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JP3804408B2 - 成形性に優れたCr含有耐熱耐食鋼板の製造方法 - Google Patents

成形性に優れたCr含有耐熱耐食鋼板の製造方法 Download PDF

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JP3804408B2 JP2000212491A JP2000212491A JP3804408B2 JP 3804408 B2 JP3804408 B2 JP 3804408B2 JP 2000212491 A JP2000212491 A JP 2000212491A JP 2000212491 A JP2000212491 A JP 2000212491A JP 3804408 B2 JP3804408 B2 JP 3804408B2
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  • Heat Treatment Of Sheet Steel (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車、オートバイ、発電プラントなどにおける耐熱部材、あるいはモール材、厨房品などにおける耐食部材として用いて好適な鋼板であって、とくに加工時の成形性に優れたCr含有耐熱耐食鋼板の製造方法に関する。
なお、本発明にいう鋼板は、鋼帯をも含む意味とする。
【0002】
【従来の技術】
自動車の排気部材(エキゾーストマニホールド、排気パイプ、コンバーターケース、マフラー等)などには、一般に、耐熱性と耐食性を向上させるためにNbやMoを添加したCr含有鋼板、例えば Type429 (15%Cr-0.8%Si-0.4%Nb) 、Type436J1L (18%Cr-0.4%Nb-0.5%Mo) が使用されている。これらの排気部材は車体の限られたスペースに収容するように製造されるため、その製造工程で過酷な深絞り加工が施される。このため、自動車の排気部材などに用いられる鋼板には、耐熱性のほかに、優れた成形性が求められる。この傾向は、最近、ますます強まり、鋼板にはより高度な成形性が要請されるようになってきた。
一方、モール材、厨房品などでは、特開昭56−123327号公報に示されているように、表面性状や耐食性が重視され、通常は、18Cr系のNb添加鋼、例えば、Type430J1L (18%Cr-0.4%Nb-0.5%Cu) 、Type444 (18 %Cr-0.4%Nb-2.0%Mo) が用いられている。この分野で用いられる鋼板にも、同時に優れた成形性が求められるようになって、従来のNb添加鋼では加工不良が多発していた。
【0003】
ところで、Cr含有鋼板の成形性を向上させるため、これまでにも幾つかの提案がなされてきた。例えば、特開昭56−123327号公報には、熱延終了温度(FDT)を規制することにより、成形性を高める技術が開示されている。しかし、この技術によっても、未だ今日の厳しい成形性へのニーズを満たすには至っていない。また、従来から、成形性の向上には、冷延圧下率を高める必要があることが知られており、前記特開昭56−123327号公報には、冷延圧下率を80%とした例示がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記冷延圧下率を高める技術においては、冷延原板である熱延鋼板(以下、熱延板と記すことがある)の板厚が必然的に大となるので、冷間圧延時に破断等が生じて製造困難になる危険性があった。それは例えば、冷延板の仕上げ厚が2mmと厚いような場合、圧下率80%を確保して冷間圧延するためには、熱延板の板厚は10mmにもなり、このような場合、熱延板連続焼鈍ラインなどの連続処理ライン内で、ブライドルロール箇所など、処理しようとする熱延板に曲げの力を作用させてしまう箇所に溶接点がきたときに、溶接部において熱延板表層に、曲げによる力が作用して亀裂が入り、さらに板厚方向に伝播してついには破断に至る、というようなメカニズムによる。
したがって、例えば、冷間圧延の仕上げ厚が2mmの場合に、熱延板の板厚を5mm(冷延圧下率にして60%)程度と低くした場合でも、十分な成形性改善効果が得られる製造方法の開発が強く望まれる。
【0005】
