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JP3807127B2 - シリコン系薄膜の形成方法 - Google Patents

シリコン系薄膜の形成方法 Download PDF

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JP3807127B2
JP3807127B2 JP31895598A JP31895598A JP3807127B2 JP 3807127 B2 JP3807127 B2 JP 3807127B2 JP 31895598 A JP31895598 A JP 31895598A JP 31895598 A JP31895598 A JP 31895598A JP 3807127 B2 JP3807127 B2 JP 3807127B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はプラズマCVD法によるシリコン系薄膜の形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
シリコン系薄膜としては、シリコン薄膜、酸化シリコン薄膜、窒化シリコン薄膜等が知られており、これらには様々の用途がある。
シリコン薄膜は、液晶表示装置における画素に設けられるTFT(薄膜トランジスタ)スイッチの材料として、或いは各種集積回路、太陽電池等の作製に採用されている。また、酸化シリコン薄膜や窒化シリコン膜は電気絶縁性膜として利用されている。
【0003】
シリコン薄膜を例にとると、該薄膜は多くの場合、シラン系反応ガスを用いたプラズマCVD法により形成され、その場合、該薄膜のほとんどはアモルファスシリコン薄膜である。
アモルファスシリコン薄膜は、被成膜基体の温度を比較的低くして形成することができ、平行平板型の電極を用いた高周波放電(周波数 13.56MHz)による材料ガスのプラズマのもとに容易に大面積に形成できる。このことから、これまで液晶表示装置の画素用スイッチングデバイス、太陽電池等に広く利用されている。
【0004】
しかし、シリコン膜利用の太陽電池における発電効率のさらなる向上、シリコン膜利用の半導体デバイスにおける応答速度等の特性のさらなる向上はかかるアモルファスシリコン膜に求めることはできない。そのため結晶性シリコン薄膜の利用が検討されている。
結晶性シリコン薄膜の形成方法としては、被成膜基体の温度を600℃〜700℃以上の温度に維持して低圧プラズマCVD、熱CVD等のCVD法や、真空蒸着法、スパッタ蒸着法等のPVD法により形成する方法、各種CVD法やPVD法により比較的低温下でアモルファスシリコン薄膜を形成した後、後処理として、800℃程度以上、例えば1000℃程度の熱処理若しくは600℃程度で長時間にわたる熱処理を該アモルファスシリコン膜に施して形成する方法が知られている。
【0005】
また、アモルファスシリコン膜にレーザアニール処理を施して該膜を結晶化させる方法も知られている。
上記の他、モノシラン(SiH4 )、ジシラン(Si2 6 )等のシラン系ガスを水素やフッ化シリコン(SiF)などで希釈したガスのプラズマのもとで500℃程度以下の低温下に結晶性シリコン薄膜を直接形成する方法も提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらのうち基体を高温に曝す方法では、基体として高温に耐え得る高価な基体(例えば石英基板)を採用しなけれならず、例えば安価な低融点ガラス基板(耐熱温度500℃以下)への結晶性シリコン薄膜の形成は困難であり、そのため、結晶性シリコン薄膜の製造コストが基体コストの面から高くなるという問題がある。
【0007】
また、レーザアニール法によるときには、低温下で結晶性シリコン薄膜を得ることができるものの、レーザ照射工程を必要とすることや、非常に高いエネルギー密度のレーザ光を照射しなければならないこと等から、この場合も結晶性シリコン薄膜の製造コストが高くなってしまう。また、レーザ光を膜の各部に均一に照射することが難しく、レーザ照射中に水素が脱離することで膜表面が荒れるといった問題点があり、これらのことから良質の結晶性シリコン薄膜を得ることが難しい。
【0008】
