の光ピックアップを設計する段階で、その最適基板厚さを想定しなければならない。しかし、2層型光ディスクの場合、異なる基板厚さの光ディスクが2枚あることと等価であり、これを想定した光ピックアップを用いなければならないという課題もある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
2層型光ディスクの一方の記録面に対しては、CDと同様にリードインを最内周に、リードアウトを最外周に設け、もう一方の記録面に対しては、CDとは逆にリードインを最外周に、リードアウトを最内周に設けることによって、光ピックアップの移動する軌跡が連続するようにした。
【0008】
また、光ピックアップを設計する際に定める対物レンズからみたときの最適基板厚さを、
a<t<(a+b)
ここで、a:第1の基板の厚さ
b:第2の基板の厚さ
t:対物レンズからみたときの最適基板厚さ
と定めた。
【0009】
【作用】
2層型光ディスクの一方の記録面に対して、リードインを最内周に、リードアウトを最外周に設け、他方の記録面に対しては、その逆にリードイン及びリードアウトを設けることにより、一方の記録面の再生終了後、光ピックアップがほとんど移動することなく、もう一方の記録面でフォーカス及びトラッキング制御の動作が可能となる。また、記録面が変わっても線速度の変化はほとんど無いため、スピンドルモータの回転数は、記録面変更前の状態を維持していれば良い。
【0010】
光ピックアップ中の対物レンズからみたときの最適基板厚さを、2つの異なる厚さの中間付近に定めることで、2つの記録面に対して十分な性能を示す光ピックアップが構成できる。また、薄い方の基板厚さをCDと同程度に定めるならば、2層型光ディスク用の光ピックアップによって、最も広く用いられているCDも再生可能となる。
【0011】
【0012】
【実施例】
以下に本発明による2層型光ディスク及び光ディスク装置の詳細について説明する。
【0013】
図1は、本発明の第1の実施例を示す2層型光ディスクである。図1の(a)は、光ディスクの右側半分の断面図であり、図1(b)は、その部分拡大図である。光ディスク1は、基板2、基板3及び保護膜で形成されている。ただし、ここでは保護膜は省略している。基板2の厚さをa、基板3の厚さをbとする。図1に示す光ディスクは2つの記録面A及びBが設けられ、各々記録面に対してリードイン101及び111とリードアウト102及び112が設けられている。通常、CD等の光ディスクは、内周から外周に向けてデータがスパイラル状に記録され、内周側からリードイン、データ(音、映像、etc)、リードアウトを構成している。それに対して、本発明の光ディスクは、2つの異なる記録面を連続的に再生する際、光ピックアップが閉じた軌跡を移動ように、記録面Bのリードインを外周側に、リードアウトを内周側に設けている。ここで、光は基板2側から入射する。
【0014】
図2は、記録面B側から見た位相ピット列の形状を示し、図2(a)は記録面A、図2(b)は記録面Bを示している。記録面Aの位相ピット列21は、CDと同じ内周側から時計回りのスパイラル状に形成されているのに対して、記録面Bの位相ピット列22は、記録面Aとは逆に、外側から時計回りのスパイラル状に形成されている。位相ピット列を図2のように形成することで、スピンドルモータの回転方向を変えずに、記録面Aの内周側から外周側、記録面Bの外周側から内周側への一連の再生が可能となる。
【0015】
図3は、本発明の2層型光ディスクを再生している様子を示す。図3で示す2層型光ディスクは、記録面Aの内周側及び記録面Bの外周側にリードイン101及び111、記録面Aの外周側及び記録面Bの内周側にリードイン102及び112が設けられている。光ディスク1が光ディスク装置に挿入され、信号再生を開始すると、光ピックアップ31は軌跡T1を描くように移動する。まず記録面A上に光ピックアップ31から出射したレーザ光が集光するように、フォーカス制御が行われ、トラッキング制御及びリードイン101の読み込みと進行する。光ピックアップ31は記録面Aのデータ領域121を再生し、リードアウト102へと進む。記録面Aの再生終了後、トラッキング及びフォーカスの制御を外し、記録面B上に光ピックアップ31のフォーカス制御を行う。この時、制御回路は最初の制御点を通過し、二度目の制御点において制御をかける機構を有する必要がある。
【0016】
図4は、本発明の光ディスク装置における制御系のブロック図である。図4(a)にブロック図、(b)にジャンプパルス波形を示す。図4において、回路等を構成しているものには、その名称が付けられており、番号60から78は、信号線を示す。全体的な構成は一般的に用いられている光ディスク装置に準ずるものである。以下に本発明における制御系にする詳細を記す。
【0017】
再生中に再生する記録面を記録面Aから記録面Bに変更する場合、ジャンプパルス発生回路54から駆動回路55に図4(b)の上に示すような上方へアクチュエータを動かす+パルスとブレーキをかけるための−パルスを印加する。記録面B付近にてフォーカス誤差信号のSカーブにおけるゼロクロス点をゼロクロス検出回路49によって検出し、フォーカス制御のループを閉じる。一方、記録面Bから記録面Aへの変更の場合、図4(b)下に示すジャンプパルスが駆動回路55に印加される。