本発明は、従来技術が抱えている、かかる問題を解決するための新規な提案であり、冷延圧下率が80%未満であっても、Cr含有鋼板が有している耐熱性や耐食性を維持したまま、優れた成形性(主として、深絞り性)を得ることが可能なCr含有耐熱耐食鋼板の製造方法を提案することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、上記課題を解決するために、Cr含有鋼板の製造方法について詳細な検討を行った。その結果、従来はほとんど顧みられていなかった熱延開始温度(FET)に着目し、成形性の向上にはこのFETのほか、熱延終了温度(FDT)および鋼中Nb量と、焼鈍温度との関係が一定の範囲に入るような条件で製造することが重要であるとの結論に達した。具体的には、FET、FDTおよびNb量をパラメーターとして決まる所定の温度範囲で、熱延板を焼鈍することにより、冷延圧下率が80%未満でも優れた成形性を得ることを知見した。本発明は、上記知見に基づくものであり、その要旨構成は以下のとおりである。
【0007】
(1) 質量%で、
C:0.02%以下、
Si:1.5 %以下、
Mn:2.0 %以下、
P:0.06%以下、
S:0.02%以下、
Cr:6 〜30%、
N:0.02%以下、
Nb:10×{(%C)+(%N)}を超え、1.0 %以下、
V:0.01〜0.5 %
を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなる組成の鋼を熱延終了温度 600〜850 ℃で熱間圧延し、次いで、Nb量、熱延開始温度(FET,℃)および熱延終了温度(FDT,℃)をパラメーターとする、
(90×K−80)℃〜(90×K+80)℃、
ただし、K=2×(Nb%)+( 0.3×FET + FDT)/100 、
の温度範囲で熱延板焼鈍を行い、その後、冷間圧延して、 950〜1100℃の温度範囲で仕上げ焼鈍を行うことを特徴とする成形性に優れたCr含有耐熱耐食鋼板の製造方法。
【0008】
(2) 上記 (1)において、鋼がさらに、質量%で、
Mo:3.0 %以下、Cu:1.0 %以下から選ばれる1種又は2種
を含有する組成からなることを特徴とする成形性に優れたCr含有耐熱耐食鋼板の製造方法。
【0009】
(3) 上記 (1)または (2)において、鋼がさらに、質量%で、
Ti:0.5 %以下、Al:0.5 %以下、B:0.005 %以下から選ばれる1種又は2種以上
を含有する組成からなることを特徴とする成形性に優れたCr含有耐熱耐食鋼板の製造方法。
【0010】
(4) 上記 (1)〜 (3)のいずれか1つにおいて、鋼がさらに、質量%で、
Ni:1.0 %以下、Co:1.0 %以下から選ばれる1種又は2種
を含有する組成からなることを特徴とする成形性に優れたCr含有耐熱耐食鋼板の製造方法。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に、鋼の組成および製造条件を上記範囲に限定した理由について説明する。なお、鋼組成の含有量は質量%(以下、単に%)で表す。
【0012】
C:0.02%以下
Cは、成形性および靱性を低下させる元素である。このような悪影響は、0.02%を超えたとき顕著に現れるので、C含有量は0.02%以下に制限する。なお、成形性を確保するうえでCは少ないほどよく、0.008 %以下にするのが望ましい。
【0013】
Si:1.5 %以下
Siは、耐酸化性および耐食性の向上に有用な元素である。しかし、1.5 %を超えて含有すると、加工硬化が増して、成形性が劣化する。このため、Si含有量は、1.5 %以下、好ましくは1.0 %の範囲とする。
【0014】
Mn:2.0 %以下
Mnは、脱酸剤として作用するが、過剰に添加するとMnSを形成して、成形性および耐食性を低下させるので、2.0 %以下とする。なお、Mnの好ましい含有量は0.75%以下、さらに好ましい含有量は0.3 %以下である。
【0015】
P:0.06%以下
Pは、靱性を劣化させる元素であるので、0.06%以下に制限する。P含有量は、この範囲で少ないほどよく、好ましくは0.03%以下、さらに好ましくは0.015%以下に抑制するのがよい。
【0016】
S:0.02%以下
Sは、伸びおよび深絞り性(r値)を劣化させるほか、鋼の耐食性を低下させる元素である。Sを0.02%以下に制限すれば、伸び、深絞り性 (r値) 、耐食性は満足できるレベルになる。ただし、Sを0.002 %未満に低下させるには、コストの上昇が問題となる。
【0017】
Cr:6〜30%