シラン系ガスを水素やフッ化シリコン(SiF)などで希釈したガスのプラズマのもとで低温下に結晶性シリコン薄膜を直接形成する方法では、シラン系ガスを水素ガス等で希釈して使用するので、膜堆積速度が大幅に低下するという問題がある。
また、シリコン系薄膜を形成する場合であれ、酸化シリコン膜等を形成する場合であれ、被成膜基体上に直接膜形成すると、基体の汚染や表面欠陥の影響を大きく受けて膜質が悪化し易いという問題もある。
【0009】
そこで本発明は、比較的低温下で安価に、また、成膜速度の大幅な低下を招くことなく生産性よく結晶性シリコン薄膜を形成できる他、良質の電気絶縁性シリコン化合物薄膜なども形成できるシリコン系薄膜の形成方法を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため本発明者は研究を重ね次の知見を得た。
すなわち、シリコンスパッタターゲットを水素ガスプラズマでスパッタリングし、このスパッタリングされた原子と水素プラズマによる励起効果及び堆積膜表面と水素ラジカルの反応などにより被成膜基体上に膜を堆積形成すれば、従来のシラン系ガスを水素ガスで希釈したガスのプラズマのもとで形成されるシリコン薄膜と同様に、結晶性を示し、表面粗度の小さい、シリコンの水素終端された結合手が配向した表面を有する初期シリコン膜が形成される。そしてこの初期シリコン膜を形成したのち、該被成膜基体をシリコンを組成に含む所定の成膜用ガスのプラズマにさらすことで、該初期シリコン膜の上に、該初期シリコン膜の膜質と表面状態の影響を受けながら良質のシリコン系薄膜が堆積していく。しかも、全体として比較的低温下で膜形成できるとともに、水素ガス等で希釈された成膜用ガスを用いる場合のような大幅な成膜速度の低下を招くことなく生産性よく膜形成できる。
【0011】
本発明はかかる知見に基づくもので、前記課題を解決するため、シリコンスパッタターゲットを設けたチャンバ内に被成膜基体を設置し、該チャンバ内に水素ガスプラズマを形成し、該プラズマにて前記シリコンスパッタターゲットをスパッタリングして前記被成膜基体上に初期シリコン膜を形成する第1の工程と、前記初期シリコン膜が形成された被成膜基体を設置したチャンバ内にシリコンを組成に含む成膜原料ガス(換言すればシリコン原子を有する成膜原料ガス)のプラズマを形成し、該プラズマのもとで前記初期シリコン膜が形成された被成膜基体上に所定のシリコン系薄膜を形成する第2の工程とを含むシリコン系薄膜の形成方法を提供する。
【0012】
本発明に係る薄膜形成方法によると、良質のシリコン系薄膜を、比較的低温下で、生産性よく形成できる。
前記シリコン系薄膜を形成する第2の工程において、前記シリコンを組成に含む成膜原料ガスとしてシリコン薄膜形成のためのガス、例えば、シラン系反応ガス〔例えばモノシラン(SiH4 )、ジシラン(Si2 6 )、トリシラン(Si3 8 )〕や、四フッ化シリコン(SiF4 )ガス、四塩化シリコン(SiCl4 )ガス、ジクロルシラン(SiH2 Cl2 )ガス等を採用すれば、表面荒れが少なく均一である、良質の結晶性シリコン薄膜を形成できる。
【0013】
また、前記シリコン系薄膜を形成する第2の工程において、前記シリコンを組成に含む成膜原料として、電気絶縁性シリコン化合物膜を形成するためのガスを採用すれば、そのような薄膜を良質に形成できる。例えば、前記シリコンを組成に含む成膜原料ガスとして、酸素ガスを含むガスを採用すれば、電気絶縁性良好な酸化シリコン膜(SiO2 )を形成することができ、窒素ガス或いはアンモニアガスを含むガスを採用すれば、電気絶縁性良好な窒化シリコン膜(SiX y )を形成でき、N2 Oガスを含むガスを採用すれば電気絶縁性良好な酸窒化シリコン膜(SiOX y 又はSiOX +SiX y )を形成することができる。
【0014】
前記初期シリコン膜を形成する第1の工程を実施するに際しては、次の(1) から(3) の点に留意する。特にシリコン系薄膜を形成する第2の工程において、前記シリコンを組成に含む成膜原料ガスとしてシリコン薄膜形成のためのガスを用いて結晶性シリコン薄膜を形成する場合、次の(1) から(3) の点に留意する。すなわち、