【0018】
また、記録面を変更する際、フォーカス及びトラッキング制御を外している間に、モータ41の回転数のPLL制御も外れてしまう可能性がある。これを防ぐために、ホールド回路46を設けた。ホールド回路46で、記録面を変更する前の回転数を保持し、光ピックアップ31が記録面B上に移動し、フォーカス及びトラッキング制御をおこなうまでの間、そのホールド回路46に保持した回転数でモータ41を制御する。
【0019】
さらに、2層型光ディスクと既存のCDとを光ディスク装置側で判別できる必要がある。2層型光ディスクの場合、記録面Aを通過して記録面Bを再生しなければならないため、光ピックアップ31に戻ってくる総光量が、CDに対して半分以下になる。従って、CDと2層型光ディスクの各々に対してしきい値を設け、総光量検出回路52で検出した総光量を比較器53において各々のディスクに対して定めたしきい値と比較することで、どちらの光ディスクが挿入されているかを判別することにした。
【0020】
また、光ディスクでは透明な基板を通してレーザ光を集光し、光ディスクの信号面上の光スポットで記録ピットを読みとっている。しかし集束光が基板を通過するときに球面収差が発生する(例えば、W.J.Smith : Modern Optical Engineering , McGraw-Hill Book Company , New York , 1966 , Chap.4.8 )。そこで、あらかじめレーザ光を集光する対物レンズに、基板で発生する球面収差とは逆の球面収差を与えておき、レーザ光束が基板を通過した時に球面収差が互いに打ち消すようにしている。このため、光ディスクの基板は対物レンズの一部と見なすことができる。
【0021】
一般に光ディスク基板は、ポリカーボネイト樹脂の射出成形により製作するために厚さの誤差は避けられない。基板の厚さが、対物レンズが想定している基板厚さ(対物レンズからみたときの最適厚さ)からずれると、上記理由より球面収差が発生する。発生する球面収差のうちでそのほとんどの成分を占める3次球面収差の2乗平均値(W)は、
【0022】
【数1】
【0023】
Δt:ディスク基板の厚さ誤差
n:ディスク基板の屈折率
NA:対物レンズの開口数
λ:レーザ光の波長
である。
【0024】
ここで、ディスク基板であるポリカーボネイト樹脂の屈折率nを1.58、対物レンズの開口数NAを0.52、レーザ光の波長λを0.635μmとしたときのディスク基板の厚さ誤差に対する光スポットに発生する3次球面収差の関係を図5に示す。一般に正確な再生信号を得るためには球面収差は0.03λrms以下が望ましく、上記した条件では図5よりディスク基板の厚さ誤差は70μm以下が望ましい。
【0025】
図1に示した2層型光ディスクの基板2の厚さaの中心値をCDと同じ1.2mm、基板2の厚さ誤差を±30μm、記録面Aと記録面Bの間隔b(基板3の厚さにほぼ等しい)を40μmとする。ここで、対物レンズの想定するディスク基板の厚さ(対物レンズからみたときの最適基板厚さ)をa(=1.2mm)とすると記録面Bを再生するときは対物レンズから見た基板の厚さ誤差が最大70μmとなる。また、上記した対物レンズからみたときの最適基板厚さをa+b(=1.24mm)とすると記録面Aを再生するときの対物レンズから見た基板の厚さ誤差は同じく最大70μmとなり、ともに3次球面収差は許容値内となる。以上の説明より、対物レンズの最適基板厚さが下記の式を満足する範囲であれば3次球面収差は許容値内となる。
【0026】
a<対物レンズからみたときの最適基板厚さ<(a+b) …(2)
また、記録面Aと記録面Bにおける3次球面収差の発生量をほぼ等しくするには、
対物レンズからみたときの最適基板厚さ ≒ a+b/2 …(3)
とすれば良い。
【0027】
更に、基板2の厚さ誤差が±40μm、記録面Aと記録面Bとの間隔bが40μmの場合は、
(a+b/4)<対物レンズからみたときの最適基板厚さ<(a+3b/4)…(4)
とすれば良い。以上、基板2の厚さ誤差、基板3の厚さ、3次球面収差の許容値により、対物レンズからみたときの最適基板厚tの範囲は異なるものの、何れの場合においても、その範囲は上記の式(2)の範囲にある。
【0028】
尚、実際の対物レンズの最適基板厚さを知るには、レーザ干渉計(例えばトワイマン・グリーン干渉計)により対物レンズの球面収差を測定すれば良い。この時、対物レンズにより集束される光束中に厚さの異なる平行平板を挿入し、球面収差が最小となる平行平板の厚さが、その対物レンズからみたときの最適基板厚さである。
【0029】
次に、本発明の光ディスク装置が広く普及しているコンパクトディスク(以下CDと略す)も再生する場合の2層型光ディスクの各基板の厚さについて説明する。CDは単層の光ディスクであり、ディスク基板の厚さの中心値は1.2mmである。このため、対物レンズの最適基板厚さは、一般に1.2mmとしている。そこで、図1に示す2層型光ディスクの基板2の厚さaの中心値と基板3の厚さbとは、
a+b/2≒1.2mm