Crは、鋼の耐酸化性および耐熱性の向上に有用な元素であり、6%以上の添加でその効果を発揮するが、30%を超えて添加すると成形性を低下させる。よってCr添加量は6〜30%の範囲とする。なお、とくに成形性を重視し、耐酸化性、耐熱性についてもより好ましい添加範囲は9〜19%、より好ましい範囲は10〜17%である。
【0018】
N:0.02%以下
Nは、靱性および成形性を低下させる元素であり、0.02%を超えるとその悪影響が大きく現れるので、0.02%以下に制限する。なお、好ましいN含有量は0.01%以下である。
【0019】
Nb:10×{(%C)+(%N)}を超え、1.0 %以下
Nbは、高温強度、成形性、耐食性および溶接部の粒界耐食性のいずれをも高めるのに有効な元素である。これらの効果は10×{(%C)+(%N)}を超える量のNb添加で得られるが、1.0 %を超えて添加すると、FeNbラーベスが多量に析出し、鋼の靱性、表面性状を劣化させる。ここで、ラーベスとは、Feと他の金属が2:1の割合で結びついた化合物のことをさす。よって、Nbは、10×{(%C)+(%N)}を超え、1.0 %以下の範囲で添加するが、特に高温強度を必要とする場合には、0.3 %を超える範囲で添加するのが望ましい。
【0020】
V:0.01〜0.5 %
Vは、成形性の向上に有用な元素であり、0.01%以上の添加でその効果が得られる。一方、0.5 %を超えて添加すると、粗大なV炭化物や窒化物を析出して、表面性状を劣化させるので、0.5 %を上限として添加する。なお、好ましい添加量は、0.05%以上、20(C+N)%以下である。
【0021】
以上の添加元素のほか、必要な特性に応じて、Mo:3.0 %以下、Cu:1.0 %以下の群、Ti:0.5 %以下、Al:0.5 %以下、B:0.005 %以下の群、Ni:1.0 %以下、Co:1.0 %以下の群から選ばれる1種又は2種以上の元素を添加することができる。これら元素について、以下に説明する。
【0022】
Mo:3.0 %以下、Cu:1.0 %以下
Moは、耐食性の向上のほか、固溶強化作用により高温強度を高めるのに有用な元素である。しかしながら、3.0 %を超えて添加しても効果が飽和し、コスト上昇を招くのみとなるので、上限を3.0 %とする。
Cuは、微量の添加で耐食性を高め、また成形性を向上させる元素である。しかし、過剰に添加するとε−Cuの析出による脆化を招くので、上限を1.0 %とする。なお、好ましい添加量は0.1 %以上である。
【0023】
Ti:0.5 %以下、Al:0.5 %以下、B:0.005 %以下
Tiは、成形性を向上させる元素であるが、0.5 %を超えて添加すると粗大なTi炭化物や窒化物を析出して、表面性状を劣化させるので、上限を0.5 %とする。なお、Tiの好ましい添加量は、0.02%以上、15(C+N)%以下である。
Alは、脱酸剤として作用する。また、溶接時に、表面保護スケールを生成することにより、大気中からのC、N、Oの侵入を防止し、溶接部靱性を向上させる作用を有している。かかる効果を発揮させるには、0.02%以上のAl添加が望ましい。しかし、0.5 %を超えて添加すると、加工性の劣化が著しくなるので、Alの上限は0.5 %とする。なお、Alのより好ましい添加量は0.03%超え0.2 %以下である。
Bは、2次加工性の向上に有用な元素であるが、0.005 %を超えて添加すると、多量のBNを生成して加工性を劣化させるので、0.005 %を上限とする。なお、Bの好ましい添加量は0.0003〜0.0015%の範囲である。
【0024】
Ni:1.0 %以下、Co:1.0 %以下
Niは、靱性の向上に有効な元素であるが、過度な添加はコストの上昇を招くので、上限を1.0 %とする。なお、Niの好ましい添加量は0.05〜0.8 %、より好ましい添加量は0.5 〜0.8 %である。
Coは、溶接部の靱性向上に有効な元素であるが、過度な添加はコストの上昇を招くので、上限を1.0 %とする。なお、Coの好ましい添加量は0.03〜0.8 %、より好ましい添加量は0.05〜0.2 %である。
【0025】
熱延終了温度 600〜850 ℃
上述した組成の鋼を加熱した後、熱間圧延する。この熱間圧延においては、終了温度を 600〜850 ℃とすることが必要である。熱延終了温度が850 ℃を超える高温になると、熱間圧延中に転位が容易に再配列し、回復現象が生じるために、熱延板焼鈍時の再結晶駆動力が小さくなる。一方、熱延終了温度が600 ℃に満たない低温では、圧延ロ−ルと被圧延材との焼き付きが生じやすくなり、表面疵の原因となる。よって熱延終了温度は 600〜850 ℃の範囲とする。なお、好ましい熱延終了温度は700 〜800 ℃の範囲である。