(1) 前記初期シリコン膜を形成する第1の工程においては、初期シリコン膜の結晶性を高めるために(或いはその後第2工程でシリコン薄膜を形成する場合にはそのシリコン薄膜の結晶性もを高めるために)、20Å以上の膜厚で初期シリコン膜を形成する。しかし、スパッタリングによる初期膜形成には時間がかかるから、膜生産性の低下を招かないために、初期膜の膜厚は50Å程度に止めておくことが望ましい。
(2) 前記初期シリコン膜を形成する第1の工程における前記水素ガスプラズマは、プラズマ中の水素分子発光(602nm)強度と水素原子発光(656nm)強度の比(水素分子発光強度/水素原子発光強度)が0.5以上となるように形成する。
【0015】
このように発光強度比が0.5以上になるように水素ガスプラズマを制御することで、結晶性良好な初期シリコン膜を形成できる。
発光強度比の上限については、強度比を向上させる方法の一つとしてプラズマ生成パワーを上げることがあるが、分子の励起以上に原子への分解励起が促進されることなどから、例えば10程度を挙げることができる。
(3) 前記初期シリコン膜を形成する第1の工程における水素ガスプラズマは、ガス圧が10mTorrから50mTorrの範囲で形成する。
【0016】
ガス圧が10mTorrより著しく小さくなると、シリコン膜の結晶性は向上しないばかりか、水素ガスプラズマが不安定になる。ガス圧が50mTorrより高くなると結晶性が低下する。
シリコン薄膜、酸化シリコン薄膜、窒化シリコン薄膜等のいずれを形成する場合であれ、前記初期シリコン膜を形成する第1の工程と前記所定のシリコン系薄膜を形成する第2の工程とは同じチャンバ内において連続的に実施することもできるし、別々のチャンバで実施することもできる。同じチャンバ内で実施すると、形成される膜への不純物の付着や混入、膜表面の不必要な酸化等がそれだけ抑制され、それだけ良質の膜を形成できる。
【0017】
また、水素ガスから所定の成膜用ガスへの置換を円滑に行い、プラズマを一旦消滅させることがなければ、プラズマの乱れをプラズマ点灯時の場合より小さく抑制してそれだけ良質の薄膜を形成できる利点もある。
また、いずれにしても、前記第1の工程で使用するシリコンスパッタターゲットは、様々の状態で提供できる。例えば第1工程を実施するチャンバ内の前記水素ガスプラズマに触れる部分(例えば、プラズマに触れ易いチャンバ内壁)の全部又は一部をシリコン膜形成、シリコンウエハの貼着、シリコン片の付設等によりシリコンで覆ってシリコンスパッタターゲットにしてもよい。別途独立したシリコンスパッタターゲットを設置してもよい。
【0018】
また、前記初期シリコン膜を形成する第1の工程における水素ガスプラズマを、該プラズマを形成する前記チャンバ内に設置した高周波電極からの放電により形成するようにし、該高周波電極は表面の全部又は一部をシリコン膜で覆って前記シリコンスパッタターゲットの少なくとも一部としてもよい。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明に係るシリコン系薄膜形成方法を実施する薄膜形成装置の1例の概略構成を示している。
図1に示す薄膜形成装置Aは、成膜チャンバ1、チャンバ1内に設置された基板ホルダ2、該チャンバ1内において基板ホルダ2の上方領域において左右に設置された一対の放電電極3、各放電電極3にマッチングボックス41を介して接続された放電用高周波電源4、チャンバ1内に水素ガスを供給するためのガス供給装置5、チャンバ1内にシリコンを組成に含む(シリコン原子を有する)成膜原料ガスを供給するためのガス供給装置6、チャンバ1内から排気するためにチャンバ1に接続された排気装置7、チャンバ1内に生成されるプラズマ状態を計測するための発光分光計測装置8等を備えている。
【0020】
図示を省略した制御部も設けられており、該制御部は、発光分光計測装置8による検出情報に基づいて電源4による投入電力、ガス供給装置5からの水素ガス供給及びチャンバ1内の成膜圧力のうち少なくとも一つを所定の水素ガスプラズマ状態を得るように制御できる。なお、これら全体は図示を省略したホストコンピュータの指示に基づいて動作する。
【0021】
基板ホルダ2は基板加熱用ヒータ2Hを備えている。
電極3はその内側面に予めシリコン膜31を設けてあり、また、チャンバ1の天井内面等にも予めシリコン膜31を設けてあり、これらシリコン膜31はシリコンスパッタターゲットとして使用される。
