JP3806277B2 - 皮膚の老化過程を抑制するための化粧品組成物及び方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、皮膚の老化過程を抑制し且つ/又は皮膚の病理学的損傷を処置するための化粧品組成物及び方法に関する。
【0002】
より特定的に言えば、本発明は、式:
【0003】
【化3】
【0004】
〔式中、R1は、水素原子又はC1−5アルキル基を表し;
R2は、水素原子、C1−5アルキル基、C5−7シクロアルキル基、又はヒドロキシ若しくはフェニル基で任意に置換されていてもよいフェニル基を表し;あるいは、
R1とR2は、結合している窒素原子と一緒になって、1個以上のさらなる窒素原子又は酸素原子を任意に含んでいてもよい5員〜8員環を形成し、該環は、ベンゼン環と縮合し得;
R3は、水素原子、フェニル基、ナフチル基又はピリジル基(該基は1個以上のハロ原子若しくはC1−4アルコキシ基で置換し得る)を意味し;
Yは、ヒドロキシ基であり;
Xは、アミノ基を表し;
RはBと共に化学結合を形成し;
Aは、式:
【0005】
【化4】
【0006】
(式中、R4は、水素原子を表し;
R5は、水素原子を表し;
mは、0、1又は2の値を有し;
nは、0、1又は2の値を有する)
の基である〕
のヒドロキシム酸(hydroximic acid)誘導体又はその生理的に許容し得る酸付加塩を有効成分として含む化粧品組成物に関する。
【0007】
【従来の技術】
ヒトの皮膚は、日焼けや発ガンなどのいくつかの好ましい作用と好ましくない作用を有することが知られている光線の天然標的である。紫外線により、皮膚にフリーラジカル(例えば、ヒドロキシラジカル又は発生期の酸素)が生成する。そのようなフリーラジカルは、DNAを損傷したり、皮膚の老化の原因となり得る。
【0008】
皮膚老化過程に関する周知の理論はフリーラジカルの分解作用に基づいている。フリーラジカルは、紫外線の作用以外に、生化学的過程でも生成し得る。従って、例えば、炎症、低酸素症又は反応性充血により、スーパーオキシドアニオン、ペルヒドロキシ又はヒドロキシラジカル、過酸化水素などのような酸素由来のフリーラジカルが生成し得る。
【0009】
強力な酸化作用を有するフリーラジカルは、一方では、膜の不飽和脂肪酸を酸化すること(脂質の過酸化)により膜を損傷し得、他方では、該酸化の間に反応性アルデヒドを生成する。膜が損傷を受けると、カルシウム摂取量が増大して細胞死を招き、反応性アルデヒドが存在すると、病理学的過程:
−DNAの損傷、細胞核及びミトコンドリア両方の変異;
−架橋の形成による間質性タンパク質(即ちエラスチン)の特性の変化
が始まる。
【0010】
コラーゲンタンパク質及びエラスチンの弾性構造は多量の水を含むことが知られている。間質性タンパク質はリシンを豊富に含むことを特徴とする。マロンジアルデヒドなどの反応性アルデヒドにより、アミノ基を含む側鎖との縮合反応が生起し、架橋が形成される。従って、初期には弾性であった構造が剛性且つ疎水性となる。上記過程において、先ずリポフスチンセロイドが、次いで加齢色素が形成される。
【0011】
紫外線に対する天然の保護機構には、メラニンの形成に由来する褐色化(bronzing)、DNAの修復機構などが含まれる。紫外線によって引き起こされるDNA修復障害及びその結果としてのDNA損傷の補正不全などの保護機構の欠損により、皮膚の早期老化が起こったり、悪性腫瘍の発生を伴い得る色素性乾皮症と称される疾患に罹患し得る。幼児期の褐色化に起因する日焼け斑は広範囲の斑痕を残して治癒する。有棘細胞ガンの他にも、種々の悪性腫瘍(例えば、黒皮症、角膜棘細胞腫、基底細胞腫、肉腫)が発生し得る。
【0012】
従って、皮膚の老化過程に影響を与え、病理学的障害を治療することができれば、それは極めて重要なことである。
【0013】
式Iのヒドロキシム酸誘導体は公知である。ハンガリー国特許第177578号及びその対応米国特許第4,308,399号は、糖尿病性脈管障害の治療に適したヒドロキシム酸誘導体を記載している。
【0014】
ハンガリー国特許第207988号及びその対応ヨーロッパ特許第417210号も、選択的β−遮断作用を有し、従って糖尿病性脈管障害の治療に適しているヒドロキシム酸ハロゲン化物を記載している。
【0015】
T/66350号として公開されたハンガリー国特許出願第2385/92号は、他のヒドロキシム酸誘導体を記載している。これらの公知化合物は、主として糖尿病療法における血管奇形の治療に用い得る。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、皮膚の老化過程の抑制及び/又は皮膚の病理学的障害の処置に適した組成物を提供することである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、有効成分として式Iのヒドロキシム酸誘導体又はその生理的に許容し得る酸付加塩を含む組成物により達成されることが見出された。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の組成物の使用が適している皮膚の病理学的障害とは、特に以下を意味する:
−乾皮症;
−日光角化症、日光痒疹(aktinic prurigo)(ロペス−ゴンザレス病);
−多形性日光発疹;
−毒性光線病;
−光アレルギー;
−老人性紫斑病;
−皮膚の日光萎縮症;
−思春期線条(stria migrans);
−拡散性弾力線維腫(elastoma diffusum)(古い皮膚);
−X線皮膚炎;
−痛風性多発性軟骨炎;
−褥瘡(床ずれ)。
【0019】
本明細書及び請求の範囲において、用語「組成物」とは、先ず第1に、局所処置に適した化粧品組成物を意味し、慣用的な方法で皮膚表面に適用する。
【0020】
本発明の組成物は、化粧品組成物の1種以上の慣用担体と混合した、有効成分としての式Iのヒドロキシム酸誘導体又はその生理的に許容し得る酸付加塩を含む。
【0021】
本明細書及び請求の範囲において、C1−5アルキル基は、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル又はn−ペンチル基であり、メチル又はエチル基が好ましい。
【0022】
C5−7シクロアルキル基は、シクロペンチル、シクロヘキシル又はシクロヘプチル基であり、シクロペンチル又はシクロヘキシル基が好ましい。
【0023】
1個以上のヘテロ原子を含む5員〜8員環は、例えば、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、オキサゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピペラジン、モルホリン、インドール、キノリンなどの環であってよい。
【0024】
ハロ原子は、例えば、フルオロ、クロロ、ブロモ又はヨード原子であり、クロロ又はブロモ原子が好ましい。
【0025】
式Iの化合物の生理的に許容し得る酸付加塩は、塩酸、硫酸などの生理的に許容し得る無機酸とで形成されるか、又は酢酸、フマル酸、乳酸などの生理的に許容し得る有機酸とで形成された酸付加塩である。
【0026】
式Iの化合物の好ましいサブグループは、式:
【0027】
【化5】
【0028】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、m及びnは式Iに定義の通りであり、Xはアミノ基を表し、Yはヒドロキシ基を意味する)
のヒドロキシム酸誘導体からなる。
【0029】
式IIの特に好ましい化合物は、R1及びR2が、結合している窒素原子と一緒になってピペリジノ基を形成し、R3がピリジル基を表し、m及びnが0の値を有し、Xが先に定義の通りである化合物である。これらの化合物のうち、好ましい種は以下の通りである:
O−(3−ピペリジノ−2−ヒドロキシ−1−プロピル)ニコチン酸アミドオキシム(化合物「B」)。
【0030】
式Iの化合物は、ハンガリー国特許第177578号から公知である方法に従って製造し得る。
【0031】
本発明の組成物は一般に、化粧品組成物の慣用担体と混合した、0.1〜30質量%、適当には2〜10質量%、好ましくは4〜5質量%の有効成分としての式Iのヒドロキシム酸誘導体又はその生理的に許容し得る酸付加塩を含有する。
【0032】
本発明の組成物は、皮膚表面の局所治療に適した慣用の化粧品製剤であってよい。好ましい製剤は、クリーム、ボディー乳液、日焼け止め乳液(sun-emulsion)、スキントリートメントフォーム、スプレー、皮膚再生アンプルなどである。
【0033】
本発明の組成物は、有効成分に加えて、化粧品組成物の慣用担体を70〜99.9質量%の量で含み得る。適当な担体は、例えば、飽和又は不飽和炭素鎖を有する一価又は二価のアルコール、例えば、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セチルステアリルアルコール、オレイルアルコール、ラウリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール;天然の脂肪及び油類、例えば、オリーブ油、アボカド油、コムギ胚芽油、トウモロコシ胚芽油、ラノリン、ココアバター;高級炭化水素、例えば、ワセリン油、ワセリン;密ろう;セルロース誘導体;乳化剤(emulgator)、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ソルビタンの脂肪酸又はオレイン酸エステル、ポリ(エチレングリコール)の脂肪酸又はオレイン酸エステル、脂肪アルコール又はオレイルアルコールのソルビタンエーテル、脂肪アルコール又はオレイルアルコールのポリ(エチレングリコール)エーテル、脂肪酸のグリセリド;ビタミン類、ハーブエキス、例えばカモミールエキス;保存剤、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸メチル、グルコン酸クロロヘキシジン;光保護因子などである。