なお、上記熱間圧延のためのスラブ加熱は1000℃から1200℃で、できるだけ低温の条件で行うのが望ましい。
【0026】
熱延板焼鈍
熱間圧延して得た熱延鋼板に、冷間圧延に先立って、熱延板焼鈍を施す。本発明では、とくにこの熱延板焼鈍の温度範囲を、Nb量、熱延開始温度(FET、℃)および熱延終了温度(FDT、℃)をパラメーターとして、(90×K−80)℃〜(90×K+80)℃、ただし、K=2×(Nb%)+( 0.3×FET + FDT)/100として行う。
なお、ここでいうFET,FDTは、圧延前後で長手方向全長での各対応位置での値を意味するものとする。一般に、FET,FDTは、被圧延材長手方向位置によって変わるが、本発明では長手方向のある特定の位置を取り出してみたときのFET,FDTにより、熱延板焼鈍温度として適した温度が定まることを意味し、その範囲に入るように実際に制御する。
Kは、発明者らが再結晶現象に及ぼす要因についての実験から解析して求めた式であるが、その意味は、熱間圧延により蓄積した歪の程度を表す指標と考えることができる。一般に、熱間圧延時に鋼中に導入された歪みは熱間圧延終了〜巻取りの間に一部回復によって消失し、巻取り後は殆ど変化しないが、焼鈍時に再結晶の駆動力となる有効歪み(回復せずに蓄積した歪み)は、熱間圧延により圧下する板厚量が同じとすると、熱間圧延温度 (熱延終了温度 (FDT)で代表する) が低いほど変形抵抗が大きく、圧延時の力が大きい分だけ効果的に歪みエネルギー (以下、単に「歪み」と称する) として鋼中に導入され蓄積されると言われている。
本発明は、熱延終了温度 (FDT) だけでなく、熱延開始温度 (FET) も、歪みの鋼中への蓄積の程度に寄与することを見出した。そして、上述のパラメータ式を見ると、有効歪み量に及ぼすFDTとFETの寄与の程度を比較したとき、FDTの方がより大きいものの、FETも相当の割合で寄与していることを示している。
【0027】
すなわち、発明者らの研究によれば、FET,FDTをパラメータとした指標Kの大小如何によって、熱延板焼鈍温度として適した温度範囲は変化することがわかった。たとえば、FET,FDTのいずれかが低下すれば、熱延板焼鈍温度として適した温度範囲は低下する。また、指標KにはNb添加量も影響し、Nb添加量によっても熱延板焼鈍温度として適した温度範囲は変化することもわかった。Nb添加量を増やすと熱延板焼鈍温度として適した範囲は上昇する。このようなことから、Kの式を決めた。FET,FDT,Nb含有量が熱延板焼鈍温度として適した温度範囲に対し与える影響の度合いは、上記指標Kにより包括的に定量化できることがわかったのである。
そして、このKを含む、(90×K−80)〜(90×K+80)の温度範囲で熱延板焼鈍を行うと成形性などの加工性を著しく改善できることがわかった。熱延板焼鈍の温度が、(90×K−80)に満たないと再結晶が不十分となり、一方、(90×K+80)を超えると粒成長が大きく、冷間圧延のあと仕上げ焼鈍した鋼板(冷延焼鈍板)の成形性が劣化する。
なお、熱延板焼鈍時間は、上記温度範囲で10分以内とすればよく、焼鈍設備はいかなるものであってもよい。
【0028】
冷間圧延および仕上げ焼鈍
熱延板焼鈍を行ったのち冷間圧延を行うが、この冷間圧延において、本発明はとくに冷延圧下率を80%未満とした場合でも良好な成形性を得ることができるものであるので、前記範囲の圧下率(ただし、好ましくは50%以上)で冷間圧延を行う場合に本発明の効果が一層発揮されるので好適である。なお、当然ながら、冷延圧下率が前記圧下率を超えて高くなれば、より良好な成形性が得られるのは言うまでもない。
冷間圧延に次いで、 950〜1100℃の温度範囲で仕上げ焼鈍を行うことによって優れた成形性を具えたCr含有耐熱耐食鋼板を製造することができる。すなわち、仕上げ焼鈍の温度が 950℃に満たないと再結晶不足となり、一方1100℃を超えると粒成長が著しく冷延板製品の成形性が劣る。なお、好ましい仕上げ焼鈍温度は1000℃超〜1050℃以下である。
【0029】
【実施例】
表1に示す組成からなる鋼を溶製した後、1100℃に加熱し、FDT、FETを種々変更した条件で熱間圧延して板厚5mmの熱延鋼板とした。この熱延鋼板を、種々の温度で熱延板焼鈍し、酸洗の後、成形性の上から一般には不利な圧下率60%で冷間圧延した。次いで、仕上げ焼鈍して、酸洗し、板厚2mmの冷延焼鈍板とした。これらの製造条件を表2、表3に示す。