電源4は出力可変の電源であり、周波数60MHzの高周波電力を供給できる。なお、周波数は60MHzに限らず、例えば13.56MHz程度から数100MHzの範囲のものを採用できる。
【0022】
チャンバ1及び基板ホルダ2はともに接地されている。
ガス供給装置5は水素ガス源の他、図示を省略した弁、前記制御部からの指示により流量調整を行うマスフローコントローラ等を含んでいる。
ガス供給装置6はここではモノシラン(SiH4 )ガス等を供給できるもので、SiH4 等のガス源の他、図示を省略した弁、制御部からの指示により流量調整を行うマスフローコントローラ等を含んでいる。
【0023】
排気装置7は排気ポンプの他、制御部からの指示により排気流量調整を行うコンダクタンスバルブ等を含んでいる。
発光分光計測装置8は、ガス分解による生成物の発光分光スペクトルを検出し、水素分子発光(602nm)強度と水素原子発光(656nm)強度の比(水素分子発光強度/水素原子発光強度)を求めることができるものである。
【0024】
図1に示す薄膜形成装置による例えばシリコン薄膜の形成は次のとおりである。
先ず第1工程として、チャンバ1内の基板ホルダ2に被成膜基板Sを設置し、ヒータ2Hにて500℃以下の温度、例えば400℃に加熱する。また、排気装置7の運転にてチャンバ1内を初期シリコン膜形成のための真空圧力に維持するとともにチャンバ1内にガス供給装置5から水素ガスを導入し、電源4から放電電極3に高周波電力を印加し、導入した水素ガスをプラズマ化する。
【0025】
この水素ガスプラズマは、チャンバ1内ガス圧を10mTorr〜50mTorrの範囲内に維持して形成し、且つ、前記発光分光計測装置8による検出情報に基づいて、水素分子発光(602nm)強度と水素原子発光(656nm)強度の比(水素分子発光強度/水素原子発光強度)が0.5以上になるように制御する。この制御は、水素ガスのチャンバ1内への供給量、放電電極3へ印加する高周波電力等のうち少なくとも一つの制御により行う。
【0026】
そして該水素ガスプラズマにて電極3内側面やチャンバ1の天井内面等におけるシリコン膜31をスパッタリングし、それにより被成膜基板S表面に初期シリコン膜Sia(図2参照)を小さい膜厚で、しかし20Å以上の膜厚で形成する。 この初期シリコン膜Siaは、従来のシラン系ガスを水素ガスで希釈したガスのプラズマのもとで形成されるシリコン薄膜と同様に、結晶性を示し、表面粗度は小さく、シリコンの水素終端された結合手が配向した表面を有する。
【0027】
次に、ガス供給装置5からの水素ガスの供給を停止させる一方、引き続き第2の工程として、チャンバ1内を第2工程のための所定の真空圧力に維持したまま、また、電極3に高周波電力を印加したまま、ガス供給装置6からモノシランガスをチャンバ1内へ供給する。導入したモノシランガスを電極3からの放電によりプラズマ化し、このプラズマのもとに初期シリコン膜Sia上にシリコン膜Sib(図2参照)を堆積させる。
【0028】
このシリコン膜は、初期シリコン膜Siaの膜質と表面状態の影響を受けながら結晶性シリコン膜となる。
かくして、全体として比較的低温下で膜形成できるとともに、従来のように水素ガス等で希釈されたシラン系ガスを用いる結晶性シリコン膜の形成の場合のような大幅な成膜速度の低下を招くことなく生産性よく良質の結晶性シリコン薄膜が形成される。
【0029】
なお、ガス供給装置6としてシリコンを組成に含む成膜原料ガスであって酸素ガスを含むガスを供給できるものを採用して、初期シリコン膜Siaの上に電気絶縁性良好な酸化シリコン膜((SiO2 )を形成したり、シリコンを組成に含む成膜原料ガスであって窒素ガス或いはアンモニアガスを含むガスを供給できるものを採用して、電気絶縁性良好な窒化シリコン膜(SiX y )を形成したりもできる。さらにN2 Oガスを含むガスを供給できるものを採用して電気絶縁性良好な酸窒化シリコン膜(SiOX y 又はSiOX +SiX y )を形成することもできる。
【0030】
図3は本発明に係るシリコン系薄膜形成方法を実施する薄膜形成装置の他の例の概略構成を示している。