となるようにすれば良い。b=40μmの場合は、a=1.18mmである。
【0030】
図6は、本発明の第2の実施例の2層型光ディスクを再生している様子を示す。図6で示す2層型光ディスクは、記録面Aの外周側及び記録面Bの内周側にリードイン101及び111、記録面Aの内周側及び記録面Bの外周側にリードアウト102及び112が設けられている。図6に示す本発明の第2の実施例の2層型光ディスク上に記録されている位相ピット列は、図2で示した形状と逆になる。つまり、記録面Bが図2(a)、記録面Aが図2(b)と同様となり、記録面B→Aの順に再生する仕様である。よって、光ディスク装置の光ピックアップ31はT2の軌跡を描くように移動する。このような構成にすると、記録面Bから記録面Aへ光ピックアップ31は下方に移動するので、フォーカス制御の制御点をカウントせずに、次に現れる制御点でフォーカス制御を開始すれば良い。
【0031】
図7は、本発明の第3の実施例を説明する図である。図7は第2の記録面上の位相ピット列の形状のみを示す。ここで、第1の記録面は図2(a)と同様とし、また、各記録面のリードイン及びリードアウトは、図3に従うとする。つまり、第3の実施例は、一方の記録面の最内周と他方の記録面の最外周にリードインがあり、一方の記録面の最外周と他方の記録面の最内周にリードインが設けられているが、位相ピット列の形成するスパイラル形状が両記録面共同じ方向であることが特徴である。
【0032】
上記実施例における記録面2では、まずS2からS1まで一周分の信号を再生する。その後、トラックジャンプを内周側へ2回だけ行い、光ピックアップをS4まで移動し、S3まで一周分の信号を再生する。同様な動作を一周再生毎に繰り返す。つまり、広義的にみれば最外周から内周へ向けて再生するが、一周毎に内周側へのトラックジャンプを伴いながら、記録面1と同様に外周側へ再生するということである
【0033】
【発明の効果】
本発明の2層型光ディスクは、一方の記録面の最内周にリードイン、最外周にリーヂアウトを設け、もう一方の記録面の最外周にリードイン、最内周にリードアウト設けることによって、光ディスク装置中の光ピックアップが記録面を変更する際もほとんど動かず、スピンドルモータの回転数は記録面変更前の状態を保つことができる。
【0034】
また、光ディスク装置に用いられる光ピックアップの最適基板厚さに許容範囲を持たせることで、異なる2つの厚さの基板を再生可能となる。更に、CDの基板厚さがこの許容範囲内であれば2層型光ディスク用の光ピックアップでCDをも再生できる。
【0035】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例を示す2層型光ディスクである。
【図2】光ディスク上に記録している位相ピット列の形状を示す図である、
【図3】2層型光ディスクを再生している様子を示す図である。
【図4】光ディスク装置における制御系のブロック図である。
【図5】ディスク基板厚さと3次球面収差の関係を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施例を示す2層型光ディスクである。
【図7】本発明の第3の実施例を説明する図である。
Claims (1)
- 第1の面と第2の面を有し該第2の面に記録面Aを備えた第1の基板と、第3の面と第4の面を有し該第4の面に記録面Bを備えた第2の基板とが、第1の面、第2の面、第3の面、第4の面の順となるように配置され、前記記録面 A には、内周側のリードインとデータ領域が設けられており、前記記録面 B には、データ領域と外周側のリードアウトが設けられた光ディスクの再生装置であって、
前記光ディスクの第1の面からレーザ光を入射させ前記記録面Aまたは前記記録面Bに記録された信号を選択的に再生するためのレーザ光源と、
前記レーザ光源の出射する光束を集光する対物レンズと、
前記対物レンズをフォーカス方向に駆動するアクチュエータと、
所定の記録面に光の焦点が合うように前記アクチュエータを制御するフォーカス制御回路と、
前記アクチュエータにジャンプパルスを供給するジャンプパルス発生回路と、
前記光ディスクからの反射光からフォーカス誤差信号を検出するフォーカス誤差信号検出手段と、
該フォーカス誤差信号検出手段の出力のSカーブからゼロクロス点を検出するゼロクロス検出回路と、
を具備しており、
前記記録面Aから前記記録面Bに光の焦点をジャンプさせるときに、前記フォーカス制御回路によるフォーカス制御を外し、前記ジャンプパルス発生回路が発するジャンプパルスに基づいて前記アクチュエータを制御し、最初のフォーカス誤差信号ゼロクロス点を通過し、二度目のフォーカス誤差信号ゼロクロス点においてフォーカス制御をかけるよう前記フォーカス制御回路を制御して、記録面Bに光の焦点をジャンプさせ記録面Bを再生し、
前記対物レンズは、該対物レンズから出射された集束光が下記式を満たす厚さtの光ディスクを透過して生ずる球面収差を最小とすることを特長とする光ディスク再生装置。
a<t<(a+b)
ここで、a:第1の基板の厚さ
b:第2の基板の厚さ
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