以上の方法で得られた冷延焼鈍板の圧延方向(L方向)、圧延方向と45°の方向(D方向)および圧延方向と90°の方向(C方向)より試験片(JIS Z2201 に準拠した13号B)を採取し、該試験片長さ方向、長さ方向に対し面内で45°の方向、長さ方向とは面内で直角の方向にそれぞれr,r,rを測定して、次式により平均r値を求め成形性を評価した。
r=(r+2r+r)/4
なお、成形性の評価はr値の水準によりランクA〜Dの4段階で表すこととした。
ランクA: r≧1.5
ランクB: 1.5 >r≧1.3
ランクC: 1.3 >r≧1.1
ランクD: 1.1 >r
【0030】
得られた成形性の結果を併せて表2、表3に示す。
表2、表3において、成分組成、熱間圧延条件、熱延板焼鈍条件等のすべてが適正な範囲にある発明例は、いずれもランクB以上の優れた成形性を有している。これに対し、Nb無添加鋼を素材とするNo.27 〜29、またFDTおよび熱延板焼鈍温度の少なくとも一方が範囲外にあるNo. 2、3、20〜26は発明例に比べ成形性が劣っている。
なお、これら実施例のうち、No. 2、3、20〜22、28、29の例からわかるように、単に、FDTを低くくしただけでは良好な成形性が得られないことが明らかである。また、No1とNo.20 、21との比較から、鋼組成および熱延板仕上げ焼鈍の条件が同じであっても、(90×K−80)℃〜(90×K+80)℃の範囲内にない、No.20 、21は成形性が劣っていることもわかる。
【0031】
【表1】
Figure 0003804408
【0032】
【表2】
Figure 0003804408
【0033】
【表3】
Figure 0003804408
【0034】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、冷間圧延における圧下率が比較的低い場合であっても、高いr値が得られ、自動車の排気部材やモール材、厨房品などに適用可能な成形性に優れたCr含有耐熱耐食鋼板を提供することができる。また、本発明によれば、自動車の排気部材と同様な特性が求められる火力発電システムの排気経路部材にも適用可能な鋼板を提供できるので、工業的価値は極めて高い。

Claims (4)

  1. 質量%で、
    C:0.02%以下、
    Si:1.5 %以下、
    Mn:2.0 %以下、
    P:0.06%以下、
    S:0.02%以下、
    Cr:6 〜30%、
    N:0.02%以下、
    Nb:10×{(%C)+(%N)}を超え、1.0 %以下、
    V:0.01〜0.5 %
    を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなる組成の鋼を熱延終了温度 600〜850 ℃で熱間圧延し、次いで、Nb量、熱延開始温度(FET,℃)および熱延終了温度(FDT,℃)をパラメーターとする、
    (90×K−80)℃〜(90×K+80)℃、
    ただし、K=2×(Nb%)+( 0.3×FET + FDT)/100 、
    の温度範囲で熱延板焼鈍を行い、その後、冷間圧延して、 950〜1100℃の温度範囲で仕上げ焼鈍を行うことを特徴とする成形性に優れたCr含有耐熱耐食鋼板の製造方法。
  2. 請求項1において、鋼がさらに、質量%で、
    Mo:3.0 %以下、Cu:1.0 %以下から選ばれる1種又は2種
    を含有する組成からなることを特徴とする成形性に優れたCr含有耐熱耐食鋼板の製造方法。
  3. 請求項1または2において、鋼がさらに、質量%で、
    Ti:0.5 %以下、Al:0.5 %以下、B:0.005 %以下から選ばれる1種又は2種以上
    を含有する組成からなることを特徴とする成形性に優れたCr含有耐熱耐食鋼板の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項において、鋼の組成が、さらに、質量%で、
    Ni:1.0 %以下、Co:1.0 %以下から選ばれる1種又は2種
    を含有することを特徴とする成形性に優れたCr含有耐熱耐食鋼板の製造方法。
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