図3に示す薄膜形成装置Bは、マルチチャンバ型の薄膜形成装置であり、図1に示す薄膜形成装置Aにおいてガス供給装置6を取り去った薄膜形成装置A’と、従来からの通常のプラズマCVDを実施するプラズマCVD装置A”と、外部と基板の受渡しを行うためのチャンバ9とを、これらに共通の中央基板搬送チャンバ10の周囲にゲート弁V1、V2、V3を介して気密に接続したものである。中央基板搬送チャンバ10には、装置A’、装置A”、チャンバ9のそれぞれと基板の受渡しを行うための搬送ロボットR(概略図示)が設置されている。
【0031】
図3の装置Bによると、被成膜基板Sは、当初、チャンバ9及び中央基板搬送チャンバ10を介して薄膜形成装置A’に搬入され、ここで、図1の装置の場合と同様にして基板面上に初期シリコン膜Siaが形成される。その後該基板は中央基板搬送チャンバ10を介してプラズマCVD装置A”内に搬入され、ここで成膜用ガスとして例えばシラン系ガスを採用すれば、そのプラズマのもとに初期シリコン膜Sia上にシリコン薄膜が形成される。このシリコン薄膜も、初期シリコン膜Siaの膜質と表面状態の影響を受けながら結晶性シリコン薄膜Sibとなる。なお、プラズマCVD装置A”において、成膜原料ガスを適宜選択することで酸化シリコン膜等の絶縁性シリコン化合物膜等も形成できる。
【0032】
図1に示す薄膜形成装置Aの場合、同じチャンバ1内で初期シリコン膜Siaを形成し、これに連続して結晶性シリコン薄膜Sib等を形成できるから、形成される膜への不純物の付着や混入、膜表面の不必要な酸化等がそれだけ抑制され、それだけ良質の膜を形成できる。
また、水素ガスから所定の成膜用ガスへの置換を円滑に行い、プラズマを一旦消滅させなければ、プラズマの乱れをプラズマ点灯時の場合より小さく抑制してそれだけ良質の薄膜を形成できる利点もある。
【0033】
一方、図3に示す装置Bによると、装置A’で第1工程を実施して初期シリコン膜を形成中に、装置A”でも第2工程を実施して膜形成できるから、従来の膜形成と同程度のスループットを実現できる。
次に結晶性シリコン薄膜の形成の実験例について説明する。
実験例1
図3に示す装置Bによる結晶性シリコン薄膜形成。
【0034】
装置A’による第1工程
電源 60MHz、 800W
被成膜基板 ガラス基板
成膜時の基板温度 400℃
成膜圧力 2mTorr
水素ガス供給量 80sccm
2分間実施により膜厚 40Å
発光強度比 0.5
装置A”による第2工程
電源 60MHz、 800W
成膜時の基板温度 400℃
成膜圧力 5mTorr
(SiH4 )ガス供給量 30sccm
成膜速度 100Å/分
膜厚 500Å
第2工程で得られたシリコン薄膜の結晶性をレーザラマン分光法により評価したところ、図4のラマンスペクトル101に示されるように、ラマンシフト520cm-1の結晶性を示すピークが出現し、結晶性が確認された。
実験例2
図1に示す装置Aによる結晶性シリコン薄膜形成。
【0035】
第1工程
電源4 60MHz、 800W
被成膜基板 ガラス基板
成膜時の基板温度 400℃
成膜圧力 2mTorr
水素ガス供給量 80sccm
2分間実施により膜厚 40Å
発光強度比 0.5
プラズマ点灯維持のままによる第1工程に連続する第2工程の実施
電源4 60MHz、 800W
成膜時の基板温度 400℃
成膜圧力 5mTorr
(SiH4 )ガス供給量 30sccm
成膜速度 100Å/分
膜厚 500Å
第2工程で得られたシリコン薄膜の結晶性をレーザラマン分光法により評価したところ、図4のラマンスペクトル102に示されるように、ラマンシフト520cm-1の結晶性を示すピークが出現し、結晶性が確認された。また、実験例1の場合よりもラマンシフト520cm-1の結晶性を示すピークが強く出現した。これは第1工程と第2工程をプラズマ点灯のまま連続して実施したことによるものと考えられる。
実験例3
図1に示す装置Aによる結晶性シリコン膜形成。
【0036】
第1工程
電源4 60MHz、 800W
被成膜基板 ガラス基板
成膜時の基板温度 400℃
成膜圧力 10mTorr
水素ガス供給量 80sccm
2分間実施により膜厚 40Å
発光強度比 0.7
プラズマ点灯維持のままによる第1工程に連続する第2工程の実施
電源4 60MHz、 800W
成膜時の基板温度 400℃
成膜圧力 5mTorr
(SiH4 )ガス供給量 30sccm
成膜速度 100Å/分
膜厚 500Å