【0034】
本発明の組成物は、その成分をそれ自体公知の方法でブレンドして製造する。油中水型又は水中油型エマルションをベースとする組成物の場合には、一般に、脂肪相の成分と水性相の成分を別々に添加し、必要ならその後で、高温の脂肪相を用いて2つの相をブレンドする。式Iの有効成分を、好ましくは水溶液として、脂肪相又は他の成分の混合物に加える。
【0035】
モルモットに関して式Iの化合物の皮膚老化阻害作用を調べた。8匹のモルモットの皮膚表面を脱毛し、次いで、該動物の両脇腹の1cm2領域を100mJ/cm2の強度のUV−B光で照射した。照射後、動物の一方の脇腹に、有効成分として供試化合物を4質量%の量で含む実施例1のクリームを塗布した。各動物の他方の脇腹に、有効成分を含まない化粧品担体(即ち、実施例1のものに対応するクリームを用いたが、該クリームは有効成分の代わりに水を含んでいた)を塗布した。従って、実際には、該実験に内部対照を用いた。
【0036】
4匹の動物の場合には、照射直後にクリームで処置し、次いで、1週間にわたり毎日この処置を繰り返した(グループI)。他の4匹の動物の場合、照射した皮膚表面を、照射後24時間経過して初めて、それぞれ本発明のクリームと対照クリームで処置した(グループII)。
【0037】
グループIの動物の場合、照射してから24時間及び48時間後に、照射後に本発明の組成物で処置した皮膚表面に最小の紅斑が認められた。対照として用いた皮膚表面には、上皮のない領域が認められ、この状態は、7日間の観察期間中続いた。4日目からは、照射後に本発明の組成物で処置した皮膚表面とその周囲の皮膚領域との間になんら差が認められなくなった。
【0038】
グループIIの動物の場合には、処置した領域にも対照領域にも皮膚損傷(小水疱、膿胞)が認められ、さらに上皮のない領域も発生した。照射後7日目に、本発明の組成物で処置した領域は上皮で覆われた。
【0039】
上記検査の結果から、皮膚表面が、それぞれ本発明の組成物及び式Iの化合物によりUV−B光の損傷作用から保護されることを証明し得る。皮膚表面を照射直後に本発明の組成物で処置すると、上皮がせいぜい軽度に損傷を受けるに過ぎない。
【0040】
UV−B放射線により生ずる皮膚損傷は、本発明の組成物で処置すると、処置しない場合より短期間で治癒する。式Iの化合物は上皮化作用を及ぼす。
【0041】
従って、本発明の他の実施態様は、皮膚の老化過程を抑制し且つ/又は皮膚の病理学的障害を処置する方法からなり、該方法は、冒された皮膚表面を、化粧品として有効な無毒性量の式Iのヒドロキシム酸誘導体又はその生理的に許容し得る酸付加塩で処置することを含む。
【0042】
皮膚表面は、0.1〜30質量%の式Iのヒドロキシム酸誘導体又はその生理的に許容し得る酸付加塩を含む化粧品組成物で処置するのが適当である。
【0043】
皮膚表面は、O−(3−ピペリジノ−2−ヒドロキシ−1−プロピル)ニコチン酸アミドオキシム又はその生理的に許容し得る酸付加塩で処置するのが好ましい。
【0044】
【実施例】
以下の実施例により本発明をさらに説明する。
【0045】
親油性成分(セチルステアリルアルコール、ステアリン酸及びグリセリンモノステアラート)を水浴上で融解する。ラウリル硫酸ナトリウム及びp−ヒドロキシ安息香酸メチルを約38mlの蒸留水に60〜65℃で溶解し、該溶液に稀釈した水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを9〜10の値に調整し、次いで、水溶液を親油性成分の混合物に添加し、得られたエマルションを攪拌して冷却する。有効成分を残留水に溶解し、溶液を冷却したクリームに添加する。
【0046】
実施例1に記載の方法を用いて該成分をブレンドする。
【0047】
実施例1に記載の方法を用いて該成分をブレンドする。
【0048】
からなるクリームを調製する。
【0049】
からなるクリームを調製する。
【0050】
からなるボディーミルクを調製する。
Claims (4)
- O−(3−ピペリジノ−2−ヒドロキシ−1−プロピル)ニコチン酸アミドオキシム又はその生理的に許容し得る酸付加塩を有効成分として含む皮膚の老化過程を抑制するための組成物。
- 0.1〜30質量%の有効成分を含む、請求項1に記載の組成物。
- 冒された皮膚表面をO−(3−ピペリジノ−2−ヒドロキシ−1−プロピル)ニコチン酸アミドオキシム又はその生理的に許容し得る酸付加塩で処置するに当たり、患部に対して有効で、無毒である量のO−(3−ピペリジノ−2−ヒドロキシ−1−プロピル)ニコチン酸アミドオキシム又はその生理的に許容し得る酸付加塩を含有する化粧品組成物で皮膚表面を処置する方法。
- 0.1〜30重量%のO−(3−ピペリジノ−2−ヒドロキシ−1−プロピル)ニコチン酸アミドオキシム又はその生理的に許容し得る酸付加塩を含む化粧品組成物で処置する請求項3に記載の皮膚表面を処置する方法。
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