第2工程で得られたシリコン薄膜の結晶性をレーザラマン分光法により評価したところ、図4のラマンスペクトル103に示されるように、ラマンシフト520cm-1の結晶性を示すピークが出現し、結晶性が確認された。また、実験例2の場合よりもラマンシフト520cm-1の結晶性を示すピークが強く出現した。これは第1工程の成膜圧力を10mTorrと高くしたことによるものと考えられる。
【0037】
なお、第1工程における成膜圧力を上げて同様の実験を行ってみたが、圧力が50mTorrより大きくなってきても、図4のラマンスペクトル103に示される程度と同程度の結晶性を示し、それより大きく向上することはなかった。
第1工程と第2工程を連続して行う場合、第1工程と第2工程とで圧力差が大きいと、工程の移り変わりのときのプラズマ状態が不安定になるから、第2工程での成膜圧力が1mTorrから10mTorrであることを考えると、第1工程での成膜圧力は10mTorr〜数10mTorrが適当である。
【0038】
また、実験例3における第1工程と同様にして、但し、成膜時間を種々かえて各種膜厚の初期シリコン膜を形成し、それぞれの初期シリコン膜における結晶性を調べたところ、図5に示す結果を得た。この実験によると、初期シリコン膜は成膜時間として略5分費やして膜厚が100Å程度以上になると結晶性が安定してくる。膜厚100Åのときの結晶化状態を100%として、これの70%程度の結晶化状態までは許容できるとして、そのときの膜厚を見ると、略20Åである。従って、結晶性向上効果を保ちつつ時間を短縮するには初期シリコン膜の膜厚は概ね20Å以上が好ましいと言える。
比較実験例1
図1の装置Aにより、第1工程を実施することなく、第2の工程のみを実施。
【0039】
電源4 60MHz、 800W
被成膜基板 ガラス基板
成膜時の基板温度 400℃
成膜圧力 5mTorr
(SiH4 )ガス供給量 30sccm
成膜速度 100Å/分
膜厚 500Å
発光強度比 0.2
得られたシリコン薄膜の結晶性をレーザラマン分光法により評価したところ、図4のラマンスペクトル100に示されるように、ラマンシフト520cm-1の結晶性を示すピークが出現せず、該シリコン薄膜はアモルファスシリコン薄膜であることが確認された。
【0040】
なお、この比較実験例と同様にして、但し、結晶性を示す程度まで、モノシランガスを水素ガスやSiFで希釈して膜形成してみたところ、成膜速度は50Å/分以下に低下した。
次に図1に示す装置による電気絶縁性シリコン化合物膜(ここでは酸窒化シリコン膜)形成の実験例4及び比較実験例2について説明する。
実験例4
図1に示す装置Aによる絶縁性シリコン化合物膜形成。
【0041】
第1工程
電源4 60MHz、 800W
被成膜基板 ガラス基板
成膜時の基板温度 400℃
成膜圧力 10mTorr
水素ガス供給量 80sccm
2分間実施により膜厚 40Å
発光強度比 0.7
第2工程
電源4 60MHz、 800W
成膜時の基板温度 400℃
成膜圧力 30mTorr
(SiH4 )ガス供給量 20sccm
(N2 O)ガス供給量 200sccm
成膜速度 1000Å/分
膜厚 1000Å
絶縁性測定結果
耐電圧 8MV/cm at 10-7
リーク電流 10-12 A/cm2
比較実験例2
図1の装置Aにより、第1工程を実施することなく、第2の工程のみを実施。
【0042】
電源4 60MHz、 800W
被成膜基板 ガラス基板
成膜時の基板温度 400℃
成膜圧力 30mTorr
(SiH4 )ガス供給量 20sccm
(N2 O)ガス供給量 200sccm
成膜速度 1000Å/分
膜厚 1000Å
絶縁性測定結果
耐電圧 7MV/cm at 10-7
リーク電流 10-11 A/cm2
実験例4及び比較実験例2から分かるように、第1工程を行った膜の方が耐電圧は大きくリーク電流は小さい。第1工程を実施することにより酸化シリコン膜や窒化シリコン膜などの絶縁性膜に関しても絶縁性良好な膜を作成できる。
【0043】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によると、比較的低温下で安価に、また、成膜速度の大幅な低下を招くことなく生産性よく結晶性シリコン薄膜を形成できる他、良質の電気絶縁性シリコン化合物薄膜なども形成できるシリコン系薄膜の形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るシリコン系薄膜形成方法の実施に使用できる薄膜形成装置の1例の概略構成を示す図である。
【図2】本発明に係るシリコン系薄膜形成方法により被成膜基板上に形成される初期シリコン膜及びその上に形成される結晶性シリコン薄膜の例を示す断面図である。
【図3】本発明に係るシリコン系薄膜形成方法の実施に使用できる薄膜形成装置の他の例の概略構成を示す図である。
【図4】実験例により得られたシリコン薄膜とアモルファスシリコン薄膜のレーザラマン分光法により得られたラマンスペクトルを示す図である。
【図5】第1工程における初期シリコン膜の膜厚と該膜の結晶性との関係を調べた実験結果を示す図である。
【符号の説明】
A シリコン系薄膜形成装置
1 成膜チャンバ
2 基板ホルダ
2H ヒータ
3 放電電極
31 シリコン膜(シリコンスパッタターゲット)
41 マッチングボックス
4 放電用高周波電源
5 水素ガス供給装置
6 シリコンを組成に含む成膜原料ガスの供給装置
7 排気装置
8 発光分光計測装置
S 被成膜基板
Sia 初期シリコン膜
Sib シリコン薄膜
B シリコン系薄膜形成装置
A’ 初期シリコン膜の形成装置
A” プラズマCVD装置
9 外部と基板の受渡しを行うためのチャンバ
10 中央基板搬送チャンバ
V1、V2、V3 ゲート弁
R 基板搬送ロボット

Claims (7)

  1. シリコンスパッタターゲットを設けたチャンバ内に被成膜基体を設置し、該チャンバ内に水素ガスプラズマを形成し、該プラズマにて前記シリコンスパッタターゲットをスパッタリングして前記被成膜基体上に初期シリコン膜を形成する第1の工程と、前記初期シリコン膜が形成された被成膜基体を設置したチャンバ内にシリコンを組成に含む成膜原料ガスのプラズマを形成し、該プラズマのもとで前記初期シリコン膜が形成された被成膜基体上に所定のシリコン系薄膜を形成する第2の工程とを含み、
    前記第の1工程では、前記水素ガスプラズマを、ガス圧が10mTorrから50mTorrの範囲で、且つ、該水素ガスプラズマ中の水素分子発光(602nm)強度と水素原子発光(656nm)強度の比(水素分子発光強度/水素原子発光強度)が0.5以上となるように形成して前記初期シリコン膜を20Å以上の膜厚で形成することを特徴とするシリコン系薄膜の形成方法。
  2. 前記初期シリコン膜を形成する第1の工程では、前記水素ガスプラズマを、前記水素ガスプラズマ中の水素分子発光(602nm)強度と水素原子発光(656nm)強度の比(水素分子発光強度/水素原子発光強度)が10以下となるように形成する請求項1記載のシリコン系薄膜の形成方法。
  3. 前記初期シリコン膜を形成する第1工程では、前記初期シリコン膜を50Å以下の膜厚で形成する請求項1又は2記載のシリコン系薄膜の形成方法。
  4. 前記シリコン系薄膜を形成する第2の工程では、前記シリコンを組成に含む成膜原料ガスとしてシリコン薄膜形成のためのガスを採用して、レーザラマン分光法による評価においてラマンスペクトルがラマンシフト520cm -1 でピークを示すシリコン薄膜を形成する請求項1、2又は3記載のシリコン系薄膜の形成方法。
  5. 前記シリコン系薄膜を形成する第2の工程では、前記シリコンを組成に含む成膜原料ガスとして電気絶縁性シリコン化合物膜形成のためのガスを採用して電気絶縁性シリコン化合物薄膜を形成する請求項1、2又は3記載のシリコン系薄膜の形成方法。
  6. 前記初期シリコン膜を形成する第1の工程と前記所定のシリコン系薄膜を形成する第2の工程とを同じチャンバ内において連続的に実施する請求項1から5のいずれかに記載のシリコン系薄膜の形成方法。
  7. 前記初期シリコン膜を形成する第1の工程における水素ガスプラズマは、該プラズマを形成する前記チャンバ内に設置した高周波電極からの放電により形成し、該高周波電極は表面の全部又は一部をシリコン膜で覆って前記シリコンスパッタターゲットの少なくとも一部とする請求項1から6のいずれかに記載のシリコン系薄膜の形成方法